JP6112268B1 - 表面処理鋼板 - Google Patents

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Abstract

この表面処理鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に配されためっき層とを備える。上記めっき層の化学成分が、質量%で、20%超50%以下のバナジウムを含有し、残部がZn及び不純物を含む。そして、上記めっき層の目付量が1.0g/m2以上40g/m2以下である。

Description

本発明は、耐食性、パウダリング性、および塗装密着性に優れた表面処理鋼板に関する。
本願は、2015年7月10日に、日本に出願された特願2015−138857号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来から、家電製品、建材、自動車などの多様な分野で、電気亜鉛めっき層を有する表面処理鋼板(電気亜鉛めっき鋼板)が利用されている。電気亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板などと比較して、表面が均一で美しく、また、めっき工程で熱処理を受けていないため、母材鋼板の性質がそのまま維持されるという特徴を有する。
近年では、この電気亜鉛めっき鋼板の耐食性を、さらに向上させることが要求されている。例えば、電気亜鉛めっき鋼板の耐食性は、めっき層のめっき付着量(目付量)を増加させることで向上させることができる。しかし、電気亜鉛めっき鋼板のめっき付着量を増加させると、製造コストが増加し、またパウダリング性(加工を施した際の母材とめっき層と間の剥離しやすさ)や溶接性が低下する。
電気亜鉛めっき鋼板の耐食性は、めっき層として合金めっき層を形成することによっても向上させることができる。合金めっき層の種類および組成によっては、耐食性および溶接性の両方が向上する(例えば、非特許文献1参照)。しかし、めっき層として合金めっき層を形成するには、製造コストが増加する。この製造コストの増加を償うためには、めっき層の目付量を低減することが有効である。目付量を低減するためには、合金めっき層の特性をさらに向上させることが求められる。
また、電気亜鉛めっき鋼板のめっき層上に塗膜を形成することで、塗装後めっき鋼板の耐食性(塗装後耐食性)を向上させることができる。この塗膜により、表面外観も向上できる(例えば、特許文献1参照)。しかし、めっき層上に塗膜を形成したとしても、めっき層と塗膜との密着性(塗装密着性)が不十分であると、塗膜を形成したことによる効果が十分に得られない。このため、電気亜鉛めっき鋼板では、塗装前めっき鋼板の耐食性(裸耐食性)を向上させることに加えて、めっき層と塗膜との密着性を向上させることも要求されている。
上述のような産業的要求に基づき、近年では、電気亜鉛めっき鋼板のめっき層にバナジウムを含有させることで、耐食性を向上させることが検討されている。例えば、特許文献2〜5には、電気めっきの際に陰極(カソード)となる母材鋼板の表面に、めっき層としてZn−V酸化物を複合電析させる技術が開示されている。
国際公開第2010/137726号 日本国特許第5273316号公報 日本国特開2011−236471号公報 日本国特開2013−185199号公報 日本国特開2014−114503号公報
鉄と鋼 Vol.66(1980)No.7、807頁〜813頁
亜鉛およびバナジウムを含むめっき層(合金めっき層)を有する表面処理鋼板では、めっき層に含まれるバナジウムが、表面処理鋼板の耐食性の向上に寄与する。しかし、従来技術では、亜鉛およびバナジウムを含むめっき層中のバナジウム含有量が、最大でも20質量%であった。亜鉛およびバナジウムを含むめっき層は、電気めっきの際に亜鉛およびバナジウムの共析機構により形成されると考えられるが、従来技術では、めっき層中のバナジウム含有量を20質量%超に制御することが困難であった。めっき層中のバナジウム含有量を従来以上に高めることができれば、表面処理鋼板の耐食性をさらに向上できると期待できる。加えて、パウダリング性および塗装密着性も同時に向上できると期待できる。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、亜鉛およびバナジウムを含むめっき層中のバナジウム含有量を制御することによって、耐食性に優れ、パウダリング性および塗装密着性にも優れる表面処理鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様にかかる表面処理鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に配されためっき層と、を備える表面処理鋼板であって、
前記めっき層が、化学成分として、質量%で、
V :20%超50%以下、
Fe:0%以上30%以下、
Ni:0%以上30%以下、
Co:0%以上30%以下、
W :0%以上30%以下、
Mo:0%以上30%以下、
Ti:0%以上30%以下、
Zr:0%以上30%以下、
Nb:0%以上30%以下、
を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
前記めっき層の前記化学成分中の鉄含有量とニッケル含有量とコバルト含有量とタングステン含有量とモリブデン含有量とが、質量%で、0%≦Fe+Ni+Co+W+Mo≦30%を満足し、
前記めっき層の前記化学成分中のチタン含有量とジルコニウム含有量とニオブ含有量とが、質量%で、0%≦Ti+Zr+Nb≦30%を満足し、
前記めっき層の目付量が1.0g/m以上40g/m以下であり、
板厚方向と切断方向とが平行となる断面で前記めっき層を見た場合に、前記めっき層が、ミクロ組織として、結晶質組織および非晶質組織からなり、
前記結晶質組織がZnリッチ相を含み、
前記非晶質組織がVリッチ相を含む
(2)上記(1)に記載の表面処理鋼板では、前記めっき層が、前記化学成分として、質量%で、
Fe:1%以上25%以下、
を含有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の表面処理鋼板では、前記めっき層が、前記化学成分として、質量%で、
Ni:2%以上16%以下、
を含有してもよい。
(4)上記(1)〜()の何れか1つに記載の表面処理鋼板では、前記断面で見た場合に、
前記めっき層に対する前記結晶質組織の面積分率が5%〜80%であり、
前記めっき層に対する前記非晶質組織の面積分率が20%〜95%であってもよい。
(5)上記(1)〜()の何れか1つに記載の表面処理鋼板では、前記断面で見た場合に、前記結晶質組織に含まれる前記Znリッチ相の形状がデンドライト状であってもよい。
本発明の上記態様によれば、亜鉛およびバナジウムを含むめっき層中のバナジウム含有量が制御された表面処理鋼板を提供できる。この表面処理鋼板は、耐食性に優れ、パウダリング性および塗装密着性にも優れる。
本発明の一実施形態に係る表面処理鋼板の断面模式図であって、板厚方向と切断方向とが平行となる断面での模式図である。 本実施形態に係る表面処理鋼板の他の例を説明するための断面模式図である。 本発明例No.17の表面処理鋼板の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただ、本発明は本実施形態に開示の構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。なお、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。各元素の含有量に関する「%」は、「質量%」を意味する。
本発明者らは、表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性をさらに向上させるために、亜鉛(Zn)およびバナジウム(V)を含むめっき層中のバナジウム含有量を高める方法について検討した。具体的には、電気めっき法で母材鋼板の表面に亜鉛およびバナジウムを含むめっき層を形成する際の形成機構に着目し、めっき層中のバナジウム含有量を高める条件について検討した。その結果、次の2つの知見を見出した。
知見I
電気めっきのめっき処理液(めっき浴)として、水素過電圧が小さく、水素電極反応の交換電流密度が高い金属を含む水溶液を用いる。水素過電圧が小さく、水素電極反応の交換電流密度が高い金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンなどが挙げられる。これらの元素のうち、特にFeイオンを含むめっき処理液を用いることにより、めっき時における水素の発生が促進され、バナジウム析出効率が向上し、めっき層中のバナジウム含有量を高められる。具体的には、めっき処理液中のFeイオン濃度を0.001mol/l以上とする。好ましくは、めっき処理液中のFeイオン濃度を0.1mol/l超とする。
知見II
母材鋼板の表面にめっき層を形成する電気めっき工程で、電流密度などの電解条件を制御する。本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層の形成過程は、次の3つの過程に大別できる。
めっき第1過程:母材鋼板の表面にV化合物が還元析出。
めっき第2過程:上記V化合物の析出に続いてZnリッチ相が還元析出。
めっき第3過程:上記Znリッチ相の近傍にVリッチ相が化学析出。
これらの各過程のうち、特にめっき第1過程の反応が起きる際の電解条件を制御することにより、めっき層中のバナジウム含有量を高められる。めっき第1過程でのめっき形成反応を制御することにより、それ以降の各過程でバナジウムが析出しやすい環境を整えることができると考えられる。具体的には、めっき第1過程の反応が起きる際の電流密度を0A/dm以上10A/dm未満とする。好ましくは、めっき第1過程の反応が起きる際の電流密度を0A/dmとして自然浸漬を行う。
以下、本実施形態に係る表面処理鋼板に関して、電気めっき法にて母材鋼板の表面に亜鉛およびバナジウムを含むめっき層が形成されるメカニズムを説明する。
亜鉛イオンおよびバナジウムイオンを含むめっき処理液を用いて、電気めっき法により母材鋼板の表面にめっき層を形成する場合、亜鉛およびバナジウムは以下に示す共析機構により析出すると推定される。
めっき第1過程
めっき層の形成を開始すると、まず、下記の<反応式1>に示すように、VO2+からV3+への還元反応が起こる。バナジウムは、水溶液中では金属析出できないため、母材鋼板の表面に、酸化物および/または水酸化物などのV化合物が還元析出する。なお、この酸化物は、主に水和酸化物であると考えられる。
<反応式1>
VO2++2H+e⇔V3++HO(標準電極電位0.337V)
めっき第2過程
上記の<反応式1>に続いて、下記の<反応式2>に示すように、Zn2+の還元反応が起こり、Znリッチ相(Zn含有相)が析出する。なお、このZnリッチ相は、主に金属亜鉛であると考えられる。Znリッチ相が析出する際の母材鋼板の表面には、めっき第1過程で析出したV化合物の皮膜がすでに形成されている。V化合物の皮膜は、V化合物の析出状態に起因して厚みのばらつきを有している。そのため、V化合物が形成されている母材鋼板の表面では、上記の皮膜の厚みばらつきに応じて局所的に電流の流れが抑制される。その結果、局所的に電流密度が高くなる領域で、Znリッチ相の析出が促進される。
<反応式2>
Zn2++2e⇔Zn(標準電極電位−0.7626V)
なお、めっき第1過程で形成される酸化物および/または水酸化物などのV化合物の皮膜は、めっき第2過程以降の反応が起きる際の電解条件下でカソード溶解する場合もあるし、残留する場合もある。
めっき第3過程
めっき第2過程で析出したZnリッチ相が成長すると同時に、このZnリッチ相の表面で水素発生反応が進み、固液界面近傍にてめっき処理液のpHが上昇する。その結果、めっき処理液中のVO2+が、V(OH)および/またはVOなどの組成比を基本とするVリッチ相(V含有相)として化学析出する(Vの価数変化が伴わない析出)。なお、実際には、めっき第3過程の反応は、めっき第2過程の反応と平行して進行する場合が多いと考えられる。
上述した亜鉛およびバナジウムの共析機構にてめっき層中のバナジウム含有量を高めるためには、めっき処理液中にバナジウムイオンを高濃度で含有させることに加えて、知見I&IIとして上記したように、めっき処理液の成分を制御し、かつめっき第1過程の反応が起きる際の電解条件を制御する必要がある。
なお、めっき処理液中にバナジウムイオンを高濃度で含有させるだけでは、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高めることが困難である。その理由として、バナジウムイオンの液中濃度に上限(飽和溶解度)がある点、めっき第3過程の反応がめっき第2過程の反応よりも生じにくい点、などが挙げられる。また、バナジウムイオンの液中濃度を飽和溶解度近くまで高めるには、めっき処理液を調製するための時間が増え、このめっき処理液のドラッグアウト(リンス)に手間がかかる、などの経済的な不都合も生じる。
以下、知見Iに関して、めっき処理液の成分を制御する理由を説明する。
亜鉛は、水素電極反応の交換電流密度が低く(logi=−10.5)、かつ水素過電圧が最も大きいグループに分類される。本発明者らは、水素電極反応の交換電流密度が高く、水素過電圧が小さい金属のイオンを、めっき処理液中に含有させることで、めっき層中のバナジウム含有量を高くできることを見出した。
鉄、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンなどは、水素電極反応の交換電流密度が高い元素である。例えば、鉄(logi=−5.8)、ニッケル(logi=−5.2)、コバルト(logi=−4.9)、タングステン(logi=−6.4)、モリブデン(logi=−6.5)である。また、鉄、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンは、亜鉛と比較して、水素過電圧が小さい。これらの元素のイオンがめっき処理液中に含まれることにより、上記のめっき第3過程の反応が好ましく促進する。これらの元素のうち、特にFeイオンが、めっき層中のバナジウム含有量を高めるために有効である。
上記の元素のうち、Feイオンの効果が特に高い詳細な理由は現時点で不明であるが、めっき処理液中のFeイオンが好適に触媒として作用して、Znリッチ相の表面での水素発生反応を促進しているか、または固液界面近傍でのVリッチ相の化学析出を促進していると考えられる。
なお、本実施形態では、めっき処理液中にFeイオンが含まれることが必須であるが、めっき層中に必ずしもFeが含有されるわけではない。めっき処理液中のFeイオン濃度が高い場合に、めっき層中にFeが含有されることがある。詳細は後述する。
以下、知見IIに関して、めっき第1過程の反応が起きる際の電解条件を制御する理由を説明する。
めっき層中のバナジウム含有量を高めるために、めっき第1過程の反応が起きる際の電解条件を制御することが必須である詳細な理由は現時点で不明である。ただ、めっき第1過程で形成されるV化合物の皮膜によって、めっき第2過程でZnリッチ相が局所的に不均一に析出し、その結果、めっき第3過程の反応が好適に進行して、めっき層中のバナジウム含有量が高まると考えられる。
めっき第1過程の反応が起きる際の電解条件を好ましく制御しない場合、例えば、めっき第1過程の反応が起きる際の電流密度が高い場合、めっき第1過程の反応が十分に進行することなく、めっき第2過程の反応が進行し始める。具体的には、めっき第1過程の反応が起きる際の電流密度が高い場合、母材鋼板の表面にV化合物の皮膜が十分に形成される前に、Znリッチ相が析出し始める。この場合、母材鋼板の表面にV化合物の皮膜が十分に形成している場合と比較して、Znリッチ相が板面に対して均一に緻密に析出する。めっき第3過程のVリッチ相の化学析出は、Znリッチ相の表面の固液界面近傍、例えば、不均一に析出したZnリッチ相(固体)に囲まれる液体領域にて好適に進行する。従って、Znリッチ相が板面に対して均一に緻密に析出すると、めっき第3過程の反応が進行する条件が整わなくなり(めっき第3過程の反応が好ましく進行する領域が減少するため)、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高められない、あるいは低付着力のVリッチ相となり目的とする皮膜を得ることが困難となる。
上述のように、めっき層中のバナジウム含有量を高めるためには、めっき処理液中にバナジウムイオンを高濃度で含有させることに加えて、めっき処理液の成分を制御し、かつ電気めっき工程での電解条件を制御する必要がある。これらの条件を同時に複合的に意図的に制御することによって初めて、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高めることができる。
以下、本実施形態に係る表面処理鋼板について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼板(電気めっき鋼板)は、鋼板(母材鋼板)と、この鋼板の表面(片面または両面)に配されためっき層(電気合金めっき層)と、を有する。
母材鋼板
母材鋼板は、特に限定されない。例えば、母材鋼板として、極低C型(フェライト主体組織)、Alキルド型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等の鋼板を用いても良い。
めっき層が配される板面(母材鋼板の表面)は、表面粗さRaが、0.5μm以上2μm以下であることが好ましい。母材鋼板の表面粗さRaが、上記範囲内であるとき、母材鋼板とめっき層との密着性が好ましく向上する。その結果、表面処理鋼板のパウダリング性(めっき層が母材鋼板から剥離しにくい性質)が好ましく向上する。
なお、母材鋼板の表面粗さRaは、表面処理鋼板を、板厚方向と切断方向とが平行となる断面で観察した場合に現れる母材鋼板の輪郭曲線から求めればよい。母材鋼板の表面粗さRaの下限は、0.55μmであることが好ましく、0.6μmであることがより好ましい。また、母材鋼板の表面粗さRaの上限は、1.3μmであることが好ましく、1μmであることがより好ましい。
めっき層
めっき層は、化学成分として、基本元素であるVを含み、選択元素であるFe、Ni、Co、W、Mo、Ti、Zr、Nbを必要に応じて含み、残部がZn及び不純物からなる。
V:20%超50%以下
V(バナジウム)は、めっき層を構成する基本元素であり、さらに、耐食性を向上させる元素である。本実施形態に係る表面処理鋼板で耐食性、パウダリング性、および塗装密着性を向上させるために、めっき層が上記範囲のVを含有する必要がある。めっき層中のバナジウム含有量(例えば、バナジウム酸化物および/またはバナジウム水酸化物などを金属バナジウム換算した含有量)が上記範囲内であれば、従来技術で制御可能な20%以下のバナジウム含有量に比して表面処理鋼板の耐食性が向上する。バナジウム含有量は、21%以上であることが好ましく、23%以上であることがより好ましく、25%以上であることが最も好ましい。一方、バナジウム含有量が50%を超えると、めっき層中のZn含有量が相対的に低くなり、バナジウムが支配的であるめっき層となり、表面処理鋼板のパウダリング性が低下する。また、塗装密着性も低下する。バナジウム含有量は、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが最も好ましい。
なお、本実施形態に係る表面処理鋼板では、めっき層が上記範囲のVを含有しても、従来技術と比較して同等以上のパウダリング性(母材鋼板とめっき層との密着性)を確保できる。従来技術では、めっき層中のバナジウム含有量が20%を超えると、母材鋼板とめっき層との密着性が低下する場合があった。しかし、本実施形態に係る表面処理鋼板では、詳細な理由は不明であるが、めっき第1過程で形成されるV化合物の皮膜に起因して、母材鋼板とめっき層との間の密着性が向上していると考えられる。めっき第1過程で形成されるV化合物の皮膜が、母材鋼板と、めっき第2過程以降で形成される相(Znリッチ相およびVリッチ相など)と間の結合状態を好ましく変化させていると考えられる。なお、めっき第1過程で形成されるV化合物の皮膜が、めっき第2過程以降の反応が起きる際の電解条件で溶解する場合でも、母材鋼板とめっき層との間の密着性は向上する。
Zn:残部のうちで不純物の含有量を除いた量
Zn(亜鉛)は、めっき層を構成する基本元素であり、さらに、耐食性を向上させる元素である。本実施形態では、めっき層中のZnの含有量について特に規定する必要がなく、上記した残部のうちで不純物の含有量を除いた量とする。ただし、Zn含有量の下限は、20%、30%、または40%であってもよい。また、Zn含有量の上限は、80%、70%、または60%であってもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板は、めっき層を備えるが、このめっき層は電気合金めっき層であり、具体的には、Zn―V合金めっき層である。そのため、めっき層の化学成分中の亜鉛含有量とバナジウム含有量とが、質量%で、40%<Zn+V≦100%を満足することが好ましい。ZnおよびVの合計含有量の下限は、50%、60%、または70%であってもよい。
上記した基本元素の他に、本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、不純物を含有する。ここで、不純物とは、表面処理鋼板を工業的に製造する際に、鋼およびめっき合金の原料、または製造環境等から混入する、例えば、C、Si、Mn、Al、Ca、Mg、Sn、P、S、Cd、Pb等の元素を意味する。これらの元素が不純物として、それぞれ0.1%程度含有されても、本実施形態に係る表面処理鋼板の効果は損なわれない。従って、不純物である上記の各元素をそれぞれ、0.1%以下に制限することが好ましい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、残部である上記Znの一部に代えて、さらに、Fe、Ni、Co、W、Moから選択される少なくとも1つ以上の選択元素を含有させてもよく、また、Ti、Zr、Nbから選択される少なくとも1つ以上の選択元素を含有させてもよい。これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよい。よって、これらの選択元素の下限を制限する必要がなく、下限が0%でもよい。また、これらの選択元素が不純物として含有されても、上記効果は損なわれない。
Fe:0%以上30%以下
Ni:0%以上30%以下
Co:0%以上30%以下
W :0%以上30%以下
Mo:0%以上30%以下
Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、W(タングステン)、およびMo(モリブデン)は、水素過電圧が小さく、水素電極反応の交換電流密度が高い金属である。めっき層中のバナジウム含有量を好ましく高めるために、めっき層中にFe、Ni、Co、W、Moから選択される少なくとも1つ以上の選択元素が含まれてもよい。めっき層中のバナジウム含有量を好ましく高めるためには、Fe、Ni、Co、W、またはMoの含有量の下限は、それぞれ、1%であることが好ましく、2%であることがより好ましく、9%であることが最も好ましい。また、Fe、Ni、Co、W、またはMoの含有量の上限は、それぞれ、25%であることが好ましく、16%であることがより好ましく、12%であることが最も好ましい。
なお、めっき層中の亜鉛含有量およびバナジウム含有量を確保するためには、めっき層の化学成分中の鉄含有量とニッケル含有量とコバルト含有量とタングステン含有量とモリブデン含有量とが、0%≦Fe+Ni+Co+W+Mo≦30%を満足することが好ましい。
上述のように、本実施形態では、めっき処理液中にFeイオンが含まれることが必須であるが、めっき層中に必ずしもFeが含有されるわけではない。例えば、めっき層中のバナジウム含有量を高めるためには、めっき処理液中のFeイオン濃度が0.1mol/l超であることが好ましいが、めっき層中のFe含有量が検出限界以上の値に高まるのは、めっき処理液中のFeイオン濃度が0.2mol/l以上の場合である。
同様に、NiおよびCoに関しても、めっき層中の各元素の含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中の各元素のイオン濃度を0.2mol/l以上にすればよい。一方、WおよびMoは、めっき層中に単独で析出しにくい元素であり、Fe、Ni、またはCoのいずれか1つと共存する場合にめっき層中に析出しやすい。そのため、めっき層中のWまたはMoの含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中のFe、Ni、またはCoのいずれか1つのイオン濃度を0.2mol/l以上にした上で、めっき処理液中のWまたはMoのイオン濃度を0.2mol/l以上にすればよい。
Ti:0%以上30%以下
Zr:0%以上30%以下
Nb:0%以上30%以下
Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)は、酸素親和力が大きく、腐食抑制能を有する金属である。そのため、耐食性向上のために、めっき層中に酸化物および/または水酸化物としてTi、Zr、Nbから選択される少なくとも1つ以上の選択元素が含まれてもよい。Ti、Zr、またはNbの含有量の下限は、それぞれ、1%であることが好ましく、2%であることがより好ましく、5%であることが最も好ましい。また、Ti、Zr、またはNbの含有量の上限は、それぞれ、30%であることが好ましく、20%であることがより好ましく、10%であることが最も好ましい。
なお、めっき層中の亜鉛含有量およびバナジウム含有量を確保するためには、めっき層の化学成分中のチタン含有量とジルコニウム含有量とニオブ含有量とが、0%≦Ti+Zr+Nb≦30%を満足することが好ましい。
上記しためっき層の化学成分は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)またはICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)などを使用して計測すればよい。表面処理鋼板を、インヒビターを加えた10%塩酸に、1分程度浸漬し、めっき層部分を剥離し、このめっき層を溶解した溶液を準備する。この溶液をICP−AESまたはICP−MSなどによって分析して、めっき層の全体平均としての化学成分を得ればよい。または、板厚方向と切断方向とが平行となる断面に対して、蛍光X線、例えば、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)やEPMA(Electron Probe Micro−Analyzer)などを使用してめっき層の化学成分を分析してもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板は、めっき層が上記した化学成分の特徴を満足するときに、目的とする表面処理鋼板としての特性を得ることができる。加えて、本実施形態に係る表面処理鋼板は、そのめっき層が、上記した化学成分の特徴に加えて、以下に説明するミクロ組織の特徴を有してもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板では、板厚方向と切断方向とが平行となる断面でめっき層を見た場合に、めっき層が、ミクロ組織として、結晶質組織(結晶質領域)および非晶質組織(非晶質領域)からなり、この結晶質組織にZnリッチ相(Zn含有相)が含まれ、非晶質組織にVリッチ相(V含有相)が含まれてもよい。
すなわち、めっき第2過程で形成されるZnリッチ相が主に結晶質であり、めっき第3過程で形成されるVリッチ相が主に非晶質であることが好ましい。めっき層のミクロ組織が上記形態であるとき、表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性が好ましく向上する。
結晶質組織に含まれるZnリッチ相(Zn含有相)は、主として六方晶構造を有する。このZnリッチ相に含まれるZn含有量が40%以上100%以下であってもよい。このZnリッチ相に含まれるZn含有量の下限は、50%超であることが好ましい。このZnリッチ相には、V、Fe、Ni、Co、W、Moなどの元素が含まれる場合もある。また、結晶質組織には、Znリッチ相に加えて、V、Fe、Ni、Co、W、Moから選択される少なくとも1種以上の元素を含む結晶質相が含まれる場合もある。
非晶質組織に含まれるVリッチ相(V含有相)は、例えば、X線回折パターンで確認されるX線的非晶質であり、水溶液中から析出する非晶質であるため水和物に近い非晶質となる。このVリッチ相に含まれるV含有量が35%以上70%以下であってもよい。このVリッチ相に含まれるV含有量の下限は、40%超であることが好ましい。このVリッチ相には、Zn、Ti、Zr、Nbなどの元素が含まれる場合もある。また、非晶質組織には、Vリッチ相に加えて、Zn、Ti、Zr、Nbから選択される少なくとも1種以上の元素を含む非晶質相が含まれる場合もある。
また、本実施形態に係る表面処理鋼板では、めっき層中のバナジウムが、酸化物(VO)などの組成比を基本とするVリッチ相として存在している場合、めっき層が黒色の外観を呈する。めっき層中のバナジウム含有量が酸化物(VO)なの組成比に近づくほど、めっき層の外観が黒くなり、L表色系での明度L値が低くなる。黒色の外観を有するめっき層が設けられた表面処理鋼板は、黒色の外観を有する製品の材料として用いることができる。また、黒色の外観を有するめっき層が設けられた表面処理鋼板は、めっき層上に黒色の外観を得るための塗膜を形成する場合、塗膜の厚みを低減できる。そのため、Vリッチ相に含まれるバナジウム含有量は、50%以上70%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、上記断面で見た場合に、めっき層全体のミクロ組織に対する結晶質組織の面積分率(結晶質組織の面積÷めっき層の面積)が5%以上80%以下であることが好ましく、また、めっき層全体のミクロ組織に対する非晶質組織の面積分率(非晶質組織の面積÷めっき層の面積)が20%以上95%以下であることが好ましい。この条件を満たすとき、表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性が好ましく向上する。
上記の結晶質組織の面積分率の下限は、20%、30%、または40%であってもよい。上記の結晶質組織の面積分率の上限は、70%、60%、または50%であってもよい。上記の非晶質組織の面積分率の下限は、30%、40%、または50%であってもよい。上記の非晶質組織の面積分率の上限は、80%、70%、60%であってもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、上記断面で見た場合に、結晶質組織に含まれるZnリッチ相の面積分率が、結晶質組織に対して(結晶質組織中のZnリッチ相の面積÷結晶質組織の面積)50%以上100%以下であることが好ましく、また、非晶質組織に含まれるVリッチ相の面積分率が、非晶質組織に対して(非晶質組織中のVリッチ相の合計面積÷非晶質組織の面積)50%以上100%以下であることが好ましい。この条件を満たすとき、表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性が好ましく向上する。なお、非晶質組織に含まれるVリッチ相の面積分率とは、非晶質領域中でV含有量が平均で35%以上70%以下となる領域を意味する。
上記のZnリッチ相の面積分率の下限は、75%、85%、または95%であってもよい。上記のVリッチ相の面積分率の下限は、75%、85%、または95%であってもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、上記断面で見た場合に、上記結晶質組織に含まれる上記Znリッチ相の形状がデンドライト状であることが好ましい。Znリッチ相の形状がデンドライト状である場合、表面処理鋼板のめっき層の表面に凹凸が好ましく形成される。その結果、アンカー効果により、めっき層上に形成された塗膜とめっき層との間の密着性(塗装密着性)が好ましく向上する。
なお、本実施形態でZnリッチ相の形状がデンドライト状であるとは、Znリッチ相の形状が等軸状でない不規則形状であることを意味し、上記断面で見た場合に、単位μmでのZnリッチ相の面積Dと、単位μmでのZnリッチ相の輪郭線の線長さDとが、0.001≦D/D<0.5を満足することを意味する。
本実施形態でZnリッチ相の形状がデンドライト状であるとき、めっき層の表面粗さRaが、0.5μm以上2μm以下となるので好ましい。めっき層の表面粗さRaは、めっき層表面に対して、表面粗さ測定機を用いて測定するか、レーザー顕微鏡を用いて測定すればよい。また、めっき層の表面粗さRaは、表面処理鋼板を板厚方向と切断方向とが平行となる断面で観察した場合に現れるめっき層表面の輪郭曲線から求めてもよい。めっき層の表面粗さRaの下限は、0.55μmであることが好ましく、0.6μmであることがより好ましい。また、めっき層の表面粗さRaの上限は、1.3μmであることが好ましく、1μmであることがより好ましい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層は、結晶質組織がZn酸化物相をさらに含み、上記の断面で見た場合に、Zn酸化物相が、Znリッチ相の輪郭線に沿って配され、結晶質組織に含まれるZn酸化物相の面積分率が、結晶質組織に対して0.01%以上30%以下であることが好ましい。めっき層のミクロ組織が上記形態であるとき、表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性が好ましく向上する。
上記Zn酸化物相は、ZnOの組成比を基本とし、このZn酸化物相に含まれるZn含有量が65%以上85%以下であってもよい。このZn酸化物相に含まれるZn含有量の下限は、80%であることが好ましい。
図1に、本実施形態に係る表面処理鋼板10を上記の断面で見た場合の模式図を示す。図1に示す表面処理鋼板10では、母材鋼板21上にめっき層22が配され、めっき層22中に結晶質組織としてZnリッチ相22aが含まれ、非晶質組織としてVリッチ相22bが含まれ,Znリッチ相22aの形状がデンドライト状であり、Znリッチ相22aの輪郭線に沿ってZn酸化物相22a1が配される。
本実施形態に係る表面処理鋼板10のめっき層22のミクロ組織は、次のように観察すればよい。板厚方向と切断方向とが平行になる切断面が観察面となるように、表面処理鋼板10を切断して試料を採取する。この切断面を研磨、またはCP(Cross Section Polisher)加工する。光学顕微鏡またはSEM(Scanning Electron Microscope)でこの断面を観察し、組織観察に適した倍率でミクロ組織写真を撮影する。なお、SEM写真がCOMPO像であれば、化学成分が異なることに起因して各相のコントラストが大きくなるので、各相の境界が判別しやすい。なお、構成相の化学成分は、EDXまたはEPMAによる分析によって測定することができる。この化学分析結果から、構成相を簡易的に同定することができる。上記のように準備したミクロ組織写真を用いて、例えば画像解析を行って各相の面積分率を測定すればよい。
さらに詳しく構成相を同定するには、めっき層22のミクロ組織を次のように観察する。板厚方向と切断方向とが平行になる切断面が観察面となるように、表面処理鋼板10を切断して薄片試料を採取する。この薄片試料にイオンミリング法を施す。または、板厚方向と切断方向とが平行になる切断面が観察面となるように、表面処理鋼板10をFIB(Focused Ion Beam)加工して薄片試料を採取する。TEM(Transmission Electron Microscope)で、これらの薄片試料を観察し、組織観察に適した倍率でミクロ組織写真を撮影する。構成相は、電子線回折像によって正確に同定することができる。非晶質である構成相では、非晶質に特有なリング状の電子線回折像が得られる。
本実施形態に係る表面処理鋼板10では、めっき層22の目付量(付着量)が1.0g/m以上40g/m以下であってもよい。めっき層22の目付量が1.0g/m未満であると、表面処理鋼板10の耐食性が不十分となる場合がある。めっき層22の目付量は、耐食性および塗装密着性をより一層向上させるために、3.0g/m以上であることが好ましい。
めっき層22の目付量が40g/m超であると、製造コストが増加し、パウダリング性(母材鋼板21とめっき層22との密着性)が劣化する場合がある。めっき層22の目付量は、15g/m以下であることが好ましい。本実施形態に係る表面処理鋼板10では、めっき層22の特性が向上しているので、めっき層22の目付量が15g/m以下であっても、従来の電気亜鉛めっき鋼板(通常、目付量は20g/m程度である)と同等以上の耐食性を確保できる。
めっき層22は、母材鋼板21上に1層のみ設けられてもよいし、複数層設けられてもよい。めっき層が複数層設けられている場合、複数のめっき層のうちの1層以上が上記した本実施形態に係るめっき層22であればよい。なお、表面処理鋼板10が黒色外観を有する用途に用いられる場合には、上記した本実施形態に係るめっき層22が、複数のめっき層のうちの最表層に設けられていることが好ましい。
以下、本実施形態に係る表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼板の製造方法は、母材鋼板を製造するため工程と、めっき層を形成するための工程とに分けることができる。
母材鋼板を製造するための工程には、製鋼工程、鋳造工程、熱延工程、酸洗工程などが含まれ、必要に応じて、冷延工程、焼鈍工程などが含まれてもよい。これらの母材鋼板を製造するため工程は、特に限定されない。上述のように、本実施形態に係る表面処理鋼板では、母材鋼板として、各種の鋼板を用いることができる。
めっき層を形成するための工程には、洗浄工程、電気めっき工程などが含まれ、必要に応じて、後処理工程などが含まれてもよい。上記の工程のうち、洗浄工程および後処理工程は、特に限定されない。洗浄工程では、熱延鋼板または冷延鋼板を脱脂および酸洗することで電気めっきが施される板面を清浄にすればよい。後処理工程では、必要に応じて、化成処理(めっき層と異なる性質を有する皮膜をめっき層上に化学反応で形成する処理)などを施してもよい。例えば、表面処理鋼板の使用目的に適した皮膜をめっき層上に形成するために、化成処理として、リン酸塩処理などを施してもよい。
電気めっき工程では、めっき処理液の成分を制御し、電気めっきの電解条件を制御することが好ましい。その結果、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高めることができる。
電気めっき工程で用いるめっき処理液
めっき処理液は、Znイオン、Vイオン、Feイオン、及び不純物を含み、めっき処理液のpHが0.5以上3以下であることが好ましい。めっき処理液中、Znイオン濃度が0.10mol/l以上1.50mol/l以下であり、Vイオン濃度が0.10mol/l以上1.00mol/l以下であり、Feイオン濃度が0.001mol/l以上2.00mol/l以下であることが好ましい。
表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性を好ましく向上させるには、めっき処理液中のZnイオン濃度の下限が、0.2mol/l、0.3mol/l、または0.4mol/lであってもよい。また、Znイオン濃度の上限が、1.20mol/l、1mol/l、または0.8mol/lであってもよい。
めっき処理液に用いる亜鉛化合物としては、金属Zn、ZnSO・7HO、ZnCOなどが挙げられる。これらの亜鉛化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いても良い。
めっき処理液中のVイオン濃度が0.10mol/l未満であると、めっき層中のバナジウム含有量が20%以下となる。表面処理鋼板の耐食性、パウダリング性、および塗装密着性を好ましく向上させるには、めっき処理液中のVイオン濃度の下限が、0.3mol/l、0.4mol/l、または0.5mol/lであってもよい。また、めっき処理液中のVイオン濃度が1.00mol/lを超えると、めっき層中のバナジウム含有量が50%を超える。Vイオン濃度の上限が、0.9mol/l、0.8mol/l、または0.7mol/lであってもよい。
めっき処理液に用いるバナジウム化合物としては、メタバナジン酸アンモン(V)、メタバナジン酸カリウム(V)、メタバナジン酸ソーダ(V)、VO(C(バナジルアセチルアセトネート(IV))、VOSO・5HO(硫酸バナジル(IV))などが挙げられる。これらのバナジウム化合物の中でも特に、溶解度からVO2+イオン解離するVO(C(バナジルアセチルアセトネート(IV))、VOSO・5HO(硫酸バナジル(IV))を用いることが好ましい。これらのバナジウム化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いても良い。
めっき処理液中のFeイオン濃度が0.001mol/l以上のときに、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高められる。めっき層中のバナジウム含有量を好ましく高めるためには、めっき処理液中のFeイオン濃度の下限が、0.1mol/l超であることが好ましく、0.15mol/lであることがより好ましく、0.18mol/lであることが最も好ましい。
なお、めっき処理液中のFeイオン濃度が0.1mol/l超であっても、めっき層中に必ずしもFeが含有されるわけではない。めっき層中のFe含有量が検出限界以上の値に高まるのは、めっき処理液中のFeイオン濃度が0.20mol/l以上の場合である。めっき層中のFe含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中のFeイオン濃度の下限が、0.20mol/l、0.30mol/l、または0.40mol/lであってもよい。また、めっき層のバナジウム含有量を制御するためには、Feイオン濃度の上限が、1.5mol/l、1.0mol/l、または0.70mol/lであってもよい。
めっき処理液に用いる鉄化合物としては、硫酸塩、炭酸塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いても良い。
めっき処理液には、適宜、硫酸や水酸化ナトリウムなどのpH調整剤や、硫酸ナトリウム等の支持電解質などを添加してもよい。
めっき処理液のpHは、上記した特徴を有するめっき層を形成するために、0.5〜3とすることが好ましい。めっき処理液のpHの下限は、0.8であることが好ましく、1.2であることがより好ましく、1.5であることが最も好ましい。
また、めっき処理液は、必要に応じて、Ni、Co、W、Moから選択される少なくとも1つ以上の選択元素のイオンを含有させてもよく、また、Ti、Zr、Nbから選択される少なくとも1つ以上の選択元素のイオンを含有させてもよい。これらの選択元素のイオンは、その目的に応じて含有させればよい。
めっき層中のNiまたはCoの含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中のNiまたはCoのイオン濃度の下限がそれぞれ、0.20mol/l、0.30mol/l、または0.40mol/lであってもよい。また、めっき層のバナジウム含有量を制御するためには、めっき処理液中のNiまたはCoのイオン濃度の上限がそれぞれ、2.00mol/l、1mol/l、または0.70mol/lであってもよい。
なお、WおよびMoは、めっき層中に単独で析出しにくい元素であり、Fe、Ni、またはCoのいずれか1つと共存する場合にめっき層中に析出しやすい。めっき層中のWまたはMoの含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中のFe、Ni、またはCoのいずれか1つのイオン濃度を0.2mol/l以上に高めた上で、めっき処理液中のWまたはMoのイオン濃度を0.2mol/l以上にすればよい。めっき処理液中のWまたはMoのイオン濃度の下限はそれぞれ、0.20mol/l、0.30mol/l、または0.40mol/lであってもよい。また、めっき層のバナジウム含有量を制御するためには、めっき処理液中のWまたはMoのイオン濃度の上限がそれぞれ、2.00mol/l、1mol/l、または0.70mol/lであってもよい。
めっき層中のTi、Zr、またはNbの含有量を検出限界以上の値に高めるためには、めっき処理液中のTi、Zr、またはNbのイオン濃度の下限がそれぞれ、0.3mol/l、0.4mol/l、または0.5mol/lであってもよい。また、めっき層のバナジウム含有量を制御するためには、めっき処理液中のTi、Zr、またはNbのイオン濃度の上限がそれぞれ、1mol/l、0.9mol/l、または0.8mol/lであってもよい。
めっき処理液の温度は、特に限定されないが、上記した特徴を有するめっき層を容易に効率よく形成するために、40〜60℃の範囲であることが好ましい。
電気めっき工程での電解条件
電気めっき工程では、めっき層中のバナジウム含有量を目的値以上に高めるために、電気めっきの初期、中期、後期で電解条件を制御することが好ましい。具体的には、母材鋼板をめっき処理液に浸漬した直後から、電解析出のための通電を停止するまでの過程を、電気めっき初期、電気めっき中期、電気めっき後期に分けたとき、電気めっき初期では、電流密度を0A/dm以上10A/dm未満とし、かつ処理時間を0.05秒以上8秒以下とし、電気めっき中期および後期では、電流密度を10A/dm以上150A/dm以下とし、処理時間は目的とする付着量に応じて制御すればよい。
電気めっき初期の電解条件を上記範囲内に制御することによって、上記しためっき第1過程の反応を好ましく制御することができる。母材鋼板の表面にV化合物を好ましく還元析出させるためには、電気めっき初期の電流密度を0A/dmとして自然浸漬を行うことが好ましい。なお、電流密度が0A/dmであっても、水素発生反応や母材鋼板の溶解反応などによって供給される電子によって、めっき第1過程の反応が進行する。
電気めっき中期および後期の電解条件を上記範囲内に制御することによって、上記しためっき第2過程および第3過程の反応を好ましく制御することができる。めっき第2過程および第3過程の反応は、並行して進行する場合が多いと考えられる。従って、電気めっき中期および後期の電解条件は同一でもよい。ただ、電気めっき中期および後期の電解条件を、それぞれ個別に制御することが好ましい。例えば、電気めっき中期の電解条件を制御することによって、主として、めっき第2過程の反応を好ましく制御でき、電気めっき後期の電解条件を制御することによって、主として、めっき第3過程の反応を好ましく制御できると考えられる。または
電気めっき中期の電解条件を好ましく制御することで、表面処理鋼板のパウダリング性(母材鋼板とめっき層との密着性)および塗装密着性(めっき層上に形成された塗膜とめっき層との密着性)を好ましく向上できる。特に塗装密着性を好ましく向上できる。そのため、電気めっき中期では、電流密度を10A/dm以上150A/dm以下とし、処理時間は目的とする付着量に応じて制御すればよい。電気めっき中期の電流密度の下限は、20A/dm、30A/dm、または40A/dmであってもよい。電気めっき中期の電流密度の上限は、130A/dm、110A/dm、または100A/dmであってもよい。
電気めっき後期の電解条件を好ましく制御することで、表面処理鋼板のパウダリング性および塗装密着性を好ましく向上できる。特にパウダリング性を好ましく向上できる。そのため、電気めっき後期では、電流密度を10A/dm以上150A/dm以下とし、処理時間は目的とする付着量に応じて制御すればよい。なお、電気めっき後期の電流密度が150A/dmを超えると、いわゆる水素発生反応の進行が顕著となり、めっき層中のバナジウム含有量が50%以下のめっき層が得られにくくなる。電気めっき後期の電流密度の下限は、20A/dm、30A/dm、または40A/dmであってもよい。電気めっき後期の電流密度の上限は、130A/dm、110A/dm、または100A/dmであってもよい。
上記の製造方法によって製造された表面処理鋼板では、亜鉛およびバナジウムを含むめっき層中のバナジウム含有量が好ましく制御される。そのため、この表面処理鋼板は、優れた耐食性、パウダリング性、および塗装密着性を有する。
本実施形態に係る表面処理鋼板は、めっき層上に、さらに1層以上の塗装膜(塗膜)を有してもよい。
本実施形態に係る表面処理鋼板のめっき層上に配される塗装膜は、特に限定されない。例えば、上記した特許文献2である日本国特許第5273316号公報に記載の塗装膜(めっき層の上に形成された皮膜)を有してもよい。特に、本実施形態に係る表面処理鋼板では、めっき層上に配される塗装膜が、カーボンブラックを含むポリエステル樹脂であることが好ましい。この塗装膜は、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂とカーボンブラックとを含む塗料組成物を、めっき層上に塗布して乾燥させることで形成すればよい。なお、本実施形態に係る表面処理鋼板が、化成処理皮膜を有する場合には、化成処理皮膜上に上記の塗装膜が配されてもよい。
図2に、本実施形態に係る表面処理鋼板の他の例を説明するための断面模式図を示す。図2に示す表面処理鋼板では、母材鋼板21上にめっき層22が配され、めっき層22上に化成処理皮膜23が配され、化成処理皮膜23上に塗装膜24が配される。
次に、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に詳細に説明する。なお、以下に示す実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。本発明は、以下に示す一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
表1および表2に示すめっき処理液に、陰極(カソード)となる母材鋼板を浸漬し、白金陽極(アノード)を用いて、表1および表2に示す電解条件で、電気めっき法により母材鋼板の表面にめっき層を形成した。そして、本発明例No.1〜No.32、比較例No.33〜No.46の表面処理鋼板を得た。なお、母材鋼板は、JIS G 3141:2011に記載の絞り用冷間圧延鋼板(SPCD)であり、板厚が0.8mmである鋼板を用いた。
製造した表面処理鋼板について、めっき層の目付量、化学成分、およびミクロ組織を調査した。その結果を表3および表4に示す。なお、表3および表4中に示すめっき層の化学組成は、残部がZnおよび不純物であった。また、表3および表4中の「Zn−rich相」は、結晶質組織中でZnリッチ相の面積分率が75%以上であったことを示す。表3および表4中の「V−rich相」は、非晶質組織中でVリッチ相の面積分率が75%以上であったことを示す。表3および表4中の「デンドライト」は、Znリッチ相の面積DとZnリッチ相の輪郭線の線長さDとが0.001≦D/D<0.5を満足したことを示す。
目付量は、蛍光X線の分析結果から算出した。鉄、ニッケル、コバルト、バナジウム、亜鉛などのめっき層に含有される各元素の単位面積当たりの含有量(質量)を検出し、その合計値を目付量(g/m)とした。化学成分は、蛍光X線により検出した各元素の単位面積当たりの含有量(質量)を、目付量で除して百分率で算出した。ミクロ組織は、板厚方向と切断方向とが平行になる切断面を観察面としてSEMまたはTEMにて観察し、構成相の同定と面積分率の算出とを行った。
表3および表4に示すように、本発明例No.1〜No.32では、めっき層中のバナジウム含有量が20質量%超50質量%以下であり、かつめっき層の目付量が1.0g/m以上40g/m以下であった。
これに対し、比較例No.33〜No.46の表面処理鋼板では、めっき層の化学成分、またはめっき層の目付量が本発明の範囲外であった。
図3は、本発明例No.17の表面処理鋼板のめっき層断面の走査型電子顕微鏡写真である。図3に示す断面の写真で、最表面の白色の部分はめっき層を観察しやすくするために設けた金蒸着層である。本発明例No.17のめっき層は、鋼板に達するクラック(隙間)がなく、鋼板の厚み方向に成長された複数のデンドライト状のZnリッチ相を有していた。
次に、本発明例No.1〜No.32、比較例No.33〜No.46の表面処理鋼板の塗装前特性(裸特性)として、耐食性およびパウダリング性を評価し、塗装後特性として、塗装密着性を評価した。以下に、評価方法を示す。評価結果を表5および表6に示す。
耐食性は次の方法により評価した。表面処理鋼板から切り出した試験片のエッジおよび裏面をテープでシールして、塩水噴霧試験(JIS Z 2371:2000)を行った。そして、48時間(2日間)後の非シール部分の白錆発生面積率を目視で観察し、以下の基準で評価した。白錆発生面積率とは、観察部位の面積に対する白錆発生部位の面積の百分率である。
以下の耐食性の評価基準で、5または6の結果を合格と判断した。
6:白錆発生面積率3%未満
5:白錆発生面積率3%以上10%未満
4:白錆発生面積率10%以上25%未満
3:白錆発生面積率25%以上50%未満
2:白錆発生面積率50%以上75%未満
1:白錆発生面積率75%以上
パウダリング性(母材鋼板とめっき層との間の密着性)は次の方法により評価した。パウダリング試験には、60°V曲げ金型を用いた。表面処理鋼板から切り出した試験片の評価面が曲げ部の内側となるように、先端の曲率半径が1mmである金型を用いて、60°に曲げ加工し、曲げ部の内側にテープを貼り、テープを引き剥がした。テープと共に剥離しためっき層の剥離状況から、パウダリング性を以下の基準で評価した。
以下のパウダリング性の評価基準で、SまたはAの結果を合格と判断した。
S:剥離幅2mm未満
A:剥離幅2mm以上3mm未満
B:剥離幅3mm以上5mm未満
C:剥離幅5mm以上
塗装密着性(めっき層上に形成された塗膜とめっき層との間の密着性)は次の方法により評価した。表面処理鋼板から切り出した試験片に塗料(関西ペイント株式会社製、アミラック♯1000)をバーコート塗布し、140℃で20分間焼付を行い、乾燥膜厚で25μmの皮膜を形成した。得られた塗装鋼板を沸騰水に30分浸漬後、常温の室内に24時間放置した。その後、試験片に対して1mm角100個の碁盤目をNTカッターで切り入れ、これをエリクセン試験機で7mm押し出した後、この押し出し凸部に粘着テープによる剥離テストを行い、以下の基準にて塗装密着性を評価した。
以下の塗装密着性の評価基準で、Sの結果を合格と判断した。
S:剥離無し
A:剥離個数1個以上10個未満
B:剥離個数10個以上50個未満
C:剥離個数50個以上
表5および表6に示すように、本発明例No.1〜No.32の表面処理鋼板は、めっき層の化学成分およびめっき層の目付量のいずれもが本発明の範囲を満足していたので、耐食性、パウダリング性、および塗装密着性のいずれもが優れていた。一方、比較例No.33〜No.46の表面処理鋼板は、めっき層の化学成分またはめっき層の目付量のいずれかが本発明の範囲を満足しなかったので、耐食性、パウダリング性、または塗装密着性のいずれかが十分でなかった。
本発明の上記態様によれば、亜鉛およびバナジウムを含むめっき層中のバナジウム含有量が制御された表面処理鋼板を提供できる。この表面処理鋼板は、耐食性に優れ、パウダリング性および塗装密着性にも優れる。そのため、産業上の利用可能性が高い。
10 表面処理鋼板
21 母材鋼板
22 めっき層
22a Znリッチ相(結晶質組織)
22a1 Zn酸化物相(結晶質組織)
22b Vリッチ相(非晶質組織)
23 化成処理皮膜
24 塗装膜

Claims (5)

  1. 母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に配されためっき層と、を備える表面処理鋼板であって、
    前記めっき層が、化学成分として、質量%で、
    V :20%超50%以下、
    Fe:0%以上30%以下、
    Ni:0%以上30%以下、
    Co:0%以上30%以下、
    W :0%以上30%以下、
    Mo:0%以上30%以下、
    Ti:0%以上30%以下、
    Zr:0%以上30%以下、
    Nb:0%以上30%以下、
    を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
    前記めっき層の前記化学成分中の鉄含有量とニッケル含有量とコバルト含有量とタングステン含有量とモリブデン含有量とが、質量%で、0%≦Fe+Ni+Co+W+Mo≦30%を満足し、
    前記めっき層の前記化学成分中のチタン含有量とジルコニウム含有量とニオブ含有量とが、質量%で、0%≦Ti+Zr+Nb≦30%を満足し、
    前記めっき層の目付量が1.0g/m以上40g/m以下であり、
    板厚方向と切断方向とが平行となる断面で前記めっき層を見た場合に、前記めっき層が、ミクロ組織として、結晶質組織および非晶質組織からなり、
    前記結晶質組織がZnリッチ相を含み、
    前記非晶質組織がVリッチ相を含むことを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 前記めっき層が、前記化学成分として、質量%で、
    Fe:1%以上25%以下、
    を含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 前記めっき層が、前記化学成分として、質量%で、
    Ni:2%以上16%以下、
    を含有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼板。
  4. 前記断面で見た場合に、
    前記めっき層に対する前記結晶質組織の面積分率が5%〜80%であり、
    前記めっき層に対する前記非晶質組織の面積分率が20%〜95%である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
  5. 前記断面で見た場合に、前記結晶質組織に含まれる前記Znリッチ相の形状がデンドライト状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
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