JP2009033066A - 太陽光発電モジュールの建築物への設置方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Al合金製のフレームを持つ太陽光発電モジュールを、金属製の支持部材が結合された構造の架台を介して建築物に設置するに際し、その支持部材のうち鋼材からなる部材に下記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材を用いる。
(A)溶融Al系めっき鋼板; 基材が7質量%以上のCrを含有する鋼板であり、Al−3〜12質量%Si組成のAl系めっき層が片面あたり20g/m2以上の付着量で形成され、模擬雨水中における基材表面の自然電位E0とAl系めっき層表面の自然電位E1の差E0−E1が300mV以上であるめっき鋼板
【選択図】図1
Description
太陽光発電モジュールは勾配を付けた状態で設置される。モジュール面に降った雨はその勾配にしたがってモジュールの表面やモジュール間カバーの表面を流れ、一部は支持部材の表面や、締結金具の表面を伝って流れ落ちる。そのため、これら部材には雨水が集中して流れる流路ができる。これらの部位ではドブ漬けZnめっき材のめっき層の消耗は一般の暴露環境に比べると著しく速く、耐久性が不十分となることが多い。これは、一般の暴露環境ではめっき層の表面に生成した腐食生成物が保護皮膜となってその後の腐食を抑制するのに対し、雨水の流路となる箇所では生成した腐食生成物が流失して保護皮膜を形成できないことによるものと考えられる。
太陽光発電モジュールの支持部材や締結金具は、上述のように、雨水に曝され、場合によっては高温の滞留水に接触する。このような用途にステンレス鋼材を適用することによって十分な耐食性を確保するためには、Cr含有量の高い鋼種、NiやMoを含有する鋼種など、比較的耐食性グレードの高いステンレス鋼を適用する必要がある。そのため、必然的に部材コストが高くなる。
支持部材や、モジュール間カバーをAl合金製とすれば、上記のような異種金属接触腐食の問題は回避される。しかし、これらの部材をAl合金で構成するには、強度の観点から厚肉化する必要がある。このようなAl合金部材は一般に押出し成形により作られる。種々の屋根面への設置を考えた場合、支持部材等にもそれぞれの屋根に応じた種々の形状が求められるが、押出し成形によるため多様な形状の部材を用意することが困難であり、設計の自由度がかなり制約されてしまう。
(A)溶融Al系めっき鋼板; 基材が7質量%以上のCrを含有する鋼板であり、Al−3〜12質量%Si組成のAl系めっき層が片面あたり20g/m2以上の付着量で形成され、下記(B)の模擬雨水中における基材表面の自然電位E0とAl系めっき層表面の自然電位E1の差E0−E1が300mV以上であるめっき鋼板
(B)模擬雨水; Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppm、pH=6に調整された20℃の水
以下、本発明で使用する溶融Al系めっき鋼板について説明する。
支持部材、モジュール間カバー、締結金具といった太陽光発電モジュールの周辺部材にAl系めっき層を施したものを用いることで、モジュール面に降った雨が集中して流れる箇所や雨水が滞留する箇所におけるめっき面の耐食性を良好なものとすることができる。これは、めっき表面に生成する酸化物皮膜がこれらの環境において、安定に保護皮膜として存在するからであると考えられる。さらに、Al系めっきを用いると、フレームのAl合金との間での異種金属接触腐食を防止できる。
Al系めっき鋼板を素材として成形加工を施した場合、切断端面では基材の鋼素地が露出し、さらに加工部でもめっき層が割れることにより鋼素地が露出することがある。基材の鋼素地に対してAl系めっき層の犠牲防食作用が発現するためには、雨水中においてAl系めっき層の自然電位よりも基材の自然電位が「貴」であることが必要である。ところが、発明者らの調査によれば、それだけでは雨水の流路が形成される環境下における腐食を抑止するには不十分であることが判った。基材が腐食すると、発生した赤錆は雨水の流れとともに流出し、流路上のめっき層表面に付着する。このような赤錆の付着箇所では、たとえAl系めっき層であろうと腐食が進行するため、耐久性が損なわれる。詳細な検討の結果、雨水中での基材と溶融めっき層との自然電位の差が300mV未満では、犠牲防食作用が十分に得られないことがあり、安定して優れた耐食性を維持するには上記自然電位の差が300mV以上となるように基材の組成を調整する必要がある。基材の自然電位は主としてCr含有量によって調整することができる。
(模擬雨水)
Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppm、pH=6に調整された20℃の水
質量%で、C:0.1%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:7〜25%、Ti:0〜0.3%、Ni:0〜13%、Mo:0〜3%、Nb:0〜0.3%、Al:0〜0.2%、残部Feおよび不可避的不純物
ここで、含有量下限の0%は測定限界以下となる場合であり、当該元素は任意成分である。
一般的な溶融Al系めっきステンレス鋼板の製造法に準じて製造することができる。連続式溶融めっきラインによる方法が高品質の溶融Al系めっき鋼板を大量生産するうえで好適である。めっき付着量はガスワイピング法などの一般的な手法により制御することができる。めっき層の耐食性をさらに向上させるために、めっき表面にクロメート皮膜あるいはクロムフリーの化成処理皮膜を形成してもよい。成形加工時のめっき層のカジリを防止するために有機樹脂被覆(塗装)を施してもよい。
表1に示す組成を有する板厚1.6mmの焼鈍酸洗済み冷延鋼板を用意し、これらを基材として、表2に示すめっき浴組成から選ばれた何種類かのめっき浴(後述の表3中に記載)を用いて、連続式溶融めっきラインにて溶融めっきを行った。溶融めっき層の組成はめっき浴組成をほぼ反映したものとなる。めっき付着量制御は一般的なガスワイピング法(ワイピングガスは空気)で行い、いずれも片面あたりのめっき付着量を約80g/m2(両面とも同じ)に調整した。Crを含有しない基材Aを除き、溶融めっき浴中の溶融金属との濡れ性を確保するために、予め片面あたり1〜2g/m2の電気Fe−Bプレめっきを施してから溶融めっきを行った。溶融めっき後に公知のクロムフリーの化成処理(Ti−V系皮膜を形成する処理)を施した。
模擬雨水として、純水にNaCl、H2SO4、HNO3を添加して、Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppmの液を調整し、NaOH溶液を微量添加してpH=6に調製した。
基材の自然電位測定試料として、めっき前の基材鋼板の表面を#600乾式仕上げとし、その表面以外をマスキングしたものを用意した。
めっき層表面の自然電位測定試料として、めっき後に化成処理を施した鋼板からサンプルを採取し、めっき面以外をマスキングしたものを用意した。
20℃の模擬雨水中に自然電位測定試料を浸漬し、大気開放下で自然電位がほぼ安定した後(1時間以上)、自然電位(mV vs. SCE)を測定した。そして、基材表面の自然電位E0とめっき層表面の自然電位E1の差E0−E1を求めた。
Al合金製のフレーム(陽極酸化処理+アクリル塗装)を持つ市販の太陽光発電モジュールを用意した。
前記のクロムフリー処理を終えためっき鋼板をC型チャンネルに加工することによって、横桟(図1の符号21に相当する部材)および縦桟(図1の符号22に相当する部材)を作製した。また、屋根面に縦桟を固定するための支持金具(図1の符号33に相当する部材)を作製した。これら部材はいずれも切断端面および曲げ部には鋼素地が露出している。一部の例では、めっきを施す前の基材鋼板を用いて同様の形状に加工し、横桟、縦桟および支持金具を作製し、さらにその一部については表2のめっき種別HDZの組成のめっき浴に浸漬してドブ漬けZnめっきHDZ−35(JIS H8641、付着量350g/m2)を施した。
モジュール間カバー/モジュール/横桟、横桟/縦桟の各結合に使用するための締結金具として、Al合金製締結金具(市販品)を用意した。表面には端面も含めて塗膜が形成されている。
Al合金製のモジュール間カバー(市販品)を用意した。表面には端面も含めて塗膜が形成されている。
和瓦葺屋根に上記支持金具を用いて上記縦桟を固定し、その上に上記横桟を上記締結金具を用いて結合することにより、横桟と縦桟を支持部材とする架台を構築した。各例において、横桟、縦桟および支持金具は基材とめっきの組合せが同一のものである(表3中に記載)。架台の横桟に、上記締結金具を用いて太陽光発電モジュールのフレームとモジュール間カバーを取り付けた。フレーム、横桟、縦桟は、アース線ケーブルにより電気的に接続され、接地された。設置場所は兵庫県尼崎市である。
設置後9ヶ月経過した時点で各部材を取り外し、架台の横桟、縦桟および支持金具について、平坦部の雨水の流路となった部位、並びに切断端面および曲げ部のうち雨水の流路となった部位の腐食状況を調べた。横桟についてはモジュールのフレームと接触して雨水が滞留した部位の腐食状況も調べた。また、フレームについて、架台の横桟と接触して雨水が滞留した部位の腐食状況を調べた。耐食性の評価は以下のようにして行った。
めっき材については、雨水の流路となった部位からサンプルを切り出し、めっき層の断面を光学顕微鏡にて観察して腐食部の平均厚さを算出し、これにめっき層の密度を乗じて腐食量を求め、以下の基準で評価し、○評価以上を合格と判定した。
◎:腐食量が0.5g/m2未満
○:腐食量が0.5g/m2以上5g/m2未満
△:腐食量が5g/m2以上30g/m2未満
×:腐食量が30g/m2以上
基材鋼板を部材に加工したもの(めっき層のないもの)については、雨水の流路となった部位の赤錆発生状況を目視観察し、以下の基準で評価し、○評価以上を合格と判定した。
◎:赤錆なし
○:わずかに赤錆発生
△:著しく赤錆発生
×:雨水の流路以外を含む全面に著しく赤錆発生
切断端面と曲げ加工部のうち雨水の流路となった部位の赤錆発生状況を目視観察し、以下の基準で評価し、○評価を合格と判定した。
○:赤錆の発生がほとんど認められない
△:薄っすらと赤錆が発生している
×:赤錆が多量に発生し、周囲に広がっている
架台の横桟、モジュールのフレームとも、両者の接触部で雨水が滞留した部位を目視観察し、以下の基準で評価し、○評価を合格と判定した。
○:腐食の発生が認められない
×:腐食の発生が認められる
以上の結果を、表3にまとめて示す。
〔溶融めっき鋼板〕
片面あたりのめっき付着量をいずれも60g/m2とした。溶融Al系めっきのSi含有量を種々変化させた(表4参照)。
横桟(図1の符号21に相当する部材)には、Al合金製のC型チャンネル(市販品)を用いた。その表面には端面も含めて塗膜が形成されている。ドブ漬けZnめっきを施したものは用意しなかった。
モジュール間カバー/モジュール/横桟、横桟/縦桟の各結合に使用するための締結金具として、基材とめっきの組合せ(表4中に記載)が縦桟と同一である鋼板を加工したものを用いた。
支持部材および締結金具を一部上記のものに変えた。すなわち、Al合金製の横桟と、鋼材の縦桟との結合を、縦桟と同じ鋼材からなる締結金具にて行った。また、Al合金製の横桟と、モジュールのフレーム、モジュール間カバーの結合を、縦桟と同じ鋼材からなる締結金具にて行った。設置場所は大阪府堺市の市街地とした。
縦桟と同じ鋼材からなる締結金具について、雨水が滞留した部位、切断端面および曲げ部のうち雨水の流路となった部位、並びにAl合金製の横桟、Al合金製のモジュール間カバーと接触して雨水が滞留した部位の腐食状況を調べた。また、Al合金製の横桟について、締結金具と接触して雨水が滞留した部位の腐食状況を調べた。締結金具の雨水が滞留した部位、および切断端面・曲げ部における耐食性評価は、それぞれ実施例1における「架台の平坦部」および「架台の切断端面・曲げ部」と同様の方法で行った。また、締結金具とAl合金製横桟の接触部における耐食性評価は、実施例1における「架台/フレームの接触部」と同様の方法で行った。
結果を、表4にまとめて示す。
〔溶融めっき鋼板〕
片面あたりのめっき付着量を種々変化させた(表5参照)。
実施例1とは形状の異なるC型チャンネルに加工して、横桟(図1の符号21に相当する部材)および縦桟(図1の符号22に相当する部材)を作製した。ドブ漬けZnめっきを施したものは用意しなかった。
基材とめっきの組合せ(表5中に記載)が横桟および縦桟と同一である鋼板を加工することにより、モジュール間カバーを作製した。
モジュール間カバーを上記のものとした。締結金具は使わず、モジュール間カバーに設けたボルト穴にボルトを通して横桟にネジ止めすることによりモジュールを固定した。設置場所は大阪府堺市の市街地とした。
架台の支持部材と同じ鋼材からなるモジュール間カバーについて、平坦部の雨水の流路となった部位、切断端面における雨水の流路となった部位、およびAl合金製のフレームと接触して雨水が滞留した部位の腐食状況を調べた。また、Al合金製のフレームについて、モジュール間カバーと接触して雨水が滞留した部位の腐食状況を調べた。モジュール間カバーの平坦部、切断端面における耐食性評価は、それぞれ実施例1における「架台の平坦部」および「架台の切断端面・曲げ部」と同様の方法で行った。また、モジュール間カバーとAl合金製フレームの接触部における耐食性評価は、実施例1における「架台/フレームの接触部」と同様の方法で行った。
結果を、表5にまとめて示す。
〔溶融めっき鋼板〕
基材鋼板として板厚2.3mmの焼鈍酸洗済み冷延鋼板を使用した。
図2の横桟21、縦桟22、ステー23に相当する部材をクロムフリー処理を終えためっき鋼板から成形加工したC型チャンネルを用いて作製した。いずれも基材とめっきの組合せは同一である(表6中に記載)。ドブ漬けZnめっき材としてはHDZ−40(JIS H8641、付着量400g/m2)を施したものを用意した。めっきを施していない部材は用意しなかった。
モジュールを設置する建築物を陸屋根とした。前記支持部材を用いて図2に相当する架台を作製して陸屋根に固定し、この架台にモジュールを取り付けた。設置箇所は大阪府堺市の臨海工業地帯とした。
架台の平坦部と、切断端面・曲げ部については、ステーを耐食性評価の対象として加えた。
結果を、表6にまとめて示す。
11 フレーム
12 太陽光発電モジュール
21 横桟
22 縦桟
23 ステー
31 締結金具
32 モジュール間カバー
33 支持金具
40 切断端面
Claims (4)
- Al合金製のフレームを持つ太陽光発電モジュールを、金属製の支持部材が結合された構造の架台を介して建築物に設置するに際し、その支持部材のうち鋼材からなる部材に下記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材であって切断端面に鋼素地露出部を有するものを用い、前記フレームを架台に取り付けて固定し、フレームのAl合金と支持部材の金属の間には電気的接続を形成する、太陽光発電モジュールの建築物への設置方法。
(A)溶融Al系めっき鋼板; 基材が7質量%以上のCrを含有する鋼板であり、Al−3〜12質量%Si組成のAl系めっき層が片面あたり20g/m2以上の付着量で形成され、下記(B)の模擬雨水中における基材表面の自然電位E0とAl系めっき層表面の自然電位E1の差E0−E1が300mV以上であるめっき鋼板
(B)模擬雨水; Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppm、pH=6に調整された20℃の水 - Al合金製のフレームを持つ太陽光発電モジュールを、建築物に設置するに際し、隣り合う太陽光発電モジュールのフレームの間に生じる空隙の上部を、下記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材であって切断端面に鋼素地露出部を有するモジュール間カバーで覆う、太陽光発電モジュールの建築物への設置方法。
(A)溶融Al系めっき鋼板; 基材が7質量%以上のCrを含有する鋼板であり、Al−3〜12質量%Si組成のAl系めっき層が片面あたり20g/m2以上の付着量で形成され、下記(B)の模擬雨水中における基材表面の自然電位E0とAl系めっき層表面の自然電位E1の差E0−E1が300mV以上であるめっき鋼板
(B)模擬雨水; Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppm、pH=6に調整された20℃の水 - Al合金製のフレームを持つ太陽光発電モジュールを、金属製の支持部材が結合された構造の架台を介して建築物に設置するに際し、その支持部材のうち鋼材からなる部材に下記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材であって切断端面に鋼素地露出部を有するものを用い、前記フレームを架台に取り付けて固定し、フレームのAl合金と支持部材の金属の間には電気的接続を形成するとともに、隣り合う太陽光発電モジュールのフレームの間に生じる空隙の上部を、下記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材であって切断端面に鋼素地露出部を有するモジュール間カバーで覆う、太陽光発電モジュールの建築物への設置方法。
(A)溶融Al系めっき鋼板; 基材が7質量%以上のCrを含有する鋼板であり、Al−3〜12質量%Si組成のAl系めっき層が片面あたり20g/m2以上の付着量で形成され、下記(B)の模擬雨水中における基材表面の自然電位E0とAl系めっき層表面の自然電位E1の差E0−E1が300mV以上であるめっき鋼板
(B)模擬雨水; Cl-濃度=5ppm、SO4 2-濃度=20ppm、NO3 -濃度=10ppm、pH=6に調整された20℃の水 - 前記フレームと支持部材の固定箇所、支持部材どうしの固定箇所および支持部材と屋根の固定箇所のうち少なくとも一部に、前記(A)の溶融Al系めっき鋼板を加工してなる部材であって切断端面に鋼素地露出部を有する締結金具を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の太陽光発電モジュールの建築物への取り付け方法。
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