JP2009274939A - 炭素質体の製造方法及び炭素質体、粒子状炭素質体 - Google Patents

炭素質体の製造方法及び炭素質体、粒子状炭素質体 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリイミド発泡体を用いて、比表面積の大きな炭素質体を簡便に製造できる製法を提供すること。
【解決手段】 ガラス転移温度が300℃以上のポリイミドからなり、発泡倍率が20倍以上であるポリイミド発泡体を、嫌気性雰囲気下、1〜50℃/分の昇温速度で、最高温度が600〜2000℃の範囲で加熱して炭素化させることを特徴とする炭素質体の製造方法に関する。炭素質体の製造方法より得られる炭素質体に関する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミド発泡体を用いて炭素質体の製造方法であり、比表面積の大きな炭素質体を容易にえることが出来、得られた炭素質体を粉砕して電気二重層キャパシタの電極部材、吸着剤として用いることができる。
炭素材料、特に比表面積の大きい炭素質体は、各種吸着剤やキャパシタ用電極などの用途で産業上有益に使われている。その中でも、活性炭と総称される高比表面積の炭素質体が幅広い分野で大量に使われている。
炭素質体の製造例として、特許文献1には、ポリイミド多孔膜を嫌気性雰囲気下で800℃以上で加熱して炭化してなる微細な連続孔を有する多孔質炭化膜の製造方法が開示されている。
ポリイミド発泡体の製造例として、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに開示されている。
特開2000−335909号公報 特開昭61−195126号公報 特表2000−515584号公報 特開2002−012688号公報
比表面積の大きい炭素質体は、一般的には活性炭と称され、吸着剤や電極材料として産業上多く利用されているが、活性炭の比表面積を大きくするためには、活性化工程である賦活工程が必須である。この賦活工程とは気孔表面を活性化し、比表面積を拡大させるとともに、吸着特性を向上させる工程であり、具体的にはガス賦活法、薬品賦活法などが挙げられる。
この賦活工程は、製造工程が増え原価の面から非効率であり、多量の排ガスが発生する環境に好ましくないプロセスであったり、アルカリや酸の廃液の発生、洗浄廃液が大量に発生するなど製造コストの面及び環境保全の観点からも好ましくないプロセスを経る必要がある。
本発明では、賦活工程不要で簡便な方法で比表面積の大きい炭素質体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第一は、ガラス転移温度が300℃以上のポリイミドからなり、発泡倍率が20倍以上であるポリイミド発泡体を、嫌気性雰囲気下、1〜50℃/分の昇温速度で、最高温度が600〜2000℃の範囲で加熱して炭素化させることを特徴とする炭素質体の製造方法に関する。
本発明の第二は、本発明の第一の炭素質体の製造方法より得られる炭素質体に関する。
本発明の第三は、本発明の第二の炭素質体を粉砕して得られる粒子状炭素質体に関する。
本発明において、炭素質体とは炭素質体の全元素比率100at%中で、炭素元素の比率が75at%以上のもの、好ましくは80at%以上のものを意味する。
本発明の炭素質体の製造方法において、
発泡倍率が20倍以上(好ましくは密度67.5kg/m以下に相当する。)であるポリイミド発泡体は、厚さ数μm以下の薄膜が気泡構造の単位のため、発泡体内部の水素原子や酸素原子が脱離しやすく、熱分解が速やかに進行するために、容易に比表面積の大きな炭素質体を得ることが出来ると考えられる。
さらに発泡倍率が20倍以上(好ましくは密度67.5kg/m以下に相当する。)であるポリイミド発泡体は、発泡工程で急激な延伸力が作用する中で薄膜の気泡構造が形成されるため、分子配向が進みリジットな秩序構造を形成するために、炭素化工程での緻密化、黒鉛化が進行するための炭素原子の再配列が起こりにくく、結果として緻密化や黒鉛化の初期の進行速度が遅くなることから、容易に比表面積の大きな炭素質体を得ることが出来ると考えられる。
以上のことから、発泡倍率が20倍以上(好ましくは密度67.5kg/m以下に相当する。)であるポリイミド発泡体は、熱分解が速やかに進行し、かつ緻密化、黒鉛化の進行が遅い材料であり、容易に比表面積の大きな炭素質体を得ることが出来ると考えられる。
本発明の第一の炭素質体の製造方法の好ましい態様を以下に示す。
1)炭素質体は、比表面積が300m/g以上であること。
2)ポリイミド発泡体は、炭素数4以下の低級一級アルコ−ルによって一部モノエステル化および/またはジエステル化された芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとを、芳香族テトラカルボン酸成分に対してアミノ基総量が略2:1となる割合で分子分散した固体状体のモノマ−塩であるポリイミド前駆体を加熱して発泡させて得られたものであること。
3)ポリイミド発泡体は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を50モル%以上含む芳香族カルボン酸成分と、ジアミン成分とから得られること。
4)ポリイミド発泡体は、ガラス転移温度が300℃以上の非熱可塑性芳香族ポリイミドからなること。
本発明の第三の粒子状炭素質体の好ましい態様を以下に示す。
1)粒子状炭素質体が、電気二重層キャパシタ電極用炭素部材、水溶液系電気二重層キャパシタ電極用炭素部材若しくは吸着剤用であること。
本発明の製造方法により、賦活工程を行うことなく比表面積の大きい炭素質体が簡便に得られるので、産業上非常に有益である。
本発明の製造方法により得られる炭素質体は、容易に粉体上に粉砕できる。
本発明の製造方法により製造される炭素質体は、比表面積が大きく、静電容量の高い炭素質物質であり、粉砕して電気二重層キャパシタ用の電極部材吸着材料としても好適に用いることができる。
本発明の炭素質体の製造方法は、ガラス転移温度が300℃以上のポリイミド(好ましくは非熱可塑性芳香族ポリイミド)からなり、発泡倍率が20倍以上(好ましくは密度67.5kg/m以下に相当する。)であるポリイミド発泡体を、嫌気性雰囲気下、1〜50℃/分の昇温速度で、最高温度が600〜2000℃の範囲で加熱して炭素化させることを特徴とする炭素質体の製造方法である。
本発明の炭素質体の製造方法において、一部又は全部が独立気泡であるポリイミド発泡体を、加熱して炭素化させることにより、一部又は全部が独立気泡である炭素質体を製造することができる。
本発明の炭素質体の製造方法において、ポリイミド発泡体より加熱して炭素化させて炭素質体を製造する加熱条件としては、
a1)酸素など酸化活性の気体が殆ど含まれていないか若しくは全く含まれていない、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で、
a2)1〜50℃/分、好ましくは、2〜50℃/分、さらに好ましくは2〜10℃/分の昇温速度で、a3)600〜2000℃の範囲、好ましくは620〜1600℃の範囲、より好ましくは650〜1450℃の範囲、さらに好ましくは680〜1350℃の範囲、特に好ましくは700〜1150℃の範囲の最高温度まで加熱し、
a4)さらに必要に応じて最高温度を維持しながら、好ましくは10〜300分、より好ましくは20〜150分、さらに好ましくは30〜120分の時間で加熱する、
炭素の緻密化が起きにくく、黒鉛化の進行に伴う細孔の閉塞が起こりにくいために、比表面積の大きい炭素質体を得ることが出来る。
本発明の炭素質体の製造方法において、嫌気性雰囲気は、微量の酸素など酸化活性の気体を含んでいても良い。
本発明の炭素質体の製造方法は、ポリイミド発泡体が炭化する際、分解物がスム−ズに留去するように、また、いったん蒸発した分解物が再び沈着しないように、不活性ガスの雰囲気で、不活性ガスの気流中で行うことが好ましい。
上記のa2)昇温速度の範囲を選択する理由として、ポリイミド発泡体が徐々に炭化することが望ましく、分解物を急激に逸散すると、炭素分が留去してしまい、炭化収率が低くなることがあり好ましくなく、また構造の欠陥もできやすいために好ましくない。
上記のa3)最高温度の範囲を選択する理由として、炭素の緻密化が起きにくく、黒鉛化の進行に伴う細孔の閉塞が起こりにくいために、比表面積の大きい炭素質体を得やすくなるために好ましい。
本発明の炭素質体の製造方法において、
上記のa3)最高温度とa4)最高温度下での加熱時間とを調整すること、好ましくは上記のa2)昇温速度とa3)最高温度とa4)最高温度下での加熱時間とを適切に調整して炭素化処理を行うことにより、
b1)炭素質体の全元素比率100at%中で炭素元素の比率が75at%以上、好ましくは80at%以上であり、
b2)比表面積が好ましくは300m/g以上、より好ましくは350m/g以上、さらに好ましくは400m/g以上の炭素質体を得ることが出来る。
ポリイミド発泡体は、例えば特開昭61−195126号公報記載の方法、特表2000−515584号公報記載の方法、特開2002−012688号公報記載の方法など、公知のポリイミド発泡体の製造で得られるポリイミド発泡体を用いることが出来る。
ポリイミド発泡体は、
c1)ガラス転移温度(Tg)が300℃以上、好ましくは320℃以上、より好ましくは340℃以上、さらに好ましくは370℃以上のポリイミド、好ましくは非熱可塑性芳香族ポリイミドからなり、
c2)発泡倍率が20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上、さらに好ましくは50倍以上、特に好ましくは60倍以上であるポリイミド発泡体を用いることができる。発泡倍率が20倍以上では、好ましくは密度が67.5kg/m以下に相当することが好ましい。
ポリイミド発泡体の発泡倍率の上限は好ましくは1000倍、より好ましくは800倍、さらに好ましくは600倍、特に好ましくは400倍であることが好ましい。
ポリイミド発泡体の製造例の一例を示すと、
先ず芳香族テトラカルボン酸とその芳香族テトラカルボン酸の炭素数4以下の低級一級アルコールのモノエステル体及び/又はジエステル体との混合体(例えば、芳香族テトラカルボン酸の一部が炭素数4以下の低級一級アルコールによりモノエステル化及び/又はジエステル化されている混合物)とジアミンと、必要に応じて発泡均一化のための成分、例えばジアミノジシロキサン及びさらに必要ならばテトラアミノビフェニルのような分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物、例えば芳香族トリアミン化合物または芳香族テトラアミン化合物をポリイミド(高分子量のイミド樹脂を意味する)になるような組成比でエステル化溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級一級アルコール、好適にはメタノールあるいはエタノールと均一混合し、溶解する第一の工程からなる。この際に、各成分の濃度はジアミン類等の溶解度限界までは可能であるが、全量中の不揮発成分量は10%〜50%程度までであることが好ましい。
この混合物には、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどのイミド化触媒を加えてもよい。また、他の公知の添加剤、例えば、無機フィラ−、無機あるいは有機顔料などを加えてもよい。
次いで、上記混合物を蒸発乾固し、粉末化を行う工程からなる。実験室的にはエバポレータ、工業的にはスプレードライヤーなどで行う。この蒸発温度は100℃未満好ましくは80℃以下の状態が保たれることが好ましい。高温乾燥では発泡性が極端に低下する。乾燥の際、常圧でも、加圧下でも、あるいは減圧下でもよい。
次いで、適当なグリ−ン体を作成する工程からなる。例えば、室温での圧縮成形、スラリ−溶液として流延乾固、テフロン(登録商標)製などのマイクロ波に不活性な容器への充填を行う。この際に、蓋はしなくともよい(すなわち、完全に固める必要はない。)。概略均一な状態のグリ−ン体であれば、発泡時の均一化は達成できる。
次いで、好適にはマイクロ波加熱によって加熱する。この際に、一般的には2.45GHzで行う。これは日本の国内法(電波法)に基く。粉末重量当たりのマイクロ波出力を目安とすることが好ましい。これは実験を重ねることによって定義すべきである。例えば、100g/1kW程度で約1分で発泡を開始し、2〜3分で発泡は収束する。この状態では非常に脆い発泡体である。
上記成形体を熱風等の加熱により、200℃程度から徐々に昇温する(一応の目安として、100℃/10分程度の昇温速度)。最終はTg+αの温度にて5〜60分間、好適には10分間程度加熱する。
上記の各工程によって加熱発泡することによって、形状は不定形とはなるが、均一な発泡状態の弾力性がありかつ復元力に優れた発泡体が得られる。
ポリイミド発泡体を構成するポリイミドは、熱分解又は炭素化が開始する温度より低い融点を有する材料は好ましくなく、炭素化過程で急激な黒鉛化、緻密化が進行しない難黒鉛化性炭素を生成するポリイミドを好適に用いることができる。
ポリイミド発泡体を構成するポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分と、分子内に1個又は2個のベンゼン環を有する芳香族ジアミンを主成分として、さらに必要に応じて分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物及び/又はジアミノシロキサンとを含む芳香族ジアミン成分とから得ることが出来る。
芳香族テトラカルボン酸成分として、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸などのビフェニルテトラカルボン酸類、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などのナフタレンテトラカルボン酸類、2,2−ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの二無水物、炭素数4以下の低級一級アルコールのモノエステル体、炭素数4以下の低級一級アルコールのジエステル体などを用いることが出来る。これらは2以上組み合わせて用いることが出来る。
特に芳香族テトラカルボン酸成分として、芳香族テトラカルボン酸成分100モル%中、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分が50〜100モル%であることが好ましい。
芳香族テトラカルボン酸成分中のエステル化された割合が25〜50モル%であることが好ましい。
芳香族ジアミンは、分子内に1個又は2個のベンゼン環を有する芳香族ジアミンを主成分として用いることが、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上を達成するために好ましい。
ジアミンの具体例として、
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミンを挙げることが出来る。
分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物としては、1,3,5−トリアミノベンゼン、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルなどを挙げることが出来る。分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物は、芳香族ジアミン成分100モル%中、0〜29.9モル%含むことが好ましい。分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物は、高温での発泡の収縮防止、発泡強度(発泡中に割れにくい)増大のために、必須なものではないが芳香族ジアミン成分として含まれている方が好ましい。
ジアミノシロキサンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどを挙げることが出来る。ジアミノジシロキサンは界面活性剤的に作用し、発泡均一化のために芳香族ジアミン成分100モル%中、0.1〜10モル%の範囲、好ましくは0.2〜5モル%が好ましい。少量では発泡が均一化しづらく、多量ではTg低下および熱安定性の低下をまねく。ジアミノポリシロキサンでも発泡の均一性は達成されるが海島構造をとり、高温下では分解しやすく耐熱性が低下し好ましくない。
ポリイミド発泡体を構成するポリイミドは、
2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分、好ましくは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸とこのテトラカルボン酸のカルボン酸の一部が炭素数4以下の低級一級アルコールのモノエステル化及び/又はジエステル化された混合体を50〜100モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分、さらに好ましくは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分、好ましくは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸とこのテトラカルボン酸のカルボン酸の一部が炭素数4以下の低級一級アルコールのモノエステル化及び/又はジエステル化された混合体を50〜100モル%含みかつ芳香族テトラカルボン酸成分中のエステル化された割合が25〜50モル%含む芳香族テトラカルボン酸成分と、
分子内に1個又は2個のベンゼン環を有する芳香族ジアミン70〜99.9モル%、分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物0〜29.9モル%及びジアミノシロキサン0.1〜10モルとを含む又はからなる芳香族ジアミンとから得られるポリイミドである。
炭素質体の製造方法により得られる炭素質体は、比表面積が大きく、炭素質体又は炭素質体の粉砕物は電気二重層キャパシタ電極用炭素部材、水溶液系電気二重層キャパシタ電極用炭素部材若しくは吸着剤用として用いることが出来る。
炭素質体は、例えばミル、ボールミルなどの公知の粉砕方法を用いて、目的に適宜粒子径、平均粒子径、粒子形状などの形状を調整して粉砕して用いることが出来、電気二重層キャパシタ電極用炭素部材、水溶液系電気二重層キャパシタ電極用炭素部材若しくは吸着剤用としては平均粒子径が1〜100μm程度が好ましい。
本発明の炭素質体は、容易に粉砕でき、遊星ボールミルを用いて、アルミナ坩堝中にアルミナボールと水を入れ、10分間粉砕を行うことで、炭素質体の70%以上の質量が100メッシュのナイロンクロス(目開き190μm)篩を通過する粉体が得られ、容易に細かく粉砕できる。
以下、本発明を実施例に基き、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限される物ではない。
(評価方法、測定方法)
1)比表面積の測定:測定対象試料をめのう乳鉢で1,2分粉砕し粉末状にし、本測定用の試料とした。比表面積の測定はカンタクローム社製オートソーブ−1を用いて吸着等温線を測定し、BET法により算出した。
2)炭素質体中の炭素元素含有量の測定:
パーキンエルマー製元素分析装置PE2400シリーズIIのCHNモードを用いて算出した。測定対象試料をスズ箔で漏れないよう包装し、包装前後の重量を精密天秤で計量し、試料量とした。950℃燃焼管に、試料を導入し、燃焼させ、COに変換することでガス化成分中の炭素元素含有量を求めた。この値を、燃焼残渣の量で補正することで、資料中の炭素元素含有量を求めた。
3)発泡体発泡倍率の測定:
発泡体を直方体に切り出し、寸法から体積Vを、天秤により重量Wをそれぞれ算出し、ポリイミドの真密度Pを用いて、以下の式より発泡倍率Bを求めた。
ポリイミドの真密度Pは、厚みが約100μmの緻密なフィルムを作製し、その体積と重量を測定し、(重量)/(体積)により求めた。
Figure 2009274939
4)発泡体ガラス転移温度の測定:
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素雰囲気下で室温から400℃までの貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)、損失正接を測定し、ガラス転移温度を求めた。
5)発泡体の熱分解又は炭素化が開始する温度の測定:
熱量計測定装置(TGA)により窒素雰囲気下で10℃/分の加熱速度で重量減少を測定し、重量減少が5%に達する温度を熱分解温度とした。
6)発泡体の融点の測定:
示差走査熱量計(DSC)により、10℃/分の加熱速度、窒素雰囲気の条件で測定を行い求めた。
(参考例1)
[ポリイミド発泡体の作製]
500mlのナス型フラスコに2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)47.1g(160ミリモル)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)12.9g(40ミリモル)、メタノール75g、触媒として1,2−ジメチルイミダゾール2.5gを仕込み、90℃のオイルバス中で還流させながら60分間加熱攪拌を行い均一溶液を作製した。次に、この反応液を60℃まで冷却した後に、p−フェニレンジアミン(PPD)21.4g(198ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(DADSi)0.5g(2ミリモル)、メタノール77.1gを加え、均一溶液とした。この溶液をエバポレーターで濃縮し、更に、60℃で減圧乾燥を行い固形物を得た。更に、この固形物を乳鉢を用いて粉砕して原料粉末を得た。
次に、原料粉末を5mmのスペーサーを用いて圧縮成形機(S−37.5:株式会社神藤金属工業所製)により、室温で圧縮成形した。次に、この成形体を電子レンジ(RE−4100:シャープ株式会社製)を用い、1100W、3分間のマイクロ波加熱を行い、発泡体を得た。次に、180℃に設定した加熱オーブンで5分間加熱後、330℃まで30分をかけて昇温した後330℃で10分間加熱した。更に、300℃に設定した電気炉(FM48:ヤマト科学株式会社製)中に試料を移し5分間加熱後、15分間で450℃まで昇温し10分間加熱し、その後自然冷却を行うことでポリイミド発泡体を得た。
得られた発泡体は、発泡倍率64倍、見かけ密度21.2kg/m、ガラス転移温度(Tg)373℃であった。
発泡体の熱分解が開始する温度は、560℃であり、明確な融点は確認されなかった。
発泡体の断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、気泡を形成する壁の厚みが0.5〜5μm程度であり、気泡のほとんどは独立気泡であることを確認した。
(参考例2)
[ポリイミドフィルムAの作製]
攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、精製した無水のパラフェニレンジアミン(PPD)を無水のN−メチル−2−ピロリドンに加えて溶解した。ついで、精製した無水の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)の略等モル量を攪拌しながら少量ずつ添加し、充分反応させることでポリアミック酸の重量比が9.0%であるポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液を、鏡面研磨したステンレス板上に厚みが均一になるように流延し120℃で熱処理を行い、ゲル上の膜を得た。ついで、膜の周囲をピンテンターに固定した状態で、大気中にて450℃、10分間の熱処理を行うことでポリイミドフィルムAを得た。
(参考例3)
[ポリイミドフィルムBの作製]
精製した無水のパラフェニレンジアミン(PPD)を4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(DADE)に置きかえる以外は参考例2と同様の操作を行ない、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液を、鏡面研磨したステンレス板上に厚みが均一になるように流延し120℃で熱処理を行い、ゲル上の膜を得た。ついで、膜の周囲をピンテンターに固定した状態で、大気中にて360℃、10分間の熱処理を行うことでポリイミドフィルムBを得た。
(参考例4)
[ポリイミド多孔質膜Aの作製]
参考例2で得られたポリアミック酸溶液を、研磨したステンレス板上に厚みが均一になるように流延し、溶媒置換速度調整材として透気度550秒/100mlのポリオレフィン製微多孔膜(宇部興産社製、UP3025)でシワの生じないように表面を覆った。該積層物をメタノ−ル中に7分間浸漬し、ポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行った。この多孔質フィルムを水中に15分間浸漬した後、ピンテンターに固定した状態で、大気中にて420℃、10分間熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜Aを得た。
(参考例5)
[ポリイミド多孔質膜Bの作製]
参考例3で得られたポリアミック酸溶液を、研磨したステンレス板上に厚みが均一になるように流延し、溶媒置換速度調整材として透気度550秒/100mlのポリオレフィン製微多孔膜(宇部興産社製、UP3025)でシワの生じないように表面を覆った。該積層物をメタノ−ル中に7分間浸漬し、ポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行った。この多孔質フィルムを水中に15分間浸漬した後、ピンテンターに固定した状態で、大気中にて320℃、10分間熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜Bを得た。
(実施例1〜17)
参考例1で作製した発泡体約1.5gをアルミナるつぼ(内容積9×9×4.5cm)に入れた。次に、11cm×11cmの大きさのカーボンペーパー(東レ社製:TGP−H−060)をるつぼに被せ置き、その上にアルミナ板を置いた。このとき、アルミナ板はるつぼの四隅に隙間が生じるようにセットした。この坩堝を東洋製作所製KA−1702Sの電気炉(200W×200D×150Hmm:6L)の中央に静置し、空気を除去するため、ロータリーポンプで電気炉内の真空排気を行い、20Pa以下まで減圧させた。次に、純度99.9%の窒素を炉内に導入することで常圧にし、加熱を開始した。加熱運転は、窒素を流量1L/分で導入した。表1に示す昇温速度で表1に示す最高温度まで昇温し、最高温度で1時間加熱して炭素化した。その後、自然冷却して温度が室温付近まで下がったところで、炭素質体を取り出し、電子天秤にて炭化収量及び収率を算出した。
得られた炭素質体の比表面積を測定し、結果を表1に示す。
また実施例1〜17の炭素質体中に含まれる炭素元素量を測定した。実施例1〜17の炭素質体全て、炭素元素量は80at%以上であった。
(比較例1〜7)
発泡体の代わりに参考例2〜5で作製したポリイミドフィルム又は多孔質膜を試料として用い、表2に示す最高温度及び昇温速度で行う以外は、実施例1と同様の操作で炭素質体を得た。得られた炭素質体の比表面積を測定し、結果を表2に示す。
(実施例18)
(粉砕した粉体の炭素質体の製造)
遊星ボールミルを用いて、アルミナ坩堝中に、実施例1で得た炭素質体とアルミナボールと水を入れ、10分間粉砕を行うことで炭素質粉末を得た。得られた粉末は、100メッシュのナイロンクロス(目開き190μm)篩により振り分けると、重量で70%以上が篩を通過し、容易に細かく粉砕できた。
得られた炭素質粉末は、平均粒子径が1〜100μmであった。
(実施例19〜34)
(粉砕した粉体の炭素質体の製造)
実施例2〜17で得た炭素質体を用いる以外は、実施例18と同様にして、10分間粉砕を行うことで粒子状炭素粉末を得た。得られた16種類の粉末全ては、100メッシュのナイロンクロス(目開き190μm)篩により振り分けると、重量で70%以上が篩を通過し、容易に細かく粉砕できた。得られた炭素質粉末全て、平均粒子径が1〜100μmであった。
(比較例8〜14)
(粉砕した炭素質体の製造)
比較例1〜7で得た炭素質体を、実施例19と同様の操作で粉砕した。得られた全ての粉末は、100メッシュのナイロンクロス(目開き190μm)篩により振り分けると重量で70%未満しか篩を通過しなかった。比較例1〜7で得た炭素質体は容易に細かく粉砕できなかった。
Figure 2009274939
Figure 2009274939

Claims (7)

  1. ガラス転移温度が300℃以上のポリイミドからなる、発泡倍率が20倍以上であるポリイミド発泡体を、嫌気性雰囲気下、1〜50℃/分の昇温速度で、最高温度が600〜2000℃の範囲で加熱して炭素化させることを特徴とする炭素質体の製造方法。
  2. 炭素質体は、比表面積が300m/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭素質体の製造方法。
  3. ポリイミド発泡体は、炭素数4以下の低級一級アルコ−ルによって一部モノエステル化および/またはジエステル化された芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとを、芳香族テトラカルボン酸成分に対してアミノ基総量が略2:1となる割合で分子分散した固体状体のモノマ−塩であるポリイミド前駆体を加熱して発泡させて得られたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炭素質体の製造方法。
  4. ポリイミド発泡体は、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を50モル%以上含む芳香族カルボン酸成分と、ジアミン成分とから得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素質体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの炭素質体の製造方法より得られる炭素質体。
  6. 請求項5の炭素質体を粉砕して得られる粒子状炭素質体。
  7. 粒子状炭素質体が、電気二重層キャパシタ電極用炭素部材、水溶液系電気二重層キャパシタ電極用炭素部材若しくは吸着剤用であることを特徴とする請求項6に記載の粒子状炭素質体。
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