JP5655263B2 - 溶融Mg−Al系合金めっき鋼材 - Google Patents

溶融Mg−Al系合金めっき鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、溶融金属めっき鋼材に関し、詳しくは高Mg組成の合金めっき鋼材に関する。
建材、自動車、家電等のいずれの産業分野においても鋼材は最も多く使用される金属材料である。しかし、鋼材は、空気中に露出した場合は、容易に錆を生じるという課題があり、鋼材製品の長寿命化を図るためには、めっき処理が不可欠である。めっき金属として使用されるZnは腐食速度がFeよりも小さく、Feよりも低い腐食電位であるため、犠牲防食能を有することから、鋼材のめっき金属として広く利用されている。
現在、広く使用されている溶融めっきは、Znもしくは、Al主体のめっきに限られており、一般的に、使用年数が10年程度の自動車分野や、腐食環境が厳しくない家電分野などでは、低付着量の溶融Znめっき、もしくは溶融合金化Znめっき、電気Znめっきなどが使用されている。一方、腐食環境が厳しく、耐久年数が比較的長い建材分野などでは、厚目付けの溶融Znめっきや、ZnにAl、Mgなどの元素を加えた、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき(特許文献1等)や、Znよりも腐食しにくいAlを主体としためっきであるZn-55%Alめっき、Al-10%Siめっき(特許文献2等)などが使用されている。
Znは、Feに対する犠牲防食能は、非常に優れているが、建材用途においては、薄目付けの溶融Znめっきや電気Znめっきでは耐食性が不足する。このため、高い耐食性を付与するために、ZnにAlやMg等の耐食性元素を添加しためっきが知られている。Zn-5%Al合金めっき、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっきなどがその代表的な例である。しかしながら、Alの含有量を抑えて、犠牲防食能を維持させたZn主体の合金めっきであるため、不動態皮膜保護作用の強いAl系めっきほどの耐食性は達成できていない。
また、Znには、資源の偏在性、枯渇等の問題があり、金属価格の高騰の影響を受けやすい金属である。このため、経済的に溶融めっき鋼材を生産するためには、低Zn付着量、あるいは低Zn濃度で高耐食性を発揮するめっき、すなわち省Znめっきが望まれている。この点から言えば、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっきであってもZnの割合がまだ多く、Znの資源節約に対する効果は小さく、Zn価格変動の影響を受けやすい溶融めっきとなる。
一方、Alは、資源の埋蔵量という点においては、Znより豊富に存在し、低価格であるが、Alをめっきとして使用した場合は、犠牲防食作用が比較的小さいという問題がある。これは、特に乾燥した環境において、Alが不動態化しやすいためである。不動態皮膜が生成すると犠牲防食能は小さくなるため、例えばZnめっきの耐食性向上を目的にAlを添加した場合、その添加濃度が不動態皮膜生成濃度以上の場合には、必然的に犠牲防食作用は小さくなる。このため、建材分野で広く使用されているZn-55%Al合金めっきは、特に切断端面などにおける、犠牲防食能が小さいことが問題となっている。
また、一般的に、Al主体めっき特有の問題として、通常のZnめっきに比べて、融点が高いことがあげられる。めっきの融点が高温になると、必然的にめっき浴温が高温になり、鋼種によっては鋼材が不要な熱処理を受けることとなって、溶融めっきの前後で、機械的性質が大きく変化してしまう場合がある。さらに、高温プロセスでの操業は、溶融めっき浴ポットの消耗や、高温を維持するエネルギー費用の点で、経済的にも不利であることから、溶融めっきは、可能な限り低温プロセスであることが好ましく、この点も、高融点のAl主体めっきの問題点である。
Alと同じく埋蔵量が豊富で安価な金属としてMgが挙げられるが、Feとの反応性が乏しくめっき濡れ性や密着性に問題があり、又、融点が649℃と高く、更には引火点が473℃と融点以下にある為、非常に扱い難い金属元素である。また、実用金属中で最も腐食しやすい金属であるため、主たるめっき金属として用いられた例は無く、Al、Al-Si、Al-Zn系めっき等への補助的な添加元素の使用にとどまっている。例えば、特許文献3は、鋼素地露出部の耐赤錆流れ性に優れたZn・Mg含有Al系めっき鋼板およびその製造法を開示している。ここに開示される溶融めっき鋼板は、Al系主体のめっきであって、Al相中のMgの固溶濃度が定義されているが、その値は0.1〜1.0%と非常に低い。また、特許文献4には、溶融Al-Zn-Mg系めっき鋼板およびその製造方法が開示されており、Mg添加量は0.1〜3%と記載されている。
このように、これまで開示されてきたMgを含有する溶融めっき鋼材のMg含有量は、せいぜい3質量%以下のめっき鋼板であって、Zn-Al、Al-Si系めっきの補助的な添加元素として検討されたに過ぎない。
以上、述べたように、Znめっきと同等、もしくはそれ以上の耐食性、犠牲防食性、めっき密着性等の性能をもち、現在使用されている溶融Znめっきや溶融Zn系合金めっきと同レベルの低温プロセスで製造が可能で、Alのように資源豊富な元素による溶融めっきが求められているが、これまでの検討では、そのようなめっきは得られておらず、存在していなかった。
特許第3179446号公報 特開2001-323357号公報 特開2001-262309号公報 特開2005-133151号公報
本発明が解消しようとする課題は、Zn系めっきの持つ資源枯渇や価格高騰の問題やAl系めっきの持つ高温プロセス操業によるエネルギーコスト問題やポットの消耗等の短所を克服でき、且つ従来のZn系、Al系めっき同等以上の性能を有するめっきを開発することであり、本発明者らは、この課題解決を目的として、Mgを母相とするめっきである、Mg-Al系めっきについて検討した。
Mgは実用されるめっき金属の中で最も腐食しやすい元素であり、それ故、優れた犠牲防食能を得ることができる。又、鉱物資源としてみた場合、埋蔵量は豊富で、偏在量が少なく、更に価格が安いという利点もある。
その一方で、先にも述べたようにFeとの反応性が乏しく鋼材に対するめっき濡れ性や鋼材とのめっき密着性の確保が難しいこと、融点が649℃と高いこと、更には引火点が473℃と融点以下にあることなど、非常に扱い難い金属元素である。
これまでMgを主体とするめっきが開発されなかった理由としては前述した問題点以外にも、耐食性の乏しいMgリッチ相が形成し、耐食性不足だと考えられていたこと、Zn-Al、Al-Si系のめっきが従来から定着しており、Mgが添加元素としてしか扱われなかったこと、Mgの添加量、Mgと組み合わせる元素種が定まっていないこと、高融点の金属間化合物が形成され、高温操業が必要になること、Mgの酸化によるドロスが大量に発生することなど等、様々な理由が考えられる。
そこで、本発明は上述のMgに関する問題点を解決し、溶融Zn系めっき鋼材と同等以上の特性を有し、現状のプロセスで製造可能な溶融Mg系合金めっき鋼材及びその製造方法の提供を目的とするものである。
Mgは、犠牲防食能は高いが、実用金属中で、最も腐食しやすい金属であるため、Mgめっき鋼材を実用化するためには、何らかの手段で、耐食性を確保することが必要である。そこで、本発明者らは、高い犠牲防食能を維持しつつ、高耐食性を得る手段として、溶融Mg系めっきにおいて、Alの高濃度添加を検討した。
Alを高濃度に添加したMg-Al系合金めっき浴においても、ある特定の組成範囲においては、溶融めっき浴の融点をMgの引火点以下にすることができ、かつ、めっき浴の粘性、ドロス発生量がともに低下するため、溶融めっき鋼材の製造が可能であることを見出した。引火点は、Alをより高濃度に含有すること、もしくは、Zn、Ca、Si等の元素添加で、さらなる抑制も可能であることも見出した。
Mg系めっきは、めっき層と鋼材との密着性が最も問題となるが、これも、Alを高濃度に添加することで、Feとの合金層の形成、及び、Feの拡散で密着性が確保できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは、以下のとおりである。なお、本発明のMg−Al系合金めっきの組成については、AlもしくはMgいずれか一方の濃度を規定することで他方の濃度も規定されることから、Al濃度により記載する。
(1)Alが15原子%以上、74.9原子%以下、Caが単独であるいはCaとSiが合計で、0.1原子%以上、12原子%以下、Znが0.1原子%以上、20原子%以下含有され、残部が25原子%以上のMgと不可避不純物から構成されるめっき層を有することを特徴とする溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
(2)前記めっき層のAlが、20原子%以上であることを特徴とする前記(1)に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
(3)前記めっき層のAlが、20原子%以上、70原子%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
(4)前記めっき層のAlが、30原子%以上、60原子%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
(5)前記めっき層のAlが、15原子%以上、40原子%以下であることを特徴とする前記(1)に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
(6)Caが単独であるいはCaとSiが合計で、0.1原子%以上、5原子%以下含有されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
)前記(5)に記載のめっき層のCaが、5原子%以上、12原子%以下であることを特徴とする溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
)前記めっき層中に、アモルファス相が体積分率で5%以上含有されることを特徴とする前記(7)に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
本発明の溶融Mg-Al系めっき鋼材は、通常の溶融めっきプロセスで製造可能であるため、汎用性、経済性に優れる。Mg-Al系めっき鋼材は、建材分野で使用されるAl系めっきよりも犠牲防食能に優れるため、犠牲防食能が問題となって、Al系めっきが使用できなかった分野においても広く利用可能である。また、従来のAl系めっきのように、高温度プロセスではないため、廉価で高性能の表面処理鋼材を供給することが可能である。また、希少金属の使用量を極力少なくできるため、Znを含む希少資源の節約利用等にもつながる。また,広く利用されているZn系めっきよりも耐食性が良好なため、めっき鋼材の高寿命化、メンテナンス労力の低減をもって産業の発達に寄与することができる。
以下、本発明であるMg-Al系めっきを詳細に説明する。発明者らは、MgにAl、Zn、Ca、Siを添加し、ある特定組成範囲にあるとき、めっき浴の融点、粘性が低くなること、さらにこれを鋼材にめっき可能であることを見出した。
Alの添加による、融点下降、粘性低下により、金属Mg固有の引火問題は解決でき、また、Mgの耐食性不足問題も解決可能である。さらには、Mgの鋼材密着性不良も、AlがFeと合金層を形成すること、Al内部にFe原子を拡散させることによって、高濃度にMgが含有されるめっきでも鋼材との密着性を確保することが可能となる。
Mg中にAlを含有させることにより、Mgの溶融めっきとしての利用が初めて可能となる。つまり融点降下と、Fe拡散を可能にする効果をもつ元素が、これまで見出されていなかったため、Mgのめっきとしての利用が不可能であった。
このMg-Al系めっきを作製する場合、Mgの上限は85原子%(以降、特に指定しない場合、元素含有量の%は原子%を意味する。)、好ましくは80%である。これはMgの濃度が高くなると、鋼材との反応性が悪くなり、めっきとして付着することが困難となるためである。このため、鋼材と密着性を確保するために、少なくともFeとの反応性の高い元素(AlやZn等)を15原子%以上、好ましくは20%以上含有する必要がある。Alを添加した場合、AlとFeがめっき層と鋼材の界面に合金層を形成、もしくは微量のFeをめっき層中に、微量のAlをFe中に各々内部拡散させる相互拡散作用によって、密着性が確保できる。本発明者らは、この密着性を確保するのに必要なFe濃度はめっき層中で0.1%程度であることを確認している。これは、作製しためっき鋼板のめっき層中にいずれも0.1%以上Feが含有されていることから判断した。めっき層中のFe濃度はサンプルによって、異なるが、0.1%〜3%程度である。
一方で、Alを過剰に、Mgに添加することは、Mgの優れた犠牲防食能を小さくし、又、製造においてもAlが過剰となっためっき浴では、高融点、高粘性、Feとの反応性等が問題となる。Alは融点が660℃であるため、他の元素が全く含まれない、純Alのめっきの製造では、高温のめっき浴が必要となる。また、浴の粘性を下げるために、Alの融点よりも更に数十℃高い温度が必要であり、その上、このような温度でめっきすれば、FeとAlが瞬時に反応し、数100μmのAl-Fe合金層が形成してしまい、めっきの性能が低下するだけでなく鋼材へのダメージも非常に大きくなってしまう。このため、MgにAlを添加する場合の最適濃度が存在する。
上述のような現象が起きるのはAl濃度が95%超の場合であるため、Mg-Al系めっきでは5%以上のMgが含有されることが必要となる。Mgを5%含有することで、Mg-Al系めっきの融点を純Alより20℃近く下げることが可能で、また、Alのめっき浴中でのFeの活性度を抑えることができ、Feとの反応性も抑えられて、密着性を確保する適切な厚みの合金層、めっき層を形成することが可能である。より好ましくは、Mgを10%以上含有させ、Alのめっき浴中でのFe活性度を抑えることが好ましい。5〜85%のMgを含有するMg-Al系合金の融点は、400〜640℃の範囲となり、特に高Mg、高Al領域で融点が高くなる。(図1にMg-Al-Zn状態図を示す。(Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams Vol.4 p.3941 (1995) より引用))
よりめっきプロセスの低温化をはかるためには、MgとAl両方の下限濃度管理が有効であり、Mgを25%以上、Alを15%以上とすることで、約600℃以下の操業が、Mgを30%以上、Alを20%以上含有とすることで、約550℃以下の操業が可能となり、めっき浴の粘性も大幅に低下する。そして、Mgを40%以上、Alを30%以上とすることで、約500℃以下の操業が可能となり、Mg-Al系合金めっきにおいても、Znめっきプロセスの操業温度に近い温度での操業が可能となる。なお、Alが15原子%以上、40原子%以下で残部がMgで構成されるめっきの特性は、後で解説する。
更に、本願発明のMg-Al系合金めっきにおいて、Znを添加することにより、めっき浴の融点、粘性をさらに低下させることができる。特に、Mg濃度が40%付近では、Znを5%添加することにより、融点を約430℃まで下降させることができ、従来の溶融Zn系めっきの操業温度とほぼ同じ温度でめっきすることが可能である。融点降下は、Znが0.1%以上で観察される。尚、Mg濃度が50%以上の領域では、Zn濃度が20%を超えると、平面耐食性が不足し、また、Mg濃度が50%未満の領域では、Zn濃度が20%を超えると融点480℃以上となり、融点下降や、粘性低下の効果が小さくなるため、Znの添加量の上限は20%とする。
CaやSiも低融点化、低粘性化に効果をもつ添加元素である。Ca、Siの場合は0.1%程度の添加で融点が下降する。Caの添加量が5%を超えると、融点下降、粘性低下の効果がほぼ飽和するため、これらの観点からはCaの添加量の上限を5%とすることが好ましい。これは、Al-Ca系においては、Al-5%Caで共晶組成を持つことに依存する。但し、Mgが含有されることによっては、Al-Mg-Caの三元共晶点が存在し、Ca濃度が10%付近で三元共晶組成をとることがある。成分を選択すれば、12%までは性能を劣化させる事なくめっきが可能である事から、その上限は12%とする。
Siの添加量も5%を超えると、融点下降、粘性低下の効果がほぼ飽和するため、これらの観点からはSiの添加量の上限を5%とすることが好ましい。但し、もともとAl-Si系においては、Al-10%Siで共晶組成が存在するためSi濃度が12%までは性能を劣化させる事なくめっきが可能である事から、その上限は12%とする。
Ca、Siの融点下降、粘性低下の効果は、Mg-Ca、Al-Ca、Al-Siは、Ca、Si濃度が5〜10%付近に共晶点をもつこと、さらには、Mg-SiがSi濃度3%付近に共晶点が存在することなどに因ると考えられる。
なお、Ca、Si添加が同時に添加されると10%付近で融点下降の効果が得られなくなってくる。これは、Al、Mg、Ca、Siの4元成分系としての共晶点の考察が必要なためと考えられる。Ca、Siを同時に添加する場合は、Mg-Ca-Siの共晶点がMgが95%、Ca、Siが2.5%付近に共晶点が存在しているため、同時に添加する場合は5%を上限とすることが好ましい。
また、Caの添加は、Mg-AlのMgの優先酸化を防止するのにも効果がある。すなわち、Caは、Mgよりも酸素と結合しやすいため、めっき浴中にCaが含まれる場合は、Mgに先立ってCaが酸化される。Caの酸化速度はMgの酸化速度に比べて遅いので、浴の長時間の安定化(脱Mgの防止)においても添加されることが好ましい。Mgを含有するめっきを大気雰囲気等で製造する際には、Caの含有が非常に重要な役割をする。すなわち、Caが含有されることで、大気中でのMg-Alめっきの作製を安定操業することが可能となる。
しかしながら、浴の成分によっては過度のCaの添加(例えばCa添加が7%付近)は発泡が起こり、浴の粘性も上がって不安定となる場合があるので注意を要する。この点からも成分系を選ばずに添加でき、めっき製造が容易となるCaの最適な濃度は5%までといえる。但し、発泡が起こる組成範囲であっても、発泡する温度域は融点直上でめっき浴が半溶融状態のときに起こる現象であるから、融点よりも浴温を50〜200℃高く保持し、めっき操業すれば、発泡を避けることが可能であることを見出した。
また、この発泡を成分調整により回避することも可能である。
この発泡は、Ca濃度が7%付近でかつ、Al濃度が高い(40%を超える)場合に起こる。したがって、Mg中のAl濃度が低い(40%未満)場合、発泡が抑制できる。このAl濃度で、Ca濃度が12%までであれば、発泡を問題とせず、Ca添加が可能である。この組成近傍のみで発泡が押さえられる理由は、Mg-22%Al-8%Caという共晶組成が近くに存在していることと、本発明者らは考えている。
ここで、Alが15原子%以上、40原子%以下で残部がMgで構成されるめっきの特性について記載する。本発明者らは、Alを15%以上、40%以下でかつ、Mgを40%以上含有するMg-Al系合金めっきは、特に耐食性が高い組成範囲であることを見出した。この組成範囲は前述のように、腐食しやすいMg相がめっき層中に多く含有される組成範囲であるため、めっき層自体の耐食性が劣る。しかしながら、Mg相が優先して、腐食すると、結果として形成するMg系の腐食生成物がめっき層を覆い、この腐食生成物の保護作用によって、耐食性が向上することを見出した。したがって、腐食生成物の形成が影響してくる、特に、長期の耐食性試験(例えば、複合サイクル腐食試験、長期間の暴露試験)などでは、この組成においての耐食性が優れることが判明した。
このMgによる腐食生成物は結晶性が悪いため、XRD等で形成物を同定することが難しいが、SEM-EDX等で同定すると、Mgの特性X線が強く検出されるため、Mg系の腐食生成物であると判断できる。
本発明者らは、溶融Mg-Alめっきの更なる耐食性向上を目的に、最適なめっきの組成、構造について、特にアモルファス相生成条件の確立とその耐食性への影響について検討を行った結果、Mg-Al-Ca系の特定の組成範囲のめっきにおいて急冷凝固法を用いる事で、アモルファス相をめっき層中に含有させることができること、これにより優れた耐食性向上効果が得られることを見出した。
アモルファス相を得るためには、一般的に以下の事が知られている。(i)2成分系以上の合金であること、(ii)原子半径差の異なる複数の成分からなる合金がよいこと、(iii )互いの液体生成エンタルピーが負であることが好ましいこと、(iv)液体状態が低温まで保持できる共晶組成がふさわしいこと、である。
発明者らは、上記知見に基づき、(i)〜(iii )の条件を満たす、Mg-Al-Ca系について(iv)の共晶組成をもとにした合金組成でめっきを行えば、めっき層中にアモルファス相を含有できる可能性があると考え、これらの組成を検討した結果、Alが15%以上、40%以下、好ましくは25%以下、Caが5%以上、12%以下で残部がMg及び不可避不純物である組成であれば、急冷凝固法によりめっき層中にアモルファス相を含有できることを見出した。すなわち、Mg-22%Al-8%Caという共晶組成を中心とした組成域でアモルファス相を得る事ができる。
Alが15%未満となると、Al-Fe間の反応性が低くなり、めっき層と鋼板との密着性を確保することが難しくなるため、Alの下限濃度を15%とする。また、Alが40%を超えると共晶組成からのずれが大きくなりアモルファス相が得られにくくなり、また、発泡が盛んになり、めっきを行う事自体が困難となるため、上限濃度を40%とする。Caはアモルファスを形成させる上で、非常に重要な役割を担う。Caの原子半径はAl、Mgと比較しても非常に大きく、濃度が上昇するにつれてアモルファス形成能が高くなる。この組成範囲においては、Mg-22%Al-8%Caという共晶組成が存在するため、Ca濃度が5%以上でも、発泡が抑制される。ただし、12%を超えると、めっき浴の粘性が高くなりすぎ、めっきを作製することが困難となるため、上限濃度を12%とする。
なお、この組成はAlの含有量が少ないため、鋼板との密着性をより向上させるために、Niプレめっき、もしくは、Al系めっき鋼板を使用して2段めっきを行うことが好ましい。Niプレめっきを使用した場合は、めっき層中に不可避不純物としてNiが含有されることがあり、Al-Si系めっきを2段めっきとして使用した場合は、めっき層中に不可避不純物としてSiが含有されることがある。いずれもめっき層中の濃度で2mass%以下含有される可能性があるが、2mass%以下であれば性能や操業性への影響は無く、問題は無い。
もしくは、めっき浴温、又はめっき浴浸漬時の鋼板浸入温度を650℃以上にして、AlとFeとの反応を活発化させることも、めっき層の密着性を確保させる手段として有効である。
アモルファス相を得るために行う急冷凝固法とは、めっき直後の溶融状態にあるめっき層に水冷法や、Cu製のモールドによるプレス冷却方法を適用し、冷速にして103〜105℃/sで急冷凝固する方法である。Cu製のモールドによるプレス冷却方法は、0℃に冷却された、Cu製のモールドで、溶融めっき直後のめっき鋼板をプレスする方法で、従来の水冷法と異なり、水蒸気による核沸騰、膜沸騰等の影響をなくすことができるため、効率的に冷却速度を得ることができるため、アモルファス相を得るためにはより好適である。水冷法では103〜104℃/s、Cu製のモールドによるプレス冷却方法では104〜105℃/sの冷速が得られることを本発明者らは実験により確認している。
本発明で開示するめっき鋼材の特性について説明する。めっき鋼材の耐食性評価は、電気化学測定で腐食電流密度等を測定すれば、最も容易に耐食性を予測できる。その他、塩水噴霧試験や複合サイクル腐食試験を行い、腐食減量を測定すれば、実環境曝露試験に近い耐食性データを得ることが可能である。
犠牲防食能は、電気化学測定により容易に評価できる。すなわち、めっきの溶液中での腐食電位を測定し、Feの腐食電位(標準水素電極基準で-0.44V、vs Ag/AgClでは-0.64V)より、めっきの腐食電位が小さければ、鋼材に対して一定の犠牲防食能を有するとみてよい。また、実環境に即した犠牲防食能を評価したい場合には、めっき鋼材の曲げ試験片を作製して、腐食試験し、加工部の外観評価をすればよい。合金めっきの加工部では、めっき層が割れ、鋼材露出部が存在するため、犠牲防食能の小さいめっきでは、比較的早期に赤錆が発生する。一方、犠牲防食能が高いめっき鋼材では、加工部が白錆に覆われ、長期に渡って、赤錆が発生しない。犠牲防食能評価には、めっき厚が一定のめっき鋼材を作製することが好ましい。また、めっき層の割れ方によっても、犠牲防食能に違いがでることがあるため、n数を多くする必要があること、鋼材の種類、圧延方向などを統一する必要がある。
また、めっき鋼材の切断端面の腐食状況を評価することによっても犠牲防食能を評価することができる。厚みの異なるめっき鋼材を作製して切断し、腐食試験の後、端面の外観評価をすればよい。腐食試験初期には、赤錆が発生するが、その後、白錆に覆われることによって、地鉄の腐食を防止することが可能である。犠牲防食能の高いめっき鋼材ほど、厚い鋼材端面まで防食することが可能である。
Mg-Al系めっきの耐食性においては、Mg濃度が高いほど、犠牲防食能に優れ、Al濃度が高いほど、平面耐食性に優れる。犠牲防食能、平面耐食性がともに良い組成は、Mg濃度が40%付近である。Mg濃度が40%付近の高耐食性、高犠牲防食能は、電気化学測定で確認できる。Al濃度が高くなると、不動態領域が現れる。Al濃度が多いほど、この不動態領域電位幅が広くなるが、腐食電位は貴となっていく。
本発明において、高耐食性、高犠牲防食能が得られる原因は、詳細にはわかっていないが、耐食性に優れるAl相やMg-Al金属間化合物相と、犠牲防食能に優れるMg相が混在するためだと考えられる。めっき層中に占めるMg濃度が、5%未満だと、Mg相がほとんど存在しないため、犠牲防食能の向上効果はほとんど見られない。このため、従来のAl系メッキのように、Mgを添加元素として用いた場合の濃度範囲5%未満では、犠牲防食能の良いめっきは得られない。Mg量を5%以上にすることで、めっき層中にMg相が安定して存在し、犠牲防食能が向上する。より多くのMg相を得るためには、Mg濃度を高くすれば良く、さらに、10、15、20、25、特に30%以上とすることが好ましい。本発明では好ましい範囲の25%以上に規定した。
Mgは、優れた犠牲防食能の他、アルカリ環境下での耐食性(耐アルカリ性)の向上にも効果がある。これはpH11以上でMg(OH)2による不動態皮膜を形成するためである。耐アルカリ性の評価は、NaOH等でpHを調整した5%NaCl水溶液に一定時間浸漬し、試験後の腐食減量を測定すればよい。
Alの耐アルカリ性は極めて低く、また、Znの耐アルカリ性もAlほどではないが、良くはない。このため、Mg-Al系合金めっきにおいても、Mg濃度が低く、AlやZn濃度が高い領域では耐アルカリ性が不足するため、Mg濃度の下限を管理する必要がある。発明者らの調査によれば10%以上のMgを含有することで、耐アルカリ性をあげることが可能である。これはpH11での水溶液中でMg(OH)2皮膜を安定形成させるために必要な最低Mg濃度が10%である為と、本発明者らは考えている。なお、耐アルカリ性は、Mg濃度が高ければ、高いほど優れた性能を示す。
その一方で、Mgは中性、又は酸性環境下の耐食性は、Al、Znよりも劣る。特に、Mgがイオンとして容易に溶解してしまう、常時湿式の環境(例えば、浸漬実験等)では、大幅に耐食性が劣化する。このため、中性、酸性下での耐食性を確保するためには、Mgの濃度を一定以下に抑えることが必要となる。pH8(中性)では、Mg濃度が50%以下とすることで、中性領域での一定の耐食性を確保することが可能で、更にMg濃度20%以下であれば、中性環境下での耐食性はZnめっきレベルの性能を確保できる。
但し、Mgが高濃度に含有される場合であっても、めっき層から形成するMg系の腐食生成物によって優れた耐食性を得ることが可能である。この腐食生成物は緻密な海綿状の構造をとるため、ある程度の厚みに達するとめっき層、地鉄に非常に優れた防食作用をもたらす。この腐食生成物はめっき層中に一定のMg濃度があれば、形成が確認され、なるべくたくさんのMgが含有されることが好ましい。
また、Mgが高濃度に含有される場合であっても、めっき層中にアモルファス相を含有させることによって、良好な耐食性を得ることができる。これは、電気化学測定で確認することができる。例えば、電気化学測定(0.5%NaCl溶液中、vs Ag/AgCl)においては、アモルファス相がめっき層中に存在する方が、同じ組成の結晶相のみの合金めっきと比較して、腐食電位が貴となる。そして、腐食電位付近における腐食電流密度が小さくなる。腐食電流密度が小さくなるのに必要なアモルファス相の体積分率は5%以上であると本発明者らは見積もっており、5%未満では、結晶質のめっき層との腐食電流密度の差異はあまり見られず、耐食性向上の効果はあまりない。
アモルファス相において、実環境曝露試験に近い環境での効果を確認するためには、複合サイクル腐食試験によって耐食性を評価することが好ましい。
アモルファス相が含有されることによる耐食性向上のメカニズムは、不明であるが、アモルファス相そのものの優れた耐食性能を有していることが考えられる。
以上のように、本発明のMg-Al系合金めっきは、MgとAlの濃度を制御することで、使用する環境に合わせた耐食性能を発現することが可能である。
次に、本発明で開示するめっき鋼材の製造方法について説明する。本発明に用いる鋼材の鋼種や材質は、特に限定はなく、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、Ni、Cr含有鋼等が使用可能である。製鋼方法や、鋼の強度、熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等の鋼材の前処理加工についても特に制限はない。
めっきの製造方法に関しては、ゼンジミア法、プレめっき法、2段めっき法等でMg-Al系溶融めっき層を密着させることが可能である。プレめっき種では、Cuプレめっき、Snプレめっき、Niプレめっきなどが使用可能である。
めっき浴の作製に関しては、Al(純度、99.9質量%以上)を700℃前後の浴に少量ずつ、Mg(純度99.9質量%)を足していけばよい。Mgの引火点は、Alの融点よりも低いため、少量ずつ添加しないと引火・爆発する恐れがある。Mgが高濃度のMg-Alめっきであっても、この手法で、Mg濃度を高くした方が好ましい。Mg側にAlを添加すると(めっき浴の融点がMgの引火点以上となり)引火するおそれがあるためである。また、母合金として、市販のAl-Mg合金を利用する方法もあり、この場合、特にMgの引火点を気にすることなくMgを添加することが可能である。
Znの添加には特に制約はない。20%までの添加であれば、本発明で開示されるいかなる成分のMg-Al合金であっても、難なく添加することが可能である。
Si、CaについてもZnと同様、めっき浴への添加に制約は無い。ただしCaにおいては、引火点以下の温度で添加されることが好ましい。またSiは融点が高く、Si単体での添加は、時間がかかるため、Al-10%Si合金等で添加するのが効率的である。Caの添加にも、Al-Ca合金を使用することが可能である。
Caは上述のとおり、Mgを含有するめっきで、大気中めっき操業する場合は、脱Mgの効果が得られるため、添加することが好ましい。
めっきを施す際のめっき浴温度はめっき浴融点以上であれば可能であるが、めっき密着性の安定確保の観点から、めっきの浴温は、500℃以上が好ましい。500℃以上であれば、鋼材をめっき浴に浸漬した際、FeとAlが反応して合金層を形成しやすく、良好なめっき密着性が得られる。高温で、浸漬時間が長く、Al、Zn濃度が高いほど、Fe-Al、Fe-Zn合金層は成長するので、密着性にはより有利となる。また、Mg濃度が高い場合はFe-Al合金層、Fe-Zn合金層の形成は見られず、Feやめっき層構成原子の相互拡散によって密着性を確保する。また、めっき浴温度は、めっき合金の融点付近は、粘性が高いため、通常、融点よりも20〜100℃高い温度が好ましい。
浴温の上限は670℃である。これより浴温度を高くすると、AlとFeが過剰に反応してしまい、溶融めっき鋼板としての性能を確保することが難しい。
めっき層中のアモルファス相体積分率を求めるためには、めっき鋼材を切断し、その断面を研磨、エッチングして、鋼材表面のめっき層断面を光学顕微鏡(以下、光顕と略す場合もある)で観察する。アモルファスになった部分は、エッチングによっても何の組織も観察されないが、結晶相の残った部分は、結晶粒界や、亜粒界、析出物等に起因する組織が観察される。これにより、アモルファス部分と結晶部分の領域は、明確に区別されるので、線分法や画像解析により面積率を求め、これを体積分率に換算する。組織が微細過ぎて光顕での測定が困難な場合は、めっき層断面より薄片を作製し、透過電子顕微鏡により観察することで、同様に測定が行える。透過電子顕微鏡の場合は、組織の観察されない領域において、電子線回折像のハローパターンにより、アモルファス構造を確認することも可能である。
光顕観察において、全面に組織の観察されない場合や、一部に組織の観察されない部分があっても、粗大で歪みの無い結晶粒である疑いのある場合は、さらに電子顕微鏡用薄片を採取して、電子線回折像に回折スポットが無く、ハローパターンが観察されることにより、アモルファス相であることを確認することが望ましい。光学顕微鏡による測定も電子顕微鏡による測定も、10か所以上の異なる視野についてコンピューターによる画像処理で面積率を求め、それらを平均して体積率とするのが望ましい。
また、アモルファス相の体積分率は示差熱分析装置(DSC)によっても見積もることが可能である。あらかじめ、作製されたAl系合金を使用して、単ロール法でアモルファスリボン薄帯を作製して、DSCサンプルを採取し、このアモルファス相の結晶化の際に表れる発熱ピークの温度と、発熱量を記録しておく。このAl系合金をめっきした鋼板から、DSCサンプルを採取し、同じように所定の温度での発熱量を計測すれば、容易にめっき層中のアモルファス体積分率を見積もることが可能である。
表1に示す組成のめっき浴を作製し、板厚0.8mmの冷延鋼板、肉厚10mmで辺の長さが10cmの等辺山形鋼及び板厚3.2mmの熱延鋼板を基材として、表面処理鋼材を作製した。
まず、Mg、Al及びその他必要な成分元素を所定の組成に調整した後、高周波誘導炉を使用してAr雰囲気で溶解し、Mg-Al系合金インゴットを得た。作製したインゴットより、切粉を採取して酸溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量し、作製した合金が、表1に示す組成に、一致することを確認した。この合金をめっき浴として使用した。めっき層のめっき成分も表1に示す組成に、ほぼ一致した。Fe濃度は場所によって濃度差があるが、作製しためっき鋼板のFe濃度は、めっき層全体で2mass%以下となった。
冷延鋼板(板厚0.8mm) 、熱延鋼板(板厚3.2mm)は、10cm×10cmに切断した後に、自社製のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきした。
めっき浴の浴温は表1に示す温度とした。エアワイピングで目付け量を調節した。その後、冷却のため、水冷を施した。
等辺山形鋼は、100g/m2のZnめっきした後、Mg-Al系めっき浴に15分間浸漬してどぶ漬けめっきした。めっき浴浸漬中は、常に、等辺山形鋼を振動させた。
腐食試験は、JIS-Z-2371に記載されている塩水噴霧試験(SST)に準拠し、ただし、塩水濃度を50g/Lとした試験を1000時間行った後の腐食減量で評価し、めっき合金の密度より、腐食減厚に換算して耐食性を評価した。5μ未満を「◎」、5〜10μmを「○」、10μmを超えたものを「×」とした。
めっきの犠牲防食能の評価には、4T曲げ試験後、自動車規格(JASO M 609-91、8時間/サイクル、濡れ/乾燥時間比 50%)に準拠した方法を42サイクル実施して、加工部における赤錆の発生状況を評価した。但し、塩水には0.5%塩水を使用した。加工部の赤錆発生が、0〜21サイクルで発生したものは「×」、22〜42サイクルで発生したものは「○」、42サイクル経過後も赤錆が発生しなかったものは「◎」とした。
中性(pH8)、アルカリ性(pH11)での耐食性はめっき鋼板の塩水浸漬試験によって判断する。常時攪拌された5%NaCl水溶液に、NaOHで水溶液中のpHを調整する。この浴に24時間浸漬をし、実験前後の腐食減量と、めっき合金の密度より、腐食減厚に換算して耐食性を評価する。5μ未満を「◎」、5〜10μmを「○」、10〜15μmを「△」、15〜20μmを超えたものを「×」とした。腐食量の測定を行わなかったものは「−」とした。比較材として、Znめっき鋼板(表1中No.20)、Zn-11mass%Al-3mass%Mg-0.2mass%Siめっき鋼板(表1中No.21 表中はat%表示)、Zn-55mass%Alめっき鋼板(表1中No.22 表中は、at%表示)を使用した。いずれも市販品である。
図2は、表1中のNo.13のめっき層の断面光学顕微鏡写真である。図3は、表1 No.13 Mg-15at%Al-20at%Zn-1at%Caめっき層のX線回折像であり、X線回折より、めっき層中に、Al相、Mg相、その他の金属間化合物相が存在することが判明している。図4は、表1中のめっきサンプルの電気化学測定結果である。図4中、(1)表1 No.17 Mg-52at%Al-7at%Zn-1at%Caの分極曲線、(2)表1 No. 16Mg-30at%Al-10at%Zn-1at%Caの分極曲線、(3)表1 No. 15 Mg-19at%Al-15at%Zn-1at%Caの分極曲線、(4)表1 No. 14 Mg-17at%Al-17at%Zn-1at%Caの分極曲線、(5)表1 No. 13 Mg-15at%Al-20at%Zn-1at%Caの分極曲線、(6)表1 No. 21Zn-21.6at%Al-7at%Mg-0.4at%Siの分極曲線をそれぞれ示す。
本発明のMg-Alめっき鋼板は、従来のZn系めっき鋼板 Zn-21.6at%Al-7at%Mg-0.4at%Siの腐食電流密度と同等、もしくは、それよりも小さく耐食性に優れている。
表2に示す組成のめっき浴を作製し、板厚0.8mmの冷延鋼板を基材として、表面処理鋼材を作製した。
まず、Mg、Al及びその他必要な成分元素を所定の組成に調整した後、高周波誘導炉を使用してAr雰囲気で溶解し、Mg-Al系合金インゴットを得た。作製したインゴットより、切粉を採取して酸溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量し、作製した合金が、表2に示す組成に、一致することを確認した。この合金をめっき浴として使用した。めっき層のめっき成分も表2に示す組成に、ほぼ一致した。Fe濃度は場所によって濃度差があるが、作製しためっき鋼板のFe濃度は、めっき層全体で2mass%以下となった。
冷延鋼板(板厚0.8mm) は、10cm×10cmに切断した後に、自社製のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきした。
めっき浴の浴温は表2に示す温度とした。エアワイピングで目付け量を調節した。その後、冷却のため、水冷を施した。
長期の耐食性を評価するため、図5に示すサイクルで、ただし、塩水濃度を0.5%NaClとした複合サイクル腐食試験を140サイクル行った後の腐食減量で評価し、めっき合金の密度より、腐食減厚に換算して耐食性を評価した。5μ未満を「◎◎」、5〜10μmを「◎」、10μ〜20μm「○」、20〜30μmを「△」、30μmを超え、もしくは、赤錆発生したものは「×」とした。
比較材として、Zn-11mass%Al-3mass%Mg-0.2mass%Siめっき鋼板(表2中No. 35表中はat%表示)を使用した。市販品である。
形成している腐食生成物を解析するため、腐食試験後の腐食面表面をSEM-EDX観察し、代表的な腐食生成物をEDXで解析し、各特性X線のピーク強度和をとり、Mgの特性X線強度が強度比で全体の強度和の50%以上超えたものを検出されたものを「◎」、50〜25%を「○」、25〜5%を「△」、5%未満を「×」とした。
図6(a)は、表2中、No.16の腐食生成物のSEM像を示したものである。図6(b)は、図6(a)の高倍率SEM像である。図7は、図6の腐食生成物のEDX測定結果を示したものである。図7中のAuピークは、観察に供するために行ったAu蒸着に起因するピークである。表面からのEDX測定結果では、Mgと少量のZnが主体で、Al元素は検出されなかった。
表3に示す組成のめっき浴を作製し、板厚0.8mmの冷延鋼板、板厚3.2mmの熱延鋼板を基材として、表面処理鋼材を作製した。
まず、Mg、Al及びその他必要な成分元素を所定の組成に調整した後、高周波誘導炉を使用してAr雰囲気で溶解し、Mg-Al系合金インゴットを得た。作製したインゴットより、切粉を採取して酸溶解した溶液をICP(誘導結合プラズマ発光)分光分析により定量し、作製した合金が、表3に示す組成に、一致することを確認した。この合金をめっき浴として使用した。めっき層のめっき成分も表3に示す組成に、ほぼ一致した。Fe濃度は場所によって濃度差があるが、作製しためっき鋼板のFe濃度は、めっき層全体で2mass%以下となった。
冷延鋼板(板厚0.8mm)、熱延鋼板(板厚3.2mm)は、10cm×10cmに切断した後に、自社製のバッチ式の溶融めっき試験装置でめっきした。冷延鋼板、熱延鋼板には溶融めっき前にあらかじめ、Niプレめっき(0.3g/m2)を施した。
めっき浴の浴温は650℃とした。エアワイピングで目付け量を調節した。その後の冷却で、結晶質のめっき鋼板を作製する場合は、空冷し、アモルファス相を得るめっき鋼板においては、Cuプレスを行い急冷した。
めっき層のアモルファス体積分率は、試験片のめっき層の厚みを5等分した位置において、各2枚ずつの透過電子顕微鏡用薄片を採取し、コンピューターを用いた画像解析により、それぞれ、視野のアモルファス領域の面積率を測定し、全視野に占めるアモルファス領域の面積率の平均値を、アモルファス体積分率とした。
表3中で、めっき層中に体積分率で5%以上アモルファス相が含有されたものを「○」5%未満を「×」とした。
腐食試験による耐食性の評価は、図5に示すサイクルで、ただし、塩水濃度を0.5%NaClとした複合サイクル腐食試験を70サイクル行った後の腐食減量で評価した。めっき合金の密度より、腐食減厚に換算して耐食性を評価した。5μ未満を「◎」、5〜10μmを「○」、10μmを超えたものを「×」とした。
Mg-Al-Zn状態図を示す図である。 表1 No.13 Mg-15at%Al-20at%Zn-1at%Caめっき層の断面を示す写真を用いた図である。 表1 No.13 Mg-15at%Al-20at%Zn-1at%Caめっき層のX線回折像を示す図である。 表1中のめっきサンプルの電気化学測定結果を示す図である。 サイクル腐食試験条件を示す図である。 (a)表2中、No.16の腐食生成物のSEM像による図である。 (b)表2中、No.16の腐食生成物のSEM像(拡大像)による図である。 図6の腐食生成物EDX測定結果を示す図である。

Claims (8)

  1. Alが15原子%以上、74.9原子%以下、Caが単独であるいはCaとSiの両方が合計で、0.1原子%以上、12原子%以下、Znが0.1原子%以上、20原子%以下含有され、残部が25原子%以上のMgと不可避不純物から構成されるめっき層を有することを特徴とする溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  2. 前記めっき層のAlが、20原子%以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  3. 前記めっき層のAlが、20原子%以上、70原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  4. 前記めっき層のAlが、30原子%以上、60原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  5. 前記めっき層のAlが、15原子%以上、40原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  6. Caが単独であるいはCaとSiの両方が合計で、0.1原子%以上、5原子%以下含有されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  7. 請求項5に記載のめっき層のCaが、5原子%以上、12原子%以下であることを特徴とする溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
  8. 前記めっき層中に、アモルファス相が体積分率で5%以上含有されることを特徴とする請求項7に記載の溶融Mg-Al系合金めっき鋼材。
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