JP2009295974A - 有機電界発光素子用組成物、高分子膜、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はまた、有機電界発光素子用組成物を用いて形成される高分子膜と、この有機電界発光素子用組成物を用いて形成された有機層を有する、有機電界発光素子に関する。
このうち、真空蒸着法は積層化が可能であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入
の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。
一方、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材料を混合して入れることが容易である等の利点がある。
この問題を解決するために、例えば、特許文献3では、3次元架橋性電荷輸送材料と電子受容性材料とを含有した、三次元架橋した層を有する有機電界発光素子が開示されている。
本発明はまた、この有機電界発光素子用組成物を用いた、長寿命の有機電界発光素子を提供することを課題とする。
性化合物を用いることで、電子受容性化合物を用いた場合でも、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、下記式(I)で表される基を含む基を有する電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物を含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物、高分子膜、有機電界発光素子、並びに有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、下記式(I)で表される基を含む基を有する電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物を含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物である。
なお、本発明において、電荷輸送性化合物は、通常、正孔輸送性化合物である。よって、本明細書では、特に断らない限り、電荷輸送性化合物は正孔輸送性化合物であるものとして説明を行なう。
[電荷輸送性化合物]
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される電荷輸送性化合物は、下記式(I)で表される基を含む基を有する化合物である。
本発明における電荷輸送性化合物とは、式(I)で表される基を含む基をその構造中に1以上有していればよく、通常さらに正孔輸送部位を有する。
式(I)で表される基は、通常架橋性基として用いられる。ここで「架橋性基」とは、近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。例えば、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基が挙げられる。式(I)で表される基が架橋を行う方式については、後述の<高分子膜>に記載している。
式(I)で表される基は、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH2−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる基に結合することが好ましい。
上記範囲内であると、電荷輸送の妨げにならず、また架橋が速やかに行われるため好ましい。
本発明における電荷輸送性化合物は、通常分子内に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環を有する。式(I)で表される基を含む基は、これら芳香族炭化水素基や芳香族複素環基に結合する。
<式(I)で表される基を含む基群>
式(I)で表される基が、好ましい理由を発明者等は以下のように推測する。
式(I)で表される基は、極性が低いため、組成物中での電子受容性化合物との反応性が低い。その為、組成物に含まれる式(I)で表される基を有する電荷輸送性化合物が、劣化しにくくなる。
さらに、式(I)で表される基が架橋されると、新規な化学結合として8員環を形成する。この8員環は極性が低い為、電荷輸送の妨げとなりにくい。更に、架橋後の8員環も、電子受容性化合物との反応性が低いため、層中の電子受容性化合物が劣化しにくいものとなる。
[2]正孔輸送部位
本発明における電荷輸送性化合物は、部分構造として正孔輸送部位を有する。正孔輸送部位としては、例えばトリアリールアミン構造、フルオレン環、アントラセン環、ピレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、フェノキサジン環、フェナントロリン環などの3環以上の芳香族環構造、チオフェン環、シロール環などの芳香族複素環構造、及び金属錯体構造等由来の1価以上の基が挙げられる。
具体的には、下記式(II)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。尚、「式(II)で表される部分構造を有する」とは、該式(II)で表される化合物から少なくとも、1個の水素原子を除くことにより得られる1価以上の基を有するとの意味である。
本発明に係る電荷輸送性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよいが、耐熱性、電荷輸送能、成膜性等に優れる点で、高分子化合物であることが好ましい。
(電荷輸送性化合物が、低分子化合物である場合)
本発明の電荷輸送性化合物は、高純度化が容易な点、安定した性能を保つことができる点で低分子化合物が好ましい。
本発明における電荷輸送性化合物は、低分子化合物である場合、分子量は、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、通常20000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。分子量がこの上限値を上回ると、合成経路が煩雑となり高純度化が困難となるおそれがあり、また、不純物の高分子量化によっても精製が困難となるおそれがある。また、分子量がこの下限値を下回ると、成膜性が低下するおそれがあり、ガラス転移温度、融点及び気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
本発明における電荷輸送性化合物が低分子化合物である場合、電荷輸送性化合物の式(I)で表される基を有する割合は、「電荷輸送性化合物の分子量/式(I)で表される基を含む基数」で表される。
本発明における電荷輸送性化合物の「電荷輸送性化合物の分子量/式(I)で表される基を含む基数」は、通常200以上、好ましくは300以上、最も好ましくは500以上、また、通常50000以下、好ましくは20000以下、最も好ましくは10000以下である。この下限値を下回ると、成膜後、未反応の式(I)で表される基が残存して、形成された膜の電気的耐久性が低下したり、架橋度が上がりすぎて、膜のクラッキングが起きたり、電荷輸送性が低下したりする場合がある。また、この上限値を上回ると、膜が不溶化しにくくなったり、耐熱性が低下したりする場合がある。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される電荷輸送性化合物は、電荷輸送性、耐熱性及び成膜性などが優れる点で、高分子化合物であることが好ましい。
[1]分子量
本発明における電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常2,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上である。
また、本発明における高分子化合物の数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
本発明における電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、式(I)で表される基を含む基は、繰り返し単位中にあってもよく、また繰り返し単位以外の部分(例えば高分子化合物分子末端)にあってもよい。
また、本発明における電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、電荷輸送性化合物の式(I)で表される基を含む割合は、平均架橋性基数で表される。
この上限値を上回ると、クラックによって平坦な膜が得られなかったり、また、架橋密度が大きくなりすぎたりして、架橋層中に未反応の式(1)で表される基が増えて、得られる素子の寿命に影響を及ぼすおそれがある。一方、この下限値を下回ると、架橋層の不溶化が不十分となり、湿式成膜法で多層積層構造が形成できないおそれがある。
例えば、後述の合成例8で合成した目的物8の場合で説明する。
また、重量平均分子量が63900であることより、単純比例により計算すると、平均架橋性基数は、36.2個となる。
[3]繰り返し単位構造
本発明における電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、下記式(IV)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
Ar11、及びAr12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
尚、該高分子化合物は、置換基として1分子中に少なくとも一つの架橋性基を含む基を有する。)
本発明における高分子化合物は、式(IV)で表される繰り返し単位に示されるとおり、共役系の構造を有する繰り返し単位からなるため、十分な電荷輸送能を有し、また溶剤に対する十分な溶解性を有する。また、架橋性基による、溶剤に対して溶解性が低い膜の形成が容易であるため、成膜時の表面平坦性が保たれるものと推測される。
[1−2.Ar11〜Ar15]
式(IV)中、Ar11及びAr12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
また、Ar11〜Ar15としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基及びターフェニレン基、がさらに好ましい。
[置換基群Z]
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数1
0〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
溶解性の点から、Ar11〜Ar15における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
[1−3.mの説明]
前記式(IV)においてmは、0〜3の整数を表す。
[1−4.繰り返し単位の割合等]
本発明における高分子化合物は、1種又は2種以上の式(IV)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。
[組成物中の電荷輸送性化合物の比率]
本発明の有機電界発光素子用組成物には、電荷輸送性化合物を合計で、通常0.02重
量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
以下に、本発明における、式(I)で表される基を含む基を有する電荷輸送性化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される電子受容性化合物は、周期表の第15〜17族に属する元素に、少なくとも一つの有機基が炭素原子で結合した構造を有するイオン化合物であることが好ましく、さらに下記式(I−1)〜(I−3)で表わされる化合物であることが好ましい。
族に属する元素を表わし、A2は長周期型周期表の第16族に属する元素を表し、A3は長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。
Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表す。
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表す。)
式(I−1)〜(I−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わし、R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の置換基を表わす。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。
、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
R12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。R12、R22、R23及びR32〜R34の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。R12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。中でも、R11、R21及びR31と同様、電子受容性が大きい点から、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など挙げられる。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れ
かが好ましく、A2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく
、A3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子のうち何れかが好ましい。特に、電
子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるA1が臭素原子又はヨウ素原
子であるイオン化合物、式(I−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子であるイオ
ン化合物が好ましく、中でも、式(I−1)におけるA1がヨウ素原子であるイオン化合
物が最も好ましい。
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
ン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、毒性の点から、リン原子が好ましい。
式(I−4)、(I−5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表し、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、フッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
Ar1〜Ar4が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上述の電子受容性化合物のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。二種以上の電子受容性化合物を含有する場合には、式(I−1)〜(I−3)のうち何れか一つの式に該当する電子受容性化合物を二種以上組み合わせてもよく、それぞれ異なる式に該当する二種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
が少な過ぎると駆動電圧が上昇する場合がある。また、電子受容性化合物の含有率が多過ぎると、成膜性が低下したり、正孔注入層に含まれる電子受容性化合物が他の隣接する有機層、例えば、正孔輸送層や発光層などに拡散して、発光効率や寿命に影響したりする場合がる。二種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常さらに溶剤を含有する。該溶剤は、電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物を溶解するものが好ましく、通常、電荷輸送性化合物を0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上溶解し、また、電子受容性化合物を通常0.0005重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.002重量%以上溶解する溶剤である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
剤との混合溶剤が挙げられる。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物は、必要に応じ、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤、正孔注入層の溶解性を低下させ、正孔注入層上へ他の層を塗布することを可能とする架橋反応を促進するための添加物等の添加剤を含んでいてもよい。この場合は、溶剤としては、電荷輸送性化合物と添加剤の双方を0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤を使用することが好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布後、電荷輸送性化合物を架橋させることにより高分子膜が得られる。架橋とは、式(I)で表される基を含む基が、近傍に位置する他の分子の、式(I)で表される基を含む基と反応して新規な化学結合を形成することをいう。
湿式成膜法を用いる場合、電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物、必要に応じて用いられるその他の成分(架橋反応を促進する添加物や塗布性改良剤等)を、適切な溶剤に溶解させ、上記有機電界発光素子用組成物を調製する。この組成物を、上記の成膜法により、形成する層の下層に該当する層上に成膜、乾燥して層を形成する。塗布後、加熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、電荷輸送性化合物が架橋反応を起こし、高分子膜が得られる。
加熱及び/又は活性エネルギー線の照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で加熱及び/又は活性エネルギー線の照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも上の層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極、該陽極及び陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子で、該有機層が、本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布後、前記電荷輸送性化合物を架橋させて得られる層(以下、適宜「本発明の高分子膜」と称する)を含む。
図1は本発明の方法により製造される有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
に、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成したりすることもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する機能を有する層であり、通常、陽極2上に形成される。
その膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
[正孔輸送層]
本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔輸送層4は、正孔注入層がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。 また、本発明の有機電界発光素子は、正孔
輸送層を省いた構成であってもよい。
、金属錯体などが挙げられる。
ポリアリールアミン誘導体としては、下記式(II)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。特に、下記式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましく、この場合、繰り返し単位それぞれにおいて、Ara又はArbが異なっているものであってもよい。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基及びこれらの環が2環以上直接結合で連結してなる基が挙げられる。
Ara及びArbにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置
換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。
ポリアリーレン誘導体としては、下記式(III−1)及び/又は下記式(III−2)からなる繰り返し単位を有する重合体が好ましい。
Xの具体例としては、―O―、―BR―、―NR―、―SiR2―、―PR―、―SR―、―CR2―又はこれらが結合してなる基である。尚、Rは、水素原子又は任意の有機基を表す。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
Arc〜Arjの具体例としては、前記式(II)における、Ara及びArbと同様である。
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。 架橋性
化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
成膜後の加熱の手法は特に限定されない。加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
{発光層}
正孔注入層3の上、又は正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層3における(低分子量の正孔輸送性化合物)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−
ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る湿式成膜法により発光層5を形成する場合は、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層5を本発明に係る湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス
(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層7の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下
が好ましい。
電子注入層8の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
{陰極}
陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8又は発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層3又は正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
[合成例]
(合成例1)
、溶液Cに溶液Dを添加し、8.5時間、加熱還流反応した。反応液を放冷後、ろ過により不溶物を除き、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物3(1.77g)を得た。
込み、撹拌した。そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.21g)を加え、さらに系内を十分に窒素置換して、室温でトリ−t−ブチルホスフィン(0.47g)を加え、添加終了後、そのまま1時間攪拌させた。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、目的物5(8.21g)を得た。
重量平均分子量(Mw)=23400
数平均分子量(Mn)=15200
分散度(Mw/Mn)=1.54
(合成例8)
重量平均分子量(Mw)=63900
数平均分子量(Mn)=40300
分散度(Mw/Mn)=1.59
(合成例9)
まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.29g)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.45gl)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、1,4−ジブロモベンゼン(2.90g)を追添加した。2時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認した後、さらに、1,4−ジブロモベンゼン(0.06gx2)を追添加した。さらに2時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール(500ml)中に滴下し、粗ポリマーを晶出させた。 つづいて、合成例8と同様にして、末端処理反応を行った後、さら
に精製して、目的物9を得た。
数平均分子量(Mn)=35100
分散度(Mw/Mn)=1.81
[有機電界発光素子の作製]
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
溶剤 トルエン
組成物濃度 P1:2.0重量%
A1:0.04重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
引き続き、以下の構造式に示す、有機化合物(H1)を含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、下記の条件でスピンコートにより塗布して、窒素中、230℃、1時間、加熱を行って架橋させることにより膜厚22nmの正孔輸送層4を形成した。
溶剤 トルエン
塗布液濃度 0.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す有機化合物(E1)、及び(E2)を用いて下記に示す発光層形成用塗布液を調製し、以下に示す条件で正孔輸送層4上にスピンコートした。次いで、減圧下(0.1MPa)、130℃、1時間加熱を行って膜厚40nmで発光層5を得た。
溶剤 トルエン
塗布液濃度 (E1):1.0重量%
(E2):0.1重量%
<発光層5の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
ここで、正孔注入層3、正孔輸送層4及び発光層5を成膜した基板を真空蒸着装置内に移し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が2.7×10-4
Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気した後、下記構造式(E3)で表される化合物を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層6を得た。蒸着速度を0.5〜1.2Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚5nmの膜の正孔阻止層6を形成した。
mの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層7を形成した。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
輝度/電流:2.5[cd/A]@100cd/m2
電圧:5.2[V]@100cd/m2
発光効率:1.6[lm/W]@100cd/m2
素子の発光スペクトルの極大波長は465nmであり、発光層にドープした化合物(E2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.142,0.181)であった。
有機電界発光素子の輝度が初期輝度の80%となるまでの時間を、比較例1を1としたときの数値として表12に示す。
表12に示すが如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることで、長寿命の素子が得られた。
実施例1において、正孔注入層3を形成するための有機電界発光素子用組成物中の、式(I)で表される基を有する電荷輸送性化合物(P1)を下記式(P2)(合成例8で合成された目的物8)で表される電荷輸送性化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作成した。
表12に示すが如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることで、長寿命の素子が得られた。
実施例1において、正孔注入層3を形成するための有機電界発光素子用組成物中における、溶剤を安息香酸エチルとし、式(I)で表される基を有する電荷輸送性化合物(P1)を下記式(P3)で表される電荷輸送性化合物に、電子受容性化合物(A1)0.04重量%を下記式(A2)0.8重量%に、組成物の塗布後の加熱時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作成した。
実施例1において、正孔注入層3を形成するための有機電界発光素子用組成物中における、電荷受容性化合物(A1)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作成した。
実施例1において、正孔注入層3を形成するための有機電界発光素子用組成物中における、電荷輸送性化合物(P1)を下記式(P4)(合成例9で合成された目的物9)で表される電荷輸送性化合物に、また正孔輸送層4を形成するのに用いる有機化合物(H1)
を有機化合物(H2)に、電子受容性化合物をA2に変更し、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作成した。
表13に示すが如く、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることで、長寿命の素子が得られた。
比較例1において、正孔輸送層4を(H1)から(H2)に変更した以外は、比較例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作成した。
有機電界発光素子の輝度が初期輝度の80%となるまでの時間を、比較例3を1としたときの数値として表13に示す。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
Claims (10)
- 該電子受容性化合物が、下記式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
A1〜A3は何れも周期表第3周期以降の元素であって、A1は長周期型周期表の第17
族に属する元素を表わし、A2は長周期型周期表の第16族に属する元素を表し、A3は長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。
Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表す。
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表す。) - 該電荷輸送性化合物が、高分子化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子用組成物を塗布後、該電荷輸送性化合物を架橋させて得られることを特徴とする、高分子膜。
- 基板上に、陽極及び陰極、該陽極及び陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子において、
該有機層が、請求項5に記載の高分子膜を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。 - 該高分子膜が、正孔注入層であることを特徴とする、請求項6に記載の有機電界発光素子。
- 該有機電界発光素子が、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を含み、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の有機電界発光素子。
- 請求項6〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
- 請求項6〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする、有機EL照明。
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