JP2009252359A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】加湿条件によらず高い性能を発現する燃料電池を提供する。
【解決手段】プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対の触媒層を含む燃料電池であって、少なくともカソードの触媒層が、触媒成分、電解質材料、及び炭素材料を含み、かつ前記炭素材料が、前記触媒成分を担持した触媒担体炭素材料5と、前記触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料4と、前記触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料2との3種からなり、かつ前記触媒層が、触媒成分を担持した前記触媒担体炭素材料5、電解質材料6、及び前記触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料4を主成分とする触媒凝集相3と、前記触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料2を主成分とするガス拡散炭素材料凝集相1との2相構造からなり、前記触媒凝集相3が連続体であって、前記ガス拡散炭素材料凝集相1が前記触媒凝集相3中に分散した構造である燃料電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関するものであり、特に使用環境の制約から十分に触媒層を加湿できない場合や、運転条件の変動により一時的に低加湿運転を強いられる場合においても高い性能を発揮する燃料電池用ガス拡散電極を有する燃料電池に関するものである。
本発明が関わる燃料電池の基本構造は、一般的な固体高分子形燃料電池の構造を例にして説明すると、プロトン伝導性電解質膜を挟んでアノードとカソードとなる触媒層が配置され、これを挟んで更に外側にガス拡散層が配置され、更にその外側にセパレーターが配置された単位セルからなり、燃料電池として使用する際には、通常、必要な出力に合わせて複数個の単位セルをスタックし、複数個の単位セルがスタックされた燃料電池として用いられている。
このような基本構造を持つ燃料電池(各単位セル)から電流を取り出すためには、アノードとカソードの両極に配されたセパレーターのガス流路から、カソード側に酸素あるいは空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の還元性ガスを、それぞれガス拡散層を介して触媒層まで供給する。例えば、水素ガスと酸素ガスを利用する場合、アノードの触媒上で起こる化学反応〔H2→2H++2e-(E0=OV)〕と、カソードの触媒上で起こる化学反応〔O2+4H++4e-→2H2O(E0=1.23V)〕とのエネルギー差(電位差)を利用して、電流を取り出している。
従って、セパレーターのガス流路から触媒層内部の触媒まで酸素ガスあるいは水素ガスが移動できるガス拡散経路や、アノード触媒上で発生したプロトン(H+)がプロトン伝導性電解質膜を経由してカソードの触媒まで伝達できるプロトン伝導経路、更にはアノード触媒上で発生した電子(e-)がガス拡散層、セパレーター、外部回路を通じてカソード触媒まで伝達できる電子伝達経路が、それぞれ分断されることなく連続して連なっていないと、効率よく電流を取り出すことができない。
触媒層内部では、一般に、材料の間隙に形成されてガス拡散経路となる気孔、プロトン伝導経路となる電解質材料、及び、電子伝導経路となる炭素材料や金属材料等の導電性材料が、それぞれの連続したネットワークを形成していることが重要である。
また、プロトン伝導性電解質膜や触媒層中のプロトン伝導経路には、高分子電解質材料としてパーフルオロスルホン酸ポリマーに代表されるイオン交換樹脂が用いられている。これら一般に用いられる高分子電解質材料は、湿潤環境下で初めて高いプロトン伝導性を発現し、乾燥環境下ではプロトン導電性が低下してしまう。従って、効率良く燃料電池を作動させるためには、高分子電解質材料が十分な湿潤状態であることが必須であり、両極に供給するガスと共に、常に水蒸気を供給する必要がある。
水蒸気を供給するために一般には、供給するガスをあらかじめ一定温度に保温された水中に通じ加湿する方法、一定温度に保温された水を直接セルに供給する方法が用いられ、セルとは別に加湿器が必要となる。しかし、システム全体のエネルギー効率を高く設定する目的では、保温のために一定のエネルギーを消耗する加湿器は無い方が好ましく、あったとしても必要最低限のエネルギー消費である方が好ましい。また、システム全体を軽く、小さくする目的でも同様で、加湿器は無い方が好ましく、あったとしても必要最低限の大きさであることが望ましい。従って、燃料電池の使用目的によっては、十分な加湿器をシステムに搭載できず十分に電解質材料を加湿できない場合がある。しかも、定常運転では十分な加湿能力が備わった加湿器が搭載されている場合においても、起動時や負荷変動時においては一時的に低加湿状態に陥ることは避けられない。
このように、常に電解質材料に好適な湿潤環境で使用できるとは限らないため、上記のような低加湿条件においても高い性能を発揮できる燃料電池用触媒層への要求は強く、前記触媒層を具備して制御や運転が容易となる高性能の燃料電池が望まれている。
このために従来から、ガス拡散層や触媒層、又はガス拡散層と触媒層の間に配置した中間層に親水性を有する成分を使用し、電解質膜や触媒層内部の電解質材料を保湿する方法が提案されてきた。
これらの中で、触媒層に親水性を賦与する提案として、特許文献1では、加湿量を低減した場合であっても高い電池性能を維持するために、アノードにゼオライトやチタニア等の親水性粒子や親水性担体に触媒成分を含有させることが開示されている。また、特許文献2では、低温雰囲気下でも優れた始動性を示す燃料電池として、アノードの触媒層に水分保湿剤として親水化処理された導電性材料(親水化処理されたカーボンブラック等)を含有させることが開示されている。更に、特許文献3では、広範囲な加湿条件に対応可能な燃料電池を提供する目的で、触媒層中に例えば「テフロン(登録商標)粒子を担持したシリカ粒子」のような疎水性粒子を担持した親水性粒子を含有させることが開示されている。
また、特許文献4では、活性炭を触媒担体とし、該活性炭のBET法(Brunauer-Emmett-Teller比表面積法)による表面積SBETが、SBET≧1500m2/gを満たし、且つ、直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicro(m2/g)の全細孔面積Stotal(m2/g)に対する比率が、Smicro/Stotal≧0.5を満たすことを特徴とする燃料電池が提案されている。一方、特許文献5では、メソポーラスカーボン粒子を一部に含む炭素材料からなる担体を触媒担体として使用した燃料電池が提案されている。
特開2004-342505号公報 特開2006-59634号公報 特開2005-174835号公報 特開2006-155921号公報 特開2004-71253号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献3では、親水性であるが導電性あるいはプロトン伝導性を持たない材料を触媒層中に含有するため、電子あるいはプロトンの移動経路を分断してしまい、内部抵抗を増大する問題があった。また、特許文献2では、親水化処理された導電性材料の例として硝酸処理されたカーボンブラックを触媒担体として使用しているが、親水性の程度(親水化処理の程度)については記載も示唆もされていない。発明者らの検討によれば、単に親水化処理されたカーボンブラックを含ませるだけでは、低湿条件で優れた保水能力を示すが、十分加湿されたときにはガス拡散経路が凝縮した水で閉塞されるという問題が生じることが明らかになった。すなわち、親水性の程度によって、保水能力が足りなかったり、あるいは保水能力が強すぎて十分加湿されている条件になったときにガスの拡散経路が水に閉塞されたりすることがあった。
また、これまで、本発明者らは、触媒層の主成分である炭素材料を、触媒成分を担持した炭素材料(以下、触媒担体炭素材料)と触媒成分を担持していない炭素材料(以下、ガス拡散炭素材料)とに分けて触媒層に含有させると共に、ガス拡散炭素材料を水和性(水和力)の異なる少なくとも2種類の炭素材料を使用し、低加湿条件では触媒層中の電解質材料を常に好適な湿潤状態に維持しつつ、高加湿条件でもガス拡散経路が凝縮した水によって閉塞することを防ぐことができる燃料電池用触媒層を有する燃料電池、すなわち加湿条件によらず高い性能を発現する燃料電池を開発した。前記燃料電池では、高加湿条件や低加湿条件、それぞれの条件下での高負荷運転や低負荷運転に非常に効果的で、あらゆる条件下で高い性能を発現するものの、保水する部分が触媒を担持していないガス拡散炭素材料であることから、触媒近傍の電解質材料の保水効果という点では、必ずしも十分ではなく、更により高い特性を発現させるためには新たな改良が必要であった。
その点で、触媒担体の保水性が期待できる特許文献4の活性炭を担体とした提案は、触媒粒子近傍の保水性という点では十分ではあり、ガス拡散炭素材料によってガスの移動も確保する工夫はされているものの、より高性能な燃料電池を目指すことを前提とすると、活性炭自身の電子伝導性が低いことや、触媒粒子周辺の親水性が高いあまり触媒のごく近傍のガスの移動が妨げられる等の課題があった。
特許文献5のメソポーラスカーボンを触媒担体の一部とした提案は、触媒担体としてメソポーラスカーボン以外の炭素材料と混合することにより、ガスの拡散性や電子伝達性をメソポーラスカーボン単独で用いたときよりも改善したものの、例えば高加湿条件下の高負荷運転時には、発生する水によってガスが閉塞する傾向が強く、これを回避するためメソポーラスカーボンの比率を下げると、特に低加湿条件下での低負荷運転時にメソポーラスカーボン以外の炭素材料上の触媒近傍の電解質が乾燥しやすくなり、ある特定の混合比率では限定された条件でしか優れた特性を発現できなかった。特に、メソポーラスカーボン以外の炭素材料に反応ガスの拡散性を増強させる機能を期待しているが、メソポーラスカーボン以外の炭素材料にも触媒粒子が存在するため、特に高負荷運転時のカソードでの使用では、触媒粒子で発生する水がガスの拡散を妨げる傾向にあり、あらゆる条件下で万能な触媒層にはなり得なかった。
そこで、本発明は、燃料電池に用いられる触媒層中において、ガス、電子、プロトンの移動経路をそれぞれ分断することなく形成させ、低加湿条件では触媒層中の電解質材料を常に好適な湿潤状態に維持しつつ、高加湿条件でもガス拡散経路が凝縮した水によって閉塞することを防ぐことができる燃料電池用触媒層を有する燃料電池、すなわち加湿条件によらず高い性能を発現する燃料電池を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、燃料電池に用いられる触媒層中の保水能力に着目し、触媒成分、電解質材料、及び炭素材料の高次構造を検討した結果、触媒担体上に担持された触媒があらゆる条件下でも十分に機能するような触媒層構造を見出し、優れたガスの拡散経路を確保することができ、本発明を完成した。
すなわち、触媒層の成分である炭素材料を、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料と、触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料と、に分けて触媒層に含有させると共に、触媒層中の触媒成分と前記触媒担体炭素材料と前記導電助剤炭素材料と電解質材料とを凝集させて形成した触媒凝集相と、前記ガス拡散炭素材料を凝集して形成したガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相構造にし、前記触媒凝集相を連続相としてガス拡散炭素材料凝集層相がその中に分散した構造とすることにより、加湿条件によらず高い性能を発揮するという優れた機能が発現することを見出した。
前記触媒層の構造にすることで、電解質材料は、触媒炭素材料近傍に存在することになり、乾燥条件下での含水率低下を防ぐと共に、電解質材料を連続相とすることでプロトン伝導経路すなわち電解質材料のネットワークを発達させてプロトン伝導性に起因する内部抵抗上昇を防ぐ。また、導電助剤炭素材料も触媒担体炭素材料近傍に配置することになり、触媒で必要な電子授受を助け、電子授受に起因する内部抵抗上昇を防ぐ。また、導電助剤炭素材料上には触媒を担持させないことによって、高負荷運転時に触媒成分上で発生する水によってガスの拡散経路が閉塞されるのを防ぐ効果が得られる。
更に、上記のように、前記触媒凝集相の連続相中にガス拡散炭素材料凝集相を分散させることで、ガスの拡散経路を確保する。前記ガス拡散炭素材料凝集相中には触媒成分が存在しないので、発電時に前記ガス拡散材料凝集相中で水が生成することがなく、よって、より効果的にガス拡散経路を確保することができる。また、前記ガス拡散炭素材料凝集相には、電子伝導性を持たないフッ素化合物等を用いないため、電子伝導経路を分断することなくガス拡散経路を確保できる。また、前記ガス拡散炭素材料凝集相は、電解質物質や触媒成分を含まない独立した凝集相なので、前記凝集相を形成するガス拡散炭素材料に水蒸気吸着特性の低い炭素材料を用いることで炭素材料表面が元来有する撥水特性を生かすことができるため、効果的にガス拡散経路を確保することができる。
以上のように、触媒層中に使用される炭素材料を求められる機能によって複数の炭素材料に分割し、触媒層中で触媒成分、電解質材料、炭素材料がそれぞれ効率的に作用できるように凝集相構造を形成させることで、これまでに無い広範囲の条件下でも安定して効率的に発電できる燃料電池が得られることを見出し、本発明に至った。
上記に加えて、更に、前記触媒担体炭素材料に保水しやすい細孔構造を持たせると、更に広範囲の条件下でも高い発電性能を維持できることを見出した。
すなわち、高加湿条件下や高負荷運転時等の湿潤条件においては、触媒層において加湿や発電によって水が生成すると、この水によって触媒層には水蒸気が過度に存在することになり、この水蒸気が凝縮して触媒層のガス拡散経路を遮断し、発電性能を極度に低下させる危険が高まるが、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料を触媒層中に存在させると、ガス拡散経路が上記のような湿潤条件下でも確保されやすくなり、安定した発電性能が得られやすくなる。
逆に、低加湿条件下でかつ低負荷運転の時等の乾燥条件では、触媒層に供給される水蒸気も少なく、発電によって生成する水も少ないため電解質材料が乾きやすくなる。一般的に使用される電解質材料に高いプロトン伝導性を発現させるには、水の存在が不可欠であるが、このような乾燥条件下では、電解質材料の含水率が低下し、プロトン伝導性が極度に低下するため、発電時の内部抵抗が上昇し、発電性能が悪化する。しかし、前記触媒担体炭素材料に保水しやすい細孔構造を持たせると、高負荷運転時等で過剰に生成した水を前記触媒担体炭素材料中に蓄えることができるので、触媒層中の電解質材料の含水率低下を防ぎ内部抵抗の上昇を効果的に抑制できるため、電池性能の悪化を防ぐことができる。
また、上記のような保水しやすい細孔構造を有する炭素材料は、一般的に電子伝導性が劣る場合が多いため、電子伝導性の優れた炭素材料を導電助剤炭素材料として触媒層中に含有させているので、電子伝導性に起因する内部抵抗上昇を防ぐことができるものである。
従って、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1) プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対の触媒層を含む燃料電池であって、少なくともカソードの触媒層が、触媒成分、電解質材料、及び炭素材料を含むと共に、前記炭素材料が、前記触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、前記触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料と、前記触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料との3種からなり、前記触媒層が、前記触媒成分を担持した前記触媒担体炭素材料、前記電解質材料、及び前記触媒成分を担持していない前記導電助剤炭素材料を主成分として凝集してなる触媒凝集相と、前記触媒成分を担持していない前記ガス拡散炭素材料を主成分として凝集してなるガス拡散炭素材料凝集相との2相構造からなり、前記触媒凝集相が連続体であって、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造である、ことを特徴とする燃料電池。
(2) 前記触媒層の前記触媒担体炭素材料に関し、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であることを特徴とする(1)に記載の燃料電池。
(3) 前記触媒層の前記導電助剤炭素材料のDBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)との比X/SBETが0.2以上3.0以下であることを特徴とする(1)に記載の燃料電池。
(4) 前記触媒層の前記ガス拡散炭素材料のDBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)との比X/SBETが1.0以上であることを特徴とする (1)に記載の燃料電池。
(5) 前記触媒層の断面における10μm×10μm面積の視野中に、円相当直径300nm以上の大きさの触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料凝集相が少なくとも1個存在することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の燃料電池。
本発明の燃料電池は、その触媒層中において、ガス、電子、プロトンの移動経路をそれぞれ分断することなく形成させ、低加湿条件では触媒層中の電解質材料を常に好適な湿潤状態に維持しつつ、高加湿条件でもガス拡散経路が凝縮した水によって閉塞することを防ぐことができ、加湿条件によらず高い性能を発現する。従って、本発明の燃料電池によれば、燃料電池システムの水分(湿度)管理が容易となるため、システム制御や運転が簡便となる。
本発明の燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対の触媒層を含む燃料電池である。
本発明の燃料電池に含まれる触媒層は、触媒成分と、炭素材料と、電解質材料を含む混合物で構成され、かつ前記炭素材料が、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料と、触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料からなる。前記に加えて、本発明の触媒層は、前記触媒担体炭素材料と電解質材料と前記導電助剤炭素材料とを主成分として凝集して形成した触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料を主成分として凝集して形成したガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相構造を有し、前記触媒凝集相が連続体であって、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造にになっており、これによって、単に各成分が平均的に混合した触媒層に比べて、その特性が飛躍的に向上している。
図1に、本発明に係る前記触媒層の構造が模式的に示されている。なお、この図1では、各材料や凝集相を模式的に明確に表現しているために、各階層構造の相対サイズは、実際とは異なる。
本発明における凝集とは、一次粒子が、ファン・デル・ワールス力やクーロン力等の粒子間力によって集まった状態である。前記一次粒子が凝集した状態の塊状体(凝集体)で触媒層が形成されている場合に、この触媒層中の凝集体を凝集相と呼ぶ。
本発明の各成分には、それぞれに求められる機能があり、その機能を発現させるために、それぞれが最低限の物質特性を有している必要がある。触媒成分であれば触媒としての機能を、また、電解質材料であればプロトンを伝導する機能を備えている必要がある。特に、炭素材料については、3つの炭素材料に機能分担させているのが本発明の特徴であり、触媒担体炭素材料であれば触媒成分を担持する機能に加えて水を蓄える機能であって、ガス拡散炭素材料であればガスを効率よく拡散させる機能であって、また、導電助剤炭素材料であれば触媒担体炭素材料の電子伝導性を補完する機能である。
第一に、本発明の触媒層にすることで、ガス拡散炭素材料を効果的に機能させることができる。すなわち、ガス拡散炭素材料の表面にできるだけ触媒成分や電解質材料を接触させないことによって、ガス拡散炭素材料の表面特性やストラクチャーに代表される構造を最大限に活かすと共に、ガス拡散炭素材料同士を凝集させることによって、ガス拡散炭素材料の間隙にできる気孔をガス拡散経路として連続的に発達させることができる。
第二に、本発明の触媒層において、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と電解質材料を一つの塊の凝集体(触媒凝集相)に含有させることで、乾燥条件下においても、前記触媒担体炭素材料が蓄えた水を効果的に前記電解質材料へ放出させ、前記電解質材料の含水率の低下を防ぐことができる。また、前記凝集体に更に導電助剤炭素材料を共存させているので、水を蓄えやすいが電子伝導性が劣るような触媒担体炭素材料であっても電子伝導性を補完させる。
第三に、本発明の触媒層において電解質材料を媒体として強固に融着した触媒凝集相を連続相とすることで、触媒層自体の機械的強度を増強し、電解質材料のネットワークを連続化することによって触媒層における内部抵抗増大の最大の原因となるプロトン伝導抵抗を低減できる。
本発明の触媒層に使用される触媒成分は、求められる反応が触媒成分上で進行すれば限定するものではない。好ましい触媒成分の例としては、白金、パラジウム、ルテニウム、金、ロジウム、オスミウム、イリジウム等の貴金属、これらの貴金属を2種類以上複合化した貴金属の複合体や合金、貴金属と有機化合物や無機化合物との錯体、遷移金属、遷移金属同士あるいは遷移金属と貴金属との複合体や合金、貴金属や遷移金属と有機化合物や無機化合物との錯体、金属酸化物等を挙げることができる。また、これらの2種類以上を複合したもの等も用いることもできる。
本発明に用いられる炭素材料のうちの触媒担体炭素材料は、触媒成分を担持する機能のほかに、近傍の電解質材料を加湿できる程度の水を蓄える機能を有し、これによって乾燥状態でも安定した発電性能が得られる。そして、この機能をより効果的に発現させるために、BET評価法による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であることがより好ましい。ここでBET評価による比表面積SBETとは、窒素ガスの液体窒素温度での等温吸着線の測定からBET法により求めた比表面積値である。この触媒担体炭素材料は、その比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下であると、触媒成分を担持しやすくなるほか、湿潤条件下では水を蓄えやすくなり、また、乾燥条件下では蓄えられた水を徐々に放出し、近傍に存在する電解質材料の含水率の低下を防ぐことができるので、電解質材料のプロトン電導性の低下を抑制することができる。1000m2/g未満であると、触媒担体炭素材料が保水できる量が少なくなる場合があり、低加湿条件や低負荷運転時のような乾燥条件下では、触媒層中の電解質物質の含水率が低下し、プロトン伝導性に起因する内部抵抗が上昇しやすくなる場合がある。また、比表面積の上限は特に限定されないが、実質的に利用できる炭素材料の比表面積として4000m2/g以下である。
また、前記触媒担体炭素材料に関し、上記のように、tプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であると、実質的に乾燥条件下での発電性能が更に向上する。ここでミクロ孔の比表面積Smicro及び全表面積Stotalは、窒素ガスの液体窒素温度における等温吸着線から算出されるものであり、tプロット解析(日本化学会編「コロイド化学I」(株)東京化学同人1995年発行)により算出される値を用いた。詳細なメカニズムは不明ではあるが、直径2nm以下の孔として定義されるミクロ孔は、燃料電池の運転環境において湿潤条件下で水を蓄えやすく、乾燥条件下で蓄えていた水を適度に放出する性質を有しており、特に比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつSmicro/Stotalが0.5以上であると、触媒成分の担持のしやすさが向上すると共に、触媒担体炭素材料が保水できる量、並びに水の吸放出特性のバランスが良くなり、湿潤条件下でも乾燥条件下でも安定した発電特性が得られると推定している。SmicroがStotalより大きくなることは有り得ないのでSmicro/Stotalの上限は1である。Smicro/Stotalが0.5未満になると実質的に乾燥条件下での発電性能が低下し、十分な特性が得られないことが多くなる。
本発明に用いられる触媒担体炭素材料は、一般的に存在する炭素材料であれば特に限定するものではなく、上述のように比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、Smicro/Stotalが0.5以上である炭素材料であれば、好ましい炭素材料として用いることができる。特に、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。前記炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。2種類以上を混合して用いることもできる。
最も好ましい炭素材料の例としては、比表面積が大きく、直径2mm以下のミクロ孔表面積の大きいものが多い活性炭を挙げることができる。一般に、活性炭には、その製造方法に応じて、その細孔表面に酸素を種々の化学的形態(酸素含有官能基の形態)で導入することができる。酸素含有官能基の種類は特に限定されるものではないが、例示するならば、カルボキシル基、水酸基、キノン型酸素、ラクトン環、環状エーテル等である。本発明者らが鋭意検討した結果、酸素含有量が多すぎると燃料電池の触媒層中で長期的に使用されたときに、触媒担体炭素材料自身が酸化消耗しやすく発電性能の低下につながりやすくなる。最適な酸素含有量の範囲は、5質量%以下1質量%以上である。活性炭の酸素含有量が5質量%を超えると、触媒担体炭素材料が燃料電池運転環境下で酸化消耗しやすくなり、触媒の寿命が低下するため本発明には適用することができない場合がある。1質量%未満であると実質的に保水量が足りない場合があり、乾燥条件下での特性が悪化することがあるため好ましくない場合がある。
触媒層中における、触媒担体炭素材料の好ましい含有率は、触媒担体炭素材料やガス拡散炭素材料の種類や含有率、触媒成分の種類や担持率によって影響を受けるので、特定することはできないが、5質量%以上80質量%以下の範囲であれば、少なくとも燃料電池が機能し、本発明の効果を得ることができる。より好ましい範囲を例示するならば、10質量%以上60質量%以下である。この範囲外であると、他の成分とのバランスが悪くなり、効率の良い燃料電池にならない場合がある。例えば5質量%未満であると、触媒担体炭素材料に担持される触媒成分の量が少なくなり過ぎて十分な性能を発揮しない場合がある。また、例えば、80質量%超であると、電解質材料の量が少なくなりすぎて、プロトンの伝達経路が貧弱になるため、やはり効率の良い電池にはならない場合がある。
更に、触媒担体炭素材料として25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が500mL/g以上である炭素材料を選ぶと、触媒成分近傍にある電解質が適当な湿潤状態を保ち、プロトン伝導性の低下を防ぐことができるため、カソードの触媒成分上で水があまり生成しないような低電流放電時においても、プロトン伝導抵抗が上昇せず、燃料電池としてより好ましい状態を維持することができる。従って、本発明の触媒担体炭素材料は、水に対して濡れ易いほど良く、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量の好ましい範囲の上限値を限定することはできない。仮に25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量の実質的な上限値を例示するならば、高比表面積の活性炭で得られると推定される2000mL/g程度を挙げることができる。触媒担体炭素材料の相対湿度90%における水蒸気吸着量が500mL/gより低いと、乾燥条件下で触媒成分近傍にある電解質が乾き易くなり、プロトン伝導性が低下し易くなるため、好ましくない場合がある。
炭素材料の水和性(水和力)は、水分子との相互作用、主として水分子の電気双極子と媒質の電荷との静電気的相互作用及び水素結合等の強さである。前記水和力は、一定条件での水蒸気吸着量で判断できる。本発明で炭素材料の水和力を示す25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量は、25℃の環境に置かれた炭素材料1g当りに吸着した水蒸気量を標準状態の水蒸気体積に換算して示した。25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量の測定は、市販の水蒸気吸着量測定装置を用いて測定することができる。あるいは、25℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に乾燥したガス拡散炭素材料を十分な時間静置し、質量変化から測定することもできる。
また、触媒担体炭素材料の一次粒子径は5μm以下10nm以上がより好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができ、粉砕する方が好ましい。一次粒子径が5μm超であると、ガス拡散経路やプロトン伝導経路を分断する恐れが高くなるほか、特に経済的な理由により触媒成分の使用量が限定され、たとえば厚さ10μm程度の触媒層で性能を発現することが求められた時に、触媒層の触媒担体炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が10nm未満であると、電子伝導性が低くなって好ましくない場合がある上、Smicro/Stotalが0.5以上の炭素材料が実質的に得られなくなる場合がある。
本発明の導電助剤炭素材料に用いられる炭素材料の種類は、一般的に存在する電子伝導性を有する炭素材料であれば特に限定するものではないが、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。また、前記炭素材料の一次粒子径は1μm以下5nm以上がより好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができる。一次粒子径が1μm超であると、触媒層中の導電助剤炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が5nm未満であると、電子伝導性が低くなり好ましくない場合がある。好ましい導電助剤炭素材料としては、カーボンブラックが最も一般的であるが、そのほかにも、電子伝導性を有するものであれば、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。中でも、導電助剤炭素材料は、その電子導電率が触媒担体炭素材料の電子導電率以上であるのがより好ましい(導電助剤炭素材料≧触媒担体炭素材料)。
本発明の導電助剤炭素材料としては、ある程度ストラクチャーが発達した炭素材料を用いることが好ましい。好ましい材料の例は、カーボンブラックである。カーボンブラックは、一次粒子が複数個融着し、ストラクチャーと呼ばれる二次構造を形成している。種類によっては、このストラクチャーが発達しており、一次粒子のつながりが空間を抱え込んだ構造になっている。導電助剤炭素材料としてこのような構造を有している炭素材料を用いると、抱え込んだ空間がガスの拡散経路となったり、水の移動経路となったりするため、好ましい。
ストラクチャーの程度は、電子顕微鏡で観察して決定する方法もあるが、DBP吸油量と比表面積の関係で判断できる。DBP吸油量とは、単位質量のカーボンブラックにフタル酸ジブチルを接触させたときに、カーボンブラックに吸収されるフタル酸ジブチルの量のことであり、主に一次粒子の間隙に吸収されるので、ストラクチャーが発達しているとDBP吸油量は大きくなり、ストラクチャーがあまり発達していないとDBP吸油量は小さくなる傾向にある。ただし、DBPは、一次粒子の間隙以外に一次粒子内部に形成された微細孔にも吸収されるので、DBP吸油量がそのままストラクチャーの程度をあらわすとは限らない。窒素吸着量で測定されるような比表面積が大きくなると、微細孔に吸収されるDBPが多くなり、全体のDBP吸油量も大きくなる傾向にあるためである。従って、高ストラクチャーカーボンブラックでは、窒素吸着量の割にはDBP吸油量が大きくなり、逆に低ストラクチャーカーボンブラックでは、窒素吸着量の割にDBP吸油量が小さくなる。
導電助剤炭素材料として、DBP吸油量X(ml/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)の比X/SBETが0.2以上3.0以下である炭素材料を用いると、導電経路を確保しつつガス拡散経路や水の移動経路を確保できるので、より高性能な触媒層を得ることができるので好ましい。X/SBETの比が0.2未満であると、ガス拡散経路としては空間が貧弱になり、安定して触媒層の性能を引き出すことが難しい場合がある。3.0超であると導電性が損なわれることがあり好ましくない場合がある。
本発明の導電助剤炭素材料の触媒層中における含有率は、3質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、好ましい。この範囲内であれば、触媒担体炭素材料自身の電子伝導性が劣る場合においても導電助剤炭素材料が触媒成分から効果的に集電することができる。3質量%未満であると集電効果が低くなることがある。30質量%以上であると触媒層中の触媒成分密度が下がりすぎてしまい、特にカソードガスに空気を用いた場合等に濃度分極が大きくなることがあり好ましくない場合がある。特に、導電助剤炭素材料の質量が、触媒担体炭素材料の質量1に対して0.05以上0.4以下の範囲内にあると、より好ましい。この範囲にあると湿潤条件下の発電特性と乾燥条件下の発電特性との差が小さくなり、条件に左右されにくい安定した特性を発揮することができる。0.05未満であると高負荷運転時に性能低下する場合がある。0.4超であると触媒層中の触媒成分密度が下がりすぎてしまい、特にカソードガスに空気を用いた場合等に濃度分極が大きくなることがあり好ましくない場合がある。
本発明の導電助剤炭素材料の最適な酸素含有量の範囲は、5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。導電助剤炭素材料の酸素含有量が5質量%を超えると、導電助剤炭素材料の集電効果が低下するため導電助剤炭素材料を使用する効果が得られなくなる。酸素含有量の下限値は特になく、殆ど含有する酸素が無くても良好な特性を示す。
本発明のガス拡散炭素材料に用いられる炭素材料の種類は、ガス拡散経路が形成できるものであり、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。また、ガス拡散炭素材料の一次粒子径は1μm以下5nm以上が好ましい。この範囲より大きな炭素材料は粉砕して用いることができる。一次粒子径が1μm超であると、ガス拡散経路を確保する機能が期待できなくなるほか、触媒層中のガス拡散炭素材料の分布が不均一になり易く、好ましくない場合がある。また、一次粒子径が5nm未満であると、好ましいガス拡散経路が得られない場合がある。好ましいガス拡散炭素材料としては、カーボンブラックが最も一般的であるが、そのほかにも、ガス拡散経路が形成できれば、黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。更に、本発明では、前記ガス拡散炭素材料同士を凝集させた凝集相として触媒層に存在させる。前記の凝集相によって形成させるガス拡散経路は、セルを強く締結したときにでも壊れにくく、触媒層形成時に制御した最適な孔径を長期間にわたって保持しやすい。
また、本発明のガス拡散炭素材料は、水和力の小さい炭素材料の中から選ばれるとより好ましい。触媒成分が担持されていなくて水和力の小さい炭素材料、すなわちガス拡散炭素材料を触媒層中に含ませることによって、触媒層中にガスが拡散できる経路を発達させることができ、アノードであれば水素あるいは水素を主体とした混合ガス、カソードであれば酸素あるいは空気等が、触媒層中に拡散し易くなり、多くの触媒表面と接触できる。そのため、効率的に触媒層での反応を進行させ、高い電池性能が得られるものである。ガス拡散炭素材料として水和力の小さい炭素材料を選ぶと、運転条件の変動により触媒層が高加湿条件にさらされた時や、高電流密度域での運転により触媒層内に大量の水が発生した時に、水によるガス拡散経路の閉塞を防ぎ、電池性能の低下を防ぐことができる。
従って、本発明の燃料電池に含まれるガス拡散炭素材料の25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が50mL/g以下の小さい水和力であれば、大電流放電時に生成する水によるガス拡散経路の閉塞を効果的に抑制でき、安定した電圧で電流を取り出すことができる。50mL/g超であると、電流放電時に触媒層中に凝縮水が滞り、ガス拡散経路が遮断され易くなり、電圧挙動が不安定になる場合がある。
更に高い効果を得るためには、水和力が更に適切な範囲にある炭素材料をガス拡散炭素材料として用いる。具体的には、25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g以上20mL/g以下である炭素材料を、ガス拡散炭素材料として選択することである。この範囲内であると、触媒層中の電解質材料の過度の乾燥を抑制し、かつ、大電流放電時にも、触媒層内部で生成する水を効率良く触媒層外へ排出し、ガスの拡散経路を確保できるため、低負荷から高負荷まで負荷条件によらず、全域にわたって効率の良い電池を得ることができる。25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g未満であると、水和力が小さ過ぎて(撥水性が強くなり過ぎて)、過度の乾燥を招く場合がある。25℃、相対湿度90%における水蒸気吸着量が20mL/g超になると、大電流を継続的に取り出した時等に触媒層内部で生成する水の排出が追いつかず、ガス拡散経路を遮断してしまう場合がある。前記場合には、ガス拡散炭素材料を添加する効果が低くなる。
本発明のガス拡散炭素材料は、より高ストラクチャーなカーボンブラックを用いるのが好ましい。前記カーボンブラックは、一次粒子が複数個融着し、ストラクチャーと呼ばれる二次構造を形成している。種類によっては、このストラクチャーが発達しており、一次粒子のつながりが空間を抱え込んだ構造になっている。本発明に含まれる触媒層では、ガス拡散炭素材料がこのような空間をつなぎ合わせることによって一次粒子のネットワークに囲まれた空間をガスの拡散経路として連続的に触媒層中に形成させることも狙いの一つとしている。従って、前記カーボンブラックを使用したガス拡散炭素材料の場合は、ガス拡散炭素材料同士を凝集させるような構造を触媒層に形成しやすくなる。前記のガス拡散炭素材料が凝集して形成させたガス拡散経路は、セルを強く締結したときにでも更に壊れにくくなり、触媒層形成時に制御した最適な孔径をより長期間にわたって保持しやすい。
本発明のガス拡散炭素材料に、DBP吸油量X(ml/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)の比X/SBETが1以上である炭素材料を用いると、より好ましいガス拡散経路を具備した触媒層が形成できる。X/SBETの比が1以上であると、高ストラクチャーでカーボンブラックの一次粒子の間隙に形成される空間が大きく、電池反応に好ましいガス拡散経路の形成が期待できるためである。X/SBETの比が1未満であると、ストラクチャーによるガス拡散経路は貧弱になり、カーボンブラックの二次粒子間の間隙が主にガス拡散経路を形成することになるので、十分な孔径を確保できなかったり、セル締結時に孔が壊れやすいため、制御しづらく、安定して触媒層の性能を引き出すことが難しい場合がある。より好ましくは、X/SBETの比が1.5以上である。1.5以上であると、ストラクチャーによって形成されるガス拡散経路の孔径が十分に大きく、高電流を取り出したときもフラッディングしにくくなる。このようなストラクチャーであれば、ガスが拡散しやすく、水によるガス拡散経路の閉塞が更に起こりづらくなるので、触媒層中の触媒を有効に利用でき、少ない触媒量でも高出力な燃料電池を得ることができる。
触媒層中における、本発明に係るガス拡散炭素材料の含有率は、3質量%以上30質量%以下の範囲内にあると、より好ましい。3質量%未満では、ガス拡散経路を十分に発達させることができず、ガス拡散炭素材料を含ませる効果が期待できないことがある。30質量%超では、プロトン伝導経路がガス拡散炭素材料によって分断され貧弱になり、プロトン伝導抵抗が大きくなるため、電池性能が低下することがある。3質量%以上30質量%以下の範囲内にあれば、ガス拡散炭素材料の間隙が触媒層中にネットワークを形成し、これがガス拡散経路となるため、触媒層中の触媒成分を有効に利用することができる。使用する炭素材料の種類や形態にもよるが、5質量%以上25質量%以下が最も好ましい。この範囲にあると、プロトン伝導経路と電子伝導経路を損なうことなく、最適なガス拡散経路を発達させることができるため、極めて効率的な発電特性を持った燃料電池の電極を得ることができる。
本発明に含まれる各種炭素材料の水和力の制御は、一般に存在する炭素材料中から水蒸気吸着量を指標に選択することによって達成できる。あるいは、好適な範囲より少ない水蒸気吸着量を持つ炭素材料である場合においても、炭素材料を酸や塩基等で炭素材料表面を処理したり、酸化雰囲気環境に曝したりすることによって、水蒸気吸着量を好適な範囲にまで増加させることができる。限定するものでは無いが、例えば、加温した濃硝酸中で処理したり、過酸化水素水溶液中に浸漬したり、アンモニア気流中で熱処理したり、加温した水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬したり、KOHやNaOHの中で加熱したり、希薄酸素や希薄NO、あるいはNO2中で加熱処理したりすることによって、水蒸気吸着量を増加させることができる。逆に、水蒸気吸着量が多すぎる場合、不活性雰囲気下で焼成することによって、水蒸気吸着量を好適な範囲にまで低下させることもできる。限定するものではないが、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム、真空等の雰囲気下で加熱処理することによって、水蒸気吸着量を低下させることができる。
本発明の燃料電池は、使用される電解質材料の種類によらず効果を発揮するものであって、プロトンを伝導する機能を有していれば、特に限定されるものではない。本発明の燃料電池に使用される電解質膜や触媒層中に使用される電解質材料は、リン酸基、スルホン酸基等を導入した高分子、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーやベンゼンスルホン酸が導入されたポリマー等を挙げることができるが、高分子に限定するものではなく、無機系、無機-有機ハイブリッド系等の電解質膜を使用した燃料電池に使用しても差し支えない。特に好適な作動温度範囲を例示するならば、常温〜150℃の範囲内で作動する燃料電池が好ましい。また、触媒層中に含まれる触媒担体炭素材料と電解質材料との質量比は、1/10〜5/1が好ましい。1/10より触媒担体炭素材料が少ないと、触媒表面が電解質材料で過度に覆われてしまい、反応ガスが触媒成分と接触できる面積が小さくなる場合がある。5/1より過剰に触媒担体炭素材料が含有すると、電解質材料のネットワークが貧弱になり、プロトン伝導性が低くなる場合がある。
本発明の触媒層構造は、その断面を観察することによっても確認することができる。触媒層の任意の場所に任意の角度で切断面を作製し、その断面を観察することによって触媒成分が担持されていない炭素材料が凝集体(凝集相)を形成していることを確認する方法である。前記凝集体が、本発明のガス拡散炭素材料凝集相に対応するものである。
触媒層の断面における10μm×10μmの面積の視野中に、円相当直径が300nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が少なくとも1個分散していると好ましい。1個未満では、触媒層形成時に各種炭素材料を平均的に混合してしまったか、触媒成分を担持していない炭素材料であるガス拡散炭素材料の含有率が低すぎるため、少なくともガス拡散炭素材料が凝集相を形成して分散していないので、その触媒層はガスの伝達経路が未発達でガスの拡散性が悪く、特に湿潤条件下で安定した性能を発現することはできない。より好ましくは、同視野中に円相当直径が500nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が少なくとも1個存在することである。前記構造であれば、すくなくとも湿潤条件下で発電性能が不安定になることが抑制されて、安定した発電性能が得られる。
触媒層の切断面の形成方法は、特に限定しないが、例えば触媒層をカッターナイフやはさみで切断したり、電解質物質のガラス転移温度以下に冷却した触媒層を破断し、その断面を観察する方法等をあげることができる。特に好ましい方法は、クライオミクロトーム等を用いて、液体窒素で冷やされた環境下で触媒層の切断面を形成する方法である。クライオミクロトームを用いて超薄切片を作製し観察する方法も考えられるが、より簡易的にはクライオミクロトームに試料として触媒層をセットし、ダイヤモンドやガラスでできたトリミングナイフを用いて触媒層表面を切削し、生成した切削面を観察する方法である。
観察する方法は、同一視野を二次電子像と反射電子像の両方で観察でき、少なくとも1万倍以上の倍率で観察できる走査型電子顕微鏡が好ましい。二次電子像は触媒層断面の凹凸情報が反映され、炭素材料や電解質材料、気孔の存在が確認できる。高精度の電子顕微鏡を用いれば触媒成分の存在が確認できるが、同視野の反射電子像を観察すると成分の分布情報が反映され、例えば触媒成分に金属が使用されている場合、触媒成分は明るく、触媒成分がないところは暗いコントラストになって像が得られる。本発明の触媒層の二次電子像と反射電子像を比較すると、同視野中で二次電子像中では炭素材料が存在するにもかかわらず、反射電子像中では暗いコントラストになった部分、つまり触媒成分が存在しない炭素材料が認められる。前記部分、すなわち、触媒成分を有さない炭素材料部分の外周の円相当直径が300nm以上であると本発明の好ましい形態となる。
円相当直径が300nm以上の大きさの触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)の存在を、より定量的に識別できる例を述べる。反射電子像を1万倍の倍率で272DPI×272DPI以上の解像度で、かつ256段階の階層で明るさを取り込む。取り込んだ画像の明るさを、画像解析ソフトを用いて、暗いほうから110階層目の範囲を黒色で表示し、111階層目から明るいほうへ256階層目までの範囲を白色になるように二値化する。このままでは黒色点が島状に孤立した点が多数発生して目的とする範囲が明確にならないので、目的とする範囲を明確化するために、各黒色点の膨張処理を1度行い、隣り合った点同士を認識させる。更に、穴埋め処理を実行して、範囲内の空白部分を穴埋めして同一範囲であるように認識させる。最後に、膨張した分を元に戻す縮退処理を行い、目的とする範囲を明確化させる。その上で、各黒色部分の円相当直径を各黒色部分の面積より算出し、300nm未満の部分を全てカットする。残った黒色部分のうち二次電子像で炭素材料が存在する場合、本発明の好ましい形態となる。
本発明では、前記全ての分析手法で触媒成分を有さない炭素材料凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)を観察して本発明の規定範囲を満足する必要はなく、1つの分析手法でえられる値が本発明の規定範囲を満足すればその効果が得られるものである。
本発明の燃料電池に含まれる触媒層の作製方法は、触媒凝集相の連続相にガス拡散炭素材料凝集相が分散し、かつガス拡散炭素材料表面にできるだけ電解質材料が吸着しないように作製できれば、特に限定はしない。前記触媒層となる材料を含む液に、必要に応じて水や有機溶媒を加えて、インクを作製する。このインクを膜状に乾燥し、触媒層を形成することができる。
特に好ましい触媒層作製方法を以下に述べる。
(i) 触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料と電解質材料とを、電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合した後に、電解質材料に対する貧溶媒を加え、電解質材料と触媒を担持した触媒担体炭素材料とを凝集させて得られるA液と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料を、電解質材料に対する貧溶媒中で粉砕して得られるB液を作成し、A液とB液を混合して得られるC液をインクとして、膜状に乾燥して触媒層とする。
この方法では、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料を電解質材料と共に、電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合すると、触媒担体炭素材料が微細な凝集体に粉砕され、その表面近傍に電解質材料が溶解して存在している状態になる。これに電解質材料に対する貧溶媒を加え電解質材料を析出させると、触媒を担持した触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料と電解質材料粒子が凝集を起こし、電解質材料が触媒を担持した触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料に固定される。更に、この溶液に微細なガス拡散炭素材料が添加されると、電解質材料は触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料に固定されているため、ガス拡散炭素材料表面が電解質材料によって覆われ難く、ガス拡散炭素材料の表面が本来持ち合わせている表面性状を活かすことができる。すなわち、本発明の触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相の構造となり、前記触媒凝集相が連続体で、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造となる。特に、表面の水和性を制御したガス拡散炭素材料を使用する場合、この方法は有効である。
(ii) 触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と微量の電解質材料を、電解質材料に対する良溶媒中で粉砕混合した後に乾燥によって固化し、前記固化物に、電解質材料に対する貧溶媒と共に導電助剤炭素材料を加え、前記固形物を粉砕した後、更に電解質材料が溶解した液を滴下して得られるA液と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料を、電解質材料に対する貧溶媒中で粉砕して得られるB液を作成し、A液とB液を混合して得られるC液をインクとして、膜状に乾燥して触媒層とする。
この方法では、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料を微量の電解質材料と共に電解質材料の良溶媒中で粉砕混合した後に乾燥すると、微量の電解質材料が触媒成分を担持した触媒担体炭素材料表面に膜状に固定される。前記乾燥によって得られる固形物(微量の電解質材料が固定された触媒担体炭素材料)を、電解質材料に対する貧溶媒中で、導電助剤炭素材料と共に粉砕すると、電解質材料は、触媒成分を担持した触媒担体炭素材料に固定されたまま微粒化する。更に、前記懸濁液に、必要十分な電解質溶液を滴下して、電解質材料を析出させ、電解質材料が僅かに固定された触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料と析出した電解質材料とが凝集した分散液が生成する。前記分散液に、ガス拡散炭素材料が添加されると、(i)の方法と同様に、電解質材料は触媒を担持した触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料の表面に固定又は凝集しているため、ガス拡散炭素材料表面が電解質材料によって覆われ難く、ガス拡散炭素材料の表面が本来持ち合わせている表面性状を活かすことができる。すなわち、本発明の触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2つの凝集相の構造となり、前記触媒凝集相が連続体で、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造となる。この方法も、特に表面の水和性を制御したガス拡散炭素材料を使用する場合に有効である。
これらの触媒層作製方法で使用する、電解質材料に対する良溶媒とは、実質的に使用する電解質材料を溶解する溶媒のことであり、電解質材料の種類や分子量によるため限定はできないが、具体例を例示すれば、市販されているアルドリッチ製5%ナフィオン(登録商標)溶液に含まれるパーフルオロスルホン酸ポリマーに対する良溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。
また、これらの好ましい触媒層作製方法で使用する、電解質材料に対する貧溶媒とは、実質的に使用する電解質材料を溶解しない溶媒のことであり、電解質材料の種類や分子量により、溶媒が異なるため、特定することはできない。例えば、市販されているアルドリッチ製5%ナフィオン溶液に含まれるパーフルオロスルホン酸ポリマーに対する貧溶媒を例示するならば、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。
上述した(i)あるいは(ii)の好ましい触媒層作製方法の中で、粉砕あるいは粉砕混合する方法としては、大きな凝集体となっている触媒担体炭素材料やガス拡散炭素材料を粉砕し、少なくとも1μm以下の凝集体に粉砕する目的を果たすことができれば、手段は限定しない。一般的な手法としては、例を挙げるならば、超音波を利用する方法、ボールミルやガラスビーズ等を用いて機械的に粉砕する方法等を挙げることができる。
本発明の燃料電池にガス拡散層を使用する場合は、セパレーターに形成されたガス流路から触媒層までガスを均一に拡散させる機能と、触媒層とセパレーター間に電子を伝導する機能が求められ、最低限、これらの機能を有していれば特に限定するものではない。一般的な例では、カーボンクロスやカーボンペーパー等の炭素材料が主な構成材料として用いられる。ガスの拡散性、電子伝導性のほか、耐食性も付与できるのであれば金属メッシュや金属ウール等の金属材料を用いることもできる。
好ましいガス拡散層の構造の例としては、ガス拡散層のセパレーター側の層が繊維状炭素材料を主成分とするガス拡散繊維層、触媒層側の層にはカーボンブラックを主成分とするマイクロポア層で構成される2層構造をあげることができる。
前記インクを膜状に乾燥する方法としては、一般に提案されている方法が適用でき、特に限定しない。例えば、ガス拡散層上にインクを塗布するならば、刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法があげることができる。あるいは、インクをバーコーター、刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法で塗布、乾燥して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートやPTFE板等、高分子材料の表面に一旦別の材料上に触媒層を形成した後、ガス拡散層へホットプレス等の方法で接合しガス拡散電極を形成する方法を選択することもできる。
このように作製したガス拡散電極は、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜にホットプレス等で圧着し電解質膜と電極の複合体(Membrane Electrode Assembly, MEA)を形成することができる。
又は、インクをPTFEシートやPTFE板等の高分子材料に刷毛塗り、スプレー、ロールコーター、インクジェット、スクリーンプリント等の方法で塗布、乾燥して、一旦別の材料上に触媒層を形成した後、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜へホットプレス等の方法で接合する方法や、パーフルオロスルホン酸ポリマーのような電解質膜にインクを直接塗布、乾燥する方法等で、触媒層と電解質膜の接合体を作製した後、ガス拡散層をホットプレス等の方法で触媒層に圧着する方法等でもMEAを形成することができる。
以上のように作製したMEAは、一般的には、その外側にセパレーターを配置して単位セルを構成し、これを必要な出力に合わせてスタックし、燃料電池として用いることができる。
<炭素材料の物性測定>
本発明のガス拡散電極、並びに燃料電池の実施例を示すにあたり、使用する炭素材料として8種の炭素材料a〜hを準備した。表1(炭素材料の種類とその物性)に、各種炭素材料の各種物性を示した。
なお、窒素吸着比表面積は、120℃で真空乾燥したサンプルを自動比表面積測定装置(日本ベル製、BELSORP36)を用いて窒素ガスにて測定し、BET法に基づく1点法にて比表面積SBETを決定した。また、tプロット解析は装置に付属の解析プログラムを使用してStotal及びSmicroの物性値を算出した。酸素含有量は、元素分析値である。水蒸気吸着量は、定容量式水蒸気吸着装置(日本ベル製、BELSORP18)を用いて測定し、120℃、1Pa以下で2時間脱気前処理を行った試料を25℃の恒温中に保持し、真空状態から、25℃における水蒸気の飽和蒸気圧までの間、徐々に水蒸気を供給して段階的に相対湿度を変化させ、水蒸気吸着量を測定した。得られた測定結果から吸着等温線を描き、図から相対湿度90%のときの水蒸気吸着量を読み取った。表1では、読み取った水蒸気量を試料1g当りに吸着した標準状態の水蒸気体積に換算して示した。DBP吸油量は、アブソープトメーター(Brabender社製)を用いて、最大トルクの70%の時のDBP添加量を試料100g当りのDBP吸油量に換算して決定した。
Figure 2009252359
<白金触媒の調製>
塩化白金酸水溶液中に、触媒担体炭素材料として表1の炭素材料の中から選択した1種を分散し、50℃に保温し、撹拌しながら過酸化水素水を加え、次いでNa2S2O4水溶液を添加して、触媒前駆体を得た。この触媒前駆体を濾過、水洗、乾燥した後に100%H2気流中、300℃で3時間、還元処理を行い、触媒担体炭素材料にPtが50質量%担持されたPt触媒を調製した。
<触媒インクの調製>
調製したPt触媒と導電助剤炭素材料として表1の炭素材料の中から選択した1種を容器に取り、これに5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を加え、軽く撹拌後、超音波で触媒を粉砕した。更に撹拌しながら酢酸ブチルを加え、Pt触媒と導電助剤炭素材料とナフィオンを合わせた固形分濃度が2質量%となるようにし、Pt触媒(Ptが担持された触媒担体炭素材料)と導電助剤炭素材料とナフィオン(電解質)とが凝集した触媒インクを調製した。各種材料は特に記述がない限り、触媒担体炭素材料の質量1に対して、ナフィオンが質量1.5、導電助剤炭素材料を質量0.2の比率で混合した。
<ガス拡散炭素材料インクの調製>
容器にガス拡散炭素材料として表1の炭素材料の中から選択した1種をそれぞれ取り、炭素材料の濃度が2質量%になるように酢酸ブチルを加え、超音波で炭素材料を粉砕し、ガス拡散炭素材料が凝集したガス拡散炭素材料インクa〜iを調製した。
<塗布インクの作成>
触媒インクとガス拡散炭素材料インクを混合し、固形分濃度が2質量%の塗布インクを作成した。ガス拡散炭素材料は特に記述がない限り、触媒成分を除いた全固形分質量1に対して質量0.05の比率になるように混合した。
<触媒層の作製>
塗布インクをテフロン(登録商標)シートにそれぞれスプレーした後、アルゴン中80℃で10分間、続いてアルゴン中120℃で60分間乾燥し、触媒層を作製した。触媒層の白金目付け量は、作製したテフロンシート上の触媒層を3cm角の正方形に切り取って質量を測定し、その後、触媒層をスクレーパーで剥ぎ取った後のテフロンシート質量を測定し、先の質量との差分から触媒層質量を算出し、触媒インク中の固形分中の白金が占める割合から計算により求め、白金目付け量が0.20mg/cm2になるようにスプレー量を調整した。
<MEAの作製>
作製した触媒層を用いてMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(デュポン社製N112)は6cm角の正方形に切り取り、テフロンシート上に塗布された触媒層は、カッターナイフで2.5cm角の正方形に切り取った。これらの触媒層をアノード及びカソードとしてナフィオン膜の中心部にずれが無いようにはさみ、120℃、100kg/cm2で10分間プレスした。室温まで冷却後、アノード、カソード共にテフロンシートのみを注意深くはがし、アノード及びカソードの触媒層をナフィオン膜に定着させた。次にガス拡散層として市販のカーボンクロス(E-TEK社製LT1200W)を2.5cm角の正方形に切り取り、アノードとカソードにずれが無いようにはさみ、120℃、50kg/cm2で10分間プレスし、MEAを作成した。なお、プレス前の触媒層付テフロンシートの重量とプレス後にはがしたテフロンシートの重量との差から定着した触媒層の重量を求め、触媒層の組成の質量比より白金目付け量を算出し、0.2mg/cm2であることを確認した。
<燃料電池性能評価条件>
作製したMEAは、それぞれセルに組み込み燃料電池測定装置にて、燃料電池性能評価を次の手順で行った。
最初に以下の条件を「高加湿高負荷」の代表的な条件として性能評価を行った。ガスは、カソードに空気、アノードに純水素を、利用率がそれぞれ30%と60%となるように供給し、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定し、供給する空気と純水素は、それぞれ80℃に保温された蒸留水中でバブリングを行い、加湿した。このような条件でセルにガスを供給した後、1000mA/cm2まで負荷を徐々に増加して1000mA/cm2で負荷を固定し、60分経過後のセル端子間電圧を「高加湿高負荷」性能として記録した。
次に、以下の条件を「低加湿低負荷」の代表的な条件として性能評価を行った。ガスは、カソードに空気、アノードに純水素を、利用率がそれぞれ30%と60%となるように供給し、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で圧力調整し、0.1MPaに設定した。セル温度は80℃に設定し、供給する空気と純水素は、それぞれ50℃に保温された蒸留水中でバブリングを行い、加湿した。このような条件でセルにガスを供給した後、100mA/cm2まで負荷を徐々に増加して100mA/cm2で負荷を固定し、30分経過後のセル端子間電圧を「低加湿低負荷」性能として記録した。
<性能比較1>
先ず、表2に示した通り、触媒担体炭素材料を表1のa、導電助剤炭素材料を表1のf、ガス拡散炭素材料を表1のhとして、触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料と電解質とからなる触媒凝集相と、ガス拡散炭素材料凝集相とからなって、前記触媒凝集相中に前記ガス拡散炭素材料凝集相が分散された構造となった実施例1の触媒層を作製した。
また、比較例1〜3として3種の炭素材料のいずれかが欠落した触媒層を作製した。
更に、前記2つの凝集相からなる2相構造をとらない比較として、実施例1と同一組成比で比較例4の触媒層を次の手順で作製した。触媒担体炭素材料に表1のaを用いたPt触媒、導電助剤炭素材料として表1のf、ガス拡散炭素材料として表1のh、を全て1つの容器にとり、5%ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を加えた。このとき、触媒担体炭素材料の質量1に対して、ナフィオンが質量1.5、導電助剤炭素材料を質量0.2の比率で混合し、ガス拡散炭素材料は、触媒成分を除いた全固形分質量1に対して質量0.05の比率になるように混合した。更にナフィオンの良溶媒であるイソプロピルアルコールを固形分濃度が2質量%となるように加え、超音波で炭素材料を粉砕し、触媒担体炭素材料と導電助剤炭素材料とガス拡散炭素材料と電解質が1つの凝集体に凝集した塗布インクを作成し、実施例1と同様の方法で触媒層を形成し、比較例4の触媒層を得た。
これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
Figure 2009252359
上記性能比較で作製した触媒層のうち、前記凝集相の2相構造を有する実施例1と、前記のような2相構造を有さない比較例4の触媒層の断面構造観察を行った。観察試料には、性能比較で用いたMEAを性能評価を実施した後にセルから取り出し、ピンセットを用いてガス拡散層を注意深く剥がした。次に、ガス拡散層を剥がしたMEAカッターナイフで5mm角程度の大きさで切り出し、カソードの触媒層が切削できるようにクライオミクロトームのホルダーにカーボンテープで固定した。作製したホルダーをクライオミクロトームにセットし、ナイフにはダイアモンドトリミングナイフをセットした。このときダイアモンドトリミングナイフをナイフの進行方向に対して10度程度角度をつけ、触媒層が斜めに切削されるようにした。切削温度を−90℃、触媒層の深さ方向に1回当り50nmの速度で、少なくとも100回切削し、触媒層の切断面を作製した。これら切断面を作製した触媒層はホルダーごと電子顕微鏡ホルダーにセットし、1万倍の倍率で2次電子像と反射電子像を観察した。
比較例4の触媒層は、2次電子像から電解質材料が固まりを作っていると推定される場所以外は、反射電子像が一様に明るいコントラストとなって観察され、触媒成分が担持されていない炭素材料の凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)は見られなかった。それに対して、実施例1の触媒層では、2次電子像で明らかに炭素材料が存在すると判別できる箇所のうち反射電子像では暗いコントラストとなっている箇所、つまり触媒成分が担持されていない炭素材料の凝集相(ガス拡散炭素材料凝集相)が、島状に分布している様子が観察できた。
より定量的に識別するために、1万倍の倍率で272DPI×272DPI以上の解像度で、かつ256色の階層で明るさで反射電子像を電子情報として取り込み、取り込んだ画像の明るさを画像解析ソフトを用いて、暗いほうから110階層目の範囲を黒色で表示し、111階層目から明るいほうへ256階層目までの範囲を白色になるように二値化した。次に、各黒色点の膨張処理を1度行い、隣り合った点同士を認識させた。更に穴埋め処理を実行して、範囲内の空白部分を穴埋めして同一範囲であるように認識させた。最後に、膨張した分を元に戻す縮退処理を行い目的とする範囲を明確化させた。その上で、各黒色部分の円相当直径を各黒色部分の面積より算出し、300nm未満の部分を全てカットした。残った黒部分のうち、同視野の二次電子像で炭素材料が存在する黒部分の個数を計測すると1個以上であった。更に黒部分の円相当直径が500nm以下のものを削除しても残った黒部分のうち、同視野の二次電子像で炭素材料が存在する黒部分の個数を計測すると1個以上であった。従って、実施例1の触媒層は本発明の好ましい構造を有していることが確認できた。
表2に示したとおり、触媒担体炭素材料、導電助剤炭素材料、ガス拡散炭素材料を使用し、かつ上記2つの凝集相の2相構造を有する本発明の実施例1は高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。特に、ガス拡散炭素材料を含まずガス拡散単相材料凝集相が無く、触媒凝集相に導電助剤炭素材料がふくまれない比較例1、及びガス拡散炭素材料を含まずガス拡散単相材料凝集相が無い比較例3は、高加湿高負荷の特性が極端に悪く、高加湿高負荷条件で1000mA/cm2の負荷をかけることができなかった。触媒凝集相に導電助剤炭素材料がふくまれない比較例2は、内部抵抗が高くなり、1000mA/cm2の負荷における電圧降下が大きかった。また、上記2つの凝集相の2相構造を有する実施例1は、前記のような2相構造を有さない比較例4より高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。
<性能比較2>
表3に示した通り、触媒担体炭素材料を表1のa〜gの炭素材料を用い、導電助剤炭素材料を表1のf、ガス拡散炭素材料を表1のhとして、触媒担体炭素材料の種類が異なる各種触媒層を、触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2相構造となるように作製し、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
Figure 2009252359
表3に示した通り、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上である本発明の触媒担体炭素材料を使用した実施例1、2、4は、高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。中でも酸素含有量が3.3質量%である炭素材料aを触媒担体炭素材料として使用した実施例1が特に優れた特性を示した。
それに対し、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g以下である炭素材料を触媒担体炭素材料とした実施例5及び7は、高加湿高負荷と低加湿低負荷の両方の特性が悪い結果となった。これらに使用したPt触媒をTEM観察すると、担持されたPt粒子が凝集し巨大化しており、一部には10nmを越す粒子径のものが存在した。実施例1、2、3のPt触媒のTEM観察では、Pt粒子が粒子径5nmを超えるものは観察できなかった。また、比表面積SBETが1000m2/g以上であってもミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以下の実施例3と6は、比Smicro/Stotalが0.5以上である実施例1、2、4と比較すると低加湿低負荷条件の特性が悪かった。
<性能比較3>
表4に示した通り、導電助剤炭素材料を表1のe、f、hの炭素材料を用い、触媒担体炭素材料を表1のa、ガス拡散炭素材料を表1のhとして、導電助剤炭素材料の種類が異なる各種触媒層を、触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2相構造となるように作製し、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
Figure 2009252359
本発明の実施例8、1、9はすべて高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。DBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)の比X/SBETが0.2以下である実施例8は、比X/SBETが0.2以上3.0以下である実施例1及び9と比較すると高加湿高負荷の性能が劣る傾向にあった。
<性能比較4>
表5に示した通りガス拡散炭素材料に表1のf、g、hの炭素材料を用い、触媒担体炭素材料を表1のa、導電助剤炭素材料を表1のfとして、導電助剤炭素材料の種類が異なる各種触媒層を、触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2相構造となるように作製し、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
Figure 2009252359
本発明の実施例10、11、1はすべて高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。DBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)の比X/SBETが1.0未満である実施例10は、比X/SBETが1.0以上である実施例11及び1と比較すると高加湿高負荷の性能が劣る傾向にあった。
<性能比較5>
表6に示した通り、触媒担体炭素材料を表1のa、導電助剤炭素材料を表1のf、ガス拡散炭素材料を表1のhとして、導電助剤炭素材料の混合比率のみを触媒担体炭素材料の質量1に対して、導電助剤炭素材料を質量0.05〜0.5の比率で段階的に変化させて混合した触媒層を、触媒凝集相とガス拡散炭素材料凝集相との2相構造となるように作製し、これらの触媒層をカソードしたときの発電性能を比較した。なお、アノードには、実施例1の触媒層を用いた。
Figure 2009252359
本発明の実施例1、及び12〜16はすべて高加湿高負荷条件、低加湿低負荷条件共に優れた性能を示した。特に導電助剤炭素材料の質量が触媒担体炭素材料の質量1に対して0.05以上0.4以下の範囲内にある実施例1及び13〜15は特に性能が優れる結果となった。
図1は、本発明の触媒層の凝集相構造を説明するための模式図である(模式図として明確化しているために、各階層構造の相対サイズは、実際とは異なる)。
符号の説明
1…ガス拡散炭素材料凝集相
2…ガス拡散炭素材料
3…触媒凝集相
4…導電助剤炭素材料
5…触媒成分を担持した触媒担体炭素材料
6…電解質材料

Claims (5)

  1. プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対の触媒層を含む燃料電池であって、少なくともカソードの触媒層が、触媒成分、電解質材料、及び炭素材料を含むと共に、前記炭素材料が、前記触媒成分を担持した触媒担体炭素材料と、前記触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料と、前記触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料との3種からなり、
    前記触媒層が、前記触媒成分を担持した前記触媒担体炭素材料、前記電解質材料、及び前記触媒成分を担持していない前記導電助剤炭素材料を主成分として凝集してなる触媒凝集相と、前記触媒成分を担持していない前記ガス拡散炭素材料を主成分として凝集してなるガス拡散炭素材料凝集相との2相構造からなり、
    前記触媒凝集相が連続体であって、前記ガス拡散炭素材料凝集相が前記触媒凝集相中に分散した構造である、
    ことを特徴とする燃料電池。
  2. 前記触媒層の前記触媒担体炭素材料に関し、BET評価による比表面積SBETが1000m2/g以上4000m2/g以下で、かつtプロット解析による直径2nm以下のミクロ孔表面積Smicroの全表面積Stotalの比Smicro/Stotalが0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記触媒層の前記導電助剤炭素材料のDBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)との比X/SBETが0.2以上3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  4. 前記触媒層の前記ガス拡散炭素材料のDBP吸油量X(mL/100g)とBET評価による比表面積SBET(m2/g)との比X/SBETが1.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  5. 前記触媒層の断面における10μm×10μm面積の視野中に、円相当直径300nm以上の大きさの触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料凝集相が少なくとも1個存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池。
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