JP2009256577A - コート剤およびクリアコートフィルム - Google Patents

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憲和 久野
Maki Okamoto
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Abstract

【課題】塗工面に微細な凹凸が形成され、塗工両面を貼り合わせする際に塗膜接触面積が減少し摩擦力が低下、その結果滑り性が向上することで、保護フィルムを用いることなくRoll to Rollの生産が可能となり、基材にコートした際にヘーズ値が増加せず透明性を損なわない、経済的にも安価となるコート剤を得る。
【解決手段】乳化重合法を用いて合成した平均一次粒子径が80〜500nmで、表面が疎水化処理された有機微粒子を(メタ)アクリロイル基を含有するモノマー中に混合する。有機微粒子と多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差は0.02以下とする。有機微粒子を合成する際は、モノマー総重量に対して多官能架橋剤を5%以上配合する。
【選択図】図1

Description

本発明は、乳化重合法により合成された有機微粒子を含有するコート剤およびクリアコートフィルムに関する。
プラスチックはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といったことから、ガラスに変わり自動車業界、家電業界をはじめとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。しかし、ガラスと比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有している。
この欠点を解消するために多官能アクリレートモノマーを主成分とした紫外線硬化型樹脂組成物が用いられている。また、屈折率調整や防眩性の付与、帯電防止性の付与のために、紫外線硬化型樹脂組成物にアルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物微粒子を配合されたコート剤が用いられることもある。このコート剤はフィルムの表面に塗工して乾燥させた後に加熱、または紫外線にて硬化することにより、表面に傷が付きにくい樹脂硬化物となる。
特開2002−220487号公報 特開2005−194363号公報 特開2001−13303号公報
しかしながら、両面にクリアーコート層を設けた樹脂硬化物は塗工面が平滑になるため、Roll to Rollの生産ではブロッキングの問題により巻取りができず、片面に保護フィルムを貼り合わせる方法が取られていた。また、タッチパネル用途に用いる場合は、保護フィルムを貼り合せたことで耐熱性の問題や製造ラインの変更が必要になる場合があった。
本発明者らは既に特許文献4に開示されているハードコート剤およびハードコートフィルムを見出しており、前記ブロッキングの問題を解決している。しかしながら、基材にコート剤を塗布して硬化させた際にヘーズ値が増加するため、フィルムの透明性が損なわれてしまうという別の問題が発生しており、これを改善する必要があった。
特許第4137133号公報
本発明は前記課題に鑑み、塗工面の滑り性が良く、保護フィルムを用いることなくRoll to Rollの生産が可能となり、基材にコートした際にヘーズ値が増加せず、透明性を損なわないコート剤および該コート剤でコートしたクリアコートフィルムを提供するものである。
本発明者らはコート剤に配合する微粒子によって、コート剤を塗布、硬化したフィルムのヘーズの上昇を抑えたまま、滑り性を改善できるのではないかとの着想の下、種々の微粒子について検討を行った。初めに前記金属酸化物微粒子について検討を行ったが、滑り性が向上する程度に微粒子を添加するとヘーズが上昇してしまい、視認性が低下する問題が発生した。次に耐ブロッキング剤としても使用されている、懸濁重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子について検討を行ったが、滑り性は向上するものの、コートフィルムのヘーズが上昇し、視認性が低下する問題が発生した。そこで、乳化重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子について検討を行ったところ、該有機微粒子と硬化成分となる多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差を小さくすることによってヘーズの上昇を抑えたまま、滑り性を向上できることを見出し、さらに検討を重ね、本発明を完成させた。
本発明は、乳化重合法により合成され、単量体として多官能架橋剤が5重量%以上使用されており、平均一次粒子径が80〜500nmであり、表面が疎水化処理された有機微粒子と、多官能重合性モノマーを含有し、前記有機微粒子と多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差が0.02以下であることを特徴とするコート剤である。
なお、乳化重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子を含有するコート剤がこれまで検討されなかった理由は定かではないが、懸濁重合では平均一次粒子径が500nm以下の有機微粒子を調製することが困難なことや、例えば特許文献5に記載されているように、懸濁重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子の中に乳化重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子が混入すると物性が低下すると考えられていたことや、コート剤が溶剤系となるため、乳化重合により製造された(メタ)アクリル系微粒子を用いようとすると微粒子の疎水化処理が必要となり、生産工程が増加する点が敬遠されていたためと推測される。
特開平6−73106号公報
多官能重合性モノマー中に乳化重合による平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を用いることによってクリアコートフィルムの滑り性が向上し、保護フィルムを用いることなくクリアコートフィルムのRoll to Rollの生産が可能となるため、経済的にも安価となる。クリアコートフィルムの滑り性が向上する理由としては、塗工面に微細な凹凸が形成され、塗工両面を貼り合わせする際に塗膜接触面積が減少し摩擦力が低下するためと考えられる。以下、本発明について詳細に説明する。
本発明ではコート剤のバインダー成分として、多官能重合性モノマーが用いられる。該多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などの反応基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から優位性がある。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。また、多官能重合性モノマーであればウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどを使用しても良い。ここで(メタ)はメチル基の有無を示す。
本発明に係る有機微粒子としては、乳化重合法により合成されたスチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。乳化重合法以外の懸濁重合法では平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を合成することが難しく、また分散重合法では架橋剤の添加量を増やすことができないために多官能重合性モノマー内に溶解してしまい、プラスチックフィルム上に硬化させた場合に表面に凹凸を形成することができないため、乳化重合法が好ましい。
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmのものが好適である。80nm未満では表面に凹凸を形成するのに必要な添加量が多くなるためにハードコート性能が低下し、500nmを越えるとヘイズが上昇し、視認性が低下する問題が発生する。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
有機微粒子の表面は、重合開始剤やイオン性界面活性剤の吸着により親水性になっているため、疎水化処理を施さないと多官能重合性モノマー中に混合させることができない。有機微粒子表面の疎水化処理としては、半透析膜または適切な細孔をもつ膜を使用し水溶解性成分を膜外の水中へ溶出させる方法、イオン交換樹脂層を通して親水イオン性物質を除去させる方法、電気泳動の原理を応用した電気的な方法により脱着する方法、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水可溶性塩類により塩析して非イオン性吸着層を脱着し、その後適切な細孔を有する膜等で親水性物質を粒子分散体から分離させる方法などがあげられる。
さらに、有機微粒子の疎水化処理だけではイオン性不純物を十分に除去することが難しいため、乳化重合時に媒体として使用した水を除去する方が好ましい。水を除去する方法としては、疎水化処理後の水容液中に非水系有機溶媒を添加していき、上部または下部に発生する透明な水の相を除去できる相分離法が好ましい。
相分離に用いられる非水系有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、低分子流動パラフィン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、ケロシン等の炭化水素、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。
有機微粒子を合成する際は、単量体に対して多官能架橋剤を5重量%以上配合することが望ましい。5重量%未満の場合、微粒子をコート剤に配合した際に前記多官能重合性モノマー中に溶解してしまい、滑り性が悪くなる。また、50重量%を超えて添加しても滑り性は頭打ちとなる一方、コストはさらに増加するため、一般用途では5〜50重量%が望ましい。多官能架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
多官能重合性モノマー100重量部に対し、有機微粒子の添加量は、1〜120重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましい。1重量部未満では表面の凹凸を形成することができず、また120重量部を越えると十分なハードコート性能を発揮することができない。
有機微粒子と、多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差は0.02以下であることが好ましい。有機微粒子の屈折率は1.47から1.59である。有機微粒子を合成する際にトリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ化(メタ)アクリレートを用いることで有機微粒子の屈折率を下げることができ、また、スチレンやジニルベンゼン等の芳香環を有するモノマーを用いることで有機微
粒子の屈折率を上げることができる。
本発明のコ−ト剤にはラジカル型重合開始剤を添加するが、ラジカル型重合開始剤としては特に制限はなく各種公知のものを使用することができる。ラジカル型重合開始剤としては、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・ジャパン株式会社製)、ダロキュア−1173(メルク社製)などの光開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。添加量は重合性多官能モノマー100重量部に対して1〜10重量部である。
その他、有機溶剤、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、分散剤等などを配合材料としてもよい。
本発明のコート剤が塗布される基材の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ナイロン、アクリル樹脂等、いずれも公知のものを用いることができる。形状としては、フィルムでも板でもよい。
本発明のコート剤のフィルムへの塗布方法については特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを10μm以下となるように塗布する。10μmを越えると滑り性とハードコート性のバランスが悪化するなどの問題がある。より好ましくは、2〜10μmである。
本発明のコート剤を硬化する際に電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線、紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cm2のエネルギーを有する紫外線を照射する。また、必要に応じて窒素雰囲気下にて硬化させてもよい。
基材の透明性を低下させないため、基材単体のヘーズ値に対して、基材にコート剤を塗布、硬化した後のヘーズ値の増加量が2.0%以内であることが好ましい。さらに好ましくは、1.0%以内であることが好ましい。
クリアコートフィルム表面に10nm以上の凸部が400nm2(20nm×20nm)あたり40箇所以上形成されていることが好ましい。これにより、フィルムの滑り性を確保できる。
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
(1)溶剤分散型アクリル樹脂の製造
(a)溶剤分散型スラリーA
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.5重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(A−1)を得た。
上記で合成した水系ラテックス(A−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析・脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径83nm、屈折率1.525のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(A−2)を得た。
この精製された水系ラテックス(A−2)をセルロース透析チューブから撹拌付タンクに移し、メチルイソブチルケトン300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、1次粒子を維持した非水系微粒子分散体生成物(A−3)を得た。生成物(A−3)は固形分24.9%、平均粒子径83nm、屈折率1.525であった。
(b)溶剤分散型スラリーB
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.7重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.2重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.0重量部、重炭酸ナトリウム0.4重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を75℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(B−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(B−1)に、有機溶剤への転相に妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2、Rohm and Hass社製)25部を添加し撹拌した。24時間撹拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し
、平均粒子径285nm、屈折率1.524のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(B−2)を得た。
この精製された水系ラテックス(B−2)に、メチルイソブチルケトン300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、1次粒子を維持した非水系微粒子分散体生成物(B−3)を得た。生成物(B−3)は固形分25.1%、平均粒子径285nm、屈折率1.524であった。
(c)溶剤分散型スラリーC
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.3重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部、重炭酸ナトリウム0.3重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を75℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(C−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(C−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(C−3)を得た。生成物(C−3)は固形分25.0%、平均粒子径489nm、屈折率1.526であった。
(d)溶剤分散型スラリーD
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート85重量部、スチレン10重量部、ジビニルベンゼン5重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を75℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(D−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(D−1)を、上記水系ラテックス(B−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(D−3)を得た。生成物(D−3)は固形分25.1%、平均粒子径117nm、屈折率1.508であった。
(e)溶剤分散型スラリーE
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.9重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート45重量部、スチレン26重量部、ジビニルベンゼン29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(E−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(E−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(E−3)を得た。生成物(E−3)は固形分25.1%、平均粒子径104nm、屈折率1.543であった。
(f)溶剤分散型スラリーF
水系ラテックス(A−1)の表面疎水処理を行わず、メチルイソブチルケトン300重量部を加え攪拌した。その後静置し水相と有機相とを分離したが、有機相に微粒子は転相されず、非水系微粒子分散体を得ることはできなかった。
(g)溶剤分散型スラリーG
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.5重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.7重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.5重量部、重炭酸ナトリウム0.7重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を78℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(G−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(G−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(G−3)を得た。生成物(G−3)は固形分25.2%、平均粒子径50nm、屈折率1.526であった。
(h)溶剤分散型スラリーH
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.2重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン30重量部、エチレングリコールジメタクリレート29重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.5重量部、重炭酸ナトリウム0.1重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を78℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(H−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(H−1)を、上記水系ラテックス(B−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(H−3)を得た。生成物(H−3)は固形分24.8%、平均粒子径610nm、屈折率1.524であった。
(i)溶剤分散型スラリーI
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.6重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.3重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート61重量部、スチレン35重量部、エチレングリコールジメタクリレート4重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.0量部、重炭酸ナトリウム0.4重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を78℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(I−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(I−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(I−3)を得た。生成物(I−3)は固形分25.0%、平均粒子径196nm、屈折率1.525であった。
(j)溶剤分散型スラリーJ
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、t−ブチルアクリレート66重量部、ジビニルベンゼン29重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を78℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(J−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(J−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(J−3)を得た。生成物(J−3)は固形分24.8%、平均粒子径121nm、屈折率1.498であった。
(k)溶剤分散型スラリーK
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.9重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート45重量部、スチレン45重量部、ジビニルベンゼン10重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を78℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持して重合を終了させ、水系ラテックス(K−1)を得た。
上記で合成された水系ラテックス(K−1)を、上記水系ラテックス(A−1)と同じ操作を行い、非水系微粒子分散体生成物(K−3)を得た。生成物(K−3)は固形分25.2%、平均粒子径104nm、屈折率1.548であった。
実施例1
(1)コート剤の調合
非水系微粒子分散体A(生成物A−3、固形分24.9%)を多官能重合性モノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPA 固形分100%)100重量部に対し、スラリーAの固形分が10重量部となるように添加し、希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)54重量部、レベリング剤としてByketol−OK(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を0.3重量部、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製)を3重量部混合し、コート剤(1)を得た。
(2)ハードコートフィルムの製造
次いで、コート剤(1)を厚み100μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレート:東レ株式会社製 商品名ルミラーU34)に、硬化後の樹脂膜厚が5μmとなるように塗工・乾燥し、紫外線照射機を用いて1500mW/cm2の照射強度で、仕事量が300mJ/cm2の紫外線処理を行い、硬化物を得た。
実施例2
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体B(生成物B−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例3
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体C(生成物C−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例4
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体D(生成物D−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例5
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体E(生成物E−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例6
前記実施例1において、硬化後の樹脂膜厚を2μmにした以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例7
前記実施例1において、硬化後の樹脂膜厚を9μmにした以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例8
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの固形分添加量を0.6重量部に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例9
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの固形分添加量を48.0重量部に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例10
前記実施例1において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPA 固形分100%)をペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名ライトアクリレートPE−3A 固形分100%)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
実施例11
前記実施例1において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製 商品名A−DPA 固形分100%)をウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名UA−306H 固形分100%)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
比較例1
水系ラテックス(A−1)の表面疎水処理を行わずに非水系微粒子分散体(F−3)を得ようとしたが、有機相に微粒子が転相されず、非水系微粒子分散体を得ることはできなかった。その後のコート剤の調合及びハードコートフィルムの製造は行わなかった。
比較例2
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体G(生成物G−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
比較例3
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体H(生成物H−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
比較例4
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体I(生成物I−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
比較例5
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体J(生成物J−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
比較例6
前記実施例1において、非水系微粒子分散体Aの代わりに非水系微粒子分散体K(生成物K−3)に変更した以外は同様に実施して、硬化物を得た。
各硬化物について以下の方法で試験・評価を行い、結果を表1および2にまとめた。
試験・評価方法
(1)Δヘイズ値(ΔHz)の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(株式会社東洋精機製作所製、商品名ヘイズガードII)により測定した。PET基材単体のヘイズは0.3であり、測定値から0.3を引いた値をΔHzとした。
(2)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき鉛筆硬度(株式会社東洋精機製作所製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P))を測定した。PET基材単体の鉛筆硬度はHBであった。
(3)平均凸個数
AFM(原子間力顕微鏡)画像にて400nm2(20nm×20nm)中に存在する10nm以上の凸部の数を数えた。
(4)すべり性の測定
作製した硬化物の表面をガラス板と合わせ、上から硬化物を1kg/cmの荷重で押しながら滑らせ、滑るものを○、滑らないものを×とした。
各実施例はいずれも優れたハードコート性能を有し、滑り性が良好であり、ヘーズ値の増加が少ないためクリアコートフィルムとして適している。一方、比較例1において疎水化処理されていない微粒子を用いようとしたところ、非水系微粒子分散体を得ることができなかった。また、比較例2〜6はそれぞれ有機微粒子の平均一次粒子径、多官能架橋剤の使用割合、有機微粒子と多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差が本願発明に適さない場合の例であるが、いずれもヘーズ値の増加による透明性の低下や滑り性が不適であり、本願発明の課題を解決できるものではなかった。
滑り性が良好な場合のAFM(原子間力顕微鏡)画像 滑り性が良好でない場合のAFM画像

Claims (5)

  1. 乳化重合法により合成され、単量体として多官能架橋剤が5重量%以上使用されており、平均一次粒子径が80〜500nmであり、表面が疎水化処理された有機微粒子と、多官能重合性モノマーを含有し、前記有機微粒子と多官能重合性モノマー硬化物の屈折率差が0.02以下であることを特徴とするコート剤。
  2. 請求項1記載のコート剤によってコートされていることを特徴とするクリアコートフィルム。
  3. 表面に10nm以上の凸部が400nm2あたり40箇所以上形成されていることを特徴とする請求項2記載のクリアコートフィルム。
  4. コート層の硬化後の膜厚が10μm以下であることを特徴とする請求項2または3記載のクリアコートフィルム。
  5. 基材単体のヘーズ値に対して、基材にコート剤を塗布、硬化した後のヘーズ値の増加量が2.0%以内であることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載のクリアコートフィルム。
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