JP2023074874A - 溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法 - Google Patents

溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】初期の耐食性を向上させることが可能な、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板を提供する。【解決手段】鋼板と、鋼板の表面に形成されためっき層とが備えられ、めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/Mg2Zn11/MgZn2の三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/Mg2Zn11/MgZn2の四元ラメラ組織〕とが含まれ、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、Mg2Zn11が検出される、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法に関する。
従来、鋼板の表面に亜鉛を主体とするめっき層(亜鉛系めっき層)が形成されためっき鋼板(亜鉛系めっき鋼板)が、自動車や建材、家電製品などの幅広い用途で使用されている。亜鉛系めっき層が形成されることによって、鋼板には優れた耐食性が付与される。
自動車分野では、従来、亜鉛系めっき鋼板の一種である合金化溶融亜鉛めっき鋼板が使用されている。最近では、更なる自動車の長寿命化を図るため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に代わり、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の採用が検討されている。溶融Zn-Al-Mg系のめっき層には、溶融状態から最初に晶出するη-Znの初晶と、[MgZn/Zn]二元共晶組織と、[Al/MgZn/Zn]三元共晶組織とが含まれる場合がある。
例えば、特許文献1には、Al:1~3%、Mg:1.5~4.0%、残りはZn及び不可避な不純物を含み、Al+Mg:2.5~7.0%で、Al/(Al+Mg):0.38~0.48であり、溶融亜鉛合金めっき層のめっき組織が、Zn-Al-MgZnの三元共晶組織を基地組織とし、Zn-MgZnの二元共晶組織が分散されためっき組織であり、Zn単相組織は10%以下で含まれ、MgZn組織を残部として含む、高耐食溶融亜鉛合金めっき鋼板が記載されている。
特許第5764672号公報
しかしながら、特許文献1に記載されためっき鋼板は、大気中の腐食環境において、めっき組織中のMgZnが優先的に腐食して腐食基点となるため、従来の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と比較して初期の耐食性が劣位になる問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、初期の耐食性を向上させることが可能な、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成されためっき層とが備えられ、
前記めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上.02質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
前記めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
[2] 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~0.1質量%のSiを含有することを特徴とする[1]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
[3] 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
[4] 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とが備えられ、
前記めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
前記めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、
Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、自動車用部品。
[5] 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~0.1質量%のSiを含有することを特徴とする[4]に記載の自動車用部品。
[6] 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有することを特徴とする[4]または[5]に記載の自動車用部品。
[7] 溶融めっき法により、鋼板の表面に、[1]乃至[3]の何れか一項に記載の平均組成を有するとともに、η-Zn相と、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とが含まれるめっき層を形成するめっき工程と、
前記めっき層工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、を備え、
前記熱処理工程は、均熱温度をT(℃)、均熱時間をt(分)としたとき、均熱温度T(℃)を、下記式(A)により求まるTmax(℃)以上、310℃以下の範囲とし、Tmax(℃)が90℃未満の場合は均熱温度T(℃)を90℃以上とする、[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の製造方法。
max=(1300/lnt)-273 …(A)
上記式(A)において、tは、均熱時間(分)である。tは0分超、45分以下とする。
[8] 溶融めっき法により、鋼板の表面に、[4]乃至[6]の何れか一項に記載の平均組成を有するとともに、η-Zn相と、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とが含まれるめっき層を形成するめっき工程と、
前記めっき工程後に、前記めっき層が形成された前記鋼板を成形加工する成形工程と、
前記成形工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、を備え、
前記熱処理工程は、均熱温度をT(℃)、均熱時間をt(分)としたとき、均熱温度T(℃)を、下記式(B)により求まるTmax(℃)以上、310℃以下の範囲とし、Tmax(℃)が90℃未満の場合は均熱温度T(℃)を90℃以上とする、[4]乃至[6]の何れか一項に記載の自動車用部品の製造方法。
max=(1300/lnt)-273 …(B)
上記式(B)において、tは、均熱時間(分)である。ただし、tは0分超、45分以下とする。
本発明によれば、初期の耐食性を向上させることが可能な、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法を提供できる。
図1は、本発明の実施形態である溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板のめっき層のX線回折パターンを示す図である。 図2は、No.5及びNo.27の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の断面の反射電子像及びEPMAによる元素分布の測定結果を示す図である。
本発明者らは、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の初期の耐食性を向上させる手段について鋭意検討した。溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の初期の耐食性の低下は、電気化学的に卑な金属化合物であるMgZnが優先的に腐食することが原因であると推測された。そこで、本発明者は、MgZnの周囲に、MgZnの腐食の進行を防止する組織または金属間化合物を配置することで、MgZnの腐食を抑制することを検討した。
Alを1.0質量%以上3.0質量%未満、Mgを1.0質量%以上2.0質量%以下含有し、残部がZn及び不純物からなるめっき層を、溶融めっき法により形成すると、めっき層中には、η-Zn相のほかに、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕及び〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕が形成される。これら三元共晶組織及び二元共晶組織には、Zn及びMgZnが含まれる。
ここで、ZnとMgZnとの中間的な組成の金属化合物として、MgZn11が知られている。MgZn11は、MgZnよりも電気化学的に貴であるので、MgZnの腐食を抑制できる可能性がある。しかしながら、MgZn11は、通常の溶融めっき法の製造条件では生成しない。そこで本発明者が鋭意検討したところ、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕及び〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕を含むめっき層を、所定の条件で熱処理することにより、ZnとMgZnとの境界付近またはMgZnの周囲に、MgZn11が形成できることを見出した。これにより、めっき層の初期の耐食性を向上できることを見出した。
以下、本発明の実施形態である溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板、自動車用部品、及びこれらの製造方法について説明する。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成されためっき層とが備えられ、めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定しためっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板である。
また、本実施形態の自動車用部品は、鋼材と、鋼材の表面に形成されためっき層とが備えられ、めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、自動車用部品である。
溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板を構成する鋼板の材質には、特に制限はない。鋼板は、例えば、一般鋼、Niプレめっき鋼、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の耐食性強化元素含有鋼等)などの各種の鋼板が適用可能である。また、鋼板は、鋼板の製造方法(熱間圧延方法、酸洗方法、冷延方法等)の条件についても、特に制限されるものではない。更に、鋼板は、その表面に、Zn、Ni、Sn、またはこれらの合金系等の1μm未満のめっき層が事前にプレめっきされたプレめっき鋼板を使用してもよい。
また、自動車用部品を構成する鋼材は、上記鋼板が成形加工されることによって所望の形状に成形されたものである。鋼材の形状には、特に制限はない、鋼材は、自動車外板、自動車部品(足回り部材等)の他、鋼管、土木・建築材(柵渠、コルゲートパイプ、排水溝蓋、飛砂防止板、ボルト、金網、ガードレール、止水壁等)、プレハブ用部材、住宅壁、屋根材、家電部材(エアコンの室外機の筐体等)、などに使用されるものであってもよく、溶接に供され成形された鋼構造部材であってもよい。
次に、めっき層について説明する。本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg系合金層を含む。ZnにAl、Mgなどの合金元素が加わると耐食性が改善するため、薄膜、例えば、通常のZnめっき層の半分程度で同等の耐食性を有するため、本発明も同じように薄膜でZnめっき層と同等以上の耐食性は確保されている。また、めっき層には、Al-Fe系合金層を含んでもよい。
Zn-Al-Mg系合金層は、Zn-Al-Mg系合金よりなる。Zn-Al-Mg系合金とは、Zn、Al及びMgを含む三元系合金を意味する。また、Al-Fe系合金層は、鋼板又は鋼材とZn-Al-Mg系合金層との間にある界面合金層である。
つまり、めっき層は、Zn-Al-Mg系合金層の単層構造であってもよく、Zn-Al-Mg系合金層とAl-Fe系合金層とを含む積層構造であってもよい。積層構造の場合、Zn-Al-Mg系合金層は、めっき層の表面を構成する層とすることがよい。
Al-Fe系合金層がめっき層に存在する場合、Al-Fe系合金層によって鋼材とZn-Al-Mg系合金層とが結合される。界面合金層としてのAl-Fe系合金層の厚みは、めっき鋼板の製造時のめっき浴温や、めっき浴浸漬時間によって如何様にも厚みを制御することが可能である。ゼンジマー法を中心とした溶融めっき鋼板の製造方法では、Zn-Al-Mg系合金層がめっき層の主体となり、Al-Fe系合金層の厚みは十分に小さいことから、めっき層の耐食性に与える影響は小さく、また界面付近に形成するため、腐食初期やめっき層の外観における耐食性について与える影響はほとんどない。
Al-Fe系合金層は、めっきと鋼板の界面またはめっきと鋼材の界面(具体的には、鋼板または鋼材とZn-Al-Mg系合金層との間)に形成されており、組織としてAlFe相が主相の層である。Al-Fe系合金層は、地鉄(鋼板または鋼材)およびめっき浴の相互の原子拡散によって形成する。製法として溶融めっき法を用いた場合、Alを含有するめっき層では、Al-Fe系合金層が形成され易い。めっき浴中に一定濃度以上のAlが含有されることから。AlFe相が最も多く形成する。しかし、原子拡散には時間がかかり、また、地鉄に近い部分では、Fe濃度が高くなる部分もある。そのため、Al-Fe系合金層は、部分的には、AlFe相、AlFe相、AlFe相などが少量含まれる場合もある。条件によってはディスク状FeAl13とも報告されている。また、めっき浴中にZnも一定濃度含まれることから、Al-Fe系合金層にはZnも少量含有される。
本実施形態に係るめっき層中にはSiが含有される場合がある。Siは、特にAl-Fe系合金層中に取り込まれ易く、Al-Fe-Si金属間化合物相となることがある。同定される金属間化合物相としては、AlFeSi相があり、異性体として、α、β、q1,q2-AlFeSi相等が存在する。そのため、Al-Fe系合金層は、これらAlFeSi相等が検出されることがある。これらAlFeSi相等を含むAl-Fe系合金層をAl-Fe-Si系合金層とも称する。
めっき層全体の厚み(付着量)は、めっき条件に左右されるため、めっき層全体の厚みの上限及び下限については特に限定されるものではない。特にめっきの屋外大気環境使用時の経時外観変化などは、めっき層の腐食が非常に緩やかであるため、表層数μmのめっき層状態が関与するのみであり、その厚みの影響は受けにくい。また例えば、めっき層全体の厚みは、通常の溶融めっき法ではめっき浴の粘性および比重が関連する。さらに鋼材(めっき原板)の引抜速度およびワイピングの強弱によって、めっき量は目付調整される。
次に、めっき層の平均化学組成について説明する。めっき層全体の平均化学組成は、めっき層がZn-Al-Mg系合金層の単層構造の場合は、Zn-Al-Mg系合金層の平均化学組成である。また、めっき層がAl-Fe系合金層及びZn-Al-Mg系合金層の積層構造の場合は、Al-Fe系合金層及びZn-Al-Mg系合金層の合計の平均化学組成である。
通常、溶融めっき法において、Zn-Al-Mg系合金層の化学組成は、めっき層の形成反応がめっき浴内で完了することがほとんどであるため、ほぼめっき浴と同等になる。また、溶融めっき法において、Al-Fe系合金層は、めっき浴浸漬直後、瞬時に形成し成長する。そして、Al-Fe系合金層は、めっき浴内で形成反応が完了しており、その厚みも、Zn-Al-Mg系合金層に対して十分に小さいことが多い。したがって、めっき後、加熱合金化処理等、特別な熱処理をしない限りは、めっき層全体の平均化学組成は、Zn-Al-Mg系合金層の化学組成と実質的に等しく、Al-Fe合金層等の成分を無視することができる。
以下、めっき層に含まれる元素について説明する。
Al:1.0質量%以上、3.0質量%未満
Alは、耐食性を確保するために含有させる。めっき層中のAlの含有量が1.0質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。しかし、Alが3.0質量%以上になると、耐食性を向上させる効果が飽和する。よって、Al含有量を1.0質量%以上、3.0質量%未満とする。耐食性の観点から、好ましくはAl含有量を1.2~2.5質量%とする。より好ましくは1.3~2質量%とする。
Mg:1.0質量%以上、2.0質量%以下
Mgの含有量は、平均組成で1.0~2.0質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。めっき層中のMgの含有量が1.0質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。しかし、Mgが2.0質量%を超えると、めっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となるので、Mgの含有量は2.0質量%以下とする。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、Mgの含有量は好ましくは1.2~1.8質量%とする。より好ましくは1.3~1.7質量%とする。
Si:0.0001~0.1質量%
めっき層には、更に、平均組成で、0.0001~0.1質量%のSiを含有してもよい。Siは、Al-Fe合金層の成長を抑制し、また、めっき層の耐食性を向上させる。Siは、微量に含有する場合、Al-Si系化合物などを形成するほか、Al-Fe合金層にも侵入型固溶する。Al-Fe合金層でのAl-Fe-Si金属間化合物相の形成等の説明は、既に前述したとおりである。これらの化合物に取り込まれ得る場合は、めっき層としての性能に何ら性能変化を生み出すことがない。したがって、Siが0.0001質量%未満では、これらの化合物にSiの多くが囚われてしまい、めっき層の外観変化や犠牲防食性、その他、耐食性などの性能に変化をもたらすことができない。従って、Siを含有する場合の下限は0.0001質量%以上とする。
一方、Siが過剰になると、めっき層中に過剰なSiが晶出し、また、共晶組織が十分に形成されず、耐食性が低下する。また、めっき層の加工性も低下する。従って、Si含有量を0.1質量%以下とする。
溶融めっき層中には、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、めっき層の耐食性を更に改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。
めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビタ(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸でめっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
次に、めっき層の組織について説明する。
Al、Mg及びZnを含有するめっき層は、η-Zn相と、〔Zn/MgZN11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZN11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれる。樹状のη-Zn相の間に〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が存在する形態を有している。
また、本実施形態のめっき層に、Siが含有される場合は、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の素地中に、金属間化合物であるMgSiが含まれる。更に、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の素地中には、〔MgZn相〕や〔Al相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕は、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相と金属間化合物MgZn11の四元ラメラ組織である。〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕は、樹状のη-Znの間を埋めるように存在する。
この四元ラメラ組織を形成しているAl相は、例えば、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相は、常温では、通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。また、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕中のZn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。更に、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限り、それぞれの相には、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが、その量は通常の分析では明確に区別できない。また、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕中のMgZn11相は、ZnとMgZnの界面に層状に存在する。この四つの相からなる四元ラメラ組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕と表す。
η-Zn相は、前記の〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の素地中に、明瞭な境界をもって島状に見える相である。η-Zn相は、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図におけるη-Zn相に相当するものである。η-Zn相の形態は、樹状(デンドライト状)である。η-Zn相にはその他の添加元素が固溶されず、または他の元素が固溶していてもその量は極微量であると考えられる。η-Zn相は、前記の〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕に含まれるZn相とは、顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕は、Zn相と、金属間化合物MgZn相と、Zn相およびMgZn相の界面に形成されたMgZn11相よりなる三元ラメラ組織である。
この三元ラメラ組織を形成しているZn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。また、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。更に、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕中のMgZn11相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約93質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが、その量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元ラメラ組織を本明細書では、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と表す。
〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕は、前記のη-Zn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。また、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕は、走査型電子顕微鏡の反射電子像において、黒い相(Al)を含まないラメラ組織であることから、この三元ラメラ組織は、黒い相(Al)を含むラメラ組織として観察される〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕と反射電子像において明確に区別される。
〔MgZn相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素が固溶されないか、他の添加元素が固溶していてもその量は極微量と考えられる。この〔MgZn相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕及び〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕を形成しているMgZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、〔MgZn相〕が含まれる。
MgSiは、めっき層にSiが含有される場合に、めっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。MgSiは、めっき相中では顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
〔Al相〕は、前記の〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。〔Al相〕は、例えば、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが、通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。この〔Al相〕は前記の〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、〔Al相〕が含まれる。
めっき層におけるη-Zn相の含有率は、例えば、30~70面積%であることが好ましい。η-Zn相の含有率が30面積%以上であれば、比較的延性の高いη相が多くなり、めっき層の加工性が優れたものになるので好ましい。η-Zn相の含有率が70面積%以下であれば、MgZnが減少することがなくめっき層の長期的な耐食性を向上できるため好ましい。η-Zn相の含有率のより好ましい範囲は、35~55面積%である。
めっき層における〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕の含有率は、例えば、5~40面積%であることが好ましい。〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕の含有率が5面積%以上であれば、MgZnが多く含まれるようになり、めっき層の長期的耐食性に優れるものとなるので好ましい。〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕の含有率が40面積%以下であれば、η-Zn相の含有率が低下せずめっき層の加工性を低下させないため好ましい。
〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の含有率は、10~60面積%であることが好ましい。この限定理由は、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕の場合と同様である。なお、めっき層中Alの大部分はまず〔Al/Zn/MgZnの三元共晶ラメラ組織〕として凝固するため、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の含有率は、めっき層の平均組成としてのAl量に対応するものとなる。
〔MgZn相〕、MgSi及び〔Al相〕及びその他の金属間化合物等は、合計で、残部とする。
本実施形態に係るめっき層は、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が含まれる。これらのラメラ組織に含まれるMgZn11は、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定しためっき層表面のX線回折パターンにおいて、その存在を検出できる。MgZn11は、MgZnよりも電気化学的に貴である。MgZn11を含むめっき層は、MgZnの腐食を抑制可能である。
MgZn11は、その組成が、Zn及びMgZnの中間的な組成になっている。ここで、本実施形態に係るめっき層中には、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれる。これらの共晶組織中には、Zn及びMgZnが含まれる。このため、MgZn11は、これらの共晶組織中のZnとMgZnとの境界に存在している。また、MgZn11は、MgZnの表面に存在している可能性もある。いずれにしろ、MgZn11がMgZnの近傍に存在することで、MgZnの腐食を抑制できるものとなる。
めっき層におけるMgZn11の含有率については特に制限はない。MgZn11の存在の有無は、X線回折を使用すれば容易に確認できる。すなわち、X線回折パターンにおいて、JCPDSカードNo.01-071-9624に示されるCu管球(CuKα線)による回折角度2θとして、14.64°((110)面)、23.24°((210)面)、37.90°((320)面)、39.39°((123)面)、43.60°((322)面)、67.45°の回折ピークのうち、いずれか2以上の回折ピークが検出された場合に、めっき層中にMgZn11が含まれるとする。これ以外の回折ピークは、Zn-Al-Mg系めっき層におけるZn、Al、MgZn等と重複する場合や強度が小さい場合があり、同定に相応しくない。
図1(a)~図1(e)に示すX線回折測定結果は、MgZn11の検出例を示すものであって、Al:1.5%、Mg1.5%および残部Znを含むめっき層に対して、熱処理を行わなかった試料1、170℃で20分の均熱処理を行なった試料2、205℃で30分の均熱処理を行なった試料3の測定結果である。試料2、3は、14.64°、23.24°および39.39°の回折ピークが認められており、MgZn11が検出されている。一方、試料1は、いずれの回折ピークが認められず、MgZn11が検出されていない。
X線源としては、CuをターゲットとするX線(CuKα線)が、めっき層における構成相の平均的な情報を得られるため、最も都合がよい。他の測定条件としては、X線の出力条件を電圧50kV、電流200mAとする。X線回折装置としては特に制限はないが、例えば、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR IIIを用いることができる。
X線源以外の測定条件としては、ゴニオメーターTTR(水平ゴニオメータ)を使用し、Kβフィルターは使用せず、長手制限スリットを5mmとし、受光スリットを0.15mmとし、受光スリット2開放とし、スキャンスピードを0.60deg./minとし、ステップ幅を0.01degとし、スキャン軸2θを5~90°とするのがよい。
測定は、めっき層の表面にX線を照射する。試料調整は行わずめっき層のまま測定する。もしめっきが塗装されていればめっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP-751)で表層塗膜を除去した後にX線回折を測定する。
また、めっき層の付着量は、鋼板片面合計で30~600g/mであることが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板または自動車用部品の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
次に、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板及び自動車用部品の製造方法について説明する。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の製造方法は、溶融めっき法により、鋼板の表面にめっき層を形成するめっき工程と、めっき工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、から構成される。
また、本実施形態の自動車用部品の製造方法は、溶融めっき法により、鋼板の表面にめっき層を形成するめっき工程と、めっき工程後に、めっき層が形成された鋼板を成形加工する成形工程と、成形工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、から構成される。
以下の説明では、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板および自動車用部品の製造に必要な、めっき工程及び熱処理工程について説明し、次いで、自動車用部品の製造に必要な、成形工程について説明する。
(めっき工程)
めっき工程では、製鋼、鋳造、熱間圧延を経て製造された鋼板に対して、溶融めっきを行う。また、上記の熱間圧延後に更に、酸洗、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍を行い、その後に溶融めっきを行ってもよい。また、溶融めっきは、鋼板を溶融めっき浴に連続通板させる連続式溶融めっき法とする。
溶融めっき浴は、Al:1.0質量%以上、3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上、2.0質量%以下を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むことが好ましい。また、溶融めっき浴は、Al:1.0質量%以上、3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上、2.0質量%以下を含有し、残部としてZnおよび不純物からなるものでもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Si:0.0001~0.1質量%を含有してもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有してもよい。
なお、本実施形態のめっき層の平均組成は、溶融めっき浴の組成とほぼ同じである。
溶融めっき浴の温度は、組成によって異なるが、例えば、400~500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板片面の付着量が30~600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。
本実施形態では、溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板に対する冷却速度の条件は、特に限定する必要はないが、例えば、5~30℃/sとするとよい。またその温度範囲は、引き上げ時点の板温から、凝固完了点340℃をやや下回るまでの範囲としてもよい。
以上により、鋼板の表面に、η-Zn相と、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とが含まれるめっき層を形成する。
(熱処理工程)
次に、鋼板にめっき層を形成しためっき鋼板に対して、熱処理工程を行う。熱処理により、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕及び〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕に、MgZn11が形成される。MgZn11が形成されることで、二元共晶組織が三元ラメラ組織となり、三元共晶組織が四元ラメラ組織となる。熱処理工程は、均熱温度をT(℃)、均熱時間をt(分)としたとき、均熱温度T(℃)を、下記式(A)により求まるTmax(℃)以上、310℃以下の範囲として、熱処理を行う。
max=(1300/ln(t))-273 …(A)
上記式(A)において、tは、均熱時間(分)である。tは0分超、45分以下とする。
均熱温度がTmax未満では、めっき層中に、MgZn11を形成できないため好ましくない。また、均熱温度が310℃を超えると、めっき層の三元共晶点に近づき、めっき層が溶融しその結晶組織が変質してしまう恐れがあるので好ましくない。
ただし、Tmaxの値が90℃未満になる場合は、均熱温度は90℃以上、310℃以下とする。金属組織中で原子の拡散が起きるにはおおむね絶対温度で融点の1/2以上の温度が必要との経験則があり、Znの融点は419℃(692K)であり、その1/2は73℃(346K)である。そこで、原子の拡散が確実に起きる温度の下限として90℃とする。
maxは、好ましくは、下記(A1)式にて定義されるものでもよく、下記(A2)式にて定義されるものでもよく、下記(A3)式にて定義されるものでもよい。
max=(1400/ln(t))-273 …(A1)
max=(1500/ln(t))-273 …(A2)
max=(1600/ln(t))-273 …(A3)
上記式(A1)~(A3)において、tは、均熱時間(分)である。tは0分超、45分以下とする。
熱処理は、めっき層の酸化を抑制するために、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行うとよい。不活性ガス雰囲気としては、アルゴン、窒素を例示できる。なお、上述したようにめっき塗装後に熱処理する場合は、大気中でもめっき層を酸化させないので、大気中でもよい。
以上のような、めっき工程及び熱処理工程を経ることで、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板が製造される。
(成形工程)
次に、成形工程について説明する。めっき工程と熱処理工程との間に、成形工程を行ってもよい。成形工程によって、めっき工程後のめっき鋼板を所望の部品形状に成形する。成形工程で利用する成形法は、通常のプレス成形でもよいし、めっき鋼板を加熱してからプレス成形する所謂ホットプレス成形でもよい。ホットプレス後のめっき層組織が溶融めっき凝固後と同様であれば、本発明の効果を得ることができる。
以上のような、めっき工程、成形工程及び熱処理工程を行うことで、本実施形態の自動車用部品が製造される。なお、成形工程後の熱処理工程は、めっき層の表面に対する塗装及び焼き付け工程の前であってもよく、後であってもよい。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板及び自動車用部品によれば、めっき層中に、MgZn11を有する〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が含まれるので、初期の耐食性を向上させることができる。
また、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の製造方法及び自動車用部品の製造方法によれば、めっき層中に、MgZn11を有する〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕を含有させることができるので、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板及び自動車用部品の初期の耐食性を向上させることができる。
板厚0.7mmのSPCC(JIS G3141)をアルカリ脱脂後、株式会社レスカ製の溶融めっきシミュレーターでN-H雰囲気中で800℃、60秒加熱還元処理し、めっき浴温まで冷却した後、表1に示すめっき層の平均組成と同じ組成のめっき浴に3秒浸漬し、その後、Nワイピングで、片面当たりのめっき付着量を調整し、表1に示す条件で冷却した。
次いで、アルゴン雰囲気とした加熱炉中にて、表1に示す均熱温度および均熱時間で熱処理した。これにより、No.1~34のめっき鋼板を製造した。
めっき層の平均組成は、めっき層を剥離して溶解した後、誘導結合プラズマ発光分析法により、めっき層に含まれる元素の含有量を分析することで測定した。
めっき層における、η-Zn相、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕の面積率は、めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡で1000倍に拡大した状態で、反射電子像を5箇所撮影した。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影した。写真撮影位置はランダムに選択した。更に、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対応する元素マッピングデータを取得し、η-Zn相、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕及び〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕を特定した。そして、全部の断面写真に現れているこれらの相および組織の全断面積を測定し、これを、全部の断面写真に現れているめっき層の断面積で除することで、これらの相および組織の面積率を測定した。
なお、表2中、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕は「三元ラメラ組織」と記載し、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕は「四元ラメラ組織」と記載した。
また、めっき層に対してX線回折測定を行い、MgZn11の有無を確認した。株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR IIIを用い、X線源はCuKα線とした。X線の出力条件は電圧50kV、電流200mAとした。X線源以外の測定条件としては、ゴニオメーターTTR(水平ゴニオメータ)を使用し、Kβフィルターは使用せず、長手制限スリットを5mmとし、受光スリットを0.15mmとし、受光スリット2開放とし、スキャンスピードを0.60deg./minとし、ステップ幅を0.01degとし、スキャン軸2θを5~90°とした。
めっき層におけるMgZn11の存在の有無は、X線回折パターンにおいて、JCPDSカードNo.01-071-9624に示されるCuKα線による回折角度2θとして、14.64°((110)面)、23.24°((210)面)、37.90°((320)面)、39.39°((123)面)、43.60°((322)面)、67.45°の回折ピークのうち、いずれか2以上の回折ピークが検出された場合に、めっき層中にMgZn11が含まれるとした。
(初期耐食性)
得られためっき鋼板を、150mm×70mmに切断し、脱脂し、化成前処理の液体表調を行い、化成処理して燐酸亜鉛結晶を緻密に形成させた。その後、カチオン電着塗装を行って膜厚20μmの塗膜を形成した。端面と裏面をテープシールし、表側の中央部にカッターナイフで素地鋼板に達するクロスカット疵をつけ、腐食試験した。試験はJASO M609に沿って、5%塩水を35℃で2時間噴霧する塩水噴霧工程、温度60℃・相対湿度20~30%で4時間保持する乾燥工程、温度50℃・相対湿度95%で2時間保持する湿潤工程を1サイクルとする腐食サイクル試験を行った。まず30サイクル目で取り出し、クロスカットを起点とする腐食による塗膜膨れを観察し、腐食膨れ幅の上位4か所の平均値を算出し、再度腐食サイクル試験にかけた。累計サイクル数60回目と90回目でも取り出し同様に評価した。初期耐食性の評価は、30サイクルでの腐食膨れ幅で評価した。評価基準は下記の通りとし、◎、○を合格とした。
なお、この評価は、発明例と比較例の相対評価であり、現状の自動車用鋼板の合否基準とは一致しない。例えば比較例No.24のGIめっきも適用部品や 塗装よっては自動車用材料に適用可能である。
◎:30サイクル腐食幅が0.1mm以下。
○:30サイクル腐食幅が0.1mm超0.2mm以下。
△:30サイクル腐食幅が0.2mm超0.3mm以下。
×:30サイクル腐食幅が0.3mm超。
No.1~No.25は、めっき層の平均化学組成が本発明範囲内であり、製造方法も適切であったため、めっき層の組織中に、η-Zn相、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕および〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が含まれた。また、X線回折パターンにおいて、MgZn11が検出された。これにより、初期の耐食性が良好であった。
なお、No.1~No.25は、腐食試験を60サイクル、90サイクルまで進めたところ、熱処理を行わなかった比較例(No.27、No.30)との差が縮小した。これは、腐食の進行に伴い、熱処理による改善効果が縮小したためと考えられる。
No.26は、めっき層が亜鉛めっき層であり、平均化学組成が本発明範囲外であったため、従来の亜鉛めっき鋼板と同等の初期耐食性を示したが、本発明例に対しては初期耐食性が劣位であった。
No.27およびNo.30は、熱処理工程を行わなかったため、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕および〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が形成されず、また、X線回折パターンにおいて、MgZn11が検出されなかった。これにより、初期の耐食性が劣位になった。
No.28およびNo.31は、熱処理工程における均熱温度がTmaxよりも低かったため、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕および〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が形成されず、また、X線回折パターンにおいて、MgZn11が検出されなかった。これにより、初期の耐食性が劣位になった。
No.29およびNo.32は、熱処理工程における均熱温度が310℃を超えたため、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕および〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕が形成されず、また、X線回折パターンにおいて、MgZn11が検出されなかった。これにより、初期の耐食性が劣位になった。
No.33およびNo.34は、めっき層が55%Al-Zn系めっき層であり、平均化学組成が本発明範囲外であり、熱処理も行わなかったため、従来の55%Al-Zn系めっき鋼板と同等の初期耐食性を示したが、本発明例に対しては初期耐食性が劣位であった。
また、図2に、比較例No.27(Zn-1.5%Al-1.5%Mgめっき、熱処理なし)と、実施例No.5(Zn-1.5%Al-1.5%Mgめっき、熱処理205℃×30分)のめっき断面のEPMAによる元素マッピング測定結果を示す。
X線回折結果より、No.27の構成相は、Zn,MgZn,Alと判明している。元素マッピングと反射電子像を比較したところ、反射電子像の白色部はZn、灰色部はMgZn、黒色部はAlと考えられる。
一方、No.5の構成相は、X線回折結果より、Zn,MgZn,AlおよびMgZn11と判明している。No.5とNo.27の元素マッピングを見比べると、熱処理前のNo.27では、ZnとMgZnの境界に急峻な組成差が観察されたが、熱処理後のNo.5におけるZnとMgZnの境界の組成差は、No.27に比べて緩慢だった。MgZn11は、ZnとMgZnの中間の組成であり、2MgZn+7Zn→MgZn11の反応でZnとMgZnの界面にMgZn11が生成したと考えられる。
Figure 2023074874000001
Figure 2023074874000002

Claims (8)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成されためっき層とが備えられ、
    前記めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
    前記めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
  2. 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~0.1質量%のSiを含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
  3. 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板。
  4. 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とが備えられ、
    前記めっき層は、平均組成で、Al:1.0質量%以上3.0質量%未満、Mg:1.0質量%以上2.0質量%以下、を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
    前記めっき層には、η-Zn相と、〔Zn/MgZn11/MgZnの三元ラメラ組織〕と、〔Al/Zn/MgZn11/MgZnの四元ラメラ組織〕とが含まれ、
    Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び200mAである条件で測定した、前記めっき層表面のX線回折パターンにおいて、MgZn11が検出される、自動車用部品。
  5. 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~0.1質量%のSiを含有することを特徴とする請求項4に記載の自動車用部品。
  6. 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の自動車用部品。
  7. 溶融めっき法により、鋼板の表面に、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の平均組成を有するとともに、η-Zn相と、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とが含まれるめっき層を形成するめっき工程と、
    前記めっき層工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、を備え、
    前記熱処理工程は、均熱温度をT(℃)、均熱時間をt(分)としたとき、均熱温度T(℃)を、下記式(A)により求まるTmax(℃)以上、310℃以下の範囲とし、Tmax(℃)が90℃未満の場合は均熱温度T(℃)を90℃以上とする、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板の製造方法。
    max=(1300/lnt)-273 …(A)
    上記式(A)において、tは、均熱時間(分)である。tは0分超、45分以下とする。
  8. 溶融めっき法により、鋼板の表面に、請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の平均組成を有するとともに、η-Zn相と、〔Zn/MgZnの二元共晶組織〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とが含まれるめっき層を形成するめっき工程と、
    前記めっき工程後に、前記めっき層が形成された前記鋼板を成形加工する成形工程と、
    前記成形工程後に、熱処理を行う熱処理工程と、を備え、
    前記熱処理工程は、均熱温度をT(℃)、均熱時間をt(分)としたとき、均熱温度T(℃)を、下記式(B)により求まるTmax(℃)以上、310℃以下の範囲とし、Tmax(℃)が90℃未満の場合は均熱温度T(℃)を90℃以上とする、請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の自動車用部品の製造方法。
    max=(1300/lnt)-273 …(B)
    上記式(B)において、tは、均熱時間(分)である。ただし、tは0分超、45分以下とする。
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