JP2009273235A - 振動アクチュエータ、光学機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動性能の良好な振動アクチュエータ及びこれを備える光学機器を提供することである。
【解決手段】振動アクチュエータ(10,20)は、振動を発生する振動子(13,23)と、振動子(13,23)と加圧接触され、その振動により、振動子(13,23)に対して相対移動する相対移動部材(15,25)と、振動子(13,23)の相対移動部材(15,25)に対する接触面と相対移動部材(15,25)の振動子(13,23)に対する接触面との少なくとも一方に設けられたカーボンナノチューブを含有する膜(18,31)とを備えるものとした。
【選択図】図3

Description

本発明は、振動アクチュエータ及びこれを備える光学機器に関するものである。
従来、振動アクチュエータとして、振動子と相対移動部材とが加圧接触され、振動子に発生した超音波振動の振動波が相対移動部材に伝達されることにより、相対移動部材が駆動される振動波モータが知られている。
このような振動波モータでは、振動子は、振動を効率よく相対移動部材に伝達する必要がある。このため、振動子には、高弾性材料、例えば、ステンレス系の材料等が用いられている。
振動子と相対移動部材とが接触する接触面に対しては、振動波を効率よく相対移動部材に伝えるために、所定の摩擦係数を有する摩擦材や低摩耗で安定駆動が可能な摩擦材等が選択され、用いられている。
例えば、特許文献1には、ポリイミド粉末を添加したエポキシ樹脂の溶液を、移動体の振動体との接触部に塗布して摩擦材を形成した振動波モータが開示されている。
特開平7−194152号公報
しかし、特許文献1のような摩擦材では、強度が弱く、耐久性に欠けるという問題があった。そのため、振動波モータとして、長時間の安定した駆動が行えない等、所望する駆動性能が得られないという問題があった。
本発明の課題は、駆動性能の良好な振動アクチュエータ及びこれを備える光学機器を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
請求項1の発明は、振動を発生する振動子(13,23)と、前記振動子と加圧接触され、前記振動により、前記振動子に対して相対移動する相対移動部材(15,25)と、前記振動子の前記相対移動部材に対する接触面と前記相対移動部材の前記振動子に対する接触面との少なくとも一方に設けられたカーボンナノチューブを含有する膜(18,31)と、を備える振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)は、前記振動子(13,23)と前記相対移動部材(15,25)との少なくとも一方の接触面に、直接形成されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)は、厚さが3〜100μmであること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記カーボンナノチューブは、前記膜(18,31)内において、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が、0〜0.5となるように、分散していること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンの少なくとも1つであること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)は、熱硬化性樹脂を含むこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)は、熱硬化性樹脂を含み、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂の少なくとも1つであること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)はフッ素樹脂を含むこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、前記膜(18,31)は、熱硬化性樹脂及びフッ素樹脂を含み、前記フッ素樹脂は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対し、5〜35重量部配合されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,20)である。
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備える光学機器(3)である。
なお、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応付けて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
本発明によれば、駆動性能の良好な振動アクチュエータ及びこれを備える光学機器を提供することができるという効果を奏することができる。
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明による振動アクチュエータの実施形態として、超音波領域の振動を利用する超音波モータを例に挙げて説明する。
なお、図1を含め以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のカメラ1を示す図である。
本実施形態のカメラ1は、撮像素子6を有するカメラボディ2と、レンズ鏡筒3とを備える。レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態のカメラ1は、レンズ鏡筒3が交換レンズである例を示すが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒であってもよい。
レンズ鏡筒3は、レンズ4、カム筒5、超音波モータ10等を備える。本実施形態では、超音波モータ10は、略円環形状であり、その円環中心軸方向が光軸方向(図1中の矢印A方向)と略一致するようにレンズ鏡筒3内に配置されている。この超音波モータ10は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ4を駆動する駆動源として用いられている。超音波モータ10から得られた駆動力は、カム筒5に伝えられる。レンズ4のレンズ枠4aは、カム筒5とカム係合しており、超音波モータ10の駆動力によってカム筒5が光軸回りに回転すると、レンズ4は、光軸方向へ移動して焦点調節が行なわれる。
図1において、レンズ鏡筒3内に設けられた不図示のレンズ群(レンズ4を含む)によって、撮像素子6の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子6によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
図2は、本実施形態の超音波モータ10を示す図である。
本実施形態の超音波モータ10は、圧電体11及び弾性体12を備える振動子13と、移動体15と、フレキシブルプリント基板14と、振動吸収材16と、支持体17等とを備えている。
圧電体11は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機能を有する。本実施形態では、圧電体11として圧電素子を用いているが、電歪素子を用いてもよい。この圧電体11は、フェルト等の振動吸収材16を介して、レンズ鏡筒3に設けられた支持体17に固定されている。
圧電体11は、不図示の電極部が形成されている。圧電体11は、この電極部と電気的に接続されたフレキシブルプリント基板14から供給される駆動信号により伸縮し、弾性体12を励振する。
弾性体12は、圧電体11の励振により進行波を発生する部材である。弾性体12は、高弾性率を有するステンレス鋼、インバー鋼等の鉄合金により形成される。本実施形態の弾性体12は、SUS303により形成されている。
弾性体12は、略円環形状の部材であり、一方の面には導電性を有する接着剤等により圧電体11が接着され、他方の面には複数の溝12bを切って形成された櫛歯部12aが設けられている。
櫛歯部12aの先端面は、後述する移動体15と加圧接触する接触面であり、この面に発生する進行性振動波によって移動体15が回転駆動される。この櫛歯部12aの先端面には、熱硬化性樹脂により形成された樹脂膜18(図3参照)が形成されている。この樹脂膜18の詳細については後述する。
移動体15は、アルミニウム等の軽金属によって形成された略円環形状の部材である。本実施形態の移動体15は、アルミニウム合金により形成されている。移動体15は、振動子13(弾性体12)と加圧接触し、進行波により摩擦駆動される。この移動体15の振動子13に対する接触面には、アルマイト皮膜層19(図3参照)が形成されている。
フレキシブルプリント基板14は、圧電体11の所定の電極部と電気的に接続されており、圧電体11に駆動信号を供給する部材である。
また、フレキシブルプリント基板14には、カメラ1の制御を行う制御装置101が接続されている。制御装置101には、温度センサ102が接続されている。この制御装置101は、温度センサ102の検知結果に応じて、超音波モータ10の回転数が一定となるように、圧電体11に供給する駆動信号の周波数を調整している。
図3は、本実施形態の超音波モータ10の弾性体12と移動体15との接触部分の拡大図である。なお、図3では、超音波モータ10の周方向の断面の一部を拡大して示している。
上述のように、弾性体12の移動体15との接触面(櫛歯部12aの先端面)には、樹脂膜18が設けられている。移動体15の弾性体12との接触面には、アルマイト皮膜層19が設けられている。従って、振動子13と移動体15とが接触する面は、樹脂膜18とアルマイト皮膜層19とが接触する形態となっている。
本実施形態の樹脂膜18は、カーボンナノチューブと、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)と、硬化剤としてフェノール樹脂とを配合したエポキシ樹脂を用いて形成されている。また、樹脂膜18の表面の高さ粗さRz(JIS B0601−2001)は、0.5μmであり、膜厚は、30μmである。
本実施形態では、カーボンナノチューブとして、チューブ径が30nm、長さが5μmである単層カーボンナノチューブを用いているが、チューブ径0.5〜200nm、長さが1〜30μmの範囲内のものであれば、適宜選択して用いてよい。
カーボンナノチューブの配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対してカーボンナノチューブ5重量部(すなわち、エポキシ樹脂の重量に対して5重量%)である。
本実施形態のカーボンナノチューブは、樹脂膜18内において、カーボンナノチューブの粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が0.2となるように分散している。
また、本実施形態のPTFEの配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して20重量部(すなわち、エポキシ樹脂の重量に対して20重量%)である。
樹脂膜18は、以下のような工程を経て形成される。
図4は、本実施形態の樹脂膜18の製造工程を示す図である。図4では、弾性体12の周方向における断面を拡大して示している。
まず、弾性体12の櫛歯部12aの先端面に、スプレー等によりプライマーを塗布して乾燥させる(図4(a)参照)。次に、エポキシ樹脂に、PTFE及びカーボンナノチューブと、硬化剤であるフェノール樹脂と、界面活性剤やシンナー等の溶剤とを混合した溶液を作る。このとき、カーボンナノチューブが溶液中に略均一に分散するように、アニオン系界面活性剤(SDBS:sodium dodecylbenzene sulfonate:CH(CH(C)SON)等を用いて表面処理を行ったカーボンナノチューブを用いたり、超音波による分散を行ったり等してもよい。
そして、この溶液を、プライマーを塗布した弾性体12の櫛歯部12aの先端面に塗布し(図4(b)参照)、185度程度の高温下に60分間放置して、乾燥及び硬化させる。硬化後、その塗膜の表面をグリーンカーボランダム等を用いて研磨して平面性を向上させることにより(図4(c),(d)参照)、樹脂膜18が形成される。樹脂膜18が形成された弾性体12に圧電体11が接合され、振動子13が形成される(図4(e)参照)。
一方、移動体15は、アルミニウム合金(A6061)によって形成されており、その表面に陽極酸化処理を施すことにより、移動体15の表面にアルマイト皮膜層19が形成される。
上述のように形成された振動子13と移動体15とを、樹脂膜18とアルマイト皮膜層19とが接触するように配置し、各部材を組み立てる。これらの工程を経て、超音波モータ10が作製される(図4(f)参照)。
振動子と移動体との接触面が超音波モータの駆動性能に与える影響は大きいため、振動子と移動体との接触面に対する様々な工夫をしてもよい。例えば、一方の接触面にNi(ニッケル)層を設け、他方の面アルマイト層を設けることが挙げられる。
また、振動子と移動体との両方に表面処理等を行ってもよく、弾性体と圧電体との接着面にも表面処理を行ってもよい。
さらに、振動子又は移動体のいずれかの接触面に、プラスチック等の樹脂の成形加工品等を設けることにより、駆動時の異音の低減や耐磨耗性等を改善してもよい。
ここで、プラスチック等の樹脂を振動子や移動体の接触面に用いた場合には、弾性率や摩擦係数が低くなり、保持トルクや高負荷時の駆動性能が低下する場合がある。そこで、振動子と移動体との接触面の摩擦係数を上げるために、一般的な炭素繊維(微細な黒鉛結晶構造を有する繊維状の炭素物質)等を樹脂に配合する場合がある。
しかし、一般的な炭素繊維を配合した樹脂を成形加工する場合には、寸法精度を上げるために切削加工を行う必要があり、切削工具の刃に著しい損傷が生じる。そのため、切削加工に長時間を要する上に、所望する寸法精度が得られないおそれがある。
さらに、樹脂を主剤とする塗料を振動子や移動体の接触面に塗布する等の方法もある。しかし、摩擦係数を上げるために一般的な炭素繊維を塗料に配合すると、炭素繊維の寸法(径約10μm、長さ約40μm)が、所望する塗膜の膜厚(約100μm)に対して大きすぎるために、膜厚の制御や、均一に分散しないおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、PTFEとカーボンナノチューブとを配合したエポキシ樹脂を、振動子13の移動体15に対する接触面に塗布することにより樹脂膜18を形成するものとした。
カーボンナノチューブが樹脂膜18に含まれることにより、樹脂膜18の強度や耐久性の向上等の効果が期待できる。また、摩擦係数を向上し、保持取トルクや高負荷時の駆動性能向上等が期待できる。
また、PTFEが樹脂膜18に含まれることにより、樹脂膜18とアルマイト皮膜層19との摩擦係数を低下させ、超音波モータの低速での起動性の向上が期待できる。
さらに、樹脂膜18は、硬化剤としてフェノール樹脂を配合したエポキシ樹脂を主剤として用いているので、硬化剤として他の樹脂を配合した場合に比べて、樹脂膜としての硬さ、弾性体12に対する密着性や剥離強度、耐磨耗性等が優れている。従って、樹脂膜18の強度や耐久性が向上し、磨耗粉を低減して異音の発生を低減できる。
また、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂は、硬化剤として他の樹脂を配合した場合に比べて、耐熱性、耐薬品性、耐久性等が優れているので、超音波モータ10の駆動時に発生する摩擦熱による樹脂膜18の変質や、アルマイト皮膜層19に含まれる微量の硫酸による樹脂膜18の化学的な変質によって生じる樹脂膜18の劣化等を防止できる。
さらに、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂は、他の硬化剤を配合した場合に比べて、疎水性が優れているので、空気中の水分を吸収することによる樹脂膜18の寸法変化や振動子13と移動体15との固着の発生等も防止できる。
ここで、樹脂膜18を形成するエポキシ樹脂に配合されたPTFE及びカーボンナノチューブの量や樹脂膜18の膜厚等が、超音波モータの駆動性能に与える影響を調べた。
以下の明細書中では、特に断りが無い場合、エポキシ樹脂100重量部に対してカーボンナノチューブ等が例えば10重量部配合されている場合、単に10重量部と記載する。また、特に断りが無い場合、樹脂膜は、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂を主剤として用いて形成されているものとする。
Figure 2009273235
表1は、硬化剤としてフェノール樹脂を配合したエポキシ樹脂に配合されるカーボンナノチューブの添加量と引っ張り強度との関係を示す表である。
PTFEの配合量は一定(10重量部)であるが、カーボンナノチューブの配合量が異なる(0重量部、1重量部、5重量部、10重量部)エポキシ樹脂(硬化剤はフェノール樹脂を使用)を用いて作製されたフィルムを用意し、各フィルムの引っ張り強度を測定した。引っ張り強度は、縦100mm、横20mm、厚さ100μmの各フィルムを用いて測定した。
表1では、カーボンナノチューブを含まないエポキシ樹脂を用いて作製されたフィルムの引っ張り強度を規定値(1.0)とし、カーボンナノチューブを含むエポキシ樹脂を用いて作製された各フィルムの引っ張り強度を規定値に対する比で示している。
表1に示すように、カーボンナノチューブを含むエポキシ樹脂製のフィルムは、カーボンナノチューブの配合量に依らず、カーボンナノチューブを含まないフィルムに比べて、引っ張り強度が著しく向上した。
よって、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜18を形成することにより、超音波モータ10の接触面(樹脂膜18の表面)の強度を向上させることができ、磨耗粉の低減や耐久性の向上等の効果を得ることができる。
Figure 2009273235
表2は、カーボンナノチューブの配合量が、入力電流値変化率に与える影響を示す表である。本測定では、膜厚(20μm)及びPTFEの配合量は一定(10重量部)であるが、カーボンナノチューブの配合量が異なる(0重量部、1重量部、5重量部、10重量部)樹脂膜を有する超音波モータをそれぞれ用意し、各超音波モータを同一の条件下で50000回転させ、回転前と50000回転後の入力電流値の変化率を調べた。50000回転時の負荷トルクは、19.6N・mm(200gf・cm)であり、回転数は60rpmである。
ここで、入力電流値とは、負荷トルクがかかった状態で、超音波モータが回転し始めるときの電流値である。本測定での入力電流値変化率とは、50000回転する前と回転した後での入力電流値が変化した割合である。通常、長時間の駆動等によって、振動子と移動体との接触面が荒れるため、長時間駆動後の入力電流値の変化率は大きくなる。また、入力電流値変化率は、負荷トルクが大きいほど、大きくなる傾向を有する。
従って、入力電流値変化率が小さいほど、超音波モータの耐久性が良好であることを示している。
表2に示すように、カーボンナノチューブを含有しない樹脂膜を有する超音波モータでは、入力電流値変化率が40%であった。これに対して、カーボンナノチューブが配合された樹脂膜を有する超音波モータでは、カーボンナノチューブの配合量に依らず、入力電流値変化率が5〜7%程度であり、カーボンナノチューブを含有しない樹脂膜を有する超音波モータに比べて小さかった。
よって、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜を備えることにより、超音波モータの耐久性を向上できる。
Figure 2009273235
表3は、樹脂膜のカーボンナノチューブの含有量と、最大負荷トルクとの関係を示す表である。
本測定では、膜厚(20μm)及びPTFEの配合量は一定(10重量部)であるが、カーボンナノチューブの配合量が異なる(0重量部、1重量部、5重量部、10重量部)樹脂膜を有する超音波モータをそれぞれ用意し、その最大負荷トルクを調べた。
ここで、最大負荷トルクとは、所定の回転数で超音波モータを駆動しているときにかけることができる負荷トルクの最大値である。この最大負荷トルクが大きいということは、超音波モータとしての出力が大きいということを示している。本測定では、回転数を60rpmとした。
表3では、カーボンナノチューブを含有しない樹脂膜を備える超音波モータの負荷トルクを規定値(1.0)とし、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜を備える各超音波モータの最大負荷トルクを、規定値に対する比で示している。
表3に示すように、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜を備える超音波モータは、いずれも、最大負荷トルクが規定値に対して1.4〜1.7倍であり、カーボンナノチューブを含有しない樹脂膜を有する超音波モータと比べて、最大負荷トルクが向上した。
よって、カーボンナノチューブを含有した樹脂膜を備えることにより、超音波モータの最大負荷トルクが大きくなり、出力を増大することができる。
Figure 2009273235
表4は、樹脂膜の成膜時の膜厚と成膜不良率とを示す表である。
成膜時の膜厚とは、塗布されて硬化した状態、すなわち、研磨等を行う前の状態での膜厚である。
ここでは、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂に対してPTFEを10重量部、カーボンナノチューブを5重量部配合した溶液を用いて、異なる膜厚の塗膜を複数形成し、その成膜不良率を調べた。
表4に示す成膜不良率とは、成膜時の樹脂膜の表面状態を目視で判定し、不良であった割合を評価したものである。成膜時の樹脂膜の状態としては、表面が滑らかであり、ブツ(気泡等によって表面に生じるによる凹み)等が生じないことが好ましい。そこで、まず、ブツが表面に生じているか否かを目視で判断し、ブツ等が生じていないものを成膜状態が良好であるとし、ブツ等が生じたものを不良であるとして評価する。そして、成膜状態が不良であるものの割合が全体の1.0%以上である場合には不可として×で示し、1.0%未満である場合には、良好であるとして○で示している。
表4に示すように、成膜後の厚さが100μm以下である場合には、ブツが生じることなく、成膜状態は良好であり、成膜不良率が小さく、良好であった。
これに対して、成膜後の厚さが100μmを超えるような樹脂膜は、ブツが発生し、成膜状態は不良となるものが多く、成膜不良率が上昇し、不可となった。ブツが発生していると、樹脂膜内部にすが立つ、すなわち、気泡による微小な空間等が発生しているため、たとえ研磨等を行ったとしても、ブツが消えなかったり、新たなブツが発生したり、研磨によってかかる圧力によって樹脂膜が破損しやすくなる等の問題が生じる。そのため、成膜不良率が大きいと、樹脂膜の品質が個体毎にばらつき、安定した品質の製品を提供することが困難であり、生産コストも増大する。また、樹脂膜を厚くしすぎると、樹脂膜が乾燥しにくくなり、超音波モータの短時間での製造の妨げとなる。
よって、表4に示すように、樹脂膜は、成膜後の厚さが100μm以下であることが好ましい。
また、樹脂膜は、表面の平面性を向上させる等の目的で、塗布によって成膜した後に、表面を研磨する。そのため、成膜時の樹脂膜が薄すぎると、研磨によって弾性体12の地金が露出したり、研磨作業を慎重に行う必要が生じる等して製造が困難になったりする。そこで、樹脂膜は、成膜時の研磨作業の前における厚さが5μm以上あることが好ましい。
研磨後の樹脂膜の厚さは、3μm程度あれば、所望する耐久性等の効果が得られる。従って、研磨後の樹脂膜の厚さ、すなわち、超音波モータの完成品における樹脂膜の膜厚は、3〜100μmの範囲内であることが好ましい。
Figure 2009273235
表5は、PTFEの配合量と超音波モータの低温環境下での最低回転数との関係を示す表である。
ここでは、膜厚(20μm)及びカーボンナノチューブの配合量は一定である(5重量部)が、PTFEの配合量が異なる(0重量部、5重量部、10重量部、20重量部、30重量部、35重量部、40重量部)超音波モータをそれぞれ用意し、温度−20度、負荷トルク19.6N・mm(200gf・cm)で駆動した場合の最低回転数を調べた。
最低回転数とは、超音波モータを駆動可能な最低の回転数であり、この値が小さいほど、低速での駆動が可能であり、起動特性が良好であるといえる。一般的に、超音波モータの起動特性は、低温になるほど悪くなる傾向を示すため、本測定では、温度−20度で測定した。
表5に示すように、PTFEを含有しない樹脂膜を備える超音波モータでは、最低回転数が15rpmであった。一方、PTFEを含有する樹脂膜を備える超音波モータでは、最低回転数が2〜6rpmとなり、樹脂膜がPTFEを含有していないものに比べて、最低回転数が小さくなった。また、PTFEの配合量が増加するにつれて、最低回転数がより小さくなった。
よって、PTFEを配合した樹脂膜を備えることにより、超音波モータの起動特性を向上できる。
Figure 2009273235
表6は、樹脂膜中のPTFEの含有量と最大負荷トルクとの関係を示す図である。
ここでは、膜厚(20μm)及びカーボンナノチューブの配合量は一定である(5重量部)が、PTFEの配合量が異なる(0重量部、5重量部、10重量部、20重量部、30重量部、35重量部、40重量部)超音波モータをそれぞれ用意し、回転数を60rpmでの最大負荷トルクを測定した。
表6では、PTFEが配合されていない樹脂膜を備える超音波モータの最大負荷トルクを規定値(1.0)とし、PTFEが配合された樹脂膜を備える各超音波モータの最大負荷トルクを規定値に対する比で示している。
表6に示すように、PTFEの添加量が増加するにつれて、最大負荷トルクが減少していた。超音波モータの駆動性能としては、最大負荷トルクが規定値の0.7倍以上(すなわち、表6に示す数値が0.7以上)であることが好ましい。従って、所望する最大負荷トルクを得るためには、PTFEの配合量を0〜35重量部とすることが好ましいことがわかった。
また、表5及び表6に示す結果から、超音波モータとして好ましい最大負荷トルクと起動特性の向上とを両立するために、PTFEは、エポキシ樹脂100重量部に対して5〜35重量部配合されることが好ましいことがわかった。
Figure 2009273235
表7は、所定の負荷トルク及び回転数で一定時間回転させた場合の温度上昇を示す表である。
本測定では、膜厚(20μm)及びPTFEの配合量は一定(10重量部)であるが、カーボンナノチューブの配合量が異なる(0重量部、1重量部、5重量部、10重量部)樹脂膜が形成された超音波モータをそれぞれ用意し、負荷トルク19.6N・mm(200gf・cm)、回転数60rpmで、1時間駆動した場合の、振動子と移動体との摩擦接触面近傍での温度上昇を測定した。
表7では、カーボンナノチューブを含有していない超音波モータでの温度上昇の大きさを規定値(1.0)とし、その温度上昇の大きさに対して、カーボンナノチューブを含有する各超音波モータの温度上昇の大きさを比で示している。
超音波モータの駆動時には、振動子及び移動体の接触面が摩擦摺動されているため、温度が上昇しやすい。この接触面の温度上昇が大きいと、超音波モータの駆動が不安定になりやすく、消費電力も増大する等の不具合が生じやすい。また、振動子や移動体の少なくとも一方の接触面が樹脂を用いて形成されている場合には、このような温度上昇によって接触面が荒れる等するため、更なる超音波モータの性能の低下が生じやすい。
表7に示すように、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜を備える超音波モータは、カーボンナノチューブの配合量に依らず、カーボンナノチューブを含有しない樹脂膜を備える超音波モータに比べて温度上昇が小さいことがわかった。
よって、カーボンナノチューブを含有する樹脂膜を備えることにより、超音波モータの駆動時の振動子と移動体との接触面の温度上昇を抑え、安定した駆動や駆動効率の向上等を得ることができる。
Figure 2009273235
表8は、カーボンナノチューブの樹脂内における分散度と超音波モータの回転ムラとの関係を示す表である。
この分散度とは、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値である。粒子間距離の平均偏差は、カーボンナノチューブが均一に分散している場合には、その値が0となる。従って、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値、すなわち分散度が小さい方が、より均一に分散しているといえる。
ここでは、膜厚(20μm)及びPTFEの配合量は一定(10重量部)であるが、樹脂膜内におけるカーボンナノチューブの分散度がそれぞれ、0.3、0.5、0.6である超音波モータを用意し、それぞれの回転ムラを評価した。
超音波モータの回転ムラは、駆動が不安定になったり、消費電力が増大して駆動効率が低下したりする原因となる。従って、回転ムラが小さいことが、安定した駆動や行動効率の向上の観点から好ましい。
回転ムラの評価方法は、定格回転数で超音波モータを駆動した場合に、実際に超音波モータが回転した回転数の定格回転数に対する振れ幅を用いて評価した。表8では、カーボンナノチューブの分散度が0.5である樹脂膜を備えた超音波モータの回転数の振れ幅を規定値(1.0)とし、各超音波モータの回転数の振れ幅を規定値に対する比で、回転ムラの大きさを示している。表8に示す数値が小さい方が、回転ムラが少ないことを意味する。
表8に示すように、分散度が0.6を超える超音波モータでは、回転ムラが規定値の1.5倍となった。これに対して、分散度が0.5以下の超音波モータでは、分散度の値が小さくなるにつれて、超音波モータの回転ムラが低減していた。
よって、カーボンナノチューブは、樹脂膜内において、その粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が0〜0.5の範囲内であれば、安定した駆動を行え、駆動効率を向上できる。
表1〜表8に示した結果より、樹脂膜は、カーボンナノチューブを含有すること、カーボンナノチューブの樹脂膜内における分散度(粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割)が0〜0.5であること、PTFEはエポキシ樹脂100重量部に対して5〜35重量部配合されていること、成膜時の膜厚が5〜100μmであって研磨等を行った後の実装時の膜厚が3〜100μmであることが、良好な駆動性能を得る観点から好ましいとことがわかった。
本実施形態の超音波モータ10の樹脂膜18は、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂100重量部に、単層カーボンナノチューブを5重量部、PTFEを10重量部配合したものを用いて形成されており、その厚さは30μmであり、カーボンナノチューブの樹脂膜内における分散度が0.2である。よって、本実施形態は、上述した良好な駆動特性を得るための条件を満たしているので、良好な駆動性能を発揮できる。
上述の結果より、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)カーボンナノチューブを含有する樹脂膜とすることにより、引っ張り強度が向上する。これにより、摩擦摺動に対する樹脂膜の強度が向上し、耐久性も向上するので、接触面の摩擦摺動に対する強度が向上し、磨耗量を低減することができる。従って、磨耗粉の発生を抑えることができ、従って、異音の発生を低減できる。
(2)カーボンナノチューブを含有する樹脂膜とすることにより、最大負荷トルクが向上し、大きな出力が得られる。
(3)カーボンナノチューブを含有する樹脂膜とすることにより、50000回転後の入力電流値変化率が低減し、また、温度上昇率も低下する。これにより、耐久性が向上し、長時間にわたって安定した駆動を行うことができる。また、高負荷であっても、安定した駆動を行うことができる。
(4)PTFEの配合量が5〜35重量部である樹脂膜とすることにより、超音波モータとして適当な最大負荷トルクを維持しながら、低速での起動特性が良好となる。また、低温環境下においても優れた起動特性を得ることができる。
(5)カーボンナノチューブは、樹脂膜18内において、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が0〜0.5となっており、略均一に分散しているので、超音波モータの回転ムラを抑えることができ、安定した駆動及び駆動効率の向上を得ることができる。
(6)樹脂膜18は、研磨後の厚さが3〜100μm、成膜後の膜厚が5〜100μmであるので、個々の樹脂膜18の品質が安定し、製造時間を短縮することができる。
(7)樹脂膜18は、エポキシ樹脂を主剤とする溶液を、弾性体12の接触面に直接塗布することにより形成できる。そのため、例えば、めっき処理の際に行うような複雑なマスキング処理工程が必要ない。また、樹脂成形品を接着するための接着工程も不要である。さらに、表面処理液等の廃液処分等も不要である。よって、作業工程及び作業時間の短縮や、生産コストの低減等を図ることができる。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の超音波モータ20を示す図である。
第2実施形態の超音波モータ20は、第1実施形態の超音波モータ10と同様のカメラ1のレンズ鏡筒3に設けられ、フォーカス動作を行なう際のレンズ4を駆動する駆動源として用いられている。この超音波モータ20は、不図示のギアを介して駆動力を不図示のカム筒に伝え、このカム筒に保持されるレンズ4を駆動する形態となっている点が第1実施形態とは異なる。
第2実施形態の超音波モータ20は、振動子23、移動体25、出力軸28、加圧部29等を備えている。
振動子23は、弾性体22と、弾性体22に接合された圧電体21等を有する略円環形状の部材である。この振動子23は、圧電体21の伸縮により進行波が発生する。
弾性体22は、ステンレス鋼により形成された略円環形状の部材であり、一方の面には圧電体21が接合され、もう一方の面には周方向に複数の溝を切って形成された櫛歯部22aが設けられている。この櫛歯部22aの先端面は、移動体25に加圧接触される接触面であり、この面に接する移動体25を進行波によって駆動する。
振動子23の移動体25との接触面には、第1実施形態に示した振動子13と同様に、樹脂膜31が形成されている。樹脂膜31の膜厚は30μmであり、表面の高さ粗さRz(JIS B0601−2001)は、0.5μmである。
本実施形態の樹脂膜31は、フェノール樹脂を硬化剤として配合したエポキシ樹脂100重量部に対して、PTFEを20重量部、カーボンナノチューブを5重量部配合した溶液のを塗布して形成されている。また、カーボンナノチューブは、樹脂膜31内において、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が0.2であり、略均一に分散している。
弾性体22は、その内周側の径方向に伸ばして形成された鍔状のフランジ部22bを有し、このフランジ部22bにより支持体26に支持されている。
圧電体21は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機能を有する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、圧電体21として、圧電素子を用いているが、電歪素子を用いてもよい。この圧電体21は、圧電体21に形成された所定の電極部と電気的に接続されたフレキシブルプリント基板24から供給される駆動信号により伸縮し、弾性体22に振動を生じさせる。
フレキシブルプリント基板24には、超音波モータ20を備えられるカメラの制御を行う制御装置201が接続されている。本実施形態において、制御装置201には温度センサ202が接続されており、温度センサ202の検知結果に応じて、回転数が一定となるように、圧電体21に供給する駆動信号の周波数を調整している。
移動体25は、振動子23と加圧接触し、振動子23の接触面(櫛歯部22aの先端面)に生じた進行波による楕円運動によって回転駆動される。
移動体25は、アルミニウム等の軽金属により形成された部材である。移動体25は、出力軸28に嵌合している。本実施形態の移動体25は、アルミニウム合金によって形成され、移動体25の振動子23との接触面にアルマイト皮膜層32が形成されている。
従って、移動体25と振動子23とが摩擦接触する面は、アルマイト皮膜層32と樹脂膜31とが接する形態となっている。
出力軸28は、略円筒形状をしており、一方の端部はゴム部材30を介して移動体25と嵌合し、もう一方の端部は、ベアリング27を介して支持体26に回転自在に取り付けられている。この出力軸28は、移動体25と一体に回転して移動体25の回転運動を不図示のギア等の被駆動部材に伝達する。
加圧部29は、振動子23と移動体25とを加圧する機構である。加圧部29は、加圧力を発生するバネ29aと、ベアリング27に接して配置され、バネ29aの一端を押さえる押さえリング29bと、バネ29aの他端を押さえる押さえリング29cと、出力軸28に形成された溝に挿入され、押さえリング29cの位置を規制するEリング29dとを備えている。
本実施形態に示すような超音波モータ20においても、樹脂膜31を振動子23の摩擦接触面に形成することにより、磨耗粉や異音の低減、耐久性の向上、最大負荷トルクの向上、低温環境下での低速起動特性の向上、長時間駆動時における駆動性能の安定化等の効果を奏することができる。
また、本実施形態によれば、めっき処理により接触面にNi層を形成する場合等に比べて、表面処理液の廃棄の処理等も不要である。
さらに、本実施形態に示した超音波モータ20は、第1実施形態に示した超音波モータに比べて径が小さい小型の超音波モータとして作製される場合が多いため、マスキング等の処理を行うことが困難である。しかし、本実施形態によれば、樹脂膜31は、弾性体22に塗布して容易に形成することができるので、作業工程を短縮でき、安価で容易に製造することができる。
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
(1)各実施形態では、カーボンナノチューブとして、単層カーボンナノチューブを用いたが、これに限らず、例えば、多層カーボンナノチューブや、カーボンナノホーンを用いてもよいし、これらを適宜選択して組み合わせて用いてもよい。
(2)各実施形態では、エポキシ樹脂を主剤として樹脂膜18,31を形成する例を示したが、これに限らず、例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の他の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
また、各実施形態では、エポキシ樹脂に配合する硬化剤としてフェノール樹脂を配合する例を示したが、これに限らず、例えば、メタアクリル樹脂を硬化剤として配合してもよいし、イソシアネート系硬化剤を配合してもよい。また、エポキシ樹脂は、1液型のものを用いてもよい。
(3)各実施形態では、振動子13,23の接触面(櫛歯部12a,22aの先端面)に樹脂膜18,31を形成する例を示したが、これに限らず、移動体15,25の接触面に樹脂膜を形成してもよい。また、振動子13,23の接触面と移動体15,25の接触面との双方に樹脂膜を形成してもよい。
さらに、弾性体を使用せずに、圧電体と移動体とが摩擦接触する形態の振動アクチュエータに適用してもよい。この場合、圧電体の移動体に対する接触面、移動体の圧電体に対する接触面の少なくとも一方に樹脂膜を形成すればよい。
(4)各実施形態では、樹脂膜18,31は、塗布によって形成される例を示したが、塗布の方法は、刷毛等を用いてもよいし、スプレーを用いて塗布してもよい。また、電気泳動等を用いて樹脂膜を形成してもよい。
(5)各実施形態では、弾性体12,22を形成する材料として、ステンレス鋼を用いたが、その他の鉄系材料を用いてもよい。例えば、S15C、S55C、SCr445、SNCM630等の各種鉄鋼材料を用いてもよいし、リン青銅、アルミニウム系合金を用いてもよい。
(6)各実施形態では、移動体15,25は、アルミニウム合金によって形成される例を示したが、これに限らず、鉄系材料等を用いてもよい。例えば、S15C、S55C、SCr445、SNCM630等の各種鉄鋼材料を用いてもよい。また、ポリイミド樹脂や、PEEK(polyetheretherketone)樹脂等の耐熱性の高い樹脂を用いてもよい。
(7)各実施形態では、フッ素樹脂としてPTFEを用いる例を示したが、これに限らず、適当なフッ素樹脂を適宜選択して使用してよい。例えば、PFA(Tetrafluoroethylene-perfluoroalkylvinyl ether Copolymer)、FEP(Tetrafluroethylene-hexafluoropropylene Copolymer)、PCTFE(Polychloro-Trifluoroethylene Copolymer)、ETFE(Ethylene Tetrafluoroethylene Copolymer)、ECTFE(Ethylene Chlorotrifluoroethylene Copolymer)、PVDF(Polyvinylidene Fluoride)、PVF(Polyvinyl
fluoride)等が挙げられる。
(8)各実施形態では、移動体15,25が回転駆動される超音波モータを示したが、これに限らず、移動体が直線方向に駆動されるリニア駆動型の振動アクチュエータとしてもよい。なお、各実施形態では、移動体15,25が回転駆動される回転型(円環型)の超音波モータを例としてあげたが、これは、この型の超音波モータでは固着が問題になることが多く、本発明を適用することにより大きな効果が得られるからである。
(9)各実施形態では、超音波領域の振動を用いる超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を用いる電気機械変換アクチュエータに適用してもよい。
(10)各実施形態では、超音波モータ10,20は、カメラのレンズ鏡筒のフォーカス動作を行う駆動源として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、レンズ鏡筒のズーム動作を行う駆動源に用いてもよい。また、超音波モータ10,20を、複写機等の駆動源や、自動車のハンドルチルト装置やヘッドレストの駆動部等に用いてもよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
第1実施形態のカメラ1を示す図である。 第1実施形態の超音波モータ10を示す図である。 第1実施形態の超音波モータ10の弾性体12と移動体15との接触部分を拡大した図である。 第1実施形態の樹脂膜18の製造工程を示す図である。 第2実施形態の超音波モータ20を示す図である。
符号の説明
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、10,20:超音波モータ、13,23:振動子、15,25:移動体、18,31:樹脂膜

Claims (10)

  1. 振動を発生する振動子と、
    前記振動子と加圧接触され、前記振動により、前記振動子に対して相対移動する相対移動部材と、
    前記振動子の前記相対移動部材に対する接触面と前記相対移動部材の前記振動子に対する接触面との少なくとも一方に設けられたカーボンナノチューブを含有する膜と、
    を備える振動アクチュエータ。
  2. 請求項1に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜は、前記振動子と前記相対移動部材との少なくとも一方の接触面に、直接形成されていること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜は、厚さが3〜100μmであること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記カーボンナノチューブは、前記膜内において、粒子間距離の平均偏差を平均粒子間距離で割った値が、0〜0.5となるように、分散していること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンの少なくとも1つであること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜は、熱硬化性樹脂を含むこと、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜は、熱硬化性樹脂を含み、
    前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂の少なくとも1つであること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜はフッ素樹脂を含むこと、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータにおいて、
    前記膜は、熱硬化性樹脂及びフッ素樹脂を含み、
    前記フッ素樹脂は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対し、5〜35重量部配合されていること、
    を特徴とする振動アクチュエータ。
  10. 請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備える光学機器。
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