JP2005194363A - 硬化性組成物およびハードコート処理物品 - Google Patents

硬化性組成物およびハードコート処理物品 Download PDF

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Abstract

【課題】硬度が高く硬化収縮が少ない硬化物が得られる硬化性組成物、および膜剥がれやヒビ割れが生じにくく、高い摩擦係数と十分な硬度を有するハードコート処理物品を建材として提供する。
【解決手段】1分子内に3個以上のエポキシ基含有硬化性樹脂、アクリル基含有硬化性樹脂を、各々少なくとも1種ずつ含有し、さらに2種類の粒度分布を持つ微粒子を添加してなる硬化性組成物、及びこれを用いたハードコート処理物品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、硬度が高く硬化収縮が少ない硬化物が得られる硬化性組成物および該硬化性組成物を基材上に塗布、硬化させることで得られる硬化樹脂層を有するハードコート処理物品に関する。
また、本発明は、該硬化性組成物を、建物の内外装材料の分野において建材の必要とする耐久性、快適な居住性の向上のために応用する技術に関する。
また、本発明は、該硬化性組成物を基材上に塗布、硬化させることにより得られる硬化樹脂層を有するハードコート処理基材に関する。
さらに、本発明は、建築材料に用いられる材料に耐久性を付与するために、特に磨耗、変質、変色などから建築材料表面を保護するために用いられる優れた耐擦傷性、表面硬度を有するハードコートフィルムに関する。
近年、建材の分野ではプラスチック製品が多く用いられている。これは加工の多様性、軽量化において、木材、ガラスに代わってその役割を担うようになりつつあるが、これらプラスチック製品の表面は傷つきやすいことが欠点となっている。
例えば、ポリカーボネート成型品の表面を傷つきにくくする方法としては、(メタ)アクリル酸エステルを塗布して紫外線硬化する方法及びアクリル系プライマーを塗布・乾燥し、続いてオルガノポリシロキサン系コーティング剤を塗布・加熱硬化する方法が知られている(例えば特許文献1(特公平4-2614号公報)、特許文献2(特開平3-287634号公報)等)。
しかしながら、前者の方法は硬化被膜の表面硬度、耐水性、耐候性が十分満足すべきものではなく、また硬化に伴う収縮が大きすぎる欠点を有している。一方、後者の方法はプライマーコート及びトップコートを二度塗布するため作業性が悪く、かつ調湿した作業環境で塗布しないと表面白化しやすく、その上加熱硬化に長時間を要するため生産性に乏しく、しかも硬化時の熱によって基材が変形し易いといった欠点がある。
また、上記方法を改良するものとして、紫外線硬化型オルガノポリシロキサンを用いる方法が知られており、例えば特許文献3(特開昭61-111330号公報)においては、アクリル官能性シリコーン樹脂組成物が開示されている。しかし、この組成物の硬化被膜は脆く、耐擦傷性に劣る。更に、特許文献4(特開昭59-204669号公報)には、メタクリロキシシラン加水分解物と多官能性アクリレート系とにコロイダルシリカを加え、耐擦傷性を向上させることについて開示されている。しかし、この組成物もまたポリカーボネート樹脂との密着性が悪く、かつメタクリロキシシラン加水分解物のシラノール基が残存しているため、耐水性や耐湿性に乏しいという欠点があった。
一方、特許文献5(特公昭63-65115号公報)には、エポキシ基含有シラン加水分解物をオニウム塩による光分解型触媒を用いて開環重合させ、耐湿性に優れた硬質被膜を得る方法が提案されている。しかし、この被膜も残存水酸基の影響で光劣化し易く、そのため耐候性の要求される外装用途(建築材料、車両窓材等)には不適当であった。
プラスチック樹脂との密着性を向上させる目的で、オルガノポリシロキサンの硬化の際に収縮率の少ない光重合性官能基含有ラダー型ポリシロキサンを紫外線照射して硬質被膜を得る方法が特許文献6(特開平4-33936号公報)に開示されている。この光重合性官能基含有ラダー型ポリシロキサンは重合度が高く、硬化の際に体積減少が少ないことから、クラック等の欠点は改良することができるが、ポリシロキサンの重合度が高いため、樹脂表面に対する投錨効果に乏しく、耐水性や耐アルカリ性に対して満足いくものではなく、その上耐擦傷性も劣るものである。しかも、上記ラダー型ポリシロキサンは生産性が悪く、収率も低いため、工業的に適した材料ではない。
従って、上述した紫外線硬化性被膜を有するプラスチック表面のハードコート処理物品は、十分満足な特性を有するものとは言い難く、このため各種特性に優れた紫外線硬化性樹脂で被覆されたハードコート処理物品の開発が望まれていた。
建材のように、長年にわたる耐久性が求められる製品、例えば外壁材、屋根材、ガラスなどは、汚れや、傷、変色、劣化分解などによって、その機能の低下、あるいは外観の見苦しさが目立ってくる。また内装、家具調度品なども使用年数に応じて、傷、汚れなどを避けることができない。その原因の多くは外壁・屋根材などでは風雨、砂塵、太陽の熱、紫外線などに起因することが多く、室内では人、什器などの接触、太陽光の紫外線などが主要因となり、更なる表面硬度の向上と、屋外の耐候性向上が望まれている。
一方、床の材料においては、靴などによる磨耗に代表される極めて過酷な状況にさらされる。磨耗によって表面が滑りやすくなるなど、危険な状況に及ぶ。特許文献7(特開平6−146209号公報)には滑りやすさの対策として、樹脂舗装表面に表層材として揺変性を有するポリウレタン材料に微小中空球を含有させた材料を塗布し、微小中空球を表面に露出させる方法が記載されている。しかしながら微粒子を固定するバインダー自体の耐久性が十分であるとは言えない。長年にわたって表面磨耗が少なく、すべり防止効果を持続するには、上記従来の技術では解決できない。
特公平4-2614号公報 特開平3-287634号公報 特開昭61-111330号公報 特開昭59-204669号公報 特公昭63-65115号公報 特開平4-33936号公報 特開平6−146209号公報
本発明の目的は、表面摩擦係数および表面硬度が高く、硬化収縮が少ない硬化物が得られる硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記硬化性組成物を基材上に塗布、硬化させることで得られる硬化樹脂層を有するハードコート処理物品を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記ハードコート処理物品を、膜剥がれやヒビ割れが生じにくく、高い摩擦係数と十分な硬度を有する建材として提供することにある。
本発明のさらなる他の目的は、磨耗、変質、変色などから建築材料表面を保護するために用いられる、優れた耐擦傷性、表面硬度を有するハードコートフィルムを提供することにある。
本発明によれば、下記構成の硬化性組成物およびハードコート処理物品が提供され、本発明の上記目的が達成される。
1.表面の鉛筆硬度が3H以上、かつ表面の摩擦係数が0.2以上の皮膜を形成し得ることを特徴とする硬化性組成物。
2.無機微粒子および有機微粒子から選ばれる微粒子を含有し、該微粒子が、平均粒径1nm以上1000nm以下の範囲の微粒子と平均粒径が1μmより大きく1mm以下の範囲の微粒子との混合粒子であることを特徴とする上記1に記載の硬化性組成物。
3.下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物とを含有し、架橋性ポリマー中の開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化することを特徴とする上記1又は2に記載の硬化性組成物。
一般式(1)
Figure 2005194363
式中、水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、P1は開環重合性基を含む一価の基であり、L1は単結合もしくは二価の連結基である。
4.前記一般式(1)で表される繰り返し単位と下記一般式(2)で表される繰り返し単位を共に含む架橋性ポリマーを含有し、開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化することを特徴とする上記1乃至3に記載の硬化性組成物。
一般式(2)
Figure 2005194363
式中、R2は水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、P2はエチレン性不飽和基を含む一価の基であり、L2は単結合もしくは二価の連結基である。
5.上記1乃至4に記載の硬化性組成物の硬化皮膜が形成されていることを特徴とするハードコート処理物品。
6.フィルム表面に、上記1乃至4に記載の硬化性組成物の硬化皮膜が形成されていることを特徴とする上記5に記載のハードコート処理物品。
7.フィルムが、プラスチックフィルムであることを特徴とする上記6に記載のハードコート処理物品。
8.フィルムが、金属板または金属が蒸着されたプラスチック板であることを特徴とする上記6に記載のハードコート処理物品。
9.複数の同種あるいは異種の硬化皮膜が、フィルム上に積層されてなることを特徴とする上記6乃至8に記載のハードコート処理物品。
本発明の硬化性組成物から、表面摩擦係数および表面硬度が高く、硬化収縮が少ない硬化皮膜が形成され、基材上に塗布、硬化させることにより得られる硬化樹脂層を有するハードコート処理物品が得られる。このハードコート処理物品は、膜剥がれやヒビ割れが生じにくく、高い摩擦係数と十分な硬度を有する建材として用いることができる。
また、上記ハードコート処理物品に包含されるハードコートフィルムは、優れた耐擦傷性、表面硬度を有し、磨耗、変質、変色などから建築材料表面を保護するために用いることができる。
本明細書において、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
本発明の硬化性組成物から形成された硬化皮膜(ハードコート皮膜)を有するハードコート処理物品を床材に使用した場合、床材表面の滑りやすさは、硬化性組成物に例えば架橋性微粒子を添加して、皮膜表面の摩擦係数を0.2以上にすることで、実用的な滑りにくさが発現する。添加する粒子の量は、添加した粒子によってハードコート表面が適度に凹凸を生じる程度が最適で、少なすぎては表面の凹凸が少なくなり平滑になるため摩擦係数が0.2未満になる。これを床材に使用した場合、すべる危険が増大するので好ましくない。皮膜表面の好ましい摩擦係数は0.25以上である。また、添加する粒子の量が多すぎても、粒子に対する硬化性組成物中のバインダー量が少なくなり、皮膜の強度が低下する。添加量は概ね硬化後のハードコート層の1〜60体積%であることが好ましく、3〜40体積%であることがさらに好ましい。
添加する粒子の大きさは、1μm〜1000μmが適当である。好ましくは3〜500μm、さらに好ましくは5μm〜100μmである。
このようにして得られた本発明の硬化性組成物から形成された皮膜を有する床材を床面に用いるとスリップによる転倒防止の効果があると同時に、本発明の硬化性組成物から形成された皮膜は、表面硬度が鉛筆硬度で3H以上の性能を有するので、この硬化性組成物から形成されたハードコート層(皮膜)による高い傷防止効果(耐擦傷性)も有する。従って、広範囲にその利用が期待される床材が得られる。
使用できる微粒子は、無機架橋微粒子、有機架橋微粒子、有機-無機複合架橋微粒子のいずれも特に制限なく使用できる。無機架橋微粒子としては例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。
本発明では、上記無機架橋微粒子のうち、平均粒径が1μm以下のものと、1μmを越えるものを併用することで、すべり防止効果だけではなくハードコート層の硬化時点の体積収縮量を低減でき、基材との密着性が向上し、基材がプラスチックフィルムである場合などに起こりがちなカールを低減でき好ましい。
本発明に用いることのできる平均粒径が1μm以下の架橋微粒子としては、平均粒径が1〜1000nmが好ましく、2〜1000nmがより好ましく、5〜500nmであることがさらに好ましく、10〜200nmであることが最も好ましい。
平均粒径が1μmを越える架橋微粒子としては、平均粒径が1μmを越え1mm以下であることが好ましく、3〜500μmがより好ましく、5〜200μmであることがさらに好ましく、10〜100μmであることが最も好ましい。
これら架橋微粒子の形状は、球状、棒状、針状、板状など特に制限なく使用できる。なお、本発明で述べる平均粒子径は、個々の粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径の平均値である。これら架橋微粒子を添加する場合の添加量は、硬化後のハードコート層の1〜60体積%であることが好ましく、3〜40体積%であることがさらに好ましい。
一般に無機架橋微粒子は、本発明のバインダーとして用いられるポリマーやバインダー前駆体である多官能ビニルモノマーなどの有機成分との親和性が低いため単に混合するだけでは凝集体を形成したり、硬化後のハードコート層がひび割れやすくなる場合がある。本発明では無機架橋微粒子と有機成分との親和性を増すため、無機架橋微粒子表面を有機セグメントを含む表面修飾剤で処理することができる。表面修飾剤は、無機架橋微粒子と結合を形成するか無機架橋微粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。無機架橋微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する化合物としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド化合物や、リン酸、スルホン酸、カルボン酸基等のアニオン性基を有する化合物が好ましい。さらに有機成分との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和基、もしくは開環重合性基が好ましい。本発明において好ましい無機架橋微粒子表面修飾剤は金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和基もしくは開環重合性基を同一分子内に有する化合物である。
これら表面修飾剤の好ましい例として以下の不飽和二重結合や開環重合性基を有するカップリング剤やリン酸、スルホン酸、カルボン酸化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
S−1 H2C=C(X)COOC36Si(OCH33
S−2 H2C=C(X)COOC24OTi(OC253
S−3 H2C=C(X)COOC24OCOC510OPO(OH)2
S−4 (H2C=C(X)COOC24OCOC510O)2POOH
S−5 H2C=C(X)COOC36OSO3
S−6 H2C=C(X)COO(C510COO)2
S−7 H2C=C(X)COOC510COOH
S−8 γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
(X=H、あるいはCH3をあらわす)
これらの無機架橋微粒子の表面修飾処理方法は、従来公知のいずれの手法を用いてもよい。例えば溶液中で表面修飾処理を行う場合、無機架橋微粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機架橋微粒子を微細分散したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、さらには無機架橋微粒子を微細分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でも良い。この場合の溶媒としては、極性の高い有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール類、ケトン類、エステル類等の公知の有機溶剤が挙げられる。また分散機としては超音波分散機、ディスパー、ホモジナイザー、ディゾルバー、ポリトロン、ペイントシェーカー、サンドグラインダー、ニーダー、アイガーミル、ダイノミル、ボールミル等を用いることが好ましい。
有機架橋微粒子としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類およびアミド類、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリジメチルシロキサン等の汎用樹脂を架橋させたものやSBR、NBRなどの架橋ゴム微粒子も好ましく使用できる。有機架橋微粒子は軟質なゴム粒子から硬質粒子まで任意に選択できる。
例えば、前記した硬度の高い無機架橋微粒子は、ハードコート層に対する添加量を上げていくと硬化収縮量や硬度は向上するが、もろく割れやすくなる場合がある。このような場合、硬度を適切に調節した有機架橋微粒子を同時に添加することで割れにくくすることができ好ましい。また、硬度の高いコアと硬度の低いシェルまたは硬度の低いコアと硬度の高いシェルのようなコア−シェル粒子とすることもできる。またハードコート層中もしくは塗布溶媒中での分散安定性を確保する目的で親疎水性を変えたコア−シェル粒子とすることも好ましい。また、コアに無機架橋微粒子を用いた有機−無機複合微粒子とすることもできる。これら架橋微粒子をコア−シェル粒子とする場合、コア部とシェル部の両方が架橋されていてもよいし、いずれか一方が架橋されていてもよい。
本発明の硬化性組成物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物とを含有する組成物か、あるいは一般式(1)および一般式(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含有する組成物であることが好ましい。
また、本発明のハードコート処理物品は、基材上に本発明の硬化性組成物を塗設し、硬化して形成されるハードコート層を有するものであって、ハードコート層は単層であっても複数層から構成されていてもよい。製造工程上簡便な単層であることが好ましい。この場合の単層とは同一組成物で形成されるハードコート層であって、塗布、乾燥(両者を合わせて「塗設」という。)後の組成が、同一組成のものであれば、複数回の塗布で形成されていてもよい。一方、本明細書では、複数層とは組成の異なる複数の組成物で形成されることを表す。本発明では少なくとも一層が、本発明の硬化性組成物を塗設、硬化させて形成されるハードコート層であることが必要であり、特に最外層が本発明の硬化性組成物を塗設して、硬化させて形成されるハードコート層であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物に前述の架橋微粒子を添加する場合の添加量は、硬化後のハードコート層の1乃至60体積%であることが好ましく、3乃至40体積%であることがさらに好ましい。
本発明のハードコート処理物品において基材にプラスチックフィルムを用いた場合に得られるハードコートフィルムは様々な物品の表面保護フィルムとして粘着剤などを用いて貼り合わせて使用することができ、該ハードコートフィルムを貼り付けた物品も本発明のハードコート処理物品に含まれる。
以下に本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(1)
Figure 2005194363
一般式(1)中、R1は水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子もしくはメチル基である。L1は単結合もしくは二価の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。P1は開環重合性基を含む一価の基である。開環重合性基を含む一価の基とはカチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する一価の基であり、この中でもヘテロ環状化合物のカチオン開環重合が好ましい。好ましいP1としては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環などのイミノエーテル環などを含む一価の基が挙げられ、この中でも特に好ましくはエポキシ環、オキセタン環、オキサゾリン環を含む一価の基であり、最も好ましくはエポキシ環を含む一価の基である。
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、対応するモノマーを重合させて合成することが簡便で好ましい。この場合の重合反応としてはラジカル重合が最も簡便で好ましい。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005194363
Figure 2005194363
Figure 2005194363
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位のうち、より好ましい例としては、エポキシ環を有するメタクリレートまたはアクリレートから誘導される繰り返し単位であり、その中でも特に好ましい例としてグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートから誘導されるE−1、E−3をあげることができる。また、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(1)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、その中でも特にE−1、E−3いずれかのコポリマーとすることでより効果的に硬化収縮を低減できる。
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは一般式(1)以外の繰り返し単位(例えば開環重合性基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのTgや親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーの開環重合性基の含有量をコントロールする目的で一般式(1)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとすることができる。一般式(1)以外の繰り返し単位の導入方法は、対応するモノマーを共重合させて導入する手法が好ましい。
一般式(1)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを共重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(例えば、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシメトキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、セチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなど)、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイミド類(N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。本発明ではアクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類、およびアミド類、および芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられるビニルモノマーである。
一般式(1)以外の繰り返し単位として開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位も導入することができる。特に、ハードコート層の硬度を高めたい場合や、基材もしくはハードコート上に別の機能層を用いる場合の層間の接着性を改良したい場合、開環重合性基以外の反応性基を含むコポリマーとする手法は好適である。開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位の導入方法は対応するビニルモノマー(以下、「反応性モノマー」と称する。)を共重合する手法が簡便で好ましい。
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、30質量%以上100質量%以下、好ましくは50質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。一般式(1)以外の繰り返し単位が、架橋反応性基を有さない場合、その含量が多すぎると硬度が低下し、架橋反応性基を有する場合、硬度は維持できることもあるが、硬化収縮が大きくなったり、脆性が悪化する場合がある。特にアルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)と一般式(1)で表される繰り返し単位の共重合体を用いる場合などのように架橋反応時に脱水、脱アルコールなどの分子量低下を伴う場合、硬化収縮が大きくなりやすい。このような分子量低下を伴って架橋反応が進行する架橋反応性基を有する繰り返し単位を本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーに導入する場合の一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい分子量範囲は質量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表1および表2に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)で表される繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005194363
Figure 2005194363
以下、本発明に用いることのできる同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物について説明する。好ましいエチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、特に好ましくはメタクリロイル基又はアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。エチレン性不飽和基を含む化合物はエチレン性不飽和基を分子内に2個以上有していればよいが、より好ましくは3個以上である。そのなかでもアクリロイル基を有する化合物が好ましく、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に数個のアクリル酸エステル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
これら分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の好ましい具体例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。また、このような化合物は市販もされていて、EB−600、EB−40、EB−140、EB−1150、EB−1290K、IRR214、EB−2220,TMPTA、TMPTMA(以上、ダイセル・ユーシービー(株)製)、UV−6300、UV−1700B(以上、日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
上記で挙げた分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物のなかでも特に好ましい化合物として分子内に3個以上のアクリロイル基を有しアクリロイル当量が120以下の化合物が挙げられ、具体例としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
また、本発明では分子内に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物として一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーも好ましく使用できる。以下、一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(2)
Figure 2005194363
一般式(2)中、R2は水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子もしくはメチル基である。
2は、エチレン性不飽和基を含む一価の基である。
2は、単結合もしくは二価の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
好ましいP2としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基を含む一価の基であり、最も好ましくはアクリロイル基を含む一価の基である。
以下に一般式(2)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005194363
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Figure 2005194363
Figure 2005194363
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一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、(a)対応するモノマーを重合させて直接エチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよく、(b)任意の官能基を有するモノマーを重合して得られるポリマーに高分子反応によりエチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよい。また、(a)および(b)の手法を組み合わせて合成することもできる。重合反応としてはラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられる。前記、(a)の方法を用いる場合、重合反応により消費されるエチレン性不飽和基と架橋性ポリマー中に残されるエチレン性不飽和基の重合性の差を利用することが好ましい。
例えば、一般式(2)の好ましいP2のなかで、アクリロイル基、メタクリロイル基を含む一価の基を用いる場合、架橋性ポリマーを生成させる重合反応をカチオン重合とすることで前記(a)の手法によって本発明の架橋性ポリマーを得ることができる。一方、P2をスチリル基を含む一価の基とする場合、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれの方法をとってもゲル化が進行しやすいため通常前記(b)の手法によって本発明の架橋性ポリマーを合成する。
このように前記(b)に記述した高分子反応を利用する手法は一般式(2)で示される架橋性ポリマー中に導入されるエチレン性不飽和基の種類によらず、架橋性ポリマーを得ることが可能であり、有用である。高分子反応は、I)例えば2−クロロエチル基から塩酸を脱離させるようなエチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基を含むポリマーを生成させたあとに官能基変換(脱離反応、酸化反応、還元反応、脱保護反応など)によりエチレン性不飽和基に誘導する方法と、II)任意の官能基を含むポリマーを生成させたあとに、該ポリマー中の官能基と結合生成反応が進行し、共有結合を生成しうる官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する化合物(以降、「反応性モノマー」と称する。)を反応させる方法が挙げられる。またこれら I)、II)の方法は、組み合わせて行ってもよい。ここで言う結合形成反応とは、一般に有機合成分野で用いられる結合生成反応のなかで共有結合を形成する反応であれば特に制限なく使用できる。一方で、架橋性ポリマーに含まれるエチレン性不飽和基が反応中に熱重合し、ゲル化してしまう場合があるので、できるだけ低温(好ましくは60℃以下、特に好ましくは室温以下)で反応が進行するものが好ましい。また反応の進行を促進させる目的で触媒を用いても良く、ゲル化を抑制する目的で重合禁止剤を用いてもよい。
以下に好ましい高分子結合形成反応が進行する官能基の組み合わせの例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
加熱もしくは室温で反応が進行する官能基の組み合わせとしては、(イ)ヒドロキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、ホルミル基、アセタール基、(ロ)イソシアネート基に対してヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、N−メチロール基、(ハ)カルボキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、N−メチロール基、(ニ)N−メチロール基に対して、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、(ホ)エポキシ基に対して、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、N−メチロール基、(ヘ)ビニルスルホン基に対してスルフィン酸基、アミノ基、(ト)ホルミル基に対してヒドロキシル基、メルカプト基、活性メチレン基、(チ)メルカプト基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、(リ)アミノ基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N−メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、などの組み合わせが挙げられる。
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど)、エポキシ基含有ビニルモノマー(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、CYCLOMER−M100、A200(ダイセル化学工業(株)製)など)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、ビニル基含有ビニルモノマー(例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、が挙げられる。
前記II)に記載した任意の官能基を含むポリマーは、反応性官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する反応性モノマーの重合を行うことで得ることができる。また、ポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールのように反応性の低い前駆体モノマーの重合後、官能基変換を行うことで得ることもできる。これらの場合の重合方法としては、ラジカル重合が最も簡便で好ましい。
本発明の一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(2)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、一般式(2)以外の繰り返し単位(例えばエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのTgや親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーのエチレン性不飽和基の含有量をコントロールする目的で一般式(2)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとする手法は好適である。一般式(2)以外の繰り返し単位の導入方法は、a)対応するモノマーを共重合させて直接導入する手法を用いてもよく、b)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入する手法を用いてもよい。また、a)およびb)の手法を組み合わせて導入することもできる。
a)の手法によって一般式(2)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーの例としては、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの説明で述べた一般式(1)以外の繰り返し単位として挙げたものと同じである。
また、一般式(2)で表される繰り返し単位を前記(b)のように高分子反応で導入し、反応を完結させない場合、エチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基や反応性官能基を含む繰り返し単位を有する共重合体となるが、本発明では特に制限なく用いることができる。
上記で挙げたビニルモノマーから誘導されるエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位の大部分は前述したb)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入することも可能である。一方で、本発明の一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、高分子反応によってのみでしか、導入できない一般式(2)以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。典型的な例としてポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールやポリビニルアルコールのアセタール化反応によって得られるポリビニルブチラール等を挙げることができる。これらの繰り返し単位の具体的な例を以下に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005194363
本発明の一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(2)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。
一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい分子量範囲は質量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
以下に一般式(2)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表3に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(2)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005194363
以下に本発明の一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。ここで言う一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位は前記したものと同じものであり、好ましい形態も同じである。また、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位で構成されるコポリマーであってもよく、一般式(1)および(2)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーであってもよい。また、エチレン性不飽和基および開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位を含んだコポリマーであってもよく、いずれの場合も好ましい態様は前記で挙げたものと同じである。
一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、一般式(2)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい分子量範囲は質量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーが、一般式(1)および(2)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーの場合、一般式(1)および(2)以外の繰り返し単位が、架橋反応性基を有さない場合、その含量が多すぎると硬度が低下し、架橋反応性基を有する場合、硬度は維持できることもあるが、硬化収縮が大きくなったり、脆性が悪化する場合がある。特にアルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)と一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の3元共重合体を用いる場合などのように架橋反応時に脱水、脱アルコールなどの分子量低下を伴う場合、硬化収縮が大きくなりやすい。このような分子量低下を伴って架橋反応が進行する架橋反応性基を有する繰り返し単位を本発明の一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーに導入する場合の一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表4に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
Figure 2005194363
本発明の硬化性組成物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の両方を含有するか、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含有するいずれかの組成物である。
本発明の硬化性組成物が、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の両方を含有する場合、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の好ましい混合比は用いる化合物の種類によっても異なるが、エチレン性不飽和基を含む化合物の割合が30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
また、本発明の硬化性組成物中には、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー以外の開環重合性基を含む化合物も添加することができる。ここで言う開環重合性基を含む化合物とはカチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する化合物であり、この中でもヘテロ環状化合物のカチオン開環重合が好ましい。このような化合物としてエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類などが挙げられ、特にエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、オキサゾリン誘導体が好ましい。同一分子内に有する開環重合性基の数は特に制限はなく、1個以上有していればよいが、2個以上の開環重合性基を有する化合物がより好ましい。このような化合物の具体例としては、例えばグリシジルエーテル類としてエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど、脂環式エポキシ類としてセロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401、EHPE3150CE(以上、ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど、オキセタン類としてOXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。
また、本発明の硬化性組成物中には、同一分子内に1個のエチレン性不飽和基を含む化合物も添加することができる。このような化合物の好ましい例としては一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの説明で述べた共重合可能なビニルモノマーや反応性モノマーの例を挙げることができる。
本発明の硬化性組成物が、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の両方を含有する場合の上記で挙げた一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー以外の開環重合性基を含む化合物および同一分子内に1個のエチレン性不飽和基を含む化合物の添加量は、架橋性ポリマーも含めた全ての開環重合性基を含む化合物およびエチレン性不飽和基を含む化合物の総質量に対し、50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。
本発明の硬化性組成物が、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含有する場合も、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー以外の開環重合性基を含む化合物を添加することができ、好ましい化合物例は上記で挙げたものと同じである。
また、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー以外のエチレン性不飽和基を含む化合物も添加することができる。この場合、同一分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基が含まれていればよいが、2個以上がより好ましく、3個以上が特に好ましい。同一分子内に1個のエチレン性不飽和基を含む化合物の好ましい例としては一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの説明で述べた共重合可能なビニルモノマーや反応性モノマーの例を挙げることができ、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の例としては一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと併用する場合と同じであり、好ましい例も同じである。
本発明の硬化性組成物が、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含む場合、上記で挙げた一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー以外の開環重合性基を含む化合物およびエチレン性不飽和基を含む化合物の添加量は、一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位を含む割合により異なるが、架橋性ポリマーも含めた全ての開環重合性基を含む化合物およびエチレン性不飽和基を含む化合物の総質量に対し、50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。
本発明では、エチレン性不飽和基を含む化合物と開環重合性基を含む化合物の両方の化合物の架橋反応が進行することが好ましい。エチレン性不飽和基の好ましい架橋反応はラジカル重合反応であり、開環重合性基の好ましい架橋反応はカチオン重合反応である。いずれの場合も熱および/または光の作用により、重合反応を進行させることができる。通常、重合開始剤と称される少量のラジカル発生剤もしくはカチオン発生剤(もしくは酸発生剤)を添加し、熱および/または光によりこれらを分解し、ラジカルもしくはカチオンを発生させ重合を進行させる方法が一般的である。ラジカル重合とカチオン重合は別々に行ってもよいが、同時に進行させることが好ましい。ラジカル発生剤を添加せずに架橋反応を進行させる方法として単に加熱する方法もあるが、電子線を照射する方法が好ましく用いられる。
本発明では基材に、プラスチックフィルム、プラスチック板、金属フィルム(金属箔)、金属板、金属が蒸着したプラスチック板などが用いられる。プラスチックフィルムを用いる場合、プラスチックフィルム自身の耐熱性が低い場合は、加熱により硬化させる時に、できるだけ低温で硬化させることが好ましい。その場合の加熱温度は、140度以下、より好ましくは100度以下である。一方で光の作用による硬化は、低温で架橋反応が進行する場合が多く、好ましく用いられる。さらに放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を利用する方法が好ましく、その中でも紫外線によりラジカルもしくはカチオンを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。また、活性エネルギー線を照射するときの温度は特に制限はないが、低温で行うことにより硬化後の体積収縮が抑えられたり、基材としてプラスチックフィルムを用いた場合、基材の変形が少なくなり、有利な場合が多い。この場合の好ましい温度は80℃以下であり更に好ましくは50℃以下である。また活性エネルギー線を照射した後、加熱することにより、さらに硬化を進行させることができる場合があり、必要に応じて用いることができる。この場合の好ましい加熱温度は140℃以下である。
光の作用によってカチオンを発生させる光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の化合物やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の化合物が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。この中で特に好ましくはスルホニウム塩もしくはヨードニウム塩であり、対イオンとしてはPF6 -、SbF6 -、AsF6 -、B(C654 -などが好ましい。
光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン等が挙げられる。ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。このような芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤の中でも、アセトフェノン系化合物及びベンジル系化合物が、硬化特性、保存安定性、臭気等の面で特に好ましい。これらの芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤は、1種あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
また上記で挙げたように通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光の作用によりラジカル発生剤として機能するため、本発明ではこれらを単独でもちいてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン等が含まれる。
重合開始剤は、それぞれ複数種を組み合わせて用いてもよいし、単独でラジカルとカチオンの両方を発生させるような化合物の場合など単独で用いることができる。重合開始剤の添加量としては、硬化性組成物中に含まれる架橋性ポリマーも含めたエチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の総質量に対し、0.1乃至15質量%の範囲で使用することが好ましく、1乃至10質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマーや、一般式(2)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマーおよび一般式(1)および(2)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー(本発明において、これらを合わせて「本発明のポリマー」とも称する。)は通常、固体もしくは高粘度液体となり単独での塗布は困難であり、ポリマーが水溶性の場合や水分散物とした場合は水系で塗布することもできるが、通常有機溶媒に溶解して塗布される。有機溶媒としては、本発明のポリマーを可溶ならしめるものであれば特に制限なく使用できる。好ましい有機溶媒としては、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。また、前記した単官能もしくは多官能のビニルモノマーや単官能もしくは2官能もしくは3官能以上の開環重合性基を有する化合物が低分子量化合物である場合、これらを併用すると、硬化性組成物の粘度を調節することが可能であり、溶媒を用いなくても塗布可能とすることもできる。
本発明において基材自身の硬度が低い場合にもハードコート処理物品の硬化後のハードコート層の膜厚を厚くすることで、ハードコート処理物品の硬度を高めることができる。本発明におけるハードコート層の膜厚は基材の硬度によっても異なり、特に制限はないが、ハードコート層の膜厚を厚くすることで本発明の特徴である硬度が高く、ひび割れ、膜剥がれが生じにくいという効果が顕著に現れる。好ましい膜厚としては、1〜200μmであり、より好ましくは3〜200μmであり、さらに好ましくは5〜200μmであり、その中でも特に好ましくは10〜200μmである。
本発明に用いられる基材は、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙など特に制限なく使用できる。その中でも特にプラスチック基材が好ましく、さらにはプラスチックフィルムを基材に用いた場合、本発明の効果が顕著に現れるため、好ましい。プラスチックフィルムとしては、特に制限はないが、具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース樹脂等のフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。フィルムの厚みは、用いる基材によって、また積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられるあるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが良く用いられる。
本発明のハードコート処理物品は表面の硬度が高いことが好ましい。本発明で言うハードコート処理物品の表面の硬度はJIS K5400で定義される鉛筆硬度で表すことができ、ハードコート処理物品のハードコート処理表面を直接鉛筆で引っかくことによって鉛筆硬度を評価することができる。この場合の鉛筆硬度は基材の種類によっても異なるため特に制限はないが、好ましくは3H〜9H、より好ましくは4H〜9H、特に好ましくは5H〜9Hである。
本発明のハードコート処理物品は、本発明の架橋性ポリマーのほかにエチレン性不飽和基含有化合物、開環重合性基含有化合物、重合開始剤、架橋微粒子、溶媒などで構成される硬化性組成物を基材上に塗設し、硬化することで得ることができる。硬化性組成物にはその他、紫外線吸収剤、塗布性改良のための界面活性剤、帯電防止剤など、従来公知の添加剤を添加してもよい。塗布方法としてはカーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング、スロットコーティング、ロールコーティング、スライドコーテティング、ブレードコーティング、グラビアコーティング、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
さらに、基材とハードコート層の接着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記表面処理法としては、例えば薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火焔処理、高周波処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、活性プラズマ処理、混酸処理等が挙げらる。更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエステル等の共重合体またこれらのラテックス、ポリエステル、ポリウレタン、およびゼラチン等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
本発明のハードコート処理物品はハードコートのほかに、紫外線吸収・赤外線吸収、選択波長吸収、電磁波シールド機能や防汚性等の各種機能を付与することができる。これらの機能は、従来公知の技術、例えば、新たに機能性層として塗布する場合、あるいは接着剤層に付与、あるいは粘着剤層に付与することなどによって作製することができる。これら機能性層を本発明のハードコート処理物品のハードコート層の上に接着のための表面処理をして設けることもできる。表面処理法としては、前記、基材の表面処理方法として挙げた方法が好ましく使用できる。また、接着層としては前記、基材上に施される下塗り層で挙げた素材が好ましく使用できる。
本発明のハードコート処理物品において基材にプラスチックフィルムを用いた場合に得られるハードコートフィルムは建材の表面保護フィルムとして粘着剤などを用いて建材に張り合わせて使用することができる。張り合わせる建材は木材、合成樹脂、金属など、さまざまなものに貼ることができる。本発明ではその高い耐久性を生かして、プラスチックタイル、大理石、磨きコンクリートなどの床材に使用すると効果的である。このように建材に該ハードコートフィルムを貼り付けた物品も本発明のハードコート処理物品に含まれる。特にハードコート層に加え、上述のような紫外線吸収などの機能性層を施した場合、高硬度の機能性フィルムとして供され、外壁、ショーウインドウ、窓ガラスなどに用いた場合、ガラス破損時の飛散防止、紫外線による内装品の変色、退色防止にも効果を発揮する。
以下に本発明のポリマーの合成例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)例示化合物K−1の合成
メチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬工業(株)製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、グリシジルメタクリレート(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、K−1を45g得た。
(合成例2)例示化合物P−1の合成
Figure 2005194363
1b(3.0mol)をテトラヒドロフラン(THF)1400ml中に溶かし、反応器を5℃に冷却した。そこに1a(3.15mol)を1時間かけて滴下し、その後6時間反応させた。得られた反応溶液を30℃で減圧濃縮後、重合禁止剤として1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル,フリーラジカルを0.3g添加し、減圧蒸留を行った。133Pa減圧下で118〜121℃の留分を採取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:アセトン/ヘキサン=5/95(体積比))にて精製し、1cを362g得た。
次にメチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬工業(株)製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、1c(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、1dを43g得た。
次に1d(43g)をアセトン(390ml)に溶解し、5℃に冷却した。そこにトリエチルアミン(390mmol)を1時間かけて滴下させ、滴下終了後、室温で24時間反応させた。その後、反応容器を5℃に冷却し、6規定の塩酸水溶液29.3mlを1時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間攪拌させた。得られた反応溶液に酢酸エチル(1L)と10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)を加えて攪拌後、水層を分離した。更に有機層を10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを100g添加し、1時間乾燥した後、硫酸ナトリウムを濾別した。得られた溶液を500mlまで濃縮後、ヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を20℃、8時間減圧乾燥し、例示化合物P−1を33g得た。
(合成例3)例示化合物P−19の合成
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−105:鹸化度98.5%)30gをジメチルスルホキシド1000mlに溶解後、ピリジン(200ml)とニトロベンゼン10mlを添加し、10℃まで冷却した。その後、無水アクリル酸100mlを1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で24時間反応させた。得られた反応溶液を水20Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を1Lの酢酸エチルに溶解し、2規定の塩酸水溶液(1L)で2回洗浄した。さらに10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを100g添加し、1時間乾燥した後、硫酸ナトリウムを濾別した。得られた溶液を500mlまで濃縮後、ヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を20℃、8時間減圧乾燥し、例示化合物P−19を28g得た。
(合成例4)例示化合物C−1の合成
Figure 2005194363
1b(3.0mol)をテトラヒドロフラン(THF)1400ml中に溶かし、反応器を5℃に冷却した。そこに1a(3.15mol)を1時間かけて滴下し、その後6時間反応させた。得られた反応溶液を30℃で減圧濃縮後、重合禁止剤として1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル,フリーラジカルを0.3g添加し、減圧蒸留を行った。133Pa減圧下で118〜121℃の留分を採取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:アセトン/ヘキサン=5/95(体積比))にて精製し、1cを362g得た。
次にメチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬工業(株)製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、1c(41.9g)とグリシジルメタクリレート(15.0g)の混合物を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、1dを49g得た。
次に1d(49g)をアセトン(390ml)に溶解し、5℃に冷却した。そこにトリエチルアミン(390mmol)を1時間かけて滴下させ、滴下終了後、室温で24時間反応させた。その後、反応容器を5℃に冷却し、6規定の塩酸水溶液29.3mlを1時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間攪拌させた。得られた反応溶液に酢酸エチル(1L)と10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)を加えて攪拌後、水層を分離した。更に有機層を10質量%の塩化ナトリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを100g添加し、1時間乾燥した後、硫酸ナトリウムを濾別した。得られた溶液を500mlまで濃縮後、ヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を20℃、8時間減圧乾燥し、例示化合物C−1(x/y=70/30質量%)を36g得た。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<無機架橋微粒子分散液Aの調製>
セラミックコートのベッセルに各試薬を以下の量計量した。
メチルイソブチルケトン 234g
アニオン性官能基含有表面処理剤 S−6(X=H) 36g
アルミナ微粒子(平均粒径:15nm) 180g
上記混合液をサンドミル(1/4Gのサンドミル)にて1600rpm、10時間微細分散した。メディアは1mmΦのジルコニアビーズを1400g用いた。分散後、ビーズを分離し、表面修飾した無機架橋微粒子分散液を得た。
<無機架橋微粒子分散液Bの調製>
セラミックコートのベッセルに各試薬を以下の量計量した。
メチルイソブチルケトン 234g
アニオン性官能基含有表面処理剤 S−6(X=H) 36g
アルミナ微粒子(平均粒径:15μm) 180g
上記混合液をサンドミル(1/4Gのサンドミル)にて1600rpm、10時間微細分散した。メディアは1mmΦのジルコニアビーズを1400g用いた。分散後、ビーズを分離し、表面修飾した無機架橋微粒子分散液を得た。
<硬化性組成物の調製>
(i)本発明の架橋性ポリマーと(ii)エチレン性不飽和基含有化合物と(iii)開環重合性基含有化合物と(iv)ラジカル重合開始剤(イルガキュア184(チバガイギー社製))と(v)カチオン重合開始剤(UVI−6990(ユニオンカーバイド日本(株)製)をメチルエチルケトンに溶解後、(vi)有機架橋微粒子を添加し、30分攪拌し、(vii)無機架橋微粒子分散液の混合液AまたはB、あるいはAとBを添加し、30分間攪拌し、硬化性組成物を得た。なお、(i)本発明の架橋性ポリマーと(ii)エチレン性不飽和基含有化合物と(iii)開環重合性基含有化合物の種類は表5記載の組み合わせで選択し、(i)、(ii)、(iii)および架橋微粒子の混合比は表5記載の比率になるように調製した。なお、本発明の架橋性ポリマーのうちエチレン性不飽和基と開環重合性基の両方を有するポリマーは本発明のコポリマーの欄に、開環重合性基のみを有するポリマーは開環重合性基含有化合物の欄に、エチレン性不飽和基のみを有するポリマーはエチレン性不飽和基含有化合物の欄に記載した。
重合開始剤は、本発明の架橋性ポリマーも含めたエチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の総質量に対し、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤を2.9%ずつ添加した。なお、開環重合性基含有化合物を含まない場合はラジカル重合開始剤のみを5.8%添加した。
有機架橋微粒子は、コア/シェル比が70/30質量%のラテックス(平均粒子径:110nm)をスプレードライ法により乾燥し、そのまま用いた(コア:ブチルアクリレート/エチレングリコールジメタクリレート(90/10質量比)の共重合体、シェル:メチルメタクリレート/アクリル酸/エチレングリコールジメタクリレート(90/3/7質量比)の共重合体)。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
DPPA:ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート
UV−6300:ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製)
DTPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(Aldrich製)
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(Aldrich製)
PETTA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Aldrich製)
ECMECC:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Aldrich製)
CHDMDV:1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(Aldrich製)
GT−401:4官能エポキシ化合物(ダイセル化学工業(株)製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(Aldrich製)
BADGE:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
TMPTGE:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル
Figure 2005194363
<ハードコートフィルム試料(試料1〜11)の作製>
透明基材として188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにグロー放電処理した後、上記で作成した硬化性組成物を表5記載の処方、膜厚になるようにスロットコーターで塗布、120℃で2分乾燥し、750mj/cm2の紫外線照射後、120℃、10分加熱することによって、ハードコートフィルムを作製した。
<ハードコートフィルム積層板の作成、試料1P,2P,6P,7P>
試料1,2,6,7のハードコートフィルムの裏面に大日本インキ株式会社製粘着剤(SPS−1260)を20ミクロンの厚さに塗布して、厚さ3mmのポリカーボネート板に貼り付けて100cm角のサンプルを作成した。
<ハードコートフィルム積層板の作成、試料1S,2S,8S,9S>
試料1,2,8,9のハードコートフィルムの裏面に大日本インキ株式会社製粘着剤(SPS−1260)を20ミクロンの厚さに塗布して、厚さ3mmのステンレススチール板に貼り付けて100cm角のサンプルを作成した。
<サイクルサーモテスト>
ハードコートフィルムを貼り付けたポリカーボネート板(試料1P,2P,6P,7P)、ステンレススチール板(試料1S,2S,8S,9S)をフィルム面を外側にして、半径2mの曲率で曲げた状態で、70℃8時間と−20℃8時間のサイクルで45回サイクルサーモテストを実施した。終了後、鉛筆硬度、剥がれ、表面ひび割れ(顕微鏡観察による表面のひび発生状況)について評価した。結果を表6、表7に示した。
実施例試料の評価法は以下に示す方法で行った。
(鉛筆硬度の評価法)
作製したハードコートフィルムおよびハードコートガラス試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、JIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回繰り返し、傷が全く認められなかった回数を表した。5回とも傷が全く認められなかった最大の鉛筆硬度がハードコートフィルムの鉛筆硬度である。なお、JIS K5400で定義される傷は(i)塗膜の破れ、(ii)塗膜のすり傷であり、(iii)塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、ここでは、(iii)塗膜のへこみも含めて傷と判断している。
(膜剥がれの評価法)
ハードコートフィルムおよびハードコートガラス試料のハードコート層表面にカッターによって1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個入れ、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、その上にセロテープ(登録商標;ニチバン(株)製)を貼り付け、該セロテープを剥がしたときに硬化被膜がフィルム基材から剥がれた升目の数を計測することで評価した。
(カールの評価法)
ハードコートフィルム試料を35mm×140mmに切断し、温度25℃、相対湿度60%の条件でハードコート層側を上にして水平面に2時間放置した後、水平面からの4角の浮いた高さの平均値を測定することで評価した。
(ひび割れの評価法)
ハードコートフィルム試料を35mm×140mmに切断し、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、筒状に丸めたときのひび割れが発生し始める曲率直径を測定し、表面のひび割れを評価した。また、エッジ部のひび割れを目視で評価し、全くひび割れのないものを○、わずかでもひび割れのあるものを×とした。なお、サイクルサーモテストサンプルは顕微鏡観察で1平方センチあたりのひび割れ本数で表記した。
(摩擦係数の評価法)
ハードコートフィルム試料を35mm×140mmに切断し、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、新東科学社製HEIDON―14型動摩擦計で、フィルム表面の動摩擦係数を測定した。
Figure 2005194363
Figure 2005194363
表5に示したフィルム単体での評価結果より、微粒子を添加したいずれのハードコート層の摩擦係数も大幅に上昇し、床材として、すべり防止効果は見られ、さらに本発明のポリマーを併用することで、ハードコート層の鉛筆硬度は、使用しないものに比較して大幅に向上したことが認められ、本発明の効果が確認された。
また表6、7に示した積層体による評価結果からも、他の基材と積層した状態でも、サイクルサーモテスト後のいずれの評価においても本発明の構成では表5の性能に比べて、その性能の低下は見られなかった。

Claims (9)

  1. 表面の鉛筆硬度が3H以上、かつ表面の摩擦係数が0.2以上の皮膜を形成し得ることを特徴とする硬化性組成物。
  2. 無機微粒子および有機微粒子から選ばれる微粒子を含有し、該微粒子が、平均粒径1nm以上1000nm以下の範囲の微粒子と平均粒径が1μmより大きく1mm以下の範囲の微粒子との混合粒子であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物とを含有し、架橋性ポリマー中の開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
    一般式(1)
    Figure 2005194363
    式中、R1は水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、P1は開環重合性基を含む一価の基であり、L1は単結合もしくは二価の連結基である。
  4. 一般式(1)で表される繰り返し単位と下記一般式(2)で表される繰り返し単位を共に含む架橋性ポリマーを含有し、開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化することを特徴とする請求項1乃至3に記載の硬化性組成物。
    一般式(2)
    Figure 2005194363
    式中、R2は水素原子もしくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、P2はエチレン性不飽和基を含む一価の基であり、L2は単結合もしくは二価の連結基である。
  5. 請求項1乃至4に記載の硬化性組成物の硬化皮膜が形成されていることを特徴とするハードコート処理物品。
  6. フィルム表面に、請求項1乃至4に記載の硬化性組成物の硬化皮膜が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のハードコート処理物品。
  7. フィルムが、プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項6に記載のハードコート処理物品。
  8. フィルムが、金属板または金属が蒸着されたプラスチック板であることを特徴とする請求項6に記載のハードコート処理物品。
  9. 複数の同種あるいは異種の硬化皮膜が、フィルム上に積層されてなることを特徴とする請求項6乃至8に記載のハードコート処理物品。
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JP2009256577A (ja) * 2007-09-13 2009-11-05 Aica Kogyo Co Ltd コート剤およびクリアコートフィルム
WO2012053348A1 (ja) * 2010-10-21 2012-04-26 日東電工株式会社 シート

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