JP2009264879A - ラテラルフロー型のクロマトストリップ及び生体材料の固相化方法 - Google Patents

ラテラルフロー型のクロマトストリップ及び生体材料の固相化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 にじみによる生体材料の拡がりを防止し、発色等のバンドがシャープで高感度なイムノクロマトアッセイが可能なラテラルフロー型のクロマトストリップを提供する。
【解決手段】 イムノクロマトアッセイにおいて使用されるクロマトストリップに生体材料を固相化するに際し、予め溶液の拡散を防ぐ制御ラインを形成しておき、その近傍に生体材料を含む溶液を塗布する。このようにして作製されたクロマトストリップにおいては、生体材料(例えば捕捉抗体21)は、制御ラインLに沿って局在化される。制御ラインLは、例えばカゼイン溶液、ウシ血清アルブミン溶液、エタノールから選択される少なくとも1種を用いて形成する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、イムノクロマト法等に使用されるラテラルフロー型のクロマトストリップに関するものであり、さらには、クロマトストリップの生体材料の固相化方法に関する。
従来、試料中の被検物質を微量検出する方法として免疫分析法が知られており、例えばELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法は高感度検出が可能であることから広く普及している。ただし、ELISA法は操作時間や反応時間に長時間を要し、また、測定操作が煩雑等の問題がある。
そこで近年、ELISA法に代わる免疫分析法として、抗体を固相化した支持体(メンブレン)の一端に試験溶液を吸収させ、毛細管現象を利用して試験溶液を展開するイムノクロマト法や、抗体を固定化した支持体の膜厚方向に試験溶液を通過させるフロースルー法を利用した分析法が注目されている。中でもイムノクロマト法は、装置(ストリップ)が小型で可搬性に優れ、ELISA法に比べて保存安定性、迅速測定、判定の容易さ、特別な付属装置が不要等の様々な点においても優れていることから、インフルエンザ検査、HCV検査、妊娠検査、アレルギー検査、食中毒検査等の診断薬の分野において汎用されている。
例えばサンドイッチ法を利用したイムノクロマト法では、先ず、被検物質の異なる部位を認識する2種類の抗体とストリップ状のメンブレン(クロマトストリップ)とを用意し、一方の抗体(捕捉抗体)はメンブレンのテストラインと呼ばれる領域に予め固相化しておき、他方の抗体は例えば金コロイド粒子で標識して金コロイド標識抗体とする。そして、試験溶液を金コロイド標識抗体と混合した後、ストリップの一端から吸収させ、展開する。試験溶液中に被検物質が含まれる場合、被検物質と金コロイド標識抗体とが反応して被検物質−金コロイド標識抗体複合体が形成され、この複合体がテストライン上を通過する際に捕捉抗体に捕捉され、捕捉抗体−被検物質−金コロイド標識抗体複合体が形成される。その結果、前記テストラインにおいて、金コロイド標識抗体の赤色の呈色が観察される。この赤色の呈色の有無により、被検物質の有無を判定することができる。
前記イムノクロマト法は、様々な分野に応用され、例えば特許文献1には、アレルゲンを検出するイムノクロマト法が開示されている。特許文献1記載の発明では、変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体を用いている。
特許文献2には、複数項目同時分析可能なイムノクロマトグラフ用ストリップが開示されているが、このイムノクロマトグラフ用ストリップでは、各分析対象物質のいずれか1つとのみ、それぞれ特異的に結合することのできる各特定免疫反応性物質が、互いに隔離した状態で固定化されている。
特開2007−278773号公報 特開2002−286716号公報
前述のイムノクロマトグラフにおいて、イムノアッセイを構築する場合、抗原若しくは抗体といった生体材料をクロマトストリップの任意の位置に固相化する必要があり、前記特許文献1記載の発明においてはモノクローナル抗体を、特許文献2記載の発明においては特定免疫反応性物質を、それぞれストリップ(展開支持体)の所定の位置に固定している。
この固相化は、簡便であることから、生体材料を適正な濃度で緩衝溶液中に溶かし、これをクロマトストリップ上に滴下し、乾燥することにより行うのが主な方法となっている。しかしながら、前記方法を採用した場合、滴下した溶液が毛細管現象によりクロマトストリップ上で拡がり、いわゆるにじみが発生するという問題がある。にじみが発生すると、拡がった液滴の周辺部分と中心部分とで固相化する生体材料の濃度が異なる結果となり、中心部の濃度が高く、周辺部の濃度が低くなる傾向にある。
イムノクロマト法においては、理想的には固相化する生体材料の濃度が急激に変化することが好ましく、生体材料の塗布部とそうでない部分の境界が明瞭であることが好ましい。例えば前述のような金コロイド標識抗体を捕捉して被検物質の検出を行う場合、発色のバンドがシャープになり、高感度化が可能になるからである。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、にじみによる生体材料の拡がりが防止され、塗布部とそうでない部分の境界が明瞭で、発色等のバンドをシャープなものとすることができ、高感度なイムノクロマトアッセイが可能なラテラルフロー型のクロマトストリップを提供することを目的とする。また、本発明は、にじみによる生体材料の拡がりを防止することができ、生体材料を局在化させて塗布部とそうでない部分の境界を明瞭なものとすることが可能な生体材料の固相化方法を提供することを目的とする。
前述の課題を解決するために、本発明に係るラテラルフロー型のクロマトストリップは、生体材料含有溶液の滴下により所定の位置に生体材料が固相化されてなるラテラルフロー型のクロマトストリップにおいて、前記生体材料含有溶液の毛管現象による拡散を防ぐための制御ラインが前記所定の位置に形成されており、前記生体材料含有溶液を前記制御ラインの近傍に滴下することによって生体材料が制御ラインに沿って局在化されていることを特徴とする。
また、本発明に係る生体材料の固相化方法は、ラテラルフロー型のクロマトストリップ上に生体材料含有溶液を滴下し、所定の位置に生体材料を固相化する工程の前に、前記生体材料含有溶液の毛管現象による拡散を防ぐための制御ラインを前記クロマトストリップ上に形成し、その後、前記生体材料含有溶液を前記制御ラインの近傍に滴下することによって前記生体材料を制御ラインに沿って局在化させることを特徴とする。
イムノアッセイのための生体材料を塗布する前に、クロマトストリップ上に溶液の拡散を防ぐような制御ラインを形成しておき、その後に制御ラインの近傍に生体材料を含む溶液を滴下すると、前記溶液の拡散が制御ラインによって阻止され、制御ライン側には溶液は入っていかない。したがって、前記液滴は前記制御ラインによって堰き止められた形になり、その先端部が制御ラインに沿う形で拡散が停止する。この時、溶液中に含まれる生体材料は制御ラインで堰き止められた先端部へと移動し、制御ラインに沿って集積される。この状態で乾燥を行えば、生体材料は前記制御ラインに沿って局在化した形で固相化される。
前述のように制御ラインを設けることによって、クロマトストリップに生体材料(例えば抗原)をバンド状に固相化し、標識された被検物質(例えば金コロイド標識抗体)を泳動させると、抗原抗体反応によって金コロイド標識抗体が抗原固相化部分に捕捉される。この時、抗原が制御ラインに沿って局在化した形で固相化されているので、金コロイド標識抗体も明確に局在化され、金コロイドの吸光によりできるバンドがシャープなものとなる。
本発明の生体材料の固相化方法によれば、制御ラインを形成し生体材料を含む溶液の拡散を防止するようにしているので、生体材料を制御ラインに沿って集積することができる。したがって、にじみによる生体材料の拡がりを防止することができ、生体材料を局在化させて塗布部とそうでない部分の境界を明瞭なものとすることが可能である。
また、本発明のクロマトストリップは、にじみによる生体材料の拡がりが防止され、塗布部とそうでない部分の境界が明瞭であるので、発色等のバンドをシャープなものとすることができ、高感度なイムノクロマトアッセイが可能である。
以下、本発明を適用したクロマトストリップ及び生体材料の固相化方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明のクロマトストリップは、イムノクロマトアッセイに用いられるものである。そこで、先ず、イムノクロマトアッセイにおける検出原理をサンドイッチ法によるイムノクロマトアッセイを例にして説明する。
サンドイッチ法によるイムノクロマトアッセイにおいては、図1に示すように、被検物質(例えば抗原)1上の異なる部位をそれぞれ認識する2種類の抗体2,3を用いる。2種類の抗体のうち一方の抗体(捕捉抗体)(生体材料に該当)2は、ストリップ(展開支持体)4に固相化する。他方の抗体3は、ストリップ4には固相化せず、標識物質5で標識して標識抗体6とする。なお、前記捕捉抗体や標識される抗体は、必ずしも抗体でなくてもよく、被検物質に応じて、当該被検物質と直接的、あるいは間接的に結合する特定反応物質を用いればよい。例えば、被検物質が抗体である場合には、ストリップ4には生物材料として抗原を固相化すればよい。
試験溶液中の被検物質1を検出するには、例えば先ず、試験溶液と標識抗体6を混合し、被検物質1と標識抗体6との複合体を形成させた後、ストリップ4に供給する。ラテラルフロー型のクロマトストリップでは、ストリップ4の一端に試験溶液(混合液)を吸収させ、毛細管現象を利用して試験溶液を展開させる。なお、試験溶液と標識抗体6を含む溶液とをこの順に個別にストリップ4に供給してもよい。試験溶液中に被検物質1が存在する場合、ストリップ4に固定化された捕捉抗体2と標識抗体6とがサンドイッチ状に被検物質1に対して結合し、結果として被検物質1に応じた量の標識抗体6が判定部に集積する。
標識抗体6の判定部への集積により、例えば標識物質5が金コロイドの場合、赤色の呈色として観察され、被検物質の有無、あるいは濃度等を把握することができる。なお、標識物質としては、前記金コロイドに限らず、各種発色物質や発光物質を用いることができる。ただし、迅速且つ簡便な検出を可能とするには、肉眼で検出可能な発色又は発光を示す発色物質又は発光物質を標識物質として用いることが好ましく、特に発色物質を用いることが好ましい。
具体的には、発色物質として、コロイド金属粒子、ラテックス粒子、有機高分子粒子、無機粒子、金属微粒子、発色剤を包含したリポソーム等の発色粒子を挙げることができる。コロイド金属粒子としては、例えば前述の金コロイド粒子等が例示される。ラテックス粒子としては、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体等が例示される。有機高分子粒子としては、不溶性アガロース、セルロース、不溶性デキストラン等が例示される。無機粒子としては、シリカ、アルミナ等が例示される。金属微粒子としては、金、チタン、鉄、ニッケル等が例示される。これら発色物質の中でも、汎用性の高い金コロイド粒子、ラテックス粒子、銀粒子等を用いることが好ましく、特に、明瞭な発色が得られるため金コロイド粒子が好ましい。
前記イムノクロマトアッセイでは、生体物質、合成物質等あらゆる物質を被検物質1とすることができる。被検物質1を含む試験溶液としても、例えば血液、血清、尿等の生体由来の溶液、自然環境から採取した水や土壌等を含む溶液、これらを用いて調製して得た溶液等、任意のものを用いることができる。
次に、以上のようなイムノクロマトアッセイを行うためのクロマトストリップについて説明する。図2に示すように、ラテラルフロー型のクロマトストリップ11は、短冊状とされた展開用ストリップ12と、展開用ストリップ12の上流側に配されたコンジュゲートパッド13と下流側に配された吸収パッド14とから構成される。
展開用ストリップ12としては、この種のイムノクロマト法に用いられるメンブレンを制限無く使用することができ、例えばニトロセルロース等を用いることができる。展開用ストリップ12の途中には、捕捉抗体21が固相化された領域である判定部15が設けられる。前記イムノクロマトアッセイを行うクロマトストリップ11の場合、判定部15には捕捉抗体21が固相化される。
展開用ストリップ12の判定部15の上流側に設けられたコンジュゲートパッド13は、標識物質22で標識された標識抗体23を移動(展開)可能な状態で保持している。コンジュゲートパッド13は、例えば、標識抗体23を保持したグラスウール等の上面に吸水性に優れたろ紙等が積層された構成とされる。判定部15の上流側に標識抗体23を展開可能に保持しておくことで、試験溶液を展開する1つの工程で分析操作を完了することができる。すなわち、試験溶液の展開後に標識抗体23を別途展開する工程や試験溶液と標識抗体23とを展開前に混合する工程が不要となり、操作を簡略化できる。
なお、クロマトストリップ11においては、標識抗体23を保持したコンジュゲートパッド13は必須ではない。コンジュゲートパッド13を備えない場合、試験溶液と標識抗体23との混合液を展開用ストリップ12に供給するか、又は、試験溶液、標識抗体23を含む溶液をこの順に展開用ストリップ12に供給すればよい。
また、展開用ストリップ12においては、判定部15に捕捉されなかった標識抗体23を捕捉するためのコントロール部を判定部15より下流側に備えていてもよい。コントロール部は、標識抗体23を認識するコントロール用抗体を展開用ストリップ12に固相化することにより形成される。コントロール部に捕捉された標識抗体23の発色又は発光により、検査が終了したことを確認することができる。
吸収パット14は、展開用ストリップ12の判定部15やコントロール部の下流側に設けられることで、余剰の試験溶液等を吸収する。
以上がラテラルフロー型のクロマトストリップ11の構成であるが、本発明のクロマトストリップ11においては、前記判定部15に固相化された生体材料(ここでは捕捉抗体21)が、制御ラインLに沿って局在化された状態で固相化されていることが大きな特徴事項である。すなわち、毛細管現象によるにじみが発生することなく、捕捉抗体21が制御ラインLに沿って集積され、線状に局在化された状態で固相化されている。
通常、生体材料である捕捉抗体21を含む緩衝溶液を展開用ストリップ12に滴下して捕捉抗体21を固相化しようとすると、図3(a)に示すように、滴下された液滴が毛細管現象によりにじみ、塗布領域Tが拡がってしまう。すると、捕捉抗体21も中心部が濃く周辺部が薄くなるような濃度分布を持って拡がり、ブロードな状態で固相化される。このような状態で捕捉抗体21が固相化されると、これにより捕捉される標識抗体23も濃度分布を持つことになり、発色のバンドがシャープなものとならず、吸光度のピークも低い。このような発色状態では高感度な検出は難しい。
そこで、本発明においては、図3(b)に示すように、前記展開用ストリップ12の生体材料固相化位置に制御ラインLを形成しており、これに沿って生体材料である捕捉抗体21を局在化させている。
生体材料を制御ラインLに沿って局在化させるためには、先ず、図4(a)に示すように、展開用ストリップ11の生体材料を固相化する位置に、溶液の毛細管現象による拡散を防ぐような材料を塗布して予め制御領域Sを形成しておく。前記拡散を防ぐ材料としては、例えばカゼイン溶液やウシ血清アルブミン(BSA)溶液、エタノール等が好適であるが、さらには、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等も使用可能である。カゼイン溶液を用いる場合には、溶液濃度は1〜2質量/質量%とすることが好ましい。ウシ血清アルブミン溶液を用いる場合には、溶液濃度は5〜10質量/質量%とすることが好ましい。勿論、これらに限られるものではなく、溶液の拡散を防止し得る材料であれば、任意の材料を用いることができる。
前記拡散を防ぐ材料(制御材料)を展開用ストリップ12に塗布して制御ラインLを形成するには、例えば溶液滴下口を展開用ストリップ12の幅方向に移動しながら制御材料溶液を滴下すればよい。滴下された制御材料溶液は、ある程度拡散して制御領域Sを形成するが、連続的に滴下することで、展開用ストリップ12の長手方向における液滴の先端部分が直線状に連なる形となる。この制御材料溶液の直線状に連なる先端部分が制御ラインLとして機能する。
このように制御材料溶液を塗布し乾燥して制御領域S及び制御ラインLを形成した後、図4(b)に示すように、制御ラインLの近傍に生体材料を含む溶液を滴下する。この時にも、制御ラインLに沿って(すなわち展開用ストリップ12の幅方向に)生体材料を含む溶液を滴下することが好ましい。滴下した液滴Eは、毛細管現象により全方向に拡散するが、先端が制御ラインLに到達すると、それ以上制御ラインL側には入っていかない。そのため、液滴Eは半円形状に拡散が制御される。
各液滴Eにおいて前記のような拡散制御が行われるので、図4(c)に示すように、拡散した各液滴Eの先端部分が制御ラインLに沿って直線状に制御される。この時、各液滴Eに含まれる生体材料(捕捉抗体21)は、制御ラインL側に移動し、制御ラインLに沿って集積される。この状態で乾燥すれば、捕捉抗体21が制御ラインLに沿って局在化し、捕捉抗体21の細いラインが形成される。
以上により生体材料である捕捉抗体21を固相化することで展開用ストリップ12を得るが、捕捉抗体21の固相化の後、展開用ストリップ12を洗浄するのが一般的である。例えば、希薄なカゼイン溶液やウシ血清アルブミン溶液等を用いて洗浄やブロッキングを行う。これら洗浄やブロッキングによって、制御ラインLの形成に用いられた制御材料も洗い流され、展開用ストリップ12には制御材料(カゼインやウシ血清アルブミン等)はほとんど残存しない。制御材料にエタノールを用いた場合にも、前記洗浄や揮発によって展開用ストリップ12にはほとんど残存しない。したがって、クロマトストリップ11が製品化された際には、前記制御ラインLや制御領域Sは消失しているか、僅かに痕跡を残すに止まる。逆に言えば、前記制御ラインLや制御領域Sは、製品化されたイムノクロマト用ストリップ11において、泳動の障害となることはなく、この点も本発明の利点の一つである。
以上のように構成され捕捉抗体21を制御ラインLに沿って局在化させたクロマトストリップ11を用いてイムノクロマトアッセイを行う場合、コンジュゲートパッド13に試験溶液を吸収させる。試験溶液中に被検物質が存在する場合、試験溶液がコンジュゲートパッド13を通過することで標識抗体23が展開用ストリップ12側へ移動しながら被検物質と反応して被検物質と標識抗体23との複合体を形成する。試験溶液は毛細管現象により展開されていくが、前記複合体が判定部15を通過する際に捕捉抗体21に捕捉され、捕捉抗体21と被検物質と標識抗体23との複合体が形成される。判定部15には予め捕捉抗体21が固定化されているため、標識抗体23も判定部15に固定化される形になり、判定部15に集積された標識抗体23(標識物質22)の発色又は発光により、被検物質の検出が実現される。
前述の構成を有するクロマトストリップ11においては、にじみによる捕捉抗体21の拡がりが防止され、捕捉抗体21が制御ラインLに沿って線状に局在化されるとともに、捕捉抗体21の塗布部とそうでない部分の境界が明瞭であるので、標識抗体23の標識物質22による発色バンドをシャープなものとすることができ、高感度なイムノクロマトアッセイを実現することができる。
なお、本発明が以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、固相化する生体材料は、捕捉抗体や抗原に限られるものではなく、イムノクロマトアッセイの種類に応じて任意の生体材料を固相化する場合に適用可能である。また、イムノクロマト用ストリップが適用されるイムノクロマトアッセイも、前記サンドイッチ法に限定されるものではなく、競合法によるイムノクロマトアッセイ等、公知のイムノクロマトアッセイ全般に適用可能であり、これらイムノクロマトアッセイに用いられるイムノクロマト用ストリップに本発明を適用することで、いずれの場合にも前述の効果を得ることが可能である。
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果に基づいて詳細に説明する。
制御ラインによる局在化の確認
制御ラインの形成による効果を確認するための予備実験として、金コロイド溶液を用いて制御ラインが金コロイドの固相化に及ぼす影響を調べた。実験に際しては、メンブレン(クロマトストリップ)に2%カゼイン溶液を塗布して制御ラインを形成し、平均粒径20nmの金コロイドを含む金コロイド溶液1μLを滴下し、経時変化を観察した。結果を図5に示す。
メンブレンに滴下した金コロイド溶液は、毛細管現象により拡散していくが、図5(a)に示すように、前記拡散が制御ラインによって阻止され、半円形状の拡がりとなっている。図5(a)において、直線部分が制御ラインであり、金コロイド溶液は、それ以上制御ライン側に入っていかない。この状態を維持すると、図5(b)に示すように、金コロイドが制御ライン側に移動する。図5(b)において、制御ラインに沿って金コロイドによる発色が認められる。図5(c)は、前記金コロイドの移動の後、メンブレンを完全に乾燥した状態を示すものである。乾燥後には、半円の底辺部分に沿って赤く色づいた発色バンドが認められ、金コロイドが制御ラインに沿って局在化されたことが確認された。
発色バンドの相違
本実験では、イムノクロマトアッセイを行い、制御ラインの有無による生体材料(抗原)の局在化の相違が発色バンドに及ぼす影響について調べた。図6は、本実験におけるイムノクロマトアッセイの概念図である。本実験では、メンブレン31に抗原32を固相化しておき、金コロイド33で抗体34を標識した金コロイド標識抗体35を泳動させた。そして、抗原が固相化された部分における発色のバンドの吸光度を測定した。
図7(a)は、メンブレンに通常の手法により抗原を塗布した場合(従来法)の発色バンドの吸光度を示すものである。単に抗原を含む溶液を滴下して抗原の固相化を図った場合、毛細管現象によりにじみが発生し、吸光度のピークもそれほど高くはない。一方、図7(b)は、メンブレンに予め10%ウシ血清アルブミン溶液を用いて制御ラインを形成しておき、抗原溶液を塗布した場合(本発明方法)の発色バンドの吸光度を示すものである。制御ラインを形成した場合、従来法に比べて発色バンドがシャープになり、得られる吸光度も高い値となった。
制御材料に関する検討1
制御材料として10%ウシ血清アルブミン溶液、エタノールを用い、これら溶液を塗布することにより制御ラインを形成した後、抗原溶液を滴下し、メンブレンに固相化してストリップを得た。これらのストリップを用い、金コロイド標識抗体の濃度を変えた時の吸光度ピークの高さを測定した。なお、比較のため、従来法で作製したストリップについても同様の測定を行った。結果を図8に示す。
金コロイド標識抗体の濃度を変えた測定において、薄い濃度でも吸光度変化が得られればイムノクロマトアッセイの感度が向上するものと考えられる。制御ラインを形成した場合、いずれの制御材料を用いた場合にも、従来法の場合と比較してグラフの傾きが大きく、低濃度領域まで吸光度変化が得られている。したがって、制御ラインによってメンブレンへの塗布状態を制御することにより、抗原抗体反応により得られるピークは鋭くなり、イムノクロマトアッセイの高感度化が予想される。
制御材料に関する検討2
アルドステロンのイムノクロマトアッセイにおいて、カゼインによる制御ラインの有無による相違を調べた。制御ライン有りのメンブレンの作製は、次のようにして行った。先ず、メンブレンに2%カゼイン溶液をライン状に塗布し、乾燥した。次に、抗原であるアルドステロンを1mg/mLの濃度で前記メンブレンに塗布し、乾燥した。0.5%カゼイン溶液でブロッキング、洗浄後、乾燥した。制御ライン無しのメンブレンの作製は、2%カゼイン溶液をライン状に塗布することを行わず、他は同様の方法で行った。
アルドステロンの検出においては、金コロイド標識抗アルドステロン抗体(4abs.)5μLと各アルドステロン濃度のサンプル10μLを混合し、静置して試料溶液とした。この試料溶液をメンブレンに展開させ、PBS緩衝液で洗浄した。なお、展開時間は約3分間であり、洗浄時間も約3分間である。展開後のメンブレンを図9(a),(b)に示す。また、展開後のメンブレンについて、バンドの発色濃度を吸光度計で測定した。結果を図10に示す。
図9を見ると、図9(a)に示す制御ライン有りの場合の方が、図9(b)に示す制御ライン無しの場合に比べて明らかに発色が濃く、認識しやすい。図10に示す吸光度計による測定においても、同様の結果が得られており、制御ライン有りの場合において、グラフの傾きや切片の値が制御ライン無しの場合と比べて大きい。
イムノクロマトアッセイの一例を説明する模式的な図面である。 クロマトストリップの構成例を示す概略斜視図である。 (a)は通常法により生体材料を塗布した場合の塗布領域の一例を示す模式的な平面図であり、(b)は制御ラインを形成して生体材料を塗布した場合の塗布領域の一例を示す模式的な平面図である。 生体材料を局在化させるための手法の一例を示すものであり、(a)は制御ライン形成工程、(b)は生体材料滴下工程、(c)は生体材料固相化工程を示す模式的な平面図である。 (a)〜(c)は制御ラインが形成された場合における金コロイドの拡散の様子を示す写真である。 実施例におけるイムノクロマトアッセイの概念図である。 (a)は従来法により作製したメンブレンにおける吸光度ピークを示す図であり、(b)は本発明方法により作製したメンブレンにおける吸光度ピークを示す図である。 種々の制御材料を用いて制御ラインを形成したメンブレンを用いてイムノクロマトアッセイを行った場合の金コロイド標識抗体の濃度と吸光度のピーク高さの関係を従来法により形成したメンブレンを用いた場合と比較して示す図である。 (a)はカゼインによる制御ライン有りの場合のアルドステロン展開後のメンブレンを示す写真であり、(b)制御ライン無しの場合のアルドステロン展開後のメンブレンを示す写真である。 アルドステロン検出においてカゼインによる制御ラインの有無による発色濃度(吸光度計による測定値)の相違を示す特性図である。
符号の説明
1 被検物質、2 捕捉抗体、3 抗体、4 支持体、5 標識物質、6 標識抗体、11 クロマトストリップ、12 展開用ストリップ、13 コンジュゲートパッド、14 吸収パッド、15 判定部、21捕捉抗体、22 標識物質、23 標識抗体

Claims (8)

  1. 生体材料含有溶液の滴下により所定の位置に生体材料が固相化されてなるラテラルフロー型のクロマトストリップにおいて、
    前記生体材料含有溶液の毛管現象による拡散を防ぐための制御ラインが前記所定の位置に形成されており、前記生体材料含有溶液を前記制御ラインの近傍に滴下することによって生体材料が制御ラインに沿って局在化されていることを特徴とするラテラルフロー型のクロマトストリップ。
  2. 前記生体材料は、標識抗体で標識された被検物質を捕捉する抗原または抗体であることを特徴とする請求項1記載のラテラルフロー型のクロマトストリップ。
  3. 前記制御ラインが、クロマトストリップ上の前記生体材料固相化位置よりも、溶液展開する際に上流部分に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のラテラルフロー型のクロマトストリップ。
  4. ラテラルフロー型のクロマトストリップ上に生体材料含有溶液を滴下し、所定の位置に生体材料を固相化する工程の前に、前記生体材料含有溶液の毛管現象による拡散を防ぐための制御ラインを前記クロマトストリップ上に形成し、その後、前記生体材料含有溶液を前記制御ラインの近傍に滴下することによって前記生体材料を制御ラインに沿って局在化させることを特徴とする生体材料の固相化方法。
  5. 前記制御ラインに使用される材料は、前記生体材料を固相化させた後の洗浄若しくはブロッキングの際に洗い流され、クロマトストリップを使用する際に泳動展開の妨げとならないことを特徴とする請求項4記載の生体材料の固相化方法。
  6. 前記制御ラインに使用される材料は、カゼイン溶液、ウシ血清アルブミン溶液、エタノールから選択される少なくとも1種を用いて形成することを特徴とする請求項4記載の生体材料の固相化方法。
  7. 前記カゼイン溶液の濃度は1〜2質量/質量%であり、前記ウシ血清アルブミン溶液の濃度は5〜10質量/質量%であることを特徴とする請求項5記載の生体材料の固相化方法。
  8. 前記生体材料は、標識抗体で標識された被検物質を捕捉する抗原または抗体であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項記載の生体材料の固相化方法。
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