JP2010024440A - グリース組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉱油及び合成油の少なくとも一種からなる基油に、増ちょう剤、および添加剤としてカルボン酸系防錆剤(A)、カルボン酸塩系防錆剤(B)、脂肪酸アミン塩(C)を配合してなるグリース組成物において、グリース組成物全量に対する、カルボン酸系防錆剤(A)の含有量が0.2〜3質量%、カルボン酸塩系防錆剤(B)の含有量が0.2〜3質量%、脂肪酸アミン塩(C)の含有量が0.2〜4質量%である請求項1記載のグリース組成物。
【選択図】なし
Description
このような軸受に封入するグリースには、ハブユニットが雨水や洗浄時の水と接触するため、耐水性を有することが要求されている。封入グリースに水分が混入すると、軸受寿命を大きく低下させることが知られており、例えば、古村らは、潤滑油(#180タービン油)に6%の水分が混入すると、混入しない場合に比べて転がり疲れ寿命が数分の1から20分の1にまで低下することを報告している(非特許文献1)。また、Schatzbergらは、潤滑油中に僅か100ppmの水分が混入するだけで鋼の転がり強さが32〜48%も低下することを報告している(非特許文献2)。
(1)鉱油及び合成油の少なくとも一種からなる基油に、増ちょう剤、および添加剤としてカルボン酸系防錆剤(A)、カルボン酸塩系防錆剤(B)、及び脂肪酸アミン塩(C)を配合してなるグリース組成物であって、
グリース組成物全量に対する、カルボン酸系防錆剤(A)の含有量が0.2〜3質量%、カルボン酸塩系防錆剤(B)の含有量が0.2〜3質量%、脂肪酸アミン塩(C)の含有量が0.2〜4質量%であるグリース組成物。
(2)カルボン酸系防錆剤(A)がコハク酸ハーフエステルであり、カルボン酸塩系防錆剤(B)がナフテン酸亜鉛であり、脂肪酸アミン塩(C)が炭素数8〜20の脂肪酸のアミン塩である、上記1記載のグリース組成物。
(3)有機金属化合物及び硫黄−リン系化合物の少なくとも1種からなる摩耗防止剤(D)を含有する上記1又は2記載のグリース組成物。
(4)グリース組成物全量に対する、摩耗防止剤(D)の含有量が0.1〜5質量%である、上記3記載のグリース組成物。
これらの基油は、単独または混合物として用いることができる。
ウレア化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でもN−アルキル置換モノアミド酸のリチウム塩と二塩基酸のリチウム塩、ジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物がより好ましい。
また、増ちょう剤の配合量は、グリース組成物全量の5〜40質量%が好ましい。配合量が5質量%未満では、グリース状態を維持することが困難となり、40質量%を超えるとグリースが硬くなりすぎて潤滑状態を十分に発揮することが困難となり、何れも好ましくない。
添加量は、グリース組成物全量に対し、カルボン酸系防錆剤(A)は、0.2〜3質量%、カルボン酸塩系防錆剤(B)は、0.2〜3質量%、脂肪酸アミン塩(C)は、0.2〜4質量%であり、何れの成分も、下限値を下回ると十分な効果が得られない傾向があり、上限値を超えて添加しても効果が飽和するとともに、軸受部材表面への付着量が多くなりすぎてグリース由来の酸化膜等の生成を阻害する。
摩耗防止剤(D)としては、有機金属化合物及び硫黄−リン系化合物、例えば、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛及びトリフェニルホスホロチオエートからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。摩耗防止剤(D)の添加量は、グリース組成物全量に対して好ましくは0.1〜5質量%である。
添加量が0.1質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えて添加しても効果の向上が得られない。これらを考慮すると添加量1質量%程度が好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等が挙げられるが、フェノール系酸化防止剤が好適である。
酸化防止剤(E)としては、p−t−ブチル−フエニルサリシレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−フェニルフェノール、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−オクチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−6−t−ブチル−m−クレゾール、テトラキス〔メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−n−オクチル−チオ−4,6−ジ(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)フェノキシ−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、ジフェニルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、フェニレンジアミン、オレイルアミドアミン、フェノチアジン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、4,4’−テトラメチル−ジ−アミノジフェニルメタン、α−ナフチルアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、2−メルカプト−ベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
酸化防止剤(E)の添加量は、グリース組成物全量に対して好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。
添加量が0.05質量%未満では十分な効果が得られず、5質量%を超えて添加しても効果の向上が得られない。
一般的には基油中で増ちょう剤を反応させて得られるグリースに、カルボン酸系防錆剤(A)、カルボン酸塩系防錆剤(B)、及び脂肪酸アミン塩(C)の3成分、及び必要な場合にはさらにその他の添加剤をそれぞれ所定量添加し、ニーダやロールミル等で十分に混練することにより得られる。尚、この処理に際し、加熱することも有効である。また、その他の添加剤を添加する場合は、上記3成分と同時に添加することが工程上好ましい。
表1に示す配合にて試験グリースを調製した。この試験グリースを用いて下記に示す(1)耐水性試験、及び(2)防錆試験を行った。結果を表1及び表2に併記する。
転がり四球試験により、試験グリースの耐水性を評価した。即ち、直径15mmの軸受用鋼球を3個用意し、底面の内径36.0mm、上端部の内径31.63mm、深さ10.98mmの円筒状容器内に正三角形状に置き、試験グリースに水を20%混入させたものを20g塗布し、更に3個の鋼球で形成される窪みに直径5/8インチの軸受用鋼球を1個置き、室温で、直径5/8インチの軸受用鋼球を面圧4.1GPaの負荷を加えながら1000rpmで回転させた。これにより、3個の直径15mmの軸受用鋼球も自転しながら公転するが、剥離が生じるまで連続回転させた。はく離が生じた時点の総回転数を寿命とし、1000×103回転以上を合格とした。
試験軸受として日本精工(株)製玉軸受「608」を用い、各試験グリースを空間容積の20%となるように封入し、恒湿恒温槽(温度80℃、湿度90%)に入れ、一週間放置した後、目視にて内輪の錆の有無を確認した。錆の個数により、以下のようにランク分けを行った。錆の発生の無いaランクを合格(A)とし、それ以外を不合格(B)とした。
aランク:錆の発生無し
bランク:1〜5個の錆発生
cランク:6個以上の錆発生
(1)耐水性試験に記載した転がり四球試験により、試験グリースの酸化膜形成性を評価した。試験グリースのみで200×103回転させた後の直径5/8インチ軸受用鋼球の走行跡部に生成した酸化膜厚さをオージェ電子分光分析装置で測定した。測定した酸化膜厚さから、比較例1の酸化膜厚さに対する酸化膜厚比を算出し、2.0以上を合格とした。
(1)40℃における動粘度98.3mm2/s
(2)40℃における動粘度98.7mm2/s
(3)4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートとp−トルイジンとの反応生成物
(4)4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートとステアリルアミンとの反応生成物
(5)炭素数8と炭素数20の混合脂肪酸のアミン塩
(6)オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
成分(A)〜(C)を含まない比較例1では、耐水性及び防錆性が劣っている。
比較例1に従来の錆止め剤として公知のバリウムスルフォネートを加えた比較例2では防錆性は改良されるが、耐水性が劣っている。
実施例2において、添加剤として成分(A)、(B)又は(C)のみを使用した比較例3、比較例4、及び比較例5では耐水性が劣っている。
実施例2において、添加剤として成分(A)及び(B)のみを使用した比較例6では耐水性が劣っている。
比較例7は成分(A)、(B)及び(C)の量が本発明で規定する量より多いため、グリース由来の酸化膜等の生成が阻害され、酸化膜厚比が小さい。
Claims (4)
- 鉱油及び合成油の少なくとも一種からなる基油に、増ちょう剤、および添加剤としてカルボン酸系防錆剤(A)、カルボン酸塩系防錆剤(B)、脂肪酸アミン塩(C)を配合してなるグリース組成物において、
グリース組成物全量に対する、カルボン酸系防錆剤(A)の含有量が0.2〜3質量%、カルボン酸塩系防錆剤(B)の含有量が0.2〜3質量%、脂肪酸アミン塩(C)の含有量が0.2〜4質量%である請求項1記載のグリース組成物。 - カルボン酸系防錆剤(A)がコハク酸ハーフエステルであり、カルボン酸塩系防錆剤(B)がナフテン酸亜鉛であり、脂肪酸アミン塩(C)が炭素数8〜20の脂肪酸のアミン塩である、請求項1記載のグリース組成物。
- 有機金属化合物及び硫黄−リン系化合物の少なくとも1種からなる摩耗防止剤(D)を含有する請求項1又は2記載のグリース組成物。
- グリース組成物全量に対する、摩耗防止剤(D)の含有量が0.1〜5質量%である、請求項3記載のグリース組成物。
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