JP2010029178A - 細胞ピッキングシステム、スクリーニング方法および哺乳類細胞を取得する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定分子を発現する真核細胞を分離する細胞ピッキングシステムであって、前記真核細胞は前記特定分子と結合可能な結合分子により複合体を形成し、この複合体の形成に基づき特定分子を発現する真核細胞が検出装置により検出され、検出された真核細胞が検出装置と連動したマニピュレータにより自動的に回収されることを特徴とする細胞ピッキングシステム。
【選択図】図1
Description
項1 特定分子を発現する真核細胞を分離する細胞ピッキングシステムであって、前記真核細胞は前記特定分子と結合可能な結合分子により複合体を形成し、この複合体の形成に基づき特定分子を発現する真核細胞が検出装置により検出され、検出された真核細胞が検出装置と連動したマニピュレータにより自動的に回収されることを特徴とする細胞ピッキングシステム。
項2 前記細胞が酵母または動物細胞である、項1に記載のシステム。
項3 特定分子がレセプター、表面抗原または細胞外に分泌されるタンパク質、もしくはペプチドである、項1または2に記載のシステム。
項4 特定分子が細胞外に分泌されるタンパク質もしくはペプチドであり、前記タンパク質若しくはペプチドと結合分子の複合体が前記結合分子の標識に基づくシグナルの検出により認識され、前記複合体を形成する真核細胞がマニピュレータにより自動的に回収される、項1〜3のいずれかに記載の細胞ピッキングシステム。
項5 分泌されるタンパク質が、抗体である項3または4に記載の細胞ピッキングシステム。
項6 特定分子がレセプターであり、前記レセプターと結合分子の複合体が前記結合分子の標識または前記真核細胞の複合体形成に基づくシグナルの検出により認識され、前記複合体を有する真核細胞がマニピュレータにより自動的に回収される、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞ピッキングシステム。
項7 少なくとも1種の標的レセプターを細胞表面に発現する真核細胞において、前記レセプターに対するリガンド候補物質を前記細胞に作用させ、前記レセプターと特定のリガンドが結合した場合に生じるシグナルを検出し、シグナルを生じたレセプター−リガンド結合細胞をマニピュレータにより自動的に回収し、前記シグナルを発生させるリガンド候補物質を同定することを特徴とする、前記レセプターに対するリガンドのスクリーニング方法。
項8 前記リガンドがレセプターとともに前記真核細胞の表面に発現される、項7に記載の方法。
項9 リガンドライブラリーを細胞表面に発現する真核細胞集団において、レセプターを前記細胞に作用させ、前記レセプターと特定のリガンドが結合した場合に生じる検出可能なシグナルを検出し、シグナルを生じたレセプター−リガンド結合細胞をマニピュレータにより自動的に回収し、前記シグナルを発生させるリガンドを同定することを特徴とする、前記レセプターに対するリガンドのスクリーニング方法。
(1) 膨大な種類(104-105種類)のリード化合物候補を合成し、
(2) (1)で合成した化合物の一種類ずつを、哺乳類細胞培養液に添加し、
(3) 各種細胞内シグナル(cAMP、Ca2+、etc.)を解析する必要がある。
などと、非常に多くの時間(最長10年)とコスト(開発費用の25%、最大200億円以上)がかかる上に、最大105種類程度のスクリーニングにしか供せない。
本発明により酵母などの真核細胞にヒト由来一回膜貫通型レセプターと表層提示型リガンドとを機能的に発現させる手法およびそのレセプターに対するリン酸化などの翻訳後修飾を蛍光標識抗体、あるいはGFPなどの蛍光タンパク質レポーターにて検出する手法、これらと、表層提示用構造固定型ランダムペプチドライブラリー、および1細胞ピッキング装置による陽性細胞の自動回収、以上のコンビネーションを用いて、レセプターに対するリガンド(アゴニスト、アンタゴニスト)のスクリーニングをすることにより、GPCRや一回膜貫通型レセプターなどのレセプター種に関わらず、短時間・低コストのレセプターのアゴニスト/アンタゴニストのスクリーニング、すなわちハイスループットスクリーニングが達成される。ランダムペプチドライブラリーに代えて化合物ライブラリーをレセプター発現真核細胞に作用させることにより、レセプターに結合する特定の化合物を容易に同定することができる。化合物ライブラリーの各マイクロチャンバーへの適用は、各化合物をマイクロチャンバーに適用するためのスポッティング装置、あるいはインクジェット印刷などの公知の手法により行うことができる。多種類の物質を所定の間隔で並べる手法は、DNAチップ、RNAチップ、プロテインチップなどの各種チップの製造においても使用され、本発明はこのような公知の手法を使用することができる。多種類のサンプルを微量分注できる装置としては、超音波方式でマルチウェルプレート(96〜1536、3456ウェル)に容量10nl程度で分注する装置が、http://www.labcyte.com/に記載され、ポジティブディスプレイスメント(極小ピペットによる)方式で、多くのウェルに50nl程度の容量で分注する装置は、http://www.bio-lab.jp/screening/nano/index.htmlに記載されている。
レセプターは、使用される真核細胞由来であっても他の真核細胞由来であっても、いずれでもよいが、好ましくは哺乳類由来、特にヒト由来である。レセプターとしては、たとえば(1)三量体Gタンパク質共役型(7回膜貫通型):N末端を細胞外にC末端を細胞内に向けて7個の疎水性部が細胞膜を貫通する構造をとり、アセチルコリン、ノルアドレナリンなどの化学物質、光(ロドプシン)などを認識して、Gタンパク質を活性化し、種々のエフェクター分子にシグナルを伝達する;(2)レセプター型キナーゼ:1回膜を貫通し、細胞質内のC末端側がプロテインキナーゼ活性を有し、アゴニストによって酵素が活性化され、標的タンパク質をリン酸化することによってシグナルを伝達する;(3)サイトカインレセプター型:1回膜を貫通するが、特定の機能を持たず、共役する他のタンパク質を活性化してシグナルを伝達する;(4)イオンチャネル型:透過物質の濃度勾配に応じて、イオン透過を媒介する膜タンパク質であり、その開閉の制御様式によって、大きく2種類に分けられる。
これらの他にもその開閉制御様式により、さらに4種が例示される。他タンパクからのリン酸化シグナルによるリン酸化依存性チャネル、内耳の有毛細胞などに発現が見られるチャネル分子に機械的変形が関わると開く力学的変形依存性チャネル、温度による温度依存性チャネル、通常開いており、少しずつ特定のイオンを漏らすように流す漏洩チャネルなどが例示される。
(5)トランスポーターは、物質の透過を制御する点でチャネルと類似する膜タンパク質であるが、その物質の濃度勾配に逆らった輸送(能動輸送)を行う事と、ATPあるいは能動輸送により生じたイオン勾配などのエネルギーを必要とする点でイオンチャネルとは異なる。トランスポーターはその透過する物質から、大きく4種類に分けられる。
(6)細胞外マトリックス、または細胞表面接着分子に結合する分子は、癌細胞の浸潤や定着を阻害する薬剤になる可能性がある。マイクロチャンバーにスクリーニングの標的となる細胞外マトリックス又は、細胞表面接着分子を固定化し、ランダム配列のペプチドライブラリーを表層に提示する酵母細胞がマイクロチャンバーに接着することを指標としてスクリーニングを実施することにより、細胞外マトリックス、または細 胞表面接着分子に結合するペプチドを得ることができる。細胞接着における分子間相互作用は大きく分けて2種類がある。
などが挙げられる。好ましいレセプターは、レセプター型キナーゼである。自己リン酸化型レセプター(レセプター型キナーゼ)に対するアゴニスト/アンタゴニストのハイスループットスクリーニング系は、本発明により初めて確立された。
スライドグラスサイズ(25mm×75mmまたは1インチ×3インチ)のスライド表面に、細胞のサイズに合わせたサイズで、数千〜数百万のマイクロチャンバーが形成されている。細胞懸濁液をマイクロピペットでアプライすることで、各マイクロチャンバーに細胞が1個(条件によっては、10個未満、例えば2個、あるいは3個ないし数個)入るように設計されている。(細胞種によっては、超音波や遠心法を用いることで、1マイクロチャンバーに正確に1細胞だけ入れることも可能)
蛍光顕微鏡をベースとした検出機構が、チップ表面の自動フォーカス後、マイクロチャンバー(マイクロチャンバーに入っている細胞)の蛍光画像を取得(図C)。
各マイクロチャンバー座標の蛍光値を解析し、解析結果をヒストグラム(縦軸:マイクロチャンバー数、横軸:蛍光値)として表示する(図D)。
所望の蛍光値を持つ細胞を、解析部のヒストグラムから範囲指定すると、自動的にマニピュレータによって吸引され、マルチウェルプレートへ吐出・回収される。細胞の吸引・吐出にはキャピラリが好ましく使用され、細胞をマニピュレータ内に残さないように吐出できることが実験により確認されている。
1:gp130を共有するレセプター
IL6R、IL-11R、LIFR、CNTFR、OSMR、CT-1Rなど。
2:βcを共有するレセプター
IL-3R、IL5R、GM-CSFRなど。
3:自己リン酸化作用を有するレセプターのリガンド
Alkを含むAlkRファミリー、Axlを含むAxlRファミリー、DDR1を含むDDRファミリー、EGFRを含むEphRファミリー、EphA1を含むEphARファミリー、EphB1を含むEphBRファミリー
、FGFR1を含むFGFRファミリー、IFG-1Rを含むIRファミリー、Metを含むMetRファミリー、MuSKを含むMuSKRファミリー、TrkAを含むニューロトロフィンRファミリー、PDGFR-αを含むPDGFRファミリー、RETを含むRETRファミリー、Ror1を含むRorRファミリー、Rykを含むRykRファミリー、Sevを含むSevRファミリー、Tie1を含むTieRファミリー、VEGFR-1を含むVEGFRファミリーなど。
1:GFP発現誘導を利用したアンタゴニストのスクリーニング
図2に模式図を示した。レセプターが不活性化している時にのみ、酵母内在性遺伝子で活性化している遺伝子、つまりレセプター活性化時には、ダウンレギュレートしている遺伝子を見つけ、プロモータ下流にGFP遺伝子を導入する。アゴニストにより活性化しているレセプターが、アンタゴニストにより不活性化すると、GFPの発現が誘導されるシステムを構築する。レセプターを最初から活性化しておく必要があり、その方法として以下が考えられる。
(3)常活性型レセプターを用いる。
図3に模式図を示した。参考;Bo Li et al. Nat. Methods (2007) 4, 169-を改変。
(a)前提条件・・・使用する酵母はCanavanine耐性(can1-100など)であること。
(b)レセプターを最初から活性化しておき、アンタゴニストの作用によりCAN1遺伝子の発
現が抑えられるようにするため、その方法として以下が考えられる。
(3)常活性型レセプターを用いる。
(1)人工的な系としてSplit-Ubシステムを用い、レポーターとして『(lexAop)+最小プロモータ』下流にCAN1遺伝子を導入する。
図4に模式図を示した。熱感受性を利用したアゴニストのスクリーニングを改変。
(a)前提条件・・・使用する酵母はRASの活性化因子であるCDC25が熱感受性であること。
(b)レセプターを最初から活性化しておき、アンタゴニストの作用により熱感受性に戻るようにするため、以下の方法が挙げられる。
(3)常活性型レセプターを用いる。
4:FRETの緩和を利用したアンタゴニストのスクリーニング
図5に模式図を示した。アゴニストが作用した時にのみレセプターが離れ、FRETの緩和が生じる。
1細胞ピッキング装置の応用例
1:動物細胞表層に提示するペプチド
N末端側に分泌シグナル配列、C末端側に細胞膜相互作用部位を持つポリペプチドが挙げられる。リガンドとレセプターのいずれもがこの条件に当てはまる。
1-1:N末端側分泌シグナル配列
抗体、サイトカイン、増殖因子などの体液性タンパク質の分泌シグナルや1回膜貫通型レセプターの分泌シグナルを用いることができる。分泌シグナル配列としては、細胞膜貫通型や小胞体膜貫通型のものが好適である。
1-2:C末端側細胞膜相互作用領域
細胞膜相互作用部位としては、レセプターの膜貫通領域とグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーがあげられる。レセプターの膜貫通領域としては、1回膜貫通型レセプターの細胞膜貫通領域が好適である。また、C末端側にGPI修飾を付加するためには、GPIアンカー型タンパク質のGPIアンカー修飾部位の配列を用いることが好適である。
一部にランダム配列を含むポリペプチドを用いる。ヘリックス‐ループ‐ヘリックスなどの高次構造をもつものが好適に例示できる
ペプチド配列についての特許としては、特開2005−154382、特開2005−151921、特開2000−327697、特開平10−245397などが挙げられる。
細胞集団から特定の細胞を分取するためには、これまでフローサイトメーターを応用したセルソーター(FACS)が用いられてきた。セルソーターでは、高速性は確保されている半面、その高速性が原因となり目的細胞以外の細胞が混入する可能性があるという問題とソーティングにおいて細胞へダメージを与えるという問題があった。1細胞ピッキング装置は、静置した細胞を分取するという原理のために、目的以外の細胞の混入が無く、細胞へのダメージが少ないという利点がある。具体的には、FACSにおける細胞ダメージは、急激な圧力変化(1→7→1気圧)と高い流速(30m/秒)で分取用のチューブに注ぎ込まれるという条件による。1細胞ピッキング装置は、FACSよりも高確率で標的細胞を分取できるだけでなく、機器の構造上から細胞分取にあたって急激な圧力変化と高い流速をともなわないことから細胞に悪影響を及ぼさない。
1:動物細胞を用いたアゴニストペプチドのスクリーニング
目的のレセプターを発現する動物細胞にライブラリーペプチド遺伝子を導入して発現させ、ライブラリーペプチドを細胞膜上の細胞外側部分に提示する。提示されたペプチドが目的レセプターと結合したときに、アゴニストとして作用した場合の細胞内シグナル伝達を検出することにより、ペプチドライブラリーからアゴニスト活性をもつペプチドをスクリーニングする。検出する細胞内シグナルは、レセプターやアダプタータンパク質のチロシンリン酸化が好適である。
2:動物細胞を用いたアンタゴニストペプチドのスクリーニング
アンタゴニストペプチドを得たい場合には、あらかじめアゴニストを動物細胞で細胞膜上に安定発現させたり、常活性型レセプターを安定発現させたりしておき、この細胞にペプチドライブラリー遺伝子を導入してライブラリーペプチドを細胞膜上の細胞外部分に提示して、そのペプチドが目的レセプターと結合したときに、標的レセプターのシグナル伝達が抑制されることを指標として、スクリーニングを行うことにより、アンタゴニストペプチドを得ることができる。あるいは、ペプチドライブラリー遺伝子を導入してライブラリーペプチドを細胞膜上の細胞外部分に提示し、培地中にアゴニスト添加した時にシグナル伝達が抑制されていることを指標としてスクリーニングしてもよい。前記のアゴニストを表層提示させておく方法、およびアゴニストを後から培地中に加える方法のいずれにおいても、アゴニスト量がアンタゴニスト量よりも少ない方が、アンタゴニストによるシグナル伝達が抑制効果を大きくするために望ましい。
サイトカイン、増殖因子タンパク質、合成化合物が既知のもので、レセプターが未知な場合のレセプターのスクリーニング方法を提供する。サイトカイン、増殖因子タンパク質、合成化合物などを、レセプター遺伝子のライブラリーを導入した細胞に作用させ、細胞内シグナル伝達が惹起されるレセプターをスクリーニングする。またサイトカイン、増殖因子タンパク質を用いる時には、これらのタンパク質のC末端側に細胞膜相互作用部位を付加したものを動物細胞で安定発現させ、これにレセプター遺伝子のライブラリーを導入し、細胞内シグナル伝達が惹起されるレセプターをスクリーニングする。
チロシンキナーゼ型のレセプターについては、自己リン酸化を特異的抗体により検出する。チロシンキナーゼ型以外の1回膜貫通型レセプターについては、アダプタータンパク質のチロシンリン酸化を特異的抗体により検出することが好適である。Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)は、Gタンパク質とGPCRの相互作用をFRETにより検出する方法、アレスチンとGPCRの相互作用をアレスチン融合プロテアーゼと転写因子融合GPCRを用いて検出する方法があげられる。
遺伝子治療では、遺伝子導入に伴い癌化した細胞を細胞集団から確実に除去することが重要である。Ex vivoにおける遺伝子治療において癌化した細胞をFACSにより除去する場合には、癌細胞を完全に除去できないという問題とソーティングにおいて細胞へダメージを与えるという問題があった。また、iPS細胞の作出時、iPS細胞からの分化時において癌化した細胞が現れてしまうという問題点が指摘されている。これらの問題は、癌細胞に特異的に高発現しているタンパク質を免疫染色して、1細胞ピッキング装置により細胞集団から癌細胞を除去することにより解決できる。癌細胞特異的な高発現タンパク質としては、悪性黒色腫におけるMAGE、乳癌などにおけるHER2/neu、大腸癌におけるCEA、各種白血病や各種癌におけるWT1など多数報告されている。
本発明における分泌タンパク質またはペプチドは、天然の細胞が分泌するものであってもよく、遺伝子工学操作または/および細胞工学操作によって改変された真核細胞によって強制的に発現させられ、分泌するものであってもよいものとする。
(i) 分泌タンパク質もしくはペプチドを捕捉する結合分子を、真核細胞の表面に提示させることのできる分子と融合させる工程、
(ii) 上記の(i)の工程によって作製した結合分子を、真核細胞と結合させて該細胞の表面に提示する工程、
(iii) 上記の(ii)の工程によって作製した真核細胞を、マイクロチャンバーに播き、マイクロチャンバー内に導入する工程、
(iv) 上記の(iii)の工程によって真核細胞が導入されたマイクロチャンバーに、分泌タンパク質もしくはペプチドを標識する試薬を添加する工程、
(v) 上記の(iv)の工程の後、検出装置によって標識シグナルを検出し、高い分泌産生能力を有する細胞を決定し、検出装置と連動したマニュピュレータによって自動的に回収する工程、
によって実施される。
(i) 真核細胞を導入するマイクロチャンバーの内壁と、特定分子を補足する結合分子を融合させる工程、
(ii) 上記の(i)工程によって処理されたマイクロチャンバーに真核細胞を導入する工程、
(iii) 上記の(ii)の工程のによって真核細胞が導入されたマイクロチャンバーに、分泌タンパク質もしくはペプチドを標識する試薬を添加する工程、
(iv) 上記の(iii)の工程の後、検出装置によって標識シグナルを検出し、高い分泌産生能力を有する細胞を決定し、検出装置と連動したマニュピュレータによって自動的に回収する工程、
によっても実施される。
B細胞は、細胞ごとに産生する抗体の種類が決まっており、モノクローナル抗体を作成するときには、目的抗原と結合する抗体を産生するB細胞のスクリーニングが必須のステップである。これまでの方法では、B細胞の産生する抗体の量が少ないという問題があることから、B細胞と株化細胞のハイブリドーマを形成させることにより、スクリーニングに供することのできる抗体量を産生させてから、ハイブリドーマ化したB細胞のスクリーニングを行っていた。1細胞ピッキング装置では、顕微鏡観察が自動化されてハイスループット化されていることから、目的抗原に反応するB細胞、つまり目的抗原と交差反応する抗体を産生しているB細胞をハイブリドーマ形成の過程を経ずに直接スクリーニングすることができる。交差反応のスクリーニング方法は、2種類あげられる。1.抗原タンパク質が存在するとB細胞の細胞内カルシウムイオン濃度が変化する。このカルシウムイオン濃度の変化を、カルシウムイオン特異的なケージド化合物の蛍光スペクトル変化により可視化する方法。2.蛍光標識した抗原物質をB細胞集団に添加して、特異的な抗体を産生するB細胞を間接的に蛍光標識する方法。得られたB細胞からRT-PCRにより抗体遺伝子を回収し、抗体遺伝子発現用ベクターにクローニングする。また、従来のハイブリドーマのスクリーニングにおいても、1細胞ピッキング装置を用いることは、単細胞からスクリーニングできるという点と自動でスクリーニングをできるという2つの利点がある。
再生医療や分化の研究において、細胞集団から特定の幹細胞を分取することは重要なステップである。しかしながら、従来のFACSを用いた分取では、細胞にダメージを与えて、細胞死や細胞分化能の消失を招くことが問題となる。また、分化後の細胞の分取においても、細胞死が問題となる。これらの問題は、1細胞ピッキング装置を用いて穏やかな条件下で分取することにより解決できる。
上記のように本発明のシステムまたは方法を用いることによって、様々な機能を有する細胞を1細胞単位で検出し、更にピックアップすることが可能となる。しかしながら、細胞をピックアップする段階においては、該細胞が培地や緩衝液などの溶液中に浮遊した状態であることが望ましい。従来、細胞の培養方法においては浮遊培養方法と接着培養方法がある。真核細胞の中でも特に哺乳動物細胞の中には、接着しないとアポトーシスが誘導される細胞種も多く、このような細胞種に対しては接着培養が望ましい。さらに、上記の例で挙げたスクリーニング例では新規医薬ターゲットの探索および創出と言う目的を達成するために、接着培養細胞に適した細胞を用いることがある。そこで、接着培養を浮遊させる方法としては、EDTAなどの緩衝液と共にトリプシンやディスパーゼなどの酵素よりを行うことが採用される。
(i) 回収対象となる接着真核細胞をあらかじめマイクロチャンバー上に導入する工程、
(ii) 上記の(i)の工程によって導入された真核細胞をマイクロチャンバー上で接着培養する工程、
(iii) 上記の(ii)の工程によって培養した真核細胞と標識化された結合分子を作用させ、複合体を形成させる工程、
(iv) 上記の(iii)の工程によって処理された真核細胞のうち、結合分子の標識シグナルを検出することで回収対象細胞を決定する工程、
(v) 上記の(iv)の工程によって決定されたマイクロチャンバー内の回収対象細胞に対して酵素を作用させて細胞を浮遊させる工程、
(vi) 上記の(v)の工程によって培地もしくは緩衝液などの溶液中に浮遊する細胞を、検出装置と連動したマニュピュレータによって自動的に回収する工程、
によって本発明のシステムは実施される。
(i) 常法に従い接着真核細胞を培養する工程、
(ii) 上記の(i)の工程によって培養した真核細胞と標識化された結合分子を作用させ、複合体を形成させる工程、
(iii) 上記の(ii)の工程の後、結合分子を細胞内に取り込ませる工程、
(iv) 上記の(iii)の工程によって真核細胞内に取り込まれた結合分子の標識に基づく蛍光シグナルを検出して回収対象細胞を決定し、検出装置と連動したマニュピュレータによって自動的に回収する工程、
があげられる。
マルチウェルプレートを用いたマイクロインジェクション従来技術では、細胞の位置決めが難しかったが、マイクロチャンバーで細胞を補足することにより、マイクロインジェクションが容易になる。同様の機器としては、富士通株式会社製セルインジェクターCI-2000があるが、高密度に培養された接着細胞にCI-2000を用いる場合、細胞の形状認識機能が誤作動し、正確に細胞へキャピラリ針を挿入できない。
1-1: EGFR、IL5Rα、IL6Rαの発現プラスミドの構築
ヒト由来EGFR、IL5Rα、IL6Rαのそれぞれをコードする遺伝子を用いて、pGMH20-MFα-FLAG-EGFR、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rαを構築した。
酵母の分泌タンパク質MFα1のPrepro配列(MFα)(J. Bacteriol., 903-906頁, 1983年)をコードする遺伝子を鋳型としたPCRにより、Prepro配列をコードする遺伝子の3’側にFLAGタグ配列をコードし、かつ両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pGMH20(GAL1p、HIS3)に挿入して、pGMH20-MFα-FLAGを得た。
PCRにより、成熟型EGFR、IL5Rα、IL6Rαをコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片をそれぞれ得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、pGMH20-MFα-FLAGに挿入して、pGMH20-MFα-FLAG-EGFR、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rαを得た。
種々の酵母株に適したEGFRの酵母発現系を検討するため、pBT3-SUC-EGFR-V5、pPR3-SUC-EGFR、pYES3-SUC-EGFR-V5を構築した。
PCRにより、成熟型EGFRをコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pPR3-SUC(ADH1p、TRP1)(MoBiTec社)に挿入して、pPR3-SUC-EGFRを得た。また、同EGFR遺伝子断片のC末端側にV5タグを付加するように設計された遺伝子断片と共に、pBT3-SUC(CYC1p、LEU2) (MoBiTec社)に挿入して、pBT3-SUC-EGFR-V5を得た。
pBT3-SUC-EGFR-V5を鋳型としたPCRにより、酵母の分泌タンパク質SUC2の分泌シグナル配列(Mol. Cell. Biol., 1812-1819頁, 1986年)をコードする遺伝子の3’側にEGFRおよびV5タグ配列をコードし、かつ両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pYES3(GAL1p、TRP1)(Invitrogen社)に挿入して、pYES3-SUC-EGFR-V5を得た。
ヒト由来βcおよびgp130をコードする遺伝子を用いて、pGMT20-MFα-βcおよびpGMT20-MFα-gp130を構築した。
MFα1のPrepro配列をコードする遺伝子を鋳型としたPCRにより、Prepro配列をコードする遺伝子の3’側にHAタグ配列をコードし、かつ両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pGMT20(GAL1p、TRP1)に挿入して、pGMT20-MFα-HAを得た。
PCRにより、成熟型βcおよびgp130をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片をそれぞれ得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、pGMT20-MFα-HAに挿入し、pGMT20-MFα-HA-βcおよびpGMt20-MFα-HA-gp130を得た。
マウス由来JAK2をコードする遺伝子を用いて、pAUR123-V5-JAK2およびpAURGAL1p-V5-JAK2を構築した。
pAUR123(ADH1p、AUR1-C)を制限酵素にて消化し、V5タグ配列をコードする遺伝子を挿入して、pAUR123-V5を得た。
PCRにより、GAL1pをコードする遺伝子の増幅断片を得て、pAUR123からADH1pを欠失した遺伝子をコードする増幅断片を得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、連結することによってpAURGAL1pを得た。さらに、pAURGAL1pを制限酵素にて消化し、V5タグ配列をコードする遺伝子を挿入して、pAURGAL1p-V5を得た。
PCRにより、JAK2をコードする増幅断片を得た。この増幅断片の3’側にアデニンを付加し、pGEM T-Easyベクターに挿入して、pGEM-JAK2を得た。
pGEM-JAK2を鋳型としたPCRにより、JAK2をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pAUR123-V5およびpAURGAL1p-V5に挿入して、pAUR123-V5-JAK2およびpAURGAL1p-V5-JAK2を得た。
ヒト由来STAT5aをコードする遺伝子を用いて、pGML10-myc-STAT5aΔC-VP16を構築した。
PCRにより、STAT5aのC末端側85アミノ酸に相当する配列を欠失させたSTAT5a変異体(STAT5aΔC)をコードする遺伝子の5’側にmycタグ配列をコードした遺伝子を付加し、かつ両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片の3’側にアデニンを付加しpGEM T-Easyベクターに挿入して、pGEM-myc-STAT5aΔCを得た。また、PCRにより、VP16をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pGEM-myc-STAT5aΔCに挿入して、pGEM-myc-STAT5aΔC-VP16を得た。
pGEM-myc-STAT5aΔC-VP16を鋳型としたPCRにより、myc-STAT5aΔC-VP16をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。この増幅断片を制限酵素にて消化し、pGML10ベクター(GAL1p、LEU2; Biotechniques. 1998 Dec;25(6):936-8.)に挿入して、pGML10-myc-STAT5aΔC-VP16を得た。
ヒト由来EGF、IL5、IL6、Helix-Loop-Helixランダムペプチドライブラリー(HLH)をコードする遺伝子を用いて、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42、pYES2-MFα-HA-IL5-FLO42、pYES2-MFα-HA-IL6-FLO42、pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を構築した。
PCRにより、MFα1のPrepro配列をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片および酵母の細胞壁アンカーリングタンパク質 FLO42(Appl. Microbiol. Biotechnol., 469-474頁, 2002年)をコードする遺伝子の両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片をそれぞれ得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、pYES2(GAL1p、URA3)(Invitrogen社)に挿入して、pYES2-MFα-FLO42を得た。
PCRにより、成熟型EGF、IL5、IL6をコードする遺伝子の5’側にHAタグ配列をコードし、かつ両末端に制限酵素部位を付加した増幅断片をそれぞれ得た。同じく、(特許文献2)に従いPCRにより、HLHをコードする遺伝子の3’側にFLAGタグ配列をコードし、かつ制限酵素部位を付加した増幅断片を得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、pYES2-MFα-FLO42に挿入して、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42、pYES2-MFα-HA-IL5-FLO42、pYES2-MFα-HA-IL6-FLO42、pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を得た。
ヒト由来Grb2およびShc1をコードする遺伝子を用いて、pSos-Grb2およびpSos-Shc1を構築した。
PCRにより、Grb2およびShc1をコードする遺伝子の両末端側に制限酵素部位を付加した増幅断片をそれぞれ得た。これらの増幅断片を制限酵素にて消化し、pSos(AHD1p、LEU2)に挿入して、pSos-Grb2およびpSos-Shc1を得た。
2-1: EGFRの自己リン酸化検出によるスクリーニング例
哺乳類細胞において、EGFRはEGFの結合により自己リン酸化する。実施例2-1では、酵母においてHLHライブラリーを表層提示し、EGFRの自己リン酸化を検出することによって、アゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
一回膜貫通型シグナル伝達再構成に適した酵母を選定するため、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4741株、BY4741ΔTRP1株、W303-1A株、W303-1B株、cdc25Ha株、cdc25Hα株、BJ5464株、NMY51株、BY2973株、BY3554株、BY4080株、BY4082株、BY4624株、BY5209株、BY21396株、BY21467株、BY20272株、BY8515株、BY20173株を入手した。各酵母株の遺伝子型を表1に示す。
直径2〜3 mmに生育した酵母形質転換体のコロニーを3 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に植菌して30℃、200 rpmでOD600=1.0〜1.5まで前培養し、10 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地に初期OD600=0.2になるよう植菌して30℃、200 rpmでOD600=0.6〜2.0まで本培養した。本培養後必要に応じて、20 mM HEPES (pH 7.0)を加えた適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地中で、さらに1時間培養した。
実施例2-1-2で得られた酵母形質転換体を培養後、遠心にて回収し、200μLの溶解液(50 mM Tris-HCl(pH7.3), 150 mM NaCl, 1% Triton X-100, 1 mM EGTA, 2 mM DTT, CompleteTM protease inhibitor cocktail tablet(Roche社)1個/10 mL)に懸濁し、グラスビーズあるいは自動破砕装置(Tokken社)で破砕して酵母粗抽出液を得た。遠心して上清(細胞質)画分および沈殿(細胞壁)画分に分離し(YEAST, 399-409頁, 1993年)、上清画分にSDS(終濃度0.5%)および2-メルカプトエタノール(終濃度1%)を添加した。沈殿画分には上清画分と等量の溶解液に再懸濁し、SDS(終濃度0.5%)および2-メルカプトエタノール(終濃度1%)を添加した。それぞれの画分を98℃で15分間煮沸し、N-Glycosidase(終濃度1 U/μL)およびO-Glycosidase(終濃度0.5 mU/μL)を添加後、37℃、30分間静置して反応をローディングバッファーでストップした。サンプルを抗FLAGマウスモノクローナル抗体および抗V5マウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図6に示す。
EGFRの検出をより容易にするために、ADH1pを有するpBT3-SUC-EGFR-V5の代わりにGAL1pを有するpYES3-SUC-EGFR-V5を用いた。BJ5464株にプラスミドpYES2-MFα-FLO42、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42、pYES3、pYES3-SUC-EGFR-V5を酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体BJ5464/pYES2-MFα-FLO42/pYES3、BJ5464/pYES2-MFα-FLO42/pYES3-SUC-EGFR-V5、BJ5464/pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42/pYES3-SUC-EGFR-V5を、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。実施例2-1-4で示したようにタンパク質を抽出し、抗V5マウスモノクローナル抗体および抗HAマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図7に示す。
EGF-FLO42の細胞壁への局在を観察するために、以下に記したとおり酵母形質転換体を標識した。実施例2-1-5で得られた酵母形質転換体を培養後回収して一次抗体として抗HAマウスモノクローナル抗体を添加し、1時間反応後に洗浄した。さらに二次抗体としてAlexa488標識した抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体を添加し、30分間反応後に洗浄して酵母蛍光サンプルを得た。
実施例2-1-5で得られた酵母形質転換体の細胞壁を除去し、一次抗体としてEGFRのアミノ酸の1068、1148、1173番目のそれぞれのリン酸化チロシンを認識する抗EGFR pY1068マウスモノクローナル抗体、抗EGFR pY1148ラビットポリクローナル抗体、抗EGFR pY1173ゴートポリクローナル抗体を添加し、1時間反応後に洗浄した。さらに二次抗体としてAlexa488標識した抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体、抗ラビットIgGゴートポリクローナル抗体、抗ゴートIgGドンキーポリクローナル抗体をそれぞれの一次抗体に対し適宜添加し、30分間反応後に洗浄してフローサイトメーターおよび共焦点レーザー顕微鏡による解析を行った。結果を図9に示す。
陽性酵母を1細胞ピッキング装置を用いて回収し、一細胞PCRによりEGF遺伝子が同定できるかどうか検討した。実施例2-1-7で得られた酵母蛍光サンプルをマイクロチャンバー上に蒔き、1細胞ピッキング装置を用いて6陽性酵母を回収し、80μLのMilliQを入れた96-ウェルPCRプレートの6ウェルに吐出した。このPCRプレートを乾燥機にて80℃で約3時間乾燥させ、Nested & Touch dowon PCRを行った。結果を図10に示す。
pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を用いたEGRシグナルのアゴニストのスクリーニングをするにあたり、より大きなプラスミドサイズを有するpYES2-MFα-HA-EGF-FLO42を用いて、プラスミドの導入効率の検討を行った。酵母形質転換体BJ5464/pYES3-SUC-EGFR-V5を100 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地にて、30℃、200 rpmで16時間前培養した。300mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に初期OD600=0.15となるように前培養液を加え、30℃、200 rpmでOD600=0.6になるまで本培養した。培地量とプラスミド量の最適化をはかるため、本培養した菌体を回収後、6本の15-mLチューブに分注し、酢酸リチウム法により100 mL培養あたり、0.5、5.0、50μgのpYES2-MFα-HA-EGF-FLO42を導入した。また、プラスミドの取り込みに適した温度および静置時間を検討するため、25℃および42℃のそれぞれの温度において15、30、60、120、180分間静置した。結果を図11に示す。
表2を参考に、500 mL培養および250μgのpYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を用いて、ライブラリーの導入を行った。実施例2-1-9に従って、pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体BJ5464/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pYES3-SUC-EGFR-V5を適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地に得た。この時のコロニー数は5x106個であり、必要とされるインディペンデントクローン数が網羅された。プレート上の全てのコロニーをかきとって1つにまとめグリセロールストックを作成し、2-mLチューブに、1 mLずつ分注して-80℃に保管した。また、この時の酵母細胞数をカウントしたところ、グリセロールストック1 mLあたり、2.88x109細胞が含まれていた。
BJ5464/pYES2-HLH-FLAG-FLO42/pYES3-SUC-EGFR-V5のグリセロールストック100 μL(2.88x108細胞)を100 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に添加して初期OD600=0.16であることを確認した。菌体を30℃、200 rpmで8時間前培養し、100 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地に初期OD600=0.16で植菌して30℃、200 rpmでOD600=2.0まで本培養した。本培養後、20 mM HEPES(pH7.0)を加えた適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地でさらに1時間培養し、実施例2-1-6に示した方法に従い、抗FLAGマウスモノクローナル抗体およびAlexa488標識した抗マウスIgGゴートポリクローなる抗体を用いて標識し、HLHの局在を共焦点レーザー顕微鏡により観察した。また、細胞壁を除去した後、実施例2-1-6のように、抗V5マウスモノクローナル抗体を用いて標識し、フローサイトメーターによりEGFRの発現の確認をした。結果を図12に示す。
実施例2-1-11のように培養した酵母を回収して細胞壁を除去した後、抗EGFR pY1173ゴートポリクローナル抗体を用いて標識し、1細胞ピッキング装置を用いて陽性酵母を80μLのMilliQを添加した96-ウェル PCRプレートに回収した。回収した陽性酵母について、以下に示す要領でNested&Touch dowon PCRを行った。ウェルに1st PCR反応液(10xKOD-Plus- buffer 0.5μL, 2 mM dNTPs 0.5μL, 25 mM MgSO4 0.2μL, 1μM 5’-primer(i) 0.3μL, 1μM 3’-primer(ii) 0.3μL, DMSO 0.25μL, 滅菌水2.85μL, Kod -Plus- 0.1μL)を加え、Touch down cycleについては、Preheat 94℃(5 min)→Denature 94℃(60sec)Annealing 73〜61℃(-1℃/cycle, 20 sec)→Extention 68℃(90 sec)でPCRを行い、引き続きDenature 94℃(60 sec)→Annealing 64℃(30 sec)→Extention 68℃(90 sec)x45 cycles→Final extention 68℃(7 min)でPCRを行った。反応後、1st PCR反応液に、2nd PCR反応液(10xKOD-Plus-buffer 1μL, 2 mM dNTPs 1μL, 25 mM MgSO40.4μL, 10μM 5’-primer(iii) 0.3μL, 10μM 3’-primer(iv) 0.3μL, DMSO 0.5μL, 滅菌水6.3μL, Kod-Plus-0.2μL)を加え、Touch down cycleについては、Preheat 94℃(2 min)→Denature 94℃(60 sec)→Annealing 77〜63℃(-1℃/cycle, 20 sec)→Extention 68℃(15 sec)でPCRを行い、引き続きDenature 94℃(60 sec)→Annealing 66℃(30 sec)→Extention 68℃(15 sec)x45 cycles→Final extention 68℃(7 min)でPCRを行った。1細胞ピッキング装置による陽性酵母の回収像、用いたPrimerの配列、1細胞PCRの結果を図13に示す。
実施例2-1-12で得られたHLH-FLAGをコードする遺伝子断片を、pET102-TOPOベクター(Invitrogen社)に挿入し、プラスミドpET102-HLH-FLAGを得て、シーケンスにより配列を決定した。このプラスミドから発現されるタンパク質はNアミノ末端側に発現タンパク質の可溶性度を上昇させ、さらにNiやCoと結合能を有するヒスパッチ-チオレドキシン(TrxHP)およびCアミノ末端側にV5とヘキサヒスチジン(His6)からなるタンデムタグが付加されるため、NiやCo担体を用いたアフィニティー精製が可能である。このプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、Ampを含むLB寒天培地上に大腸菌形質転換体を得て、Overnight Express Autoinduction System(メルク社)を用いて培養した。発現したタンパク質(TrxHP-HLH-FLAG-His6)を96-ウェルCo-キレート担体プレート(Takara社)を用いてアフィニティー精製し、SDS-PAGEおよびCBB染色により発現および精製の確認を行った。結果を図14に示す。
実施例2-1-13で得られた精製TrxHP-HLH-FLAG-His6の12種類について、哺乳類細胞のEGFシグナルを作動させるかどうか検討した。EGFRを過剰発現する扁平上皮癌由来A431細胞を血清成分不含の培地中で20時間静置培養し、50 nMの精製アゴニストを添加し、5分後培地を廃棄して、溶解液(50 mM Tris-HCl(pH7.3), 150 mM NaCl, 1% Triton X-100, 1 mM EGTA, 1 mM DTT, 1 mM Na3VO4, Phosphatase inhibitor cocktail(シグマ社)1/100量, CompleteTM protease inhibitor cocktail 1個/50 mL)に懸濁した。これらのサンプルを抗EGFR pY1173抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図15に示す。
自己リン酸化したEGFRは、Grb2およびShc1などのアダプタータンパク質を細胞膜近傍にリクルートする。これらのアダプタータンパク質は、Sos(細胞増殖因子Rasの活性化因子)をさらにリクルートし、細胞増殖を促進する。哺乳類由来のSosは、酵母由来Rasも活性化すると知られており、このことを利用して酵母の増殖シグナルを活性化するスクリーニングシステムを構築し、アゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
熱感受性酵母cdc25Ha株にプラスミドpYES2-MFα-FLO42、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42、pGMH20、pGMH20-MFα-FLAG-EGFR、pSos、pSos-Grb2、pSos-Shc1を酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20/pSos、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Grb2、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Grb2、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Shc1、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Shc1を、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。
直径2〜3 mmに生育した酵母形質転換体のコロニーを3 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に植菌して25℃、200 rpmでOD600=1.0〜1.5まで前培養し、10 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地に初期OD600=0.2になるよう植菌して25℃、200 rpmでOD600=0.6〜2.0まで本培養した。
実施例2-2-1で得られた酵母形質転換体を培養後、実施例2-1-4で示したようにタンパク質を抽出し、抗FLAGマウスモノクローナル抗体、抗HAマウスモノクローナル抗体、抗Sosマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図16に示す。
実施例2-2-1で得られた酵母形質転換体を培養後、実施例2-1-6と同様の方法で、抗FLAGマウスモノクローナル抗体および抗HAマウスモノクローナル抗体を用いて標識し、蛍光顕微鏡による観察を行った。結果を図17に示す。
酵母に発現させたそれぞれのタンパク質EGF-FLO42、EGFR、Sos-Grb2、Sos-Shc1が機能すれば、熱感受性酵母であるcdc25Ha株が37℃において増殖可能になると期待される。実施例2-2-1で得られた酵母形質転換体を培養後、培養液原液、10、100、1000倍希釈、あるいは4、16、64倍希釈して、適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal寒天培地上に10μlずつ滴下し、25℃および37℃で14日間培養した。結果を図18に示す。
実施例2-1-9と同様に、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42を用いて、プラスミドの導入効率の検討を行った。酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Grb2を100 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地にて、25℃、200 rpmで16時間前培養した。50 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に初期OD600=0.15となるよう前培養液を加え、25℃、200 rpmでOD600=0.6になるまで本培養した。培地量とプラスミド量の最適化をはかるため、本培養した菌体を回収後、3本の15-mLチューブに分注し、酢酸リチウム法により150 mL培養あたり、0.5、5.0、50μgのpYES2-MFα-HA-EGF-FLO42を導入した。また、プラスミドの取り込みに適した静置時間を検討するため、25℃において15、60、180分間静置した。
実施例2-2-6を参考に、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Shc1を培養してライブラリートランスフォーメーションを行い、得られた形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-EGFR/pSos-Shc1を、熱感受性を利用したスクリーニングに供したところ、新たなEGFシグナルのアゴニストを見出した。
哺乳類細胞においてEGFRは、EGFが結合すると、細胞膜上で二量体化することが知られている。酵母においてpBT3-SUCベクターより発現されるEGFRは、Cアミノ末端側にCub-LexA-VP16タンパク質が融合され発現される。一方、pPR3-SUCベクターより発現されるEGFRは、Cアミノ末端側にNubタンパク質が融合され発現される。EGFRが二量体化すると、CubとNubが酵母細胞質内で近接し、Cub-Nub近接高次構造を認識する酵母内在性のユビキチン加水分解酵素によりCubのCアミノ末端側直後が切断される。このことにより、LexA-VP16が遊離して酵母核内に移行し、レポーター遺伝子を活性化する。実施例2-3では、酵母においてHLHライブラリーを表層提示し、EGFRの二量体化をレポーター検出することによって、アゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
LacZ、HIS3、ADE2レポーター遺伝子がゲノムに組み込まれた酵母NMY51に、プラスミドpYES2-MFα-FLO42、pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42、pBT3-SUC-EGFR-V5、pPR3-SUC-EGFRを、酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体NMY51/pYES2-MFα-FLO42/pBT3-SUC-EGFR-V5/pPR3-SUC-EGFRおよびNMY51/pYES2-MFα-HA-EGF-FLO42/pBT3-SUC-EGFR-V5/pPR3-SUC-EGFRを、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。
実施例2-3-1で得られた酵母形質転換体を培養後、培養液原液、10、100倍希釈して、X-galおよび適切なアミノ酸を含むSD+GlcおよびSD+Raf/Gal寒天培地に10μlずつ滴下し、30℃において7日間静置培養した。結果を図20に示す。
酵母形質転換体NMY51/pBT3-SUC-EGFR-V5/pPR3-SUC-EGFR/pPR3-SUC-EGFRを培養してライブラリートランスフォーメーションを行い、得られた形質転換体NMY51/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pBT3-SUC-EGFR-V5/pPR3-SUC-EGFR/pPR3-SUC-EGFRを、EGFRの二量体化検出によるスクリーニングに供したところ、新たなEGFシグナルのアゴニストを見出した。
3-1: JAK2の自己リン酸化検出によるIL5シグナルのアゴニストのスクリーニング例
哺乳類細胞においてIL5シグナルは、IL5Rαおよびβc(IL5Rα/βc)からなるレセプター二量体と、細胞内においてβcと結合するJAK2からなるヘテロ三量体により構成される。IL5Rα/βcはIL5の結合により、細胞膜上でさらに多量体化し、この時JAK2の自己リン酸化を促す。実施例3-1では、酵母においてHLHライブラリーを表層提示し、JAK2の自己リン酸化を検出することによって、IL5シグナルのアゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
実施例2-1-1の酵母株のうち、cdc25Ha株、W303-1A株、BY4741ΔTRP1株、BY2973株、BY4082株、BY4624株に、プラスミドpGMH20、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMT20、pGMT20-HA-βcを酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20/pGMT20、cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-HA-βc、BY4741ΔTRP1/pGMH20/pGMT20、BY4741ΔTRP1/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-HA-βc、BY2973/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-HA-βc、BY4082/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-HA-βc、BY4624/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-HA-βcを、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。W303-1A株については、形質転換体が得られたものの、安定して増殖しないため使用しなかった。
直径2〜3 mmに生育した酵母形質転換体のコロニーを3 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に植菌して25℃および30℃、200 rpmでOD600=1.0〜1.5まで前培養し、10 mLの適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地に初期OD600=0.2になるよう植菌して25℃および30℃、200 rpmでOD600=0.6〜2.0まで本培養した。
実施例3-1-1で得られたそれぞれの酵母形質転換体を培養後、遠心にて回収し、実施例2-1-4に従って、抗FLAGマウスモノクローナル抗体および抗HAマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図21に示す。
IL5Rα/βcの局在を調べるため、実施例3-1-3でIL5Rα/βcの発現を確認した酵母形質転換体のうち、比較的レセプターの発現量の多いcdc25Haを用いて以下の実験を行った。cdc25Ha株に、プラスミドpGMH20、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMT20、pGMT20-MFα-HA-βc、pAUR123、pAUR123-V5-JAK2、pAURGAL1p、pAURGAL1p-V5-JAK2を、酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20/pGMT20/pAUR123-V5、cdc25Ha/pGMH20/pGMT20/pAUR123-V5-JAK2、cdc25Ha/pGMH20-MFα1-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAUR123-V5-JAK2、cdc25Ha/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5、cdc25Ha/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5-JAK2、cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2を、0.5μg/mlのオーレオバシジンA(TaKaRa社)を加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。実施例3-1-2のように培養した酵母形質転換体を、実施例2-1-6と同様の方法で、一次抗体として抗FLAGマウスモノクローナル抗体および抗HAラビットポリクローナル抗体を添加し、1時間反応後に洗浄した。さらに二次抗体としてCy3標識した抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体およびAlexa430標識した抗ラビットIgGゴートポリクローナル抗体を添加し、30分間反応後に洗浄して酵母蛍光サンプルを得て、蛍光顕微鏡による観察を行った。結果を図22に示す。
JAK2の発現を見るため、実施例3-1-4で得られた酵母形質転換体を培養し、実施例2-1-4に従って、抗V5マウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図23に示す。
JAK2の自己リン酸化が、精製IL5依存的に酵母内で起こるかどうか以下のように実施した。実施例3-1-4で得られた酵母形質転換体を培養し、OD600=2.0の時点で、精製IL5を添加してさらに1時間培養した。実施例2-1-6と同様の方法で、一次抗体として抗リン酸化JAK2ラビットポリクローナル抗体を添加し、1時間反応後に洗浄した。さらに二次抗体としてAlexa488標識した抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体を添加し、30分間反応後に洗浄した。得られた酵母蛍光サンプルを、フローサイトメーターによる解析および蛍光顕微鏡による観察を行った。結果を図24に示す。
実施例3-1-6により、JAK2の自己リン酸化を検出することによるIL5シグナル作動性アゴニストのライブラリースクリーニングが可能と思われた。そこで、表層提示型IL5依存的なJAK2の自己リン酸化の亢進が確認できるかどうかを検討するため、cdc25Ha/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5およびcdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2に、pYES2-MFα-FLO42およびpYES2-MFα-HA-IL5-FLO42を酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-IL5-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2を、0.5μg/mlのオーレオバシジンA(TaKaRa社)を加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。
実施例3-1-7で得られた酵母形質転換体を培養後、実施例2-1-4で示したようにタンパク質を抽出し、抗HAマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。また、実施例2-1-6のように、抗HAマウスモノクローナル抗体を用いて標識し、蛍光サンプルを蛍光顕微鏡にて観察した。結果を図25に示す。
実施例3-1-7で得られた酵母形質転換体を培養後、実施例2-1-4で示したようにタンパク質を抽出し、抗リン酸化JAK2マウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。また、細胞壁を除去した後、実施例3-1-6のように、抗リン酸化JAK2ラビットポリクローナル抗体を用いて標識した。得られた蛍光サンプルについて、フローサイトメーターによる解析および顕微鏡による観察を行った。結果を図26に示す。
表層提示型IL5依存的な、JAK2の自己リン酸化の亢進が見られたので、EGFRと同様、自己リン酸化したJAK2を認識する抗体を用いることによるライブラリースクリーニングが可能と思われた。cdc25Hα株に、酢酸リチウム法によりpYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を導入し、酵母形質転換体cdc25Hα/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得て、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2とのメイティング法によりHLHライブラリー遺伝子を導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2を、0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地に得た。得られた形質転換体を培養し、HLH、IL5Rα、βc、JAK2を発現させ、抗リン酸化JAK2ラビットポリクローナル抗体を用いて標識して酵母蛍光サンプルを得た。1細胞ピッキング装置を用いて、スクリーニングに供したところ、IL5シグナルのアゴニストを見出した。
自己リン酸化したJAK2は活性化し、βcをリン酸化する。リン酸化βcは、Shc1を細胞膜近傍にリクルートする。従って、実施例2-2で示したように、IL5系についても酵母の増殖シグナルを活性化するスクリーニングシステムを構築し、アゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
実施例3-1-7で得られた酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-IL5-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2に、pSosおよびpSos-Shc1を酢酸リチウム法を用いて導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p/pSos、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-IL5-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1を得た。
Sos-Shc1の発現を見るため、実施例3-2-1で得られた酵母形質転換体を培養後、遠心にて回収し、実施例2-1-4に従って、抗Sosマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図27示す。
実施例2-2-5で示したように、実施例3-2-1で得られた酵母形質転換体を前培養し、ガラクトースを含む培地でタンパク質を誘導した後、0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+GlcおよびSD+Raf/Gal寒天培地に10μLを滴下して、25℃にて15日間静置培養した。また、タンパク質の誘導後、42℃で0、2、4、8時間熱ショックを与え1000細胞を同寒天培地上にスプレッドして25℃で培養し、生存率を検定した。結果を図28に示す。
熱感受性の相補を利用したスクリーニングをするために、cdc25Ha株に、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMT20-MFα-HA-βc、pAURGAL1p-V5-JAK2、pSos-Shc1を、酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1を0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。引き続き実施例2-2-6で示したように、cdc25Hα株に、酢酸リチウム法によりpYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を導入し、酵母形質転換体cdc25Hα/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。HLHライブラリー遺伝子の導入をメイティング法により行って熱感受性を利用したスクリーニングを供したところ、IL5シグナルのアゴニストを見出した。
自己リン酸化したJAK2は活性化し、βcをリン酸化する。続いてβcのリン酸化チロシン残基は転写因子STAT5aと結合する。このように、IL5の刺激によりSTAT5aはJAK2近傍にリクルーティングされ、JAK2によりリン酸化され二量体を形成し、核内移行する。実施例3-3では、酵母においてHLHライブラリーを表層提示し、転写因子STAT5aのチロシンリン酸化を検出することによって、IL5シグナルのアゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
実施例3-1で示したように、cdc25Ha株においてアゴニストのスクリーニングが達成された。次に示す系では、培養時間短縮の為、30℃で培養可能な酵母株を用いることが好まれる。そこで、IL5-FLO42、IL5Rα、βc、JAK2、STAT5aの発現を調べるため、実施例3-1-3でIL5Rα/βcの発現を確認した酵母形質転換体のうち、cdc25Haと同じく比較的レセプターの発現量の多いBY4741ΔTRP1を用いて以下の実験を行った。BY4741ΔTRP1株に、プラスミドpGMH20、pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα、pGMT20、pGMT20-MFα-HA-βc、pAURGAL1p-V5、pAURGAL1p-V5-JAK2、pGML10、pGML10-myc-STATΔC-VP16を、酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体BY4741ΔTRP1/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20/pGMT20/pAURGAL1p-V5/pGML10、BY4741ΔTRP1/pYES2-MFα-IL5-HA-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2を得た。
BY4741ΔTRP1におけるIL5-FLO42、IL5Rα、βc、JAK2、およびSTAT5aの発現を見る為、実施例3-3-1で得られた酵母形質転換体を培養後、遠心にて回収し、実施例2-1-4に従って、抗HAマウスモノクローナル抗体、抗FLAGマウスモノクローナル抗体、抗V5マウスモノクローナル抗体、および抗VP16抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図29に示す。図29に示したとおり、BY4741ΔTRP1株において、IL5-FLO42、IL5Rα、βc、JAK2、およびSTAT5aの全ての発現が確認された。
BY4741ΔTRP1株におけるIL5-FLO42の局在を調べる為、実施例3-1-6のように抗体HAマウスモノクローナル抗体を用いて標識し、蛍光サンプルを共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。結果を図30に示す。
以上の実施例より、BY4741ΔTRP1株において、IL5依存的なJAK2を介するSTAT5aのチロシンリン酸化が生じると予想された。そこで、STAT5aのリン酸化を調べる為、実施例3-3-1で得られた酵母形質転換体を培養後、実施例2-1-4で示したようにタンパク質を抽出し、抗リン酸化STAT5a抗体を用いたウェスタンブロットに供した。また、細胞壁を除去した後、抗リン酸化STAT5a抗体を用いて蛍光標識した。得られた蛍光サンプルについて、フローサイトメーターによる解析を行った。結果を図31に示す。
リン酸化STAT5aは二量体を形成し、核内に移行して転写を活性化する転写因子である。実施例3-3-4で示したように、BY4741ΔTRP1株においてIL5依存的なJAK2の介するSTAT5aのリン酸化が見られたことから、リン酸化STAT5aが核内に局在すると予想された。実施例3-3-4のように調製したリン酸化STAT5aについての蛍光標識サンプルを共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。結果を図32に示す。
表層提示型IL5依存的な、STAT5aのリン酸化の亢進が見られたので、抗リン酸化STAT5a抗体を用いることによるライブラリースクリーニングが可能と思われた。まず、酢酸リチウム法により酵母形質転換体BY4741ΔTRP1/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/βc/pAURGAL1p-V5-JAK2/pGML10-myc-STAT5aΔC-VP16を作製し、引き続き、酢酸リチウム法によりpYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を導入し、酵母形質転換体BY4741ΔTRP1/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2を、0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地に得た。得られた形質転換体を培養し、HLH、IL5Rα、βc、JAK2、およびSTAT5aを発現させ、抗リン酸化STAT5a抗体を用いて標識して酵母蛍光サンプルを得た。1細胞ピッキング装置を用いて、スクリーニングに供したところ、IL5シグナルのアゴニストを見出した。
4-1: JAK2の自己リン酸化検出によるIL6シグナルのアゴニストのスクリーニング例
哺乳類細胞においてIL6シグナルは、IL6Rαおよびgp130(IL6Rα/gp130)からなるレセプター二量体と、細胞内においてgp130と結合するJAK2からなるヘテロ三量体により構成される。IL6Rα/gp130はIL6の結合により、細胞膜上でさらに多量体化し、この時JAK2の自己リン酸化を促す。実施例4-1では、酵母においてHLHライブラリーを表層提示し、JAK2の自己リン酸化を検出することによって、IL6シグナルのアゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
実施例2-1-1で示した酵母株のうちcdc25Ha株に、プラスミドpYES2-MFα-FLO42、pYES2-MFα-HA-IL6-FLO42、pGMH20、pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rα、pGMT20、pGMT20-HA-gp130、pAURGAL1p-V5、pAURGAL1p-V5-JAK2、pSos、pSos-Shc1を酢酸リチウム法により導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rα/pGMT20-HA-gp130/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1、cdc25Ha/pYES2-MFα-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rα/pGMT20-HA-gp130/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1、cdc25Ha/pYES2-MFα-HA-IL6-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rα/pGMT20-HA-gp130/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1を、0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD寒天培地上に得た。
直径2〜3 mmに生育した酵母形質転換体のコロニーを3 mLの0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc液体培地に植菌して25℃、200 rpmでOD600=1.0〜1.5まで前培養し、10 mLの0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Raf/Gal液体培地に初期OD600=0.2になるよう植菌して25℃、200rpmでOD600=0.6〜2.0まで本培養した。
実施例4-1-1で得られた酵母形質転換体を培養後、遠心にて回収し、実施例2-1-4に従って、抗FLAGマウスモノクローナル抗体および抗HAマウスモノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに供した。結果を図33に示す。
表層提示型IL6依存的な、JAK2の自己リン酸化の亢進を検出することにより、IL5系と同様、自己リン酸化したJAK2を認識する抗体を用いることによるライブラリースクリーニングが可能と思われた。IL5系と同様に、メイティング法によりHLHライブラリー遺伝子を導入し、酵母形質転換体cdc25Ha/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42/pGMH20-MFα-FLAG-IL6Rα/pGMT20-MFα-HA-gp130/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1を、0.5μg/mLのオーレオバシジンAを加えた適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地に得た。得られた形質転換体を培養し、HLH、IL6Rα、gp130、JAK2、Shc1を発現させ、抗リン酸化JAK2ラビットポリクローナル抗体を用いて標識して酵母蛍光サンプルを得た。1細胞ピッキング装置を用いて、スクリーニングに供したところ、IL6シグナルのアゴニストを見出した。
自己リン酸化したJAK2は活性化し、gp130をリン酸化する。リン酸化gp130は、Shc1を細胞膜近傍にリクルートする。従って、実施例3-2で示したように、IL6系についても酵母の増殖シグナルを活性化するスクリーニングシステムを構築し、アゴニスト活性を有するHLHのスクリーニングを行った。
熱感受性の相補を利用したスクリーニングをするために、実施例2-2-6で示したように、cdc25Hα株に、酢酸リチウム法によりpYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を導入し、酵母形質転換体cdc25Hα/pYES2-MFα-HLH-FLAG-FLO42を、適切なアミノ酸を含むSD+Glc寒天培地上に得た。この酵母形質転換体を用いて、実施例4-1-1で示した酵母形質転換体cdc25Ha/pGMH20-MFα-FLAG-IL5Rα/pGMT20-MFα-HA-βc/pAURGAL1p-V5-JAK2/pSos-Shc1に、HLHライブラリー遺伝子の導入をメイティング法により行って熱感受性を利用したスクリーニングを供したところ、IL6シグナルのアゴニストを見出した。
5-1: 脂質標識抗体の作製とCHO細胞を用いたモデル実験系
抗体を脂質標識するため、NHS標識脂質としてCOATSOME FE-8080SU5(Phosphoethanolamine distearoyl、日本油脂)を得た。トラップ分子としてAlexa488標抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体(Invitrogen社)を用い、細胞表層提示の最適な条件を以下のように決定した。NHS標識脂質1.60μmolを1 mlのDMSOに懸濁し、超音波発生装置を用いて可溶化させた。抗体25 pmolを100μlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)に懸濁し、脂質/抗体(NHS/Ab)=0、2、4、6、8、10、12、14となるように、NHS標識脂質をそれぞれ50、100、150、200、250、300、350 pmol添加した。遮光して1時間、室温で懸濁し、400μlのCHO細胞懸濁液(4.0x105 cells)に対し、1μl、10μl、および残り全量(約100μl)加えて10分放置した後、フローサイトメーターに供した。図35に抗体の細胞表層提示効率が最も良好な結果の例を示した。
5-2-1: 脂質標識抗体の作製
実施例5-1に習い、NHS標識脂質の0.1μg(160 pmol)に対し、抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体(ピアス社)の1.7μg(11 pmol)を100μlの反応液(10 mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH 8.0、250 mM NaCl)中で反応させ、脂質標識抗体を得た。
10% FBSを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で増殖させたHybridoma 9D9(低濃度リポタンパク質受容体LDLRに対する抗体を生産)の1.6x107細胞を回収し、血清を含まないDMEMの500μlに懸濁してマイクロチューブに50μl移し、氷冷水上で5分間静置した。このチューブに実施例5-2-1で調製した脂質標識抗体の5μlを添加して37℃で2分間静置した。遠心分離により細胞を回収し、血清を含む4℃の培地に再懸濁した後、ポリ-L-リジンコートしたグラススライド上に播いた。培地にAlexa488標識抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体を加え、37℃、5% CO2の存在下で30分間静置し、1回洗浄して1細胞ピッキング装置にて蛍光を観察した。
実施例5-2-2のように脂質標識抗体をHybridoma 9D9の細胞表層に提示し、マイクロチャンバー上に播き、10 x gで1分間遠心した。Alexa488標識抗マウスIgGゴートポリクローナル抗体および血清を含む4℃の培地でマイクロチャンバー上の培地を置換した後、37℃、5% CO2の存在下で30分間静置し、1回洗浄して1細胞ピッキング装置にて蛍光を観察した。
6-1: A431細胞による蛍光標識EGFの取り込み時間の検討
6-1-1: 蛍光標識EGFの調製
80 nMのCy3標識アビジン(Sigma社)を含む無血清培地を入れたチューブを3本用意し、それぞれに1.6 nM、16 nM、160 nMとなるようにビオチンラベルEGFを加えた。氷上で1時間静置し、各種の濃度のCy3標識EGFを得た。
10% FBSを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含むグラスボトムディッシュでA431細胞を60%の密度まで増殖させ、無血清培地に置換し、20時間培養した。実施例1-1-1で調製したCy3標識EGFを含む無血清培地に置換して0〜20分間静置し、A431細胞における蛍光標識EGFの細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。
10% FBSを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で増殖させたA431細胞をトリプシン処理して10000細胞/1 mlになるように新しい培地に再懸濁し、マイクロチャンバー上に巻いてCO2インキュベータ内で4時間培養した。マイクロチャンバーに落ち込んでいない(マイクロチャンバー間に存在する過剰な細胞)をシリコン板ではがし取り、培地でよく洗浄して2日間培養した後、無血清培地に置換し、20時間さらに培養した。実施例1-1-2のように、Cy3の代わりにAlexa488標識アビジン(Invitrogen社)を用いて蛍光標識EGFを調製し、最終濃度10 nMになるように蛍光標識EGFを5分間作用させた後、トリプシン処理前、同処理後、回収途中、回収後の写真撮影を行った。
Claims (9)
- 特定分子を発現する真核細胞を分離する細胞ピッキングシステムであって、前記真核細胞は前記特定分子と結合可能な結合分子により複合体を形成し、この複合体の形成に基づき特定分子を発現する真核細胞が検出装置により検出され、検出された真核細胞が検出装置と連動したマニピュレータにより自動的に回収されることを特徴とする細胞ピッキングシステム。
- 前記細胞が酵母または動物細胞である、請求項1に記載のシステム。
- 特定分子がレセプター、表面抗原または細胞外に分泌されるタンパク質、もしくはペプチドである、請求項1または2に記載のシステム。
- 特定分子が細胞外に分泌されるタンパク質もしくはペプチドであり、前記タンパク質若しくはペプチドと結合分子の複合体が前記結合分子の標識に基づくシグナルの検出により認識され、前記複合体を形成する真核細胞がマニピュレータにより自動的に回収される、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞ピッキングシステム。
- 分泌されるタンパク質が、抗体である請求項3または4に記載の細胞ピッキングシステム。
- 特定分子がレセプターであり、前記レセプターと結合分子の複合体が前記結合分子の標識または前記真核細胞の複合体形成に基づくシグナルの検出により認識され、前記複合体を有する真核細胞がマニピュレータにより自動的に回収される、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞ピッキングシステム。
- 少なくとも1種の標的レセプターを細胞表面に発現する真核細胞において、前記レセプターに対するリガンド候補物質を前記細胞に作用させ、前記レセプターと特定のリガンドが結合した場合に生じるシグナルを検出し、シグナルを生じたレセプター−リガンド結合細胞をマニピュレータにより自動的に回収し、前記シグナルを発生させるリガンド候補物質を同定することを特徴とする、前記レセプターに対するリガンドのスクリーニング方法。
- 前記リガンドがレセプターとともに前記真核細胞の表面に発現される、請求項7に記載の方法。
- リガンドライブラリーを細胞表面に発現する真核細胞集団において、レセプターを前記細胞に作用させ、前記レセプターと特定のリガンドが結合した場合に生じる検出可能なシグナルを検出し、シグナルを生じたレセプター−リガンド結合細胞をマニピュレータにより自動的に回収し、前記シグナルを発生させるリガンドを同定することを特徴とする、前記レセプターに対するリガンドのスクリーニング方法。
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