JP2021042450A - 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021042450A
JP2021042450A JP2019167049A JP2019167049A JP2021042450A JP 2021042450 A JP2021042450 A JP 2021042450A JP 2019167049 A JP2019167049 A JP 2019167049A JP 2019167049 A JP2019167049 A JP 2019167049A JP 2021042450 A JP2021042450 A JP 2021042450A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
steel sheet
concentration
dip galvanizing
dip
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019167049A
Other languages
English (en)
Inventor
剛嗣 小西
Tsuyoshi Konishi
剛嗣 小西
友里 檜室
Yuri Himuro
友里 檜室
酒井 博
Hiroshi Sakai
博 酒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2019167049A priority Critical patent/JP2021042450A/ja
Publication of JP2021042450A publication Critical patent/JP2021042450A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Coating With Molten Metal (AREA)

Abstract

【課題】溶融亜鉛めっき処理の前にNiめっき処理を実施する場合であっても、溶融亜鉛めっき鋼板のドロス欠陥を抑制できる溶融亜鉛めっき浴を提供する。【解決手段】本開示の溶融亜鉛めっき浴は、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための溶融亜鉛めっき浴であって、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす。Y>0.357X+0.1457 (1)Y<0.217X+0.2122 (2)0.020≦X≦0.100 (3)ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。【選択図】図7

Description

本開示は、溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GIともいう)、及び、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GAともいう)は、次の製造工程により製造される。はじめに、溶融亜鉛めっき処理の対象となる鋼板(母材鋼板)を準備する。母材鋼板は、熱延鋼板であってもよいし、冷延鋼板であってもよい。母材鋼板を熱延鋼板とする場合、たとえば、酸洗された熱延鋼板を準備する。酸洗以外の他の処理が施された熱延鋼板を準備してもよい。母材鋼板を冷延鋼板とする場合、たとえば、焼鈍処理された冷延鋼板を準備する。焼鈍処理以外の他の処理が施された冷延鋼板を準備してもよい。準備された母材鋼板(上述の熱延鋼板又は冷延鋼板)を溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっき処理を実施し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合はさらに、溶融亜鉛めっき鋼板を合金化炉内で熱処理することにより、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
溶融亜鉛めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程中の、溶融亜鉛めっき処理の詳細は次のとおりである。溶融亜鉛めっき処理に用いられる溶融亜鉛めっき設備は、溶融亜鉛めっき浴が収納された溶融亜鉛ポットと、溶融亜鉛めっき浴中に配置されたシンクロールと、ガスワイピング装置とを備える。
溶融亜鉛めっき処理工程では、鋼板(母材鋼板)を溶融亜鉛めっき浴に浸漬させる。そして、溶融亜鉛めっき浴中に配置されたシンクロールにより、鋼板の進行方向を上方に転換させ、鋼板を溶融亜鉛めっき浴から引き上げる。引き上げられて上方に進む鋼板に対して、ガスワイピング装置からワイピングガスを鋼板表面に吹き付けて、余剰の溶融亜鉛を掻き取り、鋼板表面のめっき付着量を調整する。以上の方法により、溶融亜鉛めっき処理工程を実施する。なお、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合にはさらに、溶融亜鉛めっきの付着量が調整された鋼板を合金化炉に装入して合金化処理を実施する。
上述の溶融亜鉛めっき処理では、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬された鋼板から、溶融亜鉛めっき浴中にFeが溶出する。鋼板から溶融亜鉛めっき浴中に溶出したFeが、溶融亜鉛めっき浴中に存在するAlやZnと反応すると、ドロスと呼ばれる金属間化合物が生成する。ドロスにはトップドロスとボトムドロスとが存在する。トップドロスは、溶融亜鉛めっき浴よりも比重が軽い金属間化合物であり、溶融亜鉛めっき浴の液面に浮上するドロスである。ボトムドロスは、溶融亜鉛めっき浴よりも比重が重い金属間化合物であり、溶融亜鉛ポットの底に堆積するドロスである。ボトムドロスは、溶融亜鉛めっき処理中において、溶融亜鉛めっき浴中の鋼板の進行により発生する随伴流により、溶融亜鉛めっき浴中に浮遊する。このような浮遊したボトムドロスが溶融亜鉛めっき処理中の鋼板の表面に付着する場合がある。鋼板表面に付着したボトムドロスは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板又は溶融亜鉛めっき鋼板の表面において、点状の欠陥となる場合がある。このようなドロス起因の表面欠陥を、本明細書では、「ドロス欠陥」という。ドロス欠陥は合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の外観性を低下したり、耐食性を低下したりする。そのため、ドロス欠陥の発生を抑制できる方が好ましい。
ドロス欠陥の発生を抑制する技術が、特開平11−350096号公報(特許文献1)、及び特開平11−350097号公報(特許文献2)に提案されている。
特許文献1では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛浴温度をT(℃)とし、Cz=−0.0015×T+0.76で定義される境界Al濃度をCz(wt%)とした場合、溶融亜鉛浴温度Tを435〜500℃の範囲内にするとともに、境界Al濃度をCz±0.01wt%の範囲内に保持する。これにより、ドロスを微細化でき、ドロス欠陥の発生が抑制できる、と特許文献1には記載されている。
特許文献2では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、浴中Al濃度を0.15±0.01wt%の範囲内に保持する。これにより、ドロスを微細化でき、ドロス欠陥の発生が抑制できる、と特許文献2では記載されている。
特開平11−350096号公報 特開平11−350097号公報
ところで、母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層の密着性を高めるために、溶融亜鉛めっき処理前にNiめっき処理が施される場合がある。たとえば、上述の母材鋼板を準備する際、酸洗された熱延鋼板に対して、Niめっき処理を実施して、表面にNiめっき層が形成された熱延鋼板を準備する場合がある。他には、焼鈍処理された冷延鋼板に対して、Niめっき処理を実施して、表面にNiめっき層が形成された冷延鋼板を準備する場合がある。Niめっき処理を実施する場合であっても、ドロス欠陥を抑制できることが好ましい。
Niめっき処理を実施する場合には、特許文献1及び特許文献2に開示された技術を用いてもドロス欠陥を抑制できない場合があった。
本開示の目的は、Niめっき処理を実施する場合であってもドロス欠陥を抑制できる溶融亜鉛めっき浴、Niめっき処理を実施する場合であってもドロス欠陥を抑制できる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を利用した、Niめっき処理を実施する場合であってもドロス欠陥を抑制できる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することである。
本開示の溶融亜鉛めっき浴は、
溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための溶融亜鉛めっき浴であって、
Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
上述の溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)とは、溶融亜鉛めっき浴に溶融しているAl濃度(いわゆるフリーAl濃度)を意味する。つまり、本明細書において、「溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度」は、ドロス(トップドロス及びボトムドロス)に含まれるAl含有量を除く、溶融亜鉛めっき浴に溶融している(つまり、液相中の)Al濃度を意味する。同様に、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)とは、溶融亜鉛めっき浴に溶融しているNi濃度(いわゆるフリーNi濃度)を意味する。つまり、本明細書において、「溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度」は、ドロス(トップドロス及びボトムドロス)に含まれるNi含有量を除く、溶融亜鉛めっき浴に溶融している(つまり、液相中の)Ni濃度を意味する。
本開示の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、
鋼板に対してNiめっき処理をして、鋼板の表面にNiめっき層を形成するNiプレめっき工程と、
Niめっき層が形成された鋼板に対して、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理をしてNiめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき工程とを備える。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
上述の溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度とは、いわゆるフリーAl濃度を意味する。同様に、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度とは、いわゆるフリーNi濃度を意味する。
本開示の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上述の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を実施して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程と、溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を実施して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する合金化処理工程とを備える。
本開示の溶融亜鉛めっき浴は、溶融亜鉛めっき処理の前にNiめっき処理を実施する場合であっても、溶融亜鉛めっき鋼板のドロス欠陥を抑制できる。本開示の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき処理の前にNiめっき処理を実施する場合であってもドロス欠陥が抑制された溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。また、本開示による合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき処理の前にNiめっき処理を実施する場合であってもドロス欠陥が抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。
図1は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造に用いられる溶融亜鉛めっきライン設備の全体構成を示す機能ブロック図である。 図2は、図1中のNiプレめっき設備及び溶融亜鉛めっき設備の側面図である。 図3は、図2と異なる構成の溶融亜鉛めっき設備の側面図である。 図4は、図2及び図3と異なる構成の溶融亜鉛めっき設備の側面図である。 図5は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程の一例を示すフロー図である。 図6は、図5と異なる、溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程の一例を示すフロー図である。 図7は、実施例の結果を記載したグラフである。
従来、溶融亜鉛めっき浴中に発生したドロスが鋼板の表面に付着することで、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面において欠陥となることが知られている。このようなドロス起因の表面欠陥を、本明細書では、「ドロス欠陥」という。これまで、ドロス欠陥を抑制する方法が種々検討されている。
ドロスにはトップドロスとボトムドロスとが含まれることが知られている。トップドロスは、溶融亜鉛めっき浴よりも比重が軽い。そのため、トップドロスは溶融亜鉛めっき浴の液面に浮上しやすい。トップドロスは溶融亜鉛めっき浴の液面に浮上するため、常に回収することが可能であり、ドロス欠陥の原因になりにくいと考えられてきた。
一方、ボトムドロスはδ相ドロス、Γ相ドロス及びζ相ドロスを含むことが報告されている。これらボトムドロスは、溶融亜鉛めっき浴よりも比重が重い。そのため、ボトムドロスは、溶融亜鉛めっき浴が貯留されている溶融亜鉛ポットの底に堆積しやすい。堆積したボトムドロスは、溶融亜鉛めっき処理中において、溶融亜鉛めっき浴中の鋼板の進行により発生する随伴流により、溶融亜鉛めっき浴中に浮遊する。このような浮遊したボトムドロスが溶融亜鉛めっき処理中の鋼板の表面に付着しドロス欠陥を生じると考えられてきた。そのため、これまでは、ボトムドロスに起因したドロス欠陥を抑制する方法が検討されてきた。
従来、ドロス欠陥の原因はボトムドロスであると考えられてきた。そのため、ボトムドロスの低減が試みられてきた。ボトムドロスの生成量は、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度に影響を受ける。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度が高ければ、ボトムドロスの生成よりもトップドロスの生成が優先する。その結果、ボトムドロスの生成量が低減する。したがって、従来、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度を調整して、ドロス欠陥を抑制する方法が検討されてきた。
ところで、上述のとおり、溶融亜鉛めっき処理により母材鋼板の表面に形成された溶融亜鉛めっき層の密着性を高めるために、溶融亜鉛めっき処理前にNiめっき処理が施される場合がある。Niめっき処理により、鋼板の表面にNiめっき層が形成される。Niめっき層を有する鋼板が溶融亜鉛めっき浴中に浸漬されることで、Niめっき層上に溶融亜鉛めっき層が形成される。このとき、Niめっき層中のNiが溶融亜鉛めっき浴中に溶解し、溶融亜鉛めっき浴中にNiが含有される場合がある。
従来の検討は、Zn、Al及びFeの3つの元素を含有する溶融亜鉛めっき浴に対してドロス欠陥を抑制する方法についての検討であった。つまり、Zn、Al及びFeに加え、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴においてドロス欠陥を抑制する方法は、これまで検討されてこなかった。そのため、従来ドロス欠陥を抑制可能であった方法を、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴に適用しても、ドロス欠陥を抑制できない場合があることが分かった。
本発明者らは、溶融亜鉛めっき浴がNiを含有する場合に、ドロス欠陥が生じる原因について調査した。その結果、以下の知見を得た。
上述のとおり、トップドロスの比重は溶融亜鉛めっき浴の比重よりも軽いため、トップドロスは溶融亜鉛めっき浴の液面に浮上する。しかしながら、トップドロスが多量に生成した場合、その一部が、シンクロールやサポートロールに巻き込まれる、又は、トップドロスがシンクロールやサポートロール近傍から晶出して、シンクロールと鋼板との間に挟まれる。シンクロールと鋼板との間に挟まれたトップドロスが鋼板に押し当てられ、表面疵を発生する。トップドロスは硬質のドロスであり、鋼板の表面に付着した場合は、ドロス欠陥の原因になり得る。そのため、従来ドロス欠陥の原因になりにくいと考えられてきたトップドロスであっても、生成量が多ければ、ドロス欠陥の原因になり得る。
また、トップドロス及びボトムドロスを含むドロスの生成量は、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度だけでなく、Ni濃度にも大きく影響を受けることが分かった。そのため、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴の場合には、従来のように、Al濃度のみを調整しても、ドロスの生成量を抑制できない場合があることが分かった。
本発明者らは、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴であっても、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制する方法を検討した。その結果、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度をY(質量%)と定義し、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度をX(質量%)と定義した時、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が、式(3)を満たすことを前提として、Al濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(1)を満たせば、ボトムドロスの生成量が抑制できることを見出した。さらに、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が、式(3)を満たすことを前提として、Al濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(2)を満たせば、トップドロスの生成量が抑制できることを見出した。つまり、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(1)〜式(3)を満たせば、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制でき、その結果、ドロス欠陥を抑制できることを見出した。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
以上の知見に基づいて、本発明者らは、従来では検討の対象となっていなかった溶融亜鉛めっき浴中のNiに着目し、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度とAl濃度とが上述の式(1)〜式(3)を満たせば、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制でき、その結果、ドロス欠陥を抑制できることを見出した。
また、本発明者らは、上述の式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理を実施してNiめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成すれば、ドロス欠陥を抑制した溶融亜鉛めっき鋼板が製造できると考えた。
以上の説明のとおり、本実施形態の溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、従来の技術思想とは異なる発想に基づいて完成したものであって、具体的には、次のとおりである。
[1]の溶融亜鉛めっき浴は、
溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための溶融亜鉛めっき浴であって、
Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
上述の溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)とは、溶融亜鉛めっき浴に溶融しているAl濃度(いわゆるフリーAl濃度)を意味する。つまり、本明細書において、「溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度」は、ドロス(トップドロス及びボトムドロス)に含まれるAl含有量を除く、溶融亜鉛めっき浴に溶融している(つまり、液相中の)Al濃度を意味する。同様に、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)とは、溶融亜鉛めっき浴に溶融しているNi濃度(いわゆるフリーNi濃度)を意味する。つまり、本明細書において、「溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度」は、ドロス(トップドロス及びボトムドロス)に含まれるNi含有量を除く、溶融亜鉛めっき浴に溶融している(つまり、液相中の)Ni濃度を意味する。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及び溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が、上述の式(1)〜式(3)を満たせば、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制できる。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板のドロス欠陥を抑制できる。
[2]の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、
鋼板に対してNiめっき処理をして、鋼板の表面にNiめっき層を形成するNiプレめっき工程と、
Niめっき層が形成された鋼板に対して、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理をしてNiめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき工程とを備える。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
上述の溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度とは、いわゆるフリーAl濃度を意味する。同様に、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度とは、いわゆるフリーNi濃度を意味する。
Al濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、上述の式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理を実施すれば、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制できる。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板のドロス欠陥を抑制できる。
[3]の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、
[2]に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
溶融亜鉛めっき工程は、
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)を測定する濃度測定工程と、
測定した溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)に基づいて、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(1)〜式(3)を満たすよう溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整する操業条件調整工程とを含む。
ここで、「溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整する」とは、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度及びNi濃度を調整可能な溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整することを意味する。また、「溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整する」とは、溶融亜鉛めっき処理の操業条件を変更する行為だけでなく、操業条件を現状のまま維持する行為も含む。
上述の構成の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、測定した溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)に基づいて、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(1)〜式(3)を満たすよう溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整する。これにより、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制でき、その結果、ドロス欠陥を抑制できる。
[4]の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、
[3]に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
操業条件調整工程では、
求めた溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)に基づいて、(A)〜(C)の少なくとも1つを実施して、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)又はNi濃度(質量%)を調整する。
(A)溶融亜鉛めっき浴中へのAlの単位時間当たりの添加量を調整する。
(B)溶融亜鉛めっき処理を実施する溶融亜鉛めっき設備での鋼板の搬送速度を調整する。
(C)Niめっき層の付着量を調整する。
上記(A)〜(C)は、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)又はNi濃度(質量%)を調整するのに有効な操業条件である。したがって、測定した溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)又はNi濃度(質量%)に基づいて(A)〜(C)の少なくとも1つを実施して溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、式(1)及び式(2)を満たすよう調整でき、ドロス欠陥を抑制できる。
[5]の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、
[2]〜[4]のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を実施して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程と、
溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を実施して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程とを備える。
本実施形態の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、上述の本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を適用する。そのため、ドロス欠陥が抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。
以下、本実施形態の溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
[溶融亜鉛めっきライン設備1の構成について]
図1は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に用いられる溶融亜鉛めっきライン設備の全体構成の一例を示す機能ブロック図である。図1を参照して、溶融亜鉛めっきライン設備1は、Niプレめっき設備40と、溶融亜鉛めっき設備10と、調質圧延機(スキンパスミル)30とを備える。
Niプレめっき設備40では、鋼板に対してNiめっき処理が実施され、鋼板の表面にNiめっき層が形成される。Niめっき層が形成された鋼板は、溶融亜鉛めっき設備10に搬送される。溶融亜鉛めっき設備10は、Niプレめっき設備40の下流に配置される。溶融亜鉛めっき設備10では、Niめっき層が形成された鋼板に対して溶融亜鉛めっき処理が実施され、溶融亜鉛めっき鋼板、又は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が製造される。調質圧延機30は、溶融亜鉛めっき設備10の下流に配置される。調質圧延機30では、溶融亜鉛めっき設備10において製造された溶融亜鉛めっき鋼板、又は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して、必要に応じて軽圧下して、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面を調整する。
[Niプレめっき設備40について]
図2は、図1中のNiプレめっき設備40及び溶融亜鉛めっき設備10の側面図である。Niプレめっき設備40は、Niめっきセル401を備える。Niめっきセル401はNiイオンを含有するNiめっき浴を貯留する。Niめっきセル401は内部に図示しない電極を備える。鋼板は、Niめっきセル401内を通過し、この時にNiめっき浴に浸漬される。Niめっき浴中に浸漬した鋼板に、電極との間で電流を流すことで、鋼板の表面にNiめっき層が形成される。Niめっき処理は、周知の電気めっき法により実施される。
[溶融亜鉛めっき設備10について]
図2を参照して、溶融亜鉛めっき設備10は、溶融亜鉛ポット101と、シンクロール107と、サポートロール113と、ガスワイピング装置109と、合金化炉111とを備える。
Niプレめっき設備40の出側に相当する溶融亜鉛めっき設備10の上流端部は、ターンダウンロール201が配置されている。ターンダウンロール201の下流には、スナウト202が配置されている。スナウト202の下流端部は、溶融亜鉛めっき浴103中に浸漬されている。
ターンダウンロール201により搬送方向が下向きに変えられた鋼板Sは、スナウト202の内部を搬送されて、溶融亜鉛ポット101に貯留されている溶融亜鉛めっき浴103へと連続的に浸漬される。溶融亜鉛ポット101の内部には、シンクロール107が配置されている。シンクロール107は、鋼板Sの幅方向と平行な回転軸を有しており、シンクロール107の軸方向の幅は、鋼板Sの幅よりも大きい。シンクロール107は、鋼板Sと接触して鋼板Sの進行方向を溶融亜鉛めっき設備10の上方に転換させる。
サポートロール113は、溶融亜鉛めっき浴103中であって、シンクロール107の上方に配置されている。サポートロール113は、一対のロールを備えている。サポートロール113の一対のロールは、鋼板Sの幅方向と平行な回転軸を有している。サポートロール113は、シンクロール107により進行方向を上方に転換された鋼板Sを挟んで、上方に搬送される鋼板Sを支持する。
ガスワイピング装置109は、シンクロール107及びサポートロール113の上方であって、かつ、溶融亜鉛めっき浴103よりも上方に配置されている。ガスワイピング装置109は、一対のガス噴射装置を備える。一対のガス噴射装置は、互いに対向するガス噴射ノズルを有する。溶融亜鉛めっき処理時において、鋼板Sはガスワイピング装置109の一対のガス噴射ノズルの間を通過する。このとき、一対のガス噴射ノズルは、鋼板Sの表面と対向する。ガスワイピング装置109は、溶融亜鉛めっき浴103から引き上げられた鋼板Sの両表面に対してガスを吹き付けることにより、鋼板Sの両表面に付着した溶融亜鉛めっきの一部を掻き落とし、鋼板Sの表面の溶融亜鉛めっきの付着量を調整する。
合金化炉111は、ガスワイピング装置109の上方に配置されている。合金化炉111は、ガスワイピング装置109を通過して上方に搬送された鋼板Sを内部に通して、鋼板Sに対して合金化処理を実施する。合金化炉111は、鋼板Sの入側から出側に向かって順に、加熱帯、保熱帯、冷却帯を含む。加熱帯は鋼板Sの温度(板温)が略均一になるように加熱する。保熱帯は、鋼板Sの板温を保持する。このとき、鋼板Sの表面に形成された溶融亜鉛めっき層が合金化されて合金化溶融亜鉛めっき層になる。冷却帯は、合金化溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板Sを冷却する。以上のとおり、合金化炉111は、加熱帯、保熱帯、冷却帯を用いて、合金化処理を実施する。なお、合金化炉111は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合に、上述の合金化処理を実施する。一方、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、合金化炉111は合金化処理を実施しない。この場合、鋼板Sは、作動していない合金化炉111を通過する。ここで、作動していないとは、たとえば、合金化炉111がオンラインに配置されたまま、電源が停止した状態(起動していない状態)であることを意味する。合金化炉111を通過した鋼板Sは、トップロール115により次工程に搬送される。
溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、図3に示すとおり、合金化炉111がオフラインに移動してもよい。この場合、鋼板Sは、合金化炉111を通過することなく、トップロール115により次工程に搬送される。
なお、溶融亜鉛めっき設備10が溶融亜鉛めっき鋼板専用の設備である場合、溶融亜鉛めっき設備10は、図4に示すとおり、合金化炉111を備えていなくてもよい。
[溶融亜鉛めっきライン設備の他の構成例について]
溶融亜鉛めっきライン設備は、図1の構成に限定されない。図1の溶融亜鉛めっきライン設備1は調質圧延機30を備えるが、溶融亜鉛めっきライン設備1は、調質圧延機30を備えなくてもよい。溶融亜鉛めっきライン設備1は、少なくとも、Niプレめっき設備40及び溶融亜鉛めっき設備10を備えていればよい。調質圧延機30は、必要に応じて配置されればよい。また、溶融亜鉛めっきライン設備1は、Niプレめっき設備40よりも上流に、鋼板を酸洗するための酸洗設備を備えていてもよいし、酸洗設備以外の他の設備を備えていてもよい。溶融亜鉛めっきライン設備1は、Niプレめっき設備40よりも上流に焼鈍炉を備えてもよいし、Niプレめっき設備40の下流であって、溶融亜鉛めっき設備10の上流に、焼鈍炉を備えてもよい。溶融亜鉛めっきライン設備1はさらに、溶融亜鉛めっき設備10よりも下流に、調質圧延機30以外の他の設備を備えていてもよい。
[溶融亜鉛めっき浴について]
溶融亜鉛めっき浴は、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす。
Y>0.357X+0.1457 (1)
Y<0.217X+0.2122 (2)
0.020≦X≦0.100 (3)
ここで、式(1)〜式(3)のXには、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
上述の溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度とは、いわゆるフリーAl濃度を意味する。同様に、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度とは、いわゆるフリーNi濃度を意味する。
溶融亜鉛めっき浴の主成分はZnである。溶融亜鉛めっき浴はさらに、Znの他に、Al、Ni及びFeを含有する。つまり、本実施形態の溶融亜鉛めっき浴は、特定濃度のAl及び特定濃度のNiを含有し、残部がFe、Zn及び不純物からなるめっき液である。
[式(1)について]
式(1)は、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴中において、ボトムドロスの生成量が過剰になる境界を示す。Niを含有する溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度及びNi濃度が式(1)を満たさない場合、ボトムドロスの生成量が過剰になる。ボトムドロスが過剰に生成されれば、ドロス欠陥が発生する。本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度及びNi濃度を調整することでボトムドロスの過剰な生成を抑制する。
[式(2)について]
式(2)は、Niを含有する溶融亜鉛めっき浴中において、トップドロスの生成量が過剰になる境界を示す。Niを含有する溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度及びNi濃度が式(2)を満たさない場合、トップドロスの生成量が過剰になる。トップドロスが過剰に生成されれば、ドロス欠陥が発生する。本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度及びNi濃度を調整することでトップドロスの過剰な生成を抑制する。
[式(3)について]
式(3)は、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)の範囲を示す。溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が0.020%未満の場合、Niプレめっき工程において、Niめっき層が十分に形成されていないことを意味する。この場合、溶融亜鉛めっき層の不めっきが生じる。一方、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が0.100%超の場合、Niプレめっき工程において、Niめっき層の付着量が過剰であることを意味する。この場合、溶融亜鉛めっき層の密着性が低下する。したがって、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)は0.020〜0.100%である。溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)の下限は、好ましくは0.025%であり、より好ましくは0.030%であり、より好ましくは0.040%である。溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)の上限は、好ましくは0.090%であり、より好ましくは0.080%である。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)は、ドロスの生成量に影響を与える。Al濃度(質量%)が高ければ、ボトムドロスの過剰な生成が抑制される。一方、溶融亜鉛めっき浴中のAlは、溶融亜鉛めっき層中に取り込まれる。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が一定量以下であれば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において合金化が促進される。そのため、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)はたとえば0.150〜0.250%である。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)の下限は、0.155%であってもよいし、0.160%であってもよい。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)の上限は、0.240%であってもよいし、0.220%であってもよいし、0.180%であってもよい。
なお、溶融亜鉛めっき浴中のFe濃度(質量%)は特に限定されないが、たとえば0.02〜0.07%であってもよい。ここでいう溶融亜鉛めっき浴中のFe濃度(質量%)とは、溶融亜鉛めっき浴に溶融しているFe濃度(いわゆるフリーFe濃度)を意味する。つまり、本明細書において、「溶融亜鉛めっき浴中のFe濃度」は、ドロス(トップドロス及びボトムドロス)に含まれているFe含有量を除く、溶融亜鉛めっき浴に溶融している(つまり、液相中の)Fe濃度を意味する。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(フリーAl濃度)及びNi濃度(フリーNi濃度)はたとえば、レーザー誘起ブレークダウン分光法(Laser−induced breakdown spectroscopy:LIBS)を用いて求めることができる。LIBS法を用いた測定方法ではたとえば、図2の溶融亜鉛めっき浴103のうち、深さ方向Dにおける特定の深さ範囲、幅方向Wにおける特定の幅範囲、及び、長さ方向Lにおける特定の長さ範囲で区画される特定領域の成分を分析できるように、LIBS装置を溶融亜鉛めっき浴103内に浸漬する。LIBS装置から特定領域にパルスレーザーを直接照射して分光分析を実施する。具体的には、パルスレーザーを特定領域に照射して、プラズマを発生させる。プラズマの発光線(スペクトル線)に基づいて、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(フリーAl濃度)及びNi濃度(フリーNi濃度)を求める。LIBS法は周知の方法であり、LIBS装置は周到の装置を用いればよい。なお、Fe濃度(フリーFe濃度)も同様に、LIBS法を用いて測定することができる。
なお、溶融亜鉛めっき浴の上記特定領域からサンプルを採取し、ICP発光分光分析計を用いて、冷却したサンプル中のNi濃度を測定した場合、測定されたNi濃度はトータルNi濃度(質量%)である。しかしながら、Niはほとんどドロスに含まれない。そのため、ICP発光分光分析計を用いて得られたNi濃度(トータルNi濃度)は、溶融亜鉛めっき浴中に溶融しているフリーNi濃度とみなしてよい。つまり、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度は、LIBS法に替えて、ICP発光分光分析法により求めることもできる。この場合、サンプルは、溶融亜鉛めっき浴103内の同じ領域(特定領域)内から経時的に採取して、Ni濃度を経時的に求めてもよい。
また、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(フリーAl濃度)は、市販のアルミニウム測定器を用いて求めてもよい。
[本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について]
[利用する溶融亜鉛めっきライン設備ついて]
本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、溶融亜鉛めっきライン設備を用いる。溶融亜鉛めっきライン設備はたとえば、図1に示す構成を有する。本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に用いられる溶融亜鉛めっき設備は、図1に示す設備であってもよいし、図1に示す設備にさらに他の構成が追加されたものであってもよい。また、図1と異なる構成の周知の溶融亜鉛めっきライン設備を用いてもよい。
[溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の対象となる鋼板について]
本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に用いられる鋼板(母材鋼板)の鋼種及びサイズ(板厚、板幅等)は、特に限定されない。鋼板は、製造する溶融亜鉛めっき鋼板、又は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に求められる各機械的性質(たとえば、引張強度、加工性等)に応じて、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用される公知の鋼板を利用すればよい。自動車外板に用いられる鋼板を溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の対象の鋼板として利用してもよい。
本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の対象となる鋼板(母材鋼板)は、熱延鋼板であってもよいし、冷延鋼板であってもよい。母材鋼板として、たとえば、次の鋼板が用いられる。
(a)酸洗処理された熱延鋼板
(b)焼鈍処理された冷延鋼板
上記(a)及び(b)は、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に用いられる鋼板の例示である。本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に用いられる鋼板は、上記(a)及び(b)に限定されない。上記(a)及び(b)以外の処理が施された熱延鋼板又は冷延鋼板を、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の対象とする鋼板としてもよい。
[溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法]
図5は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程の一例を示すフロー図である。図5を参照して、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、Niプレめっき工程(S1)と、溶融亜鉛めっき工程(S2)とを備える。Niプレめっき工程(S1)では、上述の鋼板に対してNiめっき処理をして、鋼板の表面にNiめっき層を形成する。溶融亜鉛めっき工程(S2)では、Niめっき層が形成された鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理をしてNiめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成する。
[Niプレめっき工程について]
Niプレめっき工程(S1)では、周知のNiめっき処理を実施して、鋼板の表面にNiめっき層を形成する。Niめっき処理には、周知のNiめっき浴を使用しても良い。Niめっき浴はたとえば、50〜500g/LのNiイオンを含む水溶液である。Niめっき層の形成は電気めっきにより行われる。電気めっきの条件は適宜調整できる。電気めっきの条件はたとえば、電流密度:10〜150A/dm、めっき浴温度:40〜70℃である。
[溶融亜鉛めっき工程について]
溶融亜鉛めっき工程(S2)では、Niめっき層が形成された鋼板に対して、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理をしてNiめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成する。
本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、溶融亜鉛めっき工程(S2)では、上述の溶融亜鉛めっき浴を用いる。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)は、上述の式(1)〜式(3)を満たす。そのため、上述の溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理を実施すれば、トップドロスの生成量及びボトムドロスの生成量の両方を抑制できる。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板のドロス欠陥を抑制できる。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、上述の式(1)〜式(3)を満たすような溶融亜鉛めっき浴の温度、Alの添加速度、鋼板の搬送速度等の操業条件を予め設定しておき、設定された操業条件内で溶融亜鉛めっき工程(S2)を行うことで、溶融亜鉛めっき工程(S2)中の溶融亜鉛めっき浴が上述の式(1)〜式(3)を満たしてもよい。また、後述するように、溶融亜鉛めっき浴中の各成分の濃度を測定し、測定された各成分の濃度に基づいて操業条件を調整することにより、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、上述の式(1)〜式(3)を満たしてもよい。
[溶融亜鉛めっき浴の好ましい浴温について]
上述の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法における溶融亜鉛めっき浴の温度(浴温)は、好ましくは、440〜460℃である。溶融亜鉛めっき浴の浴温が440℃以上であれば、Znの凝固を抑制できる。一方、溶融亜鉛めっき浴の浴温が460℃以下であれば、金属蒸発がさらに抑制され、金属ヒュームの発生がさらに抑制される。したがって、溶融亜鉛めっき浴の好ましい浴温は440〜460℃である。
以上のとおり、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xが、式(1)〜式(3)を満たす。これにより、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)又は溶融亜鉛めっき鋼板(GI)において、ドロス欠陥を抑制できる。
[その他の製造方法]
図6に示すとおり、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法中の溶融亜鉛めっき工程(S2)は、濃度測定工程(S3)と、操業条件調整工程(S4)とを備えてもよい。この場合、溶融亜鉛めっき工程(S2)では、操業条件調整工程(S4)において溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)及びNi濃度(質量%)が、上述の式(1)〜式(3)を満たすように調整された溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理をする。
[濃度測定工程(S3)について]
図6を参照して、濃度測定工程(S3)では、Niプレめっき工程(S1)後において、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを測定する。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xはたとえば、上述のLIBS法を用いて求めることができる。LIBS法を用いた場合、図2の溶融亜鉛めっき浴103のうち、深さ方向Dにおける特定の深さ範囲、幅方向Wにおける特定の幅範囲、及び、長さ方向Lにおける特定の長さ範囲で区画される特定領域の成分を分析できるように、LIBS装置を溶融亜鉛めっき浴103内に浸漬する。LIBS装置から特定領域にパルスレーザーを直接照射して分光分析を実施して、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを求める。
なお、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xは、LIBS法に代えて、サンプルを用いたICP発光分光分析法により求めることもできる。この場合、溶融亜鉛めっき浴103内の同じ領域(特定領域)内からサンプルを経時的に採取して、Ni濃度Xを経時的に求めてもよい。また、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Yは、市販のアルミニウム測定器を用いて求めてもよい。
[操業条件調整工程(S4)について]
操業条件調整工程(S4)では、濃度測定工程(S3)により得られたAl濃度Y及びNi濃度Xに基づいて、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを調整する。Al濃度Y及びNi濃度Xが式(1)〜(3)を満たすよう調整すれば、調整方法は特に限定されない。
たとえば、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Yを調整する場合、次の(A)を実施する。
(A)溶融亜鉛めっき浴中へのAlの単位時間当たりの添加量を調整する。
溶融亜鉛めっき浴中のAlは、溶融亜鉛めっき処理が行われると消費される。そのため、適量のAlが溶融亜鉛めっき浴に随時供給される。Alの供給は、たとえばAlインゴットを溶融亜鉛めっき浴中に浸漬することによって行われる。上記(A)を実施する場合、たとえばAlインゴットの浸漬速度を調整しても良い。Alインゴットの浸漬速度を速くすれば、Alの供給量が上がり、Alの単位時間当たりの添加量が増加する。たとえば、Alインゴットの浸漬を一定時間停止すれば、Alの供給量が低下し、Alの単位時間当たりの添加量が減少する。溶融亜鉛めっき浴中へのAlの単位時間当たりの添加量を調整する方法は周知の方法でよく、特に限定されない。
たとえば、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを調整する場合、次の(B)又は(C)を実施する。
(B)溶融亜鉛めっき処理を実施する溶融亜鉛めっき設備での鋼板の搬送速度を調整する。
(C)Niめっき層の付着量を調整する。
上記(B)について、溶融亜鉛めっき設備での鋼板の搬送速度を遅くすれば、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬している鋼板の表面のNiめっき層から溶融亜鉛めっき浴への単位時間当たりのNiの溶解量が低減する。そのため、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを低減できる。一方、搬送速度を速くすれば、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬している鋼板の表面のNiめっき層から溶融亜鉛めっき浴への単位時間当たりのNiの溶解量が増加する。そのため、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを増加できる。
上記(C)について、Niプレめっき工程におけるNiめっき層の付着量を少なくすれば、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬している鋼板の表面のNiめっき層から溶融亜鉛めっき浴へのNiの溶解量が低減する。そのため、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを低減できる。一方、Niプレめっき工程におけるNiめっき層の付着量を多くすれば、溶融亜鉛めっき浴中に浸漬している鋼板の表面のNiめっき層から溶融亜鉛めっき浴へのNiの溶解量が増加する。そのため、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを増加できる。
溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度Xを調整する場合、上述の(B)及び(C)の両方を実施しても良いし、(B)のみを実施しても良いし、(C)のみを実施しても良い。また、上述の(A)〜(C)以外の他の方法により、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを調整してもよい。
式(1)〜式(3)に基づいて操業条件を調整する場合、Al濃度Y及びNi濃度Xのどちらを優先的に制御するかについては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、又は、溶融亜鉛めっき鋼板の操業条件等に応じて適宜決定すればよい。
以上のとおり、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを、式(1)〜式(3)を満たすように調整する。これにより、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)又は溶融亜鉛めっき鋼板(GI)において、ドロス欠陥を抑制できる。
[合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法]
上述の本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に適用可能である。
本実施形態による合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程と、合金化処理工程とを備える。溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程では、上述の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を実施する。合金化処理工程では、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程により製造された溶融亜鉛めっき鋼板に対して、図2に示す合金化炉111を用いて合金化処理を実施する。合金化処理方法は、周知の方法を適用すれば足りる。
以上の製造工程により、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。本実施形態の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を採用する。つまり、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xを式(1)〜式(3)を満たすように調整する。そのため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、ドロス欠陥が抑制される。
なお、本実施形態の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程、及び、合金化処理工程以外の他の製造工程を含んでもよい。たとえば、本実施形態の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、合金化処理工程後において、図1に示す調質圧延機30を用いて調質圧延を実施する調質圧延工程を含んでもよい。この場合、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面の外観品質をさらに高めることができる。また、調質圧延工程以外の他の製造工程を含んでもよい。
以下、実施例により本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の一態様の効果をさらに具体的に説明する、実施例での条件は、本実施形態の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、この一条件例に限定されない。
図2と同じ構成を有する溶融亜鉛めっき設備を利用して、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
鋼板として、自動車外板用鋼板を用いた。各試験番号の鋼板の化学組成は同じであった。鋼板に対して、周知のNiめっき処理を行い、鋼板の表面にNiめっき層を形成した。表1に示すAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)の溶融亜鉛めっき浴を準備した。溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y及びNi濃度Xは、LIBS法を用いて求めた。準備された溶融亜鉛めっき浴を用いて、Niめっき層表面に形成された鋼板に対して溶融亜鉛めっき処理を実施して、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、溶融亜鉛めっき浴の温度及び鋼板の搬送速度は各試験番号のいずれにおいても一定とした。表1中、式(1)の欄に白丸印(○)が記載されている場合、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(1)を満たしていることを示し、バツ印(×)が記載されている場合、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(1)を満たしていないことを示す。同様に、表1中、式(2)の欄に白丸印(○)が記載されている場合、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(2)を満たしていることを示し、バツ印(×)が記載されている場合、溶融亜鉛めっき浴のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(2)を満たしていないことを示す。
各試験番号において、図2の溶融亜鉛めっき浴103のうち、深さ方向Dにおいて、シンクロール107の上端から下端までの特定の深さ範囲D107内であって、かつ、溶融亜鉛めっき浴103の幅方向Wにおける特定の幅範囲、かつ、長さ方向Lにおける特定の長さ範囲で区画される特定領域のAl濃度Y、Fe濃度、及びNi濃度XをLIBS法により測定した。いずれの試験番号においても、溶融亜鉛めっき浴103中の同じ特定領域で、Al濃度Y、Fe濃度、Ni濃度Xを求めた。溶融亜鉛めっき浴中のFe濃度はいずれの試験番号においても、0.02〜0.07質量%の範囲内であった。
Figure 2021042450
各試験番号の溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき層の表面を目視で観察し、ドロス欠陥の有無を評価した。ボトムドロスに起因するドロス欠陥が生じた場合は、表1のボトムドロス欠陥の欄に「×」と表示し、ボトムドロスに起因するドロス欠陥が存在しなかった場合は、表1のボトムドロス欠陥の欄に「○」と表示する。同様に、トップドロスに起因するドロス欠陥が生じた場合は、表1のトップドロス欠陥の欄に「×」と表示し、トップドロスに起因するドロス欠陥が存在しなかった場合は、表1のトップドロス欠陥の欄に「○」と表示する。なお、ボトムドロスに起因するドロス欠陥は押し込み疵であるのに対し、トップドロスに起因するドロス欠陥はひっかき傷や不めっきであり、目視で区別可能であった。
[評価結果]
表1を参照して、試験番号5〜6、9〜20及び22〜24では、溶融亜鉛めっき工程における溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(1)〜式(3)を満たした。そのため、トップドロスに起因するドロス欠陥及びボトムドロスに起因するドロス欠陥が抑制された。
一方、試験番号1〜4、7及び8では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(1)を満たさなかった。そのため、ボトムドロスに起因するドロス欠陥が生じた。
試験番号21及び25〜28では、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(2)を満たさなかった。そのため、トップドロスに起因するドロス欠陥が生じた。
図7は、本実施例の結果を記載したグラフである。図7の横軸は、溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度X(質量%)である。図7の縦軸は、溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y(質量%)である。図7中、白丸印(○)は、ドロス欠陥が抑制された本発明例を示す。図7中、バツ印(×)は、ドロス欠陥が抑制できなかった比較例を示す。図7を参照して、溶融亜鉛めっき工程における溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度Y(質量%)及びNi濃度X(質量%)が式(1)〜式(3)を満たせば、ドロス欠陥が抑制されることが分かる。
以上、図面を参照しながら本実施形態の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本実施形態の技術的範囲に属するものと了解される。
10 溶融亜鉛めっき設備
40 Niプレめっき設備
101 溶融亜鉛めっきポット
103 溶融亜鉛めっき浴
107 シンクロール
109 ガスワイピング装置
111 合金化炉
202 スナウト

Claims (5)

  1. 溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための溶融亜鉛めっき浴であって、
    Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴。
    Y>0.357X+0.1457 (1)
    Y<0.217X+0.2122 (2)
    0.020≦X≦0.100 (3)
    ここで、式(1)〜式(3)のXには、前記溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、前記溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
  2. 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    鋼板に対してNiめっき処理をして、前記鋼板の表面にNiめっき層を形成するNiプレめっき工程と、
    前記Niめっき層が形成された前記鋼板に対して、Al及びNiを含有し、式(1)〜式(3)を満たす溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理をして前記Niめっき層上に溶融亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき工程とを備える、
    溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    Y>0.357X+0.1457 (1)
    Y<0.217X+0.2122 (2)
    0.020≦X≦0.100 (3)
    ここで、式(1)〜式(3)のXには、前記溶融亜鉛めっき浴中のNi濃度(質量%)が代入され、Yには、前記溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度(質量%)が代入される。
  3. 請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    前記溶融亜鉛めっき工程は、
    前記溶融亜鉛めっき浴中の前記Al濃度(質量%)及び前記Ni濃度(質量%)を測定する濃度測定工程と、
    測定した前記溶融亜鉛めっき浴中の前記Al濃度(質量%)及び前記Ni濃度(質量%)に基づいて、前記溶融亜鉛めっき浴中の前記Al濃度(質量%)及び前記Ni濃度(質量%)が、前記式(1)〜前記式(3)を満たすよう溶融亜鉛めっき処理の操業条件を調整する操業条件調整工程とを含む、
    溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    前記操業条件調整工程では、
    求めた前記溶融亜鉛めっき浴中の前記Al濃度(質量%)及び前記Ni濃度(質量%)に基づいて、(A)〜(C)の少なくとも1つを実施して、前記溶融亜鉛めっき浴中の前記Al濃度(質量%)又は前記Ni濃度(質量%)を調整する、
    溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    (A)前記溶融亜鉛めっき浴中へのAlの単位時間当たりの添加量を調整する。
    (B)前記溶融亜鉛めっき処理を実施する溶融亜鉛めっき設備での前記鋼板の搬送速度を調整する。
    (C)前記Niめっき層の付着量を調整する。
  5. 請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を実施して前記溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程と、
    前記溶融亜鉛めっき鋼板に対して合金化処理を実施して、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する工程とを備える、
    合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
JP2019167049A 2019-09-13 2019-09-13 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Pending JP2021042450A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167049A JP2021042450A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019167049A JP2021042450A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021042450A true JP2021042450A (ja) 2021-03-18

Family

ID=74863064

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019167049A Pending JP2021042450A (ja) 2019-09-13 2019-09-13 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021042450A (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0525600A (ja) * 1991-07-17 1993-02-02 Nippon Steel Corp プレNi合金めつき法による溶融Znめつき鋼板および合金化溶融Znめつき鋼板の製造方法
JPH0860329A (ja) * 1994-08-11 1996-03-05 Kobe Steel Ltd 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JPH1088309A (ja) * 1996-09-17 1998-04-07 Kawasaki Steel Corp 摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JPH1150217A (ja) * 1997-07-31 1999-02-23 Kawasaki Steel Corp 連続溶融金属めっき浴のドロス生成防止方法
JP2006299290A (ja) * 2005-04-15 2006-11-02 Nippon Steel Corp スポット溶接性、塗装性、加工性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板およびその製造方法
JP2007107035A (ja) * 2005-10-12 2007-04-26 Nippon Steel Corp 溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法
WO2019131563A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 日本製鉄株式会社 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
WO2019131562A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 日本製鉄株式会社 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0525600A (ja) * 1991-07-17 1993-02-02 Nippon Steel Corp プレNi合金めつき法による溶融Znめつき鋼板および合金化溶融Znめつき鋼板の製造方法
JPH0860329A (ja) * 1994-08-11 1996-03-05 Kobe Steel Ltd 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JPH1088309A (ja) * 1996-09-17 1998-04-07 Kawasaki Steel Corp 摺動性及び電着塗装時の耐クレータリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
JPH1150217A (ja) * 1997-07-31 1999-02-23 Kawasaki Steel Corp 連続溶融金属めっき浴のドロス生成防止方法
JP2006299290A (ja) * 2005-04-15 2006-11-02 Nippon Steel Corp スポット溶接性、塗装性、加工性に優れた溶融亜鉛メッキ鋼板およびその製造方法
JP2007107035A (ja) * 2005-10-12 2007-04-26 Nippon Steel Corp 溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法
WO2019131563A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 日本製鉄株式会社 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
WO2019131562A1 (ja) * 2017-12-25 2019-07-04 日本製鉄株式会社 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101692684B1 (ko) 용해 도금 강재 및 그 제조 방법
JP6222401B2 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、高強度溶融亜鉛めっき鋼板用熱延鋼板の製造方法、高強度溶融亜鉛めっき鋼板用冷延鋼板の製造方法、および高強度溶融亜鉛めっき鋼板
JP2023054818A (ja) Fe系電気めっき鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板、並びにこれらの製造方法
JP5790443B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2011246744A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき冷延鋼板およびその製造方法
JP6919724B2 (ja) 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JPH0688187A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP4816068B2 (ja) めっき密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP2006265666A (ja) 連続溶融金属めっき装置
JP2021042450A (ja) 溶融亜鉛めっき浴、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP7136349B2 (ja) 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6962475B2 (ja) 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、及び、溶融亜鉛めっき鋼板
JP6919723B2 (ja) 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP7247946B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
KR102031308B1 (ko) 도금강선 및 그 제조방법
JP7136350B2 (ja) 溶融亜鉛めっき処理方法、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、その溶融亜鉛めっき処理方法を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP7252463B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、及び、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP2009191338A (ja) 表面外観およびめっき密着性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP7235165B2 (ja) Fe系皮膜付き素材冷延鋼板、Fe系皮膜付き素材冷延鋼板の製造方法、Fe系皮膜付き冷延鋼板の製造方法、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP7265217B2 (ja) ホットスタンプ用めっき鋼板
JP3636132B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP2019214784A (ja) 高強度めっき鋼板の製造方法
JPH11246956A (ja) 溶融亜鉛めっき方法
JP2018178158A (ja) 溶融金属めっき鋼帯の製造方法
JPH0860322A (ja) Si−P含有鋼溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220512

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230222

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230822