しかしながら、特許文献1には、自車両に対してどの方向から障害物が接近してくるかの情報や経路案内における自車両の進行すべき方向の情報などといった方向の情報を、ステアリングホイールの振動の大きさの違いによってドライバーに提示する方法については開示されていない。よって、特許文献1に開示の技術では、方向の情報をドライバーに認識させることができないという問題点を有していた。
なお、人体においては、刺激を伝える末梢神経は手のひらや指に集中しているため、シートに接触する背中や大腿部よりも、ステアリングホイールに接触する手のひらや指の方が、刺激をより明確に知覚することができる。よって、シートに接触する背中や大腿部よりもステアリングホイールに接触する手のひらや指の方が、刺激によって得られる仮現運動現象がより顕著となる。
しかしながら、特許文献2に開示の技術では、自車両にどちらの方向から対象物が接近しているかの情報を、シートに複数備えられた振動子の振動によって提示する技術は開示されているものの、自車両にどちらの方向から対象物が接近しているかの情報を、ステアリングホイールの振動によって提示する技術は開示されていない。よって、特許文献2に開示の技術では、自車両にどちらの方向から対象物が接近しているかの情報を明確にドライバーに認識させることができない可能性が高いという問題点を有していた。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることを可能にする情報提示装置および情報提示システムを提供することにある。
請求項1の情報提示装置は、上記課題を解決するために、車両のステアリングホイールに設けられるとともに、前記ステアリングホイールを握った前記車両のドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を、前記ステアリングホイール上の複数箇所で発生させることが可能な刺激手段と、方向の情報を取得する方向情報取得手段と、前記方向情報取得手段で取得した方向の情報に応じて、前記ドライバーに生じる前記皮膚感覚が当該方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動を前記ドライバーに起こさせる、前記ステアリングホイール上の複数箇所にわたる連続的な刺激を、前記刺激手段によって発生させる情報提示制御手段と、を備えていることを特徴としている。
これによれば、方向情報取得手段で取得した方向の情報に従った方向を示す向きにドライバーに生じる皮膚感覚が移動するかのような仮現運動を、ステアリングホイールを握ったドライバーに起こさせることが可能になるので、方向についての情報を、より直感的にドライバーに認識させることが可能になる。
また、ドライバーがステアリングホイールを握ったときに通常ステアリングホイールに接するドライバーの指および手のひらは、刺激を伝える抹消神経が人体の中でも特に集中している部位であるので、方向についての情報を、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項2の情報提示装置では、前記刺激手段は、少なくとも触覚、痛覚、および温度覚のうちのいずれかの皮膚感覚を生じさせる刺激を発生させることが可能であることを特徴としている。
この請求項2のようにしても、方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項3の情報提示装置では、前記ステアリングホイール上のどの領域を前記ドライバーが握っているのかを検出する接触検出手段をさらに備え、前記情報提示制御手段は、前記接触検出手段で検出した領域に、前記仮現運動を前記ドライバーに起こさせる刺激を、前記刺激手段によって発生させることを特徴としている。
これによれば、ステアリングホイール上の、ドライバーが握っている領域でのみ刺激手段による刺激を発生させることが可能になる。よって、ドライバーが握っていない領域に刺激手段による刺激を発生させる無駄を省くことが可能になる。
また、ステアリングホイール上の、ドライバーが握っている領域が複数あるか否かによって、ドライバーがステアリングホイールを両手で握っているか片手で握っているかを判定することも可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイールを両手で握っているか片手で握っているかに応じて、どちらの場合であっても方向情報取得手段で取得した方向の情報に従った方向を示す向きにドライバーに生じる皮膚感覚が移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせるように、刺激手段で発生させる刺激をそれぞれの場合で切り替えることが可能になる。
また、請求項4の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記車両の側面方向の複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ステアリングホイール上の、車両の側面方向の複数箇所で刺激手段による刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の左右方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることが可能になる。例えば、ドライバーがステアリングホイールを両手で握っている場合には、左手側から右手側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の右方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができ、右手側から左手側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の左方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができる。よって、請求項4の構成によれば、左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項5の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記ステアリングホイールの内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ステアリングホイール上の、ステアリングホイールの内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所で刺激手段による刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の左右方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることが可能になる。車両の直進時にドライバーが両手で通常握るステアリングホイール上の2つの領域(つまり、いわゆる10時10分の位置)のうちの右手側の領域を、車両の直進時にドライバーが握る場合を例に挙げて説明を行うと以下のようになる。例えば、ドライバーがステアリングホイールを右手だけで握っている場合には、内周側から外周側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の右方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができ、外周側から内周側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の左方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができる。なお、ドライバーがステアリングホイールを左手だけで握っている場合にはこの逆になる。よって、請求項5の構成によれば、ステアリングホイールを片手で握っているドライバーに対しても、左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確に認識させることが可能になる。
また、請求項6の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記ステアリングホイールの円周方向の所定の範囲内でその円周方向に並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ステアリングホイールをドライバーが握ったときの片手が接触する領域を少なくとも含む範囲を所定の範囲とすれば、ステアリングホイール上の、ステアリングホイールの円周方向に並んだ複数箇所で刺激手段による刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の上下方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることが可能になる。なお、上述の車両の上下方向は、車載のナビゲーション装置のディスプレイに表示される2次元および3次元の地図上では一般的に車両の前後方向に対応するため、ドライバーは上述の上下方向を車両の前後方向と一般的に認識する。車両の直進時にドライバーが両手で通常握るステアリングホイール上の2つの領域(つまり、いわゆる10時10分の位置)のうちの少なくとも一方を、車両の直進時にドライバーが握る場合を例に挙げて説明を行うと以下のようになる。例えば、ドライバーがステアリングホイールを握っている場合には、円周方向の上側から下側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の後方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができ、下側から上側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の前方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができる。従って、請求項6の構成によれば、前後方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項7の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記ステアリングホイールの回転軸方向に並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ステアリングホイール上の、ステアリングホイールの回転軸方向に並んだ複数箇所で刺激手段による刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の前後方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることが可能になる。例えば、ドライバーの近手側(つまり、ステアリングホイールの位置よりもドライバーに寄った側)から遠手側(つまり、ステアリングホイールの位置よりも車両のフロントに寄った側)に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の前方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができ、遠手側から近手側に刺激を連続的に発生させることによって、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の後方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることができる。よって、請求項7の構成によれば、前後方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項8の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記内周側から外周側にかけての径方向および前記円周方向の所定の範囲内でその円周方向に並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
また、請求項9の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記内周側から外周側にかけての径方向および前記ステアリングホイールの回転軸方向に並んだ所定の範囲内の複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
請求項8および9によれば、ステアリングホイールをドライバーが握ったときの片手が接触する領域を少なくとも含む範囲を所定の範囲とすれば、ステアリングホイールを片手で握っているドライバーに対して、左右方向および前後方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確に認識させることが可能になる。
また、請求項10の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記ステアリングホイールの円周方向の全周にわたって並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を握った場合であっても、少なくともステアリングホイールの円周方向に並んだ複数箇所からドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。つまり、上述したように、ドライバーに生じる皮膚感覚が車両の前後方向に移動するかのような仮現運動を起こさせることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を握った場合であっても、少なくとも前後方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、ドライバーがステアリングホイールを両手で握っているときには、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を握った場合であっても、少なくとも車両の側面方向に並んだ複数箇所からドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイールを両手で握っているときであれば、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項11の情報提示装置では、前記刺激手段は、前記ステアリングホイール上の、前記ステアリングホイールの円周方向の全周にわたって複数列に並んだ複数箇所で前記刺激を連続的に発生させることが可能であることを特徴としている。
これによれば、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を握った場合であっても、少なくともステアリングホイールの円周方向に並んだ複数箇所およびステアリングホイールの内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所からドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイールの持ち手のどの箇所を片手で握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項12の情報提示装置では、前記刺激手段は、刺激を発生させる素子である刺激素子を複数個備えることによって、前記ステアリングホイールの複数箇所で刺激を発生させることを特徴としている。
さらに、請求項13の情報提示装置では、前記刺激素子は、振動を発生させる振動子であることを特徴としている。
この請求項12および13のようにしても、方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項14の情報提示装置では、前記刺激素子は、局部的な押圧力を発生させる素子であることを特徴としている。
これによれば、局部的な押圧力を発生させることができるので、刺激素子として振動を発生させる振動子を用いた場合に比べ、ステアリングホイールを握ったドライバーに対して、より局部的な刺激を与えることができる。従って、よりはっきりとした仮現運動をドライバーに起こさせることが可能になる。
また、請求項15の情報提示装置では、前記刺激手段は、刺激の周波数、刺激の強度、および刺激の継続時間のうちの少なくとも一つを用いて、前記仮現運動をドライバーに起こさせるような振動を与えることを特徴としている。
この請求項15のようにしても、方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項16の情報提示システムは、上記課題を解決するために、前記のいずれかの情報提示装置と、車両の目的地への経路を探索するとともに、この探索した経路をもとに前記車両の進行すべき方向を案内する車載のナビゲーション装置と、を含み、前記方向情報取得手段は、前記進行すべき方向の情報を前記ナビゲーション装置から取得し、前記情報提示制御手段は、前記進行すべき方向の情報に応じて、前記ドライバーに生じる前記皮膚感覚が当該進行すべき方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動を前記ドライバーに起こさせる、前記ステアリングホイール上の複数箇所にわたる連続的な刺激を、前記刺激手段によって発生させることを特徴としている。
これによれば、車載のナビゲーション装置によって探索された経路の案内において、自車両が進行すべき方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、請求項17の情報提示システムは、上記課題を解決するために、前記のいずれかの情報提示装置と、自車両に障害物がどの方向から接近してくるかを検知する車載の障害物検知装置と、を含み、前記方向情報取得手段は、障害物が自車両に接近してくる方向である障害物接近方向の情報を前記障害物検知装置から取得し、前記情報提示制御手段は、前記障害物接近方向の情報に応じて、前記ドライバーに生じる前記皮膚感覚が当該障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動を前記ドライバーに起こさせる、前記ステアリングホイール上の複数箇所にわたる連続的な刺激を、前記刺激手段によって発生させることを特徴としている。
これによれば、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
以下、本発明の実施形態の一例について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された情報提示システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す情報提示システム100は、ステアリングホイールを備えた車両に搭載されるものであり、接触事故防止装置1および情報提示装置2を含んでいる。また、情報提示装置2は、方向情報取得部3、刺激部4、接触検出部5、および情報提示制御部6を備えている。なお、情報提示システム100を搭載している上述の車両を以降では自車両と呼ぶ。
接触事故防止装置1は、歩行者や自車両以外の車両などの障害物が自車両に対してどの方向から接近しているのかを検知して自車両との接触の危険性の高低を判定し、自車両のドライバーに警告等を行う装置である。よって、接触事故防止装置1は、請求項の障害物検知装置として機能する。なお、接触事故防止装置1において障害物が自車両に対してどの方向から接近しているのかを検知する手段としては、ミリ波レーダー、超音波ソナー、撮像カメラ、車車間通信などのいずれを用いても構わない。また、接触事故防止装置1としては、同様の機能を有する周知の装置を用いる構成であってもよい。なお、他車両には、自転車、原動機付自転車、自動二輪車、および自動車などを含むものとする。
情報提示装置2の方向情報取得部3は、障害物が自車両に接近してくる方向(以下、障害物接近方向と呼ぶ)の情報に加え自車両との接触の危険性の高低の情報(以下、接触危険性情報と呼ぶ)を、接触事故防止装置1から取得する。よって、方向情報取得部3は、請求項の方向情報取得手段として機能する。また、方向情報取得部3は、取得した障害物接近方向の情報および接触危険性情報を情報提示制御部6に送る。
情報提示装置2の刺激部4は、自車両のステアリングホイール7(図2参照)を握ったドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を発生させる。また、刺激部4は、ステアリングホイール7上の複数箇所で刺激を発生させることが可能であって、情報提示制御部6の指示に従ってこれらの複数箇所にわたる連続的な刺激を発生させる。よって、刺激部4は、請求項の刺激手段として機能する。刺激部4は、振動を発生させる複数の周知の振動子を備えており、これらの複数の振動子をステアリングホイール7上の複数箇所に配置していることによって、ドライバーに触覚を生じさせる刺激をステアリングホイール7上の複数箇所で発生させることを可能にしている。なお、制御部4の複数の振動子によるステアリングホイール7上の複数箇所にわたる連続的な刺激の発生の詳細については後述する。
情報提示装置2の接触検出部5は、ドライバーが自車両のステアリングホイール7上のどの領域を握っているのかを検出する。なお、接触検出部5は、圧力がかかったことを検出する複数の周知の感圧素子を備えており、これらの感圧素子をステアリングホイール7上の複数箇所に配置することによって、ドライバーが自車両のステアリングホイール7上のどの領域を握っているのかを検出することを可能にしている。また、接触検出部5は、検出結果を情報提示制御部6に送る。なお、接触検出部5の複数の感圧素子のステアリングホイール7上の配置箇所の詳細については後述する。
情報提示装置2の情報提示制御部6は、通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU、ROMやRAMなどのメモリ、I/O、およびこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)を備えている。そして、情報提示制御部6は、方向情報取得部3から送られてきた障害物接近方向の情報に応じて、接触検出部5で検出した領域においてドライバーに生じる皮膚感覚が当該障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる刺激を、刺激部4によって発生させる制御を行う。また、情報提示制御部6は、方向情報取得部3から送られてくる接触危険性情報が、接触の危険性が高いことを示す情報であった場合に、上述した刺激を刺激部4によって発生させる指示(つまり、制御)を行う。なお、ここで言うところの仮現運動とは、2つ以上の刺激を連続的あるいは間隔を挟んで異なる位置に発生させると、1つの刺激があたかもこの異なる位置間を運動しているかのように人間において知覚される現象である。また、障害物接近方向の情報に応じた情報提示制御部6による刺激部4の制御の詳細については後述する。
次に、図2を用いて、ステアリングホイール7上への刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子の配置の一例について説明を行う。図2は、ステアリングホイール7上への刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子の配置の一例を示す模式図である。刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子は、ステアリングホイール7のドライバー側の面上に配置されているものとする。また、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子は、例えば車両の直進時にドライバーが両手で通常握るステアリングホイール7上の2つの領域(つまり、いわゆる10時10分の位置)の付近にそれぞれ配置されるものとする。なお、図2中の破線で囲ったステアリングホイール7上の2つの領域のうち、ドライバーの右手が握る側の領域を右手側領域8aとし、左手が握る側の領域を左手側領域8bとして以降の説明を行う。
なお、ここでは、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子を配置するステアリングホイール7上の2つの領域として、いわゆる10時10分の位置を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、いわゆる8時20分の位置であってもよいし、他の位置であってもよい。
刺激部4の複数の振動子は、ステアリングホイール7の内周側に配置される振動子である内周側振動子41A〜41Fとステアリングホイール7の外周側に配置される振動子である外周側振動子41a〜41fとに分けられる。また、内周側振動子41A〜41Cおよび外周側振動子41a〜41cは、図2に示すように右手側領域8aの付近に配置され、内周側振動子41D〜41Fおよび外周側振動子41d〜41fは、図2に示すように左手側領域8bの付近に配置される。さらに、内周側振動子41A〜41Cと外周側振動子41a〜41cとは、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んでいる。また、内周側振動子41D〜41Fと外周側振動子41d〜41fとについても、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んでいる。
また、内周側振動子41A〜41Fおよび外周側振動子41a〜41fは、ステアリングホイール7の円周方向に所定の間隔で配置されている。なお、この所定の間隔とは、ドライバーがステアリングホイール7を握った場合に、ドライバーの片手に少なくとも内周側振動子41A〜Cのうちの2つ以上および外周側振動子41a〜41cのうちの2つ以上、または内周側振動子41D〜41Fのうちの2つ以上および外周側振動子41d〜41fのうちの2つ以上が接触する間隔であるものとする。なお、この場合のドライバーとしては、標準的な体格のドライバーを考慮したものであってもよいし、性別および体格を問わないあらゆるドライバーを考慮したものであってもよい。
接触検出部5の複数の感圧素子51a〜51fは、前述の右手側領域8aの付近と左手側領域8bの付近とのそれぞれに配置される。具体的には、感圧素子51a〜51cは右手側領域8aの付近に配置され、感圧素子51d〜51fは左手側領域8bの付近に配置される。また、感圧素子51a〜51cは、ステアリングホイール7のドライバー側の面上の、内周側振動子41A〜41Cと外周側振動子41a〜41cとの間に配置され、感圧素子51d〜51fは、ステアリングホイール7のドライバー側の面上の、内周側振動子41D〜41Fと外周側振動子41d〜41fとの間に配置される。さらに、感圧素子51a〜51fは、ステアリングホイール7の円周方向に所定の間隔で配置されている。なお、この所定の間隔とは、ドライバーがステアリングホイール7を握った場合に、ドライバーの片手に少なくとも感圧素子51a〜51fのうちの1つ以上が接触する間隔であるものとする。また、この場合のドライバーとしても、標準的な体格のドライバーを考慮したものであってもよいし、性別および体格を問わないあらゆるドライバーを考慮したものであってもよい。
なお、図2に示す配置例では、ドライバーが右手側領域8aを握った場合には、内周側振動子41A・41Bおよび外周側振動子41a・41bの4つと感圧素子51a・51bの2つとが接触するよう配置されている。また、ドライバーが左手側領域8bを握った場合には、内周側振動子41E・41Fおよび外周側振動子41e・41fの4つと感圧素子51e・51fの2つとが接触するよう配置されている。
また、本実施形態では、ステアリングホイール7のドライバー側の面上の、内周側振動子と外周側振動子との間に感圧素子が配置される構成を示したが、必ずしもこれに限らない。感圧素子の配置場所は、ステアリングホイール7をドライバー握った場合に、片手がステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んだ振動子とステアリングホイール7の円周方向に並んだ振動子との少なくとも4つの振動子に触れたときに、少なくとも1つの感圧素子にも触れる位置であればどこであってもよい。
次に、図3を用いて、障害物接近方向の情報に応じた情報提示制御部6による刺激部4の制御について説明を行う。図3は、障害物接近方向と刺激部4の複数の振動子の作動順序との対応関係を示す表である。なお、図3では、ステアリングホイール7をドライバーが両手で握っている場合の刺激部4の複数の振動子の作動順序の設定である「両手で握る場合」の設定の一例と、ステアリングホイール7をドライバーが右手で握っている場合の刺激部4の複数の振動子の作動順序の設定である「片手で握る場合(右手)」の設定の一例と、を例として挙げる。また、図3の「両手で握る場合」の設定の一例では、右手側領域8aおよび左手側領域8bをドライバーが握っているものとし、図3の「片手で握る場合(右手)」の設定の一例では、右手側領域8aをドライバーが握っているものとする。
なお、情報提示制御部6では、接触検出部5での検出結果をもとに、ステアリングホイール7上のドライバーが握っている領域に配置されている複数の振動子の作動を制御する。具体例を挙げると、感圧素子51a・51bで圧力がかかったことを検出した検出結果が得られた場合には、右手側領域8aをドライバーが握っているものと判断し、内周側振動子41A・41Bおよび外周側振動子41a・41bの4つの振動子の作動を制御することになる。
まず、「両手で握る場合」の設定について説明を行う。図3に示すように、自車両の右側前方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41a、外周側振動子41bの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。これによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、右手において皮膚感覚が車両の下方向に移動するかのような仮現運動を起こす。なお、車両の上下方向は、車載のナビゲーション装置のディスプレイに表示される2次元および3次元の地図上では一般的に車両の前後方向に対応するため、ドライバーは上述の下方向を車両の後方向と一般的に認識しやすい。よって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の右側前方から右側後方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。
また、自車両の左側前方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41f、外周側振動子41eの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左側前方から左側後方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。さらに、自車両の右側後方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41b、外周側振動子41aの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の右側後方から右側前方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。また、自車両の左側後方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41e、外周側振動子41fの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左側後方から左側前方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。
つまり、ステアリングホイール7の円周方向に並んだ複数箇所で刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、皮膚感覚が車両の前後方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる。
さらに、自車両の左方向から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41e、外周側振動子41bの順(または、外周側振動子41e、内周側振動子41E、内周側振動子41B、外周側振動子41bの順)に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。これによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、左手から右手に皮膚感覚が移動するかのような仮現運動(つまり、皮膚感覚が車両の左右方向に移動するかのような仮現運動)を起こす。よって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左方向から右方向に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。また、自車両の右方向から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41b、外周側振動子41eの順(または、外周側振動子41b、内周側振動子41B、内周側振動子41E、外周側振動子41eの順)に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の右方向から左方向に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。
つまり、自車両の側面方向の複数箇所(詳しくは、左右方向の位置が互いに異なる複数箇所)で刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、皮膚感覚が車両の左右方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる。
続いて、「片手で握る場合(右手)」の設定について説明を行う。自車両の右側前方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報と自車両の右側後方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報とに対しては、「両手で握る場合」の設定と同様である。
また、自車両の左側前方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、図3に示すように、内周側振動子41A、内周側振動子41Bの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。これによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、ステアリングホイール7に接触している右手の領域のうちの上述の内周側(つまり、左側)において皮膚感覚が車両の下方向に移動するかのような仮現運動を起こす。なお、前述したように、ドライバーは上述の下方向を車両の後方向と一般的に認識しやすい。よって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左側前方から左側後方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。さらに、自車両の左側後方から障害物が接近しているという旨の障害物接近方向の情報に対しては、内周側振動子41B、内周側振動子41Aの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左側後方から左側前方に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。
つまり、ステアリングホイール7の円周方向およびステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所のうちの内周側または外周側の一方のみで刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、ステアリングホイール7を握っているのが片手のみの場合であっても、皮膚感覚が車両の左右のうちの一方の側の前後方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる。
また、自車両の左方向から障害物が接近しているという障害物接近方向の情報に対しては、内周側振動子41B、外周側振動子41bの順に、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。これによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、ステアリングホイール7に接触している右手の領域のうちの上述の内周側(つまり、左側)から上述の外周側(つまり、右側)に皮膚感覚が移動するかのような仮現運動を起こす。よって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の左方向から右方向に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。また、自車両の右方向から障害物が接近しているという障害物接近方向の情報に対しては、外周側振動子41b、内周側振動子41Bに、刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。この場合には、上述したのと同様の仕組みによって、ステアリングホイール7を握っているドライバーは、自車両の右方向から左方向に向けて皮膚感覚が移動するかのような知覚をすることになる。
つまり、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所で刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、ステアリングホイール7を握っているのが片手のみの場合であっても、皮膚感覚が車両の左右方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる。
説明の便宜上、図3では、ステアリングホイール7をドライバーが左手で握っている場合の刺激部4の複数の振動子の作動順序の設定である「片手で握る場合(左手)」の設定の一例を省略したが、「片手で握る場合(左手)」の設定も、「片手で握る場合(右手)」の設定と同様に行う。詳しくは、「片手で握る場合(左手)」の設定では、「片手で握る場合(右手)」の設定に対して、外周側振動子41aの代わりに内周側振動子41F、外周側振動子41bの代わりに内周側振動子41E、内周側振動子41Aの代わりに外周側振動子41f、内周側振動子41Bの代わりに外周側振動子41eを用いることになる。
なお、刺激部4の複数の振動子は、振動周波数、振動強度、および振動の継続時間のうちの少なくとも一つを用いて、前述の仮現運動をドライバーに起こさせるような振動を与えるものとする。
また、情報提示制御部6は、情報提示制御部6のROMなどのメモリに、図3に示す表と同様のテーブルを予め格納しておき、方向情報取得部3から送られてきた障害物接近方向の情報をもとにこのテーブルを参照することによって、当該障害物接近方向の情報に応じた制御部4の制御を行う構成としてもよい。また、例えば、情報提示制御部6のRAMなどのメモリに、図3に示す表のような設定で制御部4の制御を行わせるプログラムを格納しておき、方向情報取得部3から送られてきた障害物接近方向の情報をもとにこのプログラムを動作させることによって、当該障害物接近方向の情報に応じた制御部4の制御を行う構成としてもよい。
なお、図3で示した障害物接近方向と刺激部4の複数の振動子の作動順序との対応関係はあくまで一例であって、これに限らない。例えば、ドライバーの握り位置に応じてさらに複数の対応関係が存在してもよいし、さらに別の障害物接近方向に対応する刺激部4の複数の振動子の作動順序が対応付けられた対応関係が存在してもよい。
次に、図4を用いて、情報提示装置2での動作フローについての説明を行う。図4は、情報提示装置2での動作フローを示すフローチャートである。なお、本フローは、自車両のイグニッションスイッチがオンされたときに開始される。また、図4のフローでは、ステアリングホイール7を両手で握ったときに右手側領域8aおよび左手側領域8bを、ステアリングホイール7を右手のみで握ったときに右手側領域8aを、そして、ステアリングホイール7を左手のみで握ったときに左手側領域8bを握った場合の一例を挙げて説明を行う。
まず、ステップS1では、情報提示装置2全体の初期設定および動作確認を実施し、ステップS2に移る。なお、動作確認において不具合が発見された場合には、例えばエラー表示などを行ってフローを終了する。
ステップS2では、接触検出部5によって、ステアリングホイール7上のドライバーの握り位置の検出を行い、ステップS3に移る。
ステップS3では、情報提示制御部6が、接触検出部5の検出結果に基づいて、ドライバーがステアリングホイール7を両手で握っているか片手で握っているかを判別する。この判別は、例えば感圧素子51a〜51cのうちのいずれかと感圧素子51d〜51fのうちのいずれかとの両方でドライバーとの接触を検出したか否かによって行えばよい。つまり、両方でドライバーとの接触を検出した場合には、両手で握っていると判別し、一方でのみドライバーとの接触を検出した場合には、片手で握っていると判別すればよい。そして、両手で握っていると判別した場合(ステップS3でYes)には、ステップS4に移る。また、片手で握っていると判別しなかった場合(ステップS3でNo)には、ステップS7に移る。
ステップS4では、方向情報取得部3が障害物接近方向の情報および接触危険性情報を取得(つまり、走行環境検出)し、ステップS5に移る。
ステップS5では、情報提示制御部6が、方向情報取得部3から送られてくる接触危険性情報に基づいて、自車両との接触の危険性が高い障害物が存在する(つまり、接触危険性あり)か否かを判定する。そして、接触危険性ありと判定した場合(ステップS5でYes)には、ステップS6に移る。また、接触危険性ありと判定しなかった場合(ステップS5でNo)には、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
ステップS6では、情報提示制御部6が、方向情報取得部3から送られてくる障害物接近方向の情報と接触検出部5の検出結果に基づいて、ステアリングホイール7上のドライバーの握り位置(つまり、両側の握り位置)において、障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる刺激を、刺激部4によって発生させる。そして、刺激部4が上述の刺激を発生させ、ドライバーに上述の仮現運動を起こさせることによって、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報を提示する。そして、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
具体的には、図3に示した表中の「両手で握る場合」の設定に従った順番で刺激部4の複数の振動子を連続的に振動させるよう情報提示制御部6が刺激部4の制御を行い、制御部4の複数の振動子を作動させる。一例を挙げると、ドライバーが両手でステアリングホイール7を握っていて、見通しの悪い交差点で右側から接触危険性ありと判定された障害物が接近してきている場合には、外周側振動子41b、内周側振動子41B、内周側振動子41E、外周側振動子41eの順(または、外周側振動子41b、外周側振動子41eの順)に、その障害物が通り過ぎるまで刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。
ステップS7では、情報提示制御部6が、ドライバーがステアリングホイール7を右手と左手とのうちのどちらで握っているかを判別(つまり、左右判別)し、ステップS8に移る。この判別は、例えば、感圧素子51a〜51cのうちのいずれかと感圧素子51d〜51fのうちのいずれかとのうちのいずれでドライバーとの接触を検出したかに従って行えばよい。つまり、感圧素子51a〜51cのうちのいずれかでドライバーとの接触を検出した場合には、ドライバーがステアリングホイール7を右手で握っていると判別し、感圧素子51d〜51fのうちのいずれかでドライバーとの接触を検出した場合には、ドライバーがステアリングホイール7を左手で握っていると判別すればよい。
ステップS8では、方向情報取得部3が障害物接近方向の情報および接触危険性情報を取得(つまり、走行環境検出)し、ステップS9に移る。
ステップS9では、情報提示制御部6が、方向情報取得部3から送られてくる接触危険性情報に基づいて、自車両との接触の危険性が高い障害物が存在する(つまり、接触危険性あり)か否かを判定する。そして、接触危険性ありと判定した場合(ステップS9でYes)には、ステップS10に移る。また、接触危険性ありと判定しなかった場合(ステップS9でNo)には、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
ステップS10では、情報提示制御部6が、方向情報取得部3から送られてくる障害物接近方向の情報と接触検出部5の検出結果に基づいて、ステアリングホイール7上のドライバーの握り位置(つまり、片側の握り位置)において、障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きに移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる刺激を、刺激部4によって発生させる。そして、刺激部4が上述の刺激を発生させ、ドライバーに上述の仮現運動を起こさせることによって、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報を提示する。そして、ステップS2に戻ってフローを繰り返す。
具体的には、ステップS7で、ドライバーがステアリングホイール7を右手で握っていると判別していた場合には、図3に示した表中の「片手で握る場合(右手)」の設定に従った順番で刺激部4の複数の振動子を連続的に振動させるよう情報提示制御部6が刺激部4の制御を行い、制御部4の複数の振動子を作動させる。一例を挙げると、ドライバーが右手でステアリングホイール7を握っていて、見通しの悪い交差点で右側から接触危険性ありと判定された障害物が接近してきている場合には、外周側振動子41b、内周側振動子41Bの順に、その障害物が通り過ぎるまで刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。
また、ステップS7で、ドライバーがステアリングホイール7を左手で握っていると判別していた場合には、前述の「片手で握る場合(左手)」の設定に従った順番で刺激部4の複数の振動子を連続的に振動させるよう情報提示制御部6が刺激部4の制御を行い、制御部4の複数の振動子を作動させる。一例を挙げると、ドライバーが左手でステアリングホイール7を握っていて、見通しの悪い交差点で右側から接触危険性ありと判定された障害物が接近してきている場合には、内周側振動子41E、外周側振動子41eの順に、その障害物が通り過ぎるまで刺激部4の複数の振動子を連続的に作動させる。
なお、図4のフローは、自車両のイグニッションスイッチがオフされたときには、フローの途中であってもフローを終了する。
また、ステップS6およびステップS10の処理のタイミングにおいて、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報について、上述の仮現運動による情報提示に加えて、接触事故防止装置1の図示しないディスプレイに警告表示したり、接触事故防止装置1の図示しない音声出力装置から音声警告を行ったりする構成としてもよい
以上の構成によれば、方向情報取得部3で取得した障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きにドライバーに生じる皮膚感覚が移動するかのような仮現運動を、ステアリングホイール7を両手で握ったドライバーにも片手で握ったドライバーにも起こさせることが可能になるので、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報を、より直感的にドライバーに認識させることが可能になる。
また、ドライバーがステアリングホイール7を握ったときに通常ステアリングホイール7に接するドライバーの指および手のひらは、刺激を伝える抹消神経が人体の中でも特に集中している部位であるので、障害物が自車両に接近してくる方向についての情報を、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
さらに、以上の構成によれば、皮膚感覚によって情報提示を行うので、運転中の目線の移動や騒音によって、提示される情報を見逃したり聞き逃したりするおそれがない。従って、以上の構成によれば、運転に集中しながら確実に情報提示を受けることもできる。
また、本実施形態では、接触事故防止装置1から方向の情報として障害物接近方向の情報を方向情報取得部3で取得し、この障害物接近方向の情報に従った方向を示す向きに皮膚感覚が移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。本発明は、ドライバーに方向の情報の提示を行う装置から得られるあらゆる方向の情報に対して適用可能である。例えば、自車両の目的地への経路を探索するとともに、この探索した経路をもとに自車両の進行すべき方向を案内する車載のナビゲーション装置から、この進行すべき方向の情報を方向情報取得部3で取得し、この進行すべき方向の情報に従った方向を示す向きに皮膚感覚が移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる構成としてもよい。
なお、本実施形態では、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に2つ並んだ振動子とステアリングホイール7の円周方向に2つ並んだ振動子との4つの振動子の振動の順番の組み合わせによって、ドライバーがステアリングホイール7を片手で握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報提示を行うことが可能な構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、上述の4つの振動子を連続的に振動させる順番を変更することによって、前後左右以外にも例えば斜め方向などについての情報提示を行う構成としてもよい。
また、本実施形態では、ステアリングホイール7をドライバーが片手で握った場合に、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んだ振動子とステアリングホイール7の円周方向に並んだ振動子との少なくとも4つの振動子に接触する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、少なくとも4つよりも多い振動子にドライバーの片手が接触する構成とするとともに、この4つよりも多い振動子を連続的に振動させる順番を様々に組み合わせることによって、前後左右以外にも斜め、回転、折れ曲がりなど、上述の組み合わせにより表現することが可能なあらゆる方向についての情報提示を可能とする構成としてもよい。
なお、本実施形態では、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に2つ並んだ振動子とステアリングホイール7の円周方向に2つ並んだ振動子との4つの振動子によって、ドライバーがステアリングホイール7を片手で握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報提示を行うことが可能な構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に2つ並んだ振動子のうちの一方とステアリングホイール7の円周方向に2つ並んだ振動子のうちの一方とを共用することによって、3つの振動子で前後方向および左右方向についての情報提示を行わせる構成としてもよい。この場合、この3つの振動子の組に少なくとも1つの感圧素子が対応するように感圧素子を配置すればよい。
また、本実施形態では、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子が、ステアリングホイール7のドライバー側の面上に配置されている構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子が、ステアリングホイール7のドライバー側とは反対側の面(以下、フロント側面と呼ぶ)上に配置されている構成であってもよいし、ステアリングホイール7の自車両の側面側の面(以下、サイド側面と呼ぶ)上に配置されている構成であってもよい。また、ドライバー側の面上、フロント側面上、およびサイド側面上のうちの複数の面上に配置されている構成であってもよい。
なお、本実施形態では、ステアリングホイール7の円周方向に並んだ複数箇所で刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、皮膚感覚が車両の前後方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステアリングホイール7上の、ステアリングホイール7の回転軸方向の複数箇所(詳しくは、ステアリングホイール7の回転軸方向の位置が互いに異なり、且つ、円周方向の位置が互いに略一致する複数箇所(つまり、車両の略前後方向に並んだ複数箇所))で刺激部4による刺激を連続的に発生させることによって、皮膚感覚が車両の前後方向に移動するかのような仮現運動をドライバーに起こさせる構成であってもよい。
また、本実施形態では、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子が、ステアリングホイール7上の一部の領域(つまり、右手側領域8a付近と左手側領域8b付近との2つの領域)にのみ配置される構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、刺激部4の複数の振動子および接触検出部5の複数の感圧素子が、ステアリングホイール7上の、ステアリングホイール7の円周方向の全周にわたって並んで配置される構成であってもよい。
この場合、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を握った場合であっても、少なくともステアリングホイール7の円周方向に並んだ複数箇所からドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を握った場合であっても、前後方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
なお、刺激部4の複数の振動子が、ステアリングホイール7上の、ステアリングホイール7の円周方向の全周にわたって一列に並んで配置される場合、ドライバーがステアリングホイール7を両手で握っているときであれば、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を握った場合であっても、左右方向の位置が互いに異なる複数箇所から少なくともドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイール7を両手で握っているときであれば、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
また、刺激部4の複数の振動子が、ステアリングホイール7上の、ステアリングホイール7の円周方向の全周にわたって複数列に並んで配置される場合、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を片手で握った場合であっても、少なくともステアリングホイール7の内周側から外周側にかけての径方向に並んだ複数箇所からドライバーに皮膚感覚を生じさせる刺激を与えることが可能になる。よって、ドライバーがステアリングホイール7の持ち手のどの箇所を片手で握った場合であっても、前後方向および左右方向についての情報を、より直感的、且つ、より明確にドライバーに認識させることが可能になる。
なお、本実施形態では、ドライバーに触覚を生じさせる刺激を発生させる手段として、刺激部4が複数の振動子を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らず、ドライバーに触覚を生じさせる刺激を発生させる手段であれば、振動子以外のものを用いてもよい。例えば、局部的な押圧力を発生させることによってドライバーに触覚を生じさせるような局部押圧力発生素子(例えば、周知の人工筋肉素子など)を複数用いる構成であってもよい。
これによれば、局部的な押圧力を発生させることができるので、振動子を用いた場合に比べ、ステアリングホイール7を握ったドライバーに対して、より局部的な刺激を与えることができる。従って、よりはっきりとした仮現運動をドライバーに起こさせることが可能になる。
さらに、ドライバーに触覚を生じさせる刺激を発生させる手段としては、刺激部4が、局部的に風を送出させることによってドライバーに触覚を生じさせるような素子を複数用いる構成であってもよいし、局部的に刺激電流を発生させることによってドライバーに触覚を生じさせるような素子を複数用いる構成であってもよい。
また、本実施形態では、刺激部4に備える複数の振動子や局部押圧力発生素子などによって、ステアリングホイール7を握ったドライバーに触覚を生じさせる刺激を与え、仮現運動を起こさせる構成を示したが、必ずしもこれに限らず、触覚以外の皮膚感覚を生じさせる刺激を与えて仮現運動を起こさせる構成であってもよい。例えば、刺激部4に備える複数の局部押圧力発生素子の局部押圧力を高める(具体的には、押圧時にドライバーに接触する領域をより小さくするなど)ことによって、ステアリングホイール7を握ったドライバーに痛覚を生じさせる刺激を与えて仮現運動を起こさせる構成であってもよい。また、熱電素子などの、熱の発生や吸熱を行う複数の素子によって、ステアリングホイール7を握ったドライバーに温度覚を生じさせる刺激を与え、仮現運動を起こさせる構成であってもよい。
なお、上述したような刺激を与える素子は、刺激の周波数、刺激の強度、および刺激の継続時間のうちの少なくとも一つを用いて、前述の仮現運動をドライバーに起こさせるような振動を与えるものとする。
なお、本実施形態では、刺激部4に複数の振動子や局部押圧力発生素子などの素子を備える構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、複数備えなくても複数箇所で刺激を発生させることが可能な素子であれば、刺激部4に1つのみ備えられる構成であってもよい。
また、本実施形態では、ドライバーが自車両のステアリングホイール7上のどの領域を握っているのかを検出する手段として、接触検出部5が複数の感圧素子を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らず、ドライバーがステアリングホイール7を握った箇所を検知することが可能な手段であれば、感圧素子以外のものを用いてもよい。例えば、静電容量の変化によってドライバーがステアリングホイール7を握った箇所を検知する素子を用いる構成であってもよい。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 接触事故防止装置(障害物検知装置)、2 情報提示装置、3 方向情報取得部(方向情報取得手段)、4 刺激部(刺激手段)、5 接触検出部(接触検出手段)、6 情報提示制御部(情報提示制御手段)、7 ステアリングホイール、41a〜41d 外周側振動子(刺激素子)、41A〜41D 内周側振動子(刺激素子)、51a〜51d 感圧素子、100 情報提示システム