本発明を更に詳しく説明する。まず、本発明の色素増感型太陽電池について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の色素増感型太陽電池の基本構造を示す概略断面図である。本発明の色素増感型太陽電池は図1によって示される通り、導電性基材1及び表面に色素3を吸着させた金属酸化物2から構成される金属酸化物半導体電極、電荷移動層(「電解質層」と呼ぶこともある)4、更に対向電極5を有する構成である。尚、図1において、e−は電子を表し、矢印は当該電子の流れを示す。
本発明の色素増感型太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷移動層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、金属酸化物2に吸着された色素3は照射された太陽光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は金属酸化物2に移動し、次いで導電性基材1を経由して対向電極5に移動して、電荷移動層4のレドックス電解質を還元する。一方、金属酸化物2に電子を移動させた色素3は酸化体となっているが、対向電極5から電荷移動層4のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層4のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極5から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の色素増感型太陽電池を構成することができる。
<金属酸化物半導体電極>
本発明に係る金属酸化物半導体電極について説明する。
本発明の金属酸化物半導体電極を構成する金属酸化物粒子は、その最表層が、酸化チタンの伝導帯準位より高い伝導帯準位を有しており、具体的には酸化チタンの伝導帯準位より0.1eV以上高い伝導帯準位を有していることが好ましく、0.2eV以上高い伝導帯準位を有していることが更に好ましい。ここで最表層とは、粒子表面から3nmの深さまでを示し、粒子表面から3nmの深さまでの領域に伝導帯準位の分布がある場合でも、最表層の伝導帯準位としてその平均値を適用する。
最表層の伝導帯準位として、具体的には、1.7eV以上であることが好ましく、1.9eV以上であることが更に好ましい。また、色素とのマッチングや色素の吸収波長の観点から、2.3eV以下であることが好ましく、2.1eV以下であることが更に好ましい。
半導体微粒子の最表層の伝導帯準位については、拡散反射スペクトル法により求めたエネルギーバンドギャップと、光電子分光法により求めたイオン化ポテンシャル(価電子帯)のそれぞれ測定値から伝導帯準位CBを算出することができる。エネルギーバンドギャップは島津製作所製UV−VIS RECORDING SPECTROOHOTOMETER 「UV−2500PC」、イオン化ポテンシャルはアルバックファイ社製5600型電子分光装置及び紫外光源Model 04−180等を用いて測定することができる。
本発明の半導体電極を構成する金属酸化物粒子は、少なくともその最表層が酸化チタンの伝導帯準位より高い伝導帯準位を有していればどのような形態でも適用することが可能であり、具体例として代表的には下記のような形態を挙げることができる。
(1)酸化チタンより高い伝導帯準位を有する単一組成の金属酸化物粒子
(2)酸化チタンより高い伝導帯準位を有する組成を均一にドーピングした金属酸化物粒子
(3)酸化チタンより高い伝導帯準位を有する単一組成の金属酸化物を表面に被覆したコアシェル粒子
(4)酸化チタンより高い伝導帯準位を有する組成を均一にドーピングした金属酸化物を表面に被覆したコアシェル粒子
ここで酸化チタンより高い伝導帯準位を有する金属酸化物としては、例えばアルカリ土類金属、または周期表第3から第5族遷移金属などの酸化物を挙げることが可能で、これらの単一組成、またはこれらを表面に被覆、更にはドーピングするなどの技術を適用することができる。
これらの中でも、最表層の伝導帯準位を任意に制御する観点でドーピングを適用することが好ましく、ドーパントの種類や濃度を調整したり、または適宜複数組み合わせるなどして、最表層の伝導帯準位を任意に制御することが可能である。また、逆電子移動の防止などの目的で粒子に層構成を構築するなどの観点でコアシェル粒子を適用することが好ましい。すなわち、上記の中でも(2)、(3)、(4)の形態が好ましく、(4)の形態が特に好ましい。
次に、上記(4)の形態について詳細に説明する。
(4)の形態として具体的には、金属酸化物粒子が、コア微粒子とその表面の少なくとも一部にドーパントを含有する金属酸化物が被覆されたシェルからなるコアシェル粒子であり、ここでドーパントとは、酸化チタンより高い伝導帯準位を有する金属酸化物を構成する金属元素である。
コア微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化タングステン等の各種金属酸化物半導体、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等の各種複合金属酸化物半導体、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン等の遷移金属酸化物、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化イッテルビウム等のランタノイドの酸化物等の金属酸化物、シリカに代表される天然または合成の珪酸化合物等の無機絶縁体などを挙げることができる。また、これらの材料を組み合わせて使用することもできる。
コア微粒子の粒子径は特に限定は無いが、半導体層の光透過性、及び電子伝導性の観点から、一次粒子径が1〜1000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、2〜50nmであることが更に好ましい。また、コア微粒子の形状も特に限定は無く、球状、針状、または不定形結晶であっても良い。
コア微粒子として用いられる金属酸化物粒子の形成方法としては特に限定は無く、水熱反応法、ゾルゲル法/ゲルゾル法、コロイド化学合成法、塗布熱分解法、噴霧熱分解法等の各種液相法、及び化学気相析出法等の各種気相法を用いて形成することができる。
シェルとしては、ドーパントを含有する金属酸化物であり、その伝導帯準位が酸化チタンの伝導帯準位より高く制御されていれば特に限定は無く、公知の種々の金属酸化物に種々のドーパントを組み合わせることによって構成することができる。
シェルの主成分となる金属酸化物は、組成としては上述したコア微粒子と同様の組成を適宜使用することが可能で、具体的には、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化バナジウム等の各種酸化物半導体、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等の各種複合金属酸化物半導体、またはこれらの組み合わせなどを挙げることができる。これらの中で、シェルの主成分となる金属酸化物は、コア微粒子と実質的に同種であることが好ましい。
ドーパントとしては、アルカリ土類金属、または周期表第3から第5族遷移金属などを挙げることが可能で、具体的にはマグネシウム、ストロンチウム、ニッケル、マンガン等の二価金属イオン、アルミニウム、ビスマス、ランタン等の三価金属イオン、ジルコニウム、ハフニウム等の四価金属イオン、バナジウム、ニオブ、タンタル、アンチモン等の五価金属イオンを挙げることが可能であるが、これらの中でも、電子伝達性やエネルギー準位、色素吸着特性等の観点から、周期表の第2族、第4族もしくは第5族の金属元素をドーパントとすることが好ましく、その中でもマグネシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタルをドーパントとすることが更に好ましく、マグネシウム、ジルコニウムをドーパントとすることが最も好ましい。
これらの元素をドーピングするには、それぞれの元素を含む化合物をドーパントソースとして用いる。ドーパントソースは水溶性でも水不溶性でも良い。好ましいドーパントソースの例を以下に挙げる。第5族元素の化合物としては、例えばバナジウム、ニオブ、もしくはタンタルのハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)、バナジウム、ニオブもしくはタンタルのアルコキシド(例えばメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等)等が挙げられる。ハロゲン化合物としてはハロゲン化水素、ハロゲン化物塩(例えばハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ピリジニウム、及びアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物等)の他、ハロゲン含有塩(例えばテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩等)等が挙げられる。
ドーパントの含有量は特に制限は無いが、主成分となる金属酸化物に対して1〜30mol%であることが好ましく、5〜20mol%であることが更に好ましい。また、ドーパントの存在形態としては、シェルを構成する金属酸化物中に均一に分散されて存在していることが好ましい。
シェルの厚みについては特に制限は無いが、本発明の効果をより著しく発現させるためには、0.5〜5nmであることが好ましく、0.5〜3nmであることが更に好ましい。
金属酸化物半導体のシェルの厚さは、X線光電子分光法(XPS)や飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)等の分析機器を用いて測定することができる。また、簡易的に求める場合には、シェル部、コア部に用いる材料の比重とその使用量、及びコア微粒子の平均粒径から算出することもできる。シェルの厚さは、平均厚みとして表される。
更に、本発明にてコアシェル粒子を適用する場合、コア粒子と最表層となるシェルの間に、更に別の金属酸化物層を有することも好ましい態様の1つである。この中間の金属酸化物層は、コア微粒子の表面の少なくとも一部を金属酸化物前駆体で被覆、焼結処理することにより形成された金属酸化物であり、組成としては上述したコア微粒子と同様の組成を適宜使用することができる。
<金属酸化物半導体電極の作製方法>
次に、本発明の色素増感型太陽電池の金属酸化物半導体電極の作製方法を説明する。
本発明の金属酸化物半導体電極の作製方法としては、最終的にその最表層が酸化チタンより高い伝導帯準位を有していれば公知のどのような方法でも適用することが可能であり、(1)金属酸化物の微粒子またはその前駆体を含有する分散液を導電性基材上に塗布し、乾燥及び焼成を行って半導体層を形成する方法、(2)コロイド溶液中に導電性基材を浸漬して電気泳動により金属酸化物半導体微粒子を導電性基材上に付着させる泳動電着法、(3)コロイド溶液や分散液に発泡剤を混合して塗布した後、焼結して多孔質化する方法、(4)ポリマーマイクロビーズを混合して塗布した後、このポリマーマイクロビーズを加熱処理や化学処理により除去して空隙を形成させ多孔質化する方法等を適用することができる。
上記の作製方法の中で、特に塗布方法としては公知の方法を適用することが可能で、スクリーン印刷法、インクジェット法、ロールコート法、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー塗布法等を挙げることができる。また、加熱方法や焼成方法としても、適宜公知の方法で任意の温度で行うことができる。
特に上記(1)の方法の場合、分散液中の金属酸化物微粒子の粒子径は微細であることが好ましく、一次粒子として存在していることが好ましい。金属酸化物微粒子を含有する分散液は、金属酸化物微粒子を溶媒中に分散させることによって調製され、溶媒としては、金属酸化物微粒子を分散し得るものであれば特に制限はなく、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。分散液中には、必要に応じて界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の金属酸化物微粒子の濃度の範囲は、0.1〜70質量%が好ましく、0.1〜30質量%が更に好ましい。
次に、半導体電極を構成する酸化物粒子として、上述したコアシェル粒子を適用する場合について、その作製方法を詳細に説明する。
コアシェル粒子の半導体電極を作製する場合、金属酸化物粒子の分散液の段階で被覆を施しシェル形成して、次いで基材上に塗布し乾燥・焼成を行って半導体層を形成する方法、またはコア微粒子の分散液を基材上に塗布し乾燥・焼成を行って半導体層を形成し、次いで被覆用の金属酸化物またはその前駆体の分散液を半導体層上に塗布し乾燥・焼成を行ってシェル形成を行う方法などを挙げることができる。
次に、上記の特に後者の方法について、詳細に説明する。
金属酸化物のコア微粒子を含有する分散液を調製し、導電性基材上に塗布し、乾燥を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基材上に金属酸化物半導体層が形成される。導電性基材上に分散液を塗布、乾燥して得られる半導体層は金属酸化物微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒子径は使用した金属酸化物微粒子の一次粒子径に対応するものである。導電性基材上に形成された金属酸化物半導体層は、導電性基材との結合力や、微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、この金属酸化物微粒子集合体膜を焼成処理して機械的強度を高め、基板に強く固着した焼成物膜とすることが好ましい。
本発明においては、この半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。ここで、金属酸化物半導体層の空隙率は、0.1〜20体積%であることが好ましく、5〜20体積%であることが更に好ましい。尚、金属酸化物半導体層の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。金属酸化物半導体層の厚さは、少なくとも10nm以上であることが好ましく、100〜10000nmであることが更に好ましい。
焼成処理時、半導体層の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する半導体層を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、200〜800℃の範囲であることが更に好ましい。
次に、シェルの形成方法としては、金属酸化物前駆体とマグネシウムエトキシドなどのドーパントソースの混合液を塗布、または浸漬し、更に焼成処理等を行うことにより、金属酸化物層中に均一にドーパントが含有されたシェルを形成することができる。金属酸化物前駆体としては、シェルの金属酸化物を構成する金属元素を含有する化合物であり、例えばチタンテトライソプロポキシドなどを挙げることができる。この際の焼成温度や焼成時間は特に制限は無く、任意に制御することができる。
ここで、コア微粒子の半導体層とシェルの中間に金属酸化物層を形成する方法としては、導電性基材上にコア微粒子となる金属酸化物半導体層を形成した後、中間層となる金属酸化物の前駆体を該半導体層に塗布し、もしくは該半導体層を前駆体溶液に浸漬し、更に必要に応じて焼成処理などを施すことにより、金属酸化物からなる中間層を形成することができる。次いで、上述したシェル形成を行えばよい。
具体的には、中間層の形成方法としては、酸化チタンの前駆体である四塩化チタン水溶液またはチタンアルコキシドを用いた電気化学的処理や、チタン酸アルカリ金属やチタン酸アルカリ土類金属の前駆体でコア微粒子からなる半導体層の表面処理や焼成処理等を行うことによって、中間層を形成することができる。この際の焼成温度や焼成時間は特に制限は無く、任意に制御することができる。
<色素>
次に、本発明に係る色素について説明する。
本発明に係わる色素は、一般式(1)で表され、該色素のLUMOのエネルギーレベルが−1.60eV〜−0.70eVであることを特徴とし、LUMOとは電子によって占有されていない分子軌道のうち最もエネルギーの低い軌道(最低空軌道、Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の事である。
本発明において、LUMOのエネルギーレベルの値は計算値を用いており、PM3ハミルトニアンを用いた半経験的分子軌道計算であれば、いかなるソフトウエアで計算しても良いが、構造最適化がなされていなければならない。ここで構造最適化とは、分子がエネルギー的に最も安定な状態となるように、分子を構成する各原子の座標を最適化することである。この場合、エネルギーの勾配(grad)は、grad<1.0となっていなければならない。PM3ハミルトニアンとは、半経験的分子軌道法で用いられるNDDO近似の一つであり、J.J.Pスチュワートが1989年にジャーナル・オブ・ザ・コンピューテーショナル・ケミストリーの第10巻、209号、221ページに発表してから広く使われている近似法である。代表的なソフトウエアとしては、MOPAC93(富士通(株)製、JCPE−P081)や米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)が挙げられ、本発明中におけるLUMOの値はMOPAC93、もしくは、Gaussian98で計算した値である。
MOPAC93を用いる場合は、使用するキーワードとしては、「PM3」の他に、構造最適化のキーワードを適宜選択して使用すればよく、「EF」を用いることが好ましい。Gaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用いる場合は、キーワードとしてB3LYP/LanL2DZを用いて構造最適化を行うことにより算出した値が好ましい。本発明の計算に使用されるハードウエアとしては、半経験的分子軌道計算が実行可能であれば良く、具体的にはパーソナルコンピューター、ワークステーション、スーパーコンピューター等のいずれを用いても良い。
一般に、有機色素を計算する場合はMOPAC93が好ましく、金属錯体色素を計算する場合はGaussian98が適している。これらの計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
一般式(1)中、Dは色素残基を表し、本発明において色素残基とは、色素から任意の水素原子を除いて得られる基を意味し、本発明における任意の水素原子とは、一般式(1)中、Aで表される2価の連結基が色素残基に置換している数と同数である。色素残基のもととなる色素に特に制限はないが、色素増感光電変換素子の技術分野では金属錯体色素もしくは(ポリ)メチン色素が変換効率の点で優れた性質を示す事が知られており、このような色素が好ましい。金属錯体の例としては米国特許4927721 号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号および特開平7−249790号明細書に記載の錯体色素などが挙げられる。(ポリ)メチン色素の具体例はM. Okawara, T. Kitao,T. Hirasima, M. Matuoka著Organic Colorants(Elsevier)等に詳しく記載されている。これらのうち、(ポリ)メチン色素である、一般式(2)又は(3)で表される色素が好ましい。
一般式(1)中、Aは2価の連結基を表し、2価の連結基に特に制限はなく、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基,エチレン基,プロピレン基,ブチレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基等)、アルケニレン基(例えば、エチレン基,プロペニレン基等)、スルホニル基、スルフィニル基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、イミノ基、−N=基、複素環2価基(例えば、トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、チアゾール−2,4−ジイル基、ベンズオキサゾール−2,5−ジイル基等)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される2価の連結基が挙げられるが、好ましくは、一般式(4)〜(6)で表されることが好ましい。
一般式(1)中、Kは吸着基を表し、本発明における吸着基とは、金属酸化物半導体表面と化学吸着または物理吸着する基であれば特に制限は無いが、化学吸着性の基である方が好ましく、金属酸化物半導体表面と化学吸着する基としては、−CO2H、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2、−SO3Hまたは−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す。)などが挙げられ、特に−CO2H、−P=O(OH)2が好ましい。本発明に係る化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明に係る物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態のことを示す。
一般式(2)中、R4は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アシル基、カルバモイル基を表し、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基である。
R5は置換基を表し、置換基としては特に制限は無く、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられるが、好ましくは、Hammetの置換基定数σp値が−0.9〜0.4の置換基であり、より好ましくは、−0.9〜0.2の置換基である。Hammetの置換基定数σp値が−0.9〜0.2の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環オキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アシルアミノ基、アミノ基、シリルオキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、メルカプト基、アリールアゾ基、複素環アゾ基、シリル基、ヒドロキシル基などが挙げられるが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基である。
Hammet則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。Hammet則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があり、「Lange’s Handbook of Chemistry(J.A.Dean著)」第12販、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南光堂)、Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年に詳しく述べられている。本発明におけるHammetの置換基定数は、σp値により規定しているが、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
R6はアルケニル基、アリール基、複素環基を表し、好ましくは、アリール基、複素環基である。
R4、R5のうち少なくとも一方は、−A−Kであるが、好ましくは、R5が−A−Kである場合である。また、Aは2価の連結基を表し、Kは吸着基を表すが、A及びKは一般式(1)中のA及びKと同義である。
一般式(3)中R7はアルケニル基、アリール基、複素環基を表し、好ましくは、アリール基、複素環基である。
Aは2価の連結基を表し、Kは吸着基を表すが、A及びKは一般式(1)中のA及びKと同義である。
XはOまたはSを表すが、好ましくは、Oである。
一般式(4)中、R9、R10は水素原子、または、電子供与性基を表し、本発明において電子供与性基とは、Hammetの置換基定数σp値が0以下の置換基のことであり、Chem.Rev.,91,165(1991).記載のHammetのσp値が0以下の置換基が好ましく適用でき、より好ましくは−0.85〜0のものが用いられる。例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基などが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)である。これらの基は、電子供与性を失わない範囲で他の置換基で置換されていてもよく、また、可能であるなら結合して環を形成していてもよいが、R9、R10のうち少なくとも一方は電子供与性基である。
一般式(5)中、R11、R12、R13、R14は水素原子、または、電子供与性基を表し、電子供与性基としては、前記一般式(4)中、R9、R10で表される電子供与性基として挙げたものが挙げられ、特に制限は無いが、好ましくは、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)であり、R11〜R14のうち少なくとも一つは電子供与性基である。
一般式(6)中、R15、R16は水素原子、または、電子供与性基を表し、電子供与性基としては、前記一般式(4)中、R9、R10で表される電子供与性基として挙げたものが挙げられ、特に制限は無いが、好ましくは、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)であり、R15、R16のうち少なくとも一つは電子供与性基である。
以下に、一般式(1)で表される色素(更に詳しくは、一般式(2)又は(3)で表される色素)の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
本発明中の色素を、伝導帯準位が従来の酸化チタンより高い半導体電極と共に使用することで、光電変換効率の優れた色素増感型太陽電池を提供することが出来る。
(金属酸化物半導体層への化合物(色素)の吸着方法)
本発明において、金属酸化物半導体層に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物(色素)を吸着させる方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いることができる。
例えば、化合物(色素)を有機溶剤に溶解して色素溶液を調製し、得られた色素溶液に透明導電膜上の半導体層を浸漬する方法、または得られた色素溶液を半導体層表面に塗布する方法などが挙げられる。
前者においてはデイプ法、ローラ法、エヤーナイフ法などが適用でき、後者においてはワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが適用できる。
尚、化合物(色素)の吸着に先立って、半導体層の表面を予め減圧処理や加熱処理など処理を施し、表面を活性化し膜中の気泡を除去する工程を有しても良い。
半導体層への増感効果を好ましく得る観点から、半導体膜を色素の溶液に浸漬する時間は、3時間〜48時間が好ましく、更に好ましくは、4時間〜24時間である。
また、浸漬にあたり色素溶液は、色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10℃〜50℃、とくに好ましくは15℃〜40℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
また、半導体膜を浸漬した色素溶液に超音波照射を行うこともできる。超音波照射は市販の装置を用いることができ、また、照射時間としては、好ましくは30分〜4時間であり、更に好ましくは1時間〜3時間である。
色素溶液に用いる溶媒は、色素を溶解するものであればよく、従来公知の溶媒を用いることができる。
また、当該溶媒は、常法に従って精製された溶媒、また溶媒の使用に先立って、必要に応じて蒸留および/または乾燥を行い、より純度の高い溶媒であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、1種又はそれ以上の疎水性溶媒、非プロトン性溶媒、疎水性かつ非プロトン性の溶媒またはそれらの混合物が挙げられる。
ここで、疎水性溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル等のエステル類等、並びにそれらの組合せた混合溶媒等が挙げられる。
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の窒素化合物類;二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;ヘキサメチルホスホルアミド等のリン化合物類、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
色素溶液中の色素の濃度は、増感効果、光電変換効率向上の観点から、使用する色素、溶媒の種類、色素吸着工程により適宜調整することができ、例えば、1×10−5モル/リットル以上、好ましくは、5×10−5モル/リットル〜1×10−2モル/リットル程度が挙げられる。
上記のことから、未吸着の色素を洗浄により速やかに除去するのが好ましい。洗浄溶剤としては、色素の溶解性が比較的低く、かつ比較的乾燥しやすい、アセトン等の溶剤が好ましい。また、洗浄は加熱状態で行うのが好ましい。
また、洗浄により余分な色素を除去した後、色素の吸着状態をより安定にするために、酸化物半導体微粒子の表面を有機塩基性化合物で処理して、未反応色素の除去を促進させてもよい。
有機塩基性化合物としては、ピリジン、キノリン等の誘導体が挙げられる。これら化合物が液体の場合にはそのまま用いてもよいが、固体の場合には溶剤、好ましくは色素溶液と同一の溶剤に溶解して用いてもよい。
色素を2種以上用いる場合は、混合する色素の比率は特に限定は無く、それぞれの色素より最適化し選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき10%モル程度以上使用するのが好ましい。
色素を2種以上併用する場合の具体的方法としては、混合溶解して吸着させても、色素を半導体層に順次吸着させても良い。併用する色素を混合し溶解した溶液を用いて酸化物半導体層に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては前記したような溶媒が使用可能である。
併用する色素それぞれについて溶液を調製し半導体層に吸着させる場合も、溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
各色素について別々の溶液を調製し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に色素を吸着させる順序がどのようであっても本発明の効果を得ることができる。また、各色素を単独で吸着させた半導体微粒子を混合することで作製してもよい。
酸化物半導体微粒子の薄膜に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、色素を担持することが効果的である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものとしてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
また、色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体層表面を処理しても良い。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
《導電性基材》
本発明で用いられる導電性基材1としては、当該導電性基材側を受光面とする場合には、導電性基材は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
導電性基材としてはそれ自体が導電性を有する基材、またはその表面に導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、基材としてはガラス板や、酸化チタンやアルミナ等のセラミックの研磨板、更に公知の種々のプラスチックシートを使用することが可能であるが、コスト面や可撓性を考慮するとプラスチックシートを使用することが好ましい。
プラスチックシートとしては具体的にはトリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリステレン(SPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、環状ポリオレフィン、フェノキシ樹脂、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。
これらの基材上に設ける導電層に使用する導電性材料としては、公知の種々の金属や金属酸化物等からなる無機系導電性材料、ポリマー系導電性材料、無機有機複合型の導電性材料、またはこれらを任意に混合した導電性材料など、あらゆるものを使用することができる。
無機系導電性材料として具体的には、白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、導電性カーボン、更にスズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛(ZnO2)等の金属酸化物を挙げることができる。
ポリマー系導電性材料として具体的には、各種置換されていてもされていなくても良いチオフェン、ピロール、フラン、アニリンなどを重合させてなる導電性ポリマーやポリアセチレン等を挙げることができるが、導電性が高い観点からポリチオフェンが好ましく、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が好ましい。
基材上に導電層を形成する方法としては、導電性材料に応じた公知の適切な方法を用いることが可能で、例えば、ITO等の金属酸化物からなる導電層を形成する場合、スパッタ法、CVD法、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法等の薄膜形成法が挙げられる。
また、ポリマー系導電性材料からなる導電層を形成する場合は、公知の様々な塗布法により形成することが好ましい。導電層の膜厚は0.01μm〜10μm程度が好ましく、0.05μm〜5μm程度が更に好ましい。
導電性基材としては表面抵抗が低いほど良く、具体的には50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることが更に好ましい。
また、導電性基材の集電効率を向上し更に導電性を上げるために、光透過率を著しく損なわない範囲の面積率で、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、インジウム、チタン、タングステンなどからなる金属配線層を前記導電層と併用してもよい。
金属配線層を用いる場合、格子状、縞状、櫛状等のパターンとして、光が導電性基材を均一に透過するように配設するとよい。金属配線層を併用する場合、基材に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上に前記導電層を設けるのが好ましい。
《短絡防止層》
本発明の色素増感型太陽電池においては、前述した導電層と金属酸化物半導体電極との間に、短絡防止層を設けることができる。これにより、電解質と金属酸化物半導体の短絡電流を低減することができる。特に、電解質として固体のp型半導体を用いる場合は、この層を有することが好ましい。
短絡防止層としては、可視光を透過する絶縁性物質で、伝導帯のエネルギー準位が金属酸化物半導体のそれに近い値を有するn型半導体であれば特に制限はない。
例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタンなどが挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられるものでもよく、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステンなどが挙げられる。
短絡防止層の形成方法としては、透明導電層の場合と同様に真空成膜プロセスや、液相コーティング法などにより作製することができる。真空成膜プロセスを用いる場合、透明導電層、短絡防止層、金属酸化物膜は大気開放することなく真空下でインライン成膜が可能である。
また、短絡防止層の膜厚は0.001μm〜0.02μmの範囲が好ましいが、適宜調整することができる。
微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
《電荷移動層》
本発明に係る電荷移動層について説明する。
電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いることのできる代表的な電荷輸送材料の例としては、酸化還元対イオンが溶解した溶剤や酸化還元対イオンを含有する常温溶融塩等の電解液、酸化還元対イオンの溶液をポリマーマトリクスや低分子ゲル化剤等に含浸したゲル状の擬固体化電解質、更には高分子固体電解質等が挙げられる。
また、イオンが関わる電荷輸送材料の他に、固体中のキャリア移動が電気伝導に関わる材料として、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料を挙げることもでき、これらは併用してすることも可能である。
電荷移動層に電解液を使用する場合、含有する酸化還元対イオンとしては、一般に公知の太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。
具体的には、I−/I3−系、Br2−/Br3−系等の酸化還元対イオンを含有させたもの、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン、コバルト錯体等の金属錯体等の金属酸化還元系、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ハイドロキノン/キノン等の有機酸化還元系、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィド等のイオウ化合物などを挙げることができる。
ヨウ素系として更に具体的には、ヨウ素とLiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物や4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩などとの組み合わせなどが挙げられる。
臭素系として更に具体的には、臭素とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩等との組み合わせ等が挙げられる。
溶剤としては電気化学的に不活性で、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャリア濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。
具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、更にテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、スルフォランなど非プロトン極性物質などを用いることができる。
好ましい電解質濃度は0.1〜15モル/lであり、更に好ましくは0.2〜10モル/lである。また、ヨウ素系を使用する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5モル/lである。
溶融塩電解質は、光電変換効率と耐久性の両立という観点から好ましい。溶融塩電解質としては、例えば、国際公開第95/18456号パンフレット、特開平8−259543号公報、特開2001−357896号公報、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩を含む電解質を挙げることができる。
これらの溶融塩電解質は常温で溶融状態であるものが好ましく、溶媒を用いない方が好ましい。
オリゴマ−及びポリマ等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、ポリマ添加、低分子ゲル化剤やオイルゲル化剤添加、多官能モノマ類を含む重合、ポリマの架橋反応等の手法によりゲル化(擬固体化)させて使用することもできる。
ポリマ添加によりゲル化させる場合は、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。
オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。また、ポリマの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマおよび架橋剤を併用することが望ましい。
この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、含窒素複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等)等から導出される基であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等)である。
電解質の濃度は通常0.01質量%〜99質量%で好ましくは0.1質量%〜90質量%程度である。
また、ゲル状電解質としては、電解質と、金属酸化物粒子および/または導電性粒子とを含む電解質組成物を用いることもできる。金属酸化物粒子としては、TiO2、SnO2、WO3、ZnO、ITO、BaTiO3、Nb2O5、In2O3、ZrO2、Ta2O5、La2O3、SrTiO3、Y2O3、Ho2O3、Bi2O3、CeO2、Al2O3からなる群から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。
これらは不純物がドープされたものや複合酸化物などであってもよい。導電性粒子としては、カーボンを主体とする物質からなるものが挙げられる。
次に、高分子電解質としては、酸化還元種を溶解あるいは酸化還元種を構成する少なくとも1つの物質と結合することができる固体状の物質であり、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィド等の高分子化合物またはそれらの架橋体、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド等の高分子官能基に、ポリエーテルセグメントまたはオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として付加したものまたはそれらの共重合体等が挙げられる。
その中でも特にオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として有するものやポリエーテルセグメントを側鎖として有するものが好ましい。
前記の固体中に酸化還元種を含有させるには、例えば、高分子化合物となるモノマーと酸化還元種との共存下で重合する方法、高分子化合物等の固体を必要に応じて溶媒に溶解し、次いで、前記の酸化還元種を加える方法等を用いることができる。酸化還元種の含有量は、必要とするイオン伝導性能に応じて、適宜選定することができる。
本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質の代わりに、有機または無機あるいはこの両者を組み合わせた固体の正孔輸送材料を使用することができる。有機正孔輸送材料としては、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類、更にポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレン) およびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘導体等の導電性高分子を好ましく用いることができる。正孔(ホール)輸送材料にはドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加しても構わない。
無機正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。この目的のp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。
また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが好ましい。
使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
好ましいp型無機化合物半導体は一価の銅を含む化合物半導体であり、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。
p型無機化合物半導体を含有する電荷移動層の好ましいホール移動度は10−4cm2/V・秒以上104cm2/V・秒以下であり、更に好ましくは10−3cm2/V・秒以上103cm2/V・秒以下である。また、電荷輸送層の好ましい導電率は、10−8S/cm以上102S/cm以下であり、更に好ましくは10−6S/cm以上10S/cm以下である。
例えば、図1に示す本発明の色素増感型太陽電池において、電荷移動層4を金属酸化物半導体電極(単に、半導体電極ともいう)と対向電極5との間に形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、半導体電極と対向電極5とを対向配置してから両電極間に前述した電解液や各種電解質を充填して電荷移動層4とする方法、半導体電極または対向電極5の上に電解質や各種電解質を滴下あるいは塗布等することにより電荷移動層4を形成したのち電荷移動層4の上に他方の電極を重ね合わせる方法等を用いることができる。
また、半導体電極と対向電極5との間から電解質が漏れ出さないようにするため、必要に応じて半導体電極と対向電極5との隙間にフィルムや樹脂を用いて封止したり、半導体電極と電荷移動層4と対向電極5を適当なケースに収納したりすることも好ましい。
前者の形成方法の場合、電荷移動層4の充填方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、または常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
後者の形成方法の場合、塗布方法としてはマイクログラビアコーティング、ディップコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング等を用いることができる。
湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法があり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。
固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後対向電極を付与することもできる。
具体的には、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができ、必要に応じて基材を任意の温度に加熱して溶媒を蒸発させるなどにより形成する。
電荷移動層4の厚さは10μm以下であることが好ましく、更に好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。
また、電荷移動層4の導電率は1×10−10S/cm以上が好ましく、1×10−5S/cm以上であることが更に好ましい。
《対向電極》
本発明に係る対向電極は、上記の導電性基材と同様に、それ自体が導電性を有する基材の単層構造、またはその表面に対極導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、対極導電層に用いる導電性材料、基材、更にその製造方法としては、前述した導電性基材1の場合と同様で、公知の種々の材料及び方法を適用することができる。
その中でも、I3−イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものを使用することが好ましく、具体的には白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
また、前述と同様にコスト面や可撓性を考慮すると、プラスチックシートを基材として使用し、導電性材料としてポリマー系材料を塗布して使用することも好ましい態様の1つである。
対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは10nm〜3μmの範囲である。
対向電極の表面抵抗は低い程よく、具体的には表面抵抗の範囲としては50Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることが更に好ましい。
前述した図1に示す色素増感型太陽電池においては、導電性基材1と対向電極5のいずれか一方または両方から光を受光してよいので、導電性基材1と対向電極5の少なくとも一方が実質的に透明であれば良い。
発電効率の向上の観点からは、導電性基材を透明にして、光を導電性基材側から入射させるのが好ましい。この場合対向電極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対向電極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチックまたは金属薄膜を使用できる。
対向電極は、前述した電荷移動層上に直接導電性材料を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、対極導電層を有する基材の導電層側または導電性基材単層を貼り付ければよい。
また、導電性基材1の場合と同様に、特に対向電極5が透明の場合には、金属配線層を併用することも好ましい態様の1つである。
対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応を触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス、もしくは高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子を塗り付けたものが用いうる。