JP2016126869A - 固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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正孝 日吉
Masataka Hiyoshi
正孝 日吉
孝 飯島
Takashi Iijima
孝 飯島
禰宜 教之
Noriyuki Negi
教之 禰宜
克公 松本
Katsumasa Matsumoto
克公 松本
晋也 古川
Shinya Furukawa
晋也 古川
広幸 林田
Hiroyuki Hayashida
広幸 林田
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Abstract

【解決課題】優れた反応ガスのガス拡散性と凝縮水の排出性とを有するカソード触媒層を備え、大電流放電時においても優れた発電性能を発揮する固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】少なくともカソード触媒層が触媒金属、電解質材料、及び炭素材料で構成され、前記炭素材料が触媒金属を担持する担体炭素材料、触媒金属を担持していないガス拡散炭素材料、及び触媒金属を担持していない導電助剤炭素材料からなり、担体炭素材料が直径30〜300nm及び長さ400〜5000nmの繊維状炭素材料であってガス拡散炭素材料及び導電助剤炭素材料の粒子径が25〜65nmであり、カソード触媒層において、ガス拡散炭素材料が島状に凝集したガス拡散炭素材料凝集相を形成する固体高分子形燃料電池。
【選択図】なし

Description

この発明は、固体高分子形燃料電池に関するものであり、特に大電流放電時の運転環境下において、十分な発電特性を発揮し得る固体高分子形燃料電池に関する。
一般的な固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んでアノードとなる触媒層(アノード触媒層)とカソードとなる触媒層(カソード触媒層)とが配置され、また、これらを挟んでその外側にガス拡散層が配置され、更にその外側にセパレーターが配置された基本構造を有し、通常は、必要な出力を発現させるために、前記基本構造を単位セルとして複数の単位セルをスタックし、電池を構成している。
そして、前記基本構造の各単位セルから電流を取り出すためには、アノードとカソードの両極に配されたセパレーターのガス流路から、それぞれガス拡散層を介して、カソード側には酸素あるいは空気等の酸化性ガスを導入し、また、アノード側には水素等の還元性ガスを導入し、各触媒層まで供給し、例えば、還元性ガスとして水素ガスを利用すると共に酸化性ガスとして酸素ガスを利用する場合には、アノードの触媒金属上で起こる化学反応〔酸化反応:H→2H+2e(E0=0V)〕とカソードの触媒金属上で起こる化学反応〔還元反応:O+4H+4e→2HO(E0=1.23V)〕とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。
アノードやカソードとなる触媒層を形成する触媒としては、炭素材料の表面に触媒作用を持つ触媒金属の微粒子が担持された触媒金属担持炭素材料が用いられている。ここで、触媒作用を有する触媒金属については、これまでに種々の検討がなされてきたが、固体高分子形燃料電池のように強酸性環境下での水素の酸化反応及び酸素の還元反応に対して、純金属としては白金(Pt)が最も反応活性に富んでおり、現在、家庭用定置型燃料電池や自動車用燃料電池の触媒金属としては専ら、Pt若しくはPtを主成分とするPt合金が用いられている。そして、上記の各反応は一般に触媒金属上で起きるため、この触媒金属の利用率を高めるためには触媒金属の質量当りの表面積を大きくすることが必須であり、そのために触媒金属は数nm程度の大きさの微粒子であるのが一般的である。
そして、このような触媒金属の微粒子を担持する担体については、電子伝導性、化学的安定性、電気化学的安定性の観点から一般に炭素材料が用いられており、また、担体としての担持能力を高めるために、すなわち触媒金属が吸着するサイトを多くするために、比表面積の大きな炭素材料が用いられる。具体的には、数10〜数100nm程度の大きさの粒子で、かつ、触媒金属を吸着し易いように表面が多孔質化した炭素材料(多孔質炭素材料)が一般に用いられている。また、触媒層中を反応ガス(酸素ガス等の酸化性ガスや水素ガス等の還元性ガス)が抵抗なく拡散するために、触媒層を形成した際に、ガスが流れるための細孔が形成される必要があり、この目的に合致した炭素材料の形状として、一般に「樹枝状構造」と呼ばれる立体的に枝が発達した構造を有する炭素材料が用いられている。そして、現時点で最も普及しているのがカーボンブラックと呼ばれる炭素材料であり、数10nmの粒子が樹枝状に連なった構造(アグリゲート:agrigate)を持ち、触媒層を作るとその枝間に空隙が形成され、この空隙が発電時に反応ガスを拡散させて触媒金属にまで供給する細孔となる。
また、固体高分子形燃料電池においては、上記の発電原理の通り、化学反応を生起させて発電するために、触媒層中おいて反応ガスの流通・拡散、プロトンの伝導、及び電子の伝導がそれぞれ円滑に行われることが必須である。具体的には、セパレーターのガス流路からカソード側あるいはアノード側の触媒層内部の触媒金属まで酸素ガス等の酸化性ガスや水素ガス等の還元性ガスが移動できるガス拡散経路や、アノード側の触媒金属上で発生したプロトン(H+)がプロトン伝導性電解質膜を経由してカソード側の触媒金属まで伝達できるプロトン伝導経路や、更にはアノード側の触媒金属上で発生した電子(e-)がガス拡散層、セパレーター、及び外部回路を通じてカソード側の触媒金属まで伝達できる電子伝導経路が、それぞれ分断されることなく連続した良好な経路として形成されていることが必要であり、これらガス拡散経路、プロトン伝導経路、及び電子伝導経路のいずれかにおいて分断された不連続な部分が存在すると、仮に他のいずれかにおいて良好な経路が形成されていても、結果として効率良く発電し電流を取り出すことができない。
従って、アノードやカソードを構成する触媒層の内部では、一般に、構成材料の間隙に形成された反応ガスの拡散経路となる細孔、プロトン伝導経路となる電解質材料、及び、電子伝導経路となる炭素材料やセパレーター用金属材料等の導電性材料が、それぞれの連続したネットワークを形成していることが重要である。
また、プロトン伝導性電解質膜や触媒層中のプロトン伝導経路には、一般に高分子電解質材料としてパーフルオロスルホン酸ポリマーに代表されるイオン交換樹脂が用いられているが、この高分子電解質材料は、水分子を介したプロトンのホッピングが伝導形態であるため、湿潤環境下で初めて高いプロトン伝導性を発現し、乾燥環境下ではプロトン伝導性が低下する。従って、出力電圧のロスがないように燃料電池を作動させるためには、触媒層中の高分子電解質材料を十分な湿潤状態にすることが必須であり、カソード及びアノードの両極に供給する反応ガスと共に、常に水蒸気を供給して加湿条件に保つ必要がある。
しかしながら、カソード触媒層においては、アノード側からプロトンに付随して移動してくる水分子に加えて、カソード側での化学反応により生成する水分子が水蒸気として加わり、飽和蒸気圧を超えてついには水に凝縮する。このため、カソード触媒層においては、大電流放電時に水分子の生成量が多くなると、酸素ガス等の酸化性ガスのガス拡散経路と発電時の凝縮水の排水経路とを兼ねる触媒層内の細孔が多量に生成した凝縮水で目詰まりを起こし、触媒層へのガスの供給や拡散が不十分になって燃料電池の出力電圧が低下する、いわゆるフラッディング(flooding)を引き起こし易いというカソード触媒層特有の問題がある。
このため、大電流放電時の出力電圧を高くして最高出力を高めることが求められる自動車向け等の用途では、その実用化や高性能化に向けて、上記のカソード触媒層で発生するフラッディングを抑制することが大きな課題となっている。また、この大電流放電時の発電性能を向上させるためには、カソード触媒層において、反応ガスである酸素ガスの拡散速度を大きくする反応ガスのガス拡散性を改善するだけでなく、化学反応で生成する水をいち早く排出してフラッディングの発生を未然に防止する凝縮水の排出性についても、同時に優れた性能を発揮させることが求められる。
そこで、従来においても、上述したフラッディングに起因する固体高分子形燃料電池の性能低下の問題を解決するために、幾つかの提案がなされている。
例えば、特許文献1においては、電解質膜と、その表面に形成された触媒層と、この触媒層の電解質膜とは反対側の表面に形成されたガス拡散層とを備え、前記触媒層中にガス拡散層から電解質膜に向かう細孔を形成し、この細孔の横断面積について電解質膜側よりもガス拡散層側を大きくし、また、触媒担体の一部のみをアイオノマーで被覆して触媒担体で形成される細孔の一部がアイオノマーと接しないように構成し、触媒層中で発生した水をガス拡散層側へ排出し易くする共に、ガス拡散層側でアイオノマーが吸水しても細孔が閉塞することなくガス拡散経路が確保され、これによってフラッディングを抑制できるようにした燃料電池が提案されている。
また、特許文献2においては、触媒層中に撥水性を有する一次粒子径30nm以上800nm以下のフッ素樹脂を導入することにより、電極反応で生成した水を排出し易くし、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されており、また、特許文献3においては、カーボン担体に白金を担持させた触媒からなる触媒層と、カーボンファイバー担体に白金を担持させた触媒からなる触媒層とで2層構造の触媒層を構成し、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されている。
更に、特許文献4においては、触媒層中において電解質膜側のカーボン粒子の撥水性をガス拡散層側のカーボン粒子の撥水性よりも相対的に高くし、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されており、また、特許文献5においては、体積平均粒子径が0.5〜8μmの触媒担持粒子に白金を担持させた触媒からなる触媒層と、体積平均粒子径が5〜20μmの触媒担持粒子に白金を担持させた触媒からなる触媒層とで2層構造の触媒層を構成し、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されている。
そして、特許文献6においては、アノード及びカソードの両触媒層中に撥水性樹脂を添加し、それぞれの触媒層中に含まれる撥水性樹脂の量をカソード触媒層>アノード触媒層とし、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されており、また、特許文献7においては、樹状構造若しくは薄片状構造を有するカーボン担体に白金を担持させた触媒で触媒層を形成し、カーボン担体で形成される細孔径を制御することにより、フラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されている。
更にまた、特許文献8においては、カソード触媒層を超撥水とすることにより、フラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されており、また、特許文献9においては、化学処理によって黒鉛化カーボンの表面に親水性化合物を導入し、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されており、更に、特許文献10においては、触媒層中に含まれるイオン交換樹脂中の親水基であるスルホン基の単位質量当りの量について、電解質膜側及びガス拡散層側でそれぞれ最適値を規定し、これによってフラッディングを抑制できるようにした固体高分子形燃料電池が提案されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜10においては、本発明者らの検討、考察によれば、発電時のセル内部の抵抗値が高くなって出力電圧が低くなるという問題や、高加湿の運転条件下でフラッディングの抑制ができても低加湿の運転条件下での性能が低くなるという問題や、大電流放電時におけるフラッディング抑制効果が必ずしも十分ではないという問題等があり、反応ガスのガス拡散性と凝縮水の排出性とを両立させて大電流放電時の優れた発電性能を達成するという観点からは、必ずしも十分ではない。
ところで、特許文献11においては、触媒層のうちの少なくともカソード触媒層について、触媒成分、電解質材料、及び炭素材料を含むと共に、前記炭素材料が触媒成分を担持する触媒担体炭素材料と、触媒成分を担持していない導電助剤炭素材料と、触媒成分を担持していないガス拡散炭素材料との3種からなり、また、前記触媒層が、前記触媒担体炭素材料、電解質材料、及び導電助剤炭素材料を主成分として凝集した触媒凝集相を連続体とし、この触媒凝集相中に前記ガス拡散炭素材料を主成分として凝集したガス拡散炭素材料凝集相が分散した2相構造を形成しており、これによって触媒層中にガス、電子、及びプロトンの移動経路を分断することなく形成せしめ、低加湿条件でも高加湿条件でも加湿条件によらずに所望の発電性能を発揮し得る固体高分子形燃料電池が提案されている。
この特許文献11においては、触媒層中に連続体の触媒凝集相とその中に分散したガス拡散炭素材料凝集相を形成することにより、加湿条件によらずに所望の発電性能を発揮し得るという点では一定の成果を挙げている。しかしながら、大電流放電時においても優れた発電性能を発揮するという観点からは、必ずしも十分ではなく、更なる改善が求められている。
特開2013-145,652号公報 特開2011-198,503号公報 特開2010-146,965号公報 特開2008-016,415号公報 特開2008-027,799号公報 特開2008-218,131号公報 特開2007-194,197号公報 特開2006-049,110号公報 特開2006-004,662号公報 特開2001-338,654号公報 特開2009-252,359号公報
そこで、本発明者らは、上述した固体高分子形燃料電池の触媒層を構成する炭素材料について、大電流放電時においても優れた発電性能を発揮させることについて多くの様々な検討を行った。そして、このような様々な検討の1つとして、カソード触媒層中の炭素材料として触媒金属を担持する担体炭素材料と、触媒金属を担持しない導電助剤炭素材料と、触媒金属を担持しないガス拡散炭素材料との3種を採用し、これら担体炭素材料、導電助剤炭素材料、及びガス拡散炭素材料の形状や大きさ等について詳細な検討を重ねた結果、意外なことには、担体炭素材料として所定の直径及び長さを有するカーボンナノファイバー(CNF)やカーボンナノチューブ(CNT)等の繊維状炭素材料を用いると共に導電助剤炭素材料及びガス拡散炭素材料についても所定の粒子径を有する炭素材料を用い、かつ、これら全ての炭素材料に対する導電助剤炭素材料の割合を所定の範囲にすることにより、触媒層を形成した際に、触媒金属を担持した繊維状炭素材料が互いに絡まり合って繊維集合体を形成し、また、この繊維集合体の中で導電助剤炭素材料が略々均一に分散すると共にガス拡散炭素材料が島状の凝集相を形成して分散し、これによって反応ガスのガス拡散性と凝縮水の排出性とが共に改善され、大電流放電時においても優れた発電性能が発揮されることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、優れた反応ガスのガス拡散性と凝縮水の排出性とを有するカソード触媒層を備え、大電流放電時においても優れた発電性能を発揮する固体高分子形燃料電池を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1) プロトン伝導性電解質膜を挟んで一対のアノード触媒層とカソード触媒層とを備え、前記一対の触媒層のうちの少なくともカソード触媒層が、触媒金属、電解質材料、及び炭素材料で構成されていると共に、前記炭素材料が前記触媒金属を担持する担体炭素材料と、前記触媒金属を担持していないガス拡散炭素材料と、前記触媒金属を担持していない導電助剤炭素材料とからなり、かつ、前記カソード触媒層において、前記ガス拡散炭素材料が島状に凝集したガス拡散炭素材料凝集相を形成する燃料電池であり、
前記担体炭素材料が直径30〜300nm及び長さ400〜5000nmの繊維状炭素材料であって、前記ガス拡散炭素材料の粒子径が25〜65nmであって、前記導電助剤炭素材料の粒子径が25〜65nmであることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
(2) 前記ガス拡散炭素材料は、その25℃相対湿度90%における水蒸気吸着量が1〜100mL/gであることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池。
(3) 前記カソード触媒層中の全ての炭素材料に対する前記ガス拡散炭素材料の割合が3〜30質量%の範囲であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の固体高分子形燃料電池。
(4) 前記導電助剤炭素材料は、そのBET比表面積が600〜1900m2/gであり、DBP吸油量が300〜600cm3/100gであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
(5) 前記導電助剤炭素材料のBET比表面積が800〜1700m2/gであることを特徴とする前記(4)に記載の固体高分子形燃料電池。
(6) 前記カソード触媒層中の全ての炭素材料に対する前記導電助剤炭素材料の割合が15〜40質量%の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
(7) 前記導電助剤炭素材料の割合が20〜35質量%であることを特徴とする前記(6)に記載の固体高分子形燃料電池。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池を製造するための方法において、
前記繊維状炭素材料からなる担体炭素材料に触媒金属を担持させ、得られた触媒金属担持繊維状炭素材料と、前記電解質材料と、前記導電助剤炭素材料とを含む触媒層インクAを調製し、また、この触媒層インクAとは別に前記ガス拡散炭素材料を含む固形分濃度2〜5質量%の触媒層インクBを調製し、
これら触媒層インクAと触媒層インクBとを混合して触媒層インクを調製し、
得られた触媒層インクを用いて触媒層を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池の製造方法。
本発明によれば、カソード触媒層において優れた反応ガスのガス拡散性と凝縮水の排出性とが発揮され、大電流放電時においても優れた発電性能を発現する固体高分子形燃料電池を提供することができる。
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池における触媒層に関して、担体炭素材料(繊維状炭素材料:CNF及びCNT等)からなる繊維集合体の概念(a)と、この繊維状炭素材料の繊維集合体中において、導電助剤炭素材料が略々均一に分散し、かつ、ガス拡散炭素材料が島状の凝集相を形成して分散した状態の触媒層の概念(b)を説明するための説明図である。 図2は、実施例1で得られた触媒層の断面SEM観察により得られた二次電子像(a)と反射電子像(b)を示すSEM像である。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んで一対のアノード触媒層とカソード触媒層とを備え、前記一対の触媒層のうちの少なくともカソード触媒層〔すなわち、カソード触媒層のみ又はカソード触媒層及びアノード触媒層の両者(以下、これらを単に「触媒層」ということがある。)〕が触媒金属、電解質材料、及び炭素材料で構成されていると共に、前記炭素材料が前記触媒金属を担持する担体炭素材料と、前記触媒金属を担持していないガス拡散炭素材料と、前記触媒金属を担持していない導電助剤炭素材料とからなり、また、前記カソード触媒層において前記ガス拡散炭素材料が島状に凝集したガス拡散炭素材料凝集相を形成する燃料電池である。
本発明において、前記触媒層の炭素材料を構成し、触媒金属を担持する担体炭素材料については、その直径が30nm以上300nm以下、好ましくは40nm以上200nm以下であって、その長さが400nm以上5000nm以下、好ましくは500nm以上1000nm以下である繊維状炭素材料(CNF及びCNT等)である。ここで、繊維状炭素材料の直径が30nm未満であると、触媒層を形成した際にこの触媒層内に形成される細孔径が小さくなり、大電流放電時に発生する多量の凝縮水を排出し難くなり、ガス拡散性が悪くなって発電性能が低下する。反対に、繊維状炭素材料の直径が300nmを超えると、触媒層中の単位体積当りの接触点数が少なくなり、触媒層中の導電パスが少なくなって導電抵抗が高くなり、この場合にも発電性能が低下する。また、繊維状炭素材料の長さが400nm未満であると、触媒層を形成した際にこの触媒層内に形成される細孔径が小さくなり、大電流放電時に発生する多量の凝縮水を排出し難くなり、ガス拡散性が悪くなって発電性能が低下する。反対に、繊維状炭素材料の長さが5000nmを超えると、触媒層中の単位体積当りの接触点数が少なくなり、触媒層中の導電パスが少なくなって導電抵抗が高くなり、この場合にも発電性能が低下する。触媒金属を担持する担体炭素材料の繊維状炭素材料は、触媒層を形成した際に、互いに絡まり合って繊維状炭素材料の繊維集合体を形成し、あたかも枝が分岐するような構造になって触媒層内に繊維状炭素材料の直径程度の細孔を形成する。
この担体炭素材料を構成するカーボンナノファイバー(CNF)やカーボンナノチューブ(CNT)等の繊維状炭素材料については、その構造の違いから、チューブラー(Tubular)型、ヘリングボーン(Herringbone)型、及びプレートレット(Platelet)型の3種類が存在するが、いずれも使用し得るものである。特に、ヘリングボーン型やプレートレット型のCNFは、表面に炭素のエッジ面が多く存在し、CNF上で触媒金属の微粒子が凝集するのを抑制して触媒金属の分散担持性に優れており、好適に使用される。また、チューブラー型のCNFについては、好ましくは賦活処理や酸素雰囲気での若干の熱処理を施すことにより、表面に炭素のエッジ面を生成させ、更に酸処理等の手段で表面に親水性官能基を導入するのがよく、これによって触媒金属に対する優れた分散担持性を付与し、好適に使用することができる。この担体炭素材料を構成する繊維状炭素材料については、好ましくはその水蒸気吸着量が150mL/g以上700mL/g以下程度であるのがよい。
また、前記触媒層の炭素材料を構成し、触媒金属を担持しないガス拡散炭素材料については、その粒子径が25nm以上65nm以下、好ましくは30nm以上50nm以下である。この粒子径が25nm未満であると、触媒層を形成した際にこのガス拡散炭素材料が島状に凝集して形成されるガス拡散炭素材料凝集相中の細孔径が小さくなり過ぎ、凝縮水の排出性が低下してガス拡散性が低くなり、大電流放電時にフラッディングが発生する虞があり、反対に、粒子径が65nmを超えると、ガス拡散炭素材料凝集相中に形成される細孔径が大きくなり過ぎ、水が入り易くなって、この場合にも大電流放電時にフラッディングが発生する虞がある。
そして、このガス拡散炭素材料については、好ましくはその25℃相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g以上100mL/g以下、より好ましくは5mL/g以上50mL/g以下であるのがよく、これによって触媒層中の生成水が排水され易くなり、ガス拡散炭素材料凝集相を酸素ガスの拡散経路として用いることが可能になるという利点がある。この25℃相対湿度90%における水蒸気吸着量が1mL/g未満であると、触媒層全体の疎水性が高くなり過ぎ、低加湿条件下での燃料電池の運転時における発電性能が低くなる虞があり、反対に、100mL/gを超えると、触媒層全体の親水性が高くなり過ぎ、大電流放電時にフラッディングが発生し易くなり、特に高加湿条件下での燃料電池の運転時における発電性能が低くなる虞がある。
このようなガス拡散炭素材料として用いる炭素材料については、ガス拡散経路を形成できるものであり、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。具体的には、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、サーマル法等の方法で製造されたカーボンブラックが最も一般的であるが、そのほかにも、上記のガス拡散経路に求められる性能を有するものであれば黒鉛、活性炭等やこれらの粉砕物等の炭素化合物等を使用でき、また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。
更に、前記触媒層の炭素材料を構成し、触媒金属を担持しない導電助剤炭素材料については、その粒子径が25nm以上65nm以下、好ましくは30nm以上50nm以下である。この粒子径が25nm未満であると、触媒層中に形成される細孔径が小さくなり過ぎ、凝縮水の排出性が低下し、大電流放電時にフラッディングが発生し易くなる虞があり、反対に、65nm以上であると、触媒層中に形成される細孔径が大きくなり過ぎ、水が入り易くなってこの場合にも大電流放電時にフラッディングが発生し易くなり、燃料電池の発電性能が低下する虞がある。この導電助剤炭素材料は、触媒層中において導電パスとしての機能を担っており、担体炭素材料として繊維状炭素材料を用いる本発明において特にその機能を発揮する。
この導電助剤炭素材料については、好ましくはそのBET比表面積が600m2/g以上1900m2/g以下、より好ましくは800m2/g以上1700m2/g以下であるのがよく、600m2/g未満であると、触媒層中の単位体積当りの担体炭素材料(CNFやCNT等の繊維状炭素材料)との接触面積が少なくなり、導電抵抗が高くなって燃料電池としての性能が低下する虞があり、反対に、1900m2/gを超えると、触媒層中の単位体積当りのCNFとの接触面積が多くなり過ぎ、形成される細孔径が小さくなって、大電流放電時にフラッディングが発生し易くなる虞がある。
また、この導電助剤炭素材料については、好ましくはそのフタル酸ジブチル(DBP)吸油量が300cm3/100g以上600cm3/100g以下、より好ましくは400cm3/100g以上500cm3/100g以下であることが望ましい。ここで、DBP吸収量とは、炭素材料微粒子のストラクチャーを定量的に示す値であり、DBP吸収量の数値が大きいほど、炭素材料微粒子のストラクチャーが高くなる。DBP吸収量は炭素材料微粒子の凝集体のストラクチャーを示す。より多くの一次粒子を持つ凝集体とより複雑な凝集体は、多くの隙間が存在するのでDBP吸収量が多くなる。吸油量が300cm3/100g未満であると、導電助剤炭素材料同士で形成される細孔径が小さくなって大電流放電時にフラッディングが発生し易くなり、また、600cm3/100gを超えると、触媒層中に形成される細孔径が大きくなり過ぎ、水が入り易くなって大電流放電時にフラッディングが発生し易くなり、いずれの場合も燃料電池の性能が低下する虞がある。
このような導電助剤炭素材料として用いる炭素材料については、一般的に存在する電子伝導性を有する炭素材料であれば特に限定するものではないが、本来求められる反応以外の化学反応を起したり、凝縮水との接触によって炭素材料を構成する物質が溶出するような材料は好ましくなく、化学的に安定な炭素材料が好ましい。好ましい導電助剤炭素材料としては、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、サーマル法等の方法で製造されたカーボンブラックが最も一般的であるが、そのほかにも、上記の導電助剤炭素材料に求められる性能を有するものであれば、黒鉛、活性炭等やこれらの粉砕物等の炭素化合物等を使用することができ、また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。更に、例えば、Y型ゼオライトの細孔中にフルフリルアルコールを含浸させて熱重合させ、次いで不活性ガス(Ar)雰囲気中で黒鉛化処理し、更にCO2を用いた賦活処理(C+CO2→2CO)を行って多孔質化させて得られるような炭素材料等も用いることができる。この導電助剤炭素材料については、好ましくはその水蒸気吸着量が400mL/g以上700mL/g以下程度であるのがよい。
本発明において、前記触媒層の炭素材料を構成する担体炭素材料(CNFやCNT等の繊維状炭素材料)、ガス拡散炭素材料、及び導電助剤炭素材料について、触媒層中の全ての炭素材料に対する各炭素材料の割合は、繊維状炭素材料が通常50質量%以上80質量%以下、好ましくは60質量%以上70質量%以下であり、ガス拡散炭素材料が通常3質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、また、導電助剤炭素材料が15質量%以上40質量%以下、好ましくは20質量%以上35質量%以下の範囲であることが望ましい。
触媒層中における繊維状炭素材料の割合が50質量%より少ないと、担持されている触媒金属同士が近接若しくは凝集していることを意味し、触媒活性が低くなるという問題が生じる虞があり、反対に、80質量%を超えると、触媒金属を担持させた後に加えるべき導電助剤炭素材料やガス拡散炭素材料の割合が少なくなり、燃料電池の発電性能が低くなる虞がある。また、触媒層中におけるガス拡散炭素材料の割合が3質量%より少ないと、触媒層中に発生する生成水の排水性能が低下し、大電流放電時に燃料電池の発電性能が低下する虞があり、反対に、30質量%を超えると、触媒層全体の撥水性能が高くなりすぎて、低電流密度領域において、電解質樹脂や電解質膜を加湿するための水分量が少なくなってしまい、燃料電池の発電性能が低下してしまう。更に、導電助剤炭素材料の割合の割合が15質量%より少ないと、触媒層中の単位体積当りのCNFとの接触面積が少なくなり、導電抵抗が高くなって燃料電池の発電性能が低下する虞があり、反対に、40質量%を超えると、触媒層を構成するために用いる電解質材料の必要量が多くなり、この電解質材料としては、通常、親水性基であるスルホン基を有する電解質樹脂が用いられるので、触媒層中における単位体積当りのスルホン基の数が多くなって、大電流放電時にフラッディングが発生し易くなり、この場合にも燃料電池の発電性能が低下する虞がある。
本発明においては、少なくともカソード触媒層において、炭素材料として使用された前記ガス拡散炭素材料がこの触媒層中で島状に凝集したガス拡散炭素材料凝集相を形成していることが必要である。この触媒層については、図1の(a)及び(b)に示すように、担体炭素材料として使用された繊維状炭素材料1aが触媒層として形成された際に、微細繊維が互いに絡まり合ってあたかも枝が分岐するような構造を有する繊維集合体1を形成しており(図1(a)参照)、そして、この繊維集合体1の中で、前記ガス拡散炭素材料2aは、島状に凝集してガス拡散炭素材料凝集相2を形成し、ガス拡散炭素材料凝集相2として分散しており、また、前記導電助剤炭素材料3aは、ほとんど凝集することなく全体に分散している(図1(b)参照)。
この触媒層中に形成されるガス拡散炭素材料凝集相については、使用されたガス拡散炭素材料が触媒層中においてガス拡散炭素材料凝集相として存在すればよく、どのような形状、大きさ等で存在するかについては、特に制限されるものではないが、好ましくは、触媒層中におけるガス拡散炭素材料凝集相の割合(凝集相割合)が、後述する走査型顕微鏡(SEM)を用いた断面観察(断面SEM観察)において、横43μm×縦32μmの視野面積中に円相当直径5μm以上のガス拡散炭素材料凝集相の面積が1/8以上1/2以下の範囲内で存在するのがよく、より好ましくは1/4以上1/3以下の範囲内で存在するのがよい。これによって、加湿条件によらず大電流放電時において安定した発電性能が得られる。
本発明において、上記の炭素材料以外のプロトン伝導性電解質膜、触媒金属、及び電解質材料については、これまでこの種の固体高分子形燃料電池の製造原料として用いられてきたものをそのまま用いることができる。
具体的には、プロトン伝導性電解質膜については、例えば、パーフルオロスルフォン酸系イオン交換膜〔Dupont社製ナフィオン(登録商標:Nafion)膜NR211〕等が例示される。また、触媒金属については、白金、パラジウム、ルテニウム、金、ロジウム、オスミウム、イリジウム等の貴金属、これらの貴金属を2種類以上複合化した貴金属の複合体や合金、貴金属と有機化合物や無機化合物との錯体、遷移金属、遷移金属同士あるいは遷移金属と貴金属との複合体や合金、貴金属や遷移金属と有機化合物や無機化合物との錯体、金属酸化物等を挙げることができ、また、これらの2種類以上を複合したもの等も用いることもできる。更に、電解質材料については、例えば、パーフルオロスルフォン酸系イオン交換樹脂〔Dupont社製ナフィオン(登録商標:Nafion)〕等が例示される。
また、固体高分子形燃料電池の製造方法についても、これまでに採用されてきた方法(例えば、特開2009-252,359号公報の段落0069〜0081に記載された方法等)をそのままあるいは適宜変更して採用することができるが、上記触媒層の製造については、好ましくは次のような方法が採用される。
すなわち、先ず、常法により担体炭素材料のCNFに触媒金属を担持させ、所望の触媒金属を担持した触媒金属担持CNF(触媒)を調製する。次に、調製された触媒と電解質材料とを所定の割合で混合し、更に得られた混合物に導電助剤炭素材料を所定の割合で添加して混合し、所定の溶剤を加えてこれら触媒、電解質材料及び導電助剤炭素材料からなる固形分濃度を所定の濃度に調整した触媒層インクAを調製する。
また、上記の触媒層インクAとは別に、所定の溶剤に所定量のガス拡散炭素材料を添加し、分散させて固形分濃度2質量%以上5質量%以下の触媒層インクBを調製する。
このようにして調製された上記の触媒層インクA中に上記の触媒層インクBを添加し、混合して触媒層インクを調製し、この調製された触媒層インクを用いて、常法により触媒層を形成し、また、固体高分子形燃料電池を製造する。
ここで、混合して触媒層インクを調製する前に触媒層インクAとは別々に調製される触媒層インクBの固形分濃度が5質量%を超えると、触媒層内に形成されるガス拡散炭素材料同士の凝集体が大きくなり過ぎてガス拡散炭素材料凝集相が局在化し、フラッディングが起き易い部分と抑制される部分とが局所的に分布することになって燃料電池の発電性能を低下させる原因になり、反対に、2質量%未満であると、触媒層内に形成されるガス拡散炭素材料同士の凝集体が小さくなり過ぎて円相当直径5μm以上のガス拡散炭素材料凝集相の面積を所望の範囲(1/8以上1/2以下)内で存在させることが難しくなる。
ここで、触媒層インクA中に触媒層インクBを添加し混合して触媒層インクを調製するに際しては、例えば、以下に示す方法で行うのがよい。
すなわち、先ず、調製された触媒層インクA及び触媒層インクBを用い、混合強度等の混合条件を変えてこれら触媒層インクAと触媒層インクBとを混合して複数の試験用触媒層インクを調製する。次に、この調製された混合条件の異なる複数の試験用触媒層インクを用いて試験用触媒層を形成し、形成された各試験用触媒層について、大電流放電時の発電性能を評価すると共に、その任意の箇所を任意の角度で切断して観察用の断面を有する試料を作製する。そして、この作製された各試験用触媒層の試料について、後述する走査型顕微鏡(SEM)を用いた断面SEM観察により触媒層中におけるガス拡散炭素材料凝集相の割合(凝集相割合)を求め、最適な凝集相割合が得られた際の触媒層インクAと触媒層インクBとの混合条件を決定し、この混合条件で触媒層インクを調製するのがよい。これにより、触媒層中に島状のガス拡散炭素材料凝集相を有する固体高分子形燃料電池を確実に製造することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
〔実施例1〜18及び比較例1〜18〕
本発明の実施例及び比較例に係る固体高分子形燃料電池において、カソード触媒層で使用された担体炭素材料(繊維状炭素材料)としてのカーボンナノファイバー(CNF)、ガス拡散炭素材料及び導電助剤炭素材料として、下記の表1及び表2に示す炭素材料を準備した。
なお、以下の実施例及び比較例で使用された各炭素材料の物性値は、以下の方法で測定したものである。
〔担体炭素材料(CNF)の直径(nm)及び長さ(nm)〕
CNFの直径及び長さの測定は、電子顕微鏡(日本電子製JSM-6500F)観察により行った。
〔ガス拡散炭素材料及び導電助剤炭素材料の粒子径(nm)〕
ガス拡散炭素材料及び導電助剤炭素材料の粒子径の測定は、電子顕微鏡(日本電子製JSM-6500F)観察により行った。
〔BET比表面積〕
BET比表面積(m2/g)の測定は、試料約50mgを測り採り、これを90℃で真空乾燥し、得られた乾燥後の試料について、自動比表面積測定装置(日本ベル製、BELSORP36)を使用し、窒素ガスを用いたガス吸着法にて測定し、BET法に基づく1点法にて比表面積を決定した。
〔25℃相対湿度90%の水蒸気吸着量〕
水蒸気吸着量(mL/g)は、定容量式水蒸気吸着装置(日本ベル製、BELSORP18)を用いて測定し、120℃、1Pa以下で2時間脱気前処理を行った試料を25℃の恒温中に保持し、真空状態から、25℃における水蒸気の飽和蒸気圧までの間、徐々に水蒸気を供給して段階的に相対湿度を変化させ、水蒸気吸着量を測定した。得られた測定結果から吸着等温線を描き、図から相対湿度90%のときの水蒸気吸着量を読み取り、この読み取った水蒸気量を試料1g当りに吸着した標準状態の水蒸気体積に換算して示した。
〔DBP吸油量〕
DBP吸油量(cm3/100g)は、アブソープトメーター(Brabender社製)を用いて、最大トルクの70%の時のDBP添加量を試料100g当りのDBP吸油量に換算して決定した。
〔各炭素材料の割合〕
また、触媒層中の全炭素材料に対する各炭素材料の割合(質量%)は、各実施例及び比較例の触媒層を調製する際に用いられた各炭素材料の重量から計算により求めた。
〔断面SEM観察による凝集相割合〕
触媒層中におけるガス拡散炭素材料凝集相の割合(凝集相割合)は、走査型顕微鏡(SEM)を用いた断面観察(断面SEM観察)において、横43μm×縦32μmの視野面積中における円相当直径5μm以上のガス拡散炭素材料凝集相の面積を測定した。
この断面SEM観察に際しては、同一視野を二次電子像と反射電子像の両方で観察し、反射電子像を1万倍の倍率及び272DPI×272DPI以上の解像度で、かつ256段階の階層の明るさで取り込み、この取り込んだ画像の明るさを、画像解析ソフトを用いて、暗い方から110階層目の範囲を黒色で表示し、この111階層目から明るい方へ256階層目までの範囲を白色になるように二値化した。そして、このままでは島状に孤立した黒色点が多数発生して目的とする範囲が明確にならないので、目的とする範囲を明確化するために、各黒色点の膨張処理を1度行い、隣り合った点同士を認識させた。更に、穴埋め処理を実行し、範囲内の空白部分を穴埋めして同一範囲であるように認識させ、最後に、膨張した分を元に戻す縮退処理を行い、目的とする範囲を明確化させた。その上で、各黒色部分の円相当直径を各黒色部分の面積より算出し、円相当直径5μm未満の部分を全てカットし、視野面積中における円相当直径5μm以上のガス拡散炭素材料凝集相の面積を測定し、視野面積に対するガス拡散炭素材料凝集相全体の面積の割合を求め、凝集相割合とした。
(1)固体高分子形燃料電池用の触媒の作製
各実施例及び比較例の担体炭素材料を蒸留水中に分散させ、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットし、分散液の温度がバスと同じ40℃になってから、撹拌下にこの分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた後、濾過し、得られた固形物の洗浄を行った。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕して各実施例及び比較例の固体高分子形燃料電池用触媒(Pt触媒)を作製した。
なお、各実施例及び比較例のPt触媒の白金担持量については、担体炭素材料と白金粒子の合計質量に対して40質量%となるように調整し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)により測定して確認した。
(2) 触媒層インクの調製
以上のようにして調製された各実施例及び比較例のPt触媒を用い、また、電解質樹脂としてDupont社製ナフィオン(登録商標:Nafion;パースルホン酸系イオン交換樹脂)を用い、Ar雰囲気下でこれらPt触媒とナフィオンとを担体炭素材料の質量に対してナフィオン固形分の質量が2倍の割合で配合し、これに導電助剤炭素材料を表1及び表2に示す割合で添加し、軽く撹拌した後、超音波でPt触媒を解砕し、更にエタノールを加えてPt触媒と電解質樹脂とを合わせた合計の固形分濃度が1.1質量%となるように調整し、Pt触媒、電解質樹脂及び導電助剤炭素材料が混合した触媒層インクAを調製した。
また、ガス拡散炭素材料としてアセチレンブラック(電気化学工業製商品名:デンカブラック粒状品)をエタノール中に分散させ、表1及び表2に示す固形分濃度の触媒層インクBを調製した。
更に、上記の触媒層インクA及び触媒層インクBを表1及び表2に示す各炭素材料の組成比となるように混合し、エタノールを加えて白金濃度が0.5質量%のスプレー塗布用の触媒層インクを作製した。
(3) 触媒層の調製
このようにして調製された各実施例及び比較例の触媒層インクを用い、白金の触媒層単位面積当りの質量(以下、「白金目付量という。)が0.2mg/cm2となるようにスプレー条件を調節し、上記スプレー塗布用触媒層インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした後、アルゴン中120℃で60分間の乾燥処理を行い、各実施例及び比較例の触媒層を作製した。
各実施例及び比較例の触媒層について、その触媒層中におけるガス拡散炭素材料凝集相の割合(凝集相割合)を断面SEM観察により求めた結果を表3に示す。
また、実施例1で得られた触媒層について、断面SEM観察により得られた二次電子像(a)と反射電子像(b)を図2に示す。この図2の反射電子像(b)において、破線で示した黒く映し出されている部分がガス拡散炭素材料凝集相4である。
(4) MEAの作製
以上のようにして作製した上記各実施例及び比較例の触媒層を用い、以下の方法でMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層については、それぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。
このようにして切り出されたアノード及びカソードの各触媒層の間に、各触媒層が電解質膜の中心部を挟んでそれぞれ接すると共に互いにずれが無いように、この電解質膜を挟み込み、120℃、100kg/cm2で10分間プレスし、次いで室温まで冷却した後、アノード及びカソード共にテフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥ぎ取り、アノード及びカソードの各触媒層が電解質膜に定着した触媒層−電解質膜接合体を調製した。
次に、ガス拡散層として、カーボンペーパー(SGLカーボン社製35BC)から一辺2.5cmの大きさで一対の正方形状カーボンペーパーを切り出し、これらのカーボンペーパーの間に、アノード及びカソードの各触媒層が一致してずれが無いように、上記触媒層−電解質膜接合体を挟み、120℃、50kg/cm2で10分間プレスしてMEAを作製した。
なお、作製された各MEAにおける触媒金属、炭素材料、電解質材料の各成分の目付量については、プレス前の触媒層付テフロン(登録商標)シートの質量とプレス後に剥がしたテフロン(登録商標)シートの質量との差からナフィオン膜(電解質膜)に定着させた触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より算出した。
(5) 燃料電池の低加湿条件初期性能の評価試験
作製した各実施例及び比較例のMEAについては、それぞれセルに組み込み、燃料電池測定装置にセットして、次の手順で燃料電池の性能評価を行った。
ガスについては、カソードに空気を、また、アノードに純水素を、それぞれ利用率が35%と70%となるように、0.2メガパスカルに加圧して供給した。また、セル温度は80℃に設定した。供給するガスについてはカソード、アノード共に、加湿器中で75℃に保温された蒸留水でバブリングを行い、改質水素相当の水蒸気を含ませてセルに供給した。
このような設定の下にセルにガスを供給した条件下で、負荷を徐々に増やし、1000mA/cm2におけるセル端子間電圧を出力電圧として記録し、燃料電池の性能評価を実施した。
得られた燃料電池の性能評価結果については、◎、○の合格ランクと×の不合格の基準で評価を行った。合格ランクについては合格のものを○とし、より高性能のものを◎とした。詳細について以下に記載する。
合格ランク◎については、1000mA/cm2における出力電圧が0.70以上、及び、0.4Vのセル電圧における電流密度が1800mA/cm2以上の全てを満たすものとした。
また、合格ランク○については1000mA/cm2における出力電圧が0.60V以上、及び、0.4Vのセル電圧における電流密度が1500mA/cm2以上の全てを満たすものとした。
更に、不合格の×については、合格ランク○に満たないものとした。
各実施例及び比較例で得られた燃料電池の性能評価結果を表3に示す。
この表3に示す性能評価結果から、合格ランク◎及び○を示す各実施例1〜16、特に実施例1下に3のMEAにおいて、大電流放電時に優れた発電性能が発揮されることが判明した。
1…繊維状炭素材料の繊維集合体、1a…繊維状炭素材料、2…ガス拡散炭素材料凝集相、2a…ガス拡散炭素材料、3a…導電助剤炭素材料、4…ガス拡散炭素材料凝集相。

Claims (8)

  1. プロトン伝導性電解質膜を挟んで一対のアノード触媒層とカソード触媒層とを備え、前記一対の触媒層のうちの少なくともカソード触媒層が、触媒金属、電解質材料、及び炭素材料で構成されていると共に、前記炭素材料が前記触媒金属を担持する担体炭素材料と、前記触媒金属を担持していないガス拡散炭素材料と、前記触媒金属を担持していない導電助剤炭素材料とからなり、かつ、前記カソード触媒層において、前記ガス拡散炭素材料が島状に凝集したガス拡散炭素材料凝集相を形成する固体高分子形燃料電池であり、
    前記担体炭素材料が直径30〜300nm及び長さ400〜5000nmの繊維状炭素材料であって、前記ガス拡散炭素材料の粒子径が25〜65nmであって、前記導電助剤炭素材料の粒子径が25〜65nmであることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  2. 前記ガス拡散炭素材料は、その25℃相対湿度90%における水蒸気吸着量が1〜100mL/gであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
  3. 前記カソード触媒層中の全ての炭素材料に対する前記ガス拡散炭素材料の割合が3〜30質量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池。
  4. 前記導電助剤炭素材料は、そのBET比表面積が600〜1900m2/gであり、DBP吸油量が300〜600cm3/100gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
  5. 前記導電助剤炭素材料のBET比表面積が800〜1700m2/gであることを特徴とする請求項4に記載の固体高分子形燃料電池。
  6. 前記カソード触媒層中の全ての炭素材料に対する前記導電助剤炭素材料の割合が15〜40質量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
  7. 前記導電助剤炭素材料の割合が20〜35質量%であることを特徴とする請求項6に記載の固体高分子形燃料電池。
  8. 前記請求項1〜7のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池を製造するための方法において、
    前記繊維状炭素材料からなる担体炭素材料に触媒金属を担持させ、得られた触媒金属担持繊維状炭素材料と、前記電解質材料と、前記導電助剤炭素材料とを含む触媒層インクAを調製し、また、この触媒層インクAとは別に前記ガス拡散炭素材料を含む固形分濃度2〜5質量%の触媒層インクBを調製し、
    これら触媒層インクAと触媒層インクBとを混合して触媒層インクを調製し、
    得られた触媒層インクを用いて触媒層を作製することを特徴とする固体高分子形燃料電池の製造方法。
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