JP2009511286A - 切削工具 - Google Patents

Abstract

本発明は、工具シャンク（１）と切刃部位（２）とから成り回転軸線Ｄを備えた切削工具に関する。切刃部位（２）は回転軸線Ｄに対してほぼ垂直に延びる少なくとも１個の平面切刃（３）を有し、この平面切刃（３）は円周側において主切刃（４）に移行し、中心側において前切刃（５）に移行している。その前切刃（５）は平面切刃（３）に対して回転軸線Ｄの方向において後ろにずらされている。本発明に基づいて、平面切刃（３）と前切刃（５）との移行領域に、切刃部位として形成された切欠き（６）が形成されている。回転軸線Ｄの方向における端面図で見て切欠き（６）の最後方点（７）は前切刃（５）の最前方点（８）の後ろに位置し、平面切刃（３）と隣接する切欠き（６）の部位との成す角度αは９０°〜１７５°の範囲にあり、平面切刃（３）と前切刃（５）に隣接する切欠き（６）の部位との成す角度βは３°〜９０°の範囲にある。前切刃（５）に隣接する切欠き（６）の部位と前切刃（５）との成す角度γは９０°〜１７７°の範囲にある。

Description

本発明は、回転軸線Ｄを備えた工具シャンクと、回転軸線Ｄに対してほぼ垂直に延びる平面切刃とから成り、平面切刃が円周側において主切刃に移行し、中心側において前切刃に移行し、その前切刃が平面切刃に対して回転軸線Ｄの方向において後ろにずらされている切削工具（フライス）に関する。

かかる切削工具は、通常、突き加工のために利用され、即ち、工具はワーク（被加工部材）の表面に所望の深さまで環状にあるいは斜めに突きこみ、そして、切除すべき材料を横送り運動によって削除する。突き加工中、主切刃および平面切刃は中間に位置する角部位で主切削方向に予め切削し、その際に主切削作業を行い、他方で、平面切刃と前切刃とを備えた切刃幾何学形状の後方部位が、主切削方向と反対側面においてかみこむ。

切刃部位が交換可能な割出し形切削プレートによって形成されているかかる切削工具は、例えば欧州特許出願公開第０４１６９０１号明細書あるいは欧州特許出願公開第０４５７４８８号明細書に記載されている。

特に傾斜して延びる前切刃の場合および／又はかかる切削工具の斜め突き加工の場合、工具に半径方向に作用する切削力が生じ、この切削力は工具を横に押し退け、振動を生じさせる。

本発明の課題は、突き加工の際に、振動を伴う望ましくない半径方向押し退けが防止される切削工具を提供することにある。

この課題は、本発明に基づいて、平面切刃と前切刃との移行領域に、切刃部位として形成された少なくとも１個の切欠きが形成され、回転軸線Ｄの方向における端面図で見て切欠きの最後方点が前切刃の最前方点より後ろに位置し、その平面切刃と隣接する切欠きの部位との成す角度αが９０°〜１７５°の範囲にあり、平面切刃と前切刃に隣接する切欠きの部位との成す角度βが３°〜９０°の範囲にあり、前切刃に隣接する切欠きの部位と前切刃との成す角度γが９０°〜１７７°の範囲にあることによって解決される。

平面切刃と前切刃との間の特殊な切欠きによって、切刃幾何学形状のワークにおけるもぐり込みが達成され、このもぐり込みは半径方向における工具の安定性を生じさせる。これによって、工具は振動のない静かな運動を行い、これにより、切削加工中における大きな送りおよび工具の突き加工中における大きな傾きが可能とされる。さらに、本発明に基づく工具は、例えばタービン翼や一体構造部品の切削加工に対して長い張り出しで製造できる。

上述した角度が所定の範囲内にあることが重要である。平面切刃と隣接する切欠きの部位との成す角度αが９０°より小さいとき、不利な切削力分布および不利な切り屑発生が生ずる。この角度が１７５°より大きいとき、切欠きによって十分に良好な安定効果が得られない。平面切刃と前切刃に隣接する切欠きの部位との成す角度βが３°より小さいときも、工具の十分に良好な安定性は得られない。この角度が９０°より大きいとき、特に平面切刃に対して斜めに延びる前切刃において、平面切刃と隣接する切欠きの部位との移行領域に破損を生ずる恐れがある。前切刃に隣接する切欠きの部位と前切刃との成す角度γが１７７°より大きいとき、切削加工時における工具の安定性が不十分であり、他方では、角度γが９０°より小さい場合、前切刃と隣接する切欠きの部位との移行領域に破損を生ずる恐れがある。切削工具におけるこの角度の正確な決定は、最も実用的には、主切刃と平面切刃と切削工具の回転軸線との間における切刃角を通って延びる仮想平面に対する垂直平面で行われる。切刃のすべての点はこの平面に投影され、これにより生ずる切刃の輪郭経過は、角度を決定する基礎を形成する。

本発明に基づく切削工具は、大きな運転安全性と長い耐用時間を有する。

切欠き自体の形状は種々にできる。殊に、Ｖ状、円弧状あるいは台形状切欠きが考えられる。その場合、平面切刃と前切刃にそれぞれ隣接する切欠きの部位の角度が所定の範囲内にあることが重要である。円弧状切欠きにおいて、前切刃と平面切刃との間の移行領域における接線が、本発明に基づく範囲内における角度の固定を決定する。

その有利な範囲において、平面切刃と隣接する切欠きの部位との成す角度αは１２０°〜１５０°の範囲にあり、平面切刃と前切刃に隣接する切欠きの部位との成す角度βは１０°〜４５°の範囲にある。

切欠きの深さは切刃部位の大きさに左右され、一方では、できるだけ小さくされ、他方では、切削加工時における工具の十分良好な安定性が達成されるほど大きくされねばならない。

前切刃の最前方点からの切欠きの最大深さｔが０．１〜１ｍｍの範囲にあることが有利である。

本発明に基づく切削工具の切刃幾何学形状は、特に１個あるいは複数個の交換可能な（切削用）インサートによって有利に実現され、その場合、特にかかるインサートは、平面切刃に対してほぼ平行に延びる前切刃を備えた矩形の基本形を有するか、あるいは、前切刃が平面切刃に対して斜めに延びるほぼ菱形の基本形を有している。

菱形基本形の場合、前切刃が平面切刃に対して２０°〜４０°の範囲の角度δを成して延び、切欠きが、１４０°〜１５０°の範囲の角度αと１０°〜３０°の範囲の角度βで、Ｖ状に形成されていることが特に有利である。

以下図を参照して本発明を詳細に説明する。

図１および図２に、交換可能な（切削用）インサート９を備えた切削工具（フライス）の本発明に基づく切刃部位２が示されている。本発明に基づく角度α、β、γ、δは、明瞭にする理由から、インサート９が装着された切削工具に示されておらず、インサート９自体に、接触支持台１０に対する垂直平面図に示されている。それらの角度は、接触支持台が工具において設置角度だけ軸方向に傾斜されているために、工具において測定される角度に比べて僅かに変化している。切刃部位２は切削工具の回転軸線Ｄに対してほぼ垂直に延びる平面切刃３を有している。ここで回転軸線に対してほぼ垂直とは、できるだけ平らに切削加工された表面を製造するために、回転軸線に対して正確に垂直に延びる平面切刃３が確かに求められるが、問題ない切削加工を実施するために、実際には最大１°だけ小さい角度にされねばならない、ことを意味する。周囲側において平面切刃３は、円弧状に形成された切刃コーナ部を介して、回転軸線Ｄの方向に延びる主切刃４に移行している。主切刃４が大きな移行半径で平面切刃３に移行している割出し式切削プレートを形成する場合、平面切刃３はその移行半径の短い終端部に限定される。平面切刃３は中心側において回転軸線Ｄの方向に向けて前切刃５に移行している。この前切刃５は平面切刃３に対して３５°の角度δを成して延びている。この角度は図５で詳細に理解できる。

平面切刃３と前切刃５との移行領域に、切刃部位として形成されたＶ状切欠き６が形成されている。回転軸線Ｄの方向に見て切欠き６の最後方点７は前切刃５の最前方点８より後ろに位置している。この切欠き６の正確な形成は図３および図４から理解でき、この図３および図４は図１および図２における本発明に基づく切削工具のインサート９を示している。平面切刃３に隣接する切欠き６の部位は、平面切刃３と１４５°の角度αを成している。前切刃５に隣接する切欠き６の部位は、平面切刃３と１１°の角度βを成している。原理的にインサート９は両側に同形の切刃が配置されたプラス割出し式切削プレートとして形成され、即ち、すべての切刃ないし切刃部位３、４、５、６は、鏡面対称的な両側面において専ら逃げ面１２、１２ａとすくい面１１との交点に形成され、これにより、割出し式切削プレートは回転によって２回利用できる。マイナス割出し式切削プレートとしての形成も考えられ、そこでは、接触支持台１０と逃げ面との交点にも追加的に、切刃ないし切刃部位が形成され、これによって、割出し式切削プレートは反転と回転によって全部で四回利用できる。

図３から理解できるように、接触支持台１０とその反対側に位置するインサート９のすくい面１１は、逃げ面１２、１２ａ、１２ｂによって互いに接続され、その個々の切刃ないし切刃部位３、４、５、６は、逃げ面１２、１２ａとすくい面との交点に形成されている。

切欠き６の最後方点７はインサート９の長手方向に見て前切刃５の最前方点８より後ろに位置している。切欠き６として形成された切刃部位の領域において、逃げ面１２は一様な逃げ角で一体に形成され、他方で、平面切刃３、前切刃５および主切刃４の領域において、逃げ面１２は上側の狭い部位１２ａとそれに続く下側の広い部位１２ｂとの二部構造に形成されている。逃げ面部位１２ａの逃げ面角は逃げ面部位１２ｂの逃げ面角より小さく、これにより、最も大きく負荷される領域において、インサートの十分なクリアランス（遊隙）に伴って切削加工中に切刃の良好な安定性が得られる。

図６に、本発明に基づく切削工具におけるインサート９の異なった実施例が示されている。この場合、前切刃５は平面切刃３に対して平行に延び、即ち、その両切刃が互いに成す角度δは０°である。

図７ａ〜図７ｄは、切欠き６が種々にどのように形成できるかを示しているが、本発明はそれらに限定されない。重要なことはただ、平面切刃３ないし前切刃５に隣接する切欠き６の部位が、ないしその移行箇所における接線が、要求された範囲内の角度範囲を有することにある。切欠き６は図７ａにおいて円弧状に、図７ｂにおいて楕円状に、図７ｃにおいて台形状に、図７ｄにおいて複合曲線状にそれぞれ形成されている。

図８および図９において、例えば鋼鉄や硬質金属から成る単体形切削工具の本発明に基づく切刃部位２が示され、この場合も、平面切刃３と前切刃５との間にＶ状切欠き６が形成されている。平面切刃３に続く切欠き６の部位は平面切刃３と１４５°の角度αを成し、前切刃５に続く切欠き６の部位は平面切刃３と１１°の角度βを成している。前切刃５に隣接する切欠き６の部位と前切刃５との成す角度γは１３４°である。平面切刃３に対して幾分後退された前切刃５は平面切刃に対して平行に延び、これにより、角度δは０°である。

交換可能なインサートを備えた本発明に基づく切削工具の斜視図。 図１における切削工具の切刃部位の拡大図。 図１と図２における切削工具に対するインサートの斜視図。 図３におけるインサートの平面図。 図４におけるインサートの詳細平面図。 本発明に基づくインサートの変更例の平面図。 種々の形状の切欠きを備えた本発明に基づくインサートの変更例の平面図。 切刃部位が工具シャンクと一体化された本発明に基づく切削工具の全体斜視図。 図８における切削工具の切刃部位の拡大詳細図。

符号の説明

１ 工具シャンク
２ 切刃部位
３ 平面切刃
４ 主切刃
５ 前切刃
６ 切欠き
７ 最後方点
８ 最前方点

Claims (8)

1. 回転軸線Ｄを備えた工具シャンク（１）と、回転軸線Ｄに対してほぼ垂直に延びる平面切刃（３）とから成り、平面切刃（３）が円周側において主切刃（４）に移行し、中心側において前切刃（５）に移行し、前切刃（５）が平面切刃（３）に対して回転軸線Ｄの方向において後ろにずらされている切削工具において、
   平面切刃（３）と前切刃（５）との移行領域に、切刃部位として形成された少なくとも１個の切欠き（６）が形成され、回転軸線Ｄの方向における端面図で見て切欠き（６）の最後方点（７）が前切刃（５）の最前方点（８）より後ろに位置し、その平面切刃（３）と隣接する切欠き（６）の部位との成す角度αが９０°〜１７５°の範囲にあり、平面切刃（３）と前切刃（５）に隣接する切欠き（６）の部位との成す角度βが３°〜９０°の範囲にあり、前切刃（５）に隣接する切欠き（６）の部位と前切刃（５）との成す角度γが９０°〜１７７°の範囲にあることを特徴とする切削工具。
2. 角度αが１２０°〜１５０°の範囲にあり、且つ、角度βが８°〜３５°の範囲にあることを特徴とする請求項１に記載の切削工具。
3. 前切刃（５）の最前方点（８）からの切欠き（６）の最大深さｔが０．１〜１ｍｍの範囲にあることを特徴とする請求項１又は２に記載の切削工具。
4. 前切刃（５）が平面切刃（３）に対して２０°〜４０°の範囲の角度δを成して延び、切欠き（６）が、１４０°〜１５０°の範囲の角度αと１０°〜３０°の範囲の角度βで、Ｖ状に形成されていることを特徴とする請求項１ないし３のいずれか１つに記載の切削工具。
5. 切刃部位（２）が少なくとも１個の交換可能なインサート（９）によって形成されていることを特徴とする請求項１ないし４のいずれか１つに記載の切削工具。
6. インサート（９）がほぼ矩形の基本形を有していることを特徴とする請求項５に記載の切削工具。
7. インサート（９）がほぼ菱形の基本形を有していることを特徴とする請求項５に記載の切削工具。
8. 請求項５ないし７のいずれか１つに記載の切削工具に利用されるインサート（９）において、
   インサート（９）が、接触支持台（１０）、該接触支持台（１０）と反対側に位置するすくい面（１１）並びに接触支持台（１０）とすくい面（１１）とを接続する逃げ面（１２、１２ａ、１２ｂ）から成り、その個々の切刃ないし切刃部位（３、４、５、６）が少なくとも逃げ面（１２、１２ａ）とすくい面（１１）との交点に形成されていることを特徴とするインサート（９）。

Images