JP6787002B2 - Al−Mg系溶融めっき鋼材 - Google Patents
Al−Mg系溶融めっき鋼材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6787002B2 JP6787002B2 JP2016189543A JP2016189543A JP6787002B2 JP 6787002 B2 JP6787002 B2 JP 6787002B2 JP 2016189543 A JP2016189543 A JP 2016189543A JP 2016189543 A JP2016189543 A JP 2016189543A JP 6787002 B2 JP6787002 B2 JP 6787002B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- phase
- alloy layer
- plating
- quasicrystal
- plating layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Description
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。
前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、厚さが100nm以上15μm以下であり、
前記Al−Mg合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、平均円相当径が1μm超の準結晶相と、前記準結晶相内に分散した結晶粒径2μm以下のAl相とを含む共晶組織が5体積%以上含有され、
前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、質量%で、
Zn:5%〜83%、
Mg:2.5%〜35%、
Ca:0%〜5%、
Y :0%〜3.5%、
La:0%〜3.5%、
Ce:0%〜3.5%、
Si:0%〜10%、
Cr:0%〜2.5%、
Ti:0%〜2.5%、
Ni:0%〜2.5%、
Co:0%〜0.5%、
V :0%〜0.5%、
Nb:0%〜0.5%、
Cu:0%〜2.5%、
Sn:0%〜2.5%、
Fe:0%〜3%、
Mn:0%〜2.5%、
Sr:0%〜0.5%、
Sb:0%〜0.5%、
Pb:0%〜0.5%
を含有し、Ca+Y+La+Ce≦5を満たし、残部がAl及び不純物からなるAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(2) 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜65%、
Mg:2.5%〜30%、
Ca:0.1%〜3%、
Y :0%〜3%、
La:0%〜3%、
Ce:0%〜3%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で70体積%以上含む(1)に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(3) 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜58%、
Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で85体積%以上含む(1)または(2)に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(4) 前記Al−Fe合金層の厚みが5μm以下である(1)乃至(3)の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
(5) 前記Al−Mg合金層の硬度が100Hv以上である(1)乃至(4)の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
本実施形態のAl−Mg系溶融めっき鋼材(以下、めっき鋼材という)は、鋼材と、鋼材表面に形成されためっき層とからなる。鋼材表面に形成されためっき層は、厚さ100nm以上15μm以下のAl−Fe合金層と、厚さ2μm以上50μm以下のAl−Mg合金層とを含む。
Al−Mg合金層における耐食性の付与、準結晶の形成、および、Zn系一般塗料や化成処理に対しての適性が必要であるため、Zn濃度は5〜83%とする。Znが5%未満となると、耐食性を悪化させるMg相が析出しやすくなる。耐食性を向上させるためには、準結晶相の析出が不可欠であり、Zn濃度が低くなると、準結晶の成長が鈍くなる。また、過度の犠牲防食能が働くMgやMg51Zn20相が必要以上に形成しやすい組成となり、各種Zn系塗料、化成処理との相性が悪くなる。従ってZn量の下限値は5%以上とする。逆にZn量が83%を超えると、めっき層中にZn相が析出しやすくなり、アルカリ耐食性が極めて悪くなる。また準結晶が殆ど形成しなくなる。よってZnの上限値は83%以上とする。Zn量のより好ましい範囲は5〜65%であり、更に好ましい範囲は5〜58%である。めっき層の耐食性、加工性の観点からは、めっき層中のZn濃度はAl濃度を超えない範囲で高い方が好ましい傾向にある。
Mgは、準結晶の形成に大きく関係する元素である。Mgが2.5%未満では準結晶相を十分に形成させることが困難になる。また、準結晶相の形成条件は、Mg濃度の他、Al濃度、Zn濃度、Ca、Y、La、Ce濃度と特に関係性がある。一般的に準結晶相の形成は後述するFrank−Kasper相の形成領域と強い関連性があるため、Al濃度が高ければ高い程、Mg濃度は小さくとも準結晶相が形成しやすくなるが、Zn濃度が高くなると、Mg濃度が多く必要となる。またCa、Y、La、CeはMgと準結晶相中で置換するため、Mgの代用として活用することも可能である。本発明者らは経験的に、Al濃度が90%以上では、濃度成分の合計値([Mg濃度]+[Ca,Y,La,Ce濃度])が2.5%以上、Al濃度が80〜90%では5%以上、Al濃度が80〜50%では9%以上、50%未満では10%以上をそれぞれ満たさないと、準結晶相は得られず、本発明にかかるめっき層の構成を形成することができないことを知見した。
一方、Mgが35%を超えると、めっき浴中にドロスが大量に発生してめっきが困難になる。Mg量のより好ましい範囲は2.5〜30%であり、更に好ましい範囲は2.5〜25%である。また耐食性、加工性の観点から準結晶相の割合が一定以上必要で、共晶組織を増加させる、即ちAl初晶を減らす必要があり、Mgを10%以上とすることが好ましい。ただし、この場合はAl濃度を80%未満とした方がより好ましい。成分組成的には、めっき層中のMg濃度は、Al及びZnの濃度を超えない範囲で高い濃度であることが好ましい。
Alは、Al−Mg合金層の化学成分の残部であるが、Al−Mg合金層中のAlは、耐食性を付与する準結晶の形成に大きく関係する元素である。Alが少ないと、MgZn2が多量に形成し、相対的に準結晶相が得にくくなる。また、Alが過剰になると、Al系金属間化合物が形成してアルカリ耐食性、Zn系塗料との相性が悪くなる傾向にある。従って、残部となるAlは、1%以上含まれることが好ましく、40%以上含まれることがより好ましく、55%以上含まれることが更に好ましい。Alが40%以上含まれると、初晶としてAl相が析出しやすい条件となり、加工性が向上するためで、Alが55%以上になるとその効果は顕著となる。但し、前述の通りめっき層中にAlが過剰に存在するとAl系金属間化合物が形成されるためアルカリ耐食性の低下や、Zn系塗料との相性が悪くなる傾向が認められることから、めっき層中のAl濃度は75%以下とする事が好ましく、65%以下とする事がより好ましい。
なお、初晶Al相は、共晶組織中に微細なAl相が十分に含有された後、形成するため、初晶Al相を得るためには、Alは40%以上必要である。
CaはAlと同様に準結晶の形成に大きく影響を与える元素である。CaはMgと原子半径が近いことから、準結晶相中でMgの位置に置換する。Caは添加しなくても準結晶相は形成できるが、好ましくは0.1%以上は添加するとよい。また、Caが5%を超えると、耐食性が劣る金属間化合物相が形成する。また、めっき層の凝固時の冷却速度が速い場合は、非平衡相の一種であるアモルファス相が形成する。さらに、平面耐食性、Zn系塗料に対しての適性も低下する傾向にある。よって、Caの上限濃度を5%以下とする。
これらの元素は、原子半径が比較的Ca原子に近く、効果もCaと同等の効果があると推定される。一方、比重、融点、およびZn、Mgの相性からCaと同等量に添加するとめっき浴においてドロスの形成量が多くなり、めっき鋼板の作製が困難となる。その結果、耐食性が極めて悪化する。従ってこれらの元素の上限濃度は3.5%以下とする。より好ましくは、それぞれ1〜3%である。
Ti、Crは、めっき層に準結晶相を好ましく生成させるために必要に応じて含有されてもよい。微量のTi、Crがめっき層に含有されると、準結晶相が生成しやすくなり、準結晶相の構造が安定化すると考えられる。
Siは、10%以下の濃度でめっき層に含有されると、Ti、Crと同じ様に準結晶相が生成しやすくなる事が確認されている。また、0.1%を超えて添加されると、Al−Fe合金層の成長が鈍化する事が確認されており、めっき層にSiを含有させることはめっき加工性に悪影響を及ぼすAl−Fe合金層を抑制する有効な手段である。
また、めっき鋼材のめっきの性能の観点、即ち耐食性、加工性、耐変色性及び操業性を全てバランスよく満足させる観点からは、Si濃度は0.01%未満に管理する事が好ましい。
Co、Ni、V、Nb、Cu及びSnは、上述のSi、Ti、Crと同様に、準結晶の安定生成に効果のある元素である。準結晶の生成に効果のある元素だが、詳細な研究の結果、Si、Ti、Cr等の元素の効果とは異なる添加効果があることが判明した。これらの元素がめっき層中に添加されると、Fe元素のめっき層への拡散が極端に抑制される。これらの元素は、主に鋼材とめっき層との界面付近でAl3Fe金属間化合物に固溶する傾向にある。同時に、Fe11Zn40という金属間化合物が形成しやすくなる。その結果、界面合金層としてのAl−Fe系金属間化合物の形成が抑制され、めっき層中のAl成分の減少など、めっき層中の準結晶相の形成を阻害する要因が減少する。耐食性、準結晶相の形成に良い影響を与えない界面合金層の形成が抑制されることから、めっき層本来の耐食性が発揮される。SST試験等で、通常、界面合金層の厚みが小さい方が、赤錆発生時間が長くなる傾向にある。
めっき鋼材の母材である鋼材として、近年、高張力鋼(高強度鋼)が使用されるようになってきた。高張力鋼を使用してめっき鋼材を製造した場合、高張力鋼に含まれるSi、Mn等の元素が、めっき層中に拡散することがある。SiおよびMnのうち、Mnは、Siが有する上述した効果を有さない。しかし、2.5%程度のMnがめっき層に含有されても、準結晶の生成挙動や、めっき層の耐食性に対して影響を与える可能性は小さい。よって、めっき層のMn含有量を0%〜2.5%としてもよい。
Sr、Sb、Pbは、めっき外観を向上させる元素である。この効果を得るために、めっき層のSr含有量を0%〜0.5%とし、Sb含有量を0%〜0.5%とし、Pb含有量を0%〜0.5%としてもよい。Sr含有量、Sb含有量、およびPb含有量が上記範囲である場合、耐食性への影響はほとんどない。
本実施形態に開示した成分組成において、Al−Mg合金層を構成する組織は、以下のものが確認されている。すなわち、初晶Al相、初晶準結晶相、準結晶相及びAl相を含む共晶組織である。また、選択元素の種類によって、Al4Ca、Al2Zn2Ca、Al3ZnCa等が含まれる場合がある。更に、微量に含有される相として、MgZn2相、Mg2Zn3相(文献によっては、Mg4Zn7と表記される場合もあるが、同一物質として扱う。)Mg51Zn20相、Mg相、MgZn相等がある。
準結晶の正20面体の結晶構造の形成には、同じくクラスターを有する菱型多面体構造をもつMg32(Zn、Al)49相の形成が影響しているとされる。準結晶相の20面体の結晶構造は3種類以上の結晶構造、例えば、マッカイクラスター、バーグマンクラスター、蔡クラスター型等の報告があり、その結晶構造については現在も研究中である。また、Mg32(Zn,Al)49相は、準結晶研究の初期から準結晶と同じ、近似結晶であることが指摘され、形成時の冷却方式により、部分的にクラスター構造が変化して上記に示す異なる20面体構造を取り得る。本発明における準結晶相の定義とは、近似結晶を指し、準結晶と同等のクラスター構造を有した物質も含め、Mg32(Zn、Al)49相からの変異体と定義する。粗大で数10μm以上の大きさで正20面体構造を取るものも得られれば、数nmの部分的にしか得られない場合もあり(すなわち、1つの結晶相を取り上げても図1の電子線回折像がいかなる場所からも得られる場合もあるが、Mg32(Zn、Al)49相の電子線回折像が得られ、図1の像が部分的にしか得られない場合もある)、準結晶相と近似結晶の区別は明瞭に定義することが現在は区別することが技術的に不可能である。Mg32(Zn、Al)49相中に準結晶相が含まれると推定されるが、部分的に準結晶を切り出すことが困難であり、一方、本発明における準結晶相に関わる性質は、クラスター構造に起因した特異な結晶構造に発現をもとにしていると推定され、近似結晶であるMg32(Zn、Al)49相も、準結晶も同質と扱うことが可能である。このため、簡易的には、XRDで近似結晶のMg32(Zn、Al)49相を探し、準結晶と同性能が得られる可能性を得て、より詳細に準結晶構造を探索する場合は、TEMで対象の結晶相の結晶構造を詳細に探索すれば良い。
共晶組織と初晶Al相との加工性を比較すると、Al相の方が加工性に富む。本発明に開示する組成ではAl相単相とすることは不可能ではあるが、共晶線付近(Al濃度が35〜45%の間に存在する共晶組成)では共晶組織単相にすることは可能である。
Al−Mg合金層には、犠牲防食能に富むZn、Mgが一定濃度以上含有されるため、めっき層に発生するクラックによる耐食性劣化は何ら問題がない。クラックは腐食初期の段階で直ちに腐食生成物で塞がれ、腐食の進行を抑制するためである。まためっき層のパウダリングも加工部面積の5%未満で部分的あれば、周囲のめっきが腐食し覆い隠され、若干、腐食速度が大きくなるものの、めっきの性能を大きく損なうものではない。一方で、地鉄とめっき層の界面からめっき層が剥離して、加工部面積に対して20%以上の剥離が見られると、めっき層の腐食速度が極端に大きくなり、パウダリング部からの赤錆発生が早くなる傾向にある。
540℃以上の高温浴では、地鉄とめっき浴の反応によって形成するAl−Fe合金層が過剰に形成されるため、後述するようにAl−Fe合金化反応の反応時間を短縮するなどAl−Fe合金層の成長を抑制する手段を講じる必要がある。
例えば、めっき時のワイピングの温度降下幅を考慮して、融点が535℃以上のめっき浴は、融点+15℃を目安に出来る限り、融点に近い温度でワイピングを完了するよう浴温を設定した方が良い。ワイピング時の温度降下幅を小さくするためには、ワイピング部をヒーターで加熱し、N2ホットガスによる冷却等を使用すれば、融点+10℃等でも可能であり、めっき原板が3mm以上の厚板の場合は、ほとんどワイピングにおける温度降下を無視でき、融点+5℃等でも十分に溶融めっき可能である。
浸漬時間を含めて、めっき層を500℃以下までに冷却する時間は、少なくとも5秒以下であることが好ましい。例えば、めっき浴温を600℃とした場合は、平均20℃/秒以上の冷却速度にて500℃以下まで冷却しなければならない。5秒を超えるものは、Al−Fe合金層の成長によってAl−Mg合金層のAl成分低下が起こり、準結晶構造、共晶組織が得られにくくなるほか、耐食性劣化、加工性劣化が確認されるようになり、表面外観も悪化する。
500℃以下の温度では、Al−Fe合金層が成長するには低い温度であり、また、めっき浴の成分よっては凝固反応が開始するため、極端にAl−Fe合金層の成長が抑制される。めっきの密着性を確保するためには、ある程度の厚みでAl−Fe合金層の形成が必要であるが、500℃以上の温度領域を0.5秒以上とすることで密着性に十分な厚みのAl−Fe合金層が形成される。
準結晶相は、Al、Mg、Znから構成され、さらにクラスター構造(正20面体、菱型多面体等)を含むため、クラスター構造原子やその内部に多種多様な元素を含有しうる。また500℃〜400℃が安定的に存在しうる領域である。本実施形態に係る共晶組織は、準結晶相からAlが相分離して形成する組織であり、その形成には、原子拡散が必要である。溶融状態から急冷を実施すると、準結晶相や過飽和固溶体が形成する場合があり、共晶組織は形成しない。そのため共晶組織を形成する上でも冷却速度の制御は必須である。また、めっき浴のAl濃度によって、めっき層の凝固メカニズムが異なる。以下、Al濃度が40%未満の場合と、40%超の場合について説明する。
めっき浴のAl濃度が40%未満の場合、めっき層の凝固中に最初に形成する相は準結晶相である。初晶である準結晶相の析出は融点〜約470℃までにほぼ完了する。その後、470℃付近で液相の共晶反応が起き、準結晶相から徐々にAl相が分離されて共晶組織を形成する。Al相の相分離による共晶組織の生成は、温度が200℃に低下するまで起きる。470℃〜200℃の温度領域では、相分離したAl相が結合を繰り返して成長する。
めっき浴のAl濃度が40%以上の場合、めっき層の凝固中に最初に形成する相はAl相である。初晶であるAl相の析出は融点〜約470℃までにほぼ完了する。その後、470℃付近で液相の共晶反応が起き、準結晶相から徐々にAl相が分離されて共晶組織を形成する。Alの相分離によって共晶組織の生成は、温度が200℃に低下するまで起きる。470℃〜200℃までは、相分離したAl相が結合を繰り返し成長する。
水冷、ミスト冷却等は通常、50〜1000℃/秒の冷却速度を得るため、これらの冷却手段の使用は好ましくない。一方、470℃〜200℃の温度範囲で緩やかに冷却すると、相分離したAl相が結合を繰り返し、粗大なAl相となって延性に優れた共晶組織の割合が極端に減少することから、470℃〜200℃の温度範囲の冷却速度を3℃/秒以上とする。最適条件の温度範囲は、上述の5〜20℃/秒の冷却速度がこの温度範囲の冷却速度で同じである。
以上により、本実施形態のめっき鋼材が製造される。
準結晶相の特定には、TEM観察が必須である。めっき鋼材より、FIB加工を使用してTEMサンプルを作製し、準結晶相の存在は、Mg32(Zn、Al)49相の回折像や、放射状の正10角形の電子線回折像により確認できる。めっき成分によっては、Mg32(Zn、Al)49相の回折像が結晶内で部分的に正10角形になることや結晶粒界等で部分的に正10角形の電子線回折像が現れることもある。また、事前に、XRD(X線回折)を実施し、簡易的に、Mg32(Zn、Al)49相、JCPDSカード:PDF#00−019−0029、又は、#00−039−0951で同定できる回折ピークと一致していることを確認することが好ましい。これらの回折ピーク、回折像が得られれば、クラスター構造を有するMg32(Zn、Al)49相、準結晶が存在することが確証できる。
準結晶のうち、相内にAl相を分散しておらず、もしくは多角形をしているもので、初晶準結晶と思われるものが観察されたものは、「○」とした。
めっき層の海水耐性を調べるために、テープで50mm角の窓を設けためっき鋼板を作製し、人工海水(八洲薬品製)、平均流速3m/分になるように設けられた水槽に浸漬して70時間浸漬した。浸漬後、めっき鋼板表面に付着した腐食生成物を5%クエン酸で取り除き腐食減量を測定した。腐食減量、密度から、腐食減厚みに換算して海水耐性を評価した。評価基準は以下の通りとした。結果を表1B及び表1Dに示す。
A:腐食減厚が1〜3μm
B:腐食減厚が3μm超
AA:剥離部分が点状に部分的に剥離(加工部面積に対して5%未満)
A:剥離部分が線上に剥離した部分がある(加工部面積に対して5〜20%未満)
B:剥離部分がほぼ剥離 (加工部面積に対して20%以上)
AA:剥離部分が点状に部分的に剥離(加工部面積に対して5%未満)
A:剥離部分が線上に剥離した部分がある(加工部面積に対して5〜20%未満)
B:剥離部分がほぼ剥離 (加工部面積に対して20%以上)
A:JASO 180〜240サイクル後の赤錆なし
B:JASO 180サイクル未満で赤錆発生
AA:黄変有(黄変面積5%以上)
A:黄変に加え、黒変有(黄変または黒変面積5%以上)
特に、No.28、34、35、36、40及び45は、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜65%、Mg:2.5%〜30%、Ca:0.1%〜3%、Y:0%〜3%、La:0%〜3%、Ce:0%〜3%の条件を満たし、かつ、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含み、初晶Al相と共晶組織が合計で70体積%以上なので、耐食性及び加工性がより向上した。
また、No.42、43、47、50、52、53、54、55、58、59、60、61、62、63、64、65及び66は、Al−Mg合金層の化学成分組成が、Zn:5%〜58%、Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、かつ、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の共晶組織とを含み、初晶Al相と共晶組織が合計で85体積%以上なので、耐食性及び加工性がより一層向上した。
Claims (5)
- 鋼材と、前記鋼材の表面に配されたAl−Fe合金層及びAl−Mg合金層を含むめっき層とが備えられ、
前記Al−Fe合金層は、前記鋼材表面に形成され、厚さが100nm以上15μm以下であり、
前記Al−Mg合金層は、前記Al−Fe合金層上に形成され、平均円相当径が1μm超の準結晶相と、前記準結晶相内に分散した結晶粒径2μm以下のAl相とを含む共晶組織が5体積%以上含有され、
前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、質量%で、
Zn:5%〜83%、
Mg:2.5%〜35%、
Ca:0%〜5%、
Y :0%〜3.5%、
La:0%〜3.5%、
Ce:0%〜3.5%、
Si:0%〜10%、
Cr:0%〜2.5%、
Ti:0%〜2.5%、
Ni:0%〜2.5%、
Co:0%〜0.5%、
V :0%〜0.5%、
Nb:0%〜0.5%、
Cu:0%〜2.5%、
Sn:0%〜2.5%、
Fe:0%〜3%、
Mn:0%〜2.5%、
Sr:0%〜0.5%、
Sb:0%〜0.5%、
Pb:0%〜0.5%
を含有し、Ca+Y+La+Ce≦5を満たし、残部がAl及び不純物からなるAl−Mg系溶融めっき鋼材。 - 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜65%、
Mg:2.5%〜30%、
Ca:0.1%〜3%、
Y :0%〜3%、
La:0%〜3%、
Ce:0%〜3%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、10体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で70体積%以上含む請求項1に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。 - 前記Al−Mg合金層の化学成分組成が、
Zn:5%〜58%、
Mg:2.5%〜25%の条件を満たし、
前記Al−Mg合金層中に、35体積%以上の初晶Al相と、5体積%以上の前記共晶組織とを含み、更に、前記初晶Al相と前記共晶組織が合計で85体積%以上含む請求項1または請求項2に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。 - 前記Al−Fe合金層の厚みが5μm以下である請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
- 前記Al−Mg合金層の硬度が100Hv以上である請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のAl−Mg系溶融めっき鋼材。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015191885 | 2015-09-29 | ||
JP2015191885 | 2015-09-29 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017066523A JP2017066523A (ja) | 2017-04-06 |
JP6787002B2 true JP6787002B2 (ja) | 2020-11-18 |
Family
ID=58493118
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016189543A Active JP6787002B2 (ja) | 2015-09-29 | 2016-09-28 | Al−Mg系溶融めっき鋼材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6787002B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TWI802491B (zh) * | 2021-10-26 | 2023-05-11 | 日商日本製鐵股份有限公司 | 鍍敷鋼板 |
Families Citing this family (13)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6687175B1 (ja) * | 2018-05-16 | 2020-04-22 | 日本製鉄株式会社 | めっき鋼材 |
CN108913979A (zh) * | 2018-07-02 | 2018-11-30 | 佛山博发智能科技有限公司 | 一种耐磨抗氧化的新型镁锌合金材料 |
KR102276742B1 (ko) * | 2018-11-28 | 2021-07-13 | 주식회사 포스코 | 도금 밀착성 및 내부식성이 우수한 아연도금강판 및 이의 제조방법 |
CN113677820B (zh) * | 2019-04-19 | 2023-10-03 | 日本制铁株式会社 | 镀层钢材 |
CN110468313B (zh) * | 2019-08-02 | 2020-09-22 | 中国航发北京航空材料研究院 | 一种高强度闭孔泡沫铝合金及其制备方法 |
CN110358998A (zh) * | 2019-08-13 | 2019-10-22 | 山东冠洲股份有限公司 | 一种热镀锌铝镁合金钢板及其生产方法 |
US20220275481A1 (en) * | 2019-08-29 | 2022-09-01 | Nippon Steel Corporation | Hot stamped steel |
AU2020384747B2 (en) * | 2019-11-14 | 2023-09-07 | Nippon Steel Corporation | Coated Steel Material |
CN110760725A (zh) * | 2019-12-18 | 2020-02-07 | 陕西易莱德新材料科技有限公司 | 一种高强度镁铝合金及其制备方法 |
CN111979456B (zh) * | 2020-08-25 | 2022-04-08 | 肇庆南都再生铝业有限公司 | 一种含Zn的中强高韧压铸铝合金及其制备方法 |
CN112609109A (zh) * | 2020-12-09 | 2021-04-06 | 大连交通大学 | 一种含Ce-Mg高强耐热铝合金及其制备方法 |
EP4163413A4 (en) * | 2021-07-09 | 2023-08-16 | Nippon Steel Corporation | PLATED STEEL MATERIAL |
EP4299786A1 (en) * | 2022-03-23 | 2024-01-03 | Nippon Steel Corporation | Hot-dip plated steel material |
Family Cites Families (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1995017531A1 (en) * | 1993-12-22 | 1995-06-29 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Hydrogen-absorbing alloy and alkaline secondary cell using the same |
DE60029428T2 (de) * | 1999-10-25 | 2007-04-19 | Nippon Steel Corp. | Metallbeschichteter stahldraht mit hervorragendem korrosionswiderstand und bearbeitbarkeit und herstellungsverfahren |
JP2002012959A (ja) * | 2000-04-26 | 2002-01-15 | Nippon Steel Corp | 加工部及び端面耐食性に優れたAl系めっき鋼板 |
JP2002146504A (ja) * | 2000-08-22 | 2002-05-22 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐食性及び耐ホイスカ性に優れた電装用資材及び電装用部材 |
JP2002275611A (ja) * | 2001-03-15 | 2002-09-25 | Nippon Steel Corp | 亜鉛合金めっき製柱材とその製造方法および該製造方法で用いるフラックス |
JP3737987B2 (ja) * | 2001-04-09 | 2006-01-25 | 新日本製鐵株式会社 | 高耐食性を有し加工性に優れた溶融めっき鋼線 |
JP4683764B2 (ja) * | 2001-05-14 | 2011-05-18 | 日新製鋼株式会社 | 耐食性に優れた溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼材 |
JP2004339530A (ja) * | 2003-05-13 | 2004-12-02 | Nippon Steel Corp | 加工性に優れたMg含有めっき鋼材およびその製造方法 |
CN101253280B (zh) * | 2005-09-01 | 2010-12-01 | 新日本制铁株式会社 | 弯曲加工性优异的热浸镀Zn-Al系合金钢材及其制造方法 |
JP4931673B2 (ja) * | 2007-04-05 | 2012-05-16 | 日新製鋼株式会社 | 加工部耐食性に優れた塗装鋼板 |
JP2011219791A (ja) * | 2010-04-06 | 2011-11-04 | Nippon Steel Corp | コンクリート構造用塗装めっき鋼材 |
JP5097305B1 (ja) * | 2012-04-25 | 2012-12-12 | 日新製鋼株式会社 | 黒色めっき鋼板 |
JP2015159348A (ja) * | 2014-02-21 | 2015-09-03 | 三星電子株式会社Samsung Electronics Co.,Ltd. | 電波透過性金属材料 |
WO2015145721A1 (ja) * | 2014-03-28 | 2015-10-01 | 新日鐵住金株式会社 | 準結晶含有めっき鋼板 |
-
2016
- 2016-09-28 JP JP2016189543A patent/JP6787002B2/ja active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TWI802491B (zh) * | 2021-10-26 | 2023-05-11 | 日商日本製鐵股份有限公司 | 鍍敷鋼板 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017066523A (ja) | 2017-04-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6787002B2 (ja) | Al−Mg系溶融めっき鋼材 | |
JP6428974B1 (ja) | めっき鋼材 | |
JP6176424B1 (ja) | めっき鋼材 | |
JP6528627B2 (ja) | めっき鋼材 | |
JP6455517B2 (ja) | 準結晶含有めっき鋼板及び準結晶含有めっき鋼板の製造方法 | |
JP5785336B1 (ja) | 準結晶含有めっき鋼板 | |
EP2957648B1 (en) | Hot-dip al-zn alloy coated steel sheet and method for producing same | |
KR101807985B1 (ko) | 준결정 함유 도금 강판 | |
WO2020213688A1 (ja) | めっき鋼板 | |
JP2021172878A (ja) | 加工性と耐食性に優れる溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼材 | |
JP6001469B2 (ja) | 溶融Al−Zn系めっき鋼板とその製造方法 | |
KR20180039107A (ko) | Mg 함유 Zn 합금 피복 강재 | |
JP6075513B1 (ja) | 準結晶含有めっき鋼板及び準結晶含有めっき鋼板の製造方法 | |
WO2020213680A1 (ja) | めっき鋼材 | |
JP6880238B2 (ja) | 溶融めっき鋼線およびその製造方法 | |
JP2009024210A (ja) | 溶融亜鉛合金めっき鋼線 | |
JP2016153539A (ja) | 溶融Al−Zn系めっき鋼板とその製造方法 | |
JPH1088309A (ja) | 摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 | |
JP7406100B2 (ja) | めっき線及びその製造方法 | |
TWI512140B (zh) | 含準晶體之鍍敷鋼板 | |
JP6242576B6 (ja) | 溶融Al−Zn系めっき鋼板とその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20181019 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190415 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20200124 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200225 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200929 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20201012 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6787002 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |