JP3678233B2 - 核移行蛋白質をコードする遺伝子の検索法 - Google Patents

核移行蛋白質をコードする遺伝子の検索法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、真核細胞の細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子の検索方法に関し、詳しくは、ある刺激に特異的に反応して細胞質から核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を効率的に検索する方法に関する。また、本発明は、真核細胞の細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質又はその遺伝子を利用して、TNF刺激により生じる疾患の治療薬をスクリーニングする方法に関する。
背景技術
細胞は、外界から様々な刺激を受け、それに対して反応する。刺激の例としては、サイトカインやホルモンのレセプターへの結合、ウイルス感染、他の細胞との物理的接触、高温低温などの熱刺激、pH、薬物刺激、栄養素、アミノ酸、その他細胞を取り巻く環境中の物質からの刺激などが挙げられる。このような刺激に対して細胞が反応する際に、多くの場合では、刺激がシグナルとして核内に伝えられ、その結果特定の遺伝子の発現調節が行われる。脂溶性ホルモンのように、細胞膜、核膜を通過し直接核内のレセプターに結合して転写制御を行うものもあるが、多くのシグナルはまず細胞膜上で捉えられた後、刺激がシグナル伝達分子受け渡されて、シグナル伝達分子により細胞質から核内に伝達される。この伝達分子のうちいくつかは、細胞質から核内への移行がシグナル伝達に必須であるということが知られている。これまでに核膜を通過するシグナル伝達分子は、STAT1(Science, 277:1630-1635(1997))やNFκB(Annu. Rev. Immunol., 16:225-260(1998))などいくつか同定されているが、いぜん未知のものが多数存在すると考えられる。
単に細胞質から核内に移行する蛋白質は、既に様々な研究方法により数多く見出されてきた。これまでに同定されてきた、核の構成成分である蛋白質やいわゆる核蛋白質は、細胞質中でmRNAからペプチド合成された後に核内に運ばれるが、これらの蛋白質も核内に移行する蛋白質と言うことができる。核の構成蛋白質としては、ヌクレオヒストン、ヌクレオプロタミン、ラミンなどがある。しかし、これらの多くはシグナル伝達には直接関与しないと考えられる。
上記のような恒常的に核内に局在する蛋白質ではなく、核移行する蛋白質を検索、同定する方法として、自家蛍光を発するGFP蛋白質をコードする遺伝子とcDNAを連結し、融合蛋白質を発現するようにして、GFPの発する蛍光を指標としてcDNA部分に核移行シグナルがコードされているものを単離した例がある(The Journal of Cell Biology, 146, 29-43, 1999)。しかし、この方法では、単に核移行シグナルを持つ蛋白質が同定されるに過ぎず、何らかの刺激に応答して細胞質から核内に移行するような、いわゆるシグナル伝達分子のような蛋白質のcDNAを単離することはできない。
ところで、TNFは炎症時に主として免疫系細胞から放出され、生体防御反応としての炎症を誘発する。しかし、この作用が過剰になると種々の疾患が生じる。例えばウイルス感染により引き起こされる肝炎が慢性化すると、TNFの慢性的生産が肝の線維化を招き、これが進展すると肝硬変となる。肝炎、腸炎、肺炎、腎炎、関節炎等多くの疾患はTNF抗体により炎症を押さえることが知られている。実際、市販されている抗TNF抗体は治療薬として目覚しい効果を示している。
一方、TNFは生体防御反応の一端を担っており、免疫担当細胞の活性化、臓器の修復や、腫瘍の除去に重要な役割を果たしている。TNFが関与する疾患において、TNF作用を全面的に抑制するのではなく、TNF作用の一部有害な部分だけを抑制するあるいは有益な部分だけを増強することが疾患の治療に有効であることが考えられる。
TNFの作用は細胞の種類や細胞の状態により異なり、多様な作用を示す。たとえば、肝細胞に対し、TNFはTNF受容体に結合し、アポトーシスを誘導するシグナル(死シグナル)と、NFκB等の転写因子を介し、種々の遺伝子発現を誘導するシグナル(遺伝子発現誘導シグナル)の双方を誘導する。前者のシグナルは遺伝子発現誘導を伴わない。後者のシグナルは遺伝子発現を誘導し、これより生ずる蛋白質の一部は死シグナルを打ち消す作用(アンチアポトーシス作用)を有している。通常はこの2つのシグナルがバランスしており、TNFに暴露された通常の細胞はアポトーシスをおこさない。何らかの原因でアンチアポトーシス作用が抑制されると、細胞はアポトーシスに陥る。たとえば、劇症肝炎は、広範な肝細胞が急激にアポトーシスを起こす疾患で、極めて死亡率が高く、よい治療法が無い。この原因としてTNFに対する肝細胞のアンチアポトーシス機構は何らかの原因で破綻し、TNFがアポトーシスシグナルのみを誘導してしまう結果と考えられる。
このようにTNFの多様な作用は、TNFのシグナルを伝える多様な転写因子の働きによると考えられる。
TNFによる遺伝子発現誘導シグナルはTNF受容体からシグナルを受けた何らかの蛋白質が細胞質から核内に移動して、何らかの複合体を形成して転写制御領域に結合し、遺伝子発現を誘導する。発現する遺伝子は細胞の種類や、同時に存在する他のシグナルの影響により多様な様相を示す。核内に移動する蛋白質はそれぞれ、異なる役割を有して、異なる遺伝子発現に関与していると考えられる。
TNFのシグナルをつたえる核内移行分子としてはNFκBが知られている。NFκBはTNFだけでなく多くのサイトカイン、成長因子やストレス刺激を遺伝子発現につなげる核内移行蛋白質であり、TNFの作用の多様性を考えると、NFκBだけがTNFの転写因子であるとはとうてい考えられない。したがって、TNF刺激により核内へ移行する未知の蛋白質が存在することが想定される。
発明の開示
本発明は、細胞にある刺激を加えたときに、その刺激に応じて特異的に核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索する方法を提供することを課題とする。また、本発明の他の課題は、真核細胞の細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質又はその遺伝子を利用して、TNF刺激により生じる疾患の治療薬をスクリーニングする方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、多数の遺伝子群中の各々の遺伝子を、それらの遺伝子産物が自家蛍光を発する蛋白質との融合蛋白質として発現するように発現ベクターにクローニングして遺伝子発現ライブラリーを作製し、同遺伝子発現ライブラリーを2群の細胞に導入して細胞中で融合蛋白質を発現させ、一方の細胞群のみを薬剤などで刺激した後、2群それぞれの細胞から融合蛋白質が核に局在する細胞又はその核を分離し、それらを比較することによって目的とする遺伝子を検索することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)以下のステップを含む、真核細胞において細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索する方法;
(a)細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質と、検索対象の蛋白質の一部または全体との融合蛋白質をコードする遺伝子ライブラリーを真核細胞に導入し、遺伝子導入細胞中で同遺伝子を発現させて前記融合蛋白質を生成させるステップと、
(b)遺伝子導入細胞を2群に分け、一方の群の細胞のみに、前記核内に移行する蛋白質の核内への移行を刺激するステップと、
(c)前記刺激した細胞群と、無刺激の細胞群の各々の細胞群について、融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離するステップと、
(d)分離した細胞又は核から融合蛋白質をコードする遺伝子を回収し、刺激した細胞群から回収された遺伝子と無刺激の細胞群から回収された遺伝子を比較するステップ。
(2)前記ステップ(d)の後に、刺激した細胞群のみから回収された遺伝子、又は無刺激の細胞群のみから回収された遺伝子を同定するステップを含む(1)の方法。
(3)前記ステップ(c)において、分離された細胞について融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離することを2回又は3回以上繰り返すことを特徴とする(1)又は(2)の方法。
(4)前記マーカー蛋白質が、自家蛍光を発する蛋白質、発色反応を触媒する蛋白質、抗体により検出可能な抗原ペプチド、又は他の物質と結合し得るペプチドである(1)〜(3)のいずれかの方法。
(5)前記自家蛍光を発する蛋白質がグリーン・フルオレセント・プロテインである(4)の方法。
(6)ステップ(b)において、核内に移行する蛋白質の核内への移行を、化学物質、生理活性物質、環境変化、他細胞との接触から選ばれる手段により刺激する(1)〜(5)のいずれかの方法。
(7)細胞又は核の分離を、セルソーティング、フローサイトメトリー、マイクロダイセクション、又は顕微鏡観察により行う(1)〜(6)のいずれかの方法。
(8)前記ステップ(c)において細胞を分離するに先だって、細胞膜の透過性を増大させ、細胞質中の融合蛋白質を細胞外に流出させることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの方法。
(9)前記ステップ(c)において、細胞の細胞膜を破壊した後に核を分離することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの方法。
(10)前記ステップ(d)において、刺激した細胞群から回収された遺伝子と無刺激の細胞群から回収された遺伝子との比較を、それの遺伝子の検索対象の蛋白質をコードする部分の全長又は一部のシークエンス解析によって行うことを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの方法。
(11)前記ステップ(a)において、遺伝子ライブラリーから、無刺激下で自律的に核内に移行する融合蛋白質をコードする遺伝子を除いておくことを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの方法。
(12)前記ステップ(a)において、遺伝子ライブラリーから、核外蛋白質で、核内に移行することがない蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を除いておくことを特徴とする(1)〜(11)のいずれかの方法。
(13)前記ステップ(a)において、前記検索対象の蛋白質が遺伝子転写の制御蛋白質であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかの方法。
(14)前記ステップ(a)において、前記融合蛋白質が、さらに核外移行シグナルを含むことを特徴とする(1)〜(13)のいずれかの方法。
(15)以下のステップを含む、TNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニング方法;
(a)TNF刺激により細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質を発現する真核細胞を用意するステップと、
(b)前記真核細胞にTNF及び被検物質を作用させるステップと、
(c)核内へ移行した前記蛋白質を検出するステップと、
(d)被検物質を作用させたときに、被検物質を作用させないときに比べて、前記蛋白質の核内への移行を促進又は阻害する被検物質を選択するステップ。
(16)前記真核細胞は、前記核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子が導入されたことによって、同蛋白質を発現することを特徴とする(15)の方法。
(17)前記核内に移行する蛋白質が、細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質との融合蛋白質であることを特徴とする(16)の方法。
(18)前記真核細胞が前記蛋白質をコードする遺伝子以外の外来遺伝子で形質転換された形質転換細胞であり、同外来遺伝子の発現産物が被検物質である(15)〜(17)のいずれかの方法。
(19)前記真核細胞が、遺伝子ライブラリーを導入された形質転換体である(18)の方法。
(20)前記核内に移行する蛋白質が、ヒトのUniGene番号Hs.12303、Hs.183180、Hs.198246、Hs.83849、Hs.76722、Hs.74034、Hs.129959、Hs.24301、Hs.24756、Hs.161137、Hs.348609、及びHs.24608から選ばれる遺伝子の産物である(15)〜(19)のいずれかの方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の核移行蛋白質のスクリーニング方法
本願の第1の発明は、真核細胞の細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索する方法に関する。本発明において、蛋白質が真核細胞の細胞質から核膜孔を通過して核内に移行することを「核移行」、核移行する蛋白質を「核移行蛋白質」ともいう。本発明において、核移行蛋白質は、具体的には、何らかの刺激で細胞を刺激したときに核に移行する蛋白質である。
本発明の方法は、下記ステップを含む。
(a)細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質と、検索対象の蛋白質の一部または全体との融合蛋白質をコードする遺伝子ライブラリーを真核細胞に導入し、遺伝子導入細胞中で同遺伝子を発現させて前記融合蛋白質を生成させるステップと、
(b)遺伝子導入細胞を2群に分け、一方の群の細胞のみに、前記核内に移行する蛋白質の核内への移行を刺激するステップと、
(c)前記刺激した細胞群と、無刺激の細胞群の各々の細胞群について、融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離するステップと、
(d)分離した細胞又は核から融合蛋白質をコードする遺伝子を回収し、刺激した細胞群から回収された遺伝子と無刺激の細胞群から回収された遺伝子を比較するステップ。
以下、本発明の方法をステップ毎に説明する。
(1)ステップ(a)
まず、細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質と、検索対象の蛋白質の一部または全体との融合蛋白質をコードする遺伝子ライブラリーを作製する。マーカー蛋白質は、それ自体を検出することによって融合蛋白質の細胞内の局在を検出することが可能であり、かつ、融合蛋白質の核移行を実質的に阻害しないものであれば、特に制限されない。細胞内の局在の検出は、細胞又は核の構造を実質的に維持したまま可視化できることが好ましい。マーカー蛋白質の検出は、直接的又は間接的に、視覚的方法又は電気的方法等によって行うことができるものであればよい。マーカー蛋白質として具体的には、自家蛍光を発する蛋白質、発色反応を触媒する蛋白質、抗体により検出可能な抗原ペプチド、又は他の物質と特異的に結合し得るペプチドが挙げられる。
自家蛍光を発する蛋白質としては、例えば、グリーン・フルオレセント・プロテイン(Green fluorescent protein(GFP))が挙げられる。ここで自家蛍光とは、励起光などの外部からのエネルギーを吸収して発光するものをいい、蛍光波長は、検出可能であれば特に制限されず、燐光も含まれる。前記GFPは、オワンクラゲから近年発見された蛋白質であり(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:12501-12504(1994))、クロロフィル等とは異なり、発光に金属イオンなどのコファクターを必要としない。したがって、細胞中での局在を知るためには好適である。GFPを含む核は、例えば、フローサイトメータによるソーティングにより分離することができる。また、ヘキスト33342(モレキュラープローブ社製)を用いた染色により核の位置を確かめ、Cellomics社のArrayScanシステムを用いて、認識した核の中のGFP量を定量することができる。
発色反応を触媒する蛋白質としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。抗体により検出可能な抗原ペプチドとしては、抗原性を有し、抗原抗体反応によってその局在を検出することができるものであれば特に制限されない。具体的には、ヒスチジンポリマー(Hisタグ)、インフルエンザのヘムアグルチニン(hemagglutinin)蛋白質が含むペプチド配列YPYDVPDYA(配列番号19)(HAタグ)、又はこれらのいずれかがN末端又はC末端に結合したペプチド等が挙げられる。
他の物質と特異的に結合し得るペプチドとしては、例えば、ビオチンと特異的に結合するアビジンもしくはストレプトアビジン、又は、イムノグロブリンと特異的に結合するプロテインA等が挙げられる。
次に、上記のようなマーカー蛋白質と検索対象の蛋白質の一部または全体との融合蛋白質をコードする遺伝子ライブラリーを作製する方法を説明する。
遺伝子ライブラリーは、細胞内で融合蛋白質を一過性に発現させるために適したベクターDNAを基本骨格とする。ベクターとしては、通常、プラスミドベクター又はウイルスベクターが用いられる。好ましくは真核細胞で発現可能なプロモーター等の発現調節配列を含む、いわゆる発現ベクターが用いられる。
融合蛋白質をコードする遺伝子は、マーカー蛋白質をコードするDNA(マーカー蛋白質遺伝子)と、検索対象の蛋白質をコードするDNA(対象遺伝子)が連結されたものである。マーカー蛋白質と検索対象の蛋白質の融合の様式は特に制限されないが、通常、N末端側にマーカー蛋白質を、検索対象の蛋白質をC末端側に配置することが好ましい。マーカー蛋白質遺伝子は、融合蛋白質への翻訳がストップしないように終止コドンを除去しておく。また、マーカー蛋白質遺伝子と対象遺伝子との間に、リンカー等のポリペプチドをコードするDNAを介在させてもよいが、その場合には、インフレームの終止コドンが存在しないようにする。
融合蛋白質遺伝子は、融合蛋白質をコードする遺伝子が発現可能な形態でベクターDNA中に挿入される。以下に、融合遺伝子ライブラリーの作製の具体例な手順を例示する。
まず、対象遺伝子をクローニングするためのクローニングベクターを作製するために、発現ベクターのプロモーター直下に存在するマルチクローニングサイトにマーカー蛋白質遺伝子を挿入する。その際、マーカー蛋白質遺伝子の下流に対象遺伝子を挿入するためのクローニングサイトを設定しておく。次に、クローニングベクターのクローニングサイトに、対象遺伝子を挿入する。対象遺伝子としては、典型的にはcDNAが用いられる。cDNAは、細胞や組織から調製したmRNAを鋳型として逆転写により一本鎖cDNAを合成し、そして二本鎖DNAにしたものを用いる。cDNAは、コード領域全体を含むものであってもよく、一部であってもよい。細胞や組織から調製されるmRNAは、多くの種類の遺伝子から転写されたものの混合物であるので、ライブラリー作製の材料としてmRNAを用いることにより、多くの種類の遺伝子を含むライブラリーが構築される。尚、ライブラリーとしてはできるだけ多くの種類のcDNAがクローニングされることが好ましいが、クローニングベクターには任意の一種のcDNAが挿入されるように、ベクターDNAとcDNAが連結されることが好ましい。
ベクターとして、発現調節配列を持たないものを使用する場合は、融合蛋白質遺伝子の上流に、適当な発現調節配列を挿入する。
本発明の方法は、細胞が薬剤などの刺激を受けたときに、細胞質中にあった転写因子やコファクターが刺激特異的に核内に移行する現象を捉え、それらの転写因子やコファクターをコードする遺伝子をクローニングすることを目的の一つとしている。この目的をより効率的に達成するための手段として、次に述べるようなcDNAライブラリーを作製することができる。
通常のcDNAライブラリーは、多くの種類の遺伝子を含んでおり、中には、刺激を受けなくても核内に移行する蛋白質の遺伝子も含まれている。刺激を受けなくても核内に移行する蛋白質としては、例えば、核の構成成分である構造蛋白質がある。核を構成する構造蛋白質は、細胞質中で合成された後、外界からの刺激の有無には関わりなく、核の構成成分として機能するために、核内に移行、輸送される。核を構成する構造蛋白質としては、核膜の内側を支える中間系フィラメントを含む核ラミナといわれる構造中の蛋白質や、DNAに結合して数々の役目を果たしているヒストンや非ヒストン染色体蛋白質など多くのものがある。
そこで、上記のような、目的遺伝子の検索において擬陽性を生じさせる可能性のある遺伝子を予め除去したライブラリーを作製することによって、目的遺伝子を効率よく取得することが可能になる。本発明においては、このような擬陽性を生じさせる可能性のある遺伝子を除いたライブラリーを、クリーン化ライブラリー(cleaned-library)と呼ぶことにする。なお、クリーン化ライブラリーは、不要遺伝子が完全に除去されていることが望ましいが、しかし不完全であったとしても大部分が除かれていれば、十分にその効果を発揮することができる。
次に、クリーン化ライブラリーの作製方法の一例を挙げる。まず、基本となるライブラリーを作製し、それを細胞に導入して融合蛋白質を発現させる。マーカー蛋白質としてGFPを用いた場合は、融合蛋白質の局在をGFPの蛍光で検出できる。そして、細胞を薬剤などで刺激せずに、セルソーターで分画を行う。このとき、上述の核構成蛋白質の遺伝子を含むものは、無刺激でも核内に融合蛋白質が移行し、核が蛍光を発するので、識別することができる。これらの核が蛍光を発しているものは目的外であるので、セルソーターで分離して除く。残った細胞分画には、無刺激で核が蛍光を発する遺伝子が導入された細胞が含まれていないので、これらの細胞を集めた後、その分画からプラスミドDNAを回収し、これをクリーン化ライブラリーとする。このようにして得られたクリーン化ライブラリーには、無刺激で融合蛋白質が核に移行するものが除去されているか、大変少なくなっている。したがって、このクリーン化ライブラリーを用いて後の操作を実施すると、薬剤などの刺激に応じて核内に移行するものの遺伝子を効率的に得ることができるので、有用である。
また、cDNAライブラリー中に含まれる多くの遺伝子の中には、例えば細胞膜に結合する膜蛋白質や細胞外への分泌蛋白質など、絶対に核内に移行することがないものも含まれる。このような不要な蛋白質の遺伝子を、あらかじめライブラリーから除くことは、薬剤などの刺激に応じて核内に移行するものの遺伝子を取る効率を上げるために有効であり、この様なライブラリーもまたクリーン化ライブラリーと言うことができる。
このようなライブラリーの作製方法の一例を挙げる。酵母を使った実験系で、核移行シグナルを持つ蛋白質の遺伝子と、持たない遺伝子を分離する方法がある。(Nature Biotechnology, 16, 1338-1342(1998))この方法では、例えば転写因子NFκBなどの核移行シグナルを持つ遺伝子とそうでない遺伝子を分離できる。まず、基本となるcDNAをmRNAの逆転写によって作製し、それを上記文献に記載されているベクターにクローニングし、そして酵母に導入して蛋白質を発現させる。このベクターは、発現した蛋白質が核内に移行した場合だけ、栄養要求性が変化して酵母が増殖することが可能になるように設計してあるので、発現した蛋白質が核内に移行した場合だけ酵母のコロニーができる。このコロニーを多数集めてそこからクローニングされているcDNAを回収すると、その中には細胞膜蛋白質などの核に移行しない蛋白質が含まれていないか、非常に少なくなっている。こうして得られたcDNAを後述のGFP−F1、GFP−F2、GFP−F3ベクターに再度クローニングしてライブラリーを作製する。このようにして作製したクリーン化ライブラリーを用いて後の操作を実施すると、全く核内移行に関係のない遺伝子が除かれているので、薬剤などの刺激に応じて核内に移行するものの遺伝子を容易に選択でき、有用である。
なお、このようにクリーン化ライブラリーの作製方法にはいろいろな方法があるが、それぞれ単独で試行してもよいし、ある方法でまずクリーン化ライブラリーを作製し、それをもとにして、さらに別法でクリーン化を繰り返して行ってもよい。
また、ヒトをはじめ、様々な生物種のゲノム塩基配列が明らかになり、遺伝子の配列解析から、DNA結合蛋白質や転写制御因子をコードする遺伝子を、ゲノム塩基配列から推察することが可能になってきた。例えば、バイオインフォーマティクスにより、ジンクフィンガーなどのDNA結合モチーフを持つ蛋白質をコードする遺伝子を、ゲノム塩基配列の中から見つけ出すことができるようになってきた。ただし、それらの遺伝子は蛋白質として発現したときにどのような機能を持つかはコンピューター解析だけではわからないので、機能解明のためには、それぞれの蛋白質を発現させ実験を行う必要がある。一方、本発明によれば、次のような実験が可能となる。まず、実験者が興味を感じる候補遺伝子を、バイオインフォーマティクスやその他の情報から複数種リストアップする。候補遺伝子数は数十種でも数千種でもそれ以上でもかまわない。そしてバイオインフォーマティクス等で得た情報を元に、興味ある遺伝子を、公共施設(例えば理化学研究所、つくば市)より譲渡してもらったり、あるいは市販されているcDNAをして購入して収集することができる。そして、集めた候補遺伝子を用いでGFP融合蛋白質を発現する遺伝子ライブラリーを構築し、そのライブラリーを用いて本発明を実施する。あらかじめ興味のある候補遺伝子を集めてライブラリーを構築しているので、実験者が興味を感じる核に移行する蛋白質を、より効率的に見つけることができる。つまり、あらかじめ絞り込んだ小さい母集団から興味ある遺伝子を検索するので効率がよく、本発明の実施法として有用である。
また、核膜には核膜孔と呼ばれる、核内部と細胞質をつなぐトンネル様構造があり、核膜孔を通って選択的に核内外の物質輸送を行っている。通常、40キロダルトン以上のサイズの蛋白質は、核膜孔を通過できないが、しかし、特別な核移行シグナルを持っていたり、運搬を担う特別な蛋白質が結合することにより、サイズの大きい蛋白質でも選択的に核移行が起こる。つまり核膜孔の通過は高度に選択的で制御されていると言える。一方、小さい蛋白質などは核膜孔を非特異的に通過して核内に流入することがある。
本発明の実施例では、GFP融合蛋白質を使用している。GFPそのものは約27キロダルトンのサイズであるので、仮に融合している蛋白質が極端に小さい場合は、融合蛋白質の全体サイズが40キロダルトン以下になり、核内に非特異的に流入することも有り得る。その場合、非特異的流入は、本発明の遺伝子検索のための擬陽性を増やすことになる。
そこで、擬陽性を減らすために、次のことを行うことができる。発現する融合蛋白質のアミノ酸配列中に、核外移行シグナル(Nature Biotechnology, 16, 1338-1342(1998))を組み込む。具体的には、核外移行シグナルは短いアミノ酸配列であるので、それをコードする塩基配列をライブラリーのGFP融合蛋白をコードする部分に付加することによって行う。その結果、核外移行シグナルを持ったGFP融合蛋白質が発現される。すると、この蛋白質は核外移行シグナルによって積極的に核外に排出されるために、拡散などで非特異的に核内に流入した蛋白質を、核外に排除することができる。その結果、擬陽性を減らすことができる。
この方法を用いると、真の核移行蛋白質をも核外に押し戻すことになるが、その場合は核内への移行と、核外への移行のバランスとなって、核内に存在する蛋白質がゼロにはならないので、セルソーターで蛍光を検出し、採取することが可能である。
上記のようにして得られる遺伝子ライブラリーを、適当な真核細胞に導入する。真核細胞としては、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞が挙げられる。動物細胞としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物の脳、筋肉、胎盤、膵臓、腎臓等の組織に由来する細胞株が挙げられる。具体的には、ヒトの肝臓に由来する株化細胞であるHepG2(理研ジーンバンク細胞開発銀行又はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)等から入手できる)、サル腎臓由来の株化細胞であるCOS-7(同じく理研ジーンバンク細胞開発銀行、又はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)等から入手できる)等が挙げられる。
上記細胞へライブラリーDNAを導入するには、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、ウイルスベクターを用いる方法等、培養細胞にDNAを導入するのに通常用いられている方法を用いることができる。また、市販の遺伝子導入試薬を使用してもよい。
以上、mRNAの調製、逆転写によるcDNAの作製、DNA断片とベクターとの連結、ベクターの細胞への導入、遺伝子の発現等の操作は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T.,"Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1.21(1989)等のプロトコール集に記載されている一般的な方法によって行うことができる。また、本発明に用いる遺伝子ライブラリーと類似のライブラリーは、Journal of Cell Biology, 146, 29-43(1999)等に記載されている。
次に、遺伝子導入細胞中で融合蛋白質を発現させて、融合蛋白質を生成させる。融合蛋白質遺伝子を発現させるプロモーターとして構成的なプロモーターを用いた場合は特別な操作は必要としないが、誘導可能なプロモーターを用いた場合は誘導に必要な操作を行う。
(2)ステップ(b)
次に、遺伝子導入細胞を2群に分け、一方の群の細胞のみに、核内移蛋白質の核内への移行を刺激する。
核移行蛋白質の核内への移行の刺激は、化学物質、生理活性物質、環境変化、又は他細胞との接触等により行われる。化学物質としては、アミノ酸、脂肪酸等の栄養素、ダイオキシンやアルコール等が、生理活性物質としては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、各種インターロイキン、インシュリン、ファスリガンド等が挙げられる。これらの物質には、現在までに核移行を刺激することが報告されている物質の他に、将来的に発見される物質も含まれる。また、環境変化としては、高温低温などの熱刺激、pH変化等が挙げられる。前記「他の細胞」としては、キラー細胞の標的細胞への接触等が挙げられる。
このステップでは、2群に分けた遺伝子導入細胞の中、一方の群の細胞を上記のような刺激を与え、他方の群には刺激を与えない。尚、刺激、無刺激は相対的なものであり、一方の群の細胞に強い刺激を与え、他方の群の細胞に弱い刺激を与えることも、本発明に含まれる。
(3)ステップ(c)
このステップでは、刺激した細胞群と、無刺激の細胞群の各々の細胞群について、融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離する。
融合蛋白質の検出は、マーカー蛋白質の種類又は性質によって、適宜行うことができる。例えば、マーカー蛋白質として自家蛍光を発する蛋白質を用いた場合は、蛍光を観察することにより、融合蛋白質を検出することができる。また、発色反応を触媒する蛋白質を用いた場合は、同蛋白質に適合した基質、例えばアルカリフォスファターゼを用いた場合は、発色用基質であるBCIP、NBTを含む溶液に細胞を浸し、酵素反応を行わせることにより、マーカー蛋白質の局在部位を発色させることができる。抗原ペプチドを用いた場合は、抗原に結合する抗体を、FITC、TRITC、DTAF等の蛍光色素、又は酵素で標識した標識化抗体を用い、細胞を免疫染色することによって、検出することができる。同様に、アビジン等のペプチドを用いた場合も、それに結合するビオチン等のリガンドを蛍光色素や酵素で標識することによって、抗原と同様の方法で検出することができる。これらの方法は、一般的な細胞生物学的手法であり、多くの方法が確立されている。また、本発明においては、マーカー蛋白質の検出が可能である限りこれらの方法に制限されなず、いかなる方法も用いることができる。
以下に、マーカー蛋白質として抗原ペプチドを用いた場合の具体例な検出法を例示する。融合蛋白質を発現させた遺伝子導入細胞をメタノール、アセトン、ホルムアルデヒド等で固定する。その際、融合蛋白質を発現している細胞の核染色の有無を明瞭にするためには、固定前に細胞をジギトニン処理し、細胞膜の透過性を上げることによって、細胞貭中の融合蛋白を細胞外に溶出させることが有効である。細胞を固定後、PBS等のバッファーでリンスし、次に適切な濃度に薄めた抗ペプチド抗体で細胞を処理する。抗ペプチド抗体は、融合蛋白質の抗原ペプチド部分に結合する。この抗体を直接蛍光色素を標識しておけば、その蛍光を指標にして、融合蛋白質の局在を知ることができ、融合蛋白質が核内に存在するか否を調べることができる。また、抗ペプチド抗体を一次抗体として用い、一次抗体を認識し結合する抗体を二次抗体として用いれば、増幅効果により明度が上がり感度を上げることができる。
次に、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離する。核に融合蛋白質が局在している場合でも、細胞質中に融合蛋白質が存在することがある。そのような場合は、核における融合蛋白質の蛍光又は発色等の有無を明瞭にし、識別を確実にするために、細胞を破壊して核を単離し、融合蛋白質の局在が認められる核を分離することが好ましい。また、細胞をジギトニン等で処理し、細胞膜の透過性を上げることによって、細胞質中の融合蛋白を細胞外に溶出させることも有効である。
核の単離は、例えば、以下に示す方法によって行うことができる(分子生物学研究のための培養細胞実験法 羊土社、pp.141-143参照)。細胞を氷冷した緩衝液に懸濁し、氷中でホモジナイザーを用いて破砕する。細胞破砕液を適当な密度の緩衝液上に重層し、遠心分離することによって、核画分のみを沈殿として回収する。
核に蛍光が検出される細胞又は核の分離は、セルソーティング、フローサイトメトリー、マイクロダイセクション、又は顕微鏡観察等によって行うことができる。セルソーティングは、細胞又は核の懸濁液を細い水流とし、その中に細胞又は核を一列に流して、一つ一つの細胞や核に順番にレーザー光線を当てて蛍光を検出し、所望の蛍光が検出されると瞬間的に電場をかけてそれらの細胞又は核を横へ飛ばしてチューブに回収する方法である。本発明においては、蛍光が検出された核又はそれを含む細胞を回収する。セルソーティングは技術として確立しており、それに用いる装置であるセルソーターは市販されている。
また、それ以外の方法としては、顕微鏡で細胞を観察して望みの細胞を識別して、その細胞を回収する方法がある。培養シャーレやスライドクラス上の多くの細胞の中から、望みの細胞を回収する方法の例を述べる。培養シャーレ上の細胞は、トリプリン処理を施してシャーレ上に接着している細胞を剥がして回収する。その際に、狙った細胞以外の細胞混入をできるだけ少なくするために、プラスチック製の細いチューブの先端の輪を、その中に狙った細胞が入るように当てて、チューブの中にトリプシンを注入して、狙った細胞と周りのごく少数の細胞だけをシャーレから剥がして回収することができる。細胞は小さいので、細いチューブを用いても、狙った細胞以外の周りの細胞混入を完全に抑えることは困難であるが、分離操作を繰り返すことにより、分離精度を高めることができる。
また、スライドグラス上の個々の細胞を回収する優れた方法が既に開発されている。複数の顕微鏡メーカーから類似のシステムが市販されているが、オリンパス光学のLM200マイクロダイセクションシステムが最も一般的によく用いられている。このシステムは倒立顕微鏡とそれに付随する細胞回収装置からなっている。まず、顕微鏡で細胞を観察して、核が蛍光を発している細胞を見つける。そして、その細胞にレーザー光線を当てる。細胞には、細胞回収装置のブロックが上部より接しており、ブロックの細胞接着面がレーザーの熱で溶けて細胞に強く接着する。細胞の大きさまでレーザーの光束を絞ることができるので、周りの細胞の混入なしに狙った細胞のみをブロックに吸着させることができる。回収したい細胞が複数ある場合は、観察、細胞選択、レーザー照射の操作を繰り返す。そして、最後にブロックを持ち上げると、回収したい細胞のみがブロックの表面に吸着しブロックとともに吊り上げられる。このようにして狙った細胞のみを回収することができる。
また別法として、まず96穴プレートや384穴プレートに各ウェルに少数の細胞が入るように細胞懸濁液を分注し、望みの蛋白質局在を示している細胞を顕微鏡で観察識別し、ウェルごとに細胞を回収する方法もある。
その他、融合蛋白質の局在を検出し、細胞や核を分離することができる限り、いかなる方法でも用いることができる。
(4)ステップ(d)
このステップでは、分離した細胞又は核から、融合蛋白質をコードする遺伝子を回収し、刺激した細胞群から分離された細胞から回収された遺伝子と、無刺激の細胞群から分離された細胞から回収された遺伝子を比較する。遺伝子の回収は、通常の細胞又は核からのプラスミドの回収と同様にして行うことができる(バイオマニュアルシリーズ3 遺伝子クローニング実験法 羊土社、p.114-115参照)。遺伝子の比較は、検索対象の蛋白質をコードする部分の全長又は一部のシークエンス解析によって行うことができる。シークエンス解析は、クローン化断片全長について行ってもよく、一部の領域、例えば制限酵素で切り出した断片のみ行ってもよい。
遺伝子の比較の結果、刺激した細胞群のみから回収された遺伝子、又は無刺激の細胞群のみから回収された遺伝子を同定することによって、核移行蛋白質をコードする遺伝子を得ることができる。
無刺激の細胞群から得られた遺伝子群は、核を構成する核蛋白などの遺伝子と考えられる。これらの蛋白質は刺激の有無に関わらず、核内に運ばれるので、核へ移行したものとして分画されてくる。一方、刺激した細胞群から得られる遺伝子は、刺激に応じて核に移行した蛋白の遺伝子を含んでいるが、上記の無刺激の細胞群から得られる遺伝子も中に含まれている。これらの2つの細胞群から得られた遺伝子を比較することによって、刺激特異的に核移行する蛋白質の遺伝子を同定することができる。
典型的には、得られたすべての遺伝子を全てシークエンス解析し、両細胞群から回収された遺伝子を全てリストアップして、刺激した細胞群にのみ見出される遺伝子を同定する。ここで見出された遺伝子は、刺激があるときだけ核内に移行する蛋白の遺伝子であるので、転写因子かコファクターなどをコードする遺伝子であり、重要な遺伝子と考えられる。このようにして、重要遺伝子を見つけだすことができる。
上記のようにして、cDNAライブラリーから核移行蛋白質をコードする遺伝子を単離又は濃縮することができる。さらに、ステップ(c)において、分離された細胞について融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離することを2回又は3回以上繰り返すことにより、目的遺伝子の濃縮倍率を高めることができる。
<2>本発明の利用
例えば、インターフェロンγという細胞を刺激する重要なサイトカイン蛋白質がある。この蛋白質は血中に存在し、細胞膜の外表面のレセプターに結合して、細胞内にシグナルを伝達し、細胞の抗ウィルス活性の誘導など、さまざまな現象を引き起こす。このとき、インターフェロンγのシグナルをレセプターから核内に伝える転写因子の一つにSTAT1蛋白質が知られている。インターフェロンγの刺激が来ると、細胞質中にあったSTAT1は核内に移行し、DNAに結合して様々な遺伝子の発現を誘導することが知られている。それによって抗ウイルス活性が得られる。
本発明の方法を利用することにより、このSTAT1のような転写因子を同定又は取得することが可能である。また、インターフェロンγ刺激によって、STAT1以外の未知の転写因子が核移行しているとすれば、それを見つけ出すこともできる。
このように、生命にとって重要な、いろいろな外界からの刺激に応じて、シグナルを核に伝える蛋白質の遺伝子を、本発明の方法により同定していくことができる。それらの中には、遺伝子配列自体は既知であっても機能が未知であった遺伝子も含まれるであろうし、これまでに全く知られていなかった新しい転写因子やコファクターを見出すこともできる
上記のような転写因子やコファクターを見出することは、例えば抗ウイルス活性を増強するための薬剤(抗ウイルス剤)を開発するためのスクリーニングに使うことができる。例えば、抗ウイルス活性を担う新たな転写因子を本発明によって発見したとする。すると次に、その転写因子を核に移行させる作用を持つ低分子化合物をスクリーニングすることができる。こうして、前記転写因子を核に移行させることによって、抗ウイルス活性を上昇させる医薬品の開発ができる可能性が生まれる。
また、例えば糖尿病改善に関連する転写因子が見出された場合には、その転写因子を活性化したり、核に移行させる薬剤をスクリーニングすることによって、新たな糖尿病薬を開発することが可能になる。
さらに、NFκBのような炎症反応に関わる転写因子が見出された場合には、その転写因子が核内に移行しないように核移行をブロックするような薬剤をスクリーニングすることによって、炎症を抑える医薬品を開発することが可能になる。
また、植物の塩害耐性や低温耐性を増強する転写因子が見出された場合には、その転写因子を核移行させるような方法を見つけることにより、低温耐性や塩害耐性を増強させることが可能になる。
上記のように、新たな転写因子や、既知の転写因子の新たな機能などが発見されると、新しい医薬品、薬剤のスクリーニングや、遺伝子改変などにより、より良い性質を持った遺伝子組換え植物の創出などにつながると考えられる。
<3>TNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニング方法
本願の第2の発明は、TNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニング方法であり、以下のステップを含む。
(a)TNF刺激により細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質を発現する真核細胞を用意するステップと、
(b)前記真核細胞にTNF及び被検物質を作用させるステップと、
(c)前記核内に移行する蛋白質の細胞内局在を検出するステップと、
(d)被検物質を作用させたときに、被検物質を作用させないときに比べて、前記蛋白質の核内への移行を促進又は阻害する被検物質を選択するステップ。
以下、上記方法をステップ毎に説明する。
(1)ステップ(a)
まず、TNF刺激により細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質を発現する真核細胞を用意する。このような真核細胞は、例えば、核移行蛋白質をコードする遺伝子が導入されたことによって、同蛋白質を発現する細胞であり、典型的には、前記第1の発明の方法において、核内移蛋白質の核内への移行の刺激をTNFを用いて行い、核移行蛋白質をコードする遺伝子であると同定された遺伝子を保持する細胞である。核移行蛋白質として、細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質との融合蛋白質を用いると、核移行蛋白質の核内への移行をマーカーによって検出することができる。マーカー蛋白質及びマーカーの検出法は、第1の発明と同様のものを使用することができる。また、核移行蛋白質としては、具体的には後述の表9に示す蛋白質が挙げられるが、これらには限られず、第1の発明によって選択され得る遺伝子産物は、好適に使用され得る。
(2)ステップ(b)
次に、前記真核細胞にTNF及び被検物質を作用させる。被検物質を真核細胞に作用させるには、例えば、細胞を被検物質溶液に浸す等して、細胞外から細胞内に取り込ませるか、又は、核移行蛋白質コードする遺伝子以外の外来遺伝子で真核細胞を形質転換し、同遺伝子を発現されればよい。後者の方法では、同外来遺伝子の発現産物が被検物質となる。このような真核細胞としては、遺伝子ライブラリーで形質転換された形質転換体が挙げられる。
このステップでは、被検物質を作用させず、TNFのみを作用させた真核細胞を、コントロールとして用意しておく。前記遺伝子ライブラリーを、発現制御が可能なプロモーターを持つベクターを用いて作製すると、被検物質の有無を調節することができる。ライブラリーの作製は、第1の発明と同様にして行うことができる。
(3)ステップ(c)
ステップ(b)でTNFを作用させた真核細胞において、核移行蛋白質の細胞内局在を検出する。この操作は、第1の発明における融合蛋白質の細胞内局在の検出と同様にして行うことができる。
(4)ステップ(d)
続いて、被検物質を作用させたときに、被検物質を作用させないときに比べて、核移行蛋白質の核内への移行を促進又は阻害する被検物質を選択する。
このステップで選択される物質は、核移行蛋白質の核内への移行を特異的に阻害又は促進する物質であるか、核移行蛋白質の生成自体を阻害又は促進する物質である。
また、核移行蛋白質の核内への移行を促進又は阻害する物質は、核移行蛋白質の遺伝子配列をもとに、取得することができる。同遺伝子配列上に、すでに知られている核内移行シグナル配列が見出された場合には、その配列に結合する物質を設計する。また、前記遺伝子配列中に公知の核移行シグナル配列が見出されない場合には、遺伝子配列を部分的に欠失させて、核内移行が阻害される部位を同定し、同部位に結合する物質を設計する。このような物質としては、例えばアンチセンスDNA又はリボザイムが挙げられる。また、核移行蛋白質をコードする遺伝子を細胞内に導入することによって、TNFの特異的シグナルを増強することもできる。さらに、核移行蛋白質に結合する蛋白質を、酵母ツーハイブリッド(two hybrid)法等により取得し、両者の結合を阻害する物質をスクリーニング又は設計することができる。
本発明の方法により得られた物質を、TNFとともに、肝細胞株、初代培養肝細胞又は動物に投与し、TNFのいかなる作用が阻害あるいは促進されたかによって、当該物質をいかなる疾患の治療薬として開発するか知ることができる。TNFの作用としては、対象の細胞によって、サイトカインの放出、増殖、分化、アポトーシス誘導、遺伝子発現誘導等が挙げられる。サイトカインの放出は、例えば当該サイトカインをELISA法で測定することにより、検出することができる。また、細胞の増殖は、例えばアイソトープラベルサイミジンの取り込みで測定できる。分化は、例えば分化マーカーを抗体で染色し、FACSで測定することができる。アポトーシス誘導は、例えばタネル法で測定できる。遺伝子発現誘導は、例えばGane ChipまたはPCRで測定できる。
本発明の方法の対象となる疾患としては、具体的には、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、肝線維化、肝硬変、肝癌等の肝疾患があり、さらには、クローン病、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性血管炎、敗血症ショック、糖尿病(インシュリン抵抗性)等が挙げられる。
第1の発明及び第2の発明を組み合わせることにより、核移行蛋白質をコードする遺伝子の検索と、それによって同定された遺伝子を用いたTNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、セルソーティングにおけるHepG2細胞の核の分布を示す図である。縦軸はFSC(大きさ)、横軸はFL1(蛍光強度)を表す。
図2は、GFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを導入したHepG2細胞の核の分布を示す図である。
図3は、ソーティング用の試料(GFP発現ベクターおよbGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを導入した細胞の核の比が49:1である混合物)の核の分布を示す図である。
図4は、セルソーティングにおけるTNFα刺激群の形質転換細胞の核の分布を示す図である。
図5は、コントロール群の形質転換細胞の核の分布を示す図である。
図6は、本発明の方法により検索された蛋白質のTNFα刺激による核移行を示す図である。縦軸はGFPの蛍光量を表す。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例1
無刺激下の細胞中で核移行することが知られているSP-H抗原の核移行シグナル配列を利用した、核移行蛋白質遺伝子のクローニングモデル系の実証
<1>GFP発現ベクターと、GFPと核移行シグナルとの融合蛋白質発現ベクターの構築
ベクターの基本骨格は、市販のプラスミドベクターpQBI-25(6238bp)(宝酒造(株)カタログCode 3131,http://www.takara.co.jp/に塩基配列記載あり)を一部改変して使用した。
改変は、以下の通りに行った。
(1)配列番号1に示したpQBI-25の塩基配列中、塩基番号16と17の間に、GATCの4塩基を挿入した。この操作により、塩基番号12〜17の制限酵素BglIIサイトを破壊した。具体的には、以下のようにして行った。
20ngのpQBI-25を制限酵素BglIIで切断し、dNTP(dATP、dGTP、dCTP、dTTPの混合物)存在下でT4 DNAポリメラーゼ処理して、BglII切断末端を平滑末端化した。次に、DNAリガーゼ(宝酒造(株)、DNA Ligation Kit Ver.1 No.6021)を用いて自己閉環を行った。得られたベクターDNAをエシェリヒア・コリ(E. coli)中で増幅後精製し、制限酵素SacII,XbaIで切断して、後述するライゲーション反応に用いた。
(2)GFP遺伝子の中程に位置する塩基番号1125のCをTに変換した。この操作により、コードされるアミノ酸(Cys)は不変のまま、制限酵素BsgIの認識部位(塩基番号1122〜1127)を破壊した。具体的には、以下の操作を行った。
GFP遺伝子中のBsgIサイトの配列ctgcacをctgtacに変換するために、下記配列を有するPCR用のプライマー(GFP-broken BsgI)を作製した。また、対となるプライマーpCMV4-855Sの配列を、以下に示す。
Figure 0003678233
これらの2つのプライマーを使用し、10ngのpQBi-25 DNAをテンプレートDNAとしてPCRを行った。アンプリコン(増幅産物)は、一端にプライマーGFP-broken BsgIの配列を有し、これにより元々のBsgIサイトがctgtacに変換された。ただし、コードされるアミノ酸配列には変りはなく、蛋白質発現後には同じアミノ酸配列のペプチドが得られる。次に、得られたアンプリコンを、制限酵素NcoIおよびSacIIで処理し、約180bpのフラグメントを得た。
(3)GFP遺伝子のストップコドンを破壊し、そこのcDNAのクローニングサイトを設けるために、塩基番号1696〜1780を、以下のそれぞれのDNA断片と置換した。これらの挿入断片は、一塩基ずつ長さが異なり、塩基配列の3通りの読み取り枠に対応できるようになっている。
Figure 0003678233
具体的には、以下の操作を行った。
下記配列を有する3種のプライマーを合成した。
Figure 0003678233
これらのプライマーには、3’側より順に、制限酵素BsgI,BglIIサイト、読み枠をずらした3つのストップコドン、制限酵素EcoRV、BamHI、XbaIが組み込まれている。これらのプライマーと、上記のプライマーpCMV4-855Sを用い、上記と同様にPCRを行って、3種のアンプリコンを得た。これらのアンプリコンを、それぞれ制限酵素NcoI,XbaIで処理し、3種の約620bpのフラグメントを得た。
上記(1)で得られた、SacII-XbaI断片と、(2)で得られた約180bpのフラグメントと、(3)で得られた3種の620bpフラグメントの内の一種を混合し、ライゲーション反応を行った。反応後のDNAをE. coli JM109のコンピテント細胞にトランスフェクションした。形質転換体からプラスミドDNAを回収してシークエンス解析を行い、目的の配列、すなわちBsgIサイト及びGFP遺伝子固有のストップコドンが破壊され、同遺伝子の下流にクローニングサイトを持つものを選択した。こうして得られた3種のプラスミドをGFP-F1、GFP-F2、GFP-F3と名付けた。GFP-F1、GFP-F2、GFP-F3は、各々順に、pQBI-25の塩基番号1696〜1780の配列が配列番号4〜6に示す配列で置換されている。GFP-F3の塩基配列を、配列番号10に示す。尚、GFP-F1は、上記GFP-F3の塩基番号1700、1701が欠落したもの、また、GFP-F2はGFP-F3の塩基番号1700が欠落したものである。
次に、核移行シグナルを持つSP−H抗原の遺伝子断片を、GFP-F2発現ベクターにクローニングした。SP−H抗原の遺伝子断片は、HepG2細胞から精製したmRNAを逆転写したcDNAをテンプレートとし、以下のプライマーを用いたPCRを行うことによって取得した。なお、SP−H抗原遺伝子の塩基配列は、GenBankにAccession No.Z11583で登録されている。
Figure 0003678233
上記PCRによって約3300bpのアンプリコンを得た。このアンプリコン中に、SP−Hの核移行シグナルをコードする部分が含まれている(参照文献:Primary structure and microtubule-interacting domain of the SP-H antigen: a mitotic map located at the spindle pole and characterrized as a homologous protein to NuMA. T. Maekawa and R. Kuriyama, Journal of Cell Science 105: 589-600, 1993)。
次に、上記アンプリコンを制限酵素BglII、XbaIで処理し、得られた遺伝子断片を、同じく制限酵素BglII、XbaIで処理した発現ベクターGFP-F2にクローニングした。このようにして構築したGFPとSP−H抗原の融合蛋白質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを、GFP-F2-SP-Hと名付けた。GFP-F2-SP-Hを細胞にトランスフェクションすると、細胞内でGFPとSP−H抗原の融合蛋白質が発現し、SP−H抗原の持つ核移行シグナルのために、発現した融合蛋白質は核内に移動する。また、SP−H抗原を含まない発現ベクターGFP-F2は、GFP蛋白を発現するが、核移行シグナルを持たないために、発現したGFP蛋白質は細胞質中に分散する。
<2>ヒト株化細胞へのGFP発現ベクターの導入
上記で作製したGFP発現ベクターおよびGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを、ヒト株化肝細胞HepG2に導入した。
HepG2細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手、ATCC HB8065)を、直径100mmのプレートに1.5×106個播種し、10%FBS含有MEM培地で、湿潤条件下、37℃、CO25%で一晩培養した。ベクターの導入試薬としてFuGeneTM6(Roche社製、製品番号1 814 443)を用い、HepG2細胞に各ベクターを導入した。FuGene22.5μlを無血清MEM培地727.5μlに緩やかに懸濁し、室温に5分間静置した。次に、このFuGene-MEM懸濁液750μlに、それぞれのベクターDNA7.5μgを添加して緩やかに混合後、室温で15分間静置した。この懸濁液をHepG2細胞に添加し、湿潤条件下、37℃、CO25%で一晩培養した。ベクターの導入を確認するため、細胞を2.5%トリプシン-EDTAで剥がし、PBSで洗浄後、PBSに再懸濁し、血球計算板を用い、蛍光顕微鏡下で細胞数およびGFPの発色をカウントした。その結果、約10%の細胞にGFPの発色が認められた。
<3>核の単離
GFP発現ベクターおよびGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを導入したHepG2細胞から、公知の方法(分子生物学研究のための培養細胞実験法、羊土社、pp.141-143)にしたがって、核を単離した。上記<2>で調製した細胞を、5×106個/mlとなるように、氷冷した緩衝液A(表1)に懸濁し、氷中に10分間静置した後、氷冷したダウンスホモゲナイザーに移し、30ストロークの破砕を行った。これを、2,500×g、5分間、4℃で遠心し、上清を捨て、沈澱を氷冷した緩衝液B(表2)に1×107個/mlとなるように懸濁した。再び氷冷したダウンスホモゲナイザーで30ストロークの破砕を行った。遠心管に同量の氷冷した緩衝液C(表3)を添加し、その上層にホモゲネートを重層した。これを3,000×g、10分間、4℃で遠心し、上清を除去し、沈澱の核画分を得た。
Figure 0003678233
<4>フローサイトメータによるソーティング
上記<3>で得られた核画分を、0.5×106個/mlとなるように、FACSFlow(BECTON DICKINSON社製、製品番号342003)に懸濁した。GFP発現ベクターおよびGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを導入した細胞の核の比が49:1となるように混合し、ソーティング用の試料とした。ソーティングは、セルソーターFACSVantageSE(BECTON DICKINSON社製)を用いて行った。結果を、図1及び2に示す。図1は、コントロール(HepG2細胞の核)、図2はGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを導入したHepG2細胞の核の分布を示す。縦軸はFSC(大きさ)、横軸はFL1(蛍光強度)を表している。図1、2の結果から、ソートゲートはR4(図1、2参照)とし、ソート条件は表4の通り設定した。この条件で、上記ソーティング用試料を合計2.1×106個供試した。その結果、ゲートの範囲内に該当する124個の核を分取した(図3)。
Figure 0003678233
<5>核からのプラスミド調製
上記<4>でソートした結果得られた核画分中に含まれるベクターを検証するため、核からプラスミドを調製した。
ソートされた核画分が入ったチューブに、Hirt溶液(0.6%SDS、10mM EDTA)を400μl添加し、チューブ内壁をよく洗浄し、室温で数分放置した、次に5M NaClを100μl添加し、一晩氷冷した。4℃、15000×rpmで20分間遠心し、上清を再度4℃、15000×rpmで10分間遠心した。得られた上清中のプラスミドを、フェノール/クロロホルム溶液で抽出し、さらにクロロホルム抽出を行った。得られるプラスミド量が微量と予想されたため、エタノール沈殿は、グリコーゲンを添加して行った。
<6>プラスミドの検証
上記<5>において得られたプラスミドを構成しているGFP発現ベクターおよびGFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターの割合を検証するため、回収したプラスミドでE. coliを形質転換し、得られた形質転換体のコロニーについてコロニーPCRを行い、ベクターの種類を特定した。
(1)回収したプラスミドによるE. coliの形質転換
上記<5>で得られたプラスミドを10μlの蒸留水に懸濁した。プラスミド溶液2μlとコンピテントセル(E. coliコンピテントセル、ELECTRO MAXTM DH12STM(GIBCO BRL社製、製品番号18312-017))20μlを混合し、エレクトロポレーション用マイクロチャンバーに移し、電圧1.8kV、キャパシタンス25μF、インピーダンス200Ωの条件でエレクトロポレーションを行った。
チャンバーから細胞を直ちに回収し、0.5mlのSOC培地(表5)に懸濁し、37℃、1時間、210rpmで振とうした。これを100μg/mlアンピシリン含有LBプレートに、100μl塗布し、37℃、一晩インキュベートした。その結果、コロニーは、30cfu/プラスミド溶液1μlで得られた。
Figure 0003678233
(2)コロニーPCRおよびアガロースゲル電気泳動
上記<6>で得られたプラスミドを検証するため、40コロニーについてコロニーPCRを行い、アガロースゲル電気泳動を行った。プライマーは、次に示す配列を用いた。
Figure 0003678233
コロニーPCR反応は、Taq DNA Polymerase(Amersham Pharmacia Biotech社製、製品番号T0303Z)を用い、表6の反応液組成で行った。反応条件は次の通りであった。94℃1分→94℃20秒、55℃1分、72℃1分、40サイクル→72℃5分→4℃
Figure 0003678233
コロニーPCR反応で得られた試料3μlをアガロース電気泳動に供試した。その結果、40コロニー中36コロニーが、GFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターを保持し、3コロニーがGFP発現ベクターであった。このことから、GFP-SP-H抗原融合蛋白質発現ベクターが45倍に濃縮されたことが示された。
以上の結果より、サンプル中にわずかに含まれる目的画分を効率的に濃縮することができた。つまり、この結果は多くの核の中から、GFP蛍光を発する核を効率的に濃縮できたことを示している。また、得られた核画分からプラスミドDNAを回収することが可能であり、E. coliにトランスフェクション後、コロニーを得ることができることも示している。これらのコロニーからは、以後の実験に十分量のプラスミドDNAを調製できる。
以上より、薬剤などの刺激によりGFP融合蛋白質が核に移動した場合、上記に示した方法でその核を分離し、核中に含まれるプラスミドDNAを回収できることが明らかとなり、本発明の方法が実行可能であることを示している。
実施例2 刺激下でのみ核移行する蛋白質の検索
ヒトcDNAライブラリーをGFP発現ベクターに挿入し、cDNAによりコードされる蛋白質とGFPとの融合蛋白質を発現するベクターを構築し、刺激下で核移行する蛋白質を検索した。
<1>GFP-cDNAライブラリー発現ベクターの構築
実施例1で作製した3種のGFP発現ベクターGFP-F1、GFP-F2、GFP-F3に、ヒトの正常な肝のcDNAライブラリー(Premade cDNA Library Invitrogen社製、商品番号A550-42)をクローニングした。
cDNAライブラリーが挿入されたpcDNA3.1-Uniベクターが導入されているE. coliのグリセロールストックを、100μg/mlのアンピシリンを含むLBプレートに播き、37℃、16時間培養し、コロニーを得た。得られた1.7×107個のコロニーを回収し、QIAGEN-tip500(キアゲン社製、商品番号12162)を用い、プラスミドを精製した。得られたプラスミドから、挿入cDNA断片を、以下の配列を持つプライマーを用いてPCR増幅した。反応は、表7の反応液組成で、次の条件で行った。94℃1分→94℃20秒、55℃30秒、68℃5分、40サイクル→68℃10分→4℃
Figure 0003678233
Figure 0003678233
得られたアンプリコンを、制限酵素BamHI、XbaIで切断した。次に、得られた遺伝子断片を、制限酵素BglII、XbaIで切断した発現ベクターGFP-F1、GFP-F2、GFP-F3にクローニングした。このようにして、GFPとヒト正常肝cDNAライブラリーによりコードされる蛋白質との融合蛋白質を発現する遺伝子を含む発現ベクターを構築した。
次に、こうして構築したベクターをE. coliコンピテントセル(ELECTRO MAXTM DH12STM(GIBCO BRL社製、製品番号18312-017))にトランスフェクションし、一晩培養した後、プラスミドDNAを精製して、以下の操作を行うのに十分な量のプラスミドDNAを得た。
<2>ヒト株化細胞への発現ベクターの導入
上記で作製したGFP-cDNAライブラリー融合蛋白質発現ベクターを、ヒト株化肝細胞HepG2に実施例1と同様にして導入した。
<3>TNFα刺激
上記<2>でベクターを導入した2日後に、形質転換細胞にTNFαを添加した。形質転換細胞の培養液から培地を除去し、PBSで洗浄後、0.5%FBS含有MEM培地に100ng/ml TNFαを添加した培地を加え、湿潤条件下、37℃、CO25%で4時間培養した。コントロールとして、形質転換細胞をTNFαを含まない0.5%FBS含有MEM培地で同様に培養した。
<4>核の単離
上記で調製したTNFα刺激群およびコントロール群の形質転換細胞から、実施例1と同様の方法で核の単離を行った。
<5>フローサイトメータによるソーティング
得られた核画分を、0.5×106個/mlとなるように、FACSFlow(BECTON DICKINSON社製、製品番号342003)に懸濁し、ソーティングに供試した。ソーティングは実施例1と同様の条件で行った。TNFα刺激群(図4)、コントロール群(図5)の各々について、4.0×106個の核をソーティングに供試した。
その結果、ゲートの範囲内に該当する228個(図4)、332個(図5)の核を分取した。
<6>核からのプラスミド調製
ソーティングにより得られた核画分中に含まれるベクターを検証するため、核からプラスミドを実施例1と同様にして調製した。
<7>プラスミドの検証
上記で得られたプラスミドに挿入されているcDNAインサートを検証するため、回収したプラスミドでE. coliを形質転換し、得られたコロニーについてコロニーPCRを行い、インサートの塩基配列の決定を行った。
(1)回収したプラスミドによるエシェリヒア・コリの形質転換
形質転換は、実施例1と同様にして行った。その結果、TNFα刺激群では63cfu/プラスミド溶液1μl、コントロール群では117cfu/プラスミド溶液1μlで、コロニーが得られた。
(2)コロニーPCRおよびアガロースゲル電気泳動
上記で得られたコロニーについて、インサートを解析するため、TNFα刺激群は240コロニー、コントロール群は336コロニーをコロニーPCRし、アガロースゲル電気泳動を行った。プライマーは以下の配列を用いた
Figure 0003678233
コロニーPCR反応は、LA Taq(宝酒造(株)製、製品番号PR002B)を用い、表8の反応液組成で行った。反応条件は以下の通りであった。94℃1分→94℃20秒、53℃30秒、72℃5分、40サイクル→72℃10分→4℃
Figure 0003678233
コロニーPCR反応で得られた試料3μlをアガロース電気泳動に供試し、PCR増幅が行われたことを確認した。
<7>インサートの塩基配列の決定
上記PCR反応液を精製水で4倍希釈したもの0.8μlに、ExonucleaseIとエビ(shrimp)由来アルカリフォスファターゼ(USB社よりPCR product pre-sequencing kitとして市販、商品番号US70995)を、それぞれ0.12μl加え、1×LA Taq buffer(宝酒造(株)製、製品番号RR002Bに添付)2.76μl加え、37℃、30分反応させた後、80℃で15分加熱した。その反応液3.8μlにシークエンス反応用プライマーとして1.6μM pQBI-1621S(前述、配列番号13)0.8μlとシークエンス反応用混合液(PE Applied Biosystem社製、商品名Big Dye)3μlを加え、次の反応条件にてシークエンス反応を行った。96℃2分→96℃10秒、50℃5秒、60℃4分、30サイクル→4℃
反応終了後、反応液より未反応成分をSephadex-G50を用いてゲル濾過法により除去し、回収画分を加熱、乾燥した。得られたDNAに精製水7.5μlを加え、DNAを溶解し、このDNA溶解液を90℃にて2分加熱処理した後、キャピラリーシークエンサーABI 3700(PE applied biosystems社製)に供試した。
得られた塩基配列を外部データベースUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene)と照合し、検索した結果、TNFα刺激群で67種類(その内、19種類は機能が未知)、コントロール群で120種類の蛋白質が得られた。
またTNFα刺激群のみで発見された蛋白質に、アミノ酸配列のモチーフ解析より転写因子の一種と予測される新規ジンク・フィンガー・プロテイン(zinc finger protein)が含まれていた。また、遺伝子発現を抑制する転写開始因子と推定される未知蛋白質の遺伝子も、TNFα刺激群のみから見い出された。また、同じくTNFα刺激群のみで発見された蛋白質には、EST 11種、機能未知蛋白質6種が含まれており、未知遺伝子の単離に成功した。
<8>本発明の方法により検索された蛋白質のTNFα刺激による核移行の検証
上記のようにTNFα刺激により、核移行する蛋白質をコードする遺伝子が得られたが、その後さらに検討を加え合計約40種の遺伝子を得た。そして、その中から任意に選んだ12種の蛋白質について、確かに核移行するかどうかを別法で検証した。前記12種の蛋白質遺伝子を表9に示す。また、それらのヒトのUniGene番号を以下に示す。
Figure 0003678233
これらの遺伝子を、それぞれGFP遺伝子に連結した融合遺伝子を、実施例1および上記で述べた方法で、HepG2細胞に遺伝子をトランスフェクションした。これら12種の遺伝子は、それぞれトランスフェクション後に細胞内でGFPとの融合タンパク質として発現する。それぞれの融合蛋白質が実際に核移行するかどうかを、前記とは別の方法により検証した。
Figure 0003678233
トランスフェクション48時間後に、一度細胞をトリプシン処理により培養皿から剥がし、細胞密度が測定に至適になるように96穴カルチャープレートに再移植した。トリプシン処理と96穴カルチャープレートへの細胞移植は、細胞培養法の一部として広く一般的に行われている方法を用いて行った。そして、さらに一晩培養した後、10%FBSを含む培地を0.5%FBSを含む培地に交換して、2群に分けた一方のプレートに100ng/mlのTNFαを添加した。4時間CO2インキュベータで37℃で培養し、その後、TNFα含有、非含有のそれぞれのプレートをPBSで洗い培地を交換した。そして、細胞固定用に一般的によく用いられるパラホルムアルデヒド2%と、核を染色する試薬ヘキスト33342(モレキュラープローブ社製)を10ng/ml含むPBS溶液を添加し、細胞を室温で30分間固定した。
その後、PBSで固定液を洗い去り、細胞を観察して、GFP融合タンパク質が核に移行しているかどうかを調べた。観察にはCellomics社のArrayScanシステムを用いた。Cellomics社のArrayScanシステムは、ヘキスト33342を用いた染色により核の位置を確かめ、認識した核の中のGFP量を定量することができる。これにより、TNFα処理によって、GFP融合タンパク質が核に移行したかどうかがわかる。
上記の12種の遺伝子は、未知遺伝子ESTを含み、また公共データベースに登録済みの遺伝子であるが、これまでにTNFα刺激によって、蛋白質が核に移行することは知られていない、TNFαとの関係および機能未知の遺伝子である。また、これらの中には、核構造に関与すること、及び、転写因子様モチーフを含んでいることが推察される遺伝子が含まれており、今回、本発明によって新たにTNFαとの関連が明らかになったことは、本発明の有用性を示すものである。
また、実験のネガティブコントロールとしては、融合蛋白質ではないGFP単独の蛋白質を用い、GFP蛋白質単独では核にまったく移行しないことを確認した。しかし、図6に示すとおり、上記の12種の遺伝子がコードする蛋白質は、いずれもTNFα刺激によって、核内に移行した。核内のGFP蛍光量が増していることが図6から明らかであり、これはTNFα刺激により細胞質中に分布していた融合蛋白質が核内に移行したことを示している。
このように、本発明により検索された遺伝子がコードする蛋白質は、別の検出器すなわちArrayScanシステムを用いても核移行することが確かめられ、本発明によって単離された遺伝子が、間違いなく核に移行する蛋白質をコードしていることが示された。また、単離された遺伝子は機能未知であり、本発明によって新たな発見がなされたということができ、本発明の有用性が示された。
実施例3
実施例2では、TNFα刺激によって核に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索した例について述べた。次に、細胞にヒートショックを付与すること、すなわち細胞を高温にさらすことにより細胞を刺激し、そのとき核に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索した例を述べる。なおヒートショックはいわゆる火傷のモデルであり、細胞は自己防衛のために様々な反応を行い、それに伴ないヒートショックで核に移行する蛋白質も存在するものと考えられる。
実験に用いた細胞は、ヒトの肝臓由来の株化細胞でChangLiver細胞を用いた。細胞入手方法、培養方法は、実施例1、2と同様にした。
細胞への、GFP-cDNAライブラリー融合蛋白質発現ベクターのトランスフェクションは、実施例1および2と同様に行った。細胞は2個の培養ディッシュに分けて培養し、培養は37℃のCO2インキュベーター内で行った。
トランスフェクション24時間後、2個の培養ディッシュの内1個を42℃のCO2インキュベーターに移し、1時間静置して細胞にヒートショックを与えた。そして、次に細胞から核を単離したが、その方法は「ラボマニュアル遺伝子工学」(丸善株式会社)に記載の方法に従った。それぞれの培養ディッシュ中の細胞をトリプシン処理してディッシュから剥がし、遠心操作によって細胞を収集した。細胞をPBS洗浄後、0.5%のNP40を含む10mM Tris-HCl(pH7.4)、10mM NaCl、3mM MgCl2溶液(NP40リシスバッファー)で氷上で10分間処理し、遠心して細胞を沈殿させ、上静を新しいNP40リシスバッファーに置換して細胞を浮遊させた後、再び遠心操作により核を沈殿として回収した。得られた核は加えたPBS中に浮遊させ、次にセルソーターによる核の分離を行った。
それ以降の、核の分離、プラスミドDNAの回収、大腸菌へのトランスフェクション、プラスミドDNAのシークエンス解析を含む操作は、実施例1および2と同様に行った。
実験の結果、ヒートショック処理を行った細胞郡から、熱に反応して核移行する新たな8種の機能未知遺伝子を単離した。
以上の実施例で示したように、本発明により、細胞を様々な条件で刺激したときに、それぞれの刺激に応じて核移行する蛋白質をコードする遺伝子を、効率よく検索することができた。
産業上の利用可能性
本発明により、ある刺激に応答して核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を、簡便に、かつ、確実にクローニングすることができる。また、TNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニングを行うことができる。
【配列表】
Figure 0003678233
Figure 0003678233
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Claims (20)

  1. 以下のステップを含む、真核細胞において細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子を検索する方法;
    (a)細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質と、検索対象の蛋白質の一部または全体との融合蛋白質をコードする遺伝子ライブラリーを真核細胞に導入し、遺伝子導入細胞中で同遺伝子を発現させて前記融合蛋白質を生成させるステップと、
    (b)遺伝子導入細胞を2群に分け、一方の群の細胞のみに、前記核内に移行する蛋白質の核内への移行を刺激するステップと、
    (c)前記刺激した細胞群と、無刺激の細胞群の各々の細胞群について、融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離するステップと、
    (d)分離した細胞又は核から融合蛋白質をコードする遺伝子を回収し、刺激した細胞群から回収された遺伝子と無刺激の細胞群から回収された遺伝子を比較するステップ。
  2. 前記ステップ(d)の後に、刺激した細胞群のみから回収された遺伝子、又は無刺激の細胞群のみから回収された遺伝子を同定するステップを含む請求項1記載の方法。
  3. 前記ステップ(c)において、分離された細胞について融合蛋白質の細胞内局在をマーカー蛋白質により検出し、核に融合蛋白質の局在が認められる細胞又は核を分離することを2回又は3回以上繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記マーカー蛋白質が、自家蛍光を発する蛋白質、発色反応を触媒する蛋白質、抗体により検出可能な抗原ペプチド、又は他の物質と特異的に結合し得るペプチドである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記自家蛍光を発する蛋白質がグリーン・フルオレセント・プロテインである請求項4記載の方法。
  6. ステップ(b)において、核内に移行する蛋白質の核内への移行を、化学物質、生理活性物質、環境変化、他細胞との接触から選ばれる手段により刺激する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 細胞又は核の分離を、セルソーティング、フローサイトメトリー、マイクロダイセクション、又は顕微鏡観察により行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記ステップ(c)において細胞を分離するに先だって、細胞膜の透過性を増大させ、細胞質中の融合蛋白質を細胞外に流出させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ステップ(c)において、細胞の細胞膜を破壊した後に核を分離することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記ステップ(d)において、刺激した細胞群から回収された遺伝子と無刺激の細胞群から回収された遺伝子との比較を、それの遺伝子の検索対象の蛋白質をコードする部分の全長又は一部のシークエンス解析によって行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ステップ(a)において、遺伝子ライブラリーから、無刺激下で自律的に核内に移行する融合蛋白質をコードする遺伝子を除いておくことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記ステップ(a)において、遺伝子ライブラリーから、核外蛋白質で、核内に移行することがない蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を除いておくことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記ステップ(a)において、前記検索対象の蛋白質が遺伝子転写の制御蛋白質であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記ステップ(a)において、前記融合蛋白質が、さらに核外移行シグナルを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 以下のステップを含む、TNF刺激により生じる疾患の治療薬のスクリーニング方法;
    (a)TNF刺激により細胞質から核膜孔を通過して核内に移行する蛋白質を発現する真核細胞を用意するステップと、
    (b)前記真核細胞にTNF及び被検物質を作用させるステップと、
    (c)前記核内に移行する蛋白質の細胞内局在を検出するステップと、
    (d)被検物質を作用させたときに、被検物質を作用させないときに比べて、前記蛋白質の核内への移行を促進又は阻害する被検物質を選択するステップ。
  16. 前記真核細胞は、前記核内に移行する蛋白質をコードする遺伝子が導入されたことによって、同蛋白質を発現することを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 前記核内に移行する蛋白質が、細胞内の局在を検出することが可能なマーカー蛋白質との融合蛋白質であることを特徴とする請求項16記載の方法。
  18. 前記真核細胞が前記蛋白質をコードする遺伝子以外の外来遺伝子で形質転換された形質転換細胞であり、同外来遺伝子の発現産物が被検物質である請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記真核細胞が、遺伝子ライブラリーを導入された形質転換体である請求項18記載の方法。
  20. 前記核内に移行する蛋白質が、ヒトのUniGene番号Hs.12303、Hs.183180、Hs.198246、Hs.83849、Hs.76722、Hs.74034、Hs.129959、Hs.24301、Hs.24756、Hs.161137、Hs.348609、及びHs.24608から選ばれる遺伝子の産物である請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
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