JP6787002B2 - Al−Mg系溶融めっき鋼材 - Google Patents

Al−Mg系溶融めっき鋼材 Download PDF

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本発明は、耐食性及び加工性に優れたAl−Mg系溶融めっき鋼材に関する。
建材分野では、多種多様な溶融めっき鋼板が利用されている。その多くは、Zn系めっき鋼板であるが、近年、Zn系めっき層中に、Alを添加し、耐食性を向上した溶融めっき鋼板の利用が始まっている。長寿命化が望まれる建材分野では、さらなる高耐食性技術が求められており、さらにMgを添加し、高耐食化を実現しためっき鋼板として特許文献1や特許文献2に開示されるめっきも開発されている。
本発明者らは、以前より、Mgを高い濃度で含むZn−Al系溶融めっきを検討している。このようなめっきは、従来にない高い耐食性を発揮できるものとして期待されている。Mgを高い濃度で含む溶融めっき鋼材が実現できれば、従来、高耐食性が重視され溶融めっき鋼材が適用できなかった分野まで、適用できる可能性が高まった。このような環境の一例として、海浜地区での溶融めっき鋼材の使用がある。
海浜地区で使用される溶融めっき鋼材のめっき表面には、海洋性由来の塩化物が多く付着することから、従来、高耐食化したAl含有のZnめっき層であっても、めっき表層にあるアルミナ皮膜が塩化物の付着によって不安定になるため、このような環境で用いることは困難であった。Mgを高濃度で含有する場合、耐食性が向上するため、このような環境においても使用することができるといえる。
一方、高耐食性めっき鋼材は、めっき層中に耐食性元素が含有されるため、これらの元素とZnまたはAl等との合金化による金属間化合物の生成が進行し、その結果、めっき層の硬質化と延性の低下を招き、複雑な加工時にはめっき層が剥離するパウダリング、フレーキング現象の可能性が高まっている。建材分野においても、ベント曲げ、ロールフォーミング等、様々な加工がめっき鋼材に施されるが、パウダリング、フレーキングが発生すると、めっき鋼材の適用分野を制限してしまう。
パウダリング、フレーキング現象を回避するためには、めっき層の軟質化や延性向上を図るために、めっき層中に延性に優れた相を導入することが必要である。通常、これらを実現するためには、純金属に近い、単純金属相でめっき層が構成されることが好ましい。しかし、これらの相の導入は、これまで実施されてきた元素添加による高耐食化技術の流れに逆行し、一般的に耐食性は悪化する方向になる。
したがって、これまで溶融めっき鋼材において、極めて優れた耐食性と、加工性を両立する溶融めっき鋼材は実現されていなかった。
特開2008−255464号公報 特開2009−91652号公報
本発明が解決しようとする課題は、耐食性及び加工性を飛躍的に向上させたAl−Mg系溶融めっき鋼材を提供することである。
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討したところ、めっき層中に準結晶相を多量に含有させることで、従来、溶融めっきでは得られなかった耐食性が発現されることを見出した。
一方、準結晶相は加工性が低いため、準結晶相を含有する溶融めっき層において加工性を高めるためには、めっき層中にAl相を導入させて、準結晶相及びAl相を含む共晶組織をめっき層中に形成させることにより、めっき層の加工性が高まることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。
(1) 鋼材と、前記鋼材の表面に配されたAl−Fe合金層及びAl−Mg合金層を含むめっき層とが備えられ、
前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、厚さが100nm以上15μm以下であり、
前記Al−Mg合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、平均円相当径が1μm超の準結晶相と、前記準結晶相内に分散した結晶粒径2μm以下のAl相とを含む共晶組織が5体積%以上含有され、
前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、質量%で、
Zn:5%〜83%、
Mg:2.5%〜35%、
Ca:0%〜5%、
Y :0%〜3.5%、
La:0%〜3.5%、
Ce:0%〜3.5%、
Si:0%〜10%、
Cr:0%〜2.5%、
Ti:0%〜2.5%、
Ni:0%〜2.5%、
Co:0%〜0.5%、
V :0%〜0.5%、
Nb:0%〜0.5%、
Cu:0%〜2.5%、
Sn:0%〜2.5%、
Fe:0%〜3%、
Mn:0%〜2.5%、
Sr:0%〜0.5%、
Sb:0%〜0.5%、
Pb:0%〜0.5%
を含有し、Ca+Y+La+Ce≦5を満たし、残部がAl及び不純物からなるAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(2) 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜65%、
Mg:2.5%〜30%、
Ca:0.1%〜3%、
Y :0%〜3%、
La:0%〜3%、
Ce:0%〜3%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で70体積%以上含む(1)に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(3) 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜58%、
Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で85体積%以上含む(1)または(2)に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(4) 前記Al−Fe合金層の厚みが5μm以下である(1)乃至(3)の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(5) 前記Al−Mg合金層の硬度が100Hv以上である(1)乃至(4)の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
本発明によれば、耐食性及び加工性に優れたAl−Mg系溶融めっき鋼材を提供できる。
本発明の実施形態であるAl−Mg系溶融めっき鋼材に含まれる準結晶相より得られる電子線回折像である。 本発明の実施形態であるAl−Mg系溶融めっき鋼材のめっき層断面の光学顕微鏡写真である。 本発明の実施形態であるAl−Mg系溶融めっき鋼材のめっき層断面の光学顕微鏡写真である。 本発明の実施形態であるAl−Mg系溶融めっき鋼材のめっき層断面の電子顕微鏡による反射電子像である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のAl−Mg系溶融めっき鋼材(以下、めっき鋼材という)は、鋼材と、鋼材表面に形成されためっき層とからなる。鋼材表面に形成されためっき層は、厚さ100nm以上15μm以下のAl−Fe合金層と、厚さ2μm以上50μm以下のAl−Mg合金層とを含む。
めっき層全体の厚みの上限は例えば60μm以下である。めっき層の厚みはめっき条件に左右されるため、めっき層全体の厚みの下限については特に限定されるものではないが、例えば、通常の溶融めっき法はめっき浴の粘性、比重が関連し、さらにめっき部材の引上速度、ワイピングの強弱によって目付調整されるため、下限は2μm程度である。
すなわち、本実施形態のめっき鋼材のめっき層は、Al−Fe合金層及びAl−Mg合金層の2層構成である。以下、鋼材及びめっき層について順次説明する。
めっきの下地となる鋼材は、材質に特に制限はない。詳細は後述するが、一般鋼、Niプレめっき鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼材に対して後述する溶融めっき法を適用することで、Al−Fe合金層及びAl−Mg合金層を含むめっき層が形成される。
Al−Fe合金層は、鋼材表面に形成されており、組織としてAlFe相が主に含まれる。Al−Fe合金層は、地鉄、めっき浴の相互の原子拡散によって形成される。めっき浴中に一定濃度以上のAlが含有されることからAlFe相が最も多く形成するが、原子拡散には時間がかかり、また、地鉄に近い部分では、Fe濃度が高くなる部分もあるため、部分的には、AlFe相が少量含まれる場合があり、また、Al−Mg合金層に近い部分ではAlFe相が少量含まれる場合もある。また、めっき浴中にZnも一定濃度含まれることから、Al−Fe合金層にはZnも少量含有される場合がある。プレめっき鋼板をめっき原板として利用した場合も、プレめっき元素が少量含有される場合がある。なお、AlFe相、AlFe相、AlFe相の耐食性は大差がない。めっき層中に占めるAl−Fe合金層の厚みは小さく、またAl−Mg合金層と比較しても耐食性は低いため、全体における耐食性差は、これらの相の比率が代わったとしても大差がない。
Al−Fe合金層の化学成分は、AlFe相がAl−Fe合金層に主に含まれることから、平均組成がFe:30〜50%、Al:50〜70%、0%超5%以下のZnと不可避不純物とされる。本実施形態では、界面合金層であるAl−Fe合金層の厚みよりもAl−Mg合金層の厚みが大きくなるので、Al−Fe合金層の耐食性への寄与は、Al−Mg合金層と比較すると小さくなるが、Al−Fe合金層は耐食性元素であるAl及びZnを一定濃度以上含有することから、地鉄に対して犠牲防食能と腐食バリア効果はある程度有している。プレめっき鋼板をめっき原板として利用した場合は、溶融めっき後も、めっき原板にプレめっき元素が残存し、地鉄との界面付近にて、Al−Fe合金層に少量のプレめっき元素が検出される場合があるが、Fe元素と置換する固溶状態として存在し、Al−Fe合金層に占める厚みも濃度も極めて低いため、犠牲防食能やバリア効果に影響を与えるものではない。
Al−Fe合金層の正確に成分を把握するためには、あらかじめ成分確定した合金にて高周波グロー放電発光分光分析装置(GDS)で定量分析用の検量線を作成し、対象とするめっき層の深さ方向の元素強度分布を把握して成分濃度を決定する。例えばφ5mmのGDS分析にて、深さ方向の成分強度がほぼ平坦になる場所の成分を把握し、5箇所以上の測定結果から、その平均値を採用すれば良い。GDSによる成分把握はAl−Fe合金層に加えて、上層のAl−Mg合金層にも適用可能であるが、正確な成分測定には一定以上の厚み、例えば1μm以上が必要な場合が多い。1μm未満の場合は、EPMAや、TEM−EDS分析の定量分析の方が正確な値が得られる場合が多い。
Alを含有する溶融めっき層を作製すると、必然的に界面合金層としてのAl−Fe合金層が形成する。Al−Fe合金層の厚みの下限値は特に制限するものでないが、本実施形態では、界面合金層の形成が最も抑制された場合の厚みが100nm程度になるので、100nmを下限とする。Al−Fe合金層が100nm以上あれば、めっき層と地鉄との密着性を十分に確保できる。
一方で、Al−Fe合金層の厚みの上限は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましい。腐食防止の観点からは、Al−Fe合金層は厚い方が好ましいが、厚すぎるAl−Fe合金層は著しくめっき層の加工性を劣化させる原因となる。また、Al−Fe合金層が厚くなると、Al−Fe合金層上に形成するAl−Mg合金層のAl成分が不足し、さらに、めっき密着性、加工性が極端に悪化する傾向になる。よって、Al−Fe合金層の厚みの上限は上記の範囲がよい。特に、厚みを5μm以下にすることで、V曲げ試験等において発生するAl−Fe合金層を起点に発生するめっきのクラック数が減少させることができる。
Al−Fe合金層は、一度形成すると、V曲げ試験等においてめっき層が線上に剥離するフレーキングを引き起こしやすい。後述するが、加工性の乏しい初晶準結晶相がAl−Mg合金層中に存在することによるめっき層の剥離よりも、Al−Fe合金層等に起因する界面を起点とする剥離は、抑制しづらい。これは部分的に存在する初晶準結晶に対して、界面合金層がめっき層全面に形成されているため、パウダリング量がやや多くなる傾向にあるためである。従って、パウダリングを回避するためには、Al−Fe合金層を薄くすることが欠かせない。
次に、Al−Mg合金層について説明する。Al−Mg合金層は、Al−Fe合金層の上に積層され、平均円相当径が1μm超の準結晶相と準結晶相内に分散した結晶粒径2μm以下のAl相とを含む共晶組織が5体積%以上含有されている。
Al−Mg合金層中に、準結晶相及びAl相からなる共晶組織が形成されるためには、Al−Mg合金層の化学成分組成が、質量%で、Zn:5%〜83%、Mg:2.5%〜35%、を少なくとも満たす必要がある。残部はAl及び不純物である。この組成範囲外の組成は、基本的に準結晶が得られにくい組成であり、さらにめっき層が硬質となりやすい組成であるか、融点が非常に高く、めっき剥離が非常に起こりやすく溶融めっきとして適さない組成範囲である。Al、Mg、Znは準結晶を構成する元素であるから、必ず所定の量をAl−Mg合金層に含有させる必要がある。本実施形態に開示する組成範囲で、適切な製造条件で溶融めっきを製造することで、準結晶相及びAl相を含む共晶組織を5%以上、Al−Mg合金層中に含有させることができる。共晶組織に準結晶相が含有されるため、共晶組織が5%以上体積分率で含まれれば、準結晶相は少なくとも半量以上の3%は含有されることになる。上記組成範囲外になると、Al−Mg合金層に準結晶相以外の金属間化合物が増えて準結晶相と同じように加工性が劣位になる傾向にある。
<Zn> 5〜83%
Al−Mg合金層における耐食性の付与、準結晶の形成、および、Zn系一般塗料や化成処理に対しての適性が必要であるため、Zn濃度は5〜83%とする。Znが5%未満となると、耐食性を悪化させるMg相が析出しやすくなる。耐食性を向上させるためには、準結晶相の析出が不可欠であり、Zn濃度が低くなると、準結晶の成長が鈍くなる。また、過度の犠牲防食能が働くMgやMg51Zn20相が必要以上に形成しやすい組成となり、各種Zn系塗料、化成処理との相性が悪くなる。従ってZn量の下限値は5%以上とする。逆にZn量が83%を超えると、めっき層中にZn相が析出しやすくなり、アルカリ耐食性が極めて悪くなる。また準結晶が殆ど形成しなくなる。よってZnの上限値は83%以上とする。Zn量のより好ましい範囲は5〜65%であり、更に好ましい範囲は5〜58%である。めっき層の耐食性、加工性の観点からは、めっき層中のZn濃度はAl濃度を超えない範囲で高い方が好ましい傾向にある。
<Mg> 2.5%〜35%
Mgは、準結晶の形成に大きく関係する元素である。Mgが2.5%未満では準結晶相を十分に形成させることが困難になる。また、準結晶相の形成条件は、Mg濃度の他、Al濃度、Zn濃度、Ca、Y、La、Ce濃度と特に関係性がある。一般的に準結晶相の形成は後述するFrank−Kasper相の形成領域と強い関連性があるため、Al濃度が高ければ高い程、Mg濃度は小さくとも準結晶相が形成しやすくなるが、Zn濃度が高くなると、Mg濃度が多く必要となる。またCa、Y、La、CeはMgと準結晶相中で置換するため、Mgの代用として活用することも可能である。本発明者らは経験的に、Al濃度が90%以上では、濃度成分の合計値([Mg濃度]+[Ca,Y,La,Ce濃度])が2.5%以上、Al濃度が80〜90%では5%以上、Al濃度が80〜50%では9%以上、50%未満では10%以上をそれぞれ満たさないと、準結晶相は得られず、本発明にかかるめっき層の構成を形成することができないことを知見した。
一方、Mgが35%を超えると、めっき浴中にドロスが大量に発生してめっきが困難になる。Mg量のより好ましい範囲は2.5〜30%であり、更に好ましい範囲は2.5〜25%である。また耐食性、加工性の観点から準結晶相の割合が一定以上必要で、共晶組織を増加させる、即ちAl初晶を減らす必要があり、Mgを10%以上とすることが好ましい。ただし、この場合はAl濃度を80%未満とした方がより好ましい。成分組成的には、めっき層中のMg濃度は、Al及びZnの濃度を超えない範囲で高い濃度であることが好ましい。
<Al> 残部
Alは、Al−Mg合金層の化学成分の残部であるが、Al−Mg合金層中のAlは、耐食性を付与する準結晶の形成に大きく関係する元素である。Alが少ないと、MgZnが多量に形成し、相対的に準結晶相が得にくくなる。また、Alが過剰になると、Al系金属間化合物が形成してアルカリ耐食性、Zn系塗料との相性が悪くなる傾向にある。従って、残部となるAlは、1%以上含まれることが好ましく、40%以上含まれることがより好ましく、55%以上含まれることが更に好ましい。Alが40%以上含まれると、初晶としてAl相が析出しやすい条件となり、加工性が向上するためで、Alが55%以上になるとその効果は顕著となる。但し、前述の通りめっき層中にAlが過剰に存在するとAl系金属間化合物が形成されるためアルカリ耐食性の低下や、Zn系塗料との相性が悪くなる傾向が認められることから、めっき層中のAl濃度は75%以下とする事が好ましく、65%以下とする事がより好ましい。
Al−Mg合金層中に十分な量の共晶組織を形成するためには、Al濃度が8.2%以上にする必要がある。さらに好ましくは16%以上とした方が好ましい。Al濃度が低い場合で共晶組織が得られる場合も、16%未満では、Znが70%以上存在するか、もしくは、Mgが20%以下を満たすことが必要で、Zn、Mg両方の成分条件を満たすことが好ましく、限られた組成範囲でしか共晶組織は得られない。
なお、初晶Al相は、共晶組織中に微細なAl相が十分に含有された後、形成するため、初晶Al相を得るためには、Alは40%以上必要である。
また、溶融めっき法によりめっき鋼材を製造した場合は、Al−Mg合金層中に不可避的不純物としてFeがAl−Fe合金層近傍で最大3%程度、混入しうる場合もあるが、めっき表面にまで拡散するFeはほとんどないため、Al−Mg合金層の性能には影響を与えない。
また、Al−Mg合金層中に、添加選択元素として、Ca:0〜5%、Y:0%〜3.5%、La:0%〜3.5%、Ce:0%〜3.5%のうちの1種または2種以上を含有させてもよい。ただし、Ca+Y+La+Ce≦5%を満たす必要がある。
<Ca>0〜5%
CaはAlと同様に準結晶の形成に大きく影響を与える元素である。CaはMgと原子半径が近いことから、準結晶相中でMgの位置に置換する。Caは添加しなくても準結晶相は形成できるが、好ましくは0.1%以上は添加するとよい。また、Caが5%を超えると、耐食性が劣る金属間化合物相が形成する。また、めっき層の凝固時の冷却速度が速い場合は、非平衡相の一種であるアモルファス相が形成する。さらに、平面耐食性、Zn系塗料に対しての適性も低下する傾向にある。よって、Caの上限濃度を5%以下とする。
<Y:0%〜3.5%、La:0%〜3.5%、Ce:0%〜3.5%>
これらの元素は、原子半径が比較的Ca原子に近く、効果もCaと同等の効果があると推定される。一方、比重、融点、およびZn、Mgの相性からCaと同等量に添加するとめっき浴においてドロスの形成量が多くなり、めっき鋼板の作製が困難となる。その結果、耐食性が極めて悪化する。従ってこれらの元素の上限濃度は3.5%以下とする。より好ましくは、それぞれ1〜3%である。
特に、より厳しい加工で、良好の加工性を達成するためには上述のAl−Fe合金層の厚みを制御する必要がある。さらに、Al−Mg合金層中で、Al相の比率を高め、AlCa、AlZnCa、AlZnCa等の析出を抑制する必要もある。従って、Ca、La、Ce等の成分濃度は3%以下に制限した方が好ましい。
上記のように、Ca、Y、La、Ceがめっき層中に含有されることで、準結晶相がより形成されやすくなる。一方、Ca濃度が高い場合や、Ca、Y、La、Ceの濃度の合計が高い場合は、準結晶相が途端に形成しなくなる。また、Y、La、Ceが上限値を超えると、準結晶相が形成しにくくなり、めっき自体の性能に悪影響を及ぼすおそれがあるので好ましくない。
また、Al−Mg合金層中に、添加選択元素として、Si:0%〜10%、Cr:0%〜2.5%、Ti:0%〜2.5%、Ni:0%〜2.5%、Co:0%〜0.5%、V:0%〜0.5%、Nb:0%〜0.5%、Cu:0%〜2.5%、Sn:0%〜2.5%、Mn:0%〜2.5%、Sr:0%〜0.5%、Sb:0%〜0.5%、Pb:0%〜0.5%のうちの1種または2種以上を更に含有させてもよい。
<Cr:0%〜2.5%、Ti:0%〜2.5%、>
Ti、Crは、めっき層に準結晶相を好ましく生成させるために必要に応じて含有されてもよい。微量のTi、Crがめっき層に含有されると、準結晶相が生成しやすくなり、準結晶相の構造が安定化すると考えられる。
<Si>
Siは、10%以下の濃度でめっき層に含有されると、Ti、Crと同じ様に準結晶相が生成しやすくなる事が確認されている。また、0.1%を超えて添加されると、Al−Fe合金層の成長が鈍化する事が確認されており、めっき層にSiを含有させることはめっき加工性に悪影響を及ぼすAl−Fe合金層を抑制する有効な手段である。
しかし、Siはめっき浴中に含有されるMgや、Ca、Y、La、Ceと金属間化合物を形成し、析出しやすい。例えば、CaSi、(Ca,La)Si等は、めっき層中でCaとSiが結合して形成する金属間化合物の代表例である。さらには、AlCa、AlZnCa、AlZnCa等の金属間化合物にも少量であるがSiは固溶する傾向にある。そして、これらSiを含有する金属間化合物は、めっき層に含有される物質内で最も活性であるため、高湿度環境や塩分飛来環境下でめっき層の色変化(黄変、黒変)の原因となりやすい。このため、外観品位に優れた製品を提供するためにはSiを添加しない方が良い。完全にこれらの現象を回避する場合は、厳しく濃度を制限する方が好ましく、0.01%未満まで濃度管理することが好ましい。
また、Si添加濃度が5%を超えると、めっき浴中にボトムドロスが形成しやすくなり、操業性が低下する場合がある。操業の観点からは、Si濃度は5%以下、さらに好ましくは1%未満がよい。
以上述べたように、めっき鋼材に特に加工性が要求される場合は、Al−Fe合金層の成長を抑制するために、Al−Mg合金層中のSi量を10%以下にすることが好ましく、操業性を高めるためにはSi量を5%以下にするとよい。Siを添加する場合の下限は、0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましい。
また、めっき鋼材のめっきの性能の観点、即ち耐食性、加工性、耐変色性及び操業性を全てバランスよく満足させる観点からは、Si濃度は0.01%未満に管理する事が好ましい。
<Ni:0%〜2.5%、Co:0%〜0.5%、V:0%〜0.5%、Nb:0%〜0.5%、Cu:0%〜2.5%、Sn:0%〜2.5%>
Co、Ni、V、Nb、Cu及びSnは、上述のSi、Ti、Crと同様に、準結晶の安定生成に効果のある元素である。準結晶の生成に効果のある元素だが、詳細な研究の結果、Si、Ti、Cr等の元素の効果とは異なる添加効果があることが判明した。これらの元素がめっき層中に添加されると、Fe元素のめっき層への拡散が極端に抑制される。これらの元素は、主に鋼材とめっき層との界面付近でAlFe金属間化合物に固溶する傾向にある。同時に、Fe11Zn40という金属間化合物が形成しやすくなる。その結果、界面合金層としてのAl−Fe系金属間化合物の形成が抑制され、めっき層中のAl成分の減少など、めっき層中の準結晶相の形成を阻害する要因が減少する。耐食性、準結晶相の形成に良い影響を与えない界面合金層の形成が抑制されることから、めっき層本来の耐食性が発揮される。SST試験等で、通常、界面合金層の厚みが小さい方が、赤錆発生時間が長くなる傾向にある。
これらの元素の添加方法には、予め原板となる鋼板に電気めっきや蒸着にてプレめっきしておき、めっき層の形成時にめっき層中に取り込ませる方法と、めっき浴中へのこれら元素を添加する方法がある。Ni、Coなどの高融点金属は、界面付近に多くが残留してしまうが、一般的にプレめっきした方がめっき層中にやや多く取り込まれる傾向にあり、界面合金層の形成の抑制効果も高い。界面付近に濃縮した場合でかつ、めっき層を6μm以下にした場合は、0.5%〜1.0%程度となり、0.5%を超える場合もあるが、多くは界面付近に濃縮しており、めっき層主層から検出されるNi濃度は、0.5%未満であることが多い。一方、CuやSn、微量のNb等は、めっき浴への添加でも容易に溶解し、比較的めっき層中に取り込まれやすく、界面合金層の抑制効果もみられる。
<Mn:0%〜2.5%>
めっき鋼材の母材である鋼材として、近年、高張力鋼(高強度鋼)が使用されるようになってきた。高張力鋼を使用してめっき鋼材を製造した場合、高張力鋼に含まれるSi、Mn等の元素が、めっき層中に拡散することがある。SiおよびMnのうち、Mnは、Siが有する上述した効果を有さない。しかし、2.5%程度のMnがめっき層に含有されても、準結晶の生成挙動や、めっき層の耐食性に対して影響を与える可能性は小さい。よって、めっき層のMn含有量を0%〜2.5%としてもよい。
<Sr:0%〜0.5%、Sb:0%〜0.5%、Pb:0%〜0.5%>
Sr、Sb、Pbは、めっき外観を向上させる元素である。この効果を得るために、めっき層のSr含有量を0%〜0.5%とし、Sb含有量を0%〜0.5%とし、Pb含有量を0%〜0.5%としてもよい。Sr含有量、Sb含有量、およびPb含有量が上記範囲である場合、耐食性への影響はほとんどない。
次に、Al−Mg合金層を構成する組織について説明する。
本実施形態に開示した成分組成において、Al−Mg合金層を構成する組織は、以下のものが確認されている。すなわち、初晶Al相、初晶準結晶相、準結晶相及びAl相を含む共晶組織である。また、選択元素の種類によって、AlCa、AlZnCa、AlZnCa等が含まれる場合がある。更に、微量に含有される相として、MgZn相、MgZn相(文献によっては、MgZnと表記される場合もあるが、同一物質として扱う。)Mg51Zn20相、Mg相、MgZn相等がある。
準結晶相は、準結晶を含む相である。準結晶は、1982年にダニエル・シュヒトマン氏によって初めて発見された結晶構造であり、正20面体(icosahedron)の原子配列を有している。この結晶構造は、通常の金属、合金では得られない特異な回転対称性、例えば5回対称性を有する非周期的な結晶構造で、3次元ペンローズパターンに代表される非周期的な構造と等価な結晶構造として知られている。この金属物質を同定するためには、通常、TEM観察による電子線観察によって、対象相から、正20面体構造に起因する放射状の正10角形の電子線回折像を得ることで確認される。例えば、図1に示す電子線回折像は、準結晶からのみ得られ、他のいかなる結晶構造からも得ることができない。
また、本実施形態に開示した成分組成から得られる準結晶相は、化学組成的には、簡易的に、Mg32(Zn、Al)49相として定義されるもので、Zn、Al比率に広がりがあり、X線回折により、JCPDSカード:PDF#00−019−0029、又は、#00−039−0951で同定できる回折ピークを示す。Frank−Kasper相と呼ばれる場合もある。36.3〜8°付近に回折ピークが観察されることが多い。
準結晶の正20面体の結晶構造の形成には、同じくクラスターを有する菱型多面体構造をもつMg32(Zn、Al)49相の形成が影響しているとされる。準結晶相の20面体の結晶構造は3種類以上の結晶構造、例えば、マッカイクラスター、バーグマンクラスター、蔡クラスター型等の報告があり、その結晶構造については現在も研究中である。また、Mg32(Zn,Al)49相は、準結晶研究の初期から準結晶と同じ、近似結晶であることが指摘され、形成時の冷却方式により、部分的にクラスター構造が変化して上記に示す異なる20面体構造を取り得る。本発明における準結晶相の定義とは、近似結晶を指し、準結晶と同等のクラスター構造を有した物質も含め、Mg32(Zn、Al)49相からの変異体と定義する。粗大で数10μm以上の大きさで正20面体構造を取るものも得られれば、数nmの部分的にしか得られない場合もあり(すなわち、1つの結晶相を取り上げても図1の電子線回折像がいかなる場所からも得られる場合もあるが、Mg32(Zn、Al)49相の電子線回折像が得られ、図1の像が部分的にしか得られない場合もある)、準結晶相と近似結晶の区別は明瞭に定義することが現在は区別することが技術的に不可能である。Mg32(Zn、Al)49相中に準結晶相が含まれると推定されるが、部分的に準結晶を切り出すことが困難であり、一方、本発明における準結晶相に関わる性質は、クラスター構造に起因した特異な結晶構造に発現をもとにしていると推定され、近似結晶であるMg32(Zn、Al)49相も、準結晶も同質と扱うことが可能である。このため、簡易的には、XRDで近似結晶のMg32(Zn、Al)49相を探し、準結晶と同性能が得られる可能性を得て、より詳細に準結晶構造を探索する場合は、TEMで対象の結晶相の結晶構造を詳細に探索すれば良い。
また、その結晶構造から、準結晶は非常に硬質な物質であり、準結晶相自体の硬度は350〜450Hvと考えられ、めっき層はその含有量の増加とともに硬質になるため、本実施形態のめっき層のめっき硬度は100Hv以上となり、より詳しくは、およそ120〜450Hvの範囲となる。準結晶相を多量に含有すると、めっき層の塑性変形能が急速に失われる。従って、塑性変形能を維持するために、本実施形態に係るAl相を含む共晶組織のような軟質な組織をめっき層に導入する必要がある。
めっき層中に準結晶相が含有されると、めっきの腐食抵抗が増大し、暴露試験や、複合サイクル腐食試験において耐食性が劇的に改善する。とりわけ海水中における腐食減量が小さくなる傾向にある。たとえば、人工海水に長期間浸漬すると、準結晶相を含有しないめっき鋼材よりも腐食減量が極めて小さくなる。これは塩素に対して皮膜バリア性の弱いAlが準結晶相を含有することで、海水中で安定になり皮膜バリアをさらに強固にするためと考えられる。この効果は準結晶相が体積分率で3%以上含有されていれば、すなわち、共晶組織が5%以上含まれていれば、人工海水中での腐食減厚が小さくなって効果が確認できる。準結晶相が含有されていない場合はこの効果は確認できない。また、Al濃度も通常高い方がより好ましい。
本実施形態のAl−Mg合金層は、準結晶相及びAl相を含む共晶組織を5体積%以上含む。また、本実施形態のAl−Mg合金層は、5体積%以上の共晶組織の他に、初晶Al相または初晶準結晶相のいずれか一方を含んでいてもよい。なお、初晶Al相は、共晶組織中のAl相が析出する前に形成されるものとして区別される。めっき層の断面を顕微鏡観察した際に、明らかに共晶組織を構成しないAl相は初晶Al相と判断してよい。また、初晶準結晶相は、共晶組織中の準結晶相が析出する前に形成されるものとして区別される。めっき層の断面を顕微鏡観察した際、円相当径で2μm以下のAl相を含まない準結晶相は、初晶準結晶相と判断してよい。
Al−Mg合金層中での準結晶の析出形態は2形態存在する。1形態目である初晶準結晶相は、準結晶相が初晶として析出するため、塊状組織としてAl−Mg合金層中に析出する。通常この初晶の塊状組織の平均円相当径は、1μm〜300μm程度である。形状は、多角形の場合が多い。
2形態目である共晶組織中の準結晶相は、Al相との共晶組織として存在する。共晶組織中の準結晶相は、平均円相当径が1μm超であることが好ましい。平均円相当径が1μm以下の準結晶相は、耐食性が低下する傾向にある。共晶組織として準結晶相が存在する場合、準結晶相中には、相当円直径で、結晶粒径2μm以下のAl相が体積分率で約20〜50%の割合で分散している。また、準結晶相よりもAl相の融点が高いため、共晶組織は、準結晶中からAl相が析出した構造を有する。ただし、Al濃度が高くなると、準結晶中に分散するAl相の体積分率が上昇する。結晶粒径2μm以下とは、実験的に得られた数値であり、これ以上大きなAl相が形成されることはなく、また、形成されたとしても耐食性への影響はない。結晶粒径が2μmを超えるAl相は、共晶組織を構成せず、初晶Al相を構成するものと判断してよい。
また共晶組織の構成は、めっき作製時の冷却速度にも影響し、めっき層凝固時の冷却速度が緩やかであると、Al相が結合・成長を繰り返し、初晶として析出するAl相が増え、共晶組織中のAl相の含有される体積分率がやや小さくなる。一方、めっき層の凝固時に急冷させると、共晶組織中に含有されるAl相の体積分率がやや多くなる。
Al−Mg合金層中でのAl相の析出形態も2形態存在する。1形態目である初晶Al相は、Al相が初晶として析出するため、塊状組織としてAl−Mg合金層中に析出している。通常この初晶の塊状組織の平均円相当径は、1μm〜300μm程度である。形状は、楕円形であることが多い。
第2形態目である共晶組織中のAl相は、準結晶相との共晶組織として存在するものであり、上述の通りである。
本実施形態では、Al濃度が35〜45%の間に存在する共晶線を境に、初晶として準結晶相が析出するか、または、Al相が析出するので、初晶準結晶相と初晶Al相が混在する場合は、ほとんどない。すなわち、初晶としてAl相または準結晶相のどちらが析出かは、Al−Mg合金層のAl量により決まる。
図2には一例として、初晶準結晶相と共晶組織から構成されるめっき層の光学顕微鏡像を示す。また、図3には別の例として、初晶Al相と共晶組織から構成されるめっき層の光学顕微鏡像を示す。図4には共晶組織の反射電子像を示す。図2において、矢印1で示す箇所に初晶準結晶相が析出し、矢印2で示す箇所には共晶組織が析出している。また、図3において、矢印3で示す箇所に初晶Al相が析出し、矢印4で示す箇所には共晶組織が析出している。更に、図4において、矢印5で示す箇所に準結晶相が析出し、矢印6で示す箇所にはAl相が析出していることがわかる。
Al−Mg合金層中の初晶Al相、初晶準結晶相、共晶組織等の体積分率は、めっきの加工性に直結する。めっきの加工性は、V曲げ試験等で容易に評価可能である。V曲げ試験とは、鋼製品の試験に関するJIS規格(用語JIS G 202、JIS Z2248)等におけるVブロック法(曲げ試験評価)による評価を指す。本発明で評価に使用したV曲げ試験において、内側半径R値が小さい方が、塑性変形が加わる領域が狭いため、通常、パウダリング量が少なくなる。R値が大きい方が、塑性変形が加わる領域が広いため、パウダリング量が多くなる傾向にある。これは準結晶相が極めて脆い物質であることに起因し、少量の歪が加わるだけで容易に破壊するためである。
共晶組織が5体積%以上含有されると、めっき層に塑性変形能が生じ始める。例えば、1R−90°V曲げ等加工試験における谷部テープ剥離におけるパウダリング量が減少する。共晶組織が5体積%未満では、加工性の改善効果が小さい。共晶組織の体積分率は大きい方が好ましく、30体積%以上が好ましく、50体積%以上がより好ましく、80体積%以上が更に好ましい。また、共晶組織においては、準結晶の体積分率が低く、Al相の体積分率が高い方がよい。共晶組織としてAl相が含まれることで、加工時のパウダリングの発生を抑制できる。
また、Al−Mg合金層中に初晶準結晶相が含有されると、加工時に部分的な剥離を引き起こしやすい。初晶準結晶相はその結晶粒のサイズにも依存するが、加工部位に初晶準結晶相が位置すると、粒内割れを引き起こし、そのままめっき層が欠落してしまいパウダリング剥離を引き起こす場合がある。その体積分率や、加工部面積によっても剥離量が変化するが、加工の観点からは、初晶準結晶相は存在しない方が好ましい。
また、Al−Mg合金層中に初晶Al相が含有されると、R値の緩い加工においても塑性変形が可能となる。Al−Mg合金層中に含有される初晶Al相は、より多い方が好ましい。10体積%以上の初晶Al相が含有されると、5R−V曲げ加工試験における谷部テープ剥離におけるパウダリング量が減少する。より好ましくは、初晶Al相が35体積%以上含有される方が良い。35体積%以上の初晶Al相が含有されることで、さらに厳しい加工に対してパウダリング量が減少する。例えば、V曲げ加工の後の、曲げ戻しにおいてもパウダリング量を少なくすることができる。
共晶組織と初晶Al相との加工性を比較すると、Al相の方が加工性に富む。本発明に開示する組成ではAl相単相とすることは不可能ではあるが、共晶線付近(Al濃度が35〜45%の間に存在する共晶組成)では共晶組織単相にすることは可能である。
Al−Mg合金層中に含有される初晶Al相、初晶準結晶相、共晶組織中のAl相及び準結晶相はいずれも、めっき層の耐食性に寄与する。いずれも強固な不動態皮膜を有しており、腐食促進試験での錆発生が抑制される。特に、初晶Al相が併存することで加工性が向上したAl−Mg合金層は、加工部耐食性において、厳しい加工部でのめっき剥離やクラック発生が抑制されるため、曲げ試験片での耐食性が改善される。
Al−Mg合金層には、犠牲防食能に富むZn、Mgが一定濃度以上含有されるため、めっき層に発生するクラックによる耐食性劣化は何ら問題がない。クラックは腐食初期の段階で直ちに腐食生成物で塞がれ、腐食の進行を抑制するためである。まためっき層のパウダリングも加工部面積の5%未満で部分的あれば、周囲のめっきが腐食し覆い隠され、若干、腐食速度が大きくなるものの、めっきの性能を大きく損なうものではない。一方で、地鉄とめっき層の界面からめっき層が剥離して、加工部面積に対して20%以上の剥離が見られると、めっき層の腐食速度が極端に大きくなり、パウダリング部からの赤錆発生が早くなる傾向にある。
また、Al−Mg合金層中の初晶Al相または初晶準結晶相と、共晶組織との体積分率の合計が70体積%以上になると、V曲げ試験片の内部での耐食性がより改善される。さらに好ましくは、85%以上であるとよい。
特に、本実施形態においては、めっき層に塑性変形能を持たせるために、めっき層中で塑性変形能を与える相として初晶Al相を含有させる必要がある。初晶Al相は共晶組織よりもさらに加工性に優れた組織となる。本実施形態で開示される組成は、準結晶が得られると同時にAl相も含有可能な組成範囲である。
特に、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜65%、Mg:2.5%〜30%、Ca:0.1%〜3%、Y:0%〜3%、La:0%〜3%、Ce:0%〜3%の条件を満す場合、Al−Mg合金層中に、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含むものとなり、更に、初晶Al相と共晶組織とが合計で70体積%以上含むものとなる。このようなAl−Mg合金層を備えためっき鋼材は、加工性が良好になる。この場合のAl量は40%以上がよい。
また、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜58%、Mg:2.5%〜25%の条件を満たす場合、Al−Mg合金層中に、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含むものとなり、更に、初晶Al相と共晶組織とが合計で85体積%以上含むものとなる。このようなAl−Mg合金層を備えためっき鋼材は、加工性が更に良好になる。具体的には、V曲げ試験等でパウダリング量が抑制されるようになる。この場合のAl量は55%以上がよい。
次に、本実施形態のめっき鋼材の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態においてめっき原板となる鋼材としては、普通鋼、アルミキルド鋼、高張力鋼等、いずれの鋼材を使用しても問題はなく、鋼材種に特に制限はない。原板としてプレめっき鋼板を使用することも問題はない。
めっき浴は、真空溶解炉等で作製した所定成分組成の合金を使用し、これら合金を大気中で溶解する。通常、溶融めっきを実施するためには、めっき浴温度を合金の融点よりも15℃から20℃以上高い温度にする必要である。本実施形態のめっき浴においては、融点近傍の操業は、めっきの粘性が高くなること、また準結晶相が析出しめっき浴中で沈殿しやすいため、合金融点+20℃と500℃のいずれか高い温度とする必要がある。さらに好ましくは合金融点+15℃と540℃以上のいずれか高い温度である方がよい。また、ボトムドロス形成と沈殿を回避するため、めっき浴内は十分に撹拌されている方が好ましい。
特にAl濃度が30%以上の低融点の合金では、めっき浴全体の比重が軽くなる一方で、Znを多く含有する準結晶は比重が重いため、浴温が準結晶の析出温度以下浴温では直ちに沈殿が生じてしまい、めっき浴が下部(準結晶)、上部(液相めっき浴)と二相分離して、めっき浴の成分維持が困難となる。また、製造するめっき鋼板にも、固体、粒状のドロスが多く付着してしまう。また組織制御の観点からも、液相から析出した十分に小さい準結晶から組織制御を実施しないと、めっき層中に粗大な準結晶相が点在し加工性が劣る原因ともなりかねない。操業性の観点、組織制御の観点から、準結晶組成が完全溶解する540℃以上を浴温設定した方が好ましい。
540℃以上の高温浴では、地鉄とめっき浴の反応によって形成するAl−Fe合金層が過剰に形成されるため、後述するようにAl−Fe合金化反応の反応時間を短縮するなどAl−Fe合金層の成長を抑制する手段を講じる必要がある。
しかし浴温が540℃を超える高温条件では、めっき浴中のAl、地鉄との反応が激しくなり過剰な厚みのAl−Fe合金層が形成されるとともに、めっき層中のAlの消費が促進されるため成分バランスがくずれ、組織制御が難しくなる。このため、合金融点が525℃超となり、めっき浴温が540℃を超える温度となるような場合には、浴温が540℃から高くなり過ぎないようにすることが好ましい。
例えば、めっき時のワイピングの温度降下幅を考慮して、融点が535℃以上のめっき浴は、融点+15℃を目安に出来る限り、融点に近い温度でワイピングを完了するよう浴温を設定した方が良い。ワイピング時の温度降下幅を小さくするためには、ワイピング部をヒーターで加熱し、Nホットガスによる冷却等を使用すれば、融点+10℃等でも可能であり、めっき原板が3mm以上の厚板の場合は、ほとんどワイピングにおける温度降下を無視でき、融点+5℃等でも十分に溶融めっき可能である。
めっき鋼材の製造は、ゼンジマー法を採用することが好ましく、無酸化環境、800℃にて水素で還元された鋼材をそのままめっき浴に浸漬させる。浸漬時間は、めっき層のAl−Fe合金層の厚みにも影響を与えるが、通常、0.5秒もあれば十分である。浸漬後は、Nガス吹き付けによる付着量調整を実施する。
なお、本実施形態の製造方法によりめっき鋼材を製造した場合、めっき浴の成分組成比率が、Al−Mg合金層の化学成分組成となる。めっき浴浸漬時のAl−Fe合金層の生成によるAl−Mg合金層のAl成分、Zn成分の減少は通常、僅かである。Al−Mg合金層と比較して、通常、Al−Fe合金層の厚みは十分に小さく、さらにAl−Mg合金層には、十分なAl元素が含有されているためである。よって、めっき浴の成分組成は、所望の組成のAl−Mg合金層が得られるように調整すればよい。
Al濃度が比較的高いめっき浴中に、表面が還元された鋼材を浸漬させると、FeとAlとが直ちに反応し、界面合金層であるAl−Fe合金層が形成する。Al−Fe合金層は爆発的に生成してめっき層中のAl濃度を減少させ、準結晶相、共晶組織、Al相の形成に悪影響を与えることから、冷却時間を厳しく管理する必要がある。高温状態程、この反応速度が大きい。
浸漬時間を含めて、めっき層を500℃以下までに冷却する時間は、少なくとも5秒以下であることが好ましい。例えば、めっき浴温を600℃とした場合は、平均20℃/秒以上の冷却速度にて500℃以下まで冷却しなければならない。5秒を超えるものは、Al−Fe合金層の成長によってAl−Mg合金層のAl成分低下が起こり、準結晶構造、共晶組織が得られにくくなるほか、耐食性劣化、加工性劣化が確認されるようになり、表面外観も悪化する。
500℃以下の温度では、Al−Fe合金層が成長するには低い温度であり、また、めっき浴の成分よっては凝固反応が開始するため、極端にAl−Fe合金層の成長が抑制される。めっきの密着性を確保するためには、ある程度の厚みでAl−Fe合金層の形成が必要であるが、500℃以上の温度領域を0.5秒以上とすることで密着性に十分な厚みのAl−Fe合金層が形成される。
更に、本実施形態では、準結晶相や共晶組織を含むめっき層を作製するために、500℃以下の温度領域における冷却速度を調整する必要がある。
準結晶相は、Al、Mg、Znから構成され、さらにクラスター構造(正20面体、菱型多面体等)を含むため、クラスター構造原子やその内部に多種多様な元素を含有しうる。また500℃〜400℃が安定的に存在しうる領域である。本実施形態に係る共晶組織は、準結晶相からAlが相分離して形成する組織であり、その形成には、原子拡散が必要である。溶融状態から急冷を実施すると、準結晶相や過飽和固溶体が形成する場合があり、共晶組織は形成しない。そのため共晶組織を形成する上でも冷却速度の制御は必須である。また、めっき浴のAl濃度によって、めっき層の凝固メカニズムが異なる。以下、Al濃度が40%未満の場合と、40%超の場合について説明する。
<Al濃度が40%未満の場合>
めっき浴のAl濃度が40%未満の場合、めっき層の凝固中に最初に形成する相は準結晶相である。初晶である準結晶相の析出は融点〜約470℃までにほぼ完了する。その後、470℃付近で液相の共晶反応が起き、準結晶相から徐々にAl相が分離されて共晶組織を形成する。Al相の相分離による共晶組織の生成は、温度が200℃に低下するまで起きる。470℃〜200℃の温度領域では、相分離したAl相が結合を繰り返して成長する。
水冷、強ミスト冷却など急冷却を実施すると、準結晶相内に過飽和に含有されたAlが分離できず、準結晶相が多量に形成する傾向にあり、共晶組織が形成しなくなる。また、過飽和に含有された成分元素が、室温付近で徐々に分離析出する時効効果も発生や、急激な熱膨張率の変化による残留応力の発生によってめっき層内の準結晶に多量のクラックが形成し、加工性の観点からも好ましくない。従って、470℃〜200℃までの平均冷却速度の上限値を30℃/秒とする。より好ましくは、20℃/秒、10℃/秒とする方が良い。水冷、ミスト冷却等は通常、50〜1000℃/秒の冷却速度を得るため、これらの冷却手段の使用は好ましくない。すなわち、500℃までAl−Fe合金層の形成を抑制するため、急冷されためっき層は、めっき層中に健全な準結晶を含む共晶組織を形成するため、500℃以下で一度、緩やかな冷却プロセスを実施する必要がある。ただし、470℃〜200℃の温度範囲で緩やかに冷却すると、相分離したAl相が結合を繰り返し、粗大なAl相となって延性に優れた共晶組織の割合が極端に減少することから、470℃〜200℃の温度範囲の冷却速度を3℃/秒以上とする。すなわち、470℃〜200℃の温度範囲は共晶組織が生成する範囲であると同時に、Al相が固相分離、結合する範囲であるので長時間の保持を実施してはならない。従って5〜20℃/秒の冷却速度がこの温度範囲の冷却速度として適切である。
<Al濃度が40%以上の場合>
めっき浴のAl濃度が40%以上の場合、めっき層の凝固中に最初に形成する相はAl相である。初晶であるAl相の析出は融点〜約470℃までにほぼ完了する。その後、470℃付近で液相の共晶反応が起き、準結晶相から徐々にAl相が分離されて共晶組織を形成する。Alの相分離によって共晶組織の生成は、温度が200℃に低下するまで起きる。470℃〜200℃までは、相分離したAl相が結合を繰り返し成長する。
急冷却を実施すると準結晶が成長せず、Mg、Znを過飽和に含有する過飽和固溶体のAl相が多量に形成する傾向にあり、共晶組織が形成しなくなる。共晶組織の形成に成分分離が必要なのは、上述の準結晶相に成分元素が含まれる場合と同じである。よって、470〜200℃までの平均冷却速度の上限値を30℃/秒とする。
水冷、ミスト冷却等は通常、50〜1000℃/秒の冷却速度を得るため、これらの冷却手段の使用は好ましくない。一方、470℃〜200℃の温度範囲で緩やかに冷却すると、相分離したAl相が結合を繰り返し、粗大なAl相となって延性に優れた共晶組織の割合が極端に減少することから、470℃〜200℃の温度範囲の冷却速度を3℃/秒以上とする。最適条件の温度範囲は、上述の5〜20℃/秒の冷却速度がこの温度範囲の冷却速度で同じである。
200℃以下の温度域での冷却については、すでに組織が決定しているため、めっき層内の組織は温度履歴により変化しないが、大気中での冷却を実施する場合は、めっき層表面が緩やかに空気中の酸素と結合して、酸化被膜を形成する。酸化被膜はその後の化成処理や、外観不良等も引き起こす。従って、100℃以下、より好ましくは室温近くまで急冷(ミスト冷却、水冷可)して酸化被膜の生成を抑制することを実施した方が好ましい。例えば、200℃から100℃まで10℃/秒以上で冷却すれば、めっき層表面に形成する酸化被膜は200nm未満であることが確認されており、その後の性能や外観に影響を与えない。
以上により、本実施形態のめっき鋼材が製造される。
次にめっき層の解析手段について述べる。
準結晶相の特定には、TEM観察が必須である。めっき鋼材より、FIB加工を使用してTEMサンプルを作製し、準結晶相の存在は、Mg32(Zn、Al)49相の回折像や、放射状の正10角形の電子線回折像により確認できる。めっき成分によっては、Mg32(Zn、Al)49相の回折像が結晶内で部分的に正10角形になることや結晶粒界等で部分的に正10角形の電子線回折像が現れることもある。また、事前に、XRD(X線回折)を実施し、簡易的に、Mg32(Zn、Al)49相、JCPDSカード:PDF#00−019−0029、又は、#00−039−0951で同定できる回折ピークと一致していることを確認することが好ましい。これらの回折ピーク、回折像が得られれば、クラスター構造を有するMg32(Zn、Al)49相、準結晶が存在することが確証できる。
Al−Mg合金層中の各相の体積分率の測定方法について述べる。めっき層の任意の断面、少なくとも3視野以上(500×500μm)をSEM−反射電子像で撮影する。別途TEM観察によって得られた実験結果から、SEM−反射電子像における準結晶相、共晶組織、Al相を特定する。所定の視野において、成分マッピング像を把握し、めっき層中における準結晶相と同じ成分組成場所を特定し、画像処理によって、めっき層におけるそれぞれの相を特定する。画像解析装置によって、準結晶相領域を範囲選択された画像を用意し、Al−Mg合金層中に占める各相の割合を測定する。同様に処理した3視野からの平均値から、めっき層における準結晶相の面積率を体積分率として採用する。尚、SEM−反射電子像の観察倍率は観察する組織の形状や大きさが特定できるよう調整すればよく、成分マッピングの解像度は分析対象となる組織の成分が特定できるよう調整すればよい。
めっき層中の各相の成分組成の把握には、めっき層断面におけるSEM−EDS、EPMA等による定量分析によって判別する。めっき層の成分の把握には、少なくとも異なる3視野における同様の組織構造の場所から点分析によって成分を把握し、その平均値を採用する。組織の広がりが存在する場合は、EPMAマッピング像から、特定の範囲における組成の平均値を採用する方が正確な値を取得することが可能である。
めっき層全体の成分組成の把握には、地鉄の腐食を抑制するインヒビターを加えた酸溶液にめっき層を溶解し、剥離溶液をICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光法による成分確認が好ましい。意図して添加した元素の他、意図しない通常0.1%未満の不純物元素濃度の測定においては、最小濃度0.005%程度までの成分把握が可能である。Al−Fe合金層の厚みが1μm以上で厚い場合は、酸溶解時間を短くして、Al−Fe合金層を溶解させないように測定用溶液を作製しなければならない。また、別途複数回にようGDSによる定量分析法を利用するか、EPMAライン・マッピング等による成分把握をする方が好ましい。
めっき層の硬度測定にはビッカース硬度を使用する。μビッカース測定装置等でめっき表面から圧痕をうち、30点平均硬度を求めれば、めっき層のおよその硬度が推定される。
めっき層の加工性は、上記に述べたプレスによるV曲げ試験が好ましい。本発明における加工性の評価において、R値の大きいV曲げにおいてパウダリング量が多くなる傾向にあることは上述のとおりである。より厳しい加工を評価する際には、V曲げ、180℃曲げ、0T曲げ試験を実施して、再度平板に戻した上でテープ剥離を行う、曲げ曲げ戻し試験によって評価することが好ましい。
めっき層の耐食性を評価する場合は、暴露試験による腐食状況の確認が最も好ましいが、塩水噴霧試験(SST)、複合サイクル腐食試験(CCT)等を使用して、短期間で評価することも可能である。所定期間経過後の白錆・赤錆発生状況、及び腐食減量評価によって耐食性の優劣をつける。
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1A及び表1Cに示すめっき層組成となるように、所定量の純金属インゴットを使用して、真空溶解炉で作製し、これを溶解して大気中でめっき浴を建浴した。めっき浴成分は、ICP発光分光分析法を利用して、相違なきことを確認し、めっき浴より製造されためっき層成分もめっき浴と同じ成分になることを確認した。尚、表1A、表1C記載のめっき成分の中で空欄となっているのは当該成分元素を添加しておらず、その濃度が0.005%未満であることを示す。また、Si濃度においては、添加の意図を問わず、ICP分析値を表示した。
めっき鋼材の作製には、バッチ式溶融めっき装置を使用した。めっき浴温は融点+15℃とした。ただし、融点が535℃以下のものは、操業性、組織制御を考慮して全て550℃に設定した。
本装置は、溶融めっきラインを想定した構造になっており、めっき原板加熱部、スナウト部、溶融めっき浴部、ワイピング部、冷却部が全てN−5%H環境下で行える装置である。めっき浴に接するスナウト内の酸素濃度20ppm以下に設定した。めっき浴温度は表1B及び表1Dに示す。
めっき原板として、板厚0.8mmの冷延鋼板(炭素濃度0.2質量%)を用いた。鋼板は、100mm×200mmに切断したものをめっきに供した。溶融めっき時の板温はめっき原板中心部の温度をモニタリングした。表1A及び表1Cにおいて、原板の欄にNiと記載した試験例は、上記冷延鋼板にNiめっきを付着量約2.0g/mで事前にワット浴で施したNiめっき鋼板をめっき原板とした。
めっき浴浸漬前、酸素濃度を20ppm以下の炉内においてN−5%Hガスで、800℃、1分間保持してめっき原板表面を還元し、Nガスで空冷して浸漬板温度が融点+40℃に到達した後、めっき浴に約3秒浸漬した。めっき浴浸漬後、引上速度100mm/秒で引上げた。引上げ時、Nワイピングガスでめっき付着量調整を行った。ワイピングは、融点直上+5℃以内で完了している。めっき厚みは20μm(±2μm)で調整した。冷却時に、Nガス冷却を実施し、表1A及び表1Cに示す冷却速度室温までめっき鋼板を冷却した。このようにして各種のめっき鋼材を製造した。
最初にめっき鋼材から10mm角を切り出し、3か所からFIBサンプリングを実施し、円相当径1μm以上の本明細書で定義する準結晶相が確認されたものについては「○」、確認されなかったものは「×」とした。結果を表1B及び表1Dに示す。
準結晶のうち、相内にAl相を分散しておらず、もしくは多角形をしているもので、初晶準結晶と思われるものが観察されたものは、「○」とした。
さらに、めっき層内部の構成相の体積分率を測定するため、めっき層断面を埋め込み研磨後、SEM−EPMA断面観察を行い、反射電子像、定量・点分析から組織を特定し、めっき層断面における共晶組織、Al相面積率をコンピューター画像解析で算出した。同じめっき鋼板から、3サンプル採取し、3視野の平均値を体積率(面積率)とした。結果を表1B及び表1Dに示す。なお、初晶Al相は、共晶組織に含まれるAlと明確に区別できた。
めっき鋼板から30mm角を切り出し、めっき表面においてビッカース硬度を測定した。荷重は10gfとし、平均30点をビッカース硬度とした。
めっき層の海水耐性を調べるために、テープで50mm角の窓を設けためっき鋼板を作製し、人工海水(八洲薬品製)、平均流速3m/分になるように設けられた水槽に浸漬して70時間浸漬した。浸漬後、めっき鋼板表面に付着した腐食生成物を5%クエン酸で取り除き腐食減量を測定した。腐食減量、密度から、腐食減厚みに換算して海水耐性を評価した。評価基準は以下の通りとした。結果を表1B及び表1Dに示す。
AAA:腐食減厚が1μm未満
A:腐食減厚が1〜3μm
B:腐食減厚が3μm超
めっき層の加工性を評価するため、V曲げ加工(JIS Z 2248)を使用した。めっき鋼板を50×90mmに切断し、1R−90°V字金型プレスで成型体を使用した。さらに厳しい加工性を評価するために、5R−90°V字金型プレスで成型体を使用した。準結晶を含有する硬質なめっき鋼板においては、R値が緩い方が剥離面積は大きくなる傾向にある。谷部においてテープ剥離を実施した。曲げ加工部上に巾24mmのセロハンテープを押し当てて引き離し、セロハンテープの長さ90mmの部分を目視で判断した。評価基準は以下の通りとした。結果を表1B及び表1Dに示す。
AAA:剥離部分が発生せず
AA:剥離部分が点状に部分的に剥離(加工部面積に対して5%未満)
A:剥離部分が線上に剥離した部分がある(加工部面積に対して5〜20%未満)
B:剥離部分がほぼ剥離 (加工部面積に対して20%以上)
より厳しい加工を評価するために2R−90°V字金型プレスで成型した後、さらに平板金型で平板に曲げ戻し加工を実施する。V字加工後、谷部だった場所に、巾24mmのセロハンテープを押し当てて引き離し、セロハンテープの長さ90mmの部分を目視で判断した。評価基準は以下の通りとした。結果を表1B及び表1Dに示す。
AAA:剥離部分が発生せず
AA:剥離部分が点状に部分的に剥離(加工部面積に対して5%未満)
A:剥離部分が線上に剥離した部分がある(加工部面積に対して5〜20%未満)
B:剥離部分がほぼ剥離 (加工部面積に対して20%以上)
加工部耐食性は、V字加工後のサンプル5R−90°V字曲げサンプル、及び2R−90°曲げ曲戻し平板サンプルを使用して評価した(テープ剥離試験実施済みサンプルを使用している。)。V曲げ谷部を上面にして、もしくは、谷部後曲げ戻し部を上面にしてJASOM609−91を使用して、いずれの場合も、加工部からの赤錆発生で判定した。評価基準は以下の通りとした。結果を表1B及び表1Dに示す。
AAA:JASO 240サイクル後の赤錆なし
A:JASO 180〜240サイクル後の赤錆なし
B:JASO 180サイクル未満で赤錆発生
高湿度環境下でのめっき外観変化を確認するため、めっき鋼板切り板サンプル(50×50mm)を大気環境下、温度85℃、湿度98%の恒温恒湿槽内に2週間放置し、試験後の外観を目視で評価した。結果を表1B及び表1Dに示す。
AAA:黄変・黒変観察されず(黄変面積5%未満)
AA:黄変有(黄変面積5%以上)
A:黄変に加え、黒変有(黄変または黒変面積5%以上)
表1A〜表1Dに示すように、本発明のめっき鋼材は、耐食性及び加工性の両方に優れていることがわかる。
特に、No.28、34、35、36、40及び45は、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜65%、Mg:2.5%〜30%、Ca:0.1%〜3%、Y:0%〜3%、La:0%〜3%、Ce:0%〜3%の条件を満たし、かつ、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含み、初晶Al相と共晶組織が合計で70体積%以上なので、耐食性及び加工性がより向上した。
また、No.42、43、47、50、52、53、54、55、58、59、60、61、62、63、64、65及び66は、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜58%、Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、かつ、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含み、初晶Al相と共晶組織が合計で85体積%以上なので、耐食性及び加工性がより一層向上した。
一方、比較例のめっき鋼材は、耐食性及び加工性の評価項目において「B」評価が含まれており、耐食性または加工性のいずれか一方または両方が満足しない結果となった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1…準結晶相、2…共晶組織、3…Al相、4…共晶組織、5…準結晶相、6…Al相。

Claims (5)

  1. 鋼材と、前記鋼材の表面に配されたAl−Fe合金層及びAl−Mg合金層を含むめっき層とが備えられ、
    前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、厚さが100nm以上15μm以下であり、
    前記Al−Mg合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、平均円相当径が1μm超の準結晶相と、前記準結晶相内に分散した結晶粒径2μm以下のAl相とを含む共晶組織が5体積%以上含有され、
    前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、質量%で、
    Zn:5%〜83%、
    Mg:2.5%〜35%、
    Ca:0%〜5%、
    Y :0%〜3.5%、
    La:0%〜3.5%、
    Ce:0%〜3.5%、
    Si:0%〜10%、
    Cr:0%〜2.5%、
    Ti:0%〜2.5%、
    Ni:0%〜2.5%、
    Co:0%〜0.5%、
    V :0%〜0.5%、
    Nb:0%〜0.5%、
    Cu:0%〜2.5%、
    Sn:0%〜2.5%、
    Fe:0%〜3%、
    Mn:0%〜2.5%、
    Sr:0%〜0.5%、
    Sb:0%〜0.5%、
    Pb:0%〜0.5%
    を含有し、Ca+Y+La+Ce≦5を満たし、残部がAl及び不純物からなるAl−Mg系溶融めっき鋼材。
  2. 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
    Zn:5%〜65%、
    Mg:2.5%〜30%、
    Ca:0.1%〜3%、
    Y :0%〜3%、
    La:0%〜3%、
    Ce:0%〜3%の条件を満たし、
    前記Al−Mg合金層中に、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で70体積%以上含む請求項1に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
  3. 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
    Zn:5%〜58%、
    Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、
    前記Al−Mg合金層中に、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で85体積%以上含む請求項1または請求項2に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
  4. 前記Al−Fe合金層の厚みが5μm以下である請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
  5. 前記Al−Mg合金層の硬度が100Hv以上である請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
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