JP2009293118A - 溶融Al合金めっき鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の溶融Alめっきと、同等、又は、それ以上の十分な耐食性を有し、なおかつ耐疵つき性に優れためっき鋼板を提供する。
【解決手段】元素群Xを{Ni、元素群A(ただし、元素群Aは、La、Ce、Yとする。)、Ca}とした時、元素群Xより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で1原子%以上、30原子%以下(ただし、Niは、0.5原子%以上、15原子%以下、元素群Aから選択される元素の合計は、0.5g原子%以上、10原子%以下、Caは、0.5原子%以上、15原子%以下を満たす。また、元素群Aから選択される元素とCaを同時に添加する場合、それぞれの濃度は、5%を超えない。)含有し、残部がAlと不可避不純物からなるめっき層を有することを特徴とする溶融Al合金めっき鋼材。
【選択図】図6

Description

本発明は、溶融金属めっき鋼材に関し、詳しくは、Al系の合金めっき鋼材に関する。
溶融Alめっきは、高耐食性,高耐熱性、また、優れた外観等の特性をを有することから、建材分野、自動車排気系統部品等で広く使用されている。通常、これらの用途において、Alめっきは、裸で使用されるが、長期間使用すると、砂塵や、チッピング等により、めっき表面に疵が生じ、外観が悪化するという問題がある。こうした疵の発生は、溶融Alめっきの硬度が低いことに起因する。
一般的に使用される溶融Alめっきは、特許文献1に示すように、Al−Si系で、純Alに近い組成のめっきであり、めっき層は、Al相主体で構成されることから、めっき硬度は、Hvで50〜100程度と低く、非常に疵つきやすい。このため、これまで、めっき層の軟らかい溶融Alめっき鋼板において、その優れた外観を長期に維持することは、不可能であり、この耐疵つき性の向上が強く望まれていた。
一般的に、Alめっき層の硬度を上げるためには、Alと金属間化合物を形成する合金元素を添加すればよい。Alと金属間化合物を形成する元素は、数多く存在し、これらの中の硬度の高い金属間化合物を選択して、一定の体積分率で、めっき層中に含有できれば、めっき層硬度の上昇は可能である。
しかし、既知のAl含有金属間化合物は融点が高いため、硬度上昇を目的として、何の指針もなしに合金元素濃度を上げれば、Al合金の融点が上昇するか、又は、めっき浴中で金属間化合物が沈殿物となるため、合金元素をめっき層に含有させることは不可能となる。したがって、Alめっき浴への元素添加には、元素種の選択と、元素添加量についての指針が必要となるが、これまでに、Al系めっきについて、こういった検討はなされていない。
今まで、Alめっきに添加された元素は、特許文献2に示されるような、Zn、Mg、Siといった一部の元素種に限られており、その特性も、Zn、Mgは、低融点で比較的添加し易いが、Alより耐食性が劣り、これらの添加は、Alの優れた耐食性を失ってしまうし、一方、Zn、Siのように、Alと二相分離して、金属間化合物を形成しない元素では、めっき層硬度を効率的に上げることができないなど、いずれにおいても、必要な特性を得ることができなかった。
特開平10−265928号公報 特開平 2005−133151号公報
本発明が解決しようとする課題は、溶融Al系めっき鋼材において、高耐食性と、耐疵つき性を両立する溶融Al合金めっき鋼材を提供することである。
本発明者らは、溶融Al系めっきにおいて、耐疵つき性を得る手段として、合金元素の添加による硬度上昇を検討した。種々の添加元素を検討した結果、Niの高濃度添加により、めっき層の硬さを上昇させることができ、従来のAl−Si系のめっきよりも、耐疵つき性が上昇することを見出した。また、Niと同様の働きをする元素として、Y、La、Ce等の希土類元素や、Caを見出した。
さらに、特定のめっき層の組成範囲では、めっき層の組織を、微細結晶、特に、金属間化合物を含む微細結晶や、アモルファス相を含む組織とすることができ、これによって、めっき層の硬さを、さらに高めることができることを見出した。
また、Y、La、Ce等の希土類元素や、Caの他、さらに、Siを添加して、元素群XとSiからなる、より硬質な金属間化合物を形成することで、効果的な硬度向上が可能であることを見出した。さらに、Siが、Al、元素群Xと3元共晶組成をとり、めっき浴の融点を下げるので、Si添加が、めっきの製造性を向上させることも見出した。
本発明は、こうした知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは、以下のとおりである。なお、組成は、いずれも、原子%で表示する。以下、説明の中で、特に、原子の記載がない場合も、組成表示における%は、原子%を意味する。
(1)元素群Xを{Ni、元素群A(ただし、元素群Aは、La、Ce、Yとする。)、Ca}とした時、元素群Xより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で1原子%以上、30原子%以下(ただし、Niは、0.5原子%以上、15原子%以下、元素群Aから選択される元素の合計は、0.5原子%以上、10原子%以下、Caは、0.5原子%以上、15原子%以下を満たす。また、元素群Aから選択される元素とCaを同時に添加する場合、それぞれの濃度は、5原子%を超えない。)含有し、残部がAlと不可避不純物からなるめっき層を有することを特徴とする溶融Al合金めっき鋼材。
(2)前記めっき層が、さらに、0.1原子%以上、40原子%以下のSiを含有することを特徴とする前記(1)に記載の溶融Al合金めっき鋼材。
(3)前記めっき層が、さらに、元素群Bを、{Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Nb、及び、Mo}とした時、元素群Bより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で0.1原子%以上、10原子%以下含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の溶融Al合金めっき鋼材。
(4)前記めっき層が、アモルファス相を、体積分率で5%以上含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶融Al合金めっき鋼材。
本発明の合金めっき鋼材は、従来の溶融Alめっきと、同等、又は、それ以上の十分な耐食性を有し、なおかつ、耐疵つき性に優れためっき鋼材であり、現在、溶融Alめっき部材が使用されている建材、自動車排気系統部材に使用することが可能で、これら部材の高寿命化、メンテナンス労力の低減、コスト削減等をもって、産業の発達に寄与する。
また、従来、耐疵付き性の観点より、溶融Alめっき材の適用が見送られていた、より高い耐疵つき性が求められる部材にも、適用することが可能である。この場合、従来材より廉価な材料コストで、従来性能を示す。
本発明者らは、耐食性に優れるAl系めっきの耐疵つき性の向上のため、Al系めっき層への様々な元素添加による硬度上昇の方法を検討し、多くの有用な知見を得て、本発明に至った。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の要件は、Alめっき層中に微細で硬質な金属間化合物を形成させ、硬度を上昇させることにある。このためには、Alめっき浴に、Alと微細で硬質な金属間化合物を形成する元素を添加してやればよい。
形成される金属間化合物の硬度や、Alめっき浴の温度上昇などの観点から、この金属間化合物を形成させるのに最適な元素は、Ni、希土類元素のY、La、Ce、及び、Caである。これらの元素をまとめて、元素群Xとし、また、希土類元素のY、La、Ceをまとめて、元素群Aとする。
通常のAl系めっきであるAlめっき、Al−Si系めっきのめっき硬度は、ビッカース硬度で、50〜100Hv程度であり、軟鋼程度の硬さであるが、Alに、元素群Xより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で1%以上含有させると、めっきのビッカース硬度を100Hv以上とすることができ、耐疵つき性が上昇する。これは、前述のように、Niや、希土類元素が、Alと硬質な金属間化合物を形成して、めっき層中に微細に析出するためである。
また、これらの元素は、いずれも、Alと共晶組成をとるため、共晶組成までは、Alの融点を下げながら添加することができるという操業上の利点も有する。このため、元素の添加条件(濃度)は、前述の金属間化合物の析出とAlめっき浴の融点という観点から決定する必要がある。
例えば、NiをAlめっき浴に添加した場合には、NiAl3という硬質な金属間化合物が、めっき層中に、微細に分散して析出する。この金属間化合物は、Niが、Al中に0.5%以上添加されると生成する。Niの単独添加で、硬度を100Hv以上とするためには、1%以上の添加が必要である。Niは5%までは、融点を低く保ちながら、添加することのできる元素である。好ましくは、Niを6%以上添加して、150Hv以上にすることが好ましい。
Niの添加量が上昇するにつれて、めっき層の硬度は上昇するが、Ni添加量が15%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるので、単独でのNi添加量の上限は15%とする。めっき操業を容易にするため、めっき浴の融点を800℃以下とするには、Al−Ni系においては、Niの添加量が、11%以下であることが好ましい。参考として、過去に報告されているAl−Niの状態図を、図1に示す。
なお、Niは、耐食性に優れているので、この点においても、めっき層中に含有される元素として適しており、上述した0.5〜15%の添加濃度範囲においては、添加濃度が高いほど、良好な耐食性能を示す。
元素群AのY、Ce、Laを、Al系めっき層に添加すると、YAl3、Ce3Al11、La3Al11等の硬質な金属間化合物が、めっき層中に、微細に分散して析出し、めっき層の硬度が上昇する。
これらの金属間化合物は、元素群Aから選択される元素が、Al中に0.5%以上添加されると生成する。元素群Aから選択される元素、又は、元素群のみの添加で、硬度を100Hv以上とするためには、1%以上の添加が必要である。5%までは、融点を低く保ちながら、添加することができる。これは、Niとほぼ同じ、5%程度の濃度で、Alと共晶組成をとることが一つの原因であると、本発明者らは考えている。
より好ましくは、元素群Aから選択される元素を6%以上添加して、150Hv以上にすることが好ましい。5%を超えると、融点は再び上昇に転じ、10%を超えると、融点が850℃を超え、難操業条件となるため、これらの元素、又は、元素群のみの添加量の上限を10%とする。
めっき操業を容易にするため、めっき浴の融点を800℃以下とするには、Al−(元素群A)系においては、元素群Aから選択される元素の添加量が8%以下であることが好ましい。参考として、過去に報告されているAl−Yの状態図、Al−Laの状態図、及び、Al−Ceの状態図を、それぞれ、図2、図3、及び、図4に示す。
Caも、Ni、元素群Aの元素とよく似た働きをする元素である。すなわち、Caの添加により生成する、CaAl4という硬質な金属間化合物が、めっき層中に、微細に分散して析出し、めっき層の硬度向上効果を得ることができる。この金属間化合物は、CaがAl中に0.5%以上添加されると生成する。
Caの単独添加で、硬度を100Hv以上とするためには、1%以上の添加が必要である。Caは8%までは、めっき浴の融点を低く保ちながら、添加することができる。これは、Caが8%程度の濃度で、Alと共晶組成をとることが一つの原因であると、本発明者らは考えている。
好ましくは、Caを11%以上添加して、硬度を150Hv以上にする。添加量が8%を超えると、めっき浴の融点は、再び上昇に転じ、15%を超えると、融点が850℃を超え、難操業条件となるため、Ca単独の添加量の上限を15%とする。
めっき操業を容易にするため、めっき浴の融点を800℃以下とするには、Al−Ca系においては、Ca添加量が13%以下であることが好ましい。参考として、過去に報告されているAl−Caの状態図を、図5に示す。
Niと、元素群Aから選ばれる元素を、併用して添加することで、金属間化合物を形成させることも可能である。この場合、Niの添加量が10%で、元素群Aの合計添加量が5%となる付近に、共晶組成が存在するため、Alめっき中に、より多くの元素添加が可能となり、より硬質なめっき層を得ることができる。
併用して用いる場合は、Ni、元素群Aともに、0.5%以上添加する。この併用添加で、めっき層中に、Alとそれぞれとの金属間化合物が生成して、硬度の向上効果が得られる。
好ましくは、Niを3%以上、元素群Aから選択される元素を3%以上添加して、硬度を150Hv以上にする。Ni添加量が15%を超えるか、又は、元素群Aの添加量が合計で10%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるので、Niの添加量の上限を15%、元素群Aの合計添加量の上限を10%とする。
めっき操業を容易にするため、めっき浴の融点を800℃以下とするには、Al−Ni−(元素群A)系においては、Niの添加量は11%以下、元素群Aから選択される元素の添加量は8%以下が好ましい。
同様に、NiとCaを併用して、金属間化合物を形成させることも可能である。この場合も、Niが10%、Caが8%となる付近に共晶組成が存在するため、Alめっき中に、単独添加する場合より、多くの元素添加が可能となり、より硬質なめっき層を得ることができる。併用して用いる場合は、Ni、Caともに0.5%以上添加する。この併用添加で、めっき層に金属間化合物が生成して、硬度の向上効果が得られる。
好ましくは、Niを3%以上、Caを3%以上添加して、硬度を150Hv以上にする。Ni添加量が15%を超えると、又は、Ca添加量が15%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるので、Niの添加量の上限を15%、Caの添加量の上限を15%とする。
めっき操業を容易にするため、めっき浴の融点を800℃以下とするには、Al−Ni−Ca系においては、Niの添加量は11%以下、Caの添加量は6%以下が好ましい。
Alへの元素群AとCaの同時添加は、Al−(元素群A)−Ca系が共晶組成を取らないため、添加量の増大にともなって、めっき浴の融点が上昇するので、Alめっきへの高濃度の同時添加は難しいが、両者が、それぞれ、5%までの添加であれば問題はない。両者が、それぞれ、5%超となると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるため、元素群Aから選択される元素の添加量の上限を5%、Caの添加量の上限を5%とする。
Niと、元素群Aから選ばれる元素、及び、Caを併用して、金属間化合物を形成させることも可能である。Ni、元素群Aから選ばれる元素の合計、及び、Caが、ともに、0.5%以上添加されていると、めっき層中に金属間化合物が生成して、硬度の向上効果が得られる。好ましくは、Niを3%以上、元素群Aから選択される元素又はCaを3%以上添加して、硬度を150Hv以上にする。
ただし、この場合、Aから選ばれる元素とCaが併用されるため、両者は、それぞれ、5%までの添加とする。また、Ni添加量が15%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるため、Niの添加量の上限を15%とする。
SiのAlへの添加も、めっき層の硬度上昇に若干の効果はあるが、Siは、単独で添加するよりも、Ni、元素群A、Caなどとともに添加する方が、めっき層の硬度を、より効果的に向上させることが可能である。これは、Siは、Alと金属間化合物をつくらないが、Ni、元素群A、Ca等の添加元素との金属間化合物を形成し易いためである。また、Siは、Al系めっき浴の融点を下げる効果ももつ。
Si濃度が12%で、Alと共晶組成をとることから、この範囲までは、めっき浴の融点を下げつつ、めっき層の硬度を上昇させる。融点降下は、Si濃度が0.1%以上で観察される。
12%以上の添加では、融点は上昇に転じるが、めっき層の硬度は、さらに上昇する。Siの添加量が40%以上となると、めっき浴の融点が850℃となり、難操業条件となるため、Siの添加量の上限を40%とする。
Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Nb、及び、Moを、元素群Bとする時、この元素群Bより選択される元素の1種又は2種以上を0.1%以上含有することで、めっき層の硬度を、さらに上昇させることが可能である。これらの元素は、単独で添加するよりも、Ni、元素群A、Ca、又は、Siなどとともに添加することで、より効果的に、めっき層の硬度を、向上させることが可能である。
例えば、MgはSiと結びつきが強く、添加すると、硬質な金属間化合物であるMg2Siを形成し、微細に析出して、めっき層の硬度の上昇に効果がある。ただし、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Nb、及び、Moの1種又は2種以上の添加量が10%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるため、元素群Bの添加量上限は10%とする。なお、これらの元素添加は、後述のアモルファス形成能への影響はほとんどない。
本発明者らは、めっき層の硬度を、さらに上昇させることを目的として、めっき層への元素添加によって、結晶組織を制御することを検討した。その結果、めっき層の形成相の結晶粒の微細化や、めっき層中にアモルファス相を含有させることによって、めっき層の硬度を上げることができることを見出した。
アモルファス相をめっき層中に含有できれば、めっき硬度は上昇し、その上昇効果は、めっき層中にアモルファス相が5%以上存在することで得られる。
アモルファス相を含有することによる耐食性向上の効果は、電気化学測定で腐食電流密度等を測定すれば、最も容易に予測できる。体積分率で5%以上の含有で、腐食電位における腐食電流密度が小さくなり始める。また、塩水噴霧試験や複合サイクル腐食試験を行って、耐食性向上の効果をはかることも可能であるが、もともと、Al系のめっき鋼板は、腐食減量が小さく、この効果を見出すことが難しい場合がある。
ただし、上記試験であっても、アモルファス相の体積分率の高いめっきでは、耐食性向上の効果を確認することができるため、アモルファス相を含有するめっきが、結晶質と同等、又は、それ以上の耐食性を有していることを、実環境に近い耐食性データで得ることできる。
アモルファス相を含有することによる耐食性の向上効果についての詳細な要因は、判明していないが、成分が均質であり、カップリングセル形成の抑制につながっていることが、一因ではないかと、本発明者らは考えている。
組織が微細化しやすい組成や、アモルファス相が得られやすい組成は、結晶化がし難く、凝固時に過冷が得られやすい組成、すなわち、より低温まで液体状態を保持できる共晶組成である。本発明の組成は、いずれも、共晶組成をもとにした成分範囲であるため、高い冷速をもつ冷却方法を実施すれば、アモルファス相を得ることができる成分系である。
アモルファス相が得られ易い組成は、構成される原子の選択によって変化する。一般的に、原子半径差が大きく、多元系である方が、アモルファス形成には都合がよいことが知られている。したがって、通常、2元系であるよりも、3元系が好ましい。
上述のとおり、2元成分系のアモルファス形成能は大きくないが、めっき層のように数μm程度の厚みであれば、2元成分系においても、冷却条件を制御することで、部分的に、アモルファス相を得ることが可能であるし、さらに、上記成分系の中で、アモルファス形成能の良好な成分条件、濃度域を選定することで、アモルファス相の析出濃度を上げることが可能となる。
Al−Ni系においては、Niが10%となる近傍で、アモルファス形成能が高くなる。アモルファス形成を容易にするために、Alに、5%以上、15%以下のNiを添加することが好ましい。
Alに、元素群Aより選択される元素の1種又は2種以上添加するめっきにおいては、元素群Aより選択される元素が合計で10%となる近傍で、アモルファス形成能が高くなる。アモルファス形成を容易にするために、元素群Aより選択される元素を、合計で2%以上、10%以下添加することが好ましい。
AlにCaを添加するめっきにおいては、Caが8%となる近傍で、アモルファス形成能が高くなる。アモルファス形成を容易にするために、Caを、5%以上、13%以下、添加することが好ましい。
Alに、Siを添加するめっきにおいては、Siが12%となる近傍で、共晶組成となるが、最もアモルファス形成がし易い組成は、共晶組成ではない。アモルファス形成理論では、アモルファス形成能が最も高くなる組成は、高融点の金属側にずれるというのが、一般的である(参考資料:Y.Li:JOM,vol57,n3,March 2005,p.60−63)。
したがって、この理論によれば、Al−Si系のように、金属間化合物を形成せず、融点差が非常に大きい系においては、アモルファス形成がし易い組成は、高Si濃度側に大きくずれる。
一方、Al−Ni系、Al−元素群A系、Al−Ca系などは、金属間化合物(NiAl3、La3Al11等)が形成され、Alとの共晶組成となるため、このずれは小さい。
この理論に従い、本発明者らが、アモルファス相が得られる組成を探索した結果、アモルファス相が得られるSi添加量が25%以上であること、及び、Si添加量が35%付近で、最もアモルファス形成し易くなることが判明した。
したがって、アモルファスの形成という観点で好ましいSi添加量は25%以上である。なお、Si添加量が40%を超えると、めっき浴の融点が850℃を超え、難操業条件となるため、Siの添加量上限は40%とする。
以上、2元系について、アモルファス形成能が高くなる組成について説明した。
前述のように、Ni、元素群A、Caの元素、又は、Siを併用して、3元成分系とすることで、2元系成分系より、アモルファス形成能を高くすることができる。元素種が増えると、規則的な格子構造をとるための原子間の移動が困難となり、アモルファス形成能が向上する。
ただし、元素の添加濃度が低い場合には、この規則的な格子構造をとるための原子間の移動を困難にするという効果が充分得られないので、少なくとも1種の元素について、一定の濃度以上添加することが好ましい。例えば、Ni、元素群A、Ca、Siの元素を添加する場合は、Niが5%以上、元素群Aがその合計で2%以上、Caは5%以上、Siが25%以上の、いずれか一つを満たすことが好ましい。
また、Siは、Alとの金属間化合物を形成しないが、めっき浴のアモルファス形成能は、金属間化合物が形成し易いと高くなる。このため、高Si濃度のめっき浴でより多くのアモルファス相を得る場合には、AlやSiと金属間化合物を形成し易い元素である、Niや元素群Aから選ばれる元素、Ca等を、さらに添加することが好ましい。
以下、本発明の3元系の特徴的な成分系について解説する。
先ず、AlにNiを添加した組成(好ましくは、Niが5%以上添加されている。)に、元素群Aより選択される元素を合計で0.5〜10%以下添加することで、構成する原子を増やし、原子を動き難くすることで、液体状態を安定させて、アモルファス相をより形成し易くすることが可能である。
最適な添加量は、元素によって異なるが、元素群Aの元素は、概ね、5%程度が最適である。すなわち、Al−10%Ni−5%(元素群A)組成付近に共晶組成が存在している。
元素群Aの元素の添加量の合計が0.5%未満では、アモルファス形成能の向上効果は期待できない。0.5%以上含有していると、めっき層中のアモルファス体積分率が増加して、示差走査熱量分析において、結晶化の際の発熱ピーク量が検出可能となる(約0.5J/g程度の変化が起こる)。10%を超えると、前述のとおり、融点が高くなり、難操業条件となるため、元素群Aより選択される1種又は2種以上の元素の、合計の添加量上限を10%とする。
また、元素群Aの代わりにCaを用いた、Al−Ni−Ca系もアモルファス形成能を高くすることができ、Caの最適な添加量は、約8%程度である。すなわち、Al−10%Ni−8%Ca組成付近に共晶組成が存在している。
Caが0.5%未満では、アモルファス形成能に効果は期待できない。0.5%以上含まれると、めっき層中のアモルファス体積分率が増加して、示差走査熱量分析などで、結晶化の際の発熱ピーク量として検出可能となる(約0.5J/g程度の変化が起こる)。15%を超えると、前述のとおり、融点が高くなり、難操業条件となるため、Caの添加量の上限は、15%とする。
Alへの元素群AとCaの同時添加は、Al−(元素群A)−Ca系が共晶組成をとらないため、低融点化によるアモルファス形成能を高める効果は、ほとんどないが、ともに、5%程度までの添加であれば、めっき浴温度は850℃以下でめっき操業が可能であることから、2元系めっきと同等レベルのアモルファス形成能をもつめっきを作製することができる。
Alへ、Ni、元素群A、Caのいずれか1種を添加した2元系、又は、2種以上を添加した3元系に、さらに、Siを添加して、構成する原子を増やし、原子を動き難くすることで、液体状態を安定させて、アモルファス相をより形成し易くすることが可能である。
Siは、めっき浴の融点を下げることができる元素であるため、より低温まで液体状態を保持できるようになるから、アモルファス相を形成する上では、特に好ましい。Siの添加量は0.1%未満では、アモルファス形成能向上に効果は期待できない。
0.1%以上含まれると、めっき層中のアモルファス体積分率が増加して、示差走査熱量分析などで、結晶化の際の発熱ピーク量が検出可能となる(約0.5J/g程度の変化が起こる)。40%を超えると、前述のとおり、融点が高くなり、難操業条件となるため、Siの添加量上限は、40%とする。
特に、Al−Ni−Si系においては、Al−10%Ni−15%Siに、共晶組成が存在し、Ni単独添加では、高融点となるものも、合金融点を700℃以下とすることが可能である。この組成でのアモルファス形成能は非常に高く、合金の水冷や高圧ミスト冷却の冷速であっても、アモルファス相が得られ、アモルファスめっきの作製に都合がよい。
また、この組成は、活性な金属であるCa、や希土類元素に頼らず、アモルファス形成能を高めているため、めっきとしての耐食性向上においても好ましい。
以上、Ni、元素群A、Ca、Si元素添加による硬質金属間化合物やアモルファス相の含有による、めっき層の硬度上昇を説明したが、先に述べたように、Ni、元素群A、Ca、Si以外にも、めっき層の硬度の上昇に効果のある元素群Bが存在する。Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Nb、及び、Moからなる元素群Bより選択される1種又は2種以上を0.1%以上含有することで、めっき層の硬度をさらに上昇させることが可能である。
特に元素群Bは、単独で添加するよりも、Ni、元素群A、Ca、又は、Siなどとともに添加することで、より効果的にめっき層の硬度を、向上させることが可能であり、また、これらの元素添加は、アモルファス形成能への影響はほとんどない。
めっき合金の作製は、基本的には、純金属(純度99%以上)を用いて調合する。使用する金属を所定量を混合して、真空又は不活性ガス置換状態で高周波誘導炉、アーク炉などを使用して、完全に溶解して、合金とする。
ただし、Mg、Znのように沸点が低いものと、Ti、Vのような高融点金属とを同時に添加する場合は、高融点金属とAlの合金を先に作製し、高融点純金属よりも融点の低い合金浴とした上で、純金属、Al−Zn、Al−Mg合金などを添加して、成分を調整する。
なお、一旦、合金成分を完全に溶解させ、成分調整をしためっき浴は、可能な限り凝固させずに、そのままめっき浴として使用することが好ましい。一度凝固させると、高融点の金属間化合物が析出、偏析して、成分分離を起こし、再溶融した際に、高融点金属がボトムドロスを形成する可能性があるためである。
このため、本発明の実施例においても、成分調整した溶湯を、融点以上に保持したまま、めっき専用の坩堝に移して、めっき浴として使用した。
めっき鋼板を作製する際の母材については、特に制約はない。Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、Ni、Cr含有鋼等が使用可能である。製鋼方法や、鋼の強度、熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等の鋼材の前処理加工についても、特に制限がない。
めっきの製造方法に関しては、ゼンジミア法、プレめっき法、2段めっき法、フラックス法等が適用可能である。本発明のAlめっきをする前のプレめっきの種類としては、Niプレめっき、2段めっきの1段目のめっき種類としては、Al−Siめっき等が最適である。
めっき浴の浴温は850℃以下で、融点より10〜50℃高い範囲が好ましい。結晶質のめっきを作製する場合は、めっき浴に浸漬した後、N2ガスを使用したワイピングで、目付け量を調整し、その後、空冷すればよい。アモルファス相を得る場合は、めっき後、N2ガスを使用したワイピングで目付け量を調整し、その後、水冷か高圧ミスト冷却する。
本発明では、アモルファス形成能が低い系においては、Cuプレス急冷を行った。これは、0℃に冷却された、Cu製の鋳型で、溶融めっき直後のめっき鋼板をプレスし、急冷する手法である。水冷と異なり、水蒸気による核沸騰、膜沸騰等の冷却速度を低下させる現象の影響をなくすことができるため、効率的に冷却速度を得ることができる。
本発明者らが、実施した冷速調査では、水冷が103℃/s程度であるのに対し、Cuプレス急冷では、105℃/s程度の冷速が得られている。
アモルファス相の形成は、めっき層のX線回折像でハローパターンが得られることで確認できる。単一のアモルファス相であれば、ハローパターンのみ(めっき付着量が少ない場合、鋼材のFe回折ピークも検出される)が得られる。
ただし、結晶相が混在する場合は、この手法は、使用できない。アモルファス相と結晶相が混在する場合、つまり、アモルファス体積分率が低い場合は、示差熱分析装置を使用して、昇温中、アモルファス相が結晶化する際の発熱ピークを検出することによって、アモルファス相がめっき層に存在することを確認する。
発熱ピークの発熱量は、めっき層中のアモルファス相の体積分率に比例するため、アモルファス形成能の向上効果を確かめる上でも都合がよい。
あらかじめ作製されたAl系合金を使用して、単ロール法でアモルファス相体積分率100%のアモルファスリボン薄帯を作製して、DSCサンプルを採取し、このアモルファス相の結晶化の際に表れる発熱ピークの温度と、発熱量を記録しておく。このAl系合金をめっきした鋼板から、DSCサンプルを採取し、同じ測定条件における温度での発熱量を計測すれば、容易に、めっき層中のアモルファス体積分率を見積もることが可能である。
アモルファス以外の非平衡相(過飽和固溶体や、高温安定相)の存在が疑われる場合は、めっき鋼材の断面を切断し、研磨、エッチングして、表面のめっき層を光学顕微鏡(以下、光顕)で観察する。アモルファスになった部分は、エッチングによっても何の組織も観察されないが、結晶相の残った部分は、結晶粒界や、亜粒界、析出物等に起因する組織が観察される。
これにより、アモルファス部分と結晶部分の領域は、明確に区別されるので、線分法や画像解析により体積率に換算することが可能である。組織が微細過ぎて光顕での測定が困難な場合は、めっき層断面より薄片を作製し、透過電子顕微鏡により観察することで、同様に測定が行える。
透過電子顕微鏡の場合は、組織の観察されない領域において、電子線回折像のハローパターンにより、アモルファス構造を確認することも可能である。
光顕観察において、全面に組織の観察されない場合や、一部に組織の観察されない部分があっても、粗大で歪みの無い結晶粒である疑いのある場合は、さらに電子顕微鏡用薄片を採取して、電子線回折像に回折スポットが無く、ハローパターンが観察されることにより、アモルファス相であることを確認することが望ましい。
光顕も電子顕微鏡も、10か所以上の異なる視野について、コンピューターによる画像処理で面積率を求め、それらを平均して体積率とするのが望ましい。
めっきの耐疵つき性評価には、スクラッチ試験、ビッカース試験を実施して評価する。スクラッチ試験は、先端半径0.05mmのサファイア製試験針を荷重2〜20gf(19.6〜196mN)で試験材に垂直に押し付け、試験材を20mm走行させた後、傷発生の有無を目視観察し、疵が発生した最も軽い荷重を疵付き加重とする。
なお、この試験と併用して、ビッカース試験を行う。ビッカース試験は、めっき層の硬度を最も容易に測定することのできる試験であり、スクラッチ試験との相関性が非常に高い。すなわち、ビッカース硬度が100以上であれば、スクラッチ試験では、ほぼ疵付き荷重は10gf(98mN)以上であり、現行のAl−Siめっき鋼板を上回る耐疵つき性を有することがわかる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1〜4に示す組成のめっき浴に、板厚0.6mmの冷延鋼板と、これに、Niプレめっきを施しためっき鋼板、2段めっき用としてAl−10mass%Siめっきした鋼板、肉厚10mmで辺の長さが10cmの等辺山形鋼、及び、板厚10mmの熱延鋼板(等辺山形鋼、及び、熱延鋼板は、ともに、Niプレめっきした。)を基材として、表面処理鋼材を作製した。
Al、及び、その他必要な成分元素を所定の組成に調整した後、高周波誘導炉、又は、アーク溶解炉を使用して、Ar雰囲気で溶解し、Al系合金を得た。作製した合金より、切粉を採取して酸溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量し、作製した合金が、表1〜4に示す組成に、一致することを確認した。この合金をめっき浴として使用した。
冷延鋼板(板厚0.6mm)は、10cm×10cmに切断した後に、レスカ社のバッチ式溶融めっき試験装置でめっきした。N2ガスワイピングで目付け量を調節し、その後、窒素ガスで常温まで冷却した。
等辺山形鋼は、長手方向に10cm、熱延鋼板は10cm×10cmの正方形に切断し、どぶ漬けめっきで本発明組成のAl系合金浴に浸漬して、自然空冷した。
この実験においては、いずれのめっき鋼板も自然空冷を用いて作製したので、アモルファス相は得られていない。それらは、アモルファス相の体積分率は、5%以下で「×」と示した。めっき鋼板を作製できなかったものについては、「−」で示す。
めっき鋼板の耐食性は、自動車規格(JASO M 609−91、8時間/サイクル、濡れ/乾燥時間比 50%)に準拠した方法を21サイクル実施して評価した。ただし、塩水は、0.5%塩水を使用した。試験後の腐食減量とめっき層の密度から換算した腐食減厚で耐食性を評価した。
腐食減厚が0.5μm未満を「◎」、0.5〜1μmを「○」、1μm以上を「×」とした。表1中で、耐食性評価を行わなかったものは、「−」で示した。
めっき層の耐疵つき性評価には、ビッカース試験を使用した。めっき層表面の硬度を荷重10gで測定した。ビッカース硬度は、めっき層の10点平均硬さとした。めっき層の硬度が300以上のものは「◎」、250〜300以上のものは「○」、200〜250以上のものは「◇」、150〜200以上のものは「□」、100〜150以上のものは「△」、100未満のものは「×」とした。表1中で、ビッカース試験を行わなかったものは、「−」で示した。
図6に、表2中のNo.59のめっき層のXRD結果を示す。AlにNi、Siを添加することで、金属間化合物が生成し、めっき層の硬度が増す。
Figure 2009293118
Figure 2009293118
Figure 2009293118
Figure 2009293118
(実施例2)
表5〜8に示すめっき組成の浴に、板厚0.6mmの冷延鋼板と、これに、Niプレめっきを施しためっき鋼板、2段めっき用としてAl−10mass%Siめっきした鋼板を基材として、表面処理鋼材を作製した。
Al、及び、その他必要な成分元素を所定の組成に調整した後、高周波誘導炉、又は、アーク溶解炉を使用して、Ar雰囲気で溶解し、Al系合金を得た。作製した合金より、切粉を採取して酸溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量し、作製した合金が、表5〜8示す組成に一致することを確認した。この合金をめっき浴として使用した。
冷延鋼板(板厚0.6mm)を、10cm×10cmに切断した後に、レスカ社のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきした。エアワイピングで目付け量を調節し、その後、0℃の水で、水没して水冷するか、至近距離からの高圧ミスト冷却か、又は、Cuプレスを行い急冷した。
めっき層表層のアモルファス形成は、CuのKα線を使用したX線回折装置により、回折図形を測定し、ハローパターンの有無により判定した。アモルファス相と結晶相が混在する場合で、アモルファス体積分率が低い場合は、示差熱分析装置を使用して、昇温中、アモルファス相から結晶化する際の発熱ピークを検出することによって、アモルファス相の有無を確認した。
あらかじめ、作製されたAl系合金を使用して、単ロール法でアモルファスリボン薄帯を作製して、DSCサンプルを採取し、このアモルファス相の結晶化の際に表れる発熱ピークの温度と、発熱量を記録しておき、Al系合金をめっきした鋼板から、DSCサンプルを採取し、同じように所定の温度での発熱量を計測し、めっき層中のアモルファス体積分率を見積った。
アモルファス体積分率で、めっき層中に占めるアモルファス相の割合が、50%以上を「◎」、35%以上、50%未満を「○」、25%以上、35%未満を「◇」、15%以上、25%未満を「□」、5%以上、15%未満を「△」、5%未満のものを「×」とした。
めっき鋼板の耐食性は、自動車規格(JASO M 609−91、8時間/サイクル、濡れ/乾燥時間比 50%)に準拠した方法を21サイクル実施して評価した。ただし、塩水は、0.5%塩水を使用した。試験後の腐食減量とめっき層の密度から換算した腐食減厚で耐食性を評価した。
腐食減厚が0.5μm未満を「◎」、0.5〜1μmを「○」、1μm以上を「×」とした。表2中で、耐食性評価を行わなかったものは、「−」で示した。
めっき層の耐疵つき性評価には、ビッカース試験を使用した。ビッカース硬度は、めっき層の10点平均硬さとした。めっき層の硬度が300以上のものは「◎」、250〜300以上のものは「○」、200〜250以上のものは「◇」、150〜200以上のものは「□」、100〜150以上のものは「△」、100未満のものは「×」とした。
図7に、表5中のNo.32のめっき層の示差熱分析結果を示す。アモルファス相の存在を表す、結晶化ピークが250℃〜350℃にかけて現われている。
図8に、表6中のNo.45のめっき層の示差熱分析結果を示す。アモルファス相の存在を表す、結晶化ピークが220℃〜300℃にかけて現われている。
Figure 2009293118
Figure 2009293118
Figure 2009293118
Figure 2009293118
Al−Ni状態図を示す図である。 Al−Y状態図を示す図である。 Al−La状態図を示す図である。 Al−Ce状態図を示す図である。 Al−Ca状態図を示す図である。 表1中のNo.59のめっき層のXRD結果を示す図である。 表2中のNo.32のめっき層の示差熱分析結果を示す図である。 表2中のNo.45のめっき層の示差熱分析結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 元素群X{Ni、元素群A(ただし、元素群Aは、La、Ce、Yとする。)、Ca}とした時、元素群Xより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で1原子%以上、30原子%以下(ただし、Niは、0.5原子%以上、15原子%以下、元素群Aから選択される元素の合計は、0.5原子%以上、10原子%以下、Caは、0.5原子%以上、15原子%以下を満たす。また、元素群Aから選択される元素とCaを同時に添加する場合、それぞれの濃度は、5原子%を超えない。)含有し、残部がAlと不可避不純物からなるめっき層を有することを特徴とする溶融Al合金めっき鋼材。
  2. 前記めっき層が、さらに、0.1原子%以上、40原子%以下のSiを含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融Al合金めっき鋼材。
  3. 前記めっき層が、さらに、元素群Bを、{Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Nb、及び、Mo}とした時、元素群Bより選択される元素の1種又は2種以上を、合計で0.1原子%以上、10原子%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融Al合金めっき鋼材。
  4. 前記めっき層が、アモルファス相を、体積分率で5%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融Al合金めっき鋼材。
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