JP2004224823A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】40℃における動粘度が20〜50mm2/sである基油に、増ちょう剤としてウレア化合物をグリース全量の8〜30質量%配合し、かつカルボン酸、カルボン酸塩及びエステル系防錆剤から選ばれる防錆添加剤の少なくとも1種を、単独での添加量でグリース全量の0.1〜10質量%、かつ合計での添加量でグリース全量の0.1〜15質量%添加してなることを特徴とするグリース組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に低温から高温までの広い温度範囲において耐剥離性能や耐焼付き性能に優れ、かつ低トルク性能を有するグリース組成物に関する。また、本発明はこのようなグリース組成物を封入した転がり軸受やボールねじ装置、リニアガイド装置等の転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータ等に使用される転がり軸受や、工作機械等に使用されるボールねじ装置やリニアガイド装置では、作動効率を高めるためにトルクが小さいことやメンテナンスフリー(長期間の耐久性)であること等が要求されている。これらの転動装置では潤滑のためにグリース組成物が一般に使用されているが、このような要求を満たすために、低粘度のエステル油系合成油を含むリチウム石けんグリース(例えば、協同油脂(株)製「マルテンプSRK」)が使用されている。しかし、このようなグリース組成物は、低トルク化が図られるものの、エステル系合成油は一般に耐熱性が十分ではなく、焼付き寿命に問題がある。
【0003】
また、例えば自動車のオルタネータ等のエンジン補機にも転がり軸受が多用されているが、これらは水との接触機会も多く、工作機械の中にも水と接触するものがある。そのため、これら転動装置には防錆性能に優れることも要求されており、グリース組成物には防錆性能に優れるスルフォン酸塩が防錆添加剤として添加されることが多い(例えば、特許文献1参照)。しかし、スルフォン酸塩は、グリース組成物の劣化分解による水素の発生を助長し、この水素に起因する白色組織変化を伴った剥離(以下、「白色組織剥離」という)を起こし易いという問題がある。
【特許文献1】
特開平7−179879号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、特に低温から高温まで広い温度範囲にわたり低トルクを維持し、更には白色組織剥離の発生を抑制するグリース組成物、並びに前記グリース組成物を封入してなり低トルクで、白色組織剥離を起こし難く耐久性に優れた転動装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、40℃における動粘度が20〜50mm2/sである基油に、増ちょう剤としてウレア化合物をグリース全量の8〜30質量%配合し、かつカルボン酸、カルボン酸塩及びエステル系防錆剤から選ばれる防錆添加剤の少なくとも1種を、単独での添加量でグリース全量の0.1〜10質量%、かつ合計での添加量でグリース全量の0.1〜15質量%添加してなることを特徴とするグリース組成物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
〔グリース組成物〕
(基油)
本発明において、グリース組成物に使用される基油は、40℃における動粘度が20〜50mm2/sであること以外は特に限定されない。低温でのトルク性能を確保し、高温で油膜が形成され難いために起こる焼付きをより確実に回避するためには、基油の40℃における動粘度は25〜50mm2/sであることがより好ましい。
【0007】
基油に使用できる潤滑油の具体例としては、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑油等が挙げられる。鉱油系潤滑油としては、鉱油を減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。合成油系潤滑基油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンとのコオリゴマー等のポリ−α−オレフィンまたはこれらの水素化物等が挙げられる。芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、さらにはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、さらにはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油等が挙げられる。その他の合成潤滑基油としては、トリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。天然油系潤滑基油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂系油またはこれらの水素化物が挙げられる。これらの潤滑油の中でも、低温から高温までの広い温度範囲での使用を考慮すると、エステル系合成油、合成炭化水素油、エーテル系合成油等が好ましい。
【0008】
上記に挙げた潤滑油は単独でも、適宜組みわせて混合物としても用いることができ、上述した好ましい動粘度に調整される。
【0009】
(増ちょう剤)
ウレア化合物であれば特に制限なく使用できるが、音響性能や長期安定性等を考慮すると、下記一般式(1)〜(3)で表されるジウレア化合物の混合物が好ましい。尚、増ちょう剤の配合量はグリース全量の8〜30質量%であり、8質量%未満ではグリース性状を形成、維持できず、30質量%を超える場合には低トルク化を実現できない。
【0010】
【化2】
【0011】
式中、R1はシクロヘキシル基または炭素数7〜12のアルキルシクロへキシル基、R2は炭素数6〜15の2価の芳香族環含有炭化水素基、R3は炭素数8〜20のアルキル基である。また、混合に際して、上記のジウレア化合物は、〔R1のモル数/(R1のモル数+R3のモル数)〕が0.1〜1.0となるように混合される。この値が0.1未満ではグリース漏れが多くなり、焼付き寿命が短くなるおそれがある。好ましくは、0.2〜0.9である。
【0012】
(防錆添加剤)
白色組織剥離を発生することなく防錆性能を付与するために、カルボン酸、カルボン酸塩及びエステル系防錆剤から選ばれる防錆添加剤の少なくとも1種をグリース組成物に配合する。これらの防錆添加剤は、スルフォン酸塩のようにグリース劣化分解に伴う水素の発生を助長することがなく、白色組織剥離の発生を抑えることができる。防錆添加剤の添加量は、それぞれ単独での添加量でグリース組成物全量の0.1〜10質量%である。添加量が0.1質量%未満では防錆性能の付与が不十分となり、10質量%を超えるとグリースが軟化してグリース漏れを起こしやすくなる。十分な防錆性能の付与とグリース漏れを考慮すると、添加量は0.25〜5質量%が好ましい。更に、防錆剤の総量として0.1〜15質量%とする。
【0013】
カルボン酸塩の中では、ナフテン酸塩が好ましい。ナフテン酸塩はナフテン核を有する飽和カルボン酸塩であればよく、特に制約されることはない。例えば、飽和単環カルボン酸塩(CnH2n−1COOM)、飽和複環カルボン酸塩(CnH2n−3COOM)、脂肪族カルボン酸塩(CnH2n+1COOM)もしくはこれらの誘導体が挙げられる。また、単環のカルボン酸塩としては下記一般式(4)、(5)で表される化合物を例示できる。
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R4は炭化水素基を示しており、具体的にはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、Mは金属元素を示しており、具体的にはCo,Mn,Zn,Al,Ca,Ba,Li,Mg,Cu等である。これらのナフテン酸塩は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0016】
また、カルボン酸塩としてコハク酸誘導体も好ましい。このコハク酸誘導体として、コハク酸、アルキルコハク酸、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、コハク酸イミド等を挙げることができる。これらのコハク酸誘導体は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0017】
(その他の添加剤)
グリース組成物には、必要に応じて、従来より公知の各種添加剤を添加できるが、中でも有機金属塩は剥離性能を向上させる上で有効な添加剤である。有機金属塩の中でも、下記一般式(6)で示されるジアルキルジチオカルバミン酸(DTC)系化合物や、下記一般式(7)で示されるジアルキルジチオリン酸(DTP)系化合物を好適に使用することができる。
【0018】
【化4】
【0019】
式中、Mは金属種を示し、具体的には、Sb,Bi,Sn,Ni,Te,Se,Fe,Cu,Mo,Znが使用される。R5、R6は、同一基であっても、異なる基であってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基を示す。特に好ましい基としては、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルウンデカン基、1−メチルヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−ヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソプロピル基、イソヘプチル基、イソペンチル基、ウンデシル基、エイコシル基、エチル基、オクタデシル基、オクチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロペンチル基、ジメチルシクロヘキシル基、デシル基、テトラデシル基、ドコシル基、ドデシル基、トリデシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ノニル基、プロピル基、ヘキサデシル基、ヘキシル基、ヘニコシル基、ヘプタデシル基、ヘプチル基、ペンタデシル基、ペンチル基、メチル基、第三ブチルシクロヘキシル基、第三ブチル基、2−ヘキセニル基、2−メタリル基、アリル基(上記アリール基と重複するため「アリール基」から変更)、ウンデセニル基、オレイル基、デセニル基、ビニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタデセニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、第二ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、第三オクチルフェニル基、イソノニルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、フェニル基、ベンジル基、1−フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1,1−ジメチルベンジル基、2−フェニルイソプロピル基、3−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、ビフェニル基等があり、またこれらの基はエーテル結合を有しても良い。
【0020】
また、その他の有機金属塩として、下記一般式(8)で示されるメチレンビスアルキルジチオカルバミン酸等の無灰系ジチオカルバメートも使用することができる。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、R7、R8は、炭素数1〜18の炭化水素基を示し、R7、R8は同一の基であっても異なる基であってもよい。
【0023】
上記の有機金属塩は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。尚、組み合わせには制限は無い。また、有機金属塩は、単独で使用される場合、グリース全量の0.1〜10質量%添加される。有機金属塩は微小隙間に反応膜を形成して白色組織剥離を抑制する作用を有するが、添加量が0.1質量%未満ではこの作用が十分に発現しない。一方、添加量が10質量%を超える場合は、金属との間で過剰反応を起こして焼付き性能を悪化させるおそれがあり、更には有機金属塩は高価であるため経済的にも好ましくない。また、有機金属塩を組み合わせて使用する場合は、個々の有機金属塩の添加量は単独使用と同様に0.1〜10質量%であるが、合計量で15質量%以下とすることが好ましい。合計での添加量が15質量%を上回ると、相対的に基油や増ちょう剤、防錆添加剤の配合比率が低下してそれぞれの効果が不十分となる。
【0024】
(製法)
グリース組成物を調製する方法には特に制約はないが、基油中で増ちょう剤を反応させて得たグリース組成物に防錆添加剤、更には必要に応じて有機金属塩や無灰系ジチオカルバメートをはじめとする各種添加剤を添加して十分に撹拌し、均一分散させればよい。この処理を行うときは、加熱するのも有効である。
【0025】
また、上記のグリース組成物のちょう度は、NLGI No.1〜3であることが好ましい。
【0026】
(転動装置)
本発明は、上記のグリース組成物を封入した転動装置に関する。転動装置には制限が無く、転がり軸受、ボールねじ装置、リニアガイド装置等を例示できる。何れの転動装置もその構成には制限が無く、公知のもので構わないが、例えば転がり軸受として図1に示す玉軸受を例示できる。図示される転がり軸受は、内周面に外輪軌道2aを有する外輪2と、外周面に内輪軌道1aを有する内輪1と、外輪軌道2aと内輪軌道1aとの間に転動自在に設けた複数個の転動体である玉3と、複数個の玉3を転動自在に保持する保持器4とを備え、外輪軌道2aと内輪軌道1aとの間の空間6内に上記のグリース組成物Gを充填し、外輪2のシール溝2bに固定したシール部材5により内輪1と外輪2との間の隙間を閉鎖する構成となっている。
【0027】
尚、グリース組成物の封入量は転動装置の種類に応じて適宜選択される。
【0028】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0029】
(実施例1〜2、比較例1〜6)
表1に示す配合にて試験グリースを調製したが、実施例1〜2及び比較例2〜6については、ジイソシアネートを混合した基油と、アミンを混合した同一の基油とを反応させ、撹拌加熱して得られた半固体状物に、予め同一の基油に溶解した防錆添加剤(ナフテン酸亜鉛、コハク酸エステル、スルフォン酸バリウム)や有機金属塩(ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛:ZnDTC、ジアルキルジチオリン酸亜鉛:ZnDTP)を添加して十分撹拌し、徐冷後にロールミルを通すことでグリースを得た。また、比較例1については、ステアリン酸と水酸化リチウムとを基油中で反応させてリチウム石けんを生成し、室温まで冷却した後にスルフォン酸バリウムを添加して十分攪拌し、その後ロールミルを通すことでグリースを得た。そして、試験グリースを下記に示す(1)白色剥離寿命試験、(2)動トルク試験及び(3)焼付き寿命試験に供した。
【0030】
【表1】
【0031】
(1)白色剥離寿命試験
内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受に、上記試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製した。そして、試験軸受を、内輪回転速度10500min−1、室温雰囲気下、ラジアル荷重1320Nの条件で連続回転させ、外輪転走面に剥離が生じて振動が発生したときに回転を停止し、それまでの時間を計測した。試験は試験グリース毎に5回行い、その平均値を白色剥離寿命とした。結果を図2に示すが、比較例2の試験グリースの白色剥離寿命に対する相対値にて示してある。
【0032】
図2から、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、ナフテン酸亜鉛及びコハク酸エステルを配合した試験グリースの中でも、基油の動粘度が大きくなるほど白色剥離寿命が長くなる傾向にあり、50mm2/s(40℃)を超える範囲でほぼ飽和することがわかる。また、基油の動粘度が20mm2/s(40℃)未満では、白色剥離寿命に対する向上効果は殆ど見られない。
【0033】
(2)動トルク試験
内径φ25mm、外径φ62mm、幅17mmの非接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受(図1参照)に、上記試験グリースを3.4g封入して試験軸受を作製した。そして、試験軸受を、内輪回転速度3600min−1、軸受温度30℃、ラジアル荷重30N、アキシアル荷重60Nの条件で30分間連続回転させたときの動トルクを測定した。
【0034】
結果を図3に示すが、基油の動粘度が50mm2/s(40℃)以下の範囲で合格基準の0.1N・m以下を満足していることがわかる。
【0035】
(3)焼付き寿命試験
内径φ25mm、外径φ62mm、幅17mmの非接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受(図1参照)に、上記試験グリースを2.0g封入して試験軸受を作製した。そして、試験軸受を、内輪回転速度10000min−1、軸受温度120℃、ラジアル荷重98Nの条件で連続回転させ、焼付きにより外輪温度が150℃に上昇したときに回転を停止し、それまでの時間を計測した。試験は試験グリース毎に4回行い、その平均値を焼付き寿命とした。結果を図4に示すが、比較例1の試験グリースの焼付き寿命に対する相対値にて示してある。
【0036】
図4から、基油の動粘度が大きくなるほど焼付き寿命が長くなるが、50mm2/s(40℃)を超える範囲でほぼ飽和することがわかる。また、基油の動粘度が20mm2/s(40℃)未満では、焼付き寿命に対する向上効果は殆ど見られない。
【0037】
以上の試験結果から、本発明に従い、動粘度が20〜50mm2/s(40℃)の基油に、ウレア化合物を増ちょう剤とし、ナフテン酸亜鉛やコハク酸エステルを防錆添加剤として添加したグリース組成物は、白色組織剥離や高温での焼付きを起こし難く、低トルクとなることがわかる。
【0038】
(4)防錆剤の配合量の検証
動粘度が40mm2/s(40℃)のポリ−α−オレフィンに、ジウレア化合物(R1/(R1+R3)=0.3)を13質量%、ZnDTCを1質量%含有するベースグリースを調製し、このベースグリースに添加量を変えてナフテン酸亜鉛を加えて試験グリースとした。そして、内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受に試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製し、図5に示す試験装置を用いて剥離発生確率を求めた。尚、図示される試験装置は、一対の支持用軸受71,71で支持されたシャフト70の端部に試験軸受75の内輪を嵌合させ、更に外輪をホルダー72に固定し、プーリ73を介してモータ(図示せず)からの回転を試験軸受75に伝達する構成となっている。試験は、室温にて、内輪回転速度2000〜14000min−1までの急加速と14000〜2000min−1までの急減速との繰り返し、プーリ荷重1570Nの条件で試験軸受75を連続回転させ、試験軸受75の外輪転走面に剥離が生じて振動が発生したとき、あるいは振動が発生しない場合には1000時間経過した時点で試験を終了し、試験軸受を分解して白色組織剥離の有無を観察した。試験数は各試験軸受とも10回であり、白色組織剥離の発生回数から剥離発生確率を下式により算出した。
剥離発生確率(%)=(剥離発生回数/試験数)×100
【0039】
また、内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受に同様の試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製し、1800min−1で1分間回転させた後、軸受内に0.5質量%の塩水を0.5mL注入し、更に1800min−1で1分間回転させた。そして、試験軸受を52℃、100%RHの条件下に48時間放置した後、試験軸受を分解して内外輪軌道面の発錆状態を観察した。評価は下記基準にて行い、2以下を合格とした。
<錆評価点>
1:錆び無し
2:小錆3点以下
3:小錆4点以上
【0040】
剥離発生確率及び錆評価点の結果を図6に示すが、ナフテン酸亜鉛の添加量が0.1〜10質量%の範囲で白色組織剥離の発生と、錆の発生が共に抑えられることがわかる。
【0041】
(5)有機金属塩の配合量の検証
動粘度が40mm2/s(40℃)のポリ−α−オレフィンに、ジウレア化合物(R1/(R1+R3)=0.3)を13質量%、ナフテン酸亜鉛を1質量%、コハク酸エステルを1質量%含有するベースグリースを調製し、このベースグリースに添加量を変えてZnDTCを加えて試験グリースとした。そして、上記と同様にして剥離発生確率を求め、更に上記(3)焼付き寿命試験を行った。
【0042】
剥離発生確率及び焼付き寿命試験の結果を図7に示すが、ZnDTCの添加量が0.1〜10質量%の範囲で白色組織剥離の発生が抑えられ、同時に焼付き寿命も改善されることがわかる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、防錆性が良好で、白色組織剥離の発生を抑え、更に耐焼付き性能にも優れるグリース組成物及び転動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転動装置の一つである転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。
【図2】実施例で得られた基油動粘度と剥離寿命比との関係を示すグラフである。
【図3】実施例で得られた基油動粘度と動トルクとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例で得られた基油動粘度と焼付き寿命比との関係を示すグラフである。
【図5】実施例において剥離発生確率の測定に用いた試験装置を示す概略構成図である。
【図6】実施例で得られたナフテン酸亜鉛の添加量と剥離発生確率または錆評価点との関係を示すグラフである。
【図7】実施例で得られた有機金属塩(ZnDTC)の添加量と剥離発生確率または焼付き寿命時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 玉
4 保持器
5 シール部材
Claims (5)
- 40℃における動粘度が20〜50mm2/sである基油に、増ちょう剤としてウレア化合物をグリース全量の8〜30質量%配合し、かつカルボン酸、カルボン酸塩及びエステル系防錆剤から選ばれる防錆添加剤の少なくとも1種を、単独での添加量でグリース全量の0.1〜10質量%、かつ合計での添加量でグリース全量の0.1〜15質量%添加してなることを特徴とするグリース組成物。
- 防錆添加剤が、ナフテン酸塩及びコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
- 有機金属塩及び無灰系ジチオカルバメートから選ばれる少なくとも1種を、グリース全量の0.1〜10質量%添加してなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のグリース組成物。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のグリース組成物を封入したことを特徴とする転動装置。
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