JP2000234160A - 鋼素地露出部の耐赤錆流れ性とめっき面の耐局部腐食性を改善したZn含有Al系めっき鋼板およびその製造法 - Google Patents

鋼素地露出部の耐赤錆流れ性とめっき面の耐局部腐食性を改善したZn含有Al系めっき鋼板およびその製造法

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JP2000234160A
JP2000234160A JP3346199A JP3346199A JP2000234160A JP 2000234160 A JP2000234160 A JP 2000234160A JP 3346199 A JP3346199 A JP 3346199A JP 3346199 A JP3346199 A JP 3346199A JP 2000234160 A JP2000234160 A JP 2000234160A
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宏 田中
Masahiko Soda
正彦 惣田
Minoru Saito
実 斎藤
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼素地露出部からの赤錆流れを安定的に防止
でき、かつ、めっき面の局部腐食性にも優れたZn含有Al
系めっき鋼板を提供する。 【解決手段】 鋼板を溶融Al系めっき浴(好ましくはS
i:3〜15質量%を含む)に浸漬して引き上げ、めっき付
着量調整後、めっき層が未凝固状態にあるうちにZn粉末
をキャリアガスとともに鋼板の少なくとも一方の面に吹
き付けるZn含有Al系めっき鋼板の製造において、めっき
層の凝固開始温度に対し+10℃〜+50℃の温度範囲にあ
る未凝固状態のめっき層に、5μm以上かつめっき層厚さ
の2倍以下の範囲に粒子径が調整されたZn粉末を、凝固
後のめっき層におけるAl相中にZnが5〜20質量%の割合
で均一に固溶するように吹き付け量をコントロールして
吹き付ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼素地露出部の耐
赤錆流れ性に優れ、かつ、めっき面の耐局部腐食性にも
優れたZn含有Al系めっき鋼板およびその製造法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】Alめっき鋼板,Al−Si合金めっき鋼板等
に代表される「Al系めっき鋼板」は、Znめっき鋼板に比
べめっき面の耐食性に優れているので、従来から比較的
耐食性を重視する外装建材等の用途に使用されている。
【0003】しかしAl系めっき鋼板は、めっき層表面が
下地の「鋼」より貴な電位になっているため、めっき層
の犠牲防食作用が働かない。このため、めっき面自体の
耐食性には優れるものの、切断端面などの鋼素地露出部
においては鋼素地の腐食による赤錆が生じる。特にめっ
き鋼板の端面を他のめっき鋼板上に乗るように重ね合わ
せた施工においては、この赤錆がめっき鋼板上に流れ出
して外観を著しく損ねることがある。
【0004】Al系めっき鋼板に犠牲防食作用を付与する
手法として、Al系めっき層上にZnめっき層を形成する手
法が考えられる。しかし、Al系めっき鋼板の表面は通常
酸化皮膜に覆われているため、Znめっき層との密着性に
乏しいという本質的な問題がある。この密着性の改善に
はジンケート処理等の前処理で対処することもできる
が、密着性に不均一が生じやすい点や処理時間が長い点
などから営業生産では採用し難い。
【0005】そこで他の手法として、特開平7−224367
号公報には、溶融Al系めっき鋼板のめっき層が未凝固状
態にあるうちにZn粉末を特定の流速で吹き付け、Znをめ
っき層に拡散させる方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記特開平7−224367
号公報の方法によれば、溶融Al系めっき鋼板のめっき層
に犠牲防食作用が付与され、鋼素地露出部での赤錆発生
を軽減することができる。しかしながら発明者らが詳細
に追試を行ったところ、条件によっては犠牲防食の効果
が不十分となる場合があり、必ずしも端面からの赤錆流
れを完全に防止し得るとは限らないことが判ってきた。
さらに、めっき面の耐食性についても、局部腐食性の傾
向が現れる場合があり、溶融Al系めっき鋼板本来の高耐
食性が必ずしも維持できるとは限らなかった。
【0007】一方、高い犠牲防食作用を示すAl系めっき
鋼板として、溶融Al−Zn合金めっき鋼板が既に建材用途
等で実用化されている。しかし、この種の合金めっき鋼
板は端面からの赤錆流れの防止が可能である反面、めっ
き層中でのZnの偏析が避けられないことに起因してめっ
き面に孔食が生じやすく、局部腐食性が大きいという欠
点を有している。
【0008】本発明は、鋼素地露出部からの赤錆流れを
安定的に防止でき、かつ、めっき面の局部腐食性にも優
れたZn含有Al系めっき鋼板を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、未凝固状態にある溶融Al系めっ
き層にZnを添加して形成したZn含有Al系めっき層を鋼板
の少なくとも片面に有するめっき鋼板において、前記Zn
含有Al系めっき層を構成するAl相中にZnが5〜20質量%
の割合で均一に固溶していることを特徴とする鋼素地露
出部の耐赤錆流れ性とめっき面の耐局部腐食性を改善し
たZn含有Al系めっき鋼板である。
【0010】溶融Al系めっき鋼板の表面構造は、一般的
には下から順に「鋼板素地」→「鋼板素地中のFeと
めっき金属が反応して生じた合金層」→「めっき金属
を主体としためっき層」となる。のめっき層はめっき
浴組成によってAl相単相、あるいはAl相と他の相からな
る複相の金属組織を呈する。請求項1の発明ではこのAl
相中に固溶しているZnの量がAl相中の全元素の量に対し
て5〜20質量%であることを意味する。また、Znが均一
に固溶しているとは、Znの濃化部分(偏析等)がないこ
とを意味する。
【0011】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、溶融Al系めっき層が、Si:3〜15質量%を含む溶融A
l系めっき浴で付着したものである点を規定したもので
ある。
【0012】請求項3の発明は、鋼板を溶融Al系めっき
浴に浸漬して引き上げ、めっき付着量調整後、めっき層
が未凝固状態にあるうちにZn粉末をキャリアガスととも
に鋼板の少なくとも一方の面に吹き付けるZn含有Al系め
っき鋼板の製造において、めっき層の凝固開始温度に対
し+10℃〜+50℃の温度範囲にある未凝固状態のめっき
層に、5μm以上かつめっき層厚さの2倍以下の範囲に粒
子径が調整されたZn粉末を、凝固後のめっき層における
Al相中にZnが5〜20質量%含有されるように吹き付け量
をコントロールして吹き付けることを特徴とする鋼素地
露出部の耐赤錆流れ性とめっき面の耐局部腐食性を改善
したZn含有Al系めっき鋼板の製造法である。ここで、め
っき層の凝固開始温度は、Znを添加しない場合における
凝固開始温度、すなわち、Zn添加前の未凝固状態にある
めっき金属がそのままの組成で凝固する場合の凝固開始
温度をいう。粒子径は、個々の粒子の最大径(最も径の
長い部分の長さ)をいう。めっき層厚さは、前記のめ
っき層厚さをいう。
【0013】請求項4の発明は、請求項3の発明におい
て、溶融Al系めっき浴としてSi:3〜15質量%を含むめ
っき浴を使用し、600〜640℃の温度範囲にある未凝固状
態のめっき層にZn粉末を吹き付ける点を規定したもので
ある。
【0014】請求項5の発明は、片面のみにZnを添加し
たZn含有Al系めっき鋼板の製造法であって、請求項3ま
たは4の発明おいて、Zn粉末をキャリアガスとともにZn
粉末吹き付けノズルから鋼板の片面に吹き付けると同時
に、鋼板のもう一方の面には前記Zn粉末吹き付けノズル
に対向する位置に設置したダミーノズルからガスのみを
吹き付けて鋼板の両面に加わる吹き付け力を均等にする
ことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明では、Al系めっき層を構成
するAl相中にZnを固溶させることにより、そのAl相の電
位を鋼板素地より卑な電位にし、Al相に犠牲防食作用を
生じさせる。またZnを均一に固溶させること、すなわち
Znの濃化部分(偏析等)を作らないようにZnを含有させ
ることにより、めっき面に局部腐食性の傾向が生じない
ようにする。
【0016】本発明のZn含有Al系めっき鋼板は、未凝固
状態にある溶融Al系めっき層にZnを添加して形成させた
Zn含有Al系めっき層を有していることが必要である。Zn
の添加方法としては、例えば後述するようにキャリアガ
スとともにZn粉末を吹き付ける方法が挙げられる。Znを
未凝固状態のめっき層に直接添加することによって、め
っき層は通常よりも著しく急速に凝固する。凝固速度が
大きいために、本来Znの濃化相が生じるような場合であ
っても、Al相中にZnを均一に固溶した状態で凍結させる
ことができるのである。
【0017】前述のようにめっき浴組成によって、めっ
き層の構成はAl単相である場合やAl相とその他の相から
なる場合が生じる。いずれの場合であってもZnはAl相中
に固溶し得るため、Al相自体に犠牲防食作用を付与する
ことができる。Al系めっき鋼板における鋼素地露出部か
らの赤錆流れを安定して防止し得る高い犠牲防食作用を
付与するには、Al相中のZn濃度を5質量%以上にしなく
てはならない。ただし、Al相中のZn濃度が20質量%を超
えるとめっき層自体の耐食性が劣化し、Al系めっき鋼板
本来の優れた長期耐食性が享受できなくなる。したがっ
て本発明ではAl相中に固溶するZnの濃度を5〜20質量%
に規定する。
【0018】また、Al相中のZnは、単に分散していると
いうだけでは足りず、濃化部分を形成することなく均一
に固溶していなくてはならない。Znの濃化部分が存在す
るような分散の仕方では、そのZn濃化部分で優先的に腐
食が進行しやすくなり、いわゆる局部腐食性を呈するこ
とになる。局部腐食が生じた場合、外観の劣化に加え、
Znが濃化した部分のめっきの腐食速度が速くなり、早期
にめっき層(全体)がなくなるため、鋼板表面から赤錆
が生じることがある。したがって本発明のZn含有Al系め
っき鋼板は、めっき層を構成するAl相中にZnが均一に固
溶していることを要件とする。
【0019】以上規定したようなZn含有Al系めっき層
は、鋼板の少なくとも片面に形成していることで十分な
犠牲防食作用を発揮する。すなわち、鋼板の一方の面を
上記のZn含有Al系めっき層とし、もう一方の面はZnを添
加していない通常の溶融Al系めっき層とすることができ
る。片面のみをZn含有Al系めっき層とした場合、その鋼
板を使用した建材では、Zn添加面を裏とし、Zn無添加の
Al系めっき層が雨水に曝される側になるよう施工するこ
とが望ましい。こうすることで、表側の面はAl系めっき
層本来の長期耐食性を呈するようにできるとともに、切
断端面からの赤錆流れは裏側のZn含有Al系めっき層の犠
牲防食作用によって防止することができる。
【0020】本発明で対象とするZn含有Alめっき層とし
ては、純Alめっき浴で形成したAlめっき層にZnを添加し
てAl−Zn合金めっき層としたものの他、Alと他の金属の
合金めっき浴で形成したAl系合金めっき層にZnを添加し
たものが採用できる。Al系合金めっき層の場合は、Al相
(通常は合金元素をいくらか固溶している)が少なくと
もめっき層(前記の)の50体積%以上を占めているこ
とが必要である。また、Si:3〜15質量%を含有する溶
融Al系合金めっき浴を用いると、i)Si添加によりめっき
浴の融点が低下するため、溶融金属を入れる鍋等の耐久
性が良好となる、ii)Si添加によりめっき時のAl−Fe合
金層の成長を抑制することができる、といった利点があ
る。
【0021】このようなZn含有Al系めっき鋼板は、鋼板
を溶融Al系めっき浴に浸漬して引き上げ、めっき付着量
調整後、めっき層が未凝固状態にあるうちにZn粉末をキ
ャリアガスとともに鋼板の少なくとも一方の面に吹き付
ける方法を利用して製造することができる。その際、前
述のように凝固後のめっき層のAl相中にZnが5〜20質量
%の割合で固溶されることが重要であるから、そうなる
ように吹き付け量をコントロールしなければならない。
吹き付け量のコントロールは、例えば、単位面積に単位
時間当たりに吹き付けるZn粉末の量と、Al相中に固溶さ
れるZnの濃度との関係に及ぼす、溶融めっき浴組成,溶
融めっき層の付着量,通板速度,キャリアガス流速等の
パラメーターの影響を予め把握しておき、操業時の前記
パラメーターに応じてAl相中に含有されるZn濃度が適正
値になるよう吹き付け量を決定する方法で行うことがで
きる。また、操業中に前記パラメーターの変化に追従し
て吹き付け量を逐次変化させる制御手段を用いてもよ
い。
【0022】本発明の方法では、吹き付けたZn粉末をAl
相中に均一に固溶させる。発明者らの詳細な検討の結
果、そのためには、i) Zn粉末が未凝固状態のめっき金
属と反応してめっき金属中に完全に拡散すること、およ
び、ii) Znの添加されためっき金属が急速に凝固してZn
の偏析が生じないことが極めて重要であることがわかっ
た。さらに、上記i)ii)の要件を満たすためには、Zn粉
末を吹き付ける際の未凝固状態にあるめっき層の温度、
および吹き付けるZn粉末の粒子径を厳密にコントロール
することが必要であることを知見した。
【0023】Alめっきや種々のAl系合金めっきにおい
て、Zn粉末が吹き付けられる時点における未凝固状態の
めっき層の適正な温度範囲は、そのめっき層の凝固開始
温度との相対的な温度差によって規定できることがわか
った。
【0024】Zn粉末吹き付け時点のめっき層温度が「凝
固開始温度+10℃」未満であると、付着したZn粉末から
の抜熱により急速に凝固が開始し、Znがめっき層中に十
分拡散しないで凝固が完了してしまう。この場合、めっ
き層にZnの濃化部分が存在することになり、めっき面は
局部腐食性を呈するものとなり好ましくない。Zn粉末吹
き付け時点のめっき層温度が「凝固開始温度+10℃〜+
50℃」の範囲にあるときには、Zn粉末の粒子径が後述す
るように規定されている限り、Zn粉末がAl相中に均一に
拡散するに足る高温での時間的余裕が確保され、かつ、
Znの偏析が起こらない程度の速い凝固速度が達成され
る。この場合、均一に拡散したZnはAl相中に均一に固溶
した状態で凍結されるので、めっき面は局部腐食性を示
さず、好ましいものが得られる。しかし、「凝固開始温
度+50℃」を超えるめっき層温度では、Zn粉末からの抜
熱による急冷凝固の効果が十分に発揮されず、通常の溶
融めっき鋼板における場合と同様の凝固形態が現れる。
すなわち、未凝固状態のめっき層中に拡散したZnは、凝
固する際にAl相中において偏析することになり、めっき
面は局部腐食性を呈するものとなるので、好ましくな
い。
【0025】溶融Alめっき浴としてSi:3〜15質量%を
含むめっき浴を使用する場合は、めっき層の凝固開始温
度は590℃であるから、Zn粉末吹き付け時点のめっき層
温度を600〜640℃の温度範囲にすればよい。
【0026】以上のように、Zn粉末を吹き付ける時点で
の未凝固状態のめっき層の温度は「凝固温度+10℃〜+
50℃」の範囲に調整する必要があるが、その場合であっ
ても、吹き付けるZn粉末の粒子径が適正な範囲に調整さ
れていないと、Al相中にZnを均一に固溶させることがで
きるとは限らない。発明者らの調査によると、Zn粉末の
粒度分布は、粒子径が5μm以上、かつめっき層厚さの2
倍以下の範囲に調整されていなくてはならない。
【0027】粒子径が5μm未満のZn粒子は、めっき層に
到達する直前で鋼板に沿って流れるキャリアガス流に乗
るため、めっき層に衝突する速度が遅くなり、めっき層
表面の酸化皮膜を破ることができない。そのため、この
ような小さなZn粒子はめっき層上に付着しただけの状態
となり、めっき層内部に拡散しない。一方、粒子径がめ
っき層厚さの2倍を超えるような大きなZn粒子は、めっ
き層に衝突した時点で約半分以上の部分がめっき層から
突出した状態であるため、めっき層が凝固するまでの間
にAl相中に完全に拡散することができない。したがっ
て、粒子径が「5μm以上、かつめっき層厚さの2倍以下
の範囲」に調整されていないZn粉末を使用した場合に
は、めっき層表面や内部にZn濃化部分が形成されてしま
い、局部腐食性を呈するめっき鋼板が得られ好ましくな
い。
【0028】以上の規定に従って形成されるZn含有Al系
めっき層は、鋼板の片面だけに形成することによって鋼
素地露出部からの赤錆流れの発生を防止することができ
る。このような片面のみにZnを添加した経済的なZn含有
Al系めっき鋼板を、既存の連続溶融めっきラインを利用
して効率的に製造するには、Zn粉末をキャリアガスとと
もにZn粉末吹き付けノズルから鋼板の片面に吹き付ける
と同時に、鋼板のもう一方の面には前記Zn粉末吹き付け
ノズルに対向する位置に設置したダミーノズルからガス
のみを吹き付けて鋼板の両面に加わる吹き付け力を均等
にすることが望ましい。こうすることにより通板中の鋼
板の姿勢が安定し、作業効率および品質の向上が図れ
る。
【0029】
【実施例】〔実施例1〕既存の連続溶融めっきラインに
Zn粉末吹き付け装置を設置してZn含有Al系めっき鋼板を
製造した。めっき原板はAlキルド低炭素鋼板を用い、め
っき浴組成はAl−9.5質量%Si−1.8質量%Feとした。図
1に示すように、めっき浴を出た鋼板に対してガスワイ
ピングノズル(YGノズル)にてめっき付着量を片面当
たり厚さ40μmに調整し、ガスワイピングノズルの直上
に設けたZn粉末吹き付けノズルからZn粉末をキャリアガ
ス(N2)とともに鋼板の片面のみに吹き付けた。また同
時に鋼板の反対側の面には前記Zn粉末吹き付けノズルと
対向する位置に設けたダミーノズルからガス(N2)のみ
を吹き付け、鋼板両面に加わる吹き付け力が均等になる
ようにし、鋼板の姿勢を安定化した。Zn粉末は粒子径が
15〜70μm(平均42μm)に調整されたものを用い、キャ
リアガスの流速は鋼板位置で30m/sとなるようにした。Z
n粉末吹き付けノズルはめっき層が620℃または660℃の
未凝固状態にある位置にZn粉末が吹き付けられるように
設置した。めっき層の温度は放射温度計にて測定した。
なお、この浴で形成させためっき層の凝固開始温度は59
0℃であることが確かめられている。Zn粉末の吹き付け
量を種々変化させることにより、めっき層を構成するAl
相中のZn濃度が0(Zn無添加)〜40質量%の試料を得
た。Al相中のZn濃度は、化学分析によりめっき層中に含
有しているZn量を測定する手法で求めた。
【0030】以上のようにして得た各サンプルについ
て、鋼素地露出部の耐赤錆流れ性,めっき面の長期耐食
性、およびめっき面の耐局部腐食性を調査した。鋼素地
露出部の耐赤錆流れ性は、各サンプル毎に試片の切断端
面が別の試片のめっき面上に重なるように張り合わせ、
大阪府堺市の臨海工業地帯に1ヶ月間暴露し、切断端面
からの赤錆流れの発生の有無で評価した。めっき面の長
期耐食性は、各サンプルのZn含有めっき面について塩水
噴霧試験を行い、めっき面に赤錆が発生するまでの時間
で評価した。めっき面の耐局部腐食性は、上記塩水噴霧
試験後のサンプル表面をルーペで観察し、孔食等の局部
腐食の発生の有無で評価した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1中、めっき層を構成するAl相中のZn濃
度が5〜20質量%にあるNo.1〜4の発明例は、切断端面に
赤錆の発生は認められるが、赤錆流れは生じておらず、
Zn添加による犠牲防食作用が十分に発揮された。またZn
含有めっき面の長期耐食性も、塩水噴霧による赤錆発生
時間が650時間を超えており、良好であった。さらにめ
っき面の耐局部腐食性も良好であった。これに対し、め
っき面にZnを吹き付けていないNo.5、およびAl相中のZn
濃度が5質量%未満のNo.6は、切断端面から赤錆流れが
生じた。Al相中のZn濃度が20質量%を超えて高すぎたN
o.7および8は、塩水噴霧による赤錆発生時間が600時間
以下に短縮しており、Al系めっき本来の長期耐食性が劣
化したことがわかる。Zn粉末吹き付け時点のめっき層温
度が660℃と凝固開始温度より+50℃を超えて高かったN
o.9は、Zn含有めっき面に孔食が目立ち、耐局部腐食性
に劣っていた。このNo.9のめっき層にはZnの偏析が生じ
ており、その部分から優先的に腐食が進行して孔食の発
生を招いたものと考えられる。
【0033】〔実施例2〕実施例1と同様の方法で片面
のみにZnを添加したZn含有Al系めっき鋼板を製造した。
ただし、次のように製造条件を変更した。ガスワイピン
グノズルによりめっき付着量を種々変化させた。吹き付
けるZn粉末の粒子径を種々変化させた。Zn吹き付け時点
のめっき層温度を620℃一水準とした。凝固後のめっき
層におけるAl相中にZnが10質量%含有されるようにZn粉
末吹き付け量をコントロールした。これ以外の条件は、
めっき原板,めっき浴組成を含め実施例1と同じであ
る。
【0034】得られた各サンプルについて、めっき層表
面におけるZn粉末残存の有無、およびめっき層中のZn濃
化部分の有無をSEMにより調査した。また、実施例1と
同様の方法で鋼素地露出部(切断端面)の耐赤錆流れ
性,およびめっき面の耐局部腐食性を評価した。これら
の結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】表2中、Zn粉末粒子径を5μm以上かつめっ
き層厚さの2倍以下の範囲に調整したNo.1〜6の発明例
は、めっき層表面におけるZn粉末残存、およびめっき層
中のZn濃化部分が認められず、切断端面の耐赤錆流れ性
およびめっき面の耐局部腐食性に優れていた。これに対
し、5μm未満の粒子を含むZn粉末を使用したNo.7および
8は、めっき層表面にZn粉末が残存し、めっき面の耐局
部腐食性が劣っていた。めっき層厚さの2倍を超える粒
子を含むZn粉末を使用したNo.9および10は、めっき層表
面にZn粉末が顔を出して残存するとともにめっき層中に
はZn濃化部分が存在し、やはりめっき面の耐局部腐食性
が悪かった。
【0037】図2は表2の発明例No.1のめっき層(耐食
性試験前)についてのCu Kα線によるX線回折パターン
である。この回折パターンにはZn相の存在を示す回折ピ
ーク(例えば2θ=36°付近)は認められない。これ
は、吹き付けられたZnがAl相中に完全に固溶しているた
めだと考えられる。
【0038】
【発明の効果】本発明に係るZn含有Al系めっき鋼板は、
従来のAl系めっき鋼板の弱点である「犠牲防食作用が働
かない」点を克服し、鋼素地露出部からの赤錆流れを安
定的に防止できる。また、めっき層にZnを添加して犠牲
防食作用を持たせたタイプのAl系めっき鋼板においてし
ばしば問題になった「めっき面の耐食性が劣化する」点
を克服し、Al系めっき鋼板本来の高耐食性を維持するも
のである。したがって本発明は、外装建材に代表される
溶融Al系めっき鋼板の用途において、従来よりも高性能
な鋼板を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法を実施する連続製造設備主要部
の概略図である。
【図2】本発明例の鋼板におけるZn含有Al系めっき層表
面のCu Kα線によるX線回折パターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 実 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 Fターム(参考) 4K027 AA02 AA22 AB05 AB24 AB32 AB48 AC66 AD22 AE03 AE22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 未凝固状態にある溶融Al系めっき層にZn
    を添加して形成したZn含有Al系めっき層を鋼板の少なく
    とも片面に有するめっき鋼板において、前記Zn含有Al系
    めっき層を構成するAl相中にZnが5〜20質量%の割合で
    均一に固溶していることを特徴とする鋼素地露出部の耐
    赤錆流れ性とめっき面の耐局部腐食性を改善したZn含有
    Al系めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 溶融Al系めっき層が、Si:3〜15質量%
    を含む溶融Al系めっき浴で付着したものである、請求項
    1に記載のZn含有Al系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板を溶融Al系めっき浴に浸漬して引き
    上げ、めっき付着量調整後、めっき層が未凝固状態にあ
    るうちにZn粉末をキャリアガスとともに鋼板の少なくと
    も一方の面に吹き付けるZn含有Al系めっき鋼板の製造に
    おいて、めっき層の凝固開始温度に対し+10℃〜+50℃
    の温度範囲にある未凝固状態のめっき層に、5μm以上か
    つめっき層厚さの2倍以下の範囲に粒子径が調整されたZ
    n粉末を、凝固後のめっき層におけるAl相中にZnが5〜20
    質量%含有されるように吹き付け量をコントロールして
    吹き付けることを特徴とする鋼素地露出部の耐赤錆流れ
    性とめっき面の耐局部腐食性を改善したZn含有Al系めっ
    き鋼板の製造法。
  4. 【請求項4】 溶融Al系めっき浴としてSi:3〜15質量
    %を含むめっき浴を使用し、600〜640℃の温度範囲にあ
    る未凝固状態のめっき層にZn粉末を吹き付ける、請求項
    3に記載の製造法。
  5. 【請求項5】 請求項3または4に記載の製造法におい
    て、Zn粉末をキャリアガスとともにZn粉末吹き付けノズ
    ルから鋼板の片面に吹き付けると同時に、鋼板のもう一
    方の面には前記Zn粉末吹き付けノズルに対向する位置に
    設置したダミーノズルからガスのみを吹き付けて鋼板の
    両面に加わる吹き付け力を均等にすることを特徴とす
    る、片面のみにZnを添加したZn含有Al系めっき鋼板の製
    造法。
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