JP5343701B2 - 耐食性に優れたMg合金めっき鋼材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れたMg合金めっき鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Mg合金めっき鋼材に関し、詳しくは、陽極酸化皮膜を有するMg合金めっき鋼材およびその製造方法に関する。
鋼材を防食する手段として、めっきが広く使用されている。めっき金属としては、ZnやAl合金が使用されることが多い。腐食環境が厳しい建材分野では、ZnにAl、Mgを含有し耐食性を向上させた、Zn-Al系、Zn-Al-Mg系合金めっきが使用されている。より長期に、鋼材を使用するため、これらのめっきの付着量を大きくしためっきが使用されている。しかし、めっき付着量が大きくなると、めっき鋼材のコストは高くなり、さらには、加工性、溶接性等の、本来の鋼材としての必要特性も失われる傾向にある。したがって、可能であれば、低付着量で、高耐食性を発揮するめっきが好ましい。
本発明者らは、近年、耐食性元素であるMgを50原子%以上の高濃度に含有したMg系溶融めっき(Mg-Zn系溶融めっき)を新たに開発した(特許文献1)。Mg系めっき鋼板は、従来のZn-Al系、Zn-Al-Mg系めっき鋼板よりも、耐食性に優れている。建材用途を踏まえ、Mg系めっきのさらなる耐食性向上手段を探索した結果、Al部材で使用される表面処理技術である、陽極酸化法をMg系めっきへ適用することを検討した。
陽極酸化法は、Al、Ti、Mg等、安定な酸化物を形成する金属で行われる防食方法である。一般的には、Al、Ti,Mg部材で使用されるが、Alめっき層を有する鋼材でも検討されたことがある。Alめっきは、表面に緻密な酸化皮膜の層ができるため、特に、通常の環境で皮膜が機械的に損傷を受けずに地鉄が露出しないような場合には、Znめっきよりも耐食性が高い。さらに陽極酸化処理が適用して、酸化皮膜を安定的に形成することにより、Alめっき層の耐食性をさらに改善することも一部で実施されている(特許文献2)。
また、近年では、耐食性に優れたジルコニウム化合物を陽極酸化皮膜に含有させ、さらに耐食性を高めたAlめっき鋼材なども開発されている(特許文献3)。
陽極酸化処理によるめっき層の耐食性の改善は、Znも可能であるが(例えば、特許文献4)、Znの水酸化物、酸化物は実用性に乏しく、Alと比較すると緻密でないため、耐食性向上手段として適用することは難しい。
Alの他に、Mgも陽極酸化が可能な金属である。Mgは、犠牲防食能に優れるため、鋼材の延命効果を持つ皮膜の構成元素としては、適切な金属である。Mgの陽極酸化で得られる皮膜は、Alと同様に緻密な構造をしており、例えば、Mg材は、たとえ、母相のMgの耐食性が低くとも、陽極酸化することで充分な耐食性を得ることができる(特許文献5、特許文献6など)。すなわち、Mgめっきであれば、陽極酸化による耐食性向上効果が期待できる。しかし、単独でMgを鋼材に付着させることは、不可能であるため、鋼材との密着性を確保するために、特許文献1で示されるように、ZnやAlを含有させることが必要である。特に、他の元素をめっき層中に含有すると、Mg相とは、別の相がめっき層中に形成し、安定的な酸化皮膜が形成されなくなる。従って、これまで提案されたMgの陽極酸化方法を、Mg系めっきへ適用しても、耐食性に優れた緻密なめっき皮膜を得ることは難しく、めっき層の改良か、もしくは、陽極酸化方法の改善が必要であった。
特開2008-255464号公報 特開昭63-57795号公報 特開2000-273656号公報 特開平9-2561694号公報 特開2005-68555号公報 特開2006-322044号公報
本発明の目的は、Mg合金めっき層とその上の陽極酸化被膜とを備えたことにより耐食性を向上させたMg合金めっき鋼材およびその製造方法を提供することである。
Mg合金めっき層に陽極酸化皮膜を形成することはこれまで困難であった。Mg合金めっき層は、鋼板との密着性を確保するため、Mg以外の合金元素を多く含有させなければならず、その結果、陽極酸化性に乏しい金属間化合物相が形成してしまう。従って、Mgめっきの陽極酸化処理として、通常のMgに使用される陽極酸化処理を行っても、耐食性に優れた皮膜を形成することができない。
本発明によれば、陽極酸化処理を適用できるMg合金めっき層と、これまで実現できなかった高濃度に合金元素を含有したMg合金めっき層の陽極酸化皮膜形成方法との組み合わせにより、耐食性に優れた陽極酸化皮膜を有するMg合金めっき鋼材およびその製造方法を提供する。
本発明者らは、この課題解決を目的として、Mgめっきのめっき組織の調整と、シリケート浴での陽極酸化を実施することで、耐食性にすぐれる陽極酸化皮膜を有するMgめっき表面処理鋼材を検討した。
Mgの陽極酸化方法は、これまでにも数々提案されてきたが、Mg合金めっき層中に含まれる合金元素が多く、Mg相量が少ない場合の陽極酸化皮膜の形成方法は全く示されてこなかった。
安定したMgの陽極酸化の可否は、めっき層中に存在するMg相の量とその分散状態により決定される。すなわち、合金元素を多く添加しためっき層中では、Mg相の量が減少し、陽極酸化によって皮膜を形成することができない金属間化合物の相が増える。また、添加される合金元素が少量であっても、合金中の金属間化合物相が島状に析出してしまうため、Mgの陽極酸化皮膜が均一に形成できない。これらの問題は、めっき表面のMgを原子レベル、あるいは、それに近いレベルで均一に分布させることで、解決できることを本発明者らは見出した。具体的には、特定の成分範囲のめっきにおいて急冷を施すことで、Mgを均一にめっき層中に分布させること、同時に、金属間化合物相の成長を抑制することで解決することができることを見出した。
加えて、金属間化合物相の成長抑制には、金属間化合物相とMg相が共晶組成を取るようにすればよい。共晶組成は、最も、相が成長しにくい組成であり、めっき表面のMg相が均一に分布し、金属間化合物相の粒成長を抑制しやすいため、緻密な陽極酸化皮膜の形成に適した組成である。
さらに、金属間化合物相の成長の抑制には、特定の元素種の添加で効果がより高いことを見出した。また、結晶相の成長を究極に抑制しためっきとして、Mg系のアモルファス相めっきは陽極酸化皮膜形成特性に特に優れ、陽極酸化皮膜による耐食性効果を大きく発現できることも見出した。
本発明は、こうした知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)鋼材の表面に、ZnおよびAlのうちの少なくとも1種の合金元素を合計で10mass%以上70mass%以下含有し、残部がMgである、厚み30μm以下の溶融Mg合金めっき層を有し、さらに該溶融Mg合金めっき層の上部に0.3g/m2以上の陽極酸化皮膜が形成されていることを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
(2)前記(1)に記載のMg合金めっき鋼材において、前記合金元素の合計含有量が、25〜70mass%であることを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
(3)前記(1)または(2)に記載のMg合金めっき鋼材において、前記溶融Mg合金めっき層が、さらにCaを0.1〜10mass%含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材において、前記溶融Mg合金めっき層が、体積分率で5%以上のアモルファス相を含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材において、前記陽極酸化皮膜が、0.03g/m2以上のSiを含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材を製造する方法であって、
溶融めっきにより鋼材に前記Mg合金めっき層を形成した後、直ちにミスト冷却または水冷により室温まで冷却し、次いで陽極酸化処理を行うことを特徴とするMg合金めっき鋼材の製造方法。
本発明のMg合金めっき鋼板は、通常の溶融めっきプロセス、及び、陽極酸化プロセスで製造可能であるため、汎用性、経済性に優れる。また、Mgめっきは、耐食性不足が問題となって使用用途が限られていたが、本発明により、十分な耐食性を得ることができ、低コストで、資源豊富なMgの利用を促進することが可能である。また高耐食性を得ることで、鋼材の高寿命化、メンテナンス労力の低減をもって産業の発達に寄与することができる。
図1は、表1中、本発明によるNo.23の陽極酸化皮膜表面のSEM像である。 図2は、0.5%NaCl水溶液中(Ag/AgCl参照電極使用)での、陽極酸化処理前後の分極曲線を示す。図中1は表1中、本発明によるNo.23、図中2は表1中、比較材であるNo.65の分極曲線を示す。
以下、本発明である、Mg合金めっき上に陽極酸化皮膜を有したMg合金めっき鋼板について詳細に説明する。
本発明者らは、耐食性向上手段として、Mg合金めっき層に従来Mg合金で適用されている陽極酸化処理の適用可否を検討した。
Mgは、Feとの親和性が低いため、鋼材にMgを密着させる場合には、鋼材との密着性を確保する元素を含有させる必要がある。鋼材との密着に必要な元素は、Feとの親和性の高いAl、Znが最適である。鋼材への密着に必要な元素量は、mass%で10%以上である。以下、特に指定がない場合は、本明細書中での含有量を表す%表示は、mass%を意味する。
一方で、一般のMg材の場合、Mgの特性を変化させるため、合金元素を添加することがあるが、通常、Mgに合金元素を添加すれば、Mg材中で、添加元素とMgが金属間化合物を形成し、Mgの陽極酸化性が悪くなる。合金元素濃度が10%以上では、材料中のMg以外の合金成分が多くなり、陽極酸化処理を行っても、緻密な皮膜が形成されず、斑が生じる。例えば、本明細書中で主に陽極酸化処理方法として取り上げる、シリケート浴中での陽極酸化の場合は、表面に粒状の結晶が析出してしまい、こうした皮膜は緻密でないため、耐食性目的とした皮膜としては役割をなさない。
本発明者らは、一般的には合金成分が多いMg合金めっきについて、陽極酸化処理方法を検討した結果、めっき中の相構成を変化させることで、陽極酸化処理が可能であることを見出した。
すなわち、陽極酸化性が悪化する原因は、添加される元素によって形成する陽極酸化性に乏しい金属間化合物相が偏在して成長することが原因である。この相の成長抑制、微細分散、もしくは、消滅により、合金成分が多いMg合金めっき層についても陽極酸化が可能である。
金属間化合物相を成長抑制、分散、消滅させる方法としては、溶融めっきで形成しためっき層の凝固時の冷却速度を引き上げる方法がある。ミスト冷却、または水冷すること、さらにはめっきの厚みを十分に薄くすることが達成手段である。めっきの厚みを薄くすることは、最も容易な冷却速度の向上方法で、30μm以下の厚みにすれば、ミスト冷却(得られる冷却速度は、数十℃/s)で、めっき層表面の金属間化合物相の成長を抑制することができる。金属間化合物の成長を十分に抑えためっき層では、均一な陽極酸化皮膜を形成することが可能である。皮膜の耐食性向上効果が顕著に現れるのは、0.3g/m2以上の陽極酸化皮膜を形成した場合であり、0.3g/m2未満ではこの効果は観察されない。
Mgに10%以上のZnが添加されると、冷却速度が小さい場合は、金属間化合物Mg4Zn7相が形成し、この相が陽極酸化性を悪くする。したがって、Znが多く含有される場合は、この相の成長を抑制することが、陽極酸化性の改善につながる。Mg-Zn合金においては、Mg4Zn7相とは別の、陽極酸化性に優れたZn3Mg7相を利用することが好ましい。この相は非平衡相で、高温安定相であるとされ、冷速が大きくて、他の合金元素(Ca,Al等)が添加される場合に得やすくなる相である。Mgめっきでは、冷速が高ければ、Mgの第2相組織として、Zn3Mg7相が得られ、Mg4Zn7相は消滅し、緻密な陽極酸化を形成しやすくなる。
また、冷速を上げる他、Znの濃度制御もZn3Mg7相を得るのには有効で、Zn濃度が55%付近で最も得られやすく、25%〜70%の範囲では低い冷却速度でもZn3Mg7相が得られやすい。Znが25%未満では、30μm以下のめっき厚みとしても、ミスト冷却程度の冷速では、Zn3Mg7相を得にくく、また70%以上では、Mg相量が少なくなりすぎて、陽極酸化をすることが不可能となるため、Zn含有量の望ましい範囲は25%〜70%である。
Mg合金にAlが添加されると、Mg17Al12相が形成される。この相は、陽極酸化性に乏しい訳ではないが、Mg相よりも陽極酸化性がよくないため、成長した相がめっき層中に混在する場合は、均質な陽極酸化皮膜が形成しにくく、この相の成長は抑制した方が好ましい。Alの添加濃度が10〜15%では、冷却速度を高めることで、Mg相中にAlを固溶させた単相組織を得ることができ、陽極酸化性が向上する。15%以上では、Mg17Al12相が形成されるが、急冷することで、Mg17Al12相の粒成長を抑制し、分散させることで、陽極酸化性が向上する。25%〜70%の領域では、特に融点が低くなり、液相線から共晶線までの温度差が小さくなることから、Mg17Al12相の粒成長を十分に抑制でき添加濃度として適している。また、40%〜60%においては、Mg17Al12相の単相領域となり、Mg相が混在することはなくなるため、この場合でも、均一な陽極酸化皮膜が形成しやすく陽極酸化性が向上する。70%以上となると、Mg相量が少ない中でAl相が生成して、陽極酸化をすることが不可能となるため、上限濃度は70%とする。
Mg合金にZn、Al等の合金元素の他、Caが添加されると融点をさらに降下させることができる。その効果を発揮させるには0.1%以上添加するのが望ましい。また、めっき層中の相の成長を極端に抑制することが可能となる。Caが5%付近で、この効果が最も高い。Ca濃度が10%以上となると、めっき浴のドロスの形成量が多くなり、Mgめっきの製造が不可能となるため、上限濃度を10%とするのが望ましい。
Mg合金に適切な量のZnとCaを加えた合金は、結晶相の成長を極端に抑えることのできる合金となる。具体的には、Zn濃度が30%〜65%、Caが1〜10%、(本発明の規定範囲内でAlが混入されてもよい)で規定される範囲では、水冷程度の冷速でアモルファス相をめっき層中に含有させることができる。アモルファス相は、均質組織であり、極めて陽極酸化性に優れた相である。アモルファス相の体積分率が5%以上であれば、その他の結晶相も非常に微細で緻密となり、めっき層中の元素成分がほぼ均質となるため、緻密な陽極酸化皮膜が得られる。
陽極酸化皮膜による耐食性効果は、主に、めっき表面での腐食反応が関連するため、腐食初期の耐食性に影響する。腐食初期の耐食性は、皮膜中に含まれるSi含有量により変化する。皮膜中のSi含有量は、シリケート浴中のケイ酸ナトリウムの濃度により変化させることが可能である。Si含有量が、0.03g/m2以上であれば、複合サイクル腐食試験に供したときの腐食減量が小さくなるので望ましい。
次に、本発明で開示するめっき鋼材の製造方法について説明する。本発明に用いる鋼材の鋼種や材質は、特に限定はなく、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、Ni、Cr含有鋼等が使用可能である。製鋼方法や、鋼の強度、熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等の鋼材の前処理加工についても特に制限はない。
溶融Mg合金めっき浴の作製に関しては、発火を避けるため、あらかじめ、Mg-Zn系合金、Mg-Al系合金を高周波誘導炉等で作製して、溶解し、これに少量ずつMgおよび合金元素のZn、Al、Caを添加して所定の組成にする手段が好ましい。
また、母合金として、難燃性Mgを使用する方法もある。この場合は、発火点を気にすることなくMgを添加することが可能である。
めっき方法に関しては、ゼンジミア法、プレめっき法、2段めっき法等でMg系溶融めっき層を密着させることが可能である。プレめっき種では、Cuプレめっき、Snプレめっき、Niプレめっきなどが使用可能である。また、浴温は融点より、数十度高く保持されるのが好ましい。
陽極酸化処理としては、一般的にMgに用いられる陽極酸化方法であれば、どのようなものであっても構わない。例えば、従来から知られるDOW17法、HAE法でもよいが、電解液にCr、フッ素などの有害液を含んでいるため、発明者らは、シリケート浴での陽極酸化方法で陽極酸化性を確かめた。
シリケート浴とは、水と有機溶媒の混合液を溶媒として、ケイ酸ナトリウム化合物を加え、これに、塩基性化合物を添加して塩基性を保った水溶液である。有機溶媒としては、エチレングリコール、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒が好ましいが、カルボン酸等の有機化合物を使用することも可能である。塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩もしくは、ケイフッ化塩を用いることができ、具体的には、NaOH、KOH、K2CO3、KHCO3などがあげられる。電解液の組成は、有機溶媒が、10〜80mass%、ケイ酸ナトリウム0.15〜0.5mol/L、塩基性化合物の添加によりpHを9以上とすることが好ましい。
上述のように調整された電解液中で、Mgめっきを陽極酸化する条件としては、電解浴温は30〜90℃、より好ましくは、40〜70℃である。電流密度は、10〜200A/m2で、より好ましくは、40〜120A/m2である。電解処理前には、Mgめっきは酸による前処理を施しておくことが好ましく、前処理に用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等、特に限定されることはない。例えば、10%硫酸で1秒の浸漬等でよい。
このような条件下で陽極酸化をすることにより、Mg合金めっき層上にMgO、Mg(OH)2を主体とした陽極酸化皮膜を形成することができる。陽極酸化性の判断は、皮膜のSEM観察で判断する。皮膜の形成が良い場合は、表面に緻密な酸化皮膜が形成され、下地であるめっき層が見えることはない。また、場合によっては、くさび形状の孔が皮膜表面上に形成される。一方で、皮膜の形成が悪い場合は、表面に粒状のMgO、Mg(OH)2等などが形成され、下地であるめっき層が露出することもある。なお、皮膜の厚みは、1〜3μm程度が適切で、この厚みの陽極酸化皮膜を形成するのに必要なめっき層は3μm以上であるのが望ましい。
Si濃度は、陽極酸化皮膜を20%クロム酸(VI)水溶液で溶解し、溶解液をICPに供してより評価する。また、皮膜中のSiの存在を確かめるためには、EPMAなどで断面観察を行い、Siの分布を測定するのも有効である。
めっき層上に緻密な陽極酸化皮膜を形成することで、皮膜を有しない同成分、同組織のめっきよりも耐食性が向上する。耐食性の確認は、曝露試験による腐食減量評価が好ましいが、曝露試験は時間を要するため、短周期で用意するためには、複合サイクル腐食試験に供して評価する。例えば、塩水として5%NaClの代わりに0.5%NaCl水溶液を使用した、複合サイクル(JASO M609-91)は、実曝露と近いデータを得ることができるため、好適である。また、より簡単に、耐食性向上効果を確認するには、電気化学測定を使用する方法もある。例えば、0.5%NaCl水溶液中で、分極曲線を評価すれば、陽極酸化皮膜を有するめっき層の腐食電流密度は、小さくなり、また、腐食電位付近に不動態領域が観察される。
アモルファス相の形成の確認は、めっき層のX線回折像でハローパターンが得られることで確認できる。単一のアモルファス相であれば、ハローパターンのみ(場合によって、鋼材のFe回折ピークが検出される場合もある)得られる。アモルファス相と結晶相が混在する場合で、アモルファス体積分率が低い場合は、示差熱分析装置を使用して、昇温中、アモルファス相から結晶化する際の発熱ピークを検出することによって、アモルファス相がめっき層に存在することを確認できる。
アモルファス体積分率を求めるためには、めっき鋼材の断面を切断し、研磨、エッチングして、表面のめっき層を光学顕微鏡(以下、光顕)で観察する。アモルファスになった部分は、エッチングによっても何の組織も観察されないが、結晶相の残った部分は、結晶粒界や、亜粒界、析出物等に起因する組織が観察される。これにより、アモルファス部分と結晶部分の領域は、明確に区別されるので、線分法や画像解析により体積率に換算することが可能である。組織が微細過ぎて光顕での測定が困難な場合は、めっき層断面より薄片を作製し、透過電子顕微鏡により観察することで、同様に測定が行える。透過電子顕微鏡の場合は、組織の観察されない領域において、電子線回折像のハローパターンにより、アモルファス構造を確認することも可能である。光顕観察において、全面に組織の観察されない場合や、一部に組織の観察されない部分があっても、粗大で歪みの無い結晶粒である疑いのある場合は、さらに電子顕微鏡用薄片を採取して、電子線回折像に回折スポットが無く、ハローパターンが観察されることにより、アモルファス相であることを確認することが望ましい。光顕も電子顕微鏡も、10か所以上の異なる視野についてコンピューターによる画像処理で面積率を求め、それらを平均して体積分率とするのが望ましい。
表1に示す各組成の溶融合金めっき浴を作製し、板厚0.8mmの冷延鋼板を基材として、表面処理鋼材を作製した。冷延鋼板(板厚0.8mm)は、200mm×100mmに切断した後に、自社製のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきした。
めっき浴の浴温は、めっき合金の融点より50℃高く保持した。エアワイピングで目付け量を調節した。
めっき層を十分に冷却するため、ミスト冷却、水冷処理を行った。作製したサンプルの一部を比較材として使用した。陽極酸化の可否を調べる比較材は、自然空冷し、めっき鋼板を作製した。
各試験に供する前に、めっき鋼板を50×100mmに切断した。
めっき層のアモルファス体積分率は、試験片のめっき層の厚みを5等分した位置において、各2枚ずつの透過電子顕微鏡用薄片を採取し、コンピューターを用いた画像解析により、それぞれ、視野のアモルファス領域の面積率を測定し、全視野に占めるアモルファス領域の面積率の平均値を、アモルファス体積分率とした。
陽極酸化前処理として、10%硫酸酸洗(室温、1秒浸漬)を行ったのち、ただちにシリケート浴に浸漬し陽極酸化処理を行った。シリケート浴には、メタケイ酸ナトリウム濃度:0.25mol/L(ただし、表1中、No.20は、0.15mol/L、No.21は、0.1mol/Lとした。)、エチレングリコール濃度:20wt%とし、浴温度は50℃に設定した。pH11になるように、水酸化カリウム濃度を変更した。電流値は100A/m2とし、通電時間は30分とした。
陽極酸化皮膜の付着量は、皮膜形成後、20%クロム酸(VI)で溶解し、溶解前後の重量の増減によって算出した。
陽極酸化皮膜の状態を見るため、SEMで皮膜表面の観察を行った。めっき地肌が検出されたものは「×」、めっき地肌は検出されないが、粒状の結晶が検出されたものは「△」、緻密で平滑な皮膜は、「○」緻密で平滑であり、かつ孔を有する皮膜が作成されたものは「◎」とあらわした。
皮膜中のSi濃度は、20%クロム酸(VI)で、陽極酸化皮膜を溶解し、ろ液をICPで分析した。
めっき層の耐食性は、複合サイクル腐食試験に供した。下記サイクルのCCT試験を21サイクル実施した。
<CCT試験の1サイクル>
塩水噴霧(0.5%NaCl、35℃)6時間
→乾燥(50℃、45%RH)3時間
→湿潤(50℃、95%RH)14時間
→乾燥(50℃、45%RH)1時間
めっき層の腐食減厚(陽極酸化皮膜除去分は除く)が、8μm以上のものを「×」、8〜6μmのものを「△」、6〜4μmのものを「◇」、4〜3μmを「○」、3μm以下を「◎」とした。
図1は、表1中、本発明によるNo.23の陽極酸化皮膜表面のSEM像である。めっき層上に緻密で、くさび状の孔を有する陽極酸化皮膜が形成されており、SEM像による陽極酸化皮膜評価で「◎」として表示したものの一例である。
図2は、0.5%NaCl水溶液中(Ag/AgCl参照電極使用)での、陽極酸化処理前後の分極曲線を示す。図中1は表1中、本発明によるNo.23、図中2は表1中、比較材であるNo.65の分極曲線を示す。緻密な陽極酸化皮膜を有するNo.23の分極曲線は、陽極酸化皮膜を有しないNo.65の分極曲線と比較して、カソード側(E=-1.5〜-1.25V)、アノード側(E=-1.25〜-0.9V)の腐食電流密度が小さくなっており、電気化学反応が抑制されていることがわかる。結果、ターフェル外挿法によって推定される、腐食電位(E=1.25V)における腐食電流密度が陽極酸化皮膜を有することによって、小さくなり、耐食性が向上していることがわかる。
以上の結果から、本発明によりMg合金めっき層とその上の陽極酸化被膜とを形成したMg合金めっき鋼材は、極めて優れた耐食性を備えていることが分かる。
No.1〜29は、請求項に記載するめっき成分、及び陽極酸化皮膜を有するMg合金めっき鋼材である。Mg合金めっき層の例として、Mg-Zn-Ca、Mg-Al-Ca、Mg-(Zn,Al)-Ca系めっき提示し、これらは所定の厚みを有する陽極酸化皮膜を有している。なお、Mg合金めっきでは、冷却速度の高いミスト冷却を使用することで、めっき層中の陽極酸化性の乏しい金属間化合物の偏在を抑制しためっき層を作製することができる。また、ミスト冷却より、さらに冷却速度の高い水冷を使用することで、これら金属間化合物の形成をさらに抑制し、めっき層中に、陽極酸化性に優れたアモルファス相を含有させることが可能である(No.17、19、23、25、27、29)。
一方で、No.30〜75は比較材である。陽極酸化処理の有のものは、請求項に記載する所定の陽極酸化皮膜を有していないMg合金めっき鋼材である。また無のものは、陽極酸化処理を行っていないため、皮膜を有していないMg合金めっき鋼材である。めっき層の冷却手段として、空冷を用いたものは、冷却速度がそれほど大きくないため、陽極酸化性を悪化させる金属間化合物が偏在して形成し、陽極酸化処理を施しても、所定の陽極酸化皮膜を得ることが難しい。本発明と比較することにより、陽極酸化皮膜の有無による性能向上を判断することが可能である。
本発明によれば、Mg合金めっき層とその上の陽極酸化被膜とを備えたことにより耐食性を向上させたMg合金めっき鋼材およびその製造方法が提供される。

Claims (6)

  1. 鋼材の表面に、ZnおよびAlのうちの少なくとも1種の合金元素を合計で10mass%以上70mass%以下含有し、残部がMgである、厚み30μm以下の溶融Mg合金めっき層を有し、さらに該溶融Mg合金めっき層の上部に0.3g/m2以上の陽極酸化皮膜が形成されていることを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
  2. 請求項1に記載のMg合金めっき鋼材において、前記合金元素の合計含有量が、25〜70mass%であることを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
  3. 請求項1または2に記載のMg合金めっき鋼材において、前記溶融Mg合金めっき層が、さらにCaを0.1〜10mass%含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材において、前記溶融Mg合金めっき層が、体積分率で5%以上のアモルファス相を含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材において、前記陽極酸化皮膜が、0.03g/m2以上のSiを含有することを特徴とする耐食性に優れたMg合金めっき鋼材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のMg合金めっき鋼材を製造する方法であって、
    溶融めっきにより鋼材に前記Mg合金めっき層を形成した後、直ちにミスト冷却または水冷により室温まで冷却し、次いで陽極酸化処理を行うことを特徴とするMg合金めっき鋼材の製造方法。
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