JP2006219307A - 多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物、その製造方法 - Google Patents

多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 充分な機械的強度を維持し、人工骨、人工骨補填材、細胞培養を行うための担体、触媒担体等として適した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 リン酸カルシウム系セラミックス中にカーボンナノチューブが均一に分散している多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物、および、
カーボンナノチューブを溶媒中に溶解又は均一に分散する工程とこの溶液又は分散液をリン酸カルシウム系セラミックス原料及び架橋性高分子化合物と混合しスラリーを得る工程とこれに起泡剤を加えて発泡させた後、架橋剤を加え硬化する工程とこれを乾燥、焼結する工程からなる製造法。
【選択図】 なし

Description

本発明は多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物に関し、より詳しくは、例えば人工骨補填材、細胞培養用担体、触媒担体等に好適に使用できる多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物、その製造方法に関する。
従来から外科、整形外科等の医療分野において、疾病、事故、手術等によって生じた骨の欠損部及び空隙に対して、例えば自分の他の身体部分の骨や、親、兄弟等の骨を採取、充填することで当該部分の骨組織の再建を図ることが広く行われてきた。しかしながら、骨採取のための手術は大きな苦痛を伴う上に、それに要する費用や労力も多大なものが必要とされる。また、骨欠損部を人骨だけで補填するにはその量に限度があり、欠損部分が広範囲に及ぶ場合には必要な量が確保できない場合も多い。このため、近年、このような骨の補填用人工骨材に関する研究が盛んに行われるようになってきている。
ところで、生体内に人工骨材を埋入するに際しては、人工骨が適度な機械強度を有し、生体組織に対し親和性があり、骨組織の細胞や血管組織と結合しやすい材料であることが要求される。このような材料として、特許文献1に記載のように、これまでにリン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)等の焼結体からなるリン酸カルシウム系セラミックスが提案されている。
しかし、無気孔の(緻密な)リン酸カルシウム系セラミックスを埋入した場合には、生体内での骨組織形成が速やかに行われず、治癒までに非常な長期間を必要とするという問題がある。そのため、特許文献2に記載されているように埋入するリン酸カルシウム系セラミックスの構造を多孔質体とし、体内に埋入した際に、血液などの体液の良好な循環が起こり、開気孔内に骨組織が定着しやすくした多孔質リン酸カルシウム系セラミックスが提案されている。
特開平10-314295 特開2000-302567
しかし、従来の多孔質のリン酸カルシウム系セラミックスは、骨格壁部に無数の微細な開気孔を有する多孔質体からなるため、機械的強度の低下をきたし、人工骨として用いる場合には所要の強度が得られず、大きな骨欠陥部の治療には利用することができないという課題があった。
本発明は、上記の従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、充分な機械的強度を維持し、人工骨、人工骨補填材、細胞培養を行うための担体、触媒担体等として適した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、従来の多孔質リン酸カルシウム系セラミックスの上記欠点を改善すべく鋭意研究を行った結果、多孔質リン酸カルシウム系セラミックスにカーボンナノチューブが均一に分散した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物が機械的強度に非常に優れ、従来からの問題点を解決できることを見出して本発明に到達した。
すなわち、本発明の第一はリン酸カルシウム系セラミックス中にカーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物に関する。また、本発明の第二は、下記(A)〜(D)の工程より成る多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物の製造方法に関する。
( A ) : カーボンナノチューブを溶媒中に溶解又は均一に分散する工程
( B ) :前記工程 ( A ) で得られた溶液又は分散液を、リン酸カルシウム系セラミックス原料及び架橋性高分子化合物と混合し、スラリーを得る工程
( C ) : ( B ) のスラリーに起泡剤を加えて発泡させた後、架橋剤を加え硬化する工程
( D ) : 得られた硬化体を乾燥、焼結する工程
本発明によれば、カーボンナノチューブがリン酸カルシウム系セラミックス中に凝集することなく均一に分散した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物を製造することが出来、機械的強度等に優れたセラミックス系材料を得ることが出来る。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で用いる多孔質リン酸カルシウム系セラミックスは、CaHPO4、Ca3(PO4)2、Ca5(PO4)3OH、Ca4O(PO4)2、Ca10(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)2からなるリン酸カルシウム系セラミックス原料の1種または2種以上を主成分とする。
また、本発明の多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物はアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO)などの金属酸化物を含有していても良い。
本発明で使用するカーボンナノチューブは如何なる製法で得られたものでも、如何なる形状のものでもよいが、例えばsingle wall carbon nanotube (SWCNT)、double wall carbon nanotube (DWCNT)、multi wall carbon nanotube (MWCNT)等が挙げられ、それらの1種または2種以上を使用することができる。また、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をした、カーボンナノホーンやその頭部に穴が開いたナノカーボン物質なども使用することが出来る。
本発明で用いるカーボンナノチューブのアスペクト比(縦横比)は特に限定されないが、通常アスペクト比が高いものほど強度向上には効果的であるので、好ましくは10以上、より好ましくは50以上である。上限も特に限定されないが、通常10000程度までで充分である。
また、本発明に用いるカーボンナノチューブは、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等を用いて物理的処理を行っているものや、酸化処理等の化学的処理を行っているものも用いることもが出来る。
本発明の多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物では、前記カーボンナノチューブが、前記リン酸カルシウム系セラミックス中に凝集することなく均一に分散したものである。カーボンナノチューブの含有量は用いるリン酸カルシウム系セラミックスや用途等により異なり、所望の値に調製できるが、好ましくは多孔質リン酸カルシウム系セラミックスに対して0.1質量%以上、強度の増大という観点からは1質量%以上がより好ましく、また上限としては通常は50質量%以下が好ましく、経済性という観点からは30質量%以下がより好ましい。
本発明の多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物は以下の(A)〜(D)の工程で製造することが出来る。
( A ) : カーボンナノチューブを溶媒中に溶解、又は均一に分散する工程
( B ) :前記工程 ( A ) で得られた溶液又は分散液を、リン酸カルシウム系セラミックス原料及び架橋性高分子化合物と混合し、スラリーを得る工程
( C ) : ( B ) のスラリーに起泡剤を加えて発泡させた後、架橋剤を加え硬化する工程
( D ) : 得られた硬化体を乾燥、焼結する工程
本発明では、カーボンナノチューブが溶媒中に溶解した溶液、又は均一に分散した分散液を得る(工程 ( A ) )が非常に重要である。カーボンナノチューブの溶媒への溶解、又は分散状態の良否は多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物の機械的強度に大きく影響を及ぼす。ここでは単に、凝集粒子の解砕(一次粒子化)レベルの分散ではなく、一次粒子中のカーボンナノチューブの束を分散するレベルであることが望ましい。
本発明の製造方法で用いるカーボンナノチューブ及びリン酸カルシウム系セラミックス原料は前記のものが用いられ、その使用量比は用いるリン酸カルシウム系セラミックス原料や用途により異なり所望の値が選べるが、通常はリン酸カルシウム系セラミックス原料に対して好ましくは0.1質量%以上、強度の増大という観点からより好ましくは1質量%以上、また上限としては好ましくは50質量%以下、経済性という観点からより好ましくは30質量%以下のカーボンナノチューブが用いられる。
このとき使用する溶媒はカーボンナノチューブを溶解または分散できるものであれば特に制限されない。例えば水や、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N−メチルピロリドン等のピロリドン類が好適に用いられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
カーボンナノチューブを溶媒中に溶解又は分散させる手段としては、超音波照射機、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリッドミキサー等の装置を用いて行うことが出来るが、特に、超音波照射処理又は超音波照射処理とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることが好ましい。超音波照射処理の条件としては特に限定されるものではないが、カーボンナノチューブを溶媒中に溶解又は均一に分散させるだけの充分な超音波の強度と処理時間があればよい。例えば、超音波発振機における定格出力が超音波発振機の単位面積あたり0.1〜2.0ワット/cm2が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5ワットの範囲であり、発振周波数は10〜200KHzが好ましく、より好ましくは20〜100KHzの範囲で行うのが良い。また超音波照射処理の時間は1分〜48時間が好ましくより好ましくは5分〜48時間である。
これらの溶解又は分散促進処理を行うことでカーボンナノチューブが凝集状態を取ることなく溶媒に溶解または均一に分散した溶液を得ることが出来るが、より効率的に又はより多くのカーボンナノチューブを溶解又は分散させるために補助剤を併用することが出来る。
補助剤としては、酸、界面活性剤、導電性高分子、芳香族系化合物、タンパク質、DNA等カーボンナノチューブと相互作用し、溶解性、分散性を向上させる化合物であれば使用できる。
酸としては塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、ギ酸等の有機酸を用いることが出来る。
界面活性剤としてはアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化、フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアミド縮合物及びこれらの塩等のアニオン系界面活性剤、第一〜第三脂肪族アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリジウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等の両面界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等の非イオン系界面活性剤、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤を1種又は2種以上を使用することが出来る。
導電性高分子としてはフェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含むπ共役系高分子を使用することが出来る。特に、溶媒として水を用いる場合にはポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)等の水溶性導電性高分子を用いるのが好ましい。
芳香族系化合物としては例えば、フェニル基誘導体、チエニル基誘導体、ピロール誘導体、ピレン誘導体等を一種又は二種以上を使用することが出来る。
これらの補助剤を用いて、カーボンナノチューブを溶媒中に溶解または分散させる手段は超音波照射等、前記した方法をそのまま用いることが出来る。
本発明の製造法の( B )工程は、 ( A )工程で得られた溶液又は分散液をリン酸カルシウム系セラミックス原料、架橋性高分子と混合しカーボンナノチューブ等が分散したスラリーを得る工程である。
リン酸カルシウム系セラミックス原料は、前述のようにCaHPO4、Ca3(PO4)2、Ca5(PO4)3OH、Ca4O(PO4)2、Ca10(PO4)6(OH)2、CaP4O11、Ca(PO3)2、Ca2P2O7、Ca(H2PO4)2からなる化合物の1種または2種以上を主成分とすることができる。
架橋性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の架橋剤の存在或いは非存在化に架橋可能な高分子化合物類があげられる。
スラリーを得る方法としては、攪拌羽根等を用いた攪拌装置、またはボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等を用いた混練装置を用いて行うことが出来る。すでに(A)工程で、カーボンナノチューブは束がほどけている状態まで分散しているため、これらの装置を用いて充分に混合することで、スラリー中に凝集状態を取ることなく、ほどけた状態のカーボンナノチューブが均一に分散したスラリーを得ることが出来る。
カーボンナノチューブが均一に分散したスラリーを得るための混合時間としては、混合装置、混合条件にもよるが通常は1分以上48時間以下が好ましく、10分以上24時間未満がさらに好ましい。
続いて、カーボンナノチューブが均一に分散したスラリーに起泡剤を加え起泡後、架橋剤を加え硬化する工程( C )について説明する。
起泡剤としてはアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化、フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアミド縮合物及びこれらの塩等のアニオン系界面活性剤、第一〜第三脂肪族アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリジウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム及びこれらの塩等のカチオン系界面活性剤、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等の両面界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等の非イオン系界面活性剤、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤を1種又は2種以上を使用することが出来る。
起泡剤を添加した後、攪拌及び/又は気体導入により所定の容積になるまで起泡し、泡沫状のスラリーとする。このときの体積(気孔率)は目的に応じて調整すれば良く、0%〜90%程度までの気孔率とすることが出来る。次にこの泡沫状のスラリーに架橋剤を加えて混合し、必要であれば型内に入れ架橋反応により硬化し泡構造が固定化された成型体を得る。
架橋剤は選択された架橋性高分子を架橋するものであれば任意のものを使用することが出来る。例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グルセロールポリグリシジルエーテル、ポリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネート−メチルオクタンおよび2,6−ジイソシアネートカプロン酸−β−イソシアネート−エチルエステル等のイソシアネート類等があげられる。これらを1種又は2種以上混合して使用することが出来る。
続いて、得られた硬化体を乾燥、焼結し、多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物を得る工程( D )について説明する。
カーボンナノチューブは、酸素存在下、400℃以上で酸化され消滅してしまうため、乾燥はこれ以下の温度で行うことが好ましい。このとき、まず80℃〜200℃の温度でスラリーから有機溶媒や水を除去し乾燥することが好ましく、特に溶媒として水を用いる場合には乾燥温度は80℃〜120℃が好ましい。乾燥時間としては通常は1時間〜48時間程度が好ましい。
続いて、使用した補助剤などの有機不純物を分解除去するために、200℃〜400℃までの温度で乾燥する。このときの乾燥時間は使用した材料によって異なるが通常は1時間〜20時間が好ましい。
次いで行われる焼結の条件は使用するリン酸カルシウム系セラミックス原料によって異なるが、通常は400℃〜1700℃が好ましく、特にハイドロキシアパタイトを用いるときは800℃〜1300℃で行うのが良い。このとき、カーボンナノチューブの損傷を防ぐために、焼結を不活性ガスの存在下、又は真空状態にして行うのが良く、真空状態としては通常は10−3Torr〜10−1Torrが好ましい。また、焼結時間は使用するリン酸カルシウム系セラミックス原料によって異なるが通常は5分〜10時間が好ましく、特にハイドロキシアパタイトを用いるときは1〜3時間が好ましい。
以上のような操作により、カーボンナノチューブがリン酸カルシウム系セラミックス中に分散した多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物を得ることが出来る。
次に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
多孔質ハイドロキシアパタイト/カーボンナノチューブ組成物の製造1
導電性高分子ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の5%水溶液16mlにカーボンナノチューブ0.16g(シンセンナノテクポート社製)を混合し、超音波照射により分散させた。この溶液にハイドロキシアパタイト10.0g、ポリエチレンイミン1.2gを加え、5時間混合しスラリーを作成した。このスラリーを目視で観察したところ、カーボンナノチューブが均一に分散したスラリーであった。このスラリーにポリオキシエチレンラウリルエーテル1.2gを加えスラリーが38ccになるまで起泡し、その後ソルビトールポリグリシジルエーテル80mgを加え硬化し、円柱状に成型した。成型体を80℃で8時間、350℃で8時間乾燥した後、真空下、1200℃で2時間焼成した。これにより、カーボンナノチューブが分散されたヒドロキシアパタイト成型体を得た。また、成型体の三点曲げ強さは15MPaであった。
(実施例2)
多孔質ハイドロキシアパタイト/カーボンナノチューブ組成物の製造2
導電性高分子ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の5%水溶液16mlにカーボンナノチューブ2.0g(シンセンナノテクポート社製)を混合し、超音波照射により分散させた。この溶液にハイドロキシアパタイト10.0g、ポリエチレンイミン1.2gを加え、5時間混合しスラリーを作成した。このスラリーを目視で観察したところ、カーボンナノチューブが均一に分散したスラリーであった。このスラリーにポリオキシエチレンラウリルエーテル1.2gを加えスラリーが38ccになるまで起泡し、その後ソルビトールポリグリシジルエーテル80mgを加え硬化し、円柱状に成型した。成型体を80℃で8時間、350℃で8時間乾燥した後、真空下、1200℃で2時間焼成した。これにより、カーボンナノチューブが分散されたヒドロキシアパタイト成型体を得た。また、成型体の三点曲げ強さは20MPaであった。
(比較例1)
多孔質ハイドロキシアパタイト成型体の製造
導電性高分子ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)及びカーボンナノチューブを使用せず、代わりに純水16mlを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、ヒドロキシアパタイト成型体を得た。また、成型体の三点曲げ強さは10MPaであった。
本発明のリン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物は人工骨補填材、細胞培養を行うための担体、触媒担体等に利用することができる。

Claims (4)

  1. リン酸カルシウム系セラミックス中にカーボンナノチューブが均一に分散していることを特徴とする多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物。
  2. 金属系酸化物が含まれていることを特徴とする請求項1記載の多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物。
  3. 下記(A)〜(D)の工程より成る多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物の製造方法。
    ( A ) : カーボンナノチューブを溶媒中に溶解又は均一に分散する工程
    ( B ) :前記工程 ( A ) で得られた溶液又は分散液を、リン酸カルシウム系セラミックス原料及び架橋性高分子化合物と混合し、スラリーを得る工程
    ( C ) : ( B ) のスラリーに起泡剤を加えて発泡させた後、架橋剤を加え硬化する工程
    ( D ) : 得られた硬化体を乾燥、焼結する工程
  4. 工程 ( A )においてカーボンナノチューブ可溶化又は分散化補助剤を添加することを特徴とする請求項3記載の多孔質リン酸カルシウム系セラミックス/カーボンナノチューブ組成物の製造方法。

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