JP2012056842A - In−Ga−Zn系酸化物、酸化物焼結体、及びスパッタリングターゲット - Google Patents
In−Ga−Zn系酸化物、酸化物焼結体、及びスパッタリングターゲット Download PDFInfo
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Abstract
【課題】酸化物薄膜の作製に使用するターゲット等として好適に利用できる、新規な結晶型を有する酸化物を提供する。
【解決手段】インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、
X線回折測定(Cukα線)により、入射角(2θ)が、7.0°〜8.4°、30.6°〜32.0°、33.8°〜35.8°、53.5°〜56.5°及び56.5°〜59.5°の各位置に回折ピークが観測され、
かつ、2θが30.6°〜32.0°及び33.8°〜35.8°の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである、酸化物。
【選択図】図1
【解決手段】インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、
X線回折測定(Cukα線)により、入射角(2θ)が、7.0°〜8.4°、30.6°〜32.0°、33.8°〜35.8°、53.5°〜56.5°及び56.5°〜59.5°の各位置に回折ピークが観測され、
かつ、2θが30.6°〜32.0°及び33.8°〜35.8°の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである、酸化物。
【選択図】図1
Description
本発明は、新規なIn−Ga−Zn系酸化物に関する。さらに詳しくは、酸化物半導体や透明導電膜等として好適な酸化物、及びそれを用いた酸化物焼結体、スパッタリングターゲットに関する。
酸化インジウム及び酸化亜鉛、又は酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化ガリウムからなる非晶質の酸化物膜は、可視光透過性を有し、かつ、導電体、又は半導体から絶縁体まで広い電気特性を有するため、透明導電膜や半導体膜(例えば、薄膜トランジスタ等に用いられる)として着目されている。
上記酸化物膜の成膜方法としては、スパッタリング、PLD(パルスレーザーデポジション)、蒸着等の物理的な成膜、及びゾルゲル法等の化学的な成膜が検討されている。このなかでも、比較的低温で大面積に均一に成膜できることから、スパッタリング法等の物理的成膜が中心に検討されている。
上記の物理的成膜で酸化物薄膜を成膜する際は、均一に、安定して、効率よく(高い成膜速度で)成膜するために、酸化物焼結体からなるターゲットを用いることが一般的である。
上記の物理的成膜で酸化物薄膜を成膜する際は、均一に、安定して、効率よく(高い成膜速度で)成膜するために、酸化物焼結体からなるターゲットを用いることが一般的である。
上記の酸化物膜を作製するためのターゲット(主にスパッタリングターゲット)としては、In2O3(ZnO)m(m=2〜20)、InGaZnO4、In2Ga2ZnO7等の公知の結晶型の組成、又はそれと近い組成のものを中心に検討している。
具体的には、InとZnを主成分とし、一般式In2O3(ZnO)m(m=2〜20)で表される六方晶層状化合物を含む酸化物の焼結体からなることを特徴とするターゲットや、この酸化物に、さらに正三価以上の原子価を有する元素の少なくとも1種を20原子%以下でドープしたターゲットが公開されている(特許文献1)。
また、InGaZnO4やIn2Ga2ZnO7の六方晶層状化合物の結晶構造(ホモロガス結晶構造)を示すターゲットが検討されている(特許文献2、3、4)。
具体的には、InとZnを主成分とし、一般式In2O3(ZnO)m(m=2〜20)で表される六方晶層状化合物を含む酸化物の焼結体からなることを特徴とするターゲットや、この酸化物に、さらに正三価以上の原子価を有する元素の少なくとも1種を20原子%以下でドープしたターゲットが公開されている(特許文献1)。
また、InGaZnO4やIn2Ga2ZnO7の六方晶層状化合物の結晶構造(ホモロガス結晶構造)を示すターゲットが検討されている(特許文献2、3、4)。
また、In2O3(ZnO)m(m=2〜20)の六方晶層状化合物とIn2O3との混合物や、In2O3(ZnO)m(m=2〜20)の六方晶層状化合物とZnOとの混合物からなるターゲット(特許文献1)、InGaZnO4の六方晶層状化合物とZnGa2O4のスピネル構造の混合物からなるターゲット(特許文献5)等、混合物の特性を生かしたターゲットの開発が検討されている。
また、特許文献6にはInGaO3(ZnO)2等、InGaO3(ZnO)m(m=1〜20)で表される酸化物及びその合成方法が公開されている。
また、特許文献6にはInGaO3(ZnO)2等、InGaO3(ZnO)m(m=1〜20)で表される酸化物及びその合成方法が公開されている。
ところで、ターゲットについて、上述した公知の結晶型以外の酸化物についての検討はされておらず、種々の組成比を変えた薄膜に関して検討されている程度である。具体的には、コスパッタリング等により、成膜時に組成比を調整する方法で形成した薄膜について検討されている(特許文献2、7)。
また、酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化ガリウムを含むスパッタリングターゲットに関して、ほぼ単一の結晶構造からなるものは、InGaZnO4やIn2Ga2ZnO7に関するもののみで、それ以外の結晶型をほぼ単一成分とするスパッタリングターゲットや、それを用いた薄膜トランジスタの製造の検討はなされていなかった。
尚、公知の結晶型ではない酸化物について、粉末の原料を焼成して得られる焼結体の固溶限界や格子定数の変化が報告されている(非特許文献1、2)。非特許文献2では、In1.5Ga0.5O3(ZnO)mの結晶構造を持つ酸化物の存在を仮定し計算した例はあるが、酸化物の合成、スパッタリングターゲットへの適用の可能性や薄膜トランジスタ材料としての可能性等、具体的な検討はされていなかった(非特許文献2、TABLE IV)。
また、酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化ガリウムを含むスパッタリングターゲットに関して、ほぼ単一の結晶構造からなるものは、InGaZnO4やIn2Ga2ZnO7に関するもののみで、それ以外の結晶型をほぼ単一成分とするスパッタリングターゲットや、それを用いた薄膜トランジスタの製造の検討はなされていなかった。
尚、公知の結晶型ではない酸化物について、粉末の原料を焼成して得られる焼結体の固溶限界や格子定数の変化が報告されている(非特許文献1、2)。非特許文献2では、In1.5Ga0.5O3(ZnO)mの結晶構造を持つ酸化物の存在を仮定し計算した例はあるが、酸化物の合成、スパッタリングターゲットへの適用の可能性や薄膜トランジスタ材料としての可能性等、具体的な検討はされていなかった(非特許文献2、TABLE IV)。
J.Am.Ceram.Soc.,82[10]2705−2710(1999)
Journal of Solid State Chemistry,93[2]298−315(1991)
本発明は、移動度が高く、S値の小さい半導体を提供するためのスパッタリングターゲット等として好適に利用できる、新規な結晶型を有する酸化物を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意研究した結果、従来から知られていたIn2O3(ZnO)m及びInGaO3(ZnO)mの結晶型とは異なる、新たな結晶構造を有する酸化物を発見した。この酸化物は、In2O3(ZnO)2で表される結晶構造とInGaO3(ZnO)2で表される結晶構造の中間的な結晶構造を有していると推定される。そして、この酸化物を含む酸化物焼結体は、酸化物薄膜の作製に使用するターゲット等として好適に利用できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の酸化物等が提供される。
1.インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、X線回折測定(Cukα線)により、入射角(2θ)が、7.0°〜8.4°、30.6°〜32.0°、33.8°〜35.8°、53.5°〜56.5°及び56.5°〜59.5°の各位置に回折ピークが観測され、かつ、2θが30.6°〜32.0°及び33.8°〜35.8°の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである、酸化物。
2.インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1)及び(2)を満たす、1に記載の酸化物。
0.45≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.60 (1)
0.21≦Ga/(In+Ga)≦0.29 (2)
3.含有される金属元素が、実質的にIn,Ga及びZnである1又は2に記載の酸化物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の酸化物を含む酸化物焼結体。
5 インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1’)及び(2’)を満たす、4に記載の酸化物焼結体。
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.65 (1’)
0.05<Ga/(In+Ga)<0.45 (2’)
6.上記4又は5に記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
7.上記6に記載のスパッタリングターゲットを用いて作製された酸化物薄膜。
8.下記(a)〜(c)の工程を含む、1〜3のいずれかに記載の酸化物又は4あるいは5に記載の酸化物焼結体の製造方法。
(a)厚み5.5mm以上の成形体を成形する工程
(b)1380℃以上1520℃以下で4〜24時間焼結する工程
(c)成形体を焼結した後、片面あるいは両面を0.1mm以上研削する工程
1.インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、X線回折測定(Cukα線)により、入射角(2θ)が、7.0°〜8.4°、30.6°〜32.0°、33.8°〜35.8°、53.5°〜56.5°及び56.5°〜59.5°の各位置に回折ピークが観測され、かつ、2θが30.6°〜32.0°及び33.8°〜35.8°の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである、酸化物。
2.インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1)及び(2)を満たす、1に記載の酸化物。
0.45≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.60 (1)
0.21≦Ga/(In+Ga)≦0.29 (2)
3.含有される金属元素が、実質的にIn,Ga及びZnである1又は2に記載の酸化物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の酸化物を含む酸化物焼結体。
5 インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1’)及び(2’)を満たす、4に記載の酸化物焼結体。
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.65 (1’)
0.05<Ga/(In+Ga)<0.45 (2’)
6.上記4又は5に記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
7.上記6に記載のスパッタリングターゲットを用いて作製された酸化物薄膜。
8.下記(a)〜(c)の工程を含む、1〜3のいずれかに記載の酸化物又は4あるいは5に記載の酸化物焼結体の製造方法。
(a)厚み5.5mm以上の成形体を成形する工程
(b)1380℃以上1520℃以下で4〜24時間焼結する工程
(c)成形体を焼結した後、片面あるいは両面を0.1mm以上研削する工程
本発明によれば、酸化物薄膜の作製に使用するターゲット等として好適に利用できる、新規な結晶型を有する酸化物を提供することができる。
本発明の酸化物は、インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含む、In−Ga−Zn系酸化物であって、下記の条件1及び2を満たすことを特徴とする。
条件1:X線回折測定(Cukα線)により得られるチャートにおいて、下記のA〜Eの領域に回折ピークが観測される。
A.入射角(2θ)=7.0°〜8.4°(好ましくは7.2°〜8.2°)
B.2θ=30.6°〜32.0°(好ましくは30.8°〜31.8°)
C.2θ=33.8°〜35.8°(好ましくは34.3°〜35.3°)
D.2θ=53.5°〜56.5°(好ましくは54.1°〜56.1°)
E.2θ=56.5°〜59.5°(好ましくは57.0°〜59.0°)
条件2:2θが30.6°〜32.0°(上記領域B)及び33.8°〜35.8°(上記領域C)の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである。
尚、メインピークとは、2θが5〜80°の範囲で最も強度の強いピーク(ピーク高さの高いピーク)であり、サブピークとは、2番目に強度の強いピークである。
条件1:X線回折測定(Cukα線)により得られるチャートにおいて、下記のA〜Eの領域に回折ピークが観測される。
A.入射角(2θ)=7.0°〜8.4°(好ましくは7.2°〜8.2°)
B.2θ=30.6°〜32.0°(好ましくは30.8°〜31.8°)
C.2θ=33.8°〜35.8°(好ましくは34.3°〜35.3°)
D.2θ=53.5°〜56.5°(好ましくは54.1°〜56.1°)
E.2θ=56.5°〜59.5°(好ましくは57.0°〜59.0°)
条件2:2θが30.6°〜32.0°(上記領域B)及び33.8°〜35.8°(上記領域C)の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである。
尚、メインピークとは、2θが5〜80°の範囲で最も強度の強いピーク(ピーク高さの高いピーク)であり、サブピークとは、2番目に強度の強いピークである。
さらに、下記条件3を満たすことが好ましい。
条件3:X線回折測定(Cukα線)により得られるチャートにおいて、下記のF〜Kの領域に回折ピークが観測される。
F.2θ=14.8°〜16.2°(好ましくは15.0°〜16.0°)
G.2θ=22.3°〜24.3°(好ましくは22.8°〜23.8°)
H.2θ=32.2°〜34.2°(好ましくは32.7°〜33.7°)
I.2θ=43.1°〜46.1°(好ましくは43.6°〜45.6°)
J.2θ=46.2°〜49.2°(好ましくは46.7°〜48.7°)
K.2θ=62.7°〜66.7°(好ましくは63.7°〜65.7°)
本発明の酸化物のX線回折チャートの例として、実施例1で作製した酸化物のX線回折チャートを図1に示す。図中、A〜Kは上記の各ピーク位置を表わす。尚、横軸は2θであり、縦軸は強度である。
条件3:X線回折測定(Cukα線)により得られるチャートにおいて、下記のF〜Kの領域に回折ピークが観測される。
F.2θ=14.8°〜16.2°(好ましくは15.0°〜16.0°)
G.2θ=22.3°〜24.3°(好ましくは22.8°〜23.8°)
H.2θ=32.2°〜34.2°(好ましくは32.7°〜33.7°)
I.2θ=43.1°〜46.1°(好ましくは43.6°〜45.6°)
J.2θ=46.2°〜49.2°(好ましくは46.7°〜48.7°)
K.2θ=62.7°〜66.7°(好ましくは63.7°〜65.7°)
本発明の酸化物のX線回折チャートの例として、実施例1で作製した酸化物のX線回折チャートを図1に示す。図中、A〜Kは上記の各ピーク位置を表わす。尚、横軸は2θであり、縦軸は強度である。
本願において、X線回折の測定条件は、例えば以下の通りである。
装置:(株)リガク製Ultima−III
X線:Cu−Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
2θ−θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
サンプリング間隔:0.02°
スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
装置:(株)リガク製Ultima−III
X線:Cu−Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
2θ−θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
サンプリング間隔:0.02°
スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
上記条件1及び2を満たす酸化物結晶は、JCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Standards)カードにはなく、今まで確認されていない新規な結晶である。
本発明の酸化物の結晶のX線回折チャートは、InGaO3(ZnO)2(JCPDS:40−0252)で示される結晶構造及びIn2O3(ZnO)2(JCPDS:20−1442)で示される結晶構造に類似している。しかしながら、本発明の酸化物はInGaO3(ZnO)2特有のピーク(上記領域Aのピーク)、及びIn2O3(ZnO)2特有のピーク(上記領域D及びEのピーク)を有する。従って、InGaO3(ZnO)2ともIn2O3(ZnO)2とも異なる新たな周期性を有していると判断できる。即ち、本発明の酸化物は、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2とは異なる。
本発明の酸化物の結晶のX線回折チャートは、InGaO3(ZnO)2(JCPDS:40−0252)で示される結晶構造及びIn2O3(ZnO)2(JCPDS:20−1442)で示される結晶構造に類似している。しかしながら、本発明の酸化物はInGaO3(ZnO)2特有のピーク(上記領域Aのピーク)、及びIn2O3(ZnO)2特有のピーク(上記領域D及びEのピーク)を有する。従って、InGaO3(ZnO)2ともIn2O3(ZnO)2とも異なる新たな周期性を有していると判断できる。即ち、本発明の酸化物は、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2とは異なる。
上記領域Bのピークについて、このピークはIn2O3(ZnO)2とInGaO3(ZnO)2のメインピークの間、即ち、31°付近と32°付近の間にある。従って、InGaO3(ZnO)2のメインピークよりも低角側にシフトしており(格子間距離が広がっていると思われる)、In2O3(ZnO)2のメインピークよりも高角側にシフトしている(格子間距離が狭まっていると思われる)。
本発明の酸化物の結晶構造は、InGaO3(ZnO)2(JCPDS:40−0252)の結晶構造及びIn2O3(ZnO)2(JCPDS:20−1442)の結晶構造に類似していると考えられる。
図2の(a)に、InGaO3(ZnO)2の結晶構造を、(b)にIn2O3(ZnO)2の結晶構造を、(c)に推定される本発明の酸化物の結晶構造を示す。
In2O3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造やInGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造は「六方晶層状化合物」あるいは「ホモロガス相の結晶構造」と呼ばれ、異なる物質の結晶層を何層か重ね合わせた長周期を有する「自然超格子」構造から成る結晶である。結晶周期ないし各薄膜層の厚さが、ナノメーター程度の場合、これら各層の化学組成や層の厚さの組み合わせによって、単一の物質や各層を均一に混ぜ合わせた混晶の性質とは異なる固有の特性が得られる。
図2の(a)に、InGaO3(ZnO)2の結晶構造を、(b)にIn2O3(ZnO)2の結晶構造を、(c)に推定される本発明の酸化物の結晶構造を示す。
In2O3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造やInGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造は「六方晶層状化合物」あるいは「ホモロガス相の結晶構造」と呼ばれ、異なる物質の結晶層を何層か重ね合わせた長周期を有する「自然超格子」構造から成る結晶である。結晶周期ないし各薄膜層の厚さが、ナノメーター程度の場合、これら各層の化学組成や層の厚さの組み合わせによって、単一の物質や各層を均一に混ぜ合わせた混晶の性質とは異なる固有の特性が得られる。
ホモロガス相の結晶構造は、例えば、ターゲットの粉砕物や切削片又はターゲットそのものから直接測定したX線回折パターンが、組成比から想定されるホモロガス相の結晶構造X線回折パターンと一致することから確認できる。具体的には、JCPDSカードから得られるホモロガス相の結晶構造X線回折パターンと一致することから確認することができる。
In2O3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造は、InO1.5層とInZnO2.5層とZnO層が1:1:(m−1)の比率で周期的に繰り返された構造を有すると考えられている。また、InGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造は、InO1.5層とGaZnO2.5層とZnO層が1:1:(m−1)の比率で周期的に繰り返されると考えられている。
このように、In2O3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造やInGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)のX線回折による測定結果は、ピーク位置が異なる(格子間距離は異なる)がパターンは似たものとなる。
このように、In2O3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される結晶構造やInGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)のX線回折による測定結果は、ピーク位置が異なる(格子間距離は異なる)がパターンは似たものとなる。
本発明の酸化物の結晶構造は、上述したIn2O3(ZnO)mやInGaO3(ZnO)mと同様に、「六方晶層状化合物」あるいは「ホモロガス相の結晶構造」からなる結晶であると推定している。本発明の酸化物は、InGaO3(ZnO)2特有のピーク(上記領域Aのピーク)、及びIn2O3(ZnO)2特有のピーク(上記領域D及びEのピーク)を併せ持っている。このことから、InZnO2.5層及びGaZnO2.5層のどちらとも異なる、例えばIn1−dGadZnO2.5層(0<d<1)と表される層が生成しているものと考えられる。即ち、InO1.5層とIn1−dGadZnO2.5層(0<d<1)とZnO層を1:1:(m−1)の比率で周期的に繰り返した構造と推定している。
尚、In1−dGadZnO2.5層(0<d<1)は、InZnO2.5層とGaZnO2.5層が混在した状態、InZnO2.5層のInの一部がGaに置換された状態、又はIn,Ga,Zn及びOを含む新たな構造を有する層であると考えられる。InZnO2.5層のInの一部がGaに置換された状態の場合、置換されたInとGaが特定の比率で安定した状態、実質新規の結晶構造になっていると推定される。
また、本発明の酸化物の結晶構造のX線回折パターンは、特にIn2O3(ZnO)2のものと類似している。ただし、In2O3(ZnO)2の結晶構造を示す酸化物は、1550℃を越える高温で焼成しないと合成が難しいことが知られている。一方、本発明の酸化物の結晶構造は1550℃以下の低温で焼結可能であり、生成温度からも新規の結晶構造であると考えられる。
また、本発明の酸化物の結晶構造のX線回折パターンは、特にIn2O3(ZnO)2のものと類似している。ただし、In2O3(ZnO)2の結晶構造を示す酸化物は、1550℃を越える高温で焼成しないと合成が難しいことが知られている。一方、本発明の酸化物の結晶構造は1550℃以下の低温で焼結可能であり、生成温度からも新規の結晶構造であると考えられる。
本発明の酸化物においては、X線回折測定により本発明特有の回折パターンを示していれば、酸化物の酸素が過剰であっても不足(酸素欠損)していても構わない(酸素元素の原子比が化学量論比からずれていても良い)。酸化物の酸素が過剰であると、ターゲットとしたときに抵抗が高くなりすぎるおそれがあるため、酸素欠損を持っていることが好ましい。
本発明の酸化物の元素組成について、インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1)及び(2)を満たす場合、本発明の結晶型を単一の構造として生成させやすく好ましい。本発明の結晶型が単一の構造となることにより、焼結体が割れにくくなり、ターゲットの取扱いが容易となり、さらに、焼結体、ターゲット及び成膜後の薄膜の品質が安定化することが期待される。
0.45≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.60 (1)
0.21≦Ga/(In+Ga)≦0.29 (2)
0.45≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.60 (1)
0.21≦Ga/(In+Ga)≦0.29 (2)
上記式(1)について、Znの原子比が0.45以上0.60以下で0.5に近いほど、本発明の結晶型を生成させやすい。これは、m=2の結晶構造、即ち、InO1.5層とIn1−dGadZnO2.5層(0<d<1)とZnO層が1:1:1)の比率で周期的に繰り返される構造をとりやすくなるためと思われる。
上記式(2)について、Gaの比率が0.21〜0.29、特に0.22〜0.28であると、本発明の結晶型を生成させやすい。
尚、上記式(3)のGaの原子比が0.25に近いほど、本発明特有の結晶を生成させやすい。
従来、単一結晶からなる酸化物焼結体スパッタリングターゲットはGa/(In+Ga)が0.0あるいは0.5でないと作製が困難と思われていた。従って、Ga/(In+Ga)が0.25付近で本発明の結晶からなる酸化物焼結体スパッタリングターゲットが作製できることは驚くべきことである。
上記式(2)について、Gaの比率が0.21〜0.29、特に0.22〜0.28であると、本発明の結晶型を生成させやすい。
尚、上記式(3)のGaの原子比が0.25に近いほど、本発明特有の結晶を生成させやすい。
従来、単一結晶からなる酸化物焼結体スパッタリングターゲットはGa/(In+Ga)が0.0あるいは0.5でないと作製が困難と思われていた。従って、Ga/(In+Ga)が0.25付近で本発明の結晶からなる酸化物焼結体スパッタリングターゲットが作製できることは驚くべきことである。
本発明の酸化物に含まれる各元素の原子比は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により含有元素を定量分析して求めることができる。
具体的に、ICP−AESを用いた分析では、溶液試料をネブライザーで霧状にして、アルゴンプラズマ(約6000〜8000℃)に導入すると、試料中の元素は熱エネルギーを吸収して励起され、軌道電子が基底状態から高いエネルギー準位の軌道に移る。この軌道電子は10−7〜10−8秒程度で、より低いエネルギー準位の軌道に移る。この際にエネルギーの差を光として放射し発光する。この光は元素固有の波長(スペクトル線)を示すため、スペクトル線の有無により元素の存在を確認できる(定性分析)。
具体的に、ICP−AESを用いた分析では、溶液試料をネブライザーで霧状にして、アルゴンプラズマ(約6000〜8000℃)に導入すると、試料中の元素は熱エネルギーを吸収して励起され、軌道電子が基底状態から高いエネルギー準位の軌道に移る。この軌道電子は10−7〜10−8秒程度で、より低いエネルギー準位の軌道に移る。この際にエネルギーの差を光として放射し発光する。この光は元素固有の波長(スペクトル線)を示すため、スペクトル線の有無により元素の存在を確認できる(定性分析)。
また、それぞれのスペクトル線の大きさ(発光強度)は試料中の元素数に比例するため、既知濃度の標準液と比較することで試料濃度を求めることができる(定量分析)。
定性分析で含有されている元素を特定後、定性分析で含有量を求め、その結果から各元素の原子比を求める。
定性分析で含有されている元素を特定後、定性分析で含有量を求め、その結果から各元素の原子比を求める。
本発明では、本発明の効果を損ねない範囲において、上述したIn、Ga、Zn以外の他の金属元素、例えば、Sn、Ge、Si、Ti、Zr、Hf等を含有していてもよい。
本発明においては、ターゲットに含有される金属元素は、実質的にIn,Ga及びZnのみであってもよい。尚、「実質的」とは、原料や製造工程等により不可避的に含まれる不純物等以外の元素を含まないことを意味する。通常は不可避的な不純物は100ppm未満であり、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満である。
本発明においては、ターゲットに含有される金属元素は、実質的にIn,Ga及びZnのみであってもよい。尚、「実質的」とは、原料や製造工程等により不可避的に含まれる不純物等以外の元素を含まないことを意味する。通常は不可避的な不純物は100ppm未満であり、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満である。
本発明の酸化物は、例えば、各金属元素を含有する原料粉末を焼結することにより製造できる。以下、製造工程について説明する。
(1)配合工程
原料の配合工程は、本発明の酸化物に含有される金属元素の化合物を混合する必須の工程である。
原料としては、インジウム化合物の粉末、ガリウム化合物の粉末、亜鉛化合物の粉末等の粉末を用いる。インジウムの化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウム等が挙げられる。亜鉛の化合物としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。各々の化合物として、焼結のしやすさ、副生成物の残存のし難さから、酸化物が好ましい。
原料の純度は、通常2N(99質量%)以上、好ましくは3N(99.9質量%)以上、特に好ましくは4N(99.99質量%)以上である。純度が2Nより低いと耐久性が低下したり、液晶側に不純物が入り、焼き付けが起こるおそれがある。
原料の一部として金属亜鉛(亜鉛末)を用いることが好ましい。原料の一部に亜鉛末を用いるとホワイトスポットの生成を低減することができる。
金属酸化物等のターゲットの製造に用いる原料を混合し、通常の混合粉砕機、例えば、湿式ボールミルやビーズミル又は超音波装置を用いて、均一に混合・粉砕することが好ましい。
(1)配合工程
原料の配合工程は、本発明の酸化物に含有される金属元素の化合物を混合する必須の工程である。
原料としては、インジウム化合物の粉末、ガリウム化合物の粉末、亜鉛化合物の粉末等の粉末を用いる。インジウムの化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウム等が挙げられる。亜鉛の化合物としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。各々の化合物として、焼結のしやすさ、副生成物の残存のし難さから、酸化物が好ましい。
原料の純度は、通常2N(99質量%)以上、好ましくは3N(99.9質量%)以上、特に好ましくは4N(99.99質量%)以上である。純度が2Nより低いと耐久性が低下したり、液晶側に不純物が入り、焼き付けが起こるおそれがある。
原料の一部として金属亜鉛(亜鉛末)を用いることが好ましい。原料の一部に亜鉛末を用いるとホワイトスポットの生成を低減することができる。
金属酸化物等のターゲットの製造に用いる原料を混合し、通常の混合粉砕機、例えば、湿式ボールミルやビーズミル又は超音波装置を用いて、均一に混合・粉砕することが好ましい。
(2)仮焼工程
仮焼工程では、上記工程で得た混合物を仮焼する。尚、本工程は必要に応じて設けられる工程である。仮焼工程により、酸化物の密度を上げることが容易になるが、製造コストが上がるおそれがある。そのため、仮焼を行わずに密度を上げられることがより好ましい。
仮焼工程においては、500〜1200℃で、1〜100時間の条件で上記の混合物を熱処理することが好ましい。500℃未満又は1時間未満の熱処理では、インジウム化合物や亜鉛化合物、錫化合物の熱分解が不十分となる場合がある。一方、熱処理条件が、1200℃を超えた場合又は100時間を超えた場合には、粒子の粗大化が起こる場合がある。
従って、特に好ましいのは、800〜1200℃の温度範囲で、2〜50時間、熱処理(仮焼)することである。
尚、ここで得られた仮焼物は、下記の成形工程及び焼成工程の前に粉砕することが好ましい。
仮焼工程では、上記工程で得た混合物を仮焼する。尚、本工程は必要に応じて設けられる工程である。仮焼工程により、酸化物の密度を上げることが容易になるが、製造コストが上がるおそれがある。そのため、仮焼を行わずに密度を上げられることがより好ましい。
仮焼工程においては、500〜1200℃で、1〜100時間の条件で上記の混合物を熱処理することが好ましい。500℃未満又は1時間未満の熱処理では、インジウム化合物や亜鉛化合物、錫化合物の熱分解が不十分となる場合がある。一方、熱処理条件が、1200℃を超えた場合又は100時間を超えた場合には、粒子の粗大化が起こる場合がある。
従って、特に好ましいのは、800〜1200℃の温度範囲で、2〜50時間、熱処理(仮焼)することである。
尚、ここで得られた仮焼物は、下記の成形工程及び焼成工程の前に粉砕することが好ましい。
(3)成形工程
成形工程は、上述した配合工程で得た混合物(上記仮焼工程を設けた場合には仮焼物)を加圧成形して成形体とする工程である。この工程により、製品の形状(例えば、ターゲットとして好適な形状)に成形する。仮焼工程を設けた場合には得られた仮焼物の微粉末を造粒した後、プレス成形により所望の形状に成形することができる。
成形処理としては、例えば、金型成形、鋳込み成形、射出成形等が挙げられるが、焼結密度の高い焼結体(ターゲット)を得るためには、冷間静水圧(CIP)等で成形するのが好ましい。
尚、成形処理に際しては、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、ポリワックス、オレイン酸等の成形助剤を用いてもよい。
成形体の厚みは5.5mm以上であることが好ましい。5.5mm未満であると、焼結した際に本発明の結晶型が得られない場合や本発明以外の結晶型が偏析する場合がある。これは、成形体が薄いことによる面内部位による焼結時の温度ムラ等が原因と推定される。
成形体の厚みは6.0mmがより好ましく、7mm以上が特に好ましい。
成形工程は、上述した配合工程で得た混合物(上記仮焼工程を設けた場合には仮焼物)を加圧成形して成形体とする工程である。この工程により、製品の形状(例えば、ターゲットとして好適な形状)に成形する。仮焼工程を設けた場合には得られた仮焼物の微粉末を造粒した後、プレス成形により所望の形状に成形することができる。
成形処理としては、例えば、金型成形、鋳込み成形、射出成形等が挙げられるが、焼結密度の高い焼結体(ターゲット)を得るためには、冷間静水圧(CIP)等で成形するのが好ましい。
尚、成形処理に際しては、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、ポリワックス、オレイン酸等の成形助剤を用いてもよい。
成形体の厚みは5.5mm以上であることが好ましい。5.5mm未満であると、焼結した際に本発明の結晶型が得られない場合や本発明以外の結晶型が偏析する場合がある。これは、成形体が薄いことによる面内部位による焼結時の温度ムラ等が原因と推定される。
成形体の厚みは6.0mmがより好ましく、7mm以上が特に好ましい。
(4)焼結工程
焼結工程は、上述した配合工程で得た混合物(上記仮焼工程を設けた場合には仮焼物)又は上記成形工程で得られた成形体を焼成する必須の工程である。
焼結は、熱間静水圧(HIP)焼成等によって行うことができる。
焼結条件としては、酸素ガス雰囲気又は酸素ガス加圧下に、通常、1200〜1550℃において、通常30分〜360時間、好ましくは8〜180時間、より好ましくは12〜96時間焼結する。焼結温度が1100℃未満であると、ターゲットの密度が上がり難くなったり、焼結に時間がかかり過ぎるおそれがある。一方、1550℃を超えると成分の気化により、組成がずれたり、炉を傷めたりするおそれがある。
燃焼時間が30分未満であると、ターゲットの密度が上がり難く、360時間より長いと、製造時間がかかり過ぎコストが高くなるため、実用上採用できない。前記範囲内であると相対密度を向上させ、バルク抵抗を下げることができる。
焼結工程は、上述した配合工程で得た混合物(上記仮焼工程を設けた場合には仮焼物)又は上記成形工程で得られた成形体を焼成する必須の工程である。
焼結は、熱間静水圧(HIP)焼成等によって行うことができる。
焼結条件としては、酸素ガス雰囲気又は酸素ガス加圧下に、通常、1200〜1550℃において、通常30分〜360時間、好ましくは8〜180時間、より好ましくは12〜96時間焼結する。焼結温度が1100℃未満であると、ターゲットの密度が上がり難くなったり、焼結に時間がかかり過ぎるおそれがある。一方、1550℃を超えると成分の気化により、組成がずれたり、炉を傷めたりするおそれがある。
燃焼時間が30分未満であると、ターゲットの密度が上がり難く、360時間より長いと、製造時間がかかり過ぎコストが高くなるため、実用上採用できない。前記範囲内であると相対密度を向上させ、バルク抵抗を下げることができる。
本発明の結晶構造を得るには、1350℃超1550℃未満で焼結することが好ましく、1380℃以上1520℃以下で焼結することがより好ましく、1390〜1480℃で焼結することが特に好ましい。前記範囲外であると本発明の結晶型が生成しないおそれがある。また、前記範囲内であると相対密度を向上させ、バルク抵抗を下げることができる。
本発明の結晶構造を得るには、好ましくは2〜48時間、より好ましくは4〜24時間焼結する。
本発明の結晶構造を得るには、好ましくは2〜48時間、より好ましくは4〜24時間焼結する。
一方、酸素を含有しない雰囲気で焼成したり、1550℃以上の温度において焼成したりすると、得られる酸化物焼結体の密度を十分に向上させることができず、スパッタリング時の異常放電の発生を十分に抑制できなくなる場合がある。
焼成時の昇温速度は、通常8℃/分以下、好ましくは4℃/分以下、より好ましくは3℃/分以下、さらに好ましくは2℃/分以下である。8℃/分以下であると本発明の結晶型が得られやすい。また、クラックが発生しにくい。
また、焼成時の降温速度は、通常4℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、さらに好ましくは0.8℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。4℃/分以下であると本発明の結晶型が得られやすい。また、クラックが発生しにくい。
尚、昇温や降温は段階的に温度を変化させてもよい。
焼成時の昇温速度は、通常8℃/分以下、好ましくは4℃/分以下、より好ましくは3℃/分以下、さらに好ましくは2℃/分以下である。8℃/分以下であると本発明の結晶型が得られやすい。また、クラックが発生しにくい。
また、焼成時の降温速度は、通常4℃/分以下、好ましくは2℃/分以下、より好ましくは1℃/分以下、さらに好ましくは0.8℃/分以下、特に好ましくは0.5℃/分以下である。4℃/分以下であると本発明の結晶型が得られやすい。また、クラックが発生しにくい。
尚、昇温や降温は段階的に温度を変化させてもよい。
(5)還元工程
還元工程は、上記焼成工程で得られた焼結体のバルク抵抗をターゲット全体で均一化するためのものであり、必要に応じて設けられる工程である
本工程で適用することができる還元方法としては、例えば、還元性ガスによる方法や真空焼成又は不活性ガスによる還元等が挙げられる。
還元性ガスによる還元処理の場合、水素、メタン、一酸化炭素、又はこれらのガスと酸素との混合ガス等を用いることができる。
不活性ガス中での焼成による還元処理の場合、窒素、アルゴン、又はこれらのガスと酸素との混合ガス等を用いることができる。
還元処理時の温度は、通常100〜800℃、好ましくは200〜800℃である。また、還元処理の時間は、通常0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間である。
還元工程は、上記焼成工程で得られた焼結体のバルク抵抗をターゲット全体で均一化するためのものであり、必要に応じて設けられる工程である
本工程で適用することができる還元方法としては、例えば、還元性ガスによる方法や真空焼成又は不活性ガスによる還元等が挙げられる。
還元性ガスによる還元処理の場合、水素、メタン、一酸化炭素、又はこれらのガスと酸素との混合ガス等を用いることができる。
不活性ガス中での焼成による還元処理の場合、窒素、アルゴン、又はこれらのガスと酸素との混合ガス等を用いることができる。
還元処理時の温度は、通常100〜800℃、好ましくは200〜800℃である。また、還元処理の時間は、通常0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間である。
上記の各工程により、本発明の酸化物単体、又は本発明の酸化物を含有する酸化物焼結体が得られる。この本発明の酸化物を含有する酸化物焼結体は、相対密度が高く、抵抗が低く、抗折強度が高く、均一性が高く、酸化物半導体や透明導電膜等酸化物薄膜を作製するためのターゲットとして適している。即ち、本発明の酸化物の結晶構造を生成させることで、従来公知の結晶型の持つ組成と異なった組成であっても、より良好なターゲットを製造できる。
さらに、X線回折で本発明特有の結晶型のみを示し、他の結晶型を示していないと、ターゲットの強度(抗折強度や衝撃強度など)が高いことやターゲット製造の再現性が高いことが期待でき、特に好ましい。
さらに、X線回折で本発明特有の結晶型のみを示し、他の結晶型を示していないと、ターゲットの強度(抗折強度や衝撃強度など)が高いことやターゲット製造の再現性が高いことが期待でき、特に好ましい。
本発明の酸化物を含むスパッタリングターゲット用の酸化物焼結体は、下記式(1’)及び(2’)を満たすことが好ましい。
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.65 (1’)
0.05<Ga/(In+Ga)<0.45 (2’)
上記式(1’)について、Znの比率が0.15未満、又は0.65超であると、酸化物焼結体中の本発明の結晶構造が不安定となる(分解する)おそれがある。
Znの比率は、0.25〜0.60であることがさらに好ましく、特に、0.45〜0.55であることが好ましい。
尚、上記式(1’)のZnの原子比が0.5に近いと、本発明の結晶構造をとりやすい。
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.65 (1’)
0.05<Ga/(In+Ga)<0.45 (2’)
上記式(1’)について、Znの比率が0.15未満、又は0.65超であると、酸化物焼結体中の本発明の結晶構造が不安定となる(分解する)おそれがある。
Znの比率は、0.25〜0.60であることがさらに好ましく、特に、0.45〜0.55であることが好ましい。
尚、上記式(1’)のZnの原子比が0.5に近いと、本発明の結晶構造をとりやすい。
上記式(2’)について、Gaの比率が0.05以下の場合、例えば、薄膜トランジスタ(半導体薄膜)を作製した際に耐湿性が低下したり、ウェットエッチングの際の速度が速くなりすぎたりするおそれがある。一方、0.45以上の場合、酸化物の抵抗が高くなったり、薄膜トランジスタ(半導体薄膜)を作製した際に移動度が低下するおそれがある。
Gaの比率は、0.10〜0.40であることが好ましく、さらに、0.15〜0.35であることが好ましく、特に、0.17〜0.33であることが好ましい。
特に、Gaの比率が0.17〜0.33であると、本発明の結晶型を生成させやすい。0.17未満であると、薄膜トランジスタ(半導体薄膜)を作製した際に耐湿性が低下したり、ウェットエッチングの際の速度が速くなりすぎたりするおそれがある。
Gaの比率は、0.10〜0.40であることが好ましく、さらに、0.15〜0.35であることが好ましく、特に、0.17〜0.33であることが好ましい。
特に、Gaの比率が0.17〜0.33であると、本発明の結晶型を生成させやすい。0.17未満であると、薄膜トランジスタ(半導体薄膜)を作製した際に耐湿性が低下したり、ウェットエッチングの際の速度が速くなりすぎたりするおそれがある。
本発明の酸化物焼結体を必要に応じて所望の形状に加工することにより最終製品が得られる。以下、酸化物焼結体をスパッタリングターゲットに加工する例について説明する。
加工は、上記の酸化物焼結体をスパッタリング装置への装着に適した形状に切削加工し、また、バッキングプレート等の装着用治具を取り付けるために行う。酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとするには、焼結体を、例えば、平面研削盤で研削して表面粗さRa5μm以下とする。さらに、スパッタリングターゲットのスパッタ面に鏡面加工を施して、平均表面粗さRaが1000オングストローム以下としてもよい。この鏡面加工(研磨)は機械的な研磨、化学研磨、メカノケミカル研磨(機械的な研磨と化学研磨の併用)等の、すでに知られている研磨技術を用いることができる。例えば、固定砥粒ポリッシャー(ポリッシュ液:水)で#2000以上にポリッシングしたり、又は遊離砥粒ラップ(研磨材:SiCペースト等)にてラッピング後、研磨材をダイヤモンドペーストに換えてラッピングすることによって得ることができる。このような研磨方法には特に制限はない。
前記研削は、0.1mm以上行うことが好ましく、0.3mm以上行うことがより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上行うことが特に好ましい。0.1mm以上研削することで、亜鉛等の成分が気化することなどで発生する表面付近の組成ずれした部位や目的としない結晶型の偏析を含む部位を取り除くことができる。
加工は、上記の酸化物焼結体をスパッタリング装置への装着に適した形状に切削加工し、また、バッキングプレート等の装着用治具を取り付けるために行う。酸化物焼結体をスパッタリングターゲットとするには、焼結体を、例えば、平面研削盤で研削して表面粗さRa5μm以下とする。さらに、スパッタリングターゲットのスパッタ面に鏡面加工を施して、平均表面粗さRaが1000オングストローム以下としてもよい。この鏡面加工(研磨)は機械的な研磨、化学研磨、メカノケミカル研磨(機械的な研磨と化学研磨の併用)等の、すでに知られている研磨技術を用いることができる。例えば、固定砥粒ポリッシャー(ポリッシュ液:水)で#2000以上にポリッシングしたり、又は遊離砥粒ラップ(研磨材:SiCペースト等)にてラッピング後、研磨材をダイヤモンドペーストに換えてラッピングすることによって得ることができる。このような研磨方法には特に制限はない。
前記研削は、0.1mm以上行うことが好ましく、0.3mm以上行うことがより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上行うことが特に好ましい。0.1mm以上研削することで、亜鉛等の成分が気化することなどで発生する表面付近の組成ずれした部位や目的としない結晶型の偏析を含む部位を取り除くことができる。
得られたスパッタリングターゲットをバッキングプレートへボンディングする。ターゲットの厚みは通常2〜20mm、好ましくは3〜12mm、特に好ましくは4〜6mmである。また、複数のターゲットを一つのバッキングプレートに取り付け、実質一つのターゲットとしてもよい。
研磨後、ターゲットを洗浄する。洗浄処理にはエアーブローあるいは流水洗浄等を使用できる。エアーブローで異物を除去する際には、ノズルの向い側から集塵機で吸気を行なうとより有効に除去できる。尚、以上のエアーブローや流水洗浄では限界があるので、さらに超音波洗浄等を行なうこともできる。この超音波洗浄は周波数25〜300KHzの間で多重発振させて行なう方法が有効である。例えば周波数25〜300KHzの間で、25KHz刻みに12種類の周波数を多重発振させて超音波洗浄を行なうのが良い。
本発明の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットは、相対密度が92%以上であることが好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が特に好ましい。92%未満だとターゲットが割れやすかったり、異常放電が発生しやすかったりするおそれがある。
相対密度とは、加重平均より算出した理論密度に対して相対的に算出した密度である。各原料の密度の加重平均より算出した密度が理論密度であり、これを100%とする。
相対密度とは、加重平均より算出した理論密度に対して相対的に算出した密度である。各原料の密度の加重平均より算出した密度が理論密度であり、これを100%とする。
ターゲットの抵抗は、0.01mΩcm以上20mΩcm以下が好ましく、0.1mΩcm以上10mΩcm以下がより好ましく、0.2mΩcm以上5mΩcm以下が特に好ましい。抵抗値が20mΩcmを超えると、長時間DCスパッタリングを続けている場合、異常放電によりスパークが発生し、ターゲットが割れたり、スパークにより飛び出した粒子が成膜基板に付着し、酸化物半導体膜としての性能を低下させたりする場合がある。一方、0.01mΩcmより小さいと、ターゲットの抵抗がパーティクルの抵抗より小さくなり、飛散してきたパーティクルにより異常放電が起きるおそれがある。
ターゲットの抗折強度50MPa以上が好ましく、60MPa以上がより好ましく、70MPa以上が特に好ましい。
ターゲット内における、亜鉛以外の陽性元素のばらつき範囲が0.5%以内であることが好ましい。0.5%以内であると、ターゲットの抵抗の均一性を向上できる(ばらつきを減少できる)。また、成膜品のばらつきを低減できる。
陽性元素のばらつき範囲は、ターゲット面内の5箇所以上から採取したサンプルを誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により含有元素を定量分析して求めることができる。
陽性元素のばらつき範囲は、ターゲット面内の5箇所以上から採取したサンプルを誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により含有元素を定量分析して求めることができる。
ターゲット内における相対密度のばらつきの範囲が3%以内であることが好ましい。密度のばらつきの範囲が3%以内であると、ターゲットの抵抗の均一性が向上できる(ばらつきを減少できる)。また、成膜品のばらつきを低減できる。
相対密度のばらつきは、焼結体の任意の10箇所を切り出して、その相対密度をアルキメデス法で求め、その平均値、最大値及び最小値を基に下記式から算出する。
相対密度のばらつき=(最大−最小)/平均×100(%)
相対密度のばらつきは、焼結体の任意の10箇所を切り出して、その相対密度をアルキメデス法で求め、その平均値、最大値及び最小値を基に下記式から算出する。
相対密度のばらつき=(最大−最小)/平均×100(%)
ターゲット内におけるフェレー径2μm以上のピンホール数が単位面積当たり50個/mm2以下が好ましく、20個/mm2以下がより好ましく、5個/mm2以下がさらに好ましい。フェレー径2μm以上のピンホール数が50個/mm2より多いと、ターゲット使用初期から末期まで異常放電が多発する傾向にあるため好ましくない。また、得られるスパッタ膜の平滑性も低下する傾向にある。焼結体内部のフェレー径2μm以上のピンホールが5個/mm2以下だと、ターゲット使用初期から末期まで異常放電を抑制でき、また、得られるスパッタ膜は非常に平滑である。
ここで、フェレー径とは、ピンホールを粒子として見立てた場合に、粒子を挟むある一定方向の平行線間隔のことをいう。例えば、倍率100倍のSEM像による観察で計測できる。
ここで、フェレー径とは、ピンホールを粒子として見立てた場合に、粒子を挟むある一定方向の平行線間隔のことをいう。例えば、倍率100倍のSEM像による観察で計測できる。
本発明のスパッタリングターゲットを用いて、基板等の対象物にスパッタすることにより、本発明の酸化物薄膜を成膜することができる。酸化物薄膜は透明電極や、薄膜トランジスタの半導体層、酸化物薄膜層等に、中でも特に薄膜トランジスタの半導体層として好適に使用できる。
トランジスタ特性の評価項目としては、さまざまなものがあるが、例えば、電界効果移動度μ、閾値電圧(Vth)、オンオフ比、S値等が上げられる。
電界効果移動度は、線形領域や飽和領域の特性から求めることができる。例えば、トランスファ特性の結果から、√Id―Vgのグラフを作製し、この傾きから電界効果移度を導く方法が挙げられる。本明細書では特にこだわらない限り、この手法で評価している。
閾値電圧の求め方はいくつかの方法があるが、たとえば√Id―Vgのグラフのx切片から閾値電圧Vthを導くことが挙げられる。
オンオフ比はトランスファ特性における、最も大きなIdと、最も小さなIdの値の比から求めることができる。
トランジスタ特性の評価項目としては、さまざまなものがあるが、例えば、電界効果移動度μ、閾値電圧(Vth)、オンオフ比、S値等が上げられる。
電界効果移動度は、線形領域や飽和領域の特性から求めることができる。例えば、トランスファ特性の結果から、√Id―Vgのグラフを作製し、この傾きから電界効果移度を導く方法が挙げられる。本明細書では特にこだわらない限り、この手法で評価している。
閾値電圧の求め方はいくつかの方法があるが、たとえば√Id―Vgのグラフのx切片から閾値電圧Vthを導くことが挙げられる。
オンオフ比はトランスファ特性における、最も大きなIdと、最も小さなIdの値の比から求めることができる。
S値は、トランスファ特性の結果から、Log(Id)―Vdのグラフを作製し、この傾きの逆数から導出することができる。
S値の単位は、V/decadeであり、小さな値であることが好ましい。S値は0.5V/dec以下が好ましく、0.4V/dec以下がより好ましく、0.3V/dec以下がさらに好ましく、0.2V/dec以下が特に好ましい。0.8V/dec以下だと駆動電圧が小さくなり消費電力を低減できる可能性がある。特に、有機ELディスプレイで用いる場合は、直流駆動のためS値を0.3V/dec以下にすると消費電力を大幅に低減できるため好ましい。尚、S値(Swing Factor)とは、オフ状態からゲート電圧を増加させた際に、オフ状態からオン状態にかけてドレイン電流が急峻に立ち上がるが、この急峻さを示す値である。下記式で定義されるように、ドレイン電流が1桁(10倍)上昇するときのゲート電圧の増分をS値とする。
S値=dVg/dlog(Ids)
S値が小さいほど急峻な立ち上がりとなる(「薄膜トランジスタ技術のすべて」、鵜飼育弘著、2007年刊、工業調査会)。S値が大きいと、オンからオフに切り替える際に高いゲート電圧をかける必要があり、消費電力が大きくなるおそれがある。
S値の単位は、V/decadeであり、小さな値であることが好ましい。S値は0.5V/dec以下が好ましく、0.4V/dec以下がより好ましく、0.3V/dec以下がさらに好ましく、0.2V/dec以下が特に好ましい。0.8V/dec以下だと駆動電圧が小さくなり消費電力を低減できる可能性がある。特に、有機ELディスプレイで用いる場合は、直流駆動のためS値を0.3V/dec以下にすると消費電力を大幅に低減できるため好ましい。尚、S値(Swing Factor)とは、オフ状態からゲート電圧を増加させた際に、オフ状態からオン状態にかけてドレイン電流が急峻に立ち上がるが、この急峻さを示す値である。下記式で定義されるように、ドレイン電流が1桁(10倍)上昇するときのゲート電圧の増分をS値とする。
S値=dVg/dlog(Ids)
S値が小さいほど急峻な立ち上がりとなる(「薄膜トランジスタ技術のすべて」、鵜飼育弘著、2007年刊、工業調査会)。S値が大きいと、オンからオフに切り替える際に高いゲート電圧をかける必要があり、消費電力が大きくなるおそれがある。
本発明の電界効果トランジスタでは、移動度は8cm2/Vs以上が好ましく、10cm2/Vs以上がより好ましく、16cm2/Vs以上がさらに好ましく、20cm2/Vs以上が特に好ましい。8cm2/Vsより大きいとスイッチング速度が速くなり大画面高精細のディスプレイで用いた場合に利点が期待できる。
オンオフ比は、107以上が好ましく、108以上がより好ましく、109以上が特に好ましい。
オンオフ比は、107以上が好ましく、108以上がより好ましく、109以上が特に好ましい。
閾値電圧は、通常−1〜5Vであるが、−0.5〜3Vが好ましく、0〜2Vがより好ましく、0〜1Vが特に好ましい。−1Vより大きいとオフ時にかける電圧が小さくなり消費電力を低減できる可能性がある。5Vより小さいと駆動電圧が小さくなり消費電力を低減できる可能性がある。
実施例1
(1)酸化物焼結体の作製
出発原料として、In2O3(アジア物性材料社製:純度4N)、Ga2O3(アジア物性材料社製:純度4N)及びZnO(高純度化学社製:純度4N)を使用した。
これらの原料を、金属元素の原子比が表1に示す比となるように秤量し、湿式媒体攪拌ミルを使用して混合粉砕した。尚、湿式媒体攪拌ミルの媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
そして混合粉砕後、スプレードライヤーで乾燥させた。得られた混合粉末を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し成形体を作製した。
その後、電気炉にて焼結した。焼結条件は以下のとおりとした。
昇温速度:2℃/分
焼結温度:1480℃
焼結時間:6時間
焼結雰囲気:酸素流入
降温時間:72時間
(1)酸化物焼結体の作製
出発原料として、In2O3(アジア物性材料社製:純度4N)、Ga2O3(アジア物性材料社製:純度4N)及びZnO(高純度化学社製:純度4N)を使用した。
これらの原料を、金属元素の原子比が表1に示す比となるように秤量し、湿式媒体攪拌ミルを使用して混合粉砕した。尚、湿式媒体攪拌ミルの媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
そして混合粉砕後、スプレードライヤーで乾燥させた。得られた混合粉末を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し成形体を作製した。
その後、電気炉にて焼結した。焼結条件は以下のとおりとした。
昇温速度:2℃/分
焼結温度:1480℃
焼結時間:6時間
焼結雰囲気:酸素流入
降温時間:72時間
(2)スパッタリングターゲットの作製
焼結後、厚さ6mmの焼結体を得た。この焼結体からスパッタリングターゲット用焼結体を切り出した。焼結体の側辺をダイヤモンドカッターで切断して、平面研削盤で表面の両面を各々0.5mm研削して、表面粗さRa5μm以下、厚み5mm、直径4インチのターゲット素材とした。
次に、表面をエアーブローし、さらに周波数25〜300kHzの間で25kHz刻みに12種類の周波数を多重発振させて3分間超音波洗浄した。ターゲット素材を得た。
焼結後、厚さ6mmの焼結体を得た。この焼結体からスパッタリングターゲット用焼結体を切り出した。焼結体の側辺をダイヤモンドカッターで切断して、平面研削盤で表面の両面を各々0.5mm研削して、表面粗さRa5μm以下、厚み5mm、直径4インチのターゲット素材とした。
次に、表面をエアーブローし、さらに周波数25〜300kHzの間で25kHz刻みに12種類の周波数を多重発振させて3分間超音波洗浄した。ターゲット素材を得た。
この後、ターゲット素材をインジウム半田にて無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングしてターゲットとした。ターゲットの表面粗さRa≦0.5μmであり、方向性のない研削面を備えていた。
製造したターゲットDCスパッタ成膜装置に装着した。0.3PaのAr雰囲気下で、100Wにて100時間連続スパッタを行い、表面に発生するノジュールを計測した。その結果、ターゲット表面にはほとんどノジュールが発生しなかった。また、成膜時に異常放電はほとんど発生しなかった。
製造したターゲットDCスパッタ成膜装置に装着した。0.3PaのAr雰囲気下で、100Wにて100時間連続スパッタを行い、表面に発生するノジュールを計測した。その結果、ターゲット表面にはほとんどノジュールが発生しなかった。また、成膜時に異常放電はほとんど発生しなかった。
得られた酸化物焼結体(ターゲット)について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(A)酸化物焼結体(ターゲット)の金属元素の比率
酸化物焼結体(ターゲット)の表面から試料を採取し、ICP発光分析装置(島津製作所社製)で分析した。
(A)酸化物焼結体(ターゲット)の金属元素の比率
酸化物焼結体(ターゲット)の表面から試料を採取し、ICP発光分析装置(島津製作所社製)で分析した。
(B)酸化物焼結体(ターゲット)の結晶構造
X線回折測定(XRD)により、完成した酸化物焼結体(ターゲット)の表面を直接測定して判定した(なお、ターゲットが大きすぎる場合は測定箇所を切り出して測定してもよい)。
・装置:(株)リガク製Ultima−III
・X線:Cu−Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
・2θ−θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
・サンプリング間隔:0.02°
・スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
X線回折測定(XRD)により、完成した酸化物焼結体(ターゲット)の表面を直接測定して判定した(なお、ターゲットが大きすぎる場合は測定箇所を切り出して測定してもよい)。
・装置:(株)リガク製Ultima−III
・X線:Cu−Kα線(波長1.5406Å、グラファイトモノクロメータにて単色化)
・2θ−θ反射法、連続スキャン(1.0°/分)
・サンプリング間隔:0.02°
・スリット DS、SS:2/3°、RS:0.6mm
(C)ターゲットの特性
(a)相対密度
原料粉の密度から計算した理論密度と、アルキメデス法で測定した焼結体の密度から、下記計算式にて算出した。
相対密度=(アルキメデス法で測定した密度)÷(理論密度)×100(%)
(b)バルク抵抗
抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタ)を使用し四探針法(JIS R1637)に基づき測定、10箇所の平均値を抵抗率値とした。
(c)抵抗の均一性
抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタ)を使用し四探針法(JIS R1637)に基づき測定、10箇所の平均値と標準偏差から、下記計算式にて算出した。
(標準偏差)÷(平均値)×100(%)
(d)ピンホール数(平均空孔数)
焼結体の任意の方向にて鏡面研磨後、エッチングし、組織をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、単位面積当たりの直径1μm以上の空孔の個数を数えた。
(a)相対密度
原料粉の密度から計算した理論密度と、アルキメデス法で測定した焼結体の密度から、下記計算式にて算出した。
相対密度=(アルキメデス法で測定した密度)÷(理論密度)×100(%)
(b)バルク抵抗
抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタ)を使用し四探針法(JIS R1637)に基づき測定、10箇所の平均値を抵抗率値とした。
(c)抵抗の均一性
抵抗率計(三菱化学(株)製、ロレスタ)を使用し四探針法(JIS R1637)に基づき測定、10箇所の平均値と標準偏差から、下記計算式にて算出した。
(標準偏差)÷(平均値)×100(%)
(d)ピンホール数(平均空孔数)
焼結体の任意の方向にて鏡面研磨後、エッチングし、組織をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、単位面積当たりの直径1μm以上の空孔の個数を数えた。
(D)ターゲットの成膜特性
(a)異常放電
96時間で発生した異常放電回数を測定した。
(b)パーティクル(発塵量)
以下のとおり評価した。
チャンバー内にスライドガラスを設置し、96時間連続成膜後のスライドガラスに付着した1μm以上のパーティクルの密度を、顕微鏡を用いて計測した。
その結果、パーティクルが少ない方から順に、下記の3段階で評価した。
≦102:102個/cm2以内
≦104:102個/cm2より大きく104個/cm2以内
104<:104個/cm2超
(c)ノジュール量
以下のとおり評価した。
96時間連続成膜後の成膜後のスパッタリングターゲットを室内光下、目視で確認し、下記の3段階で評価した。
無:ノジュールがほとんどない
少:ノジュールが少しある
多:ノジュールが多い
(a)異常放電
96時間で発生した異常放電回数を測定した。
(b)パーティクル(発塵量)
以下のとおり評価した。
チャンバー内にスライドガラスを設置し、96時間連続成膜後のスライドガラスに付着した1μm以上のパーティクルの密度を、顕微鏡を用いて計測した。
その結果、パーティクルが少ない方から順に、下記の3段階で評価した。
≦102:102個/cm2以内
≦104:102個/cm2より大きく104個/cm2以内
104<:104個/cm2超
(c)ノジュール量
以下のとおり評価した。
96時間連続成膜後の成膜後のスパッタリングターゲットを室内光下、目視で確認し、下記の3段階で評価した。
無:ノジュールがほとんどない
少:ノジュールが少しある
多:ノジュールが多い
実施例1で製造したターゲットのX線回折測定(XRD)チャートを図3に示す。尚、比較のため、XRDチャートの下部にInGaO3(ZnO)2(JCPDS:40−0252)のチャート及びIn2O3(ZnO)2(JCPDS:20−1442)のチャートを示す。
実施例1の酸化物はInGaO3(ZnO)2特有のピーク(図3中、○で示す)、及びIn2O3(ZnO)2特有のピーク(図3中、○で示す)を有し、かつ、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2には観測されないピークを有する。従って、この酸化物は、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2とは異なる新規な結晶系を有する。
実施例1の酸化物はInGaO3(ZnO)2特有のピーク(図3中、○で示す)、及びIn2O3(ZnO)2特有のピーク(図3中、○で示す)を有し、かつ、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2には観測されないピークを有する。従って、この酸化物は、InGaO3(ZnO)2及びIn2O3(ZnO)2とは異なる新規な結晶系を有する。
(E)トランジスタの特性
図4に示すチャンネルストッパー型薄膜トランジスタ(逆スタガ型薄膜トランジスタ)を作製し、評価した。
基板10は、ガラス基板(Corning 1737)を用いた。まず、基板10上に電子ビーム蒸着法により、厚さ10nmのMoと厚さ80nmのAlと厚さ10nmのMoをこの順で積層した。積層膜をフォトリソグラフィー法とリフトオフ法を用いて、ゲート電極20に形成した。
ゲート電極20及び基板10上に、厚さ200nmのSiO2膜をTEOS−CVD法により成膜し、ゲート絶縁層30を形成した。尚、ゲート絶縁層の成膜はスパッタ法でもよいが、TEOS−CVD法やPECVD法等のCVD法で形成することが好ましい。スパッタ法ではオフ電流が高くなるおそれがある。
続いて、RFスパッタ法により、実施例1で作製したターゲットを使用して、厚さ40nmの半導体膜40(チャネル層)を形成した。半導体膜40の上に、スパッタ法によりエッチングストッパー層60(保護膜)としてSiO2膜を堆積した。尚、保護膜の成膜方法はCVD法でもよい。
本実施例では、投入RFパワーは200Wとしている。成膜時の雰囲気は、全圧0.4Paであり、その際のガス流量比はAr:O2=92:8である。また、基板温度は70℃である。堆積させた酸化物半導体膜と保護膜は、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、適当な大きさに加工した。
エッチングストッパー層60の形成後に、厚さ5nmのMoと厚さ50nmのAlと厚さ5nmのMoをこの順で積層し、フォトリソグラフィー法とドライエッチングにより、ソース電極50及びドレイン電極52を形成した。
その後、大気中300℃で60分間熱処理し、チャネル長が10μmで、チャネル幅が100μmのトランジスタを作製した。
薄膜トランジスタの評価は、以下のように実施した。
図4に示すチャンネルストッパー型薄膜トランジスタ(逆スタガ型薄膜トランジスタ)を作製し、評価した。
基板10は、ガラス基板(Corning 1737)を用いた。まず、基板10上に電子ビーム蒸着法により、厚さ10nmのMoと厚さ80nmのAlと厚さ10nmのMoをこの順で積層した。積層膜をフォトリソグラフィー法とリフトオフ法を用いて、ゲート電極20に形成した。
ゲート電極20及び基板10上に、厚さ200nmのSiO2膜をTEOS−CVD法により成膜し、ゲート絶縁層30を形成した。尚、ゲート絶縁層の成膜はスパッタ法でもよいが、TEOS−CVD法やPECVD法等のCVD法で形成することが好ましい。スパッタ法ではオフ電流が高くなるおそれがある。
続いて、RFスパッタ法により、実施例1で作製したターゲットを使用して、厚さ40nmの半導体膜40(チャネル層)を形成した。半導体膜40の上に、スパッタ法によりエッチングストッパー層60(保護膜)としてSiO2膜を堆積した。尚、保護膜の成膜方法はCVD法でもよい。
本実施例では、投入RFパワーは200Wとしている。成膜時の雰囲気は、全圧0.4Paであり、その際のガス流量比はAr:O2=92:8である。また、基板温度は70℃である。堆積させた酸化物半導体膜と保護膜は、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、適当な大きさに加工した。
エッチングストッパー層60の形成後に、厚さ5nmのMoと厚さ50nmのAlと厚さ5nmのMoをこの順で積層し、フォトリソグラフィー法とドライエッチングにより、ソース電極50及びドレイン電極52を形成した。
その後、大気中300℃で60分間熱処理し、チャネル長が10μmで、チャネル幅が100μmのトランジスタを作製した。
薄膜トランジスタの評価は、以下のように実施した。
(a)移動度(電界効果移動度(μ))、S値及びオンオフ比
半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200)を用い、室温、遮光環境下で測定した。
(b)耐湿性
85℃、85%RHにて、120時間耐湿試験を実施した。試験前後の閾値電圧(Vth)の変化量を以下のように評価した
変化量が5V以下: ≦5V
変化量が5V超 : 5V<
(c)閾値電圧(Vth)のばらつき
同時に作製した20個のTFTの閾値電圧(Vth)の最大値と最小値から下記式に基づいて求めた。
閾値電圧(Vth)のばらつき=最大値−最小値
半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200)を用い、室温、遮光環境下で測定した。
(b)耐湿性
85℃、85%RHにて、120時間耐湿試験を実施した。試験前後の閾値電圧(Vth)の変化量を以下のように評価した
変化量が5V以下: ≦5V
変化量が5V超 : 5V<
(c)閾値電圧(Vth)のばらつき
同時に作製した20個のTFTの閾値電圧(Vth)の最大値と最小値から下記式に基づいて求めた。
閾値電圧(Vth)のばらつき=最大値−最小値
実施例2
昇温速度を1℃/分、焼結時間を12時間、加工を9mmの焼結体から5mmに研削・研磨した以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットを作製し、評価した。結果を表1に示す。
昇温速度を1℃/分、焼結時間を12時間、加工を9mmの焼結体から5mmに研削・研磨した以外は、実施例1と同様にして酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットを作製し、評価した。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1と同じ出発原料を、表1に示す比となるように混合し、ボールミルで24時間混合した。
得られた混合物をCIPにより成形し、その後、電気炉にて焼結した。焼結条件は以下のとおりとした。
昇温速度:2.5℃/分
焼結温度:1400℃
焼結時間:6時間
焼結雰囲気:大気下
降温時間:72時間
実施例1と同じ出発原料を、表1に示す比となるように混合し、ボールミルで24時間混合した。
得られた混合物をCIPにより成形し、その後、電気炉にて焼結した。焼結条件は以下のとおりとした。
昇温速度:2.5℃/分
焼結温度:1400℃
焼結時間:6時間
焼結雰囲気:大気下
降温時間:72時間
得られた厚さ6mmの焼結体を厚さ5mmに研削、研磨した。この焼結体から直径4インチ、厚み5mmの円形のターゲット用焼結体を切り出した他は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを作製し、評価した。結果を表1に示す。
尚、得られたスパッタリングターゲットの表面からサンプリングした酸化物粉について、X線回折測定(XRD)した。実施例3で製造したターゲットのX線回折測定(XRD)チャートを図5に示す。
実施例1及び3について、XRDのピーク位置を表2に示す。また、X線回折測定(XRD)チャートの拡大図を図6〜10に示す。
尚、得られたスパッタリングターゲットの表面からサンプリングした酸化物粉について、X線回折測定(XRD)した。実施例3で製造したターゲットのX線回折測定(XRD)チャートを図5に示す。
実施例1及び3について、XRDのピーク位置を表2に示す。また、X線回折測定(XRD)チャートの拡大図を図6〜10に示す。
実施例4〜8
組成比を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体及びスパッタリングターゲットを作製・評価した。結果を表1に示す。
組成比を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に酸化物焼結体及びスパッタリングターゲットを作製・評価した。結果を表1に示す。
比較例1
酸化インジウム粉末(純度4N)、酸化ガリウム粉末(純度4N)及び酸化亜鉛粉末(純度4N)を重量比でほぼIn2O3:Ga2O3:ZnO=34:46:20となるように秤量し、湿式媒体攪拌ミルを使用して混合粉砕した。尚、湿式媒体攪拌ミルの媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
そして混合粉砕後、スプレードライヤーで乾燥させた。得られた混合粉末を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し成形体を作製した。
得られた成形体を、酸素を流通させながら酸素雰囲気中1200℃で4時間焼結した。これによって、仮焼工程を行うことなく相対密度90.8%(焼結体密度5.85g/cm3)である酸化物焼結体を得た。
X線回折により、この焼結体はZnGa2O4の結晶であることが確認された。この焼結体のバルク抵抗は、150mΩcmであった。
この焼結体から製造したターゲット(4インチφ、厚み5mm)をバッキングプレートにボンディングし、DCスパッタ成膜装置に装着した。0.3PaのAr雰囲気下で、100Wにて100時間連続スパッタを行い、表面に発生するノジュールを計測した。その結果、ターゲット表面のほぼ半分にノジュールの発生が認められた。
評価結果を表3に示す。
酸化インジウム粉末(純度4N)、酸化ガリウム粉末(純度4N)及び酸化亜鉛粉末(純度4N)を重量比でほぼIn2O3:Ga2O3:ZnO=34:46:20となるように秤量し、湿式媒体攪拌ミルを使用して混合粉砕した。尚、湿式媒体攪拌ミルの媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
そして混合粉砕後、スプレードライヤーで乾燥させた。得られた混合粉末を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し成形体を作製した。
得られた成形体を、酸素を流通させながら酸素雰囲気中1200℃で4時間焼結した。これによって、仮焼工程を行うことなく相対密度90.8%(焼結体密度5.85g/cm3)である酸化物焼結体を得た。
X線回折により、この焼結体はZnGa2O4の結晶であることが確認された。この焼結体のバルク抵抗は、150mΩcmであった。
この焼結体から製造したターゲット(4インチφ、厚み5mm)をバッキングプレートにボンディングし、DCスパッタ成膜装置に装着した。0.3PaのAr雰囲気下で、100Wにて100時間連続スパッタを行い、表面に発生するノジュールを計測した。その結果、ターゲット表面のほぼ半分にノジュールの発生が認められた。
評価結果を表3に示す。
比較例2
原料粉としてBET比表面積が6m2/gである酸化インジウム粉と、BET比表面積が6m2/gである酸化ガリウム粉と、BET比表面積が3m2/gである酸化亜鉛粉を、重量比で45:30:25となるように秤量し、湿式媒体撹拌ミルを使用して混合粉砕した。媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
粉砕後のBET比表面積を原料混合粉の比表面積より2m2/g増加させた後、スプレードライヤーで乾燥させた。
この混合粉を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し、さらに酸素を流通させながら酸素雰囲気中1450°Cの高温で8時間焼結した。
これによって、仮焼工程を行うことなく、相対密度92.7%(焼結密度が5.97g/cm3)である酸化物焼結体を得た。この焼結体はInGaZnO4を主成分とすることが確認できた。
この焼結体のバルク抵抗は、50mΩcmであった。
得られた焼結体について、ターゲット加工し、RFマグネトロンスパッタリング成膜装置を使用して、膜厚が約100nmの酸化物半導体膜をガラス基板上に形成した。尚、本例においては、成膜時に時折異常放電が発生した。
評価結果を表3に示す。
原料粉としてBET比表面積が6m2/gである酸化インジウム粉と、BET比表面積が6m2/gである酸化ガリウム粉と、BET比表面積が3m2/gである酸化亜鉛粉を、重量比で45:30:25となるように秤量し、湿式媒体撹拌ミルを使用して混合粉砕した。媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。
粉砕後のBET比表面積を原料混合粉の比表面積より2m2/g増加させた後、スプレードライヤーで乾燥させた。
この混合粉を金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形し、さらに酸素を流通させながら酸素雰囲気中1450°Cの高温で8時間焼結した。
これによって、仮焼工程を行うことなく、相対密度92.7%(焼結密度が5.97g/cm3)である酸化物焼結体を得た。この焼結体はInGaZnO4を主成分とすることが確認できた。
この焼結体のバルク抵抗は、50mΩcmであった。
得られた焼結体について、ターゲット加工し、RFマグネトロンスパッタリング成膜装置を使用して、膜厚が約100nmの酸化物半導体膜をガラス基板上に形成した。尚、本例においては、成膜時に時折異常放電が発生した。
評価結果を表3に示す。
比較例3
原料比を表3に示す組成比になるよう調整した他は、実施例1同様に酸化物焼結体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
実施例1のような単一の結晶型を示さず、In2O3(ZnO)3とIn2O3の混合した焼結体となり、実施例1の条件(焼結温度1480℃)では、In2O3(ZnO)2が生成しないことが確認された。
評価結果を表3に示す。
原料比を表3に示す組成比になるよう調整した他は、実施例1同様に酸化物焼結体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
実施例1のような単一の結晶型を示さず、In2O3(ZnO)3とIn2O3の混合した焼結体となり、実施例1の条件(焼結温度1480℃)では、In2O3(ZnO)2が生成しないことが確認された。
評価結果を表3に示す。
比較例4
原料比を表3に示す組成比になるよう調整した他は、比較例1同様に酸化物焼結体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
原料比を表3に示す組成比になるよう調整した他は、比較例1同様に酸化物焼結体を作製し、評価した。結果を表3に示す。
比較例5
放電プラズマ焼結(SPS)を行った。放電プラズマ焼結を用いると、成形体の結晶形態を維持したままスパッタリングターゲットを得ることができる。放電プラズマ焼結は、通常粉末を加圧成形しながら、100〜1000A/cm2の電流を5分〜1時間流すことで行う。
組成比を表3に示すように調整し、加圧成形しながら、100〜1000A/cm2の電流を5分〜1時間流し放電プラズマ焼結(SPS)し、酸化物焼結体を作製した。比較例1同様に評価した。結果を表3に示す。
放電プラズマ焼結(SPS)を行った。放電プラズマ焼結を用いると、成形体の結晶形態を維持したままスパッタリングターゲットを得ることができる。放電プラズマ焼結は、通常粉末を加圧成形しながら、100〜1000A/cm2の電流を5分〜1時間流すことで行う。
組成比を表3に示すように調整し、加圧成形しながら、100〜1000A/cm2の電流を5分〜1時間流し放電プラズマ焼結(SPS)し、酸化物焼結体を作製した。比較例1同様に評価した。結果を表3に示す。
本発明の酸化物及び酸化物焼結体は、酸化物薄膜を形成する際に使用するスパッタリングターゲット等に好適に使用できる。従来の結晶型とは異なる特性を持つ本発明の酸化物焼結体によって、例えば、良好な特性の薄膜トランジスタを均一で安定に作製できる。
10 基板
20 ゲート電極
30 ゲート絶縁膜
40 半導体膜
50 ソース電極
52 ドレイン電極
60 エッチストッパー
20 ゲート電極
30 ゲート絶縁膜
40 半導体膜
50 ソース電極
52 ドレイン電極
60 エッチストッパー
Claims (8)
- インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)、及び亜鉛元素(Zn)を含み、
X線回折測定(Cukα線)により、入射角(2θ)が、7.0°〜8.4°、30.6°〜32.0°、33.8°〜35.8°、53.5°〜56.5°及び56.5°〜59.5°の各位置に回折ピークが観測され、
かつ、2θが30.6°〜32.0°及び33.8°〜35.8°の位置に観測される回折ピークの一方がメインピークであり、他方がサブピークである、酸化物。 - インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1)及び(2)を満たす、請求項1に記載の酸化物。
0.45≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.60 (1)
0.21≦Ga/(In+Ga)≦0.29 (2) - 含有される金属元素が、実質的にIn,Ga及びZnである請求項1又は2に記載の酸化物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物を含む酸化物焼結体。
- インジウム元素(In)、ガリウム元素(Ga)及び亜鉛元素(Zn)の原子比が、下記式(1’)及び(2’)を満たす、請求項4に記載の酸化物焼結体。
0.15≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.65 (1’)
0.05<Ga/(In+Ga)<0.45 (2’) - 請求項4又は5に記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
- 請求項6に記載のスパッタリングターゲットを用いて作製された酸化物薄膜。
- 下記(a)〜(c)の工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物又は請求項4あるいは5に記載の酸化物焼結体の製造方法。
(a)厚み5.5mm以上の成形体を成形する工程
(b)1380℃以上1520℃以下で4〜24時間焼結する工程
(c)成形体を焼結した後、片面あるいは両面を0.1mm以上研削する工程
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