JP2009287085A - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理物の歪みや変形を小さく抑えることが可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の熱処理装置は、冷却用ガス2を循環させることにより加熱された被処理物1を冷却する冷却室22を備え、冷却室22は、室内に冷却用ガス2を循環させることにより被処理物1を冷却するガス冷却循環装置24と、被処理物1を所定の方向から押圧する押圧装置40と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、熱処理装置および熱処理方法に関し、例えば被処理物の焼入れ等の処理に用いて好適な熱処理装置の構成に関するものである。
被処理物である金属材を加熱し、冷却することにより、いわゆる焼入れ等の処理を行う熱処理装置において高速の冷却を必要とする場合、従来は油冷方式の冷却装置が主として用いられてきた。ところが、油冷方式では冷却工程の後に洗浄工程が必須であり、製造工程の負担が大きく、生産性の低下が懸念されていた。また、冷媒の流れ方や温度による熱伝導率の変動が大きく、被処理物の歪みや変形が生じる虞もあった。
そこで、上記の問題を解決する手段として、油冷方式に代えて、加熱後の被処理物を収容した炉内で冷却用ガスをファン等により強制的に送風し、高速に循環させることで被処理物を冷却する、いわゆる高速循環ガス冷却方式の熱処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。さらに、本装置においては、冷却用ガスの速度分布を均一化するため、被処理物の上下に整流器が設けられている。
特開2005−29872号公報
上述したように、特許文献1の熱処理装置においては、高速循環ガス冷却方式の採用に加え、整流器を追加したことによって冷却用ガスの流れ方が円滑になり、温度による熱伝導率の変動が小さくでき、被処理物の歪みや変形を小さく抑えることができる。しかしながら、精密な加工精度が要求される被処理物に対してはこれでもまだ不十分であり、被処理物の歪みや変形をより小さく抑えられる熱処理装置の提供が求められている。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、被処理物の歪みや変形を十分に小さく抑えることが可能な熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の熱処理装置は、冷却用ガスを循環させることにより加熱された被処理物を冷却する冷却室を備え、前記冷却室は、室内に冷却用ガスを循環させることにより前記被処理物を冷却するガス冷却循環装置と、前記被処理物を所定の方向から押圧する押圧装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明の熱処理装置において、前記押圧装置は、前記被処理物の上方、下方の少なくとも一方に設けられ、前記被処理物に当接する押圧治具と、前進、後退可能に設けられ、前記押圧治具を前記被処理物に向けて押圧する駆動軸と、前記駆動軸を前進または後退させる駆動源と、を備える構成を採用できる。
本発明の熱処理装置において、前記被処理物が載置される載置台を備えるとともに、前記押圧装置が少なくとも前記被処理物の上方に配置され、前記押圧装置により前記被処理物が押圧される構成を採用できる。
本発明の熱処理装置において、前記駆動軸が、水平方向に互いに離間して複数設けられた構成を採用できる。
本発明の熱処理装置において、前記複数の駆動軸は、各々が独立した前記駆動源に接続され、前記被処理物に対する押圧力が各々で個別に調整可能とされている構成を採用できる。
本発明の熱処理装置において、前記複数の駆動軸は、全てが共通の前記駆動源に接続され、前記被処理物に対する押圧力が一括して調整可能とされている構成を採用できる。
本発明の熱処理装置において、前記冷却用ガスの流れ方向と前記押圧装置による前記被処理物の押圧方向が略同一であり、前記押圧治具は、前記被処理物に当接した状態で前記被処理物の表面を露出させる開口を有している構成を採用できる。
本発明の熱処理方法は、被処理物を減圧雰囲気下において加熱する加熱工程と、前記被処理物を所定の方向から押圧しながら、前記加熱工程において加熱した前記被処理物に対して冷却用ガスを送風して前記被処理物を冷却する冷却工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明の熱処理装置においては、ガス冷却循環装置が室内に冷却用ガスを循環させて被処理物を冷却する際、押圧装置が被処理物を所定の方向から押圧する。この構成により、冷却時に被処理物の熱伝達率の変動があったとしても、被処理物が強制的に押圧されることで被処理物の歪みや変形を小さく抑えることができる。
また、押圧装置が前記押圧治具と前記駆動軸と前記駆動源とを備える構成であれば、例えば一般的なシリンダ等を用いて本発明の熱処理装置に好適な押圧装置を実現できる。特に押圧治具が駆動軸や駆動源と別体であれば、被処理物の形状や寸法に合わせて最適に設計した押圧治具を用いることができ、被処理物に確実に押圧力を付与できる。
また、被処理物を載置する載置台を備え、押圧装置が被処理物の上方から押圧する構成とすれば、被処理物の重量が下方から載置台に支持された状態で押圧力が上方から付与され、被処理物の歪みや変形が確実に抑えられる。
また、駆動軸を水平方向に互いに離間して複数設けた構成とすれば、複数の駆動軸によって被処理物の全体にわたって確実に押圧力を付与できるので、被処理物の歪みや変形がより小さく抑えられる。
また、複数の駆動軸を設けた場合、各駆動軸を独立した駆動源に接続し、押圧力を各々で個別に調整可能とした構成であれば、例えば被処理物の場所により歪みや変形の程度が異なるようなことがあっても、その場所に応じて押圧力を最適に調整できる。その結果、被処理物全体にわたって歪みや変形が確実に抑えられる。
あるいは、全ての駆動軸を共通の駆動源に接続し、押圧力を一括して調整可能とした構成であれば、駆動軸の数に対して駆動源の数を減らすことができ、押圧装置の簡略化が図れる。また、被処理物に均等な押圧力を付与し易くなるため、被処理物全体にわたって歪みや変形が確実に抑えられる。
また、冷却用ガスの流れ方向と被処理物の押圧方向を略同一とし、押圧治具が被処理物の表面を露出させる開口を有する構成とすれば、開口を通じて冷却用ガスが被処理物に接触するため、押圧治具が冷却用ガスの流れの妨げにならない。その結果、被処理物が急速に冷却され、熱処理による所望の特性を得ることができる。
本発明の熱処理方法は、被処理物を減圧雰囲気下において加熱した後、被処理物を所定の方向から押圧しながら高温の被処理物に冷却用ガスを送風して被処理物を冷却するため、冷却時に被処理物が強制的に押圧されることで被処理物の歪みや変形を小さく抑えることができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4を用いて説明する。
本実施形態では、熱処理装置として、多室型の高速循環ガス冷却式真空熱処理炉(以下、単に「真空熱処理炉」と称する)の例を示す。
図1は、本実施形態の真空熱処理炉の全体構成図である。図2は、真空熱処理炉を構成する冷却室の部分の拡大図である。図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。図4は、押圧治具の平面図である。
なお、以下の各図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態の真空熱処理炉は、図1に示すように、真空加熱炉10と、ガス冷却炉20と、移動装置30とを備える多室型熱処理炉である。真空加熱炉10は、被処理物1を減圧した後、不活性ガス等を再充填して加熱する機能を有する。ガス冷却炉20は、図2に示すように、加熱された高温の被処理物1を、加圧した冷却用ガス2により冷却する機能を有する。移動装置30は、図1に示すように、真空加熱炉10とガス冷却炉20との間で被処理物1を移動する機能を有する。
真空加熱炉10は、真空容器11、加熱室12、前扉13、後扉14、載置台15、ヒータ16等を備えている。真空容器11の内部に、被処理物1を内部に収容する加熱室12が設けられている。また、真空容器11には図示しない排気手段が接続されており、真空容器11の内部が減圧可能に構成されている。前扉13は、加熱室12に対して被処理物1を出し入れする際にガス冷却炉20側の開口を開閉する扉である。後扉14は、加熱室12内の被処理物1を移送する際に、後述する搬送棒32を出し入れする移動装置30側の開口を開閉する扉である。載置台15は、被処理物1を載置するためのものである。ヒータ16は、被処理物1を加熱するためのものである。この構成により、真空容器11の内部を真空に減圧した状態で、ヒータ16により被処理物1を所定の温度に加熱することができる。
移動装置30は、搬送棒32、後扉昇降装置33、前扉昇降装置34、中間扉昇降装置35等を備えている。搬送棒32は、真空加熱炉10とガス冷却炉20との間で被処理物1を水平に移送するためのものである。後扉昇降装置33は、後扉14を昇降させて加熱室12の移動装置30側の開口を開閉するものである。前扉昇降装置34は、前扉13を昇降させて加熱室12のガス冷却炉20側の開口を開閉するものである。中間扉昇降装置35は、後述するガス冷却炉20の中間断熱扉21aを昇降させてガス冷却炉20の真空加熱炉10側の開口を開閉するものである。
具体的には、搬送棒32はラックピニオン駆動とされ、後扉昇降装置33は直動シリンダで構成され、前扉昇降装置34と中間扉昇降装置35は巻上げ機で構成されているが、本発明はこれらに限定されず、その他の駆動機構であってもよい。この構成により、後扉14、前扉13および中間断熱扉21aを上昇させて内部を開放した状態で、搬送棒32を前進または後退させることにより、被処理物1を真空加熱炉10とガス冷却炉20との間で水平に移送することができる。
ガス冷却炉20は、図1〜図3に示すように、真空容器21、冷却室22、ガス冷却循環装置24、ガス方向切替え装置26、整流器28を備えている。真空容器21は、真空加熱炉10の前扉13に対向して設けられた中間断熱扉21a、被処理物1を内部に収容する円筒形の容器胴部21b、ガス冷却循環装置24を収容する循環部21c、および気密に開閉可能なクラッチリング21d,21eから構成されている。この構成により、クラッチリング21eを開放し、容器胴部21bに対して循環部21cを図1、図2における右方に後退させることにより、被処理物1を容器胴部21bの内部に直接収納することができる。また、クラッチリング21d,21eにより中間断熱扉21aと循環部21cを容器胴部21bに対して気密に連結し、加圧した冷却用ガスを真空容器21の内部に供給することにより、加圧ガスを冷却に用いることができる。冷却用ガスには、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスが用いられる。
冷却室22は、真空加熱炉10に隣接して容器胴部21bの中央部に設けられている。図2、図3に示すように、冷却室22の真空加熱炉10側の面は中間断熱扉21aで仕切られ、ガス冷却循環装置24側の面と両側面は気密性のある断熱壁22a、22bで仕切られている。冷却室22は、上面および下面が開口しているため、室内に上下方向に断面一定のガス流路が形成されている。この冷却室22の内部が冷却領域である。
被処理物1は、例えばギヤ・シャフト、ジェットエンジンの動翼、静翼、ボルト等の小型金属部品であり、トレーやバスケット内に収容され、冷却室22の中央に通気性のある載置台23に載せて静置される。載置台23は、図1に示すように、真空加熱炉10の載置台15と同一高さに設置され、内蔵するローラ上を自由に水平移動できるようになっている。また、図3に示すように、容器胴部21bと断熱壁22bの間には水平仕切板22cが設けられ、この水平仕切板22cによってガス冷却炉20の内部が上下に仕切られている。
ガス冷却循環装置24は、図2に示すように、冷却ファン24aと、熱交換器25と、から構成されている。冷却ファン24aは、冷却室22に隣接して設置され、冷却室22を通過したガスを冷却室22の上端または下端から吸引する。ここで、冷却室22内に冷却用ガスを一旦導入したら、同一の圧力を維持したまま循環させる。ただし、ガス温度が低下すると、圧力は若干低下する。そのときは、圧力が所定の値以下になるように調整しつつ冷却用ガスを補充する。また、熱交換器25は、冷却ファン24aによって吸引される冷却用ガスを間接冷却する。熱交換器25は、例えば内部が水冷された冷却フィンチューブで構成されている。冷却ファン24aは、真空容器21の循環部21cに取付けられた冷却ファンモータ24bにより回転駆動され、その中央部からガスを吸引し、外周部から吐出する。この構成により、熱交換器25で冷却されたガスを冷却ファン24aの中央部から吸引するとともに外周部から吐出し、冷却用ガス2として冷却室22内を上下方向に流れるように循環させることができる。
ガス方向切替え装置26は、この例では、所定の間隔をもって熱交換器25を囲むように配置された中空のカウリング26aと、カウリング26aを昇降させる昇降シリンダ27とから構成されている。カウリング26aは、下降位置において冷却室22の下方と連通する下方吸引口26bと、上昇位置において冷却室22の上方と連通する上方吸引口26cとを有する。この構成により、ガス方向切替え装置26により下方吸引口26bと上方吸引口26cを所定時間毎に交互に冷却ファン24aの吸引側に連通させることにより、冷却室22内を上下方向に通過するガスの流れ方向を交互に切り替える。このようにして、整列化された被処理物1の位置による冷却速度の差を低減し、熱処理材全体の歪みを低減する。図2に示すように、カウリング26aが下降位置にある場合、下方吸引口26bが冷却ファン24aの吸引側に連通するため、冷却用ガスは冷却室22内を上から下に通過する。逆に、カウリング26aが上昇位置にある場合、上方吸引口26cが冷却ファン24aの吸引側に連通するため、冷却用ガスは冷却室22内を下から上に通過する。
整流器28は、冷却室22の上面および下面を塞ぐようにそれぞれ設けられ、冷却室22を通過するガスの速度分布を均一化させる機能を有する。各整流器28は、互いに積層された均等分配部28aと整流部28bとから構成されている。なお、整流器28は、一つの部材が均等分配部と整流部の両機能を備えてもよい。均等分配部28aは、所定の流路抵抗を付与することで流速の均等分配化を図るためにガス2の流れに直交する方向(この例で水平方向)に均等に配置された複数の圧損発生手段を有する。圧損発生手段は、例えば貫通孔であり、流路抵抗を付与することにより流速の均等分配化を図るようになっている。
整流部28bは、例えば格子状に配列した複数の整流グリッドからなり、均等分配部28bを通過したガス2の流れ方向を整流し、流れ方向を均等化する。この構成により、複数の圧損発生手段により流速分布を均等化し、複数の整流グリッドによりガス2の流れ方向が均等化されるようになっている。
さらに、冷却室22の上下には、冷却室22から流出入するガス2の流れ方向を案内する補助分配機構29(例えば吹き込み板)がそれぞれ設けられている。これにより、冷却室22の上下面積が大きい場合でも、複数箇所に向かうガス2の流れ方向が最適化され、流れの均一性が向上する。
本実施形態のガス冷却炉20は、被処理物1の冷却時に被処理物1を押圧する複数(本実施形態では4組)の押圧装置40を備えている。押圧装置40は、駆動軸昇降装置41(駆動源)と、駆動軸42と、押圧治具43とから構成されており、図2、図3に示すように、冷却炉20の上部と下部に2組ずつ、合計4組設けられている。駆動軸昇降装置41は例えば直動ピストン等で構成されており、真空容器21の外面に固定されている。各駆動軸42は、補助分配機構29および整流器28の開口部を貫通して被処理物1に向かって延在し、対応する駆動軸昇降装置41によって上下方向に前進、後退する。
押圧治具43は、図2、図3に示すように、被処理物1の上面および下面に当接するように設置され、被処理物1の全体に駆動軸42からの押圧力を分散して伝達するためのものである。この押圧治具43は、図4に示すように、円板状の軸受部43aと、軸受部43aから放射状に延在する複数(本実施形態では8枚)の羽根部43bと、から構成されている。すなわち、押圧治具43は、1枚の平坦な板状部材ではなく、被処理物1に当接した状態で被処理物1の上面および下面を露出させる開口43cを有している。なお、図4に2点鎖線の仮想線で示すように、本実施形態では被処理物1として円筒状の被処理物を想定している。また、図2では2組の被処理物1を水平方向に並べて配置しており、各駆動軸42に対応して各被処理物1の上面および下面にそれぞれ押圧治具43を設置している。
上記構成の真空熱処理炉を用いて、例えば焼入れ等の被処理物の熱処理を行う際には、真空加熱炉10内において被処理物1を減圧雰囲気下で加熱する(加熱工程)。その後、移動装置30により被処理物1をガス冷却炉20に移送する。次に、ガス冷却炉20内において各押圧装置40により被処理物1を上下方向から押圧しながら、被処理物1に対して冷却用ガス2を強制的に送風して被処理物1を冷却する(冷却工程)。
本実施形態の真空熱処理炉においては、冷却室22の上下に冷却用ガスの補助分配機構29や整流器28を備えたことにより冷却用ガス2の流れが均等化され、被処理物1に対して冷却用ガス2をムラなく送風することができる。また、押圧装置40を備えたことにより被処理物1の冷却時に被処理物1に対して押圧力が付与されつつ冷却されるため、被処理物1の歪みや変形が充分小さく抑えられる。
特に本実施形態の場合、押圧治具43が駆動軸42と別体に構成されているため、被処理物1の形状や寸法に合わせて最適に設計した押圧治具43を用いることができ、被処理物1に対して確実に押圧力を付与できる。また、複数の押圧装置40が備えられ、各駆動軸42が個別の駆動軸昇降装置41に接続され、押圧力が個別に調整可能とされているため、例えば被処理物1の場所によって歪みや変形の程度が異なるようなことがあっても、その場所に応じて押圧力を最適に調整できる。その結果、被処理物1全体にわたって歪みや変形を確実に抑えることができる。さらに、押圧治具43が被処理物1の表面を露出させる開口43cを有しているため、押圧治具43が冷却用ガス2の流れの妨げにならず、被処理物1が均等かつ急速に冷却され、熱処理による所望の特性を得ることができる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図5〜図8を用いて説明する。
本実施形態の真空熱処理炉の基本構成は第1実施形態と同様であり、押圧装置の構成のみが第1実施形態と異なる。したがって、以下では真空熱処理炉の基本構成の説明は省略し、押圧装置周りの構成についてのみ説明する。
図5は、本実施形態の真空熱処理炉における押圧装置の側面図である。図6は、同押圧装置の側面図である。図7は、押圧治具の平面図である。図8は、支持機構の枠体の平面図である。
第1実施形態では、ガス冷却炉の上下に押圧装置が備えられ、被処理物に対して上下から押圧力を付与できる構成となっていた。これに対して、本実施形態では、押圧装置は被処理物の上方にのみ設けられ、被処理物の下方には支持機構が設けられ、押圧力は被処理物の上方からのみ付与される点が第1実施形態と異なっている。
具体的には、本実施形態の場合、図5、図6に示すように、被処理物1を上方から押圧する各駆動軸42は、第1実施形態と同様、個別の駆動軸昇降装置(図示せず)に接続され、駆動軸42毎に押圧力を調整できるようになっている。これら駆動軸42側の構成は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。ただし、押圧治具の構成が第1実施形態と若干異なっている。図7に示すように、本実施形態の押圧治具53は、円板状の軸受部53aと、軸受部53aから放射状に延在する複数(本実施形態では6枚)の羽根部53bと、各羽根部53bの先端を連結する円環状の枠部53dとから構成されている。また、軸受部53aと隣接する羽根部53bと枠部53dとによって囲まれた部分は冷却用ガスを被処理物1に向けて流すための開口53cとなっている。この押圧治具53によれば、枠部53dによって羽根部53bが補強されているため、強度が高まるとともに、被処理物1の周縁部にも押圧力を安定して付与することができる。
一方、被処理物1の下方には、被処理物1が載置された載置台15を下方から支持する支持機構54が設けられている。支持機構54は、複数の第1支持軸55と、これら第1支持軸55を支持する枠体56と、枠体56を支持する第2支持軸57と、を有している。枠体56は、図8に示すように、長方形の長手方向に2つの開口56cを有している。第1支持軸55は、枠体56の各長辺に沿って3本ずつ、枠体56の中心に1本、合計7本固定されている。また、第2支持軸57は第1支持軸55よりも大きい径を有しており、枠体56の中心に固定されている。このように、支持機構54の枠体56が開口56cを有しているため、支持機構54が冷却用ガスの流れの妨げになることがない。また、複数の第1支持軸55で載置台15を支持する構成のため、押圧装置の駆動軸42と比べて第1支持軸55には細い棒状の部材を用いることができる。
本実施形態の真空熱処理炉においても、被処理物1の冷却時に押圧力が付与されつつ冷却が行われるため、被処理物1の歪みや変形を充分小さく抑えることができる、という第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の場合、押圧装置40をガス冷却炉20の上方にのみ設ければよいため、装置構成を簡略化することができる。
なお、本実施形態では、被処理物1の下側は支持機構54によって載置台15を支持する構成としたが、この支持機構に代えて、被処理物1の下側にも押圧装置を備えても良い。この場合、例えば図5、図6に示した支持機構54の第2支持軸57をシリンダ等の昇降装置に連結し、第2支持軸57とともに枠体56、第1支持軸55を昇降させる構成とすればよい。この構成とすれば、第1実施形態と同様、被処理物1の上下から押圧力を付与できる。このような構成として被処理物1の下側からの押圧力を一括して調整すれば、被処理物1に対して均等な押圧力を付与し易くなり、被処理物1全体にわたって歪みや変形が確実に抑えられる。また、昇降装置の数が削減でき、装置コストを低減できる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では冷却用ガスを上下方向に流し、押圧装置によって被処理物を上下方向から押圧する構成としたが、例えば冷却用ガスを水平方向に流し、被処理物を上下方向から押圧するというように冷却用ガスの流れ方向と押圧方向が異なっても良い。また、押圧治具の交換等の面では不利になるものの、押圧治具を駆動軸と一体の構成としても良い。また、押圧治具の構成や形状等は適宜変更が可能である。その他、押圧装置の駆動軸昇降装置の具体的構成等についても、シリンダに限らず、適宜変更が可能である。
さらに、本発明は、上記実施形態の多室型熱処理炉に限定されるものではなく、真空加熱とガス冷却を同一の室で行う単室炉に適用することもできる。
本発明の第1実施形態の真空熱処理炉の全体構成図である。 真空熱処理炉を構成する冷却室の部分の拡大図である。 図2のA−A線に沿う断面図である。 同、真空熱処理炉の押圧装置を構成する押圧治具の平面図である。 本発明の第2実施形態の真空熱処理炉の押圧装置の側面図である。 同、押圧装置の側面図である。 同、押圧装置を構成する押圧治具の平面図である。 支持機構の枠体の平面図である。
符号の説明
1…被処理物、2…冷却用ガス、10…真空加熱炉、15…載置台、20…ガス冷却炉、24…ガス冷却循環装置、30…移動装置、40…押圧装置、41…駆動軸昇降装置(駆動源)、42…駆動軸、43,53…押圧治具、43c,53c…開口。

Claims (8)

  1. 冷却用ガスを循環させることにより加熱された被処理物を冷却する冷却室を備え、
    前記冷却室は、室内に冷却用ガスを循環させることにより前記被処理物を冷却するガス冷却循環装置と、前記被処理物を所定の方向から押圧する押圧装置と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。
  2. 前記押圧装置は、前記被処理物の上方、下方の少なくとも一方に設けられ、前記被処理物に当接する押圧治具と、前進、後退可能に設けられ、前記押圧治具を前記被処理物に向けて押圧する駆動軸と、前記駆動軸を前進または後退させる駆動源と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
  3. 前記被処理物が載置される載置台を備え、前記押圧装置が少なくとも前記被処理物の上方に配置され、前記押圧装置により前記被処理物が押圧されることを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
  4. 前記駆動軸が、水平方向に互いに離間して複数設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載の熱処理装置。
  5. 前記複数の駆動軸は、各々が独立した前記駆動源に接続され、前記被処理物に対する押圧力が各々で個別に調整可能とされていることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。
  6. 前記複数の駆動軸は、全てが共通の前記駆動源に接続され、前記被処理物に対する押圧力が一括して調整可能とされていることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。
  7. 前記冷却用ガスの流れ方向と前記押圧装置による前記被処理物の押圧方向が略同一であり、
    前記押圧治具は、前記被処理物に当接した状態で前記被処理物の表面を露出させる開口を有していることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載の熱処理装置。
  8. 被処理物を減圧雰囲気下において加熱する加熱工程と、
    前記被処理物を所定の方向から押圧しながら、前記加熱工程において加熱した前記被処理物に対して冷却用ガスを送風して前記被処理物を冷却する冷却工程と、を備えたことを特徴とする熱処理方法。
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