JP2009275272A - インジウム、ガリウム及び亜鉛を含む酸化物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を含む酸化物を提供する。この酸化物をスパッタリングターゲットとして利用する。
【選択図】なし
Description
しかし、このような酸化物半導体膜形成に使用する酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛からなるスパッタリングターゲットは、十分に低抵抗のターゲットを得る事が出来なかった。例えば、InGaO3(ZnO)mの化合物を用いた酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛からなるスパッタリングターゲット(ホモロガス相の結晶構造を示す多結晶酸化物焼結体)は、スパッタリングを行う場合に、InGaO3(ZnO)mで表される化合物が異常成長して異常放電を起こし、得られる膜に不良が発生する問題があった(特許文献2)。また、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛からなるスパッタリングターゲットとしては、AXBYO (KaX+KbY )/2(ZnO)m (1<m、X≦m、0<Y≦0.9、X+Y=2)を満たす酸化亜鉛を主成分とした化合物を含有するターゲットも知られているが(特許文献3)、このスパッタリングターゲットは、ホワイトスポットと呼ばれるターゲット表面上に生じる凹凸などの外観不良が発生しやすい、スパッタリングレートが遅い、スパッタ時にスパッタ材料の発塵(パーティクル)が生じる、アーク放電が発生する(アーキング)、ノジュール(スパッタリングターゲット表面に生じる塊)の発生が多い、相対密度やバルク抵抗などの品質のばらつきが多きい、大面積を均一に成膜しづらいなどの問題があった。
本発明の第2の目的は、スパッタリングレートの早いターゲットを提供することにある。
本発明の第3の目的は、スパッタリングによって膜を形成する際に、直流(DC)スパッタリングが可能であり、スパッタ時のアーキング、パーティクル(発塵)、ノジュール発生が少なく、且つ高密度で品質のばらつきが少なく量産性を向上させることのできるスパッタリングターゲットを提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記スパッタリングターゲットに特に適した酸化物を提供することにある。
本発明の第5の目的は、上記スパッタリングターゲットを用いて得られる薄膜、好ましくは保護膜、並びに該膜を含む薄膜トランジスタの形成方法を提供することにある。
[1]インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を含むことを特徴とする酸化物に関する。
[2]前記酸化物に含まれる結晶相全体に対し、前記(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相が、50質量%以上である、[1]に記載の酸化物に関する。
[3]インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)の合計(In+Ga+Zn)に対する、各元素の原子比が下記式(1)〜(3)の関係を満たす、[1]又は[2]に記載の酸化物に関する。
0.05≦In/(In+Ga+Zn)≦0.9 (1)
0.05≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.9 (2)
0.05≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.9 (3)
[4]さらに、正四価以上の金属元素(X)を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の酸化物に関する。
[5]前記正四価以上の金属元素(X)が、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム、セリウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン及びチタンから選ばれた1種以上の元素であることを特徴とする[4]に記載の酸化物に関する。
[6]インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、亜鉛元素(Zn)、前記正四価以上の金属元素(X)の合計(In+Ga+Zn+X)に対する、前記正四価以上の金属元素(X)の原子比が下記の式(4)又は(5)の関係を満たす、[4]又は[5]に記載の酸化物に関する。
0.0001≦X/(In+Ga+Zn+X)<0.05 (4)
0.05≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.4 (5)
[7]バルク抵抗が0.1〜17mΩcmであり、相対密度が80%以上である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の酸化物に関する。
[8]
(a)酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化亜鉛を秤量し、混合し、粉砕する工程;
(b)得られた粉砕物を媒体と混合し、乾燥して混合粉を得る工程;及び
(c)得られた混合粉を焼結する工程
を含む、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の酸化物の調製方法に関する。
[9][1]〜[7]のいずれか1つに記載の酸化物からなるスパッタリングターゲットに関する。
[10]スパッタリング法によるアモルファス酸化物薄膜の形成方法であって、
(i) [9]に記載のスパッタリングターゲットを用い、25〜450℃の成膜温度下でスパッタリングを行う工程、
を含み、電子キャリア濃度が1×1018/cm3未満の前記アモルファス酸化物薄膜を形成することを含むことを特徴とする方法に関する。
[11]前記アモルファス酸化物薄膜が、薄膜トランジスタのチャネル層として用いられる、[10]に記載の方法に関する。
本発明のインジウム、ガリウム及び亜鉛を含み、(Ga ,In)2O3 で表される酸化物結晶相を含む酸化物を含むスパッタリングターゲットは、従来のInGaZnO4型の酸化物からなるスパッタリングターゲットやIn2Ga2ZnO7型酸化物からなるスパッタリングターゲットよりも、スパッタ時に生ずるパーティクル(発塵)を低く抑えることができ、もってスパッタリングターゲットから得られる薄層トランジスタ(TFT)パネルの歩留りを向上することができる。また、本発明の酸化物を用いることにより、スパッタリングターゲット表面上に生ずるノジュール(塊)を低減し、該スパッタリングターゲットの坑折強度(JIS R1601)を向上することができる。また、本発明の酸化物を用いたスパッタリングターゲットは、高度の均一性を達成できるため、該スパッタリングターゲットを用いることにより、スパッタ時の異常放電を抑制でき、ひいては、スパッタにより形成された薄膜の均一化をはかることができる。
本発明のインジウム、ガリウム及び亜鉛を含み、(Ga ,In)2O3 相酸化物結晶を含む酸化物を用いることにより、酸化物半導体やTFTの作製に適したターゲットを提供できる。
本発明の酸化物は、インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)を含み、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を含む。本発明の酸化物は、好ましくは更に正四価以上の金属元素(X)を含む。
(1-1)含有元素
本発明の酸化物は、インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含む。更に好ましくは、正四価以上の金属元素(X)を含む。正四価以上の金属元素(X)としては、例えば、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム、セリウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、チタンから選ばれた1種以上の元素が挙げられる。これらの金属元素(X)を本発明の酸化物に添加することにより、酸化物自体のバルク抵抗値を低減でき、更に酸化物をスパッタリングする際にスパッタリングターゲット上で生ずる異常放電の発生を抑えることが出来る。
本発明の酸化物を利用したスパッタリングターゲットから得られる酸化物薄膜は、非晶質膜であり、添加された正四価の金属はドーピング効果がなく、電子密度が十分に低減された膜を得ることができる。従って、当該酸化物皮膜を酸化物半導体膜として利用した場合、バイアスストレスによるVthシフトが抑えられ、半導体としての作動も安定したものになる。ここで、Vthとは、ゲート電圧(ドレイン電圧)をかけた場合にドレイン電流が立ち上がる際の電圧をいう。また、Vthシフトとは、ゲート電圧(ドレイン電圧)をかけた際に起きるVthの変動をいう。Vthシフトが小さければ、半導体としての作動が安定しているといえる。
0.05≦In/(In+Ga+Zn)≦0.9 (1)
0.05≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.9 (2)
0.05≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.9 (3)
なお、式中、「In」、「Ga」、「Zn」は、それぞれインジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)の原子数である。
In/(In+Ga+Zn)が、0.05より大きければ、当該酸化物から得られる薄層トランジスタ(TFT)のキャリアー移動度を向上することができ、また、0.9より小さければ、オフ電流が高くなることもないので好ましい。
Ga/(In+Ga+Zn)が、0.05より大きければ、オフ電流が高くなることもなく、また、0.9より小さければ、キャリアー移動度を向上することができるので好ましい。
Zn/(In+Ga+Zn)が、0.05より大きければ、ウェットエッチングを行う際にも影響がなく、また、0.9より小さければ、化学的に不安定となることもないので好ましい。
0.25≦In/(In+Ga+Zn)≦0.5 (1)
0.25≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.5 (2)
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.4 (3)
であり、特に好ましくは、
0.3≦In/(In+Ga+Zn)≦0.5 (1)
0.3≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.5 (2)
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.25 (3)
である。上記範囲内であれば、(Ga,In)2O3が形成される。
0.0001≦X/(In+Ga+Zn+X)<0.05 (4)
0.05≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.4 (5)
なお、式中、「In」、「Ga」、「Zn」、「X」は、それぞれインジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、亜鉛元素(Zn)、及び正四価以上の金属元素(X)の原子数である。
ここで、式(4)は、0.0001≦X/(In+Ga+Zn+X)<0.05 が好ましく、0.0003≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.02 が特に好ましい。0.0001以上であれば、正四価以上の金属元素(X)の上記添加の効果を十分発揮することができ、(Ga,In)2O3の生成にも影響を与えない。また、0.05よりも小さければ、金属元素(X)の散乱による移動度低下やS値の増大が小さく好ましい。
ここでS値(Swing Factor)とは、オフ状態からゲート電圧を増加させた際に、オフ状態からオン状態にかけてドレイン電流が急峻に立ち上がるが、この急峻さを示す値である。下記式で定義されるように、ドレイン電流が1桁(10倍)上昇するときのゲート電圧の増分をS値とする。
S値=dVg/dlog(Ids)
S値が小さいほど急峻な立ち上がりとなる(「薄膜トランジスタ技術のすべて」、鵜飼育弘著、2007年刊、工業調査会)。S値が大きいと、オンからオフに切り替える際に高いゲート電圧をかける必要があり、消費電力が大きくなるおそれがある。
また、S値は0.8V/dec以下が好ましく、0.3V/dec以下がより好ましく、0.25V/dec以下がさらに好ましく、0.2V/dec以下が特に好ましい。0.8V/decより大きいと駆動電圧が大きくなり消費電力が大きくなるおそれがある。特に、有機ELディスプレイで用いる場合は、直流駆動のためS値を0.3V/dec以下にすると消費電力を大幅に低減できるため好ましい。
0.05≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.4 が好ましく
0.07≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.2 が特に好ましい。
0.05以上であれば、スパッタリングターゲットとして用い薄膜を作製した際に薄膜の薬品耐性が改善できるので好ましい。また、0.4以下であれば、バルク抵抗が高くなることもなく、スパッタリングターゲットの相対密度が低下することもなく、スパッタリングターゲットの抗折強度を保持することができ、(Ga,In)2O3の生成にも影響を与えないので好ましい。
ここで、理由は必ずしも解明されていないが、上記式(4)の範囲であれば、正四価以上の金属元素Xが酸化インジウムに固溶置換してキャリア発生し、また(Ga,In)2O3構造を生成しやすくし、かつ結晶を強固にすると考えられる。また、上記式(5)の範囲であれば、結晶格子間に存在する正四価以上の金属元素(X)が(Ga,In)2O3の結晶化温度を変化させ、(Ga,In)2O3構造を生成しやすくすると考えられる。
また、式(4)と(5)を組み合わせた一つの範囲を好ましい範囲とするのではなく、式(4)と(5)のいずれか一方を満たすことが要件となっている理由は、正四価以上の金属元素(X)の効果が、(4)の範囲では(Ga,In)2O3自体の抵抗を下げる効果として働き、(5)の範囲では(Ga,In)2O3の生成自体を促進させるため働くものと考えられるからである。
本発明の酸化物は、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相((Ga ,In)2O3 型構造)を有する。本発明の酸化物が(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を含むことは、本発明の酸化物のX線回折パターンが、既知の(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相のX線回折パターン(JCPDSカードNo.14-0564)と一致していることから判断できる。当該(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相の正確な構造は判明していないが、kappa alumina類似の構造をしており、β−Ga2O3型構造、ビックスバイト型構造及びコランダム構造とは異なる構造である。
また、本発明の酸化物は、インジウム元素(In)及びガリウム元素(Ga)の他、亜鉛元素(Zn)及び任意に正四価以上の金属元素(X)も含む。これら、亜鉛元素(Zn)及び任意に正四価以上の金属元素(X)が(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相中にどのように存在しているかは判明していないが、上述の通り、金属元素(X)が式(4)を満たすときは、(Ga,In)2O3の結晶格子間に存在しており、金属元素(X)が式(5)を満たすときは、少なくともその一部がGaあるいはInを置換しているものと考えられる。
また、(Ga,In)2O3の結晶のX線マイクロアナライザ(EPMA)によって測定された平均粒径は、40μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、10〜0.1μmであることが適当である。ここで、平均粒径は、好ましくは、X線マイクロアナライザ(EPMA)によって測定される最大粒径の平均粒径である。最大粒径は、例えば、得られた焼結体を樹脂に包埋し、その表面を粒径0.05μmのアルミナ粒子で研磨した後、X線マイクロアナライザ(EPMA)であるJXA−8621MX(日本電子社製)により5、000倍に拡大した焼結体表面の50μm×50μm四方の枠内で観察される(Ga,In)2O3結晶粒子の最大径を5箇所で測定する。各箇所の最大径の最大値(各箇所の一番大きな粒子の最大径)の平均を最大粒径の平均粒径とする。なお、ここでは外接円の直径(粒子が有する一番長い直径)を最大径とする。
は、β−Ga2O3型構造を有する酸化ガリウム相(β−Ga2O3相)、β−Ga2O3 型構造を有する酸化ガリウムインジウム相(β− GaInO3相)、(Ga ,In)2O3型構造を有する(Ga ,In)2O3相、ビックスバイト型構造を有する酸化インジウム相(In2O3相)を形成することが知られている。しかし、β−Ga2O3 型構造を有する酸化物は、バルク抵抗値が高く、この酸化物は、スパッタリングターゲットとしては不向きである。また、ビックスバイト型構造を有する酸化物は、ノジュール(塊)を生成しやすく、異常放電などのスパッタリング時の異常現象やパーティクル(発塵)の発生のため、長時間連続してスパッタリングを行うことが困難である。従って、本発明の酸化物は、これらの構造を有さないことが好ましい。特に、本発明の酸化物を含むスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットに含まれる結晶相全体に対して、少なくともβ−Ga2O3型構造の結晶相が10質量%以下、好ましくは5質量%以下であることが適当である。
本発明の酸化物は、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を主成分とする。具体的に本発明の酸化物は、本発明の酸化物に含まれる結晶相全体に対し、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を、ピーク強度比で50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上含むことが適当である。ここで、酸化物中の特定の酸化物結晶相の含有量は、X線回折による解析により求めることができる。具体的には、X線回折により各結晶相のピーク強度を測定し、ピーク強度比を求める。例えば、(株)リガク社、型番Ultima−IIIのX線解析装置を用い、酸化物をX線解析にかける。2θ≒33 °のピークを本発明の酸化物結晶相(Ga,In)2O3相のピークと仮定し、ピーク強度を求める。次に、(Ga,In)2O3相以外に同定されたピークのうちJCPDSカードで最大の強度を示すものを(Ga,In)2O3相以外のピーク強度で最大のものとする。以下の式(A)から本発明の酸化物に含まれる結晶相全体に対する本発明の酸化物結晶相((Ga,In)2O3相)のピーク強度比を求めることができる。
(A) X線回折ピーク強度比(%)=[(Ga,In)2O3相のピーク強度]/
{[Ga,In)2O3相以外のピーク強度で最大のもののピーク強度]+[(Ga,In)2O3相のピーク強度]} ×100
(a)ピンホールの大きさ
本発明の酸化物の表面は、ピンホールを有さないことが好ましい。ピンホールは酸化物粉末を焼結して本発明の酸化物を作成する際、該粉末と粉末の間に生じる空隙である。ピンホールの有無は、水平フェレー径を利用して評価することができる。ここで、水平フェレー径とは、ピンホールを粒子として見立てた場合に、該粒子を挟む一定方向の2本の平行線の間隔をいう。水平フェレー径は、例えば、SEM像による観察で計測することができる。ここで、本発明の酸化物の表面の水平フェレー径は、単位面積(1mm×1mm)当たりの酸化物内に存在するフェレー径2μm以上のピンホール数が50個/mm2以下であることが好ましく、20個/mm2以下であることがより好ましく、5個/mm2以下であることがさらに好ましい。当該フェレー径2μm以上のピンホール数が50個/mm2以下であれば、本発明の酸化物をスパッタリングターゲットとして用いた場合、スパッタ時に異常放電が生じることもなく、得られるスパッタ膜の平滑性も向上することができるので好ましい。
本発明の酸化物のバルク抵抗は、例えば、JISR1637に従って測定する。バルク抵抗の値は、例えば、0.1〜17mΩcm、好ましくは0.2〜10mΩcm、さらに好ましくはΩcm0.3〜5mΩcmであることが適当である。バルク抵抗が0.1mΩcm以上であれば、スパッタ時に存在するスパッタ材料のパーティクルとの間で異常放電が発生することもないので好ましい。また、17mΩcm以下であれば、本発明の酸化物をスパッタリングターゲットとして利用しても、該ターゲットが割れたり、放電が不安定になったり、パーティクルが増えるようなこともないので好ましい。
また、酸化物内におけるバルク抵抗のばらつきの範囲が3%以内、好ましくは1%以内であることが適当である。ここで、ばらつきは、バルク抵抗の平均値に対する標準偏差の大きさで示される値である。バルク抵抗は、例えば、ロレスタ(三菱化学(株)製)などを用いた四探針法で酸化物表面を均等間隔に50点以上測定して求める。
(c)相対密度
本発明の酸化物の相対密度は、例えば75%以上、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上であることが適当である。75%以上であれば、本発明の酸化物をスパッタリングターゲットとして利用しても、該ターゲットが割れることもなく、異常放電が発生することもないので好ましい。ここで、相対密度とは、加重平均より算出した理論密度に対して相対的に算出した密度である。各原料粉の密度の加重平均より算出した密度が理論密度であり、これを100%とする。
また、酸化物内における相対密度のばらつきの範囲が3%以内、好ましくは1%以内であることが適当である。ここで、ばらつきは、平均値に対する標準偏差の大きさで示される値であり、酸化物を20個以上の小片を切り出し各々の密度を測定し、平均と標準偏差を求める。
本発明の酸化物は、当該酸化物内に含まれる亜鉛以外の、陽性の金属元素のばらつきの範囲が0.5%以内、好ましくは0.1%以内であることが適当であるであることが好ましい。ここで、ばらつきは、平均値に対する標準偏差の大きさを意味する。このばらつきは、酸化物を20個以上の小片を切り出し各々の亜鉛以外の陽性の金属元素の含有量をICPなどで測定し、平均と標準偏差を求める。
本発明の酸化物は、以下の方法により製造されることが適当である。
(a)酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、及び任意の正四価以上の金属元素(X)の酸化物を秤量し、混合し、粉砕する工程;
(b)得られた粉砕物を媒体と混合し、乾燥して混合粉を得る工程;及び
(c)得られた混合粉を焼結する工程。
原料、すなわち、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、及び任意の正四価以上の金属元素(X)の酸化物は、インジウム:ガリウム:亜鉛:金属元素(X)の原子比で5〜90:5〜90:5〜90、好ましくは、20〜60:10〜60:10〜60となるように秤量する。
上記各原料は、公知の混合及び粉砕手段により混合及び粉砕する。各原料の純度は、通常99.9%(3N)以上、好ましくは99.99%(4N)以上、さらに好ましくは99.995%以上、特に好ましくは99.999%(5N)以上である。各原料の純度が99.9%(3N)以上であれば、不純物により半導体特性が低下することもなく、信頼性を十分に保持できる。特にNa含有量が100ppm未満であると薄膜トランジスタを作製した際に信頼性が向上し好ましい。
原料について、比表面積が3〜16m2/gである酸化インジウム粉、酸化ガリウム粉、亜鉛粉あるいは複合酸化物粉を含み、粉体全体の比表面積が3〜16m2/gである混合粉体を原料とすることが好ましい。尚、各酸化物粉末の比表面積が、ほぼ同じである粉末を使用することが好ましい。これにより、より効率的に粉砕混合できる。具体的には、比表面積の比が1/4〜4倍以内にすることが好まく、1/2〜2倍以内が特に好ましい。
尚、上記原料混合粉体の比表面積の増加分が1.0m2/g以上又は粉砕後の原料混合粉の平均メジアン径が1μm以下であれば、焼結密度が十分に大きくなるので好ましい。一方、原料混合粉体の比表面積の増加分が3.0m2/g以下又は粉砕後の平均メジアン径が0.6μm以上であれば、粉砕時の粉砕器機等からのコンタミ(不純物混入量)が増加することもないので好適である。
ここで、各粉体の比表面積はBET法で測定した値である。各粉体の粒度分布のメジアン径は、粒度分布計で測定した値である。これらの値は、粉体を乾式粉砕法、湿式粉砕法等により粉砕することにより調整できる。
これらの原料粉のメジアン径(d50)は、例えば、0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmとすることが好ましい。原料粉のメジアン径(d50)が0.5μm以上であれば、焼結体中にピンホール(空胞)ができ焼結密度が低下することを防ぐことができ、20μm以下であれば、焼結体中の粒径の増大が防げるので好ましい。
(a)および(b)工程の間に、(a)工程で得られた混合物を仮焼する工程を含めてもよい。仮焼工程は、(a)工程で得られた混合物を仮焼し、低級酸化物や非酸化成分を十分に酸化させる工程である。仮焼工程においては、500〜1200℃で、1〜100時間の条件で金属酸化物の混合物を熱処理することが好ましい。500℃以上又は1時間以上の熱処理条件であれば、インジウム化合物や亜鉛化合物、錫化合物の熱分解が十分に行われる。一方、1200℃以下又は100時間以下の場合は、粒子の粗大化が起こることもないので好ましい。
従って、特に好ましいのは、800〜1200℃の温度範囲で、2〜50時間の条件で、熱処理(仮焼)することである。
上記(a)工程で得られた粉砕物を媒体と混合する。湿式媒体攪拌ミルは、市販されている装置、例えば、ビースミル、ボールミル、ロールミル、遊星ミル、ジェットミル等を使用できる。ビーズミルを使用した場合は、粉砕媒体(ビーズ)はジルコニア、アルミナ、石英、窒化珪素、ステンレス、ムライト、ガラスビーズ、SiC等が好ましく、その粒径は0.1〜2mmが好ましい。特に好ましくは、固体粒子のジルコニアビーズが挙げられる。媒体と混合することにより、得られる混合粉の比表面積を、媒体との混合前と比べて例えば0.5〜4m2/g、好ましくは、1〜3m2/g増加することができる。媒体を利用して比表面積を増加するのは、焼結体の密度を向上させるためである。
媒体として固体粒子を使用する場合、粒子のメジアン径(d50)は、例えば、0.5〜 3μm、好ましくは1〜2μm、より好ましくは1μmとすることが好ましい。媒体は、原料粉全体の質量を100質量部とした場合、0.5〜30質量部、好ましくは、1〜20質量部であることが適当である。
得られた混合物をスプレードライヤー等で乾燥し、混合粉を得る。
工程(b)で得られた混合粉は、焼結される。
焼結は、公知の焼結方法を利用できるが、例えば、電気炉等を利用して焼結することが適当である。焼結は、例えば、空気の存在下、好ましくは酸素雰囲気下、より好ましくは、酸素を流通することにより酸素雰囲気中で行うことがよい。更に好ましくは、加圧下にて焼結するのがよい。これにより亜鉛の蒸散を抑えることができ、ボイド(空隙)のない焼結体が得られる。このようにして製造した焼結体は、密度が高いため、使用時におけるノジュールやパーティクルの発生が少ないことから、膜特性に優れた酸化物半導体膜を作製することができる。焼結すべき混合粉の表面温度で400〜3000℃、好ましくは、600〜1800℃、より好ましくは、1000〜1600℃で1〜96時間、好ましくは、2〜24時間行うことが適当である。
また、混合粉は、焼結前に任意に成形し、所望のスパッタリングターゲットの形状とされてもよい。成形は、加圧成形、コールドプレス(Cold Press)法やホットプレス(Hot Press)法等、公知の成形方法を用いることができるが、加圧成形が好ましい。例えば、得られた混合粉を金型に充填し、コールドプレス機にて加圧成形する。加圧成形は、例えば、常温(25℃)下、100〜100000kg/cm2、好ましくは、500〜10000kg/cm2の圧力で行われる。さらに、温度プロファイルは、1000℃までの昇温速度を30℃/時間以上、冷却時の降温速度を30℃/時間以上とするのが好ましい。昇温速度が30℃/時間以上であれば酸化物の分解が進むこともなく、ピンホールも発生しない。また冷却時の降温速度が30℃/時間以上であればIn,Gaの組成比が変化するおそれもない。
乾式法のコールドプレス(Cold Press)法としては、粉砕工程後の原料をスプレードライヤー等で乾燥した後、成形する。成形は公知の方法、例えば、加圧成形、冷間静水圧加圧、金型成形、鋳込み成形射出成形が採用できる。焼結密度の高い焼結体(スパッタリングターゲット)を得るためには、冷間静水圧(CIP)等加圧を伴う方法で成形するのが好ましい。尚、成形処理に際しては、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、ポリワックス、オレイン酸等の成形助剤を用いてもよい。
上記湿式法としては、例えば、濾過式成形法(特開平11−286002号公報参照)を用いるのが好ましい。この濾過式成形法は、セラミックス原料スラリーから水分を減圧排水して成形体を得るための非水溶性材料からなる濾過式成形型であって、1個以上の水抜き孔を有する成形用下型と、この成形用下型の上に載置した通水性を有するフィルターと、このフィルターをシールするためのシール材を介して上面側から挟持する成形用型枠からなり、前記成形用下型、成形用型枠、シール材、およびフィルターが各々分解できるように組立てられており、該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水する濾過式成形型を用い、混合粉、イオン交換水と有機添加剤からなるスラリーを調製し、このスラリーを濾過式成形型に注入し、該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水して成形体を作製し、得られたセラミックス成形体を乾燥脱脂後、焼成する。
加工工程は、上記のようにして焼結して得られた焼結体を、さらにスパッタリング装置への装着に適した形状に切削加工し、またバッキングプレート等の装着用治具を取り付けるための、必要に応じて設けられる工程である。スパッタリングターゲットの厚みは通常2〜20mm、好ましくは3〜12mm、特に好ましくは4〜6mmであるので、本発明の酸化物も当該厚みに加工されることが適当である。また、複数の酸化物を一つのバッキングプレート(支持体)に取り付け、実質一つのスパッタリングターゲットとしてもよい。また、表面は200〜10,000番のダイヤモンド砥石により仕上げを行うことが好ましく、400〜5,000番のダイヤモンド砥石により仕上げを行うことが特に好ましい。200番〜10,000番のダイヤモンド砥石を使用すれば、酸化物が割れることもないので好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットは、本発明の酸化物からなる。ここで、スパッタリングターゲットとは、スパッタリング成膜の際に用いる酸化物の塊であって、上述の通り無酸素銅のようなバッキングプレート(支持体)を該スパッタリングターゲットに貼り付けて使用することが一般的である。
本発明のスパッタリングターゲットは、上述のような酸化物の調製方法により調製された、本発明の酸化物の焼結体であることが好ましい。このような酸化物の焼結体を使用することにより、通常焼結体の密度を上げる、均一性を向上させるという理由から必要とされる仮焼工程(混合原料粉を400〜1000℃で酸素下で焼成)を省略することができる。
本発明のスパッタリングターゲットの表面粗さ(Ra)は、Ra≦0.5μm、好ましくは、Ra≦0.3μm、より好ましくは、Ra≦100nmであることが適当である。研磨面に方向性がない方が、異常放電の発生やパーティクルの発生を抑制することができるので好ましい。表面粗さ(Ra)が0.5μm以下であれば、スッパッタリング中の異常放電を抑制したり、スパッタ材料の発塵(パーティクル)の発生を抑制できるので好ましい。ここで、表面粗さは、中心線平均粗さを意味する。
(b)抗折強度
本発明のスパッタリングターゲットの抗折強度は、例えば4kg/mm2以上が好ましく、6kg/mm2以上がより好ましく、8kg/mm2以上が特に好ましい。ここで、抗折強度は、曲げ強さともいい、抗折試験器を用いてJIS R1601に基づいて評価される。抗折強度が4kg/mm2以上であれば、スパッタリング中にスパッタリングターゲットが割れることもなく、スパッタリングターゲットの支持体としてのバッキングプレートをスパッタリングターゲットに接着する際や、スパッタリングターゲットを輸送する際に該スパッタリングターゲットが破損するおそれもなく、好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットを用い、スパッタリング法により、基板上にアモルファス酸化物薄膜を形成することができる。具体的には、
(i)本発明のスパッタリングターゲットを用い、25〜450℃の成膜温度下でスパッタリングを行う工程;及び
(ii)電子キャリア濃度が1×1018/cm3未満のアモルファス酸化物薄膜を形成する工程、
を含む。
スパッタリング法としては、DC(直流)スパッタ法、AC(交流)スパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ECRスパッタ法、対向ターゲットスパッタ法等が挙げられるが、DC(直流)スパッタ法及びRF(高周波)スパッタ法が好ましくは利用される。
スパッタ時の成膜温度は、スパッタ法によって異なるが、例えば、25〜450℃、好ましくは、30〜250℃、より好ましくは、35〜150℃であることが適当である。ここで、成膜温度とは、薄膜を形成する基板の温度である。
スパッタ時のスパッタリングチャンバー内の圧力は、スパッタ法によって異なるが、例えば、DC(直流)スパッタ法の場合は、0.1〜2.0MPa、好ましくは、0.3〜0.8MPaであり、RF(高周波)スパッタ法の場合は0.1〜2.0MPa、好ましくは、0.3〜0.8MPaであることが適当である。
スパッタ時に投入される電力出力は、スパッタ法によって異なるが、例えば、DC(直流)スパッタ法の場合は、10〜1000W、好ましくは、100〜300Wであり、RF(高周波)スパッタ法の場合は、10〜1000W、好ましくは、50〜250Wであることが適当である。
スパッタ時の基板・ターゲット間距離(S−T距離)は、通常150mm以下、好ましくは110mm、特に好ましくは80mm以下である。S−T距離が短いとスパッタ時に基板がプラズマに曝されることにより、高い成膜速度が期待できる。また、150mm以下であれば、十分な成膜速度が期待できる。
スパッタ時のキャリアーガスとしては、スパッタ法によって異なるが、例えば、酸素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンが挙げられる。好ましくは、アルゴンと酸素の混合ガスである。
アルゴンと酸素の混合ガスを使用する場合、アルゴン:酸素の流量比は、Ar:O2=100〜80:0〜20、好ましくは、99.5〜90:0.5〜10であることが適当である。
ボンディングしたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、基板上にIn及びGa及びZnの酸化物を主成分とするアモルファス酸化物薄膜を得る。ここで、「主成分とする」とは、In及びGa及びZnを酸素を除く原子比で60%以上含むことを意味する。
基板としては、ガラス、樹脂(PET、PES等)等を用いることができる。
得られたアモルファス酸化物薄膜の膜厚は、成膜時間やスパッタ法によっても異なるが、例えば、5〜300nm、好ましくは、10〜90nmであることが適当である。
また、得られたアモルファス酸化物薄膜の電子キャリア濃度は、例えば、1×1018/cm3未満、好ましくは、5×1017〜1×1012/cm3であることが適当である。
さらに、得られたアモルファス酸化物薄膜の相対密度は、6.0g/cm3以上、好ましくは、6.1〜 7.2g/cm3であることが適当である。このような高密度を備えていれば、得られた酸化物薄膜においても、ノジュールやパーティクルの発生が少なく、膜特性に優れた酸化物薄膜を得ることができる。
このようにして得られたアモルファス酸化物薄膜は、そのまま、あるいは熱処理することで薄膜トランジスタ、太陽電池、ガスセンサーなどの半導体膜として使用することができる。
ここで、熱処理は、例えば、100〜450℃、好ましくは150〜350℃で0.1〜10時間、好ましくは、0.5〜2時間行うことが、半導体特性を安定化させる観点から好適である。
ここで、薄膜トランジスタを例にとり、図6を参照しながら説明する。
ガラス基板等の基板(1)を準備し、基板上に電子ビーム蒸着法により、厚さ1〜100nmのTi(密着層)、厚さ10〜300nmのAu(接続層)及び厚さ1〜100nmのTi(密着層)をこの順で積層する。積層した膜をフォトリソグラフィー法とリフトオフ法を用いることにより、ゲート電極(2)を形成する。
さらにその上に、厚さ50〜500nmのSiO2膜をTEOS−CVD法により成膜し、ゲート絶縁膜(3)を形成する。なお、ゲート絶縁膜(3)の成膜はスパッタ法でもよいが、TEOS−CVD法やPECVD法などのCVD法が好ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例の態様に限定されるものではない。
原料粉として比表面積が6m2/gである酸化インジウム粉、比表面積が6m2/gである酸化ガリウム粉及び比表面積が5m2/gである酸化亜鉛粉を、インジウム、ガリウム、亜鉛の原子比で2:2:1となるように秤量した。秤量した原料粉を、湿式媒体攪拌ミルを使用して混合粉砕した。ここで、媒体として、1mmφのジルコニアビーズを使用し、媒体と混合した後の比表面積を媒体と混合する前の比表面積より2m2/g増加させた。得られた混合物を、さらに、スプレードライヤーを用いて3000kg/cm2の圧力で加圧成形した。加圧成形体を、さらに純酸素を流通させながら酸素雰囲気中、成形体の表面温度1500°Cで2時間焼結した。得られた酸化物(焼結体)の相対密度は98%であった。
(実施例2〜15)
焼結温度、インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)、正四価以上の金属元素(X)の元素の原子%を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして酸化物の焼結体を調製した。
(比較例1〜11)
組成比、焼結温度以外は実施例1と同様にして酸化物の焼結体を調製した。
・組成
実施例及び比較例の酸化物に含まれるインジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)、正四価以上の金属元素(X)の元素の原子%は、ICP法を用いた組成分析による原子比から計算して得た。
・結晶相
得られた酸化物の結晶相を、X線回折により確認した。X線回折の測定条件は以下の通りである。
・装置:(株)リガク製Ultima−III
・X線:Cu−Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
・2θ−θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
・サンプリング間隔:0.02°
・スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
なお、代表的なX線回折のチャートとして、実施例1、実施例14、比較例1〜3のX線回折のチャートを図1〜5に示す。実施例1では、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶以外の結晶の存在は確認できず、ピーク強度比は100%であった。また、実施例14では、約71%で(Ga,In)2O3が主成分であった((Ga,In)2O3のピーク強度が2000cps、他のピーク強度が800cps)。
本発明の酸化物のバルク抵抗は、JISR1637に基づき、抵抗率計(三菱化学製、ロレスタ)を用い、四探針法により20回測定し、その平均を求めた。
・相対密度
本発明の酸化物の相対密度は、原料粉の密度から計算した理論密度とアルキメデス法で測定した焼結体の密度から下記で計算した。
相対密度=(アルキメデス法で測定した密度)÷(理論密度)×100 (%)
・抗折強度
本発明の酸化物(即ちスパッタリングターゲット)の抗折強度は、JISR1601に基づき測定した。
ピンホールの有無は、水平フェレー径を利用して評価した。具体的には、実施例及び比較例で得られた酸化物を粉砕し、破断面を♯2000サンドペーパーを用い回転研磨器により鏡面状態になるまで研磨を行い、倍率100倍にて当該破断面のSEM画像を得る。このSEM画像を2値画処理してピンホールを特定し、画像処理ソフト(粒子解析III:エーアイソフト社製)を用いて1mm×1mmに存在する水平フェレー径2μm以上のピンホール数をカウントした。
・外観(ホワイトスポット)
肉眼により観察し、ホワイトスポットが観察できる場合:×、ホワイトスポットが一部に観察できる場合:△、ホワイトスポットが観察できない場合:○と判断した。
実施例及び比較例の酸化物を使用してDCスパッタリングによる連続成膜試験を行い、アモルファス酸化物薄膜を得た。
DCスパッタ法の一つであるDCマグネトロンスパッタリング法の成膜装置に装着し、ガラス基板(コーニング1737)上に半導体膜を成膜した。
ここでのスパッタ条件としては、基板温度;25℃、到達圧力;1×10-6Pa、雰囲気ガス;Ar99.5%及び酸素0.5%、スパッタ圧力(全圧);2×10-1Pa、投入電力100W、成膜時間8分間、S−T距離100mmとした。
・異常放電(アーキング)発生頻度
3時間あたりに発生する異常放電回数を測定した。
・パーティクル(発塵)量
チャンバー内にスライドガラスを設置し、96時間連続成膜後のスライドガラスに付着した1μm以上のパーティクルの密度を、顕微鏡を用いて計測した。
その結果、パーティクルが少ない方から順に、1個/cm2以内:◎、102個/cm2以内:○、104個/m2以内:△、104個/m2超:×として、4段階で評価した。
・ノジュール発生密度
96時間連続成膜後の成膜後のスパッタリングターゲットの写真からノジュールで被覆された面積を計算し、以下の式で発生密度を計算した。
ノジュール発生密度=ノジュール発生面積÷スパッタリングターゲット面積
その結果、ノジュールが少ない方から順に、10-4以内:◎、10-2以内:○、10-1以内:△、10-1超:×として、4段階で評価した。
・連続成膜安定性
連続20バッチ分における第1バッチと第20バッチの平均電界効果移動度の比(第1バッチ/第20バッチ)を測定した。その結果、TFT特性の再現性の良い方から順に、1.10以内:◎、1.20以内:○、1.50以内:△、1.50より大:×として、4段階で評価した。
・面内均一性
同一面内の比抵抗の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を測定した。その結果、比抵抗の均一性の良い方から順に、1.05以内: ◎ 、1.10以内: ○ 、1.20以内: △ 、1.20より大: × として、4段階で評価した。
上述のようにして得られた実施例及び比較例の酸化物をスパッタリングして得たアモルファス酸化物薄膜を、薄膜トランジスタのチャンネル層として用い、図6に示す薄膜トランジスタ(逆スタガ型TFT素子、以下TFTと省略することがある)を得た。具体的には、まず、基板として、ガラス基板(コーニング社製Corning1737)を準備した。この基板上に電子ビーム蒸着法により、厚さ5nmのTi(密着層)と厚さ50nmのAuと厚さ5nmのTiをこの順で積層した。積層した膜をフォトリソグラフィー法とリフトオフ法を用いることにより、ゲート電極を形成した。得られたゲート電極の上部表面に、厚さ200nmのSiO2膜をTEOS−CVD法により成膜し、ゲート絶縁膜を形成した。
続いて、RFスパッタ法により、上記の焼結体をターゲットとして、チャネル層として厚さ30nmのアモルファス酸化物薄膜(In−Ga−Zn−O酸化物半導体)を堆積した。ここで、投入したRF電源の出力は200Wであった。成膜時は、全圧0.4Paとし、その際のガス流量比はAr:O2=95:5とした。また、基板温度は25℃であった。
堆積したアモルファス酸化物薄膜を用い、フォトリソグラフィー法とエッチング法を用いて、W=100μm、L=20μmの素子を作製した。得られた素子を大気圧下、300℃で60分間熱処理を行った。
熱処理後、それぞれの素子の上に厚さ5nmのTiと厚さ50nmのAuと厚さ5nmのTiをこの順で積層し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ソース電極およびドレイン電極を形成し、薄膜トランジスタを得た。さらに素子の上にスパッタ法により保護膜としてSiO2膜を200nm堆積した。
半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200)を用い、ドライ窒素雰囲気下、室温(25℃)、遮光環境下で伝達特性・出力特性を測定した。移動度17cm/Vs、閾値電圧(Vth)=0.6V、オンオフ比109の良好なトランジスタが得られた。
・異常放電(アーキング)発生頻度
3時間あたりに発生する異常放電回数を測定した。
・面内均一性
同一面内の比抵抗の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を測定した。その結果、比抵抗の均一性の良い方から順に、1.05以内: ◎ 、1.10以内: ○ 、1.20以内: △ 、1.20より大: × として、4段階で評価した。
・TFTパネル評価
得られたTFTの歩留まりと均一性を◎:非常に良好、○:良好、△:一部問題有り、×:問題有りの4段階で評価した。
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 チャネル層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 チャネル層
15 ソース電極
16 ドレイン電極
17 保護膜
Claims (11)
- インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相を含むことを特徴とする酸化物。
- 前記酸化物に含まれる結晶相全体に対し、前記(Ga,In)2O3で表される酸化物結晶相が、50質量%以上である、請求項1に記載の酸化物。
- インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)の合計(In+Ga+Zn)に対する、各元素の原子比が下記式(1)〜(3)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の酸化物。
0.05≦In/(In+Ga+Zn)≦0.9 (1)
0.05≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.9 (2)
0.05≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.9 (3) - さらに、正四価以上の金属元素(X)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化物。
- 前記正四価以上の金属元素(X)が、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム、セリウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン及びチタンから選ばれた1種以上の元素であることを特徴とする請求項4に記載の酸化物。
- インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、亜鉛元素(Zn)、前記正四価以上の金属元素(X)の合計(In+Ga+Zn+X)に対する、前記正四価以上の金属元素(X)の原子比が下記の式(4)又は(5)の関係を満たす、請求項4又は5に記載の酸化物。
0.0001≦X/(In+Ga+Zn+X)<0.05 (4)
0.05≦X/(In+Ga+Zn+X)≦0.4 (5) - バルク抵抗が0.1〜17mΩcmであり、相対密度が80%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸化物。
- (a)酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化亜鉛を秤量し、混合し、粉砕する工程;
(b)得られた粉砕物を媒体と混合し、乾燥して混合粉を得る工程;及び
(c)得られた混合粉を焼結する工程
を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化物の調製方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化物からなるスパッタリングターゲット。
- スパッタリング法によるアモルファス酸化物薄膜の形成方法であって、
(i)請求項9に記載のスパッタリングターゲットを用い、25〜450℃の成膜温度下でスパッタリングを行う工程、
を含み、電子キャリア濃度が1×1018/cm3未満の前記アモルファス酸化物薄膜を形成することを含むことを特徴とする方法。 - 前記アモルファス酸化物薄膜が、薄膜トランジスタのチャネル層として用いられる、請求項10に記載の方法。
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