JP6528627B2 - めっき鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐食性に優れためっき鋼材に関する。
土木・建材分野では、厚板製品、ボルト、金網等、多くのめっき部材が使用されており、その形状、長寿命の観点から、被覆方法としてZn浸漬めっき法が採用されている。浸漬めっき部材は通常、構造材料として多くが使用されることから長寿命が望まれる。近年では、Zn浸漬めっき製品の高寿命化の手段として、めっき層の厚みを厚くする手段の他、めっき層自体をZnめっきに代わる高耐食性めっきを適用するようになっている。
例えば、特許文献1、2、3は、Znめっきの代わりにZn−Al−Mg系めっきが採用された例である。Znめっきに耐食性を付与するために添加されたAl、Mgによって、めっき層中にAl相、MgZn相を形成することでめっき層の耐食性を付与している。従来のZn浸漬めっきと比較すれば、耐食性は向上しているが、この分野においては長寿命化のためさらなる高耐食性浸漬めっきへのニーズが依然強い。
一方、浸漬めっきとして適用するめっきがZnめっきから他のめっきに変わると、めっき部材(地鉄)とめっき浴との反応性が変化することから、新しいめっき浴の適用は、めっき部材の表面を洗浄・還元するフラックスの開発や、2段めっき法の採用等を検討しなければならない。このため、現在まで広く利用されてきたZnめっき浴からの設備変更が要求される場合が多い。従って浸漬めっきの観点からは、Znめっき浴のように、特別なフラックスを要求されず、1段めっきで実施できる浸漬めっきが最も好ましい傾向にある。
本発明者らは、高耐食性ニーズかつ、簡単な方法で実施できる浸漬めっきを検討した結果、特許文献4に示すような浸漬めっき浴が最適であると判断している。この特許文献4に開示されるめっき層は、ゼンジマー法で作製されためっき層中にアモルファス相が得られることに特徴を持つが、浸漬めっき法で作製すると、従来、見出されていない準結晶相をめっき層中に容易に含有させることが可能で、これにより飛躍的に耐食性を向上させることができることが判明した。なおかつ、特有のフラックス、2段めっき処理を適用せずとも、従来の浸漬めっき設備をそのまま利用することができるため、長寿命、低コストで製造する浸漬めっきにおいては最適である。
特開平9−256134号公報 特開2003−3238号公報 特開2015−40334号公報 特開2008−255464号公報
本発明が解決しようとする課題は、浸漬溶融めっき法において、耐食性を更に飛躍的に向上させためっき鋼材を提供することである。
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討したところ、めっき層中にMgを多量に含有させることで、めっき層の耐食性が改善されることを見出した。また、浸漬めっきの際、特有の熱処理を施すことで、従来見出されていない準結晶相をめっき層中に含有させることができ、めっき層の耐食性を飛躍的に向上させることができることを見出した。
また浸漬めっき法において、めっき浴中への浸漬時間を調整することでめっき層中に界面合金層を形成させることができ、めっき層の厚膜化を図ることでめっき鋼材の長寿命化を達成できると判断した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。
(1) 鋼材表面に、Al−Fe合金層とZn−Mg−Al合金層とを含むめっき層が備えられ、
前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、AlFe合金相を含み、平均組成がFe:30〜48質量%、Al:50〜65質量%、Zn:2〜10質量%、及び不可避不純物を含有して、平均厚さが1μm以上、500μm以下であり、
前記Zn−Mg−Al合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、その平均組成が、Zn:11〜80質量%、Mg:8〜45質量%、Al:3〜80質量%であり、また、添加選択元素の組成が、質量%で、
Ca:0%〜5%、
Y :0%〜3.5%、
La:0%〜3.5%、
Ce:0%〜3.5%、
Si:0%〜3.5%、
Ti:0%〜0.5%、
Cr:0%〜0.5%、
Co:0%〜0.5%、
Ni:0%〜0.5%、
V :0%〜0.5%、
Nb:0%〜0.5%、
Cu:0%〜0.5%、
Sn:0%〜0.5%、
Mn:0%〜0.2%、
Sr:0%〜0.5%、
Sb:0%〜0.5%、
Pb:0%〜0.5%であり、下記式1及び下記式2を満たし、ただし、下記式1はY、La、Ceの1種または2種以上が含有される場合であり、
かつ、体積分率で5%以上の準結晶相を含有し、その平均厚さが5μm以上、100μm以下であることを特徴とするめっき鋼材。
Ca+Y+La+Ce≦3.5 …式1
Ti+Cr+Co+Ni+V+Nb+Cu+Sn+Mn+Sr+Sb+Pb≦0.5% …式2
ただし、式1及び式2における元素記号は、それぞれの元素の含有率(質量%)である。
(2) 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:11〜72質量%、Mg:10〜35質量%、Al:5〜67質量%の成分組成条件を満たし、かつ、前記準結晶相の体積分率が30%以上であることを特徴とする(1)記載のめっき鋼材。
(3) 前記Zn−Mg−Al合金層中の、準結晶相、MgZnおよびMgZnの合計の体積分率が75%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のめっき鋼材。
(4) 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:35〜70質量%、Mg:15〜23質量%、Al:13〜42質量%、Ca:1.4〜3質量%の成分組成条件を満たし、かつ、前記準結晶相の体積分率が80%以上であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れか一項に記載のめっき鋼材。
(5) 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:11〜40質量%、Mg:8〜22質量%、Al:45〜80質量%の成分組成条件を満たし、かつ、Al相の体積分率が50%以上であり、前記準結晶相と前記Al相の合計の体積分率が75%以上あることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか一項に記載のめっき鋼材。
(6) 前記Al−Fe合金層の平均厚みが、100〜500μmであることを特徴とする(1)乃至(5)の何れか一項に記載のめっき鋼材。
本発明によれば、高耐食性を有しためっき層を有する高耐食性の浸漬めっき鋼材及びその製造方法を提供できる。
本発明の浸漬めっき鋼材(実施例20)のZn−Mg−Al合金層の電子顕微鏡による断面写真である。 本発明の浸漬めっき鋼材(実施例17)のZn−Mg−Al合金層の電子顕微鏡による断面写真である。 図2の枠内における電子顕微鏡による断面写真の拡大像である。 図3において、矢印3に示す位置におけるTEM電子線回折像である。 図2のAl−Fe合金層の電子顕微鏡による断面写真の拡大像である。
以下、本発明の実施形態である浸漬めっき鋼材について説明する。
本実施形態の浸漬めっき鋼材は、鋼材と、鋼材表面に形成されためっき層とからなる。鋼材表面に形成されためっき層は、厚さ1μm以上500μm以下のAl−Fe合金層と、厚さ5μm以上100μm以下のZn−Mg合金層とを含む。めっき層全体の厚みの上限は例えば600μm以下である。めっき層の厚みはめっき条件に左右されるため、めっき層全体の厚みの下限については特に限定されるものではないが、浸漬めっき法ではめっき浴からの部材の引上速度によって目付調整され、10μm以上から調整可能であるため、これを下限とする。本実施形態の浸漬めっき鋼材のめっき層は、Al−Fe合金層及びZn−Mg−Al合金層の2層構成となっている。以下、鋼材及びめっき層について順次説明する。
浸漬めっき法を本発明の製造方法として採用することで、めっき層として鋼材表面にAl−Fe合金層とZn−Mg−Al合金層が形成する。Al−Fe合金層は、鋼材表面に形成されており、組織としてAlFe相とZn成分を含む。Al−Fe合金層の平均組成は、Fe:30〜50%、Al:50〜70%、Zn:2〜10%、及び不純物とされている。なお、本発明における%表示は、特別な言及がない限りは、全て質量%を意味する。
本実施形態に係る製造方法に従った場合、めっき層中にAl、Znを多く含有することになり、めっき浴中のAlが鋼材のFeと反応してAlFe相を形成する。また、めっき浴成分のZnが必然的に取り込まれ、一部Znを取り込んだ形となり、AlFe相と性質を若干、異にする合金層が形成される。
Al−Fe合金層は、AlFe相を主体とする合金層となるため、必然的に合金層のFe濃度の平均値は、30〜48%となる。Al濃度の平均値は、50〜65%となる。また、Zn濃度の平均値は2〜10%となる。AlFe相は、地鉄とめっき浴との相互の原子拡散によって形成するが、一方、原子拡散には時間がかかり、また、地鉄に近い部分では、Fe濃度が高くなる部分もあり、部分的には、AlFe相や、Zn−Mg−Al合金層に近い部分では、AlFe相が少量(1μm以下の厚みで部分的に)含まれる場合もある。
例えば、一般的なZnめっき層において形成するAl−Fe合金層は、その主体がAlFe相であり、Fe成分の含有率が比較的多いことから、地鉄に対する犠牲防食能を示さず、ほとんど耐食性を有さない。一方、本実施形態におけるAl−Fe合金層は、主相とする相がAlFe相であって、更に2〜10%のZnを含有している。上層のZn−Mg−Al合金層と比較すると耐食性効果は小さい。しかし、本実施形態におけるAl−Fe合金層は、AlFe相よりも耐食性に優れるAlFe相を主体としており、更にZnを含むため、腐食速度が小さいだけでなく、ある程度の犠牲防食能も有している。なお、めっき層に多量に含まれるMgはAlFe相内からは検出されないが、これは、Al、Znと異なりFeと反応しないためである。一方、Al−Fe合金層中のAlFe相粒界には、地鉄より拡散したFeと未反応で残存しためっき層が少量含有されることがある。残存しためっき層Mg成分の他、Zn、Alも含まれるため、腐食期間中、本来犠牲防食能に乏しいAlFe相に耐食性を付与する効果を有する。
上層のZn−Mg−Al合金層と同じ厚みで比較した場合のAl−Fe合金層の耐食性効果は小さいが、本発明のAl−Fe合金層はその厚みを確保することで長寿命化の寄与に充分な耐食性能を発揮することが可能である。特に、本発明が目的とする長期の耐食性が必要な用途においては、先ずZn−Mg−Al合金層が耐食性を発現し、Zn−Mg−Al合金層が消滅してからは、Al−Fe合金層が地鉄防食の主体となる効果を奏する事となる。めっき浴の粘度等の制約からZn−Mg−Al合金層の厚みを一定の厚み以上(100μm以上)にすることは困難であるが、このAl−Fe合金層は、浴への浸漬時間を制御することで上層のZn−Mg−Al合金層と比較すると厚みを厚くすることが可能であることから、長寿命化を達成するためにある程度の厚みを有していた方が好ましい。
Al−Fe合金層の厚みは1μm以上が好ましく、5μm超がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。一方、厚すぎるAl−Fe合金層は脆くなり、衝撃に対してめっき層が剥離しやすくなる傾向にあることから、その厚みの上限値は500μmとする。
特に、Zn−Mg−Al合金層を20μm以上、Al−Fe合金層を100μm以上とすることで、従来のドブ漬Znめっきや、ドブ漬Zn−Alめっき、或いは連続溶融めっき法によるZn−Mg−Al合金よりも優れた長期耐食性を得る事が可能となる。
本実施形態の製造方法と異なる熱処理条件で浸漬めっきを製造した場合は、上記成分組成と異なるAl−Fe合金層が形成する場合がある。
Al−Fe合金層におけるFe含有率が30%未満、もしくはAl含有率が65%を超える場合は、AlFe相と異なる合金層が主体となっている可能性があり、Al−Fe合金層の上層に位置するZn−Mg−Al合金層のAl成分が不足し、上層のZn−Mg−Al合金層の耐食性が劣化する可能性がある。
一方、Fe含有率が48%を超える場合、もしくは、Al含有率が50%未満となる場合も、AlFe相と異なる合金層が主体となっている可能性があり、Fe成分の増加に伴う電位の上昇が起こって、地鉄に対して適切な犠牲防食能を維持できず腐食速度の増加を誘発する可能性がある。
また、Zn含有率が2%未満の場合も、AlFe相と異なる合金層が主体となっている可能性があり、腐食電位の上昇と、腐食速度の増加が観察され、AlFe相で期待される耐食性が得られない。Zn含有率が10%を超える場合は、上層のZn−Mg−Al合金層におけるZn不足を誘発し、めっき層の耐食性が劣化する可能性がある。
AlFe相が腐食すると、Feを含有するため僅かに赤錆が点状に生じるが、Al、Zn成分も含有するため、多くの白錆が同時に発生する。Al−Fe合金層が腐食する間は、地鉄が腐食しないため、大量の赤錆は発生しない。Al−Fe合金層の厚みがたとえば、200μm以上となると、塩水噴霧試験(SST)試験等で約500時間程度の点状の赤錆のみで抑制できる期間が現れ、耐食性向上効果が明瞭に現れる。
次に、Zn−Mg−Al合金層は、Al−Fe合金層の上に積層されている。
本実施形態の製造方法によってめっき層を形成した場合、Zn−Mg−Al合金層の成分組成は、ほぼめっき浴の成分組成比率と同じになる。Al−Fe合金層の生成に伴い、Zn−Mg−Al合金層中のAl成分またはZn成分がAl−Fe合金層側に移動する可能性があるが、その減少量は通常、僅かである。これは、Al−Fe合金層の形成は、基材が浸漬されためっき浴中での反応が主であり、めっき浴中に十分なAl、Znが含有されているため地鉄界面でAl、Znが消費されても直ぐに周囲からAl、Znが供給されるためである。通常、浸漬基材に対してめっき浴のサイズは十分に大きくなければならない。例えば、100×50×2mm幅のめっき基材に対して、少なくともめっき浴は、5L以上必要である。
本発明者らが、浸漬めっき法によって準結晶相が得られる組成範囲を吟味した結果、以下の組成範囲において準結晶相がZn−Mg−Al合金層内に体積分率で5%以上含有されることを見出した。すなわち、構成元素として、Zn:11〜80%、Mg:8〜45%、Al:3〜80%である。この組成の範囲外では、基本的に準結晶が得られにくい組成であり、さらにめっき層が硬質となり、浸漬後直ちに、めっき剥離が非常に起こりやすく浸漬めっきとして適さない組成範囲でもある。なお、不可避不純物として、Feが最大2%程度、混入する場合もあるが、Zn−Mg−Al合金層の性能には影響を与えない。本発明の必須構成物質である準結晶相の詳細は後述する。
Zn、Al、Mgは準結晶を構成する元素であるから、必ず一定以上めっき層に含有される必要があり、上記の組成範囲外になると、Zn−Mg−Al合金層中に準結晶相を5%以上含有させることができなくなる。
また、Zn−Mg−Al合金層には添加選択元素として、Ca:0〜5%、Y:0%〜3.5%、La:0%〜3.5%、Ce:0%〜3.5%、Si:0%〜3.5%、Ti:0%〜0.5%、Cr:0%〜0.5%、Co:0%〜0.5%、Ni:0%〜0.5%、V:0%〜0.5%、Nb:0%〜0.5%、Cu:0%〜0.5%、Sn:0%〜0.5%、Mn:0%〜0.2%、Sr:0%〜0.5%、Sb:0%〜0.5%、Pb:0%〜0.5%のうちの1種または2種以上を含んでもよい。
ただし、Y、La、Ceの1種または2種以上が含有される場合はCa+Y+La+Ce≦3.5%とし、Ti+Cr+Co+Ni+V+Nb+Cu+Sn+Mn+Sr+Sb+Pb≦0.5%と、する必要がある。
Ca、Y、La、Ceは、一定の濃度がめっき層中に含有されることで、準結晶相がより形成しやすくなる。その効果はY、やLa、Ce等のランタノイド元素の効果が高く、一方、Ca濃度が過大な場合や、Y、La、Ceが含有される場合で、Ca、Y、La、Ceの濃度の合計が3.5%を超える場合は、準結晶相が途端に形成しなくなるため、それぞれの上限濃度を定める必要がある。また、Caが5%を超えると浸漬めっき自体の性能に悪影響を及ぼし、さらにAl−Fe合金層にZnが取り込まれにくくなる傾向になるため、その濃度を5%以下に制限する必要がある。
また、Si、Ti、Cr、Co、Ni、V、Nb、Cu、Sn、Mn、Sr、Sb、Pbは、めっき層中に含有させることが可能である。上記の組成範囲は、準結晶相の形成を阻害することなく、めっき層の性能を劣化させることなく添加できる組成範囲である。この範囲を超えると、準結晶相は形成しなくなる。一方、これらの元素添加によって浸漬めっきの性質自体に与える大きな効果も確認されていない。なお、Siについては、0.5%を超えて添加されると、Al−Fe合金層の成長が鈍化する。200μm以上のAlFe合金層を形成させる場合は、その濃度を0.5%以下とした方が好ましい。
また、準結晶相をより多く形成させるためには、Zn−Mg−Al合金層の組成が、Zn:11〜72%、Mg:10〜35%、Al:5〜67%の条件を満たすことが好ましい。これにより、準結晶相の体積分率が30%以上になる。さらに好ましくは、Zn−Mg−Al合金層の組成が、Zn:35〜70%、Mg:15〜23%、Al:13〜42%、Ca:1.4〜3%の条件を満たすとよい。これにより、準結晶相の体積分率が80%以上になる。
次にZn−Mg−Al合金層を構成する組織について説明する。
本実施形態に係るZn−Mg−Al合金層を構成する組織としては、以下のものを列挙できる。すなわち、準結晶相、MgZn相、MgZn相(文献によっては、MgZnと表記される場合もあるが、同一物質として扱う。)Al相、Mg51Zn20相、Mg相、MgZn相である。本実施形態のZn−Mg−Al合金層は特に、準結晶相、MgZn相、MgZn相からなることが好ましい。また、Al相を含んでいてもよい。また、その他の金属間化合物として、AlCa、AlZnCa、AlZnCaも含有される場合もあるが、この化合物は、浸漬めっきの性能には大きな影響は与えないと考えられる。
準結晶相は、準結晶を含む相である。準結晶は、1982年にダニエル・シュヒトマン氏によって初めて発見された結晶構造であり、正20面体(icosahedron)の原子配列を有している。この結晶構造は、通常の金属、合金では得られない特異な回転対称性、例えば5回対称性を有する非周期的な結晶構造で、3次元ペンローズパターンに代表される非周期的な構造と等価な結晶構造として知られている。この金属物質を同定するためには、通常、TEM観察による電子線観察によって、相から、正20面体構造に起因する放射状の正10角形の電子線回折像を得ることで確認される。例えば、図4に示す電子線回折像は、準結晶からのみ得られ、他のいかなる結晶構造からも得ることができない。
また、本実施形態のめっき浴の組成によって得られる準結晶相は、簡易的には、Mg32(Zn、Al)49相としてX線回折により、JCPDSカード:PDF#00−019−0029、又は、#00−039−0951で同定できる回折ピークを示す。36.3〜8°付近に回折ピークが観察されることが多い。
また、本実施形態に開示した成分組成から得られる準結晶相は、化学組成的には、簡易的に、Mg32(Zn、Al)49相として定義されるもので、Zn、Al比率に広がりがあり、X線回折により、JCPDSカード:PDF#00−019−0029、又は、#00−039−0951で同定できる回折ピークを示す。Frank−Kasper相と呼ばれる場合もある。36.3〜8°付近に回折ピークが観察されることが多い。
準結晶の正20面体の結晶構造の形成には、同じくクラスターを有する菱型多面体構造をもつMg32(Zn、Al)49相の形成が影響しているとされる。準結晶相の20面体の結晶構造は3種類以上の結晶構造、例えば、マッカイクラスター、バーグマンクラスター、蔡クラスター型等の報告があり、その結晶構造については現在も研究中である。また、Mg32(Zn,Al)49相は、準結晶研究の初期から準結晶と同じ、近似結晶であることが指摘され、形成時の冷却方式により、部分的にクラスター構造が変化して上記に示す異なる20面体構造を取り得る。本発明における準結晶相の定義とは、近似結晶を指し、準結晶と同等のクラスター構造を有した物質も含め、Mg32(Zn、Al)49相からの変異体と定義する。粗大で数10μm以上の大きさで正20面体構造を取るものも得られれば、数nmの部分的にしか得られない場合もあり(すなわち、1つの結晶相を取り上げても図4の電子線回折像がいかなる場所からも得られる場合もあるが、Mg32(Zn、Al)49相の電子線回折像が得られ、図4の像が部分的にしか得られない場合もある)、準結晶相と近似結晶の区別は明瞭に定義することが現在は区別することが技術的に不可能である。Mg32(Zn、Al)49相中に準結晶相が含まれると推定されるが、部分的に準結晶を切り出すことが困難であり、一方、本発明における準結晶相に関わる性質は、クラスター構造に起因した特異な結晶構造に発現をもとにしていると推定され、近似結晶であるMg32(Zn、Al)49相も、準結晶も同質と扱うことが可能である。このため、簡易的には、XRDで近似結晶のMg32(Zn、Al)49相を探し、準結晶と同性能が得られる可能性を得て、より詳細に準結晶構造を探索する場合は、TEMで対象の結晶相の結晶構造を詳細に探索すれば良い。
準結晶相は、極めて耐食性に優れる物質を示し、Zn−Mg−Al層中に含有されることでめっき層の耐食性が向上する。特に準結晶相が体積分率で5%以上の割合でZn−Mg−Al層中に含有されると、腐食初期段階において白錆発生が抑制される傾向にある。より高い体積分率でたとえば、30%以上含有されるとその効果を増す。すなわちZn−Mg−Al合金層の表面上に形成した準結晶相が腐食因子に対して高いバリア効果を有するものとなる。
また腐食促進試験等で準結晶相が腐食すると、バリア効果の高い腐食生成物が形成し、地鉄を長期にわたり防食する。バリア効果の高い腐食生成物は、準結晶相中に含まれるZn−Mg−Al成分比率が関係している。Zn−Mg−Al合金層の成分組成において、Zn>(Mg+Al+Ca)が成立している場合、腐食生成物のバリア効果が高い。一般的に耐食性においては、準結晶相の体積分率が高い方が好ましい。準結晶相の体積分率で80%以上であるとその効果が特に大きい。これらの効果は、塩水噴霧サイクル(SST)を含む複合サイクル腐食試験で、その効果が大きく現れる。
MgZn相、MgZn相は、準結晶相と比較すると、これらの相の含有による耐食性向上効果は小さいが、一定の耐食性を有し、かつ、Mgを多く含有することから、アルカリ耐食性に優れる。これら単独の金属間化合物でもめっき層中に含有されることでアルカリ耐食性が得られるが、準結晶相と併存すると準結晶相の高アルカリ環境(pH13〜14)でのめっき表層の酸化皮膜が安定化し、特に高い耐食性を示すようになる。このためには、準結晶相はめっき層に体積分率で30%以上含有されることが好ましい。
例えば、準結晶相が含有する状態で、残相として、MgZn相、MgZn相を含有し、準結晶相、MgZn,MgZnの体積分率が合計で75%以上となる場合は、アルカリ領域での耐食性が向上する。例えば、強アルカリ環境、アンモニア水中、苛性ソーダ中でも腐食量がほぼ0となるほど優れたアルカリ耐食性を得ることが可能である。
準結晶相自体は、非常に硬質な相で、準結晶相を多量に含むめっき層は幾らかのクラックを相内に含むこともあり、大きな加工を伴わない浸漬めっきには含有物として適しているが、浸漬めっき鋼材においては、ボルト接合のために締め付け部が存在することもあれば、屋外環境で使用されることで様々な飛来物にさらされることも存在し、幾分、めっき層に延性を持ち合わせた方が良い場合もある。
また、本実施形態において準結晶相が得られる組成範囲内において、準結晶の他、Al相がめっき層に混在する場合がある。Al相は非常に軟質なめっきで塑性変形能を有しており、これらの相を含有すると、めっき層に塑性変形能が生じる。
Zn−Mg−Al合金層の平均組成が、Zn:11〜40質量%、Mg:8〜22質量%、Al:45〜80質量%の成分組成条件を満たすものとなる場合、Al相が体積分率で50%以上含有され、かつ、準結晶相との体積分率との合計で75%以上になる。このようなZn−Mg−Al合金層においては、めっき層に延性が生まれた結果、たとえば耐衝撃性に優れたものとなる。このようなめっき層に対してボールインパクト試験を実施すると、めっき層の剥離量が大幅に減少するようになる。
次に、本実施形態の高耐食性の浸漬めっき鋼材の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る浸漬めっき鋼材の母材となる鋼材は、特に制限されるものではない。かかる鋼材の一例として、例えば、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、Ni、Cr含有鋼等といった各種の鋼材を挙げることができる。また、鋼材の製鋼方法や、鋼の強度、熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等の鋼板の製造条件についても、特に制限されるものではない。
鋼材は、溶融めっき浴への浸漬前に、表面清浄(塩酸酸洗、水洗、乾燥)に供される。鋼材の表層に生成する強固な酸化被膜は例えば、10%塩酸に10分以上浸漬することで剥離させる。酸洗後、水洗し、ドライヤーや乾燥炉を使用して表面の水分を取り除く。
鋼材のめっき浴への浸漬において、本実施形態の製造方法においては、特に特殊なフラックスを必要としないが、Zn浸漬めっきに使用されるフラックス(例えば、塩化アンモニウム塩、塩化亜鉛、塩化すず等を溶解した水溶液)を事前に鋼材表面の還元剤として使用してもよい。この場合、浸漬めっきを短時間で実施することが可能だが、塩化物系フラックス成分とめっき浴成分が反応して、鋼材表面にMg系塩化物等を形成し、表面外観が損なわれる場合があるので、浸漬中、十分にめっき基材を振動させる等の処理が必要となる。
また表面外観を保つためには、いわゆる浸漬めっきを作製する際に使用される2段めっき法を用いることも可能である。例えば、事前にZnめっきが処理されためっき鋼材を本発明の鋼材として用いると、フラックスを使用した場合と同様の効果が得られ、浸漬めっきを作製することが可能である。また、フラックス処理に伴って生成するMg系塩化物等も、めっき鋼材を用いた場合には形成しないため、基材として好適である。
めっき浴は真空溶解炉等で作製した所定成分組成の合金を使用し、大気中で溶解する。フラックス処理済みの鋼材またはZnめっき基材を用いず、表面清浄のみ実施した基材を用いる場合は、めっき浴は、融点以上に合金を加熱し、少なくとも浴温は550℃以上に設定する。浴温を高く設定することで、地鉄とめっき浴の反応性を高め、密着性を担うAl−Fe界面合金層を形成する。一方で高すぎるめっき浴温は鋼材を急激に酸化させ、鋼材品質への悪影響があることから、650℃未満とする方が好ましい。
表面清浄のみ実施した基材の浸漬時間は、少なくとも30秒以上が必要だが、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上浸漬することが良い。フラックス処理していない鋼材は、浸漬直後は、なじみ性が悪くめっき浴に鋼材が濡れないが、浸漬を30秒以上続けると、めっき浴によって加熱された鋼材が徐々にめっき浴になじんで鋼材とめっき浴との反応が開始され、界面合金層が形成することで鋼材が濡れはじめる。通常のZn系浸漬めっきと異なり、本発明で開示するめっき浴はMgが含有されるため濡れ性が悪く、めっき層の形成に時間を要する。浸漬時間は、30分未満が好ましい。30分以上の浸漬時間を与えると、界面合金層が成長しすぎて脆くなり、引き上げ直後、めっき層全体が剥離してしまう。
一方、フラックス処理した鋼材や、Znめっき鋼材を用いる場合は、浸漬時間は15秒以上必要であり、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは、5分以上が好ましく、15分以内の浸漬時間が好ましい。浸漬時間が長い程、Al−Fe合金層の厚みが厚くなるが、上述の通り、厚すぎるAl−Fe合金層はめっき剥離しやすいため、制限する必要がある。
また、いずれの鋼材を用いた場合でも、浸漬中は、必要に応じてめっき基材を振動させることが好ましい。これにより、めっき層の表面外観が向上する。また、浸漬中にめっき浴上に形成するドロスは取り除くことが好ましい。
所定時間浸漬後、引き上げ速度は、50mm/s以下で引き上げる。より好ましくは、20mm/s以下がよい。引き上げ速度が大きい場合は、Al−Fe合金層上に形成するZn−Mg−Al合金層部分が分厚くなり、その後のめっき剥離を引き起こす場合がある。
引き上げ直後の浸漬めっき材の表面は550℃以上の高温で、溶融状態にある。この状態から室温まで自然放冷によって浸漬めっき鋼材を製造する方法が、通常の浸漬めっき法のプロセスであるが、連続溶融めっきラインと異なりめっき浴への浸漬時間が長時間になり、地鉄から供給されるFeとの反応で形成するAl−Fe合金層を十分に考慮し、時間と温度をコントロールして適切な厚みや成分組成に制御する必要がある。また、本実施形態における浸漬めっき鋼材はZn−Mg−Al合金層中に準結晶相を含有させるために以下のような特別な温度管理する必要がある。
引き上げ直後の温度から500℃までは8秒以内に冷却する。この温度域では、Al原子が急速に鋼材とめっき層の界面に向けて移動して、Al−Fe合金層を形成するため、8秒以内に500℃まで冷却することで、Zn−Mg−Al合金層中のAlが地鉄界面合金層に取り込まれるのを防ぎ、めっき層内部のAl濃度の適正化を図り、準結晶相の形成に適した状態にする。冷却装置をめっき浴直上に設けることが好ましく、冷却手段としては酸化を防止するため、不活性ガスの吹付が好ましく、ミスト冷却も可能である。
さらに、500〜350℃の温度域では、Al−Fe合金層の成長が止まる一方、この温度域で最も安定する相が準結晶相であるため、この間の保持時間を長くすることでZn−Mg−Al合金層中の準結晶相の体積分率を向上させることが可能である。より好ましくは、500〜350℃の温度域を30秒以上保持するために、5℃/秒の冷却速度を下回る方が好ましい。冷却速度を5℃/秒以下にすることで、準結晶相を最大限に生成することが可能である。たとえば、この間の冷却速度を5℃/秒超にすると、本来得られる準結晶相の割合が極端に小さくなる傾向にある。冷却速度があまりに大きいと、ある程度準結晶相が析出する前に冷却され、準結晶相の含有がなくなってしまう。
一方、350〜250℃以下の温度域では、準結晶相よりもMgZn、Mg、MgZn等の金属間化合物の安定領域に入るため、準結晶相からMgZn等への変質を抑制するために、この間の冷却速度を速める必要がある。好ましくは、10℃/秒以上とすることでZn−Mg−Al合金層中の準結晶相の体積分率を高く維持することが可能である。250℃以下の温度域の冷却速度は不問である。この温度域では温度が低く原子拡散が低調となり、もはや相の生成、分解に必要な温度を下回っているためである。
次にめっき層の解析手段について述べる。
Zn−Mg−Al合金層中の準結晶相の体積分率の測定方法について述べる。めっき層の任意の断面、少なくとも3視野以上(視野の広さは、めっき全厚×めっき全厚に等しい巾、めっき層の全厚が100μm以下の場合は、少なくとも、めっき全厚×100μmとする)をSEM−反射電子像で撮影する。別途TEM観察によって得られた実験結果から、SEM−反射電子像における準結晶相を特定する。所定の視野において、成分マッピング像を把握し、めっき層中における準結晶相と同じ成分組成場所を特定し、画像処理によって、めっき層における準結晶相を特定する。画像解析装置によって、準結晶相領域を範囲選択された画像を用意し、めっき層中に占める準結晶相の割合を測定する。同様に処理した3視野からの平均値から、めっき層における準結晶相の面積率を体積分率として採用する。
めっき層(Zn−Mg−Al合金層、Al−Fe合金層)の成分組成の把握には、簡易的にはめっき層断面におけるSEM−EDS、EPMA等による定量分析によって判別することが可能である。Zn−Mg−Al合金層の成分把握には、めっき表層からの定量分析によっても判別可能である。めっき層の成分の把握には、少なくとも異なる3視野における同様の組織構造の場所から点分析によって成分を把握し、その平均値を採用する。組織の広がりが存在する場合は、EPMAマッピング像から、特定の範囲における組成の平均値を採用する方が正確な値を取得することが可能である。より正確に成分を把握するためには、あらかじめ成分確定した合金にて高周波グロー放電発光分光分析装置(GDS)で定量分析用の検量線を作成し、対象とするめっき層の深さ方向の元素強度分布を把握して成分濃度を決定する。例えばφ5mmのGDS分析にて、深さ方向の成分強度がほぼ平坦になる場所の成分を把握し、5箇所以上の測定結果から、その平均値を採用すれば良い。 また、めっき浴、めっき層全体の成分組成の把握には、地鉄の腐食を抑制するインヒビターを加えた酸溶液にめっき層を溶解し、剥離溶液をICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光法による成分確認も可能であるが、Zn−Mg−Al合金層の成分把握は、Al−Fe合金層との成分分離が必要となり、めっき層の酸溶解時間を短時間で実施する必要がある。
めっき層の耐食性を評価するためには、実環境に即したデータが得られる暴露試験が最も好ましいが、高耐食性めっきは評価に時間を要するため、腐食促進試験における耐食性評価を実施する。塩水噴霧試験や複合サイクル腐食試験における白錆発生状況、赤錆発生状況を判断し耐食性を評価する。
めっき層のアルカリ耐食性を評価する場合は、pHバッファ装置で管理された苛性ソーダ、もしくはアンモニア水中にめっき鋼板を浸漬して、所定時間経過後の腐食減量を評価する。
めっき層の耐衝撃に対する密着性は、めっき鋼板表面に鋼球を衝突させるボールインパクト試験や、デュポン試験等で評価する。衝撃後、めっき層衝撃部へテープ剥離試験を実施してめっき剥離量を目視で判断する。
以上説明したように、本実施形態の浸漬めっき鋼材によれば、優れた高耐食性を発揮できる。
本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例A)
製造した浸漬めっき鋼材は表1A〜表1Fのとおりである。浸漬めっき鋼材のZn−Mg−Al合金層の組成は、建浴しためっき浴成分にほぼ一致する。めっき浴に使用した合金は、真空溶解炉等で純金属を混合した所定成分組成の合金を使用し、この合金(16リットル相当)を溶解して調製した。めっき合金の組成は、ICP発光分光分析、Zn−Mg−Al層の成分は、GDS分析の定量分析にて成分を測定した。
浸漬めっきの基材としては、板厚2.3mmの普通鋼板を使用した。基材の裏面中心部にスポット溶接でK−type熱電対を溶接し、溶接点周囲にセラミックコートした後、酸洗防止用のテープシールをして、浸漬めっき中の温度モニタリングを実現できるように基材を細工した。
一部の基材についてはフラックス処理を行った。フラックス処理は、酸洗済み鋼板を80℃の熱水洗浄を行った後、フラックスZnCl/NaCl/SnCl・HO=215/25/5(g/L)に1分浸漬して、150℃で乾燥させた。
また、一部の基材として、Zn付着量片面60g/mの電気亜鉛めっき鋼板を使用した。
表1A〜表1Cに、原板種別が、表面清浄のみ、フラックス処理、めっき鋼板のいずれかであることを明示した。
フラックス処理済みの鋼材またはZnめっき鋼材を使用しない場合、すなわち、表面清浄のみ実施する鋼材については、基材の表層に生成する強固な酸化被膜を、10%塩酸に10分以上浸漬することで剥離し、十分に、水切りした後、熱電対周囲のテープシールを剥離して、濡れたままでめっき浴へ基材を浸漬した。浸漬時間、引き上げ速度、冷却速度等、詳細な製造条件は表1A〜表1F及び表2A〜表2Cに記載の通りである。このようにして、No.1〜No.71の浸漬めっき鋼材を製造した。
なお、めっき浸漬中は、手動で、めっき浴内で上下に振動させた。浸漬中発生する表面ドロスは直ちに取り除いた。
No.1〜No.71の浸漬めっき鋼材について、めっき層を樹脂に埋め込み、めっき層の断面観察を実施して、Al−Fe合金層の厚み、Zn−Mg−Al合金層厚みを測定した。さらにEPMAマッピング像を作製して、めっき層中の各相の断面面積率を測定して、これを相別の体積分率とした。これらの数値の測定に際しては、同じめっき鋼板から、3サンプル採取し、3視野の平均値を採用した。Zn−Mg−Al合金層、Al−Fe合金層の成分把握には、GDSによる深さ方向の成分分析値を採用した。GDSの成分分析の把握には、同めっき鋼板で5箇所からの平均値を採用した。
白錆発生は、JASO M−609−91に準拠した複合サイクル腐食試験(CCT)によって評価した。具体的には、製造しためっき鋼板を用いて、15サイクル経過後の白錆発生率を測定した。白錆発生率は、めっき層腐食評価面を2値化し、未腐食部分と白錆部分が分離できる閾値を決め、画像処理ソフト等を使用して白色部の面積率を測定した。評価基準は以下の通りとした。結果を表2A〜表2Cに示す。
<評価基準>
AAA:白錆発生面積率が全面積の5%未満
A:白錆発生面積率が全面積の5%以上20%未満
B:白錆発生面積率が全面積の20%以上
浸漬めっき皮膜の耐食性は、JASO M−609−91に準拠した複合サイクル腐食試験(CCT)によって評価した。120サイクルでのZn−Mg−Alめっき層の腐食減厚を評価し、7μm未満のものを「AAA」、7〜10μmのものを「AA」、10〜14μmを「A」、14μm以上、もしくは赤錆発生が確認されたものを「B」とした。
CCT試験で、初期白錆、かつ耐食性に優れたサンプル、ともに「A」以上の評価が得られたものについて、さらにAl−Fe合金層の耐食性を評価した。
Al−Fe合金層の耐食性については、断面組織から判定したZn−Mg合金層をエンドミル加工で取り除いてFe−Al層を露出させ、JIS Z2371:2000に準拠した塩水噴霧試験(SST:Salt Spray Test)によって評価した。浸漬めっき鋼材の平面部に初めて点状の赤錆が発生する時間(AlFe相の溶解開始時間)から、めっき層全面が赤錆に覆われるまでの試験経過時間を調査した。点状の赤錆から、赤錆全面に覆われるまでの時間が200時間未満のものは、「B」、200〜500時間のものは、「A」、500時間のものは、「AAA」とした。
アルカリ耐食性はpHバッファ装置で管理されたNaCl溶液中にめっき鋼板を浸漬して、所定時間経過後の腐食減量を評価した。5%NaCl水溶液(2L)中、(苛性ソーダ調整 pH13)に、長さ3cm撹拌子を100rpmで回転させた水中で、端面シールされためっき鋼板を24時間浸漬し、めっき鋼板の重量減を測定した。
腐食減量が40g/m以上のものは、「B」、
腐食減量が、10〜40g/mのものは、「A」
腐食減量が、10g/m未満のものは、「AAA」とした。
浸漬めっき皮膜の密着性はJIS K 5600−5−3に規定されるデュポン衝撃試験にて評価した。衝撃性を高めるため、2.3mm材の片面を研削し、0.8mm板とした。落下錘1000g、落下高さ500mm、撃ち型・受け台半径6.35mmとした。衝撃部においてテープ剥離を実施し、評価基準は以下の通りとした。結果を表2A〜表2Cに示す。
<評価基準>
AAA:剥離なし
A:粉状の付着があるが、剥離部は1cm未満
B:衝撃部からの1cm以上の剥離部有
表1A〜表1F及び表2A〜表2Cに示すように、実施形態のめっき鋼材は、耐食性、初期白錆の抑制効果、アルカリ耐食性等について、優れた効果を示すことがわかる。
また、図1には、実施例20のZn−Mg−Al合金層の電子顕微鏡による断面写真を示す。また、図2には、実施例17のZn−Mg−Al合金層の電子顕微鏡による断面写真を示す。また、図3は、図2の枠内における電子顕微鏡による断面写真の拡大像である。
図5は、図2のAl−Fe合金層の電子顕微鏡による断面写真の拡大像である。
図1における符号1はZn−Mg−Al合金層であり、符号2はAl−Fe合金層である。図1に示す実施例20のめっき鋼材は、Al−Fe合金層よりも層厚が厚いZn−Mg−Al合金層めっき層を有していることがわかる。
また、図2において鋼板上に形成された層がAl−Fe合金層であり、Al−Fe合金層上に形成された白色の層がZn−Mg−Al合金層である。図2に示す実施例17のめっき鋼材は、Zn−Mg−Al合金層よりも層厚が厚いAl−Fe合金層めっき層を有していることがわかる。また、図4には、図3の拡大写真における矢印3に示す位置でのTEM電子線回折像を示す。図4の結果から、実施例17のZn−Mg−Al合金層には、準結晶相が析出されていることがわかる。図5はAl−Fe合金層(灰色)であり、地鉄から供給されたFeと未反応だったZn−Mg−Al合金層が結晶粒界に少量残存していることがわかる。
一方、表1A〜表1F及び表2A〜表2Cに示す比較例では、耐食性、初期白錆の抑制効果、アルカリ耐食性等の各評価項目において、「B」評価が3つ以上になっており、実施例に比べて耐食性が劣ることがわかる。
前述したように、本発明によれば、主に、建材分野で使用されてき浸漬めっき鋼材を代用することが可能であり、既存の表面処理鋼板よりも部材の長寿命化を実現することができる。よって、本発明は、産業の発展に寄与するものである。
1 Zn−Mg−Al合金層
2 Al−Fe合金層
3 電子線照射位置

Claims (6)

  1. 鋼材表面に、Al−Fe合金層とZn−Mg−Al合金層とを含むめっき層が備えられ、
    前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、AlFe合金相を含み、平均組成がFe:30〜48質量%、Al:50〜65質量%、Zn:2〜10質量%、及び不可避不純物を含有して、平均厚さが1μm以上、500μm以下であり、
    前記Zn−Mg−Al合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、その平均組成が、Zn:11〜80質量%、Mg:8〜45質量%、Al:3〜80質量%であり、また、添加選択元素の組成が、質量%で、
    Ca:0〜5%、
    Y :0%〜3.5%、
    La:0%〜3.5%、
    Ce:0%〜3.5%、
    Si:0%〜3.5%、
    Ti:0%〜0.5%、
    Cr:0%〜0.5%、
    Co:0%〜0.5%、
    Ni:0%〜0.5%、
    V :0%〜0.5%、
    Nb:0%〜0.5%、
    Cu:0%〜0.5%、
    Sn:0%〜0.5%、
    Mn:0%〜0.2%、
    Sr:0%〜0.5%、
    Sb:0%〜0.5%、
    Pb:0%〜0.5%であり、下記式1及び下記式2を満たし、ただし、下記式1はY、La、Ceの1種または2種以上が含有される場合であり、
    かつ、体積分率で5%以上の準結晶相を含有し、その平均厚さが5μm以上、100μm以下であることを特徴とするめっき鋼材。
    Ca+Y+La+Ce≦3.5 …式1
    Ti+Cr+Co+Ni+V+Nb+Cu+Sn+Mn+Sr+Sb+Pb≦0.5% …式2
    ただし、式1及び式2における元素記号は、それぞれの元素の含有率(質量%)である。
  2. 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:11〜72質量%、Mg:10〜35質量%、Al:5〜67質量%の成分組成条件を満たし、かつ、前記準結晶相の体積分率が30%以上であることを特徴とする請求項1記載のめっき鋼材。
  3. 前記Zn−Mg−Al合金層中の、準結晶相、MgZnおよびMgZnの合計の体積分率が75%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のめっき鋼材。
  4. 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:35〜70質量%、Mg:15〜23質量%、Al:13〜42質量%、Ca:1.4〜3質量%の成分組成条件を満たし、かつ、前記準結晶相の体積分率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のめっき鋼材。
  5. 前記Zn−Mg−Al合金層は、平均組成が、Zn:11〜40質量%、Mg:8〜22質量%、Al:45〜80質量%の成分組成条件を満たし、かつ、Al相の体積分率が50%以上であり、前記準結晶相と前記Al相の合計の体積分率が75%以上あることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のめっき鋼材。
  6. 前記Al−Fe合金層の平均厚みが、100〜500μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のめっき鋼材。
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