JPH1088309A - 摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

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JPH1088309A
JPH1088309A JP24472596A JP24472596A JPH1088309A JP H1088309 A JPH1088309 A JP H1088309A JP 24472596 A JP24472596 A JP 24472596A JP 24472596 A JP24472596 A JP 24472596A JP H1088309 A JPH1088309 A JP H1088309A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摺動性および耐クレータリング性の双方を満
足した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供するのは困難で
あった。 【解決手段】 この発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
は、鋼板の少なくとも片面に、付着量が20〜90g/m2
であり、Al:0.1〜0.5 mass%,Ni:0.07〜0.25mass%、F
e:7.0〜13.0mass%を含有し、残部が亜鉛からなる組成
のめっき層を形成し、めっき層の表面の一部分がζ相で
あり、ζ相の結晶の大きさが1〜10μm、ζ相の表面被
覆率が1〜40%であり、また、このめっき鋼板の製造方
法は、Al:0.1〜0.2 mass%、Ni:0.04 〜0.20mass%、残
部が亜鉛からなり、浴温が 450〜480 ℃である亜鉛めっ
き浴中に、鋼板を浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、その
後、10〜20℃/sで昇温し、440 〜600 ℃の範囲内で加
熱保持し、そして20℃/s以上で降温するヒートパター
ン条件下で合金化処理を行うものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面処理鋼板、特に
自動車用鋼板として使用するのに適した、摺動性及び電
着塗装時の耐クレータリング性に優れた、合金化溶融亜
鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、塗装後耐
食性に優れていることから、自動車用鋼板として使用す
るのに適しているものの、一般に、プレス成形時にフレ
ーキングと呼ばれるめっき剥離が起こりやすいことで知
られている。
【0003】フレーキングは、プレス加工時にめっき層
がフレーク状に剥離する現象であり、特に、めっき層表
面に、Zn−Fe合金の中でFe含有率の低いζ相が生成した
場合に起こりやすい。
【0004】すなわち、ζ相は比較的軟らかく、めっき
層表面に粗大なζ相が存在すると、プレス成型時に金型
との摺動抵抗が増加し、それに伴って生じる大きな剪断
応力の作用によって、フレーキングが生じやすく、すな
わち摺動性が劣化する。
【0005】また、フレーキングが生じて金型に剥離し
ためっきが固着すると、プレス成形時の作業性等を著し
く悪化させる恐れがあるため、この点からもフレーキン
グを抑制する必要がある。
【0006】耐フレーキング性を向上させる手段として
は、例えば特開平4-13855 号公報に開示されている。
【0007】この公報の記載によれば、亜鉛めっき浴中
にNiを添加し、合金化を 450〜500℃で行うことによっ
て、めっき層表面にζ相が生成するのを完全に抑制し、
これによって、フレーキング等を抑制できるとしてい
る。
【0008】また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を自動車
用鋼板として使用する場合には、電着塗装時にクレータ
ー状の塗装欠陥が生じない性能、いわゆる耐クレータリ
ング性に優れていることも必要である。この耐クレータ
リング性を向上させる手段としては、例えば特開平8-92
714 号公報に開示されている。
【0009】この公報には、めっき層表面に一定量のζ
相を生成させることによって、電着塗装時の耐クレータ
リング性を良好にすることが記載されている。
【0010】従って、耐フレーキング性を向上させるに
は、めっき層表面にζ相を生成しないようにすることが
望ましく、一方、耐クレータリング性を向上させるに
は、めっき層表面に一定量のζ相を生成させることが望
ましく、よって、耐フレーキング性と電着塗装時の耐ク
レータリング性は、一般には相反する関係にあり、これ
らの性能の双方を満足させるのは困難であった。
【0011】また、めっき層表面にζ相が存在している
場合であっても(ζ相の存在は、上述したように、耐ク
レータリング性にとっては有利である。)、めっき層中
のΓ相の発生を少なくすることによって耐フレーキング
性を向上させた従来技術が、特開平4-103748号公報に開
示されている。
【0012】この公報の記載によれば、亜鉛めっき浴中
にAlを含有させ、Zn-Fe 合金化反応を抑制する効果があ
るAl-Fe-Zn合金の形成を制御し、比較的高温( 550 〜60
0 ℃) に保持した合金化炉内で合金化反応を開始するよ
うにすることで、Γ相の形成を抑制するとともに、表面
のζ相を微細に生成し、これによって、良好な耐フレー
キング性が得られるとしている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
4-103748号公報に記載された方法は、合金化反応を比較
的高温( 550 〜600 ℃) で行っているが、この温度は、
Zn-Fe の2元系状態図から考えると、ζ相が存在しえな
い温度であるため、この方法でζ相を残存させるのは極
めて困難であると推定される。
【0014】すなわち、この方法でζ相を残存させるに
は、合金化時間を相当短くする必要があるが、合金化時
間を、Zn-Fe-Al合金層の形成量によって設定するこの方
法では、合金化時間を正確にコントロールすることは極
めて困難であると考えられるからである。
【0015】また、高温での合金化は、一般的に低温で
の合金化に比べてΓ相が形成されやすく、亜鉛めっき浴
中にAlを含有させてもΓ相が形成されやすく、加工時に
めっき層が鋼板界面から剥離するパウダリングが起こり
やすいという問題もある。
【0016】
【課題を解決するための手段】そこで、発明者らは、摺
動性と電着塗装時の耐クレータリング性の双方を満足さ
せるための研究を繰り返し行ったところ、AlとNiの双方
を含有させた溶融亜鉛めっき浴中で溶融亜鉛めっきを行
い、その後、適正なヒートパターン条件下、より詳細に
は、昇温速度、保持温度、及び降温速度の適正化を図っ
たヒートパターン条件下で合金化処理を施すことによっ
て、めっき層表面に、微細なζ相結晶を形成するととも
に、ζ相の表面被覆率を適正範囲に抑制することがで
き、この結果、摺動性と電着塗装時の耐クレータリング
性の双方を満足する合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供す
ることが可能であることを見出し、この発明を完成した
ものである。
【0017】すなわち、この発明の合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板は、鋼板の少なくとも片面に、付着量が20〜90g
/m2 であり、Al:0.1〜0.5 mass%,Ni:0.07〜0.25mass
%、Fe:7.0〜13.0mass%を含有し、残部が亜鉛からなる
組成のめっき層を形成し、めっき層の表面の一部分がζ
相であり、ζ相の結晶の大きさが1〜10μm、ζ相の表
面被覆率が1〜40%である。
【0018】また、この発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼
板の製造方法は、Al:0.1〜0.2 mass%、Ni:0.04 〜0.20
mass%、残部が亜鉛からなり、浴温が 450〜480 ℃であ
る亜鉛めっき浴中に、鋼板を浸漬して溶融亜鉛めっきを
施し、その後、10〜20℃/sで昇温し、440 〜600 ℃の
範囲内で加熱保持し、そして20℃/s以上で降温するヒ
ートパターン条件下で合金化処理を行うものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に従う合金化溶融
亜鉛めっき鋼板の、めっき層の組成及び付着量、並びに
めっき層表面に形成されるζ相の結晶の大きさ及びその
表面被覆率と、本発明に従う合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の製造方法の、めっき浴の組成及び浴温、並びに合金化
処理のヒートパターン条件とについて、上記のように限
定した理由を、耐フレーキング性及び耐クレータリング
性と対応させながら以下に詳細に説明する。
【0020】(1) Al (a) めっき層中のAl含有率:0.1〜0.5 mass% Alを含有しない溶融亜鉛めっき浴中に鋼板を浸漬してめ
っきを行う場合、めっきと同時に鋼板界面でZn−Feの合
金化反応も生じるため、溶融めっき完了時にはめっき層
と鋼板界面にFe含有率の高いZn−Fe合金層が形成され、
さらにその後の合金化処理によって、Zn−Fe合金層は成
長しその厚みが厚くなりがちである。その合金層はΓ相
(Fe:22mass%)と呼ばれる堅く脆い性質を持つ合金層
で構成されているため、加工時にはパウダリングと呼ば
れるめっき剥離現象が起こりやすくなる。
【0021】一方、Alを含有させた亜鉛めっき浴中に鋼
板を浸漬してめっきを行う場合、鋼板表面には、Zn−Fe
−Al合金層(Al富化層)が形成され、めっき層(Zn)と
鋼板(Fe)の合金化反応が抑制されるので、溶融めっき
の際には、Zn−Fe合金層はほとんど形成されない。そし
て、その後合金化処理することによって、Al富化層を突
き破り鋼板の粒界からZn−Fe合金化が開始するようにな
る。Zn−Fe合金化の開始時期は、Al富化層が厚い程遅く
なり、耐パウダリング性劣化の原因となるΓ相の形成を
抑制することができる。
【0022】しかし、Al富化層が厚すぎると、合金化処
理時にZn−Fe合金化反応が起こらなくなり、この結果、
合金化ムラが生じたり、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得
ることができないという問題が生じる。そのため、めっ
き層中へのAlの含有率は、めっき層に、適正厚さのAl富
化層を形成するように制限する必要がある。
【0023】すなわち、めっき層中のAlの含有率が0.1
mass%未満では、Zn−Fe合金化が早く始まり、合金化処
理をすると脆いΓ相が多く形成され、加工時にパウダリ
ングが起きやすくなるので望ましくなく、また、0.5 ma
ss%を超えるとAl富化層の厚さが厚くなりすぎるためZn
−Fe合金化反応が起こりにくくなり、鋼板表面からめっ
き層中に適正量のFeを拡散させて含有させることが困難
となるためである。従って、めっき層中のAlの含有率
は、0.1 〜0.5 mass%とした。
【0024】(b) めっき浴中のAl含有率:0.1〜0.2 mass
% めっき浴中のAl含有率が0.2mass%を超えると、鋼板表面
にAl富化層が厚く形成するため、Zn-Fe 合金化が困難と
なる。また、Alの含有量が多くなると、後述の如くめっ
き浴中にドロス(Ni2Al3)が形成しやすくなるため、この
点からも0.2mass%を超えるAlの含有は好ましくない。さ
らに、Al含有率が0.1mass%未満では、Al富化層の形成が
不十分であるため、Zn-Fe 合金化が急速に進行し、Γ相
が形成しやすくなり、加工性が劣化するため好ましくな
い。従って、めっき浴中のAl含有率は、0.1 〜0.2 mass
%とした。
【0025】(2) Ni (a) めっき層中のNi含有率:0.07 〜0.25mass% Niを含有させた亜鉛めっき浴中に鋼板を浸漬してめっき
を行った場合、Niは、めっき層となる半凝固状態の亜鉛
(η相)中に固溶し、その後の合金化処理によって、Zn
−Fe合金相中に固溶する。そのため、Niを含有させた亜
鉛めっき浴中で行っためっきは、その後の合金化処理に
よって、通常のZn−Fe2元系合金の反応とは大きく異な
る挙動を示すZn−Fe−Ni3元系の合金化反応が進行する
ことになる。
【0026】そこで、発明者らが鋭意検討を行った結
果、めっき層中に適正量のNiを含有させることによっ
て、Zn−Fe−Ni3元系の合金化反応を適正に進行させる
ことによって、ζ相の形成を抑制できるとともに、ζ相
結晶を微細にすることができるという特有の効果を奏す
ることを見出したのである。
【0027】すなわち、めっき層中のNi含有率が0.07ma
ss%未満では、通常のZn-Fe 2元系合金の反応と同様の
合金化挙動を示すため、Niを含有させたことによる特有
の効果はほとんど認められないが、めっき層中のNi含有
率を0.07mass%以上にすることによって、Niを含有させ
たことによる上述した効果が得られることが判明したの
である。
【0028】めっき層中のNi含有率を0.07mass%以上に
することによって上述した効果が得られる理由は、合金
化初期の段階で、ζ相(FeZn13)の他にΓ2 相(FeZn4)
と呼ばれる、Niを固溶したZn−Fe合金相が生成し、この
Γ2 相は、Zn−Fe−Ni3元系状態図から、更なる合金化
処理によって、ζ相を経ずに直接δ1 相へ変態し、その
結果として、ζ相の形成が抑制されると考えられる。
【0029】尚、めっき層中にNiを含有させることによ
って、ζ相結晶が微細になるメカニズムについては明ら
かではないが、発明者らが、めっき層中のNi含有率を変
化させたときのζ相結晶の大きさについて調べたとこ
ろ、図1に示すように、めっき層中のNi含有率を0.07ma
ss%以上にすることで、実際にζ相結晶が微細になった
のである。
【0030】また、めっき層中のNiを0.25mass%を超え
て含有させても、ζ相結晶を微細にする更なる効果は得
られず、コストの点からNiの0.25mass%を超える含有は
好ましくなく、さらに、理由は不明であるが、合金化が
促進される効果が認められ、ζ相が消失してしまうた
め、耐クレータリングの点からも好ましくない。
【0031】従って、めっき層中のNi含有率は、0.07〜
0.25mass%、好ましくは0.07〜0.20mass%とした。
【0032】さらに、めっき層中にNiを含有させた合金
化溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層中にNiを含有しない
合金化溶融亜鉛めっき鋼板に比べて、ζ相の表面被覆率
を1〜40%に制御するために必要なFe含有率の範囲が低
含有率側へ拡張され、このFe含有率の範囲の低含有率側
への拡張は、適正なFe含有率の範囲が広くなって、操業
性が向上するという効果もある。
【0033】尚、この発明のように、めっき層中にNiを
含有させた場合に生成するζ相は、通常のZn−Fe2元系
合金におけるζ相(FeZn13)と同一の結晶構造を持ち、
柱状の形態を示す。
【0034】(b) めっき浴中のNi含有率:0.04 〜0.20ma
ss% 亜鉛めっき浴中のNi含有率は、0.15mass%を超えるとド
ロス(Ni2Al3)が形成し始め、0.2 mass%を超えるとド
ロスの量が顕著に増加する。ドロスの比重は亜鉛浴の比
重より小さいので、浴面を浮遊し、鋼板へ頻繁に付着す
るため、めっき外観の低下につながる。従って、前述の
Al含有率では、0.20mass% 、より好ましくは0.15mass%
以下にする必要がある。
【0035】また、亜鉛浴中Ni含有率が0.04mass%未満
であると、このめっき浴によって製造した合金化溶融亜
鉛めっき鋼板のめっき層が、合金化処理によって、Γ2
相が形成されないため、Γ相形成が抑制できないため好
ましくない。従って、めっき浴中のNi含有率は 0.04 〜
0.20mass%とした。
【0036】(3) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層
中のFe含有率:7.0〜13.0mass% 前記Fe含有率は、以下の理由から7.0 〜13.0mass% とし
た。すなわち、前記Fe含有率が7.0mass%未満だと、めっ
き表面にη相が残存するため、摺動性の点で好ましくな
く、また、13.0mass% を超えると、ζ相が消失し、所望
のζ相の表面被覆率が得られないからである。
【0037】(4) めっき付着量:20 〜90g/m2 めっき付着量は、以下の理由から20〜90g/m2とした。す
なわち、めっき付着量が20g/m2未満だと、表面にζ相が
残存しにくく、また、十分な耐食性が得られないため好
ましくなく、また、90g/m2を超えると、めっき- 鋼板界
面にΓ相が形成しやすくなり、加工性が劣化するからで
ある。
【0038】(5) ζ相の結晶の大きさ:1〜10μm ζ相結晶の大きさは、10μmを超えるとNi無添加時に形
成されるζ相と同じ大きさとなり、Ni無添加時と比較し
て摺動性向上の効果は得られず、また、1μm未満にし
てもそれ以上の摺動性向上効果が得られないからであ
る。従って、ζ相の結晶の大きさは1 〜10μmとした。
【0039】(6) ζ相の表面被覆率:1〜40% ζ相の表面被覆率は、1%未満では化成処理時に処理ムラ
が発生しやすくなるとともに、電着塗装時にクレータ欠
陥が発生しやすくなるからであり、また、40%を超える
と、化成処理及び耐クレータリング性の改善効果は飽和
することになる一方、η相が残存する場合が生じ、摺動
性、耐食性が悪くなるので好ましくない。従って、ζ相
の表面被覆率は1 〜40%、より好ましくは10〜30%とし
た。
【0040】(7) 溶融亜鉛めっき浴の温度:450〜480 ℃ 溶融亜鉛めっき浴の温度は、450 ℃未満では鋼板がめっ
き浴から出た時点でめっき層の凝固が進行するため付着
量制御が困難になるため好ましくなく、また、合金化さ
せるには、かなり長時間加熱しなければならず、合金層
の制御が困難となる。また、480 ℃を超えるとめっき鋼
板界面にAl富化層が十分に形成されず、Zn-Fe 合金反応
が進行してΓ相がめっき時に生成されることになり、そ
の結果、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐パウダリング性
が劣化するためである。従って、溶融亜鉛めっき浴の温
度は、450 〜480 ℃とした。
【0041】(8) 合金化処理のヒートパターン条件 合金化処理のヒートパターン条件は、この発明の製造方
法の構成上、特に重要である。以下に限定理由を説明す
る。
【0042】(a)昇温速度:10 〜20℃/s 合金化処理温度までの昇温速度は、10℃/s未満では所
望のζ相被覆率及びめっき層中Fe含有率を得ることがで
きず、また、20℃/sを超えると、めっきと鋼板との界
面に脆いΓ相が多量に形成し、耐パウダリング性が劣化
するためである。従って、合金化処理温度までの昇温速
度は10〜20℃/sとした。
【0043】(b)合金化処理温度:440〜600 ℃ 合金化処理温度は、440 ℃未満ではめっき表面に摺動
性、耐食性を劣化させるη相が残存するため好ましくな
く、また、600 ℃を超えると、めっき表面にζ相が存在
しなくなり、耐クレータリング性が劣化するためであ
る。従って、合金化処理温度は 440〜600 ℃、より好ま
しくは480 〜550 ℃とした。尚、合金化処理時間は、所
望の表面被覆率のζ相を残存させるために、3 〜40秒に
することが好ましい。
【0044】(c)降温速度: 20℃/s以上 合金化処理後の降温速度は、20℃未満では、めっき表面
層に残存するζ相がδ 1 相へ変態し、所望のζ相被覆率
が得られないためである。従って、合金化処理後の降温
速度は20℃/s以上、より好ましくは20〜30℃とした。
【0045】
【実施例】次に、この発明に従って種々の合金化溶融亜
鉛めっき鋼板を製造し、摺動性と耐クレータリング性を
評価したので、以下に説明する。 (実施例1〜8)通常のゼンジミアタイプの連続溶融め
っきラインで、鋼板上に溶融亜鉛めっきを行い、その
後、合金化処理を行った。めっき原板としては、Ti, Nb
添加極低炭素鋼板(0.7mm厚) を用いた。
【0046】溶融めっき浴中のAl及びNiの含有率(%) 、
合金化処理条件( 昇温速度( ℃/sec.)、合金化処理温度
( ℃) 、及び降温速度( ℃/sec.))、めっき層中のAl,
Ni,及びFeの含有率(%) 、ζ相の表面被覆率(%) 、ζ相
結晶の大きさ( μm)、めっき付着量(g/m2)については、
表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】また、ζ相結晶の大きさ、ζ相の表面被覆
率の測定方法、並びに摺動性及び耐クレータリング性の
評価方法については以下に示す。
【0049】(1) ζ相結晶の大きさの測定方法 めっき層表面を電子顕微鏡で観察することにより、スキ
ンパスの当たっていない部分について、100 μm×100
μmの範囲内にあるζ相結晶のうち、任意に20個のζ相
結晶を選択し、選択した各ζ相結晶について、その長手
方向の長さを測定し、それらの平均値を、ζ相結晶の大
きさとした。
【0050】(2) ζ相の表面被覆率の算出方法 めっき層表面を電子顕微鏡で観察することにより、スキ
ンパスの当たっていない部分について、δ1 相(粒状)
とζ相(柱状)の結晶形態で分類し、それぞれの被覆面
積を算出する方法が有効である。実際には、電子顕微鏡
での観察は倍率3500倍で行い、1試料の中でスキンパス
圧下部を除いて5箇所を選択し、写真撮影を行い、次に
その写真上に10mm間隔で直線を7本横方向に引き、その
線の全長(95mm×7本)の中でζ相を横切る部分の長さ
を測定し、下記式より算出される値を、ζ相の表面被覆
率とした。
【0051】
【数1】
【0052】(3) 摺動性 摺動性は、底面圧の平面摺動特性試験により評価した。
試験材は20×300mm の大きさで、表面は無塗油の状態で
ある。摺動条件は、面圧200kgf、引き抜き速度20mm/se
c.、摺動距離 100mmで試験を行い、得られた引き抜き加
重より摩擦係数を求め、以下のように評価した。評価結
果は表1に示す。 {摺動性評価} ◎:摩擦係数 0.25以下 ○:摩擦係数 0.25〜0.3 ×:摩擦係数 0.3 以上
【0053】(4) 耐クレータリング性 日本パーカライジング(株)製のりん酸塩処理液PBL302
0 を用いて、50×100mm に剪断しためっき鋼板に化成処
理を行った。そして、日本ペイント(株)製の電着塗料
PT−U80 を用いて、電着塗装を電圧 240V、スロープ通
電で行い、任意に選択した3箇所の1cm2 の範囲内で電
着塗装表面に発生したクレータの個数を目視で数え、そ
れらの平均値をクレータ発生密度とし、これによって、
耐クレータリング性を以下のように評価した。評価結果
は表1に示す。 {耐クレータリング性評価} ◎:クレータ発生密度 0.25以下 ○:クレータ発生密度 0.25〜0.3 ×:クレータ発生密度 0.3 以上
【0054】表1に示す評価結果から、実施例1〜8
は、いずれも摺動性と耐クレータリング性の双方とも優
れていた。一方、比較例1〜15は、いずれも、摺動性と
耐クレータリング性の双方を満足させることはできなか
った。
【0055】
【発明の効果】この発明によれば、表面処理鋼板、特に
自動車用鋼板として好適な摺動性および耐クレータリン
グ性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供すること
が可能になった。この発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板
を使用することにより、自動車製造工程において、プレ
ス加工不良や電着塗装時に発生するクレータ欠陥を防止
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき層中のNi含有率とζ相結晶の大きさとの
関係を示した図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の少なくとも片面に、付着量が20〜
    90g/m2 であり、Al:0.1〜0.5 mass%,Ni:0.07〜0.25
    mass%、Fe:7.0〜13.0mass%を含有し、残部が亜鉛から
    なる組成のめっき層を形成し、めっき層の表面の一部分
    がζ相であり、ζ相の結晶の大きさが1〜10μm、ζ相
    の表面被覆率が1〜40%であることを特徴とする、摺動
    性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化
    溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 Al:0.1〜0.2 mass%、Ni:0.04 〜0.20ma
    ss%、残部が亜鉛からなり、浴温が 450〜480 ℃である
    亜鉛めっき浴中に、鋼板を浸漬して溶融亜鉛めっきを施
    し、その後、10〜20℃/sで昇温し、440 〜600 ℃の範
    囲内で加熱保持し、そして20℃/s以上で降温するヒー
    トパターン条件下で合金化処理を行うことを特徴とす
    る、摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れ
    た合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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