以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明は、酸化物半導体またはその前駆体の薄膜を形成したのち、薄膜上にレジストパターンを形成して、レジストパターン外の薄膜を除去することにより前駆体薄膜のパターニングを行って、パターン化された前駆体薄膜を、熱酸化によって、酸化物半導体に転化させ、酸化物半導体薄膜のパターンを形成して、これを半導体層とする薄膜トランジスタまた薄膜トランジスタシートの製造方法であり、前記レジストパターンの形成を、静電吸引方式の液体吐出装置を用いてレジスト液を吐出・形成することにより行うことを特徴とするものである。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法について、先ず、以下、図1を用いて説明する。
先ず、酸化物半導体薄膜のパターンの形成について説明する。
図1(2)は、薄膜トランジスタの製造過程において、例えば、ガラス基板からなる支持体301上にゲート電極302を、また、図1(3)は、ゲート絶縁膜303をさらに形成したところを示している。
ゲート電極は例えば蒸着金属層をフォトリソグラフ法を用いパターニングすることで、またゲート絶縁膜はスパッタにより酸化ケイ素層を成膜した。
以下、ここに、酸化物半導体の薄膜を形成する本発明のプロセスについて説明する。
本発明においては、酸化物半導体の薄膜の形成に先だって、前記、ゲート絶縁膜上に、先ず、酸化物半導体の前駆体材料(後述する)、例えば、金属の硝酸塩等、より具体的には、例えば、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した(10質量%)水溶液を均一に塗布して前駆体材料薄膜(層)306’を形成する(図1(3))。成膜はウェットプロセス、例えば、塗布により形成することが好ましい。
充分乾燥させて均一な前駆体材料薄膜306’を形成したのち、本発明においては、次いで、前駆体材料薄膜上にレジストパターン7を形成する(図1(4)、(5))。
レジストパターン307は、半導体層(活性層)が形成されるべき領域を保護するように、薄膜トランジスタあるいはTFTシートの、活性層領域の前駆体材料薄膜上に、静電吸引方式の液体吐出装置によってレジスト液を吐出して形成させる。
レジスト材料としては、公知の材料が使用でき、例えば、紫外線感光性樹脂を用いてよい。レジストパターン307の厚みは、特に限定されるものではなく、フォトレジストをマスクとした前駆体材料薄膜の除去処理等を考慮した厚みとすればよい。
ポジ型の場合、半導体チャネル領域に静電吸引方式の液体吐出装置(インクジェット装置)を用いて吐出する。ネガ型のフォトレジストを用いた場合にも同様であるが、吐出後に光照射して架橋させる必要がある。
また、単に、前駆体材料層の溶解除去の際に、チャネル領域を保護し、チャネル領域の前駆体材料薄膜の溶解液への溶解を阻止する、例えばポリマー材料等の層であってもよい。
いずれにしても、前駆体材料薄膜を溶解除去する液に対し溶解することなく、その下層である前駆体材料薄膜の溶解も阻止するものであればよい。
図1(4)は、半導体チャネル領域に、ポジ型のフォトレジスト液を静電吸引型液体吐出装置によって吐出したところを、図1(5)は、これを乾燥・成膜し、レジストパターン307が形成されたところを示す。
次いでこれを前記前駆体層を溶解する溶媒(前駆体材料塗布液の溶媒が好ましい)により、洗浄することでレジストパターンで保護(マスク)されたチャネル領域外の前駆体材料薄膜を除去することで、チャネル領域にのみ前駆体材料薄膜(層)306’を残す(図1(6))。前記硝酸塩であれば、水(純水)を除去液として用いることで、硝酸塩を容易に除くことができる。
次に、レジストパターンを、剥離液を用いて溶解・除去する。剥離液は、前記金属化合物からなる前駆体材料層を溶解しない溶媒を主体とするものを用いる。例えば前記の場合であればレジスト材料を溶解する有機溶剤等が好ましい。これにより、前駆体材料薄膜が、チャネル領域にのみ残される(図1(7))。
本発明において、酸化物半導体の前駆体材料薄膜を、酸化物半導体に転化するには、熱酸化法を用いる。酸素の存在下での加熱あるいは光照射等によって、前記前駆体材料薄膜は酸化物半導体層306に転化する(図1(8))。
加熱温度は大凡180℃〜400℃の温度範囲であり、温度、また方法にもよるがミリ秒〜30分の範囲で加熱すればよい。
前駆体は、熱酸化のほか、またプラズマ酸化等、酸化的な分解を起こすことのできる方法であれば限定されない。例えば、マイクロ波を利用した加熱方法も好ましい。前記ゲート電極2をITO等の材料により形成し、基板にマイクロ波を照射すれば、ITOがマイクロ波吸収源となり発熱するので、これによりチャネル領域(ゲート電極上)の前駆体材料薄膜を効率よく加熱して、これを半導体に転化できる。前記ゲート絶縁層上のチャネル領域には酸化物半導体層が形成される。
その後、ソース電極304、ドレイン電極305を、例えば、金蒸着等により形成することで、薄膜トランジスタが形成される(図1(9))。
図2は、本発明に好ましく用いられる静電吸引方式の液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。なお、本発明の液体吐出ヘッド2は、いわゆるシリアル方式あるいはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
本実施形態の液体吐出装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出するノズル10が形成された液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2のノズル10に対向する対向面を有すると共にその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極3とを備えている。
液体吐出ヘッド2の対向電極3に対向する側には、複数のノズル10を有する樹脂製のノズルプレート11が設けられている。液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート11の対向電極3に対向する吐出面12からノズル10が突出されない、或いは前述したようにノズル10が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている(例えば、後述する図3(D)参照)。
各ノズル10は、ノズルプレート11に穿孔されて形成されており、各ノズル10には、それぞれノズルプレート11の吐出面12に吐出孔13を有する小径部14とその背後に形成されたより大径の大径部15との2段構造とされている。本実施形態では、ノズル10の小径部14および大径部15は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部14の吐出孔13の内部直径(以下、ノズル径という。)が10μm、大径部15の小径部14から最も離れた側の開口端の内部直径が75μmとなるように構成されている。
なお、ノズル10の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図3(A)〜(E)に示すように、形状が異なる種々のノズル10を用いることが可能である。また、ノズル10は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
ノズルプレート11の吐出面12と反対側の面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル10内の液体Lを帯電させるための帯電用電極16が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極16は、ノズル10の大径部15の内周面17まで延設されており、ノズル内の液体Lに接するようになっている。
また、帯電用電極16は、静電吸引力を生じさせる静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源18に接続されており、単一の帯電用電極16が全てのノズル10内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、全ノズル10内の液体Lが同時に帯電され、液体吐出ヘッド2と対向電極3との間、特に液体Lと基材Kとの間に静電吸引力が発生されるようになっている。
帯電用電極16の背後には、ボディ層19が設けられている。ボディ層19の前記各ノズル10の大径部15の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
ボディ層19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21により液体吐出ヘッド2が外界と画されている。
なお、ボディ層19には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディ層19としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ20、共通流路、および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路が設けられており、共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル10等の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が接続されている。ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
駆動電圧電源23および帯電用電極16に静電電圧を印加する前記帯電電圧電源18は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受けるようになっている。
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM27等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源18および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル10の吐出孔13から液体Lを吐出させるようになっている。
なお、本実施形態では、液体吐出ヘッド2のノズルプレート11の吐出面12には、吐出孔13からの液体Lの滲み出しを抑制するための撥液層28が吐出孔13以外の吐出面12全面に設けられている。撥液層28は、例えば、液体Lが水性であれば撥水性を有する材料が用いられ、液体Lが油性であれば撥油性を有する材料が用いられるが、一般に、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン)、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、フッ素シロキサン、フルオロアルキルシラン、アモルファスパーフルオロ樹脂等のフッ素樹脂等が用いられることが多く、塗布や蒸着等の方法で吐出面12に成膜されている。なお、撥液層28は、ノズルプレート11の吐出面12に直接成膜してもよいし、撥液層28の密着性を向上させるために中間層を介して成膜することも可能である。
液体吐出ヘッド2の下方には、基材Kを支持する平板状の対向電極3が液体吐出ヘッド2の吐出面12に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3と液体吐出ヘッド2との離間距離は、0.1mm〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界が生じるようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると、対向電極3はその電荷を接地により逃がすようになっている。
なお、対向電極3または液体吐出ヘッド2には、液体吐出ヘッド2と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド2の各ノズル10から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾させることが可能とされている。
液体吐出装置1による吐出を行う液体Lは、例えば、無機液体としては、水、COCl2、HBr、HNO3、H3PO4、H2SO4、SOCl2、SO2Cl2、FSO3Hなどが挙げられる。また、有機液体としては、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルコール類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ジオキサン、フルフラール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エピクロロヒドリンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−4−ペンタノン、アセトフェノンなどのケトン類;ギ酸、酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸−n−ペンチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなどのエステル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−トルイジン、p−トルイジン、ピペリジン、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ルチジン、キノリン、プロピレンジアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどの含窒素化合物類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物類;ベンゼン、p−シメン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセンなどの炭化水素類;1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン(cis−)、テトラクロロエチレン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、ブロモメタン、トリブロモメタン、1−ブロモプロパンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。また、上記各液体を二種以上混合して用いてもよい。
ここで、液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理について図4を用いて説明する。
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧を印加し、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23からピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させる。
本実施形態のように、ノズルプレート11の絶縁性が高くなると、図4にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体Lや液体Lのメニスカス部分に向かう強い電界が発生する。
特に、図4でメニスカスの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカス先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の静電力によってメニスカスが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近いところに着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し正確に行われる。
このように、本発明の液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理を利用すれば、フラットな吐出面を有する液体吐出ヘッド2においても、高い絶縁性を有するノズルプレート11を用い、吐出面12に対して垂直方向の電位差を発生させることで強い電界集中を生じさせることができ、正確で安定した液体Lの吐出状態を形成することができる。
以下、図面を参照しながら本発明に好ましく用いられる静電吸引方式の液体吐出装置の好ましい一態様について説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
本発明に用いられる静電吸引方式のインクジェット装置は、図5に示すようにマルチノズルヘッド100を有している。マルチノズルヘッド100はノズルプレート31、ボディプレート32および圧電素子33を有している。ノズルプレート31は150μm〜300μm程度の厚みを有したシリコン基板また酸化シリコン基板である。ノズルプレート31には複数のノズル101が形成されており、これら複数のノズル101が1列に配列されている。
ボディプレート32は、200μm〜500μm程度の厚みを有したシリコン基板である。ボディプレート32にはインク供給口201、インク貯留室202、複数のインク供給路203および複数の圧力室204が形成されている。
インク供給口201は直径が400μm〜1500μm程度の円形状の貫通孔である。
インク貯留室202は幅が400μm〜1000μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
インク供給路203は幅が50μm〜150μm程度で深さが30μm〜150μm程度の溝である。圧力室204は幅が150μm〜350μm程度で深さが50μm〜200μm程度の溝である。
ノズルプレート31とボディプレート32とは互いに接合されるようになっており、接合した状態ではノズルプレート31のノズル101とボディプレート32の圧力室204とが1対1で対応するようになっている。
ノズルプレート31とボディプレート32とが接合された状態でインク供給口201にインクが供給されると、当該インクはインク貯留室202に一時的に貯留され、その後にインク貯留室202から各インク供給路203を通じて各圧力室204に供給されるようになっている。
圧電素子33はボディプレート32の圧力室204に対応した位置に接着されるようになっている。圧電素子33はPZT(lead zirconium titanate)からなるアクチュエータであり、電圧の印加を受けると変形して圧力室204の内部のインクをノズル101から吐出させるようになっている。
なお、図5では図示しないが、ノズルプレート31とボディプレート32と間には硼珪酸ガラスプレート34(図6参照)が介在している。
図6に示す通り、1つの圧電素子に対応してノズル101と圧力室204とが1つずつ構成されている。
ノズルプレート31においてノズル101には段が形成されており、ノズル101は下段部101aと上段部101bとで構成されている。下段部101aと上段部101bとは共に円筒形状を呈しており、下段部101aの直径D1(図6中左右方向の距離)が上段部101bの直径D2(図5中左右方向の距離)より小さくなっている。
ノズル101の下段部101aは上段部101bから流通してきたインクを直接的に吐出する部位である。下段部101aは直径D1が1μm〜10μmで、長さL(図6中上下方向の距離)が1.0μm〜5.0μmとなっている。下段部101aの長さLを1.0μm〜5.0μmの範囲に限定するのは、インクの着弾精度を飛躍的に向上させることができるからである。
他方、ノズル101の上段部101bは圧力室204から流通してきたインクを下段部101aに流通させる部位であり、その直径D2が10μm〜60μmとなっている。
上段部101bの直径D2の下限を10μm以上に限定するのは、10μmを下回ると、ノズル101全体(下段部101aと上段部101b)の流路抵抗に対し上段部101bの流路抵抗が無視できない値となり、インクの吐出効率が低下しやすいからである。
逆に、上段部101bの直径D2の上限を60μm以下に限定するのは、上段部101bの直径D2が大きくなるほど、インクの吐出部位としての下段部101aが薄弱化して(下段部101aが面積増大して機械的強度が小さくなる。)、インクの吐出時に変形し易くなり、その結果インクの着弾精度が低下するからである。すなわち、上段部101bの直径D2の上限が60μmを上回ると、インクの吐出に伴い下段部101aの変形が非常に大きくなり、着弾精度を規定値(=0.5°)以内に抑えることができなくなる可能性があるからである。
ノズルプレート31とボディプレート32との間には数百μm程度の厚みを有した硼珪酸ガラスプレート34が設けられており、硼珪酸ガラスプレート34にはノズル101と圧力室204とを連通させる開口部34aが形成されている。開口部34aは、圧力室204とノズル101の上段部101bとに通じる貫通孔であり、圧力室204からノズル101に向けてインクを流通させる流路として機能する部位である。圧力室204は、圧電素子33の変形を受けて当該圧力室204の内部のインクに圧力を与える部位である。
以上の構成を具備するマルチノズルヘッド100では、圧電素子33が変形すると、圧力室204の内部のインクに圧力を与え、当該インクは圧力室204から硼珪酸ガラスプレート34の開口部34aを流通してノズル101に至り、最終的にノズル101の下段部101aから吐出されるようになっている。
なお、本発明に係るインクジェット装置の一態様としては、マルチノズルヘッド100のノズルプレート1に対向する位置に基板電極が設けられており(図示略)、ノズル101と当該基板電極との間には静電界が作用するようになっている。
そのため、ノズル101から吐出されたインクはその静電界の作用を受けながら基板電極上の被記録物に着弾するようになっている。
図1で示されるボトムゲート型薄膜トランジスタに例をとれば、半導体層6を基板上に形成するとき、ゲート絶縁層2上に形成された前駆体材料薄膜6’上に、上記の静電吸引方式の液体吐出装置(静電吸引型インクジェット装置)によってレジスト材料を吐出して、この上にレジストパターンを直接印刷すればよい。これにより高精度でレジストパターンを形成することができるので、酸化物半導体の前駆体材料薄膜パターン(半導体層パターン)を精度よく得ることができる。
また、本発明の方法は、ボトムゲート型構造、トップゲート型構造を問わず薄膜トランジスタの製造に適しており、ゲート電極、ゲートバスライン、ゲート絶縁層、またソース、ソースバスライン、ドレイン電極等のパターンが形成された基板上に、半導体層の形成を、フォトレジスト等に使用による複雑な工程を回避して、精度よく、効率的に行うことができる。
(前駆体)
本発明において酸化物半導体の前駆体材料としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物には、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
これらの金属原子含有化合物からなる前駆体材料薄膜を形成後、前記静電吸引方式の液体吐出装置により半導体基板の半導体チャネル形成領域にレジスト材料を吐出してレジストパターンを形成し、パターン外の領域の前駆体材料薄膜(層)を洗浄処理により除去した後、熱酸化処理を施すことで、残された前駆体材料薄膜は酸化物半導体に転化され半導体層が形成される。
本発明において酸化物半導体の前駆体材料としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物としては、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
それらの金属塩のうち、In(インジウム)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)のいずれかの金属イオンを含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
また、その他の金属として、Ga(ガリウム)またはAl(アルミニウム)を含むことが好ましい。
金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、酢酸塩または蓚酸塩が好ましく、さらに、硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
一般式(I) R1xMR2yR3z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。R2のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えばアセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。金属塩のうちでは、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
以上の酸化物半導体の前駆体のうち、好ましいのは、金属の硝酸塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウムなどが挙げられる。
また、前記の金属を含む金属酸化物、特に、In(インジウム)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)のいずれかの金属を含む酸化物(半導体)の薄膜についても、金属酸化物を構成しているにも拘わらず、本発明に係る熱(酸化)処理により、酸化物半導体として電子キャリア濃度1018/cm3未満が実現されるので、半導体としてまた前駆体としても捉えることができる。これらの金属酸化物の薄膜を形成するためには、公知の成膜法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンプレーティング法など種々の方法を用いることができる。例えば、IGZOターゲット(InGaZnOx)を用いスパッタによりIGZO薄膜を形成できる。
(酸化物半導体の前駆体薄膜の成膜方法)
これらの酸化物半導体の前駆体となる金属を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法など種々の方法を用いることができるが、本発明においては金属塩、ハロゲン化物、有機金属化合物等の場合には、これを適切な溶媒に溶解した溶液を用いて基板上に連続的に塗設することで生産性を大幅に向上することができ好ましい。溶解性の観点からも、金属化合物として、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、金属アルコキシド等を用いることが好ましい。
溶媒としては、水のほか、金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリルなど、さらに、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカンなどの脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を好適に用いることができる。
金属ハロゲン化物および/または金属アルコキシドを用いた場合には、比較的極性の高い溶媒が好ましく、中でも沸点が100℃以下の水、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、またはこれらの混合物を用いると乾燥温度を低くすることができため、樹脂基板に塗設することが可能となり、より好ましい。特に、水またはアルコール類を50質量%以上含有することが好ましい。
また、溶媒中に金属アルコキシドと種々のアルカノールアミン、α−ヒドロキシケトン、β−ジケトンなどの多座配位子であるキレート配位子を添加すると、金属アルコキシドを安定化したり、カルボン酸塩の溶解度を増加させたりすることができ、悪影響が出ない範囲で添加することが好ましい。
酸化物半導体の前駆体材料を含有する液体を基材上に適用して薄膜を形成する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法など塗布法、また、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ好ましい。薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等も好ましい方法である。
成膜する場合、塗布後、50〜150℃程度で溶媒を揮発させることにより金属酸化物前駆体の薄膜が形成される。なお、溶液を滴下する際、基板自体を上記温度に加熱しておくと、塗布、乾燥の二つのプロセスを同時に行えるので好ましい。
(金属の組成比)
好ましい、金属の組成比としては、Inを1としたとき、ZnySn1−y(ここにおいてyは0〜1の正数)は0.2〜5、好ましくは0.5〜2とする。さらにInを1としたときに、Gaの組成比は0.2〜5、好ましくは0.5〜2が好ましい。
また、前駆体薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
(非晶質酸化物)
熱酸化によって形成される酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜である。
酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm3未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択される温度である。なお、本発明に係るアモルファス(非晶質)酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm3未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm3未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm3以下、より好ましくは1016/cm3以下にするとノーマリーオフの薄膜トランジスタが歩留まりよく得られる。
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件などを制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm3以上1018/cm3未満とする。より好ましくは1013/cm3以上1017/cm3以下、さらには1015/cm3以上1016/cm3以下の範囲にすることが好ましい。
本発明においては、前駆体材料薄膜を形成したのち、よく乾燥して、次に、レジストパターンを静電吸引型インクジェット方式によりレジスト材料を吐出し形成する。
レジスト材料としては、フォトレジストとして用いられるポジ型、ネガ型の公知の材料を用いることができる。
このようなフォトレジスト材料として、例えば、(1)特開平11−271969号、特開2001−117219号、特開平11−311859号、特開平11−352691号のような色素増感型の光重合感光材料、(2)特開平9−179292号、米国特許第5,340,699号、特開平10−90885号、特開2000−321780号、同2001−154374号のような赤外線レーザに感光性を有するネガ型感光材料、(3)特開平9−171254号、同5−115144号、同10−87733号、同9−43847号、同10−268512号、同11−194504号、同11−223936号、同11−84657号、同11−174681号、同7−285275号、特開2000−56452号、WO97/39894号、同98/42507号のような赤外線レーザに感光性を有するポジ型感光材料等が挙げられる。
前駆体材料薄膜6’の上に設けるレジストパターンとしては、特に限定されることはないが、未露光領域においてはアルカリ水性溶液に溶解性がない、パターン上に吐出することで半導体の前駆体材料層の保護膜となり、この溶解を阻止して、前駆体層パターンを形成できる。
ポジ型の場合、静電吸引型インクジェット装置により、レジストパターンを半導体チャネル領域に直接形成することで、マスクアライナー等を用いて基板上に設けたフォトレジスト層に対してパターン露光を行うなどの操作を行うことなしに、直接レジストパターンを形成することができる。ネガ型の場合には、レジスト層形成後、露光が必要となる。露光方法は特に制限はなく、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプなどによるフラッシュ露光を行っても良く、また紫外線、可視光線、赤外線等のレーザ光を用いてもよい。
また、レジスト材料は、前駆体材料層の溶解除去の際に、チャネル領域を保護し、チャネル領域の前駆体材料薄膜の溶解を阻止する、例えば撥水性のポリマー材料等からなる層であってもよい。同様に前駆体材料薄膜を保護しこれによりマスクされた領域において前駆体材料の溶解・除去を行う除去液溶媒に溶解せず、また前駆体材料層の溶解が抑えられる材料であればかまわない。
レジストパターン形成後、次いで、引き続き、レジストパターン7をマスクとして前駆体材料薄膜を除去することで、チャネル領域外の不要の前駆体の除去処理(洗浄処理)を行うことができる。
前駆体材料薄膜の除去には、前駆体材料に応じた公知の方法を用いれば良く、これを溶解する溶媒、例えば前駆体材料塗布液に用いた溶媒等を用い前駆体材料薄膜の除去液を調製することが好ましい。除去液に浸漬また洗浄処理を行うことによってレジストパターン外の前駆体材料薄膜を除くことができる。
例えば、前駆体材料である、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等の金属含有化合物は、これをよく溶解する溶媒である水又はアルコール類を50%以上含む溶媒を用い塗布液を作製して、前駆体材料薄膜を塗布により形成することが好ましく、前駆体材料薄膜の除去液にも同様に、水またはアルコール類を50%以上含む溶媒を用いることが、溶解除去を効率よく行う上で好ましい。
また、前駆体材料薄膜を除去する除去液としては、水系アルカリ液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩の水溶液や、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ性化合物を溶解した水またはアルコール類を50%以上含む溶液が挙げられ、特に水溶液が好ましい。本発明におけるアルカリ性化合物の水系アルカリ液中における濃度は、通常1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%である。
また本発明に用いられる現像液には、必要に応じアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤やアルコール等の有機溶剤を加えることができる。
有機溶剤としては、プロピレングリコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、n−プロピルアルコール等が有用である。
前駆体材料薄膜のパターニングののち、これを酸化物半導体に転化するには、前駆体材料薄膜を有する基板を加熱すればよい、前駆体材料の加熱による酸化物半導体への転化は、基本的には熱酸化であり、大気中等、酸素の存在下において加熱処理を行う。
加熱の方法としては特に限定はないが、具体的には、前記の加熱は、基板、また基板上に形成される他の要素が、熱により変性しない温度範囲、すなわち、180〜400℃、ミリ秒〜30分間、好ましくは200〜350℃で、10秒〜好ましくは20〜10分間の加熱による。加熱条件(温度、時間)は前駆体材料の種類また酸素条件等によって異なるため、上記の範囲で適宜選択する。加熱は、あらゆる適切な加熱手段により行われるが、各種電気オーブン、ドライ・ヒートブロック、マイクロウェーブ・オーブン、各種ヒータなどが例示される。しかし、これらに限定されるものではない。
マイクロ波の吸収を利用した発熱により加熱処理することができ、加熱された領域において前駆体材料を酸化物半導体に転化させることができる。例えば、図1の場合、ゲート電極2を例えばITOにより形成しておき、これをマイクロ波吸収源として用いてマイクロ波をこれに照射することで発熱させ近傍を加熱することができる。マイクロ波とは0.3〜50GHzの周波数をもつ電磁波のことをさす。
また、プラズマ酸化や、酸素の存在下紫外光照射を行い光酸化処理する等の方法でもよい。
これら、酸素の存在下における加熱処理等により前駆体材料薄膜306’は酸化物半導体306に転化する。酸化物半導体6の形成ののち、次いで、残留しているレジストパターンを除去する。
残留したレジストパターン307に対しては、例えば、有機溶剤に浸漬または酸素プラズマによるアッシング等により除去することができる。レジストパターン307の除去の際、基板上に形成された酸化物半導体層また、基板上に設けられた他の要素等に対して影響が生じないものを選択する。例えば、通常は有機溶媒により除去できる。
レジストパターンの除去には、アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系、グリコールエーテル系などフォトレジストの塗布溶媒に利用される広範囲の有機溶媒から、適宜選択し用いることができる。レジスト像の除去の際、酸化物半導体層また、基板上に設けられた他の要素等に対して影響が生じないため、エーテル系またはケトン系の溶媒を用いることが好ましい。最も好ましくはTHFなどのエーテル系溶媒である。
薄膜トランジスタが形成されたのちは表示素子また機能素子に実装されるため、フォトレジストパターンは除くことが好ましい。
図1(9)に形成された薄膜トランジスタの断面構成図を示す。
以上、ボトムゲート・トップコンタクト型の薄膜トランジスタの製造例を示したが、薄膜トランジスタの活性層即ち半導体層の形成段階において、本発明の方法を用いる限り、本発明はこれらの素子のみに限定されるものではない。
以上、ボトムゲート・トップコンタクト型の薄膜トランジスタの製造例を示したが、薄膜トランジスタの活性層即ち半導体層の形成段階において、本発明の方法を用いる限り、本発明はこれらの素子のみに限定されるものではない。
図7に本発明の薄膜トランジスタの製造方法によって製造される素子の幾つかの構成例を示す。
(素子構成)
図7(a)〜(c)はトップゲート型の素子の例である。
同図(a)は、支持体46上にソース電極42、ドレイン電極43を形成し、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層41を形成し、その上に絶縁層45を形成し、さらにその上にゲート電極44を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層41を、(a)では電極間に形成したものを、電極および支持体表面全体を覆うように形成した例を表す。(c)は、支持体46上に先ず半導体層41を形成し、その後ソース電極42、ドレイン電極43、絶縁層45、ゲート電極44を形成したものを表す。
図7(d)〜(f)はトップゲート型の例であり、同図(d)は、前記の例の如く、支持体46上にゲート電極44、絶縁層45を形成し、その上に、ソース電極42およびドレイン電極43を形成し、該電極間に半導体層41を形成したものである。その他同図(e)、(f)に示すような構成をとることもできる。
これらの図における半導体層の形成過程において本発明を適用することができる。
また、図5には、複数の薄膜トランジスタが配置される薄膜トランジスタ(TFT)シートの一例を等価回路図で示した。
図8は、例えばプラスチックのシート(フィルム)上に、複数の表示素子(画素)また複数の薄膜トランジスタ素子が配置された薄膜トランジスタシート120を示している。
薄膜トランジスタシート120はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子124を有する。121は各薄膜トランジスタ素子124のゲート電極のゲートバスラインであり、122は各薄膜トランジスタ素子124のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子124のドレイン電極には、出力素子126が接続され、この出力素子126は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子126として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。125は蓄積コンデンサ、127は垂直駆動回路、128は水平駆動回路である。
この様な、支持体上にTFT素子を2次元的に配列した薄膜トランジスタシートの作製に本発明の方法を用いることができる。
以下、本発明において、薄膜トランジスタまた薄膜トランジスタシートを構成する他の各要素についてさらに説明する。
半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
次いで、以下、薄膜トランジスタを構成する他の各要素について説明する。
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、また、例えば、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛等の電磁波吸収能をもつ電極材料、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、導電性材料として、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。
金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として、マスクを介して蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成する方法、また蒸着やスパッタリング等の方法により形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、ソース、ドレイン、またゲート電極等、またゲートバスライン、ソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
無電解メッキの触媒とメッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
(ゲート絶縁膜)
薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としては、種々の絶縁膜を用いることができる。特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマCVD法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法である。
ゲート絶縁膜(層)が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
〔保護層〕
また有機薄膜トランジスタ素子上には保護層を設けることも可能である。保護層としては無機酸化物または無機窒化物、アルミニウム等の金属薄膜、ガス透過性の低いポリマーフィルムおよびこれらの積層物等が挙げられ、このような保護層を有することにより、有機薄膜トランジスタの耐久性が向上する。これらの保護層の形成方法としては、前述したゲート絶縁膜の形成法と同様の方法を挙げることができる。また、ポリマーフィルム上に各種の無機酸化物等が積層されたフィルムを単にラミネートするなどといった方法で保護層を設けても良い。
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体(基板)は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができると共に、衝撃に対する耐性を向上できる。
以下、実施例により本発明の好ましい実施形態を示す。本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
図9を用い本発明の好ましい実施形態を示す。
先ず無アルカリガラスからなる基板(0.5mm厚)を支持体301としてスパッタにてITO膜を作製、フォトレジストを用いてパターニングしてゲート電極302とした(厚み100nm)(図9(a))。
次いで、大気圧プラズマ法により、酸化ケイ素膜(厚み200nm)を形成しゲート絶縁層303とした(図9(b))。なお、大気圧プラズマ処理装置は特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm2
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
次いで、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをスピンコートし同様に、150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体材料薄膜306’を形成した(図9(c))。
次ぎに、図2〜図6で説明した静電吸引型インクジェット装置にて、下記レジスト材料をインクとして用い、バイアス電圧2000Vの電圧を印加し、さらにパルス電圧(400V)を重畳させて半導体層パターン(略ゲート電極パターン)に従ってインクを吐出した(図9(d))。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。レジスト材料インクとして下記処方のものを用いた。
色素A 1部
ノボラック樹脂バインダー 70部
(フェノールとm−、p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合化合物
Mn=500、Mw=2500、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾール=20:48:32)
光酸発生剤 3部
(2−トリクロロメチル−5−〔β−(2・ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール)
化合物B 20部
フッ素系界面活性剤(旭硝子製、S−381) 0.5部
乳酸メチル 700部
メチルエチルケトン 200部
(化合物Bの合成)
1,1−ジメトキシシクロヘキサン1.0モル、トリエチレングリコール1.0モルおよびp−トルエンスルホン酸水和物0.003モル、トルエン500mlを攪拌しながら100℃で1時間反応させ、その後150℃まで除々に温度を上げ、さらに150℃で4時間反応させた。反応により生成するメタノールはこの間に留去した。冷却後、反応生成物を水で充分に洗浄し、1%のNaOH水溶液、1MのNaOH水溶液で順次洗浄した。さらに食塩水で洗浄し無水炭酸カリウムで脱水した後、減圧下濃縮した。真空下で80℃に加熱しながら10時間乾燥させワックス状の化合物を得た。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは約1500であった。
さらに、100℃、10分間乾燥させて、レジストパターン307を形成した(図9(e))。
レジストパターンの乾燥後、純水を用いて前記硝酸塩からなる前駆体材料薄膜を洗浄した(エッチング)。レジストパターン外の前駆体材料薄膜は除去された(図9(f))。
次に、剥離液としてMEK(メチルエチルケトン)を用いて基板からレジストパターン7を剥離・除去した。半導体チャネル領域のみに前駆体材料薄膜306’が残された(図9(g))。
次いで、ガラス基板側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し200℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極2)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図9(h))。
次いで、ソース電極、ドレイン電極を以下のプロセスにより形成し薄膜トランジスタを作製した。
酸化物半導体層6をゲート絶縁層3上に形成したのち、オクチルトリクロロシラン(C8H17SiCl3)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、半導体層およびゲート絶縁層表面全面がOTSと反応し表面処理された。表面処理によりオクチルトリクロロシランによる単分子膜が形成するが図では便宜的に表面処理層308でこの単分子膜を表した(図9(i))。
この表面処理を行ったSiウェハー上に、ソース、ドレイン電極に対応させた光透過部を有するフォトマスクMを介して、波長254nmの紫外光を照射した(図9(j))。これにより、オクチルトリクロロシランにより表面処理された領域中、ソース、ドレイン電極部分について表面が分解された。次に、これをエタノールで洗浄し分解物を除去して、ソース、ドレイン電極形成領域に対応する部分のゲート絶縁層303および半導体層306の表面を露出させた(図9(l))。
露光は図9(k)に示したように、背面から別のマスクを利用して露光してもよい。このような方法ではゲート電極パターンもマスクとして利用している。
次いで、前記同様の静電吸引方式のインクジェット装置を用いて、下記無電解メッキ触媒液をインクとして用い、バイアス電圧2000Vの電圧を印加し、さらにパルス電圧(400V)を重畳させてソース、ドレイン電極パターンに従ってインクを吐出した。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。吐出は半導体層306全体をカバーするよう単分子層が分解され表面が露出した領域に滴下した(図9(m))。
(無電解メッキ触媒液)
可溶性パラジウム塩(塩化パラジウム) 20質量%(Pd2+濃度1.0g/l)
イソプロピルアルコール 12質量%
グリセリン 20質量%
2−メチル−ペンタンチオール 5質量%
1,3−ブタンジオール 3質量%
イオン交換水 40質量%
メッキ触媒液は、オクチルトリクロルシランによって表面処理された表面からはじかれ、表面処理層が分解された領域に自然に集まってソース電極304、ドレイン電極305の二つの領域に分離した(図9(n))。
乾燥定着させると、ソース電極、ドレイン電極各々の領域に触媒パターンが形成された(図9(o))。
次いで、スクリーン印刷法により、下記無電解金メッキ液をインクとして用いてメッキ触媒パターンが形成された領域を含む領域に印刷を行った。メッキ剤がメッキ触媒と接触することでメッキ触媒のパターン上に無電解メッキが施され、金薄膜が形成され、それぞれ、ソース電極304、ドレイン電極305が形成された(図9(p))。
(無電解金メッキ液)
ジシアノ金カリウム 0.1モル/L
蓚酸ナトリウム 0.1モル/L
酒石酸ナトリウムカリウム 0.1モル/L
を溶解した均一溶液
金薄膜が形成された基板表面を、純水で、充分に洗浄、乾燥し、図9(p)に示される薄膜トランジスタが形成された。
以上、本発明の好ましい実施形態を、トップコンタクト型の薄膜トランジスタの作製例で示した。
実施例2
本発明の好ましい実施形態の別の一例を、図10を用いて例示する。
先ず無アルカリガラスからなる基板(0.5mm厚)を支持体301として実施例1と同様に、ITO膜によるゲート電極302(厚み100nm)、酸化ケイ素膜(厚み200nm)によるゲート絶縁層303まで形成した(図10(a))。
次に、IZGOスパッタリングターゲット合金(InGaZnOx)用いて、スパッタ法により、IZGO薄膜からなる前駆体材料薄膜306’を形成した(図10(b))。膜厚は30nmとした。
次いで、基板をオクチルトリクロロシラン(C8H17SiCl3)(OTS)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、前駆体材料薄膜306’(IZGO)の表面を表面処理した(図10(c))。表面処理層308でこれを示す。
実施例1と同様に、次に、マスクを介し、波長254nmの紫外光を、半導体チャネルを形成する領域に照射した(図10(d))。
これにより、オクチルトリクロロシランにより表面処理された領域中、半導体層を形成する領域の表面処理層308が分解された。エタノールで洗浄し分解物を除去して、半導体層に対応する領域が露出され親水化された(図10(e))。
次に、実施例1で用いたレジスト材料をやはり同様に静電吸引方式のインクジェット装置により半導体層部分に吐出した。OTSによる琉表面処理層でパターン化されているため、レジスト液が精度よく半導体層領域に吐出・形成された(図10(f))。
さらに100℃で10分間乾燥するとレジストパターン307が形成された(図10(g))。
次に、基板を25%塩酸水溶液に浸漬して、マスクパターン外の領域の前駆体材料薄膜306’(IGZO膜)を除去した。この後、アルカリ水溶液に浸漬し中和、純水で洗浄の後乾燥を行った(図10(h))。
次いで、剥離液としてMEK(メチルエチルケトン)を用いて基板からレジストパターン307を剥離・除去した(図10(i))。半導体チャネル領域のみに前駆体材料薄膜306’が残された。
次いで、ガラス基板側からマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気、大気圧条件下で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射し250℃で20分間の処理を行った。ITO(ゲート電極2)のマイクロ波吸収による発熱で前駆体材料は酸化物半導体に変換され、ゲート絶縁膜上、ゲート電極に対向して酸化物半導体層306が形成された(図10(j))。
酸化物半導体層306がゲート絶縁層3上に形成されたのち、オクチルトリクロロシラン(C8H17SiCl3)を溶解したトルエン溶液(0.1質量%、60℃)に基板を10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、さらに、超音波洗浄器中で10分間処理後、乾燥させることで、半導体層306およびゲート絶縁層303の表面全面がOTSと反応し表面処理された。表面処理によりオクチルトリクロロシランによる単分子膜が形成するのであるが図では便宜的に表面処理層308でこの単分子膜を表した(図10(k))。
この表面処理を行ったSiウェハー上に、ソース、ドレイン電極に対応させた光透過部を有するフォトマスクMを介して、波長254nmの紫外光を照射した(図10(l))。これにより、オクチルトリクロロシランにより表面処理された領域中、ソース、ドレイン電極部分について表面が分解された。エタノールで洗浄し分解物を除去して、ソース、ドレイン電極形成領域に対応する部分のゲート絶縁層303および半導体層306の表面を露出させた(図10(m))。
露光は前記図9(k)にも示したように、背面から別のマスクを利用して露光してもよい。
このような方法をとることでゲートパターンもマスクとして用いてソース、ドレイン電極パターンを形成することができる。
次いで、前記と同様の静電吸引方式のインクジェット装置を用いて、下記無電解メッキ触媒液をインクとして用い、支持プレートにはバイアス電圧2000Vの電圧を印加し、さらにパルス電圧(400V)を重畳させてソース、ドレイン電極パターンに従ってインクを吐出した。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。吐出は半導体層306全体をカバーするよう単分子層が分解され表面が露出した領域に滴下した(図10(n))。
また、メッキ触媒含有インクとして下記処方のものを用いた。
(無電解メッキ触媒液)
可溶性パラジウム塩(塩化パラジウム) 20質量%(Pd2+濃度1.0g/l)
イソプロピルアルコール 12質量%
グリセリン 20質量%
2−メチル−ペンタンチオール 5質量%
1,3−ブタンジオール 3質量%
イオン交換水 40質量%
メッキ触媒液は、オクチルトリクロルシランによる表面処理された表面からはじかれ、オクチルトリクロルシランによる単分子膜が分解された領域に自然に集まってソース電極304、ドレイン電極305の二つの領域に分離した(図10(o))。
乾燥定着させると、ソース電極、ドレイン電極各々の領域に触媒パターンが形成された(図10(p))。
次いで、スクリーン印刷法により、下記無電解金メッキ液をインクとして用いてメッキ触媒パターンが形成された領域を含む領域に印刷を行った。メッキ剤がメッキ触媒と接触することでメッキ触媒のパターン上に無電解メッキが施され、金薄膜が形成され、それぞれ、ソース電極304、ドレイン電極305が形成された。
(無電解金メッキ液)
ジシアノ金カリウム 0.1モル/L
蓚酸ナトリウム 0.1モル/L
酒石酸ナトリウムカリウム 0.1モル/L
を溶解した均一溶液
金薄膜が形成された基板表面を、純水で、充分に洗浄、乾燥すると図10(p)に示される薄膜トランジスタが形成された。
以上において、作製した薄膜トランジスタは良好に駆動し、n型のエンハンスメント動作を示した。ドレインバイアスを10Vとし、ゲートバイアスを−10Vから+20Vまで掃引したときのドレイン電流の増加(伝達特性)が観測された。その飽和領域から見積もられた移動度は1cm2/Vs、on/off比は5桁以上であった。