JP2009248274A - 孔あけ加工用当て板及び孔あけ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドリルの折損を十分に少なくできると共に、孔の位置精度を十分に向上させることができ、かつ孔の内壁粗さを低減できる孔あけ加工用当て板を提供する。
【解決手段】アルミニウム製基板2の少なくとも片面に潤滑層3が形成された孔あけ加工用当て板において、潤滑層3は、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層4と、アルミニウム製基板2と第1潤滑層4の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層5と、を少なくとも備え、第1潤滑層4を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、第2潤滑層5を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、第1潤滑層4のメルトインデックスは、第2潤滑層5のメルトインデックスよりも小さい構成とする。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム製基板2の少なくとも片面に潤滑層3が形成された孔あけ加工用当て板において、潤滑層3は、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層4と、アルミニウム製基板2と第1潤滑層4の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層5と、を少なくとも備え、第1潤滑層4を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、第2潤滑層5を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、第1潤滑層4のメルトインデックスは、第2潤滑層5のメルトインデックスよりも小さい構成とする。
【選択図】図1
Description
この発明は、例えばプリント配線板におけるスルーホール等、被加工物に小口径の孔を形成する際に用いられる孔あけ加工用当て板及び該当て板を用いた孔あけ加工方法に関する。
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む意味で用いる。また、この明細書及び特許請求の範囲において、「板」という語は、箔をも含む意味で用いる。
また、この明細書及び特許請求の範囲において、「メルトインデックス」の語は、JIS K7210−1999に準拠して試験温度65℃、試験荷重49Nで測定されたメルトインデックス(メルトフローレート)を意味する。
従来、プリント配線板にスルーホールを孔あけ加工する際には、すて板上に複数枚のプリント配線用素板を積み重ね、その最上位の素板の上面にアルミニウム製の当て板を配置し、この状態でドリルによって上方から該当て板を貫通してプリント配線用素板の孔あけを行うことにより、積み重ねた全部の素板に一挙にスルーホールを形成する方法が採用されている。この当て板は、ドリルの食いつきをよくすると共に、素板表面の加工時の損傷や孔周縁でのバリの発生を防止する目的で使用されている。
ところで、近年、プリント配線板の高密度化に伴い、直径0.3mm以下の小口径の孔を形成することが要求されている。このような要求に応えるべく、当て板に単なるアルミニウム板を用いて、径0.3mm以下の小径ドリルによる孔あけ加工を行うと、ドリルが当て板表面で横滑りし、このために、孔あけの位置精度が悪化すると共に、ドリルの折損が多発し、しかも孔の内周面の荒れを生じることに加え、ドリルの折損を抑える上でプリント配線用素板の積み重ね枚数を多くすることができず加工効率を十分に高められないという問題があった。
そこで、孔あけ加工用当て板として、アルミニウム製基板の少なくとも片面に、分子量10000以上のポリエチレングリコール20〜90重量%と水溶性滑剤80〜10重量%との混合物からなる厚さ0.1〜3mmの水溶性滑剤シートを配置せしめた構成のものを用いることが提案されている(特許文献1参照)。
しかるに、上記特許文献1に記載の技術では、混合物は成膜性に劣っているために水溶性滑剤シートを形成する作業が困難であるし、水溶性滑剤シートに割れが発生しやすい上に、水溶性滑剤シートにべたつきがあるという問題があった。このようにべたつきがあると、水溶性滑剤シートを取り扱うハンドリング時に手がべたついて取り扱い難いものとなるし、ブロッキングも発生しやすくなる。ブロッキングが発生すると、当て板を複数枚積み重ねて保管した場合に隣り合う当て板同士が互いに付着するので、使用時に当て板を1枚づつ剥がす作業を行う際の作業性が大きく低下する。更に、使用時に当て板を1枚づつ剥がす際に、隣り合う2枚の当て板のうち一方の当て板の滑剤が他方の当て板に付着して取れてしまい、これにより水溶性滑剤シートに厚さの不均一が生じると共に素板側に当接する面に凹凸が生じる結果、ドリルの折損が生じたり、孔あけの位置精度も低下するという問題があった。
このような問題を解決するものとして、アルミニウム製基板の少なくとも片面に、平均分子量20000〜50000のポリエチレングリコール45〜80重量%、平均分子量100000以上のポリエチレングリコール14〜30重量%、トリメチロールプロパン0.5〜20重量%、及びポリビニルピロリドン1〜20重量%の組成からなる潤滑層が形成された構成の当て板を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
特開平4−92494号公報
特開2001−47307号公報
上記特許文献2に記載の技術によれば、ドリルの折損を低減できると共に孔あけの位置精度も向上させることができるのであるが、近年、これらドリルの折損防止性能をさらに向上させつつ、孔あけの位置精度もさらに向上させることが強く求められている状況の中、前記従来技術では必ずしもこのような要求に応えることはできなかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ドリルの折損を十分に少なくできると共に、孔の位置精度を十分に向上させることができ、かつ孔の内壁粗さを低減できる孔あけ加工用当て板を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成された孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、
主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、前記第2潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。
前記潤滑層は、
主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、前記第2潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。
[2]アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成された孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、
数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。
前記潤滑層は、
数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。
[3]前記第1潤滑層は、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる前項2に記載の孔あけ加工用当て板。
[4]前記第2潤滑層は、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる前項2または3に記載の孔あけ加工用当て板。
[5]前記第1潤滑層のメルトインデックスは10〜100g/10分の範囲であり、前記第2潤滑層のメルトインデックスは100〜1000g/10分の範囲である前項1〜4のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
[6]前記潤滑層は、前記第1潤滑層及び前記第2潤滑層に加えて、
該第1潤滑層と該第2潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる中間潤滑層をさらに備えてなることを特徴とする前項1〜5のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
該第1潤滑層と該第2潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる中間潤滑層をさらに備えてなることを特徴とする前項1〜5のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
[7]積み重ねた複数枚のプリント配線用素板の上に、前項1〜6のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板を配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成することを特徴とする孔あけ加工方法。
[1]の発明では、第1潤滑層及び第2潤滑層ともに主成分としてポリエチレングリコールを含有してなり、第1潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、第2潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、第1潤滑層のメルトインデックスは、第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さく、このような第1潤滑層が第2潤滑層よりも外側に配置されているから、ドリルによる孔あけ加工の際には、ドリルは、適度の硬さを有し適度に流動性が制御された第1潤滑層から進入し、これにより孔あけの位置精度を十分に向上させることができる。しかる後、ドリルは、適度の柔軟性を有し流動性の良い第2潤滑層を巻き込みつつこれに進入するから、ドリルへの負担が少なく、これによりドリルの折損を十分に防止できるし、孔の内壁粗さも低減させることができる。
[2]の発明では、第1潤滑層は数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなり、第2潤滑層は数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなり、第1潤滑層のメルトインデックスは、第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さく、このような第1潤滑層が第2潤滑層よりも外側に配置されているから、ドリルによる孔あけ加工の際には、ドリルは、適度の硬さを有し適度に流動性が制御された第1潤滑層から進入し、これにより孔あけの位置精度を十分に向上させることができる。しかる後、ドリルは、適度の柔軟性を有し流動性の良い第2潤滑層を巻き込みつつこれに進入するから、ドリルへの負担が少なく、これによりドリルの折損を十分に防止できるし、孔の内壁粗さも低減させることができる。
[3]の発明では、第1潤滑層は、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる構成であるから、孔あけの位置精度をさらに向上させることができる。
[4]の発明では、第2潤滑層は、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる構成であるから、ドリル折損防止効果及び孔の内壁粗さ低減効果をさらに高めることができる。
[5]の発明では、第1潤滑層のメルトインデックスは10〜100g/10分の範囲であり、第2潤滑層のメルトインデックスは100〜1000g/10分の範囲であるから、孔あけの位置精度向上効果、ドリル折損防止効果及び孔の内壁粗さ低減効果をより一層高めることができる。
[6]の発明では、第1潤滑層と第2潤滑層の間に主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる中間潤滑層が配設されているから、第1潤滑層と第2潤滑層の中間的な性質を備えた中間潤滑層である場合には、ドリルが潤滑層を外側から基板に向けて進入する際に該中間潤滑層の存在によって硬さと流動性が段階的に変化するものとなし得るので、ドリルの折損がより十分に防止されるものとなる。
[7]の発明では、積み重ねた複数枚のプリント配線用素板に対し直径0.3mm以下の孔を一挙に形成する際、内壁粗さが小さくて且つ位置精度に優れた孔あけを行うことができると共に、ドリルの折損も十分に抑制できる。
図1に、この発明に係る孔あけ加工用当て板(1)の一実施形態を示す。この孔あけ加工用当て板(1)は、アルミニウム製基板(2)の片面に潤滑層(3)が形成されたものからなる。
前記アルミニウム製基板(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば軟質アルミニウム板、半硬質アルミニウム板、硬質アルミニウム板等が挙げられる。また、前記アルミニウム製基板(2)の厚さは、10〜200μmに設定されるのが好ましい。10μm以上に設定することで基板(2)のバリ発生を防止できると共に200μm以下に設定することで製造時に発生する切り粉の排出性を向上できる。
前記アルミニウム製基板(2)における潤滑層(3)が形成される面は、該潤滑層(3)との密着性を高めるために、水溶性又は非水溶性の下塗り層(下地皮膜層)(6)が設けられているのが好ましい(図1参照)。中でも、水溶性の下塗り層(6)が設けられているのが特に好ましい。このような水溶性下塗り層の構成材料としては、特に限定されないが、例えばポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルアルコールのケン化物等が挙げられる。
前記潤滑層(3)は、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層(4)と、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層(5)と、を少なくとも備えてなり、前記第2潤滑層(5)は、前記アルミニウム製基板(2)と前記第1潤滑層(4)の間に配設され、且つ
a)前記第1潤滑層(4)を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、前記第2潤滑層(5)を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きい
b)前記第1潤滑層(4)を構成する組成物のメルトインデックスは、前記第2潤滑層(5)を構成する組成物のメルトインデックスよりも小さい
これらa)とb)の両方の条件を満足するように構成されている。
a)前記第1潤滑層(4)を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、前記第2潤滑層(5)を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きい
b)前記第1潤滑層(4)を構成する組成物のメルトインデックスは、前記第2潤滑層(5)を構成する組成物のメルトインデックスよりも小さい
これらa)とb)の両方の条件を満足するように構成されている。
このような設計の第1潤滑層(4)が第2潤滑層(5)よりも外側に配置されているから、ドリルによる孔あけ加工の際には、ドリルは、適度の硬さを有し適度に流動性が制御された第1潤滑層(4)から進入し、これにより孔あけの位置精度を十分に向上させることができる。しかる後、ドリルは、適度の柔軟性を有し流動性の良い第2潤滑層(5)を巻き込みつつこれに進入するから、ドリルへの負担が少なく、これによりドリルの折損を十分に防止できるし、孔の内壁粗さも低減させることができる。
中でも、前記第1潤滑層(4)と前記第2潤滑層(5)の構成は、次のような構成であるのが好ましい。即ち、前記第1潤滑層(4)が数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなり、前記第2潤滑層(5)が数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる構成を採用するのが好ましい。
更に、前記第1潤滑層(4)は、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる構成であるのが特に好ましく、この場合には、孔あけの位置精度をさらに向上させることができる。
また、前記第2潤滑層(5)は、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる構成であるのが特に好ましく、この場合には、孔あけ加工の際のドリルの折損をより十分に防止できると共に、孔の内壁粗さを十分に低減させることができる。
前記第1潤滑層(4)の厚さは10〜100μmであるのが好ましい。10μm以上であることで孔あけの位置精度向上効果を十分に確保できると共に、100μm以下であることで潤滑層成分のドリルビットへの巻き付きを効果的に防止できる。
また、前記第2潤滑層(5)の厚さは10〜100μmであるのが好ましい。10μm以上であることでドリル折損防止効果及び孔の内壁粗さ低減効果を十分に確保できると共に、100μm以下であることで潤滑層成分のドリルビットへの巻き付きを効果的に防止できる。
しかして、前記潤滑層(3)の厚さは20〜200μmであるのが好ましい。
この発明において、前記第1潤滑層(4)を構成する組成物のメルトインデックス(MI)は10〜100g/10分の範囲であり、前記第2潤滑層(5)を構成する組成物のメルトインデックス(MI)は100〜1000g/10分の範囲であるのが好ましい。このような条件を満たした構成である場合には、前記諸効果(孔あけの位置精度向上効果、ドリル折損防止効果及び孔の内壁粗さ低減効果)をより一層高めることができる。
また、前記潤滑層(3)としては、前記第1潤滑層(4)と前記第2潤滑層(5)の間に、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる中間潤滑層がさらに配置された構成を採用しても良い。この中間潤滑層が、第1潤滑層と第2潤滑層の中間的な性質を備えたものである場合には、ドリルが潤滑層(3)を外側から基板(2)に向けて進入する際に該中間潤滑層の存在によって硬さと流動性が段階的に変化するものとなし得るので、ドリルの折損をより十分に防止できる。
なお、前記第1潤滑層(4)を構成する組成物に、この発明の効果を阻害しない範囲において、各種添加剤等の他、数平均分子量範囲の異なる他のポリエチレングリコールを含有せしめても良い。
同様に、この発明の効果を阻害しない範囲において、前記第2潤滑層(5)を構成する組成物に、各種添加剤等の他、数平均分子量範囲の異なる他のポリエチレングリコールを含有せしめても良い。
この発明の孔あけ加工用当て板(1)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次のような方法を例示できる。
即ち、第2潤滑層形成用組成物をロール法やカーテンコート法等によりアルミニウム製基板(2)上に塗布して第2潤滑層(5)を形成した後、さらにこの上に第1潤滑層形成用組成物をロール法やカーテンコート法等により塗布して第1潤滑層(4)を形成する方法、
第2潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に重ね合わせてプレスやロールで加熱加圧して第2潤滑層(5)を形成した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形したものを重ね合わせてプレスやロールで加熱加圧して第1潤滑層(4)を形成する方法、
第2潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に接着剤で接着した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形したものを接着剤で接着する方法、
第2潤滑層形成用組成物をアルミニウム製基板(2)上に印刷して乾燥することによって第2潤滑層(5)を形成した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物を印刷して乾燥することによって第1潤滑層(4)を形成する方法、等が挙げられる。
第2潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に重ね合わせてプレスやロールで加熱加圧して第2潤滑層(5)を形成した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形したものを重ね合わせてプレスやロールで加熱加圧して第1潤滑層(4)を形成する方法、
第2潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に接着剤で接着した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形したものを接着剤で接着する方法、
第2潤滑層形成用組成物をアルミニウム製基板(2)上に印刷して乾燥することによって第2潤滑層(5)を形成した後、更にこの上に、第1潤滑層形成用組成物を印刷して乾燥することによって第1潤滑層(4)を形成する方法、等が挙げられる。
また、この発明の孔あけ加工用当て板(1)を用いた孔あけ加工は、例えば次のようにして行われる。即ち、すて板上に複数枚のプリント配線用素板を積み重ね、その最上位の素板の上面に、本発明の孔あけ加工用当て板(1)を潤滑層側を上にして配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成する。この孔あけ加工方法では、本発明の孔あけ加工用当て板(1)を用いて孔あけを行うものであるから、ドリルの折損を少なくできると共に、孔の位置精度も向上させることができる。また、このようにドリルの折損を抑制できるので、積み重ねるプリント配線用素板の枚数を多くすることが可能であり、これによりプリント配線板の生産性を高めることができる。なお、前記プリント配線用素板としては、例えば銅張積層板、多層板等が挙げられる。
なお、前記実施形態では、潤滑層(3)はアルミニウム製基板(2)の片面に形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム製基板(2)の両面に前記特徴を備えた潤滑層(3)が形成された構成を採用しても良い。
また、前記実施形態では、アルミニウム製基板(2)の片面に下塗り層(6)を介して潤滑層(3)が形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えばアルミニウム製基板(2)の片面に直接に形成された構成を採用することもできる。
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
JIS A3004−H18材からなる厚さ70μmのアルミニウム製基板の片面に、ケン化度80モル%のポリビニルアルコール70質量部とケン化度73.5モル%のポリビニルアルコール30質量部との混合物を、厚さ3μmとなるように塗工して下塗り層を形成した。次に、この下塗り層上に、数平均分子量10000のポリエチレングリコール60質量部、数平均分子量30000のポリエチレングリコール20質量部及び数平均分子量100000のポリエチレングリコール20質量部からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ15μmの第2潤滑層を形成し、さらにこの第2潤滑層の上に、数平均分子量200000のポリエチレングリコール55質量部、数平均分子量20000のポリエチレングリコール25質量部及び数平均分子量10000のポリエチレングリコール20質量部からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ15μmの第1潤滑層を形成して、孔あけ加工用当て板を作製した。
JIS A3004−H18材からなる厚さ70μmのアルミニウム製基板の片面に、ケン化度80モル%のポリビニルアルコール70質量部とケン化度73.5モル%のポリビニルアルコール30質量部との混合物を、厚さ3μmとなるように塗工して下塗り層を形成した。次に、この下塗り層上に、数平均分子量10000のポリエチレングリコール60質量部、数平均分子量30000のポリエチレングリコール20質量部及び数平均分子量100000のポリエチレングリコール20質量部からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ15μmの第2潤滑層を形成し、さらにこの第2潤滑層の上に、数平均分子量200000のポリエチレングリコール55質量部、数平均分子量20000のポリエチレングリコール25質量部及び数平均分子量10000のポリエチレングリコール20質量部からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ15μmの第1潤滑層を形成して、孔あけ加工用当て板を作製した。
なお、第2潤滑層を形成する混合組成物のメルトインデックスは200g/10分であり、また第1潤滑層を形成する混合組成物のメルトインデックスは20g/10分であった。
<実施例2〜5>
表1に示す組成からなる混合組成物を用いて第2潤滑層を形成し、表1に示す組成からなる混合組成物を用いて第1潤滑層を形成した以外は、実施例1と同様にして孔あけ加工用当て板を作製した。
表1に示す組成からなる混合組成物を用いて第2潤滑層を形成し、表1に示す組成からなる混合組成物を用いて第1潤滑層を形成した以外は、実施例1と同様にして孔あけ加工用当て板を作製した。
<比較例1、2>
JIS A3004−H18材からなる厚さ70μmのアルミニウム製基板の片面に、ケン化度80モル%のポリビニルアルコール70質量部とケン化度73.5モル%のポリビニルアルコール30質量部との混合物を、厚さ3μmとなるように塗工して下塗り層を形成した。次に、この下塗り層上に、表1に示す組成からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ30μmの単層の潤滑層を形成して、孔あけ加工用当て板を作製した。
JIS A3004−H18材からなる厚さ70μmのアルミニウム製基板の片面に、ケン化度80モル%のポリビニルアルコール70質量部とケン化度73.5モル%のポリビニルアルコール30質量部との混合物を、厚さ3μmとなるように塗工して下塗り層を形成した。次に、この下塗り層上に、表1に示す組成からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ30μmの単層の潤滑層を形成して、孔あけ加工用当て板を作製した。
上記のようにして得られた各孔あけ加工用当て板に対して下記評価法に基づいて各種の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
<孔あけの位置精度の評価法>
厚さ1.5mmのベークライニング製のすて板上に、両面に厚さ12μmの銅板を積層した総厚0.1mmのエポキシ樹脂製プリント配線用素板を4枚積み重ね、最上位の素板上に、実施例1〜5及び比較例1〜2のいずれかの孔あけ加工用当て板を潤滑層側を上向きにして配置し、上方から径0.1mmのドリルにより、該当て板からすて板に達する5000ヒットの孔あけ加工を行った。そして、孔あけ加工の各素板について5000ヒットの孔位置を座標測定機で測定して設定位置からのずれを調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…孔の位置ずれの平均値が8μm未満
「○」…孔の位置ずれの平均値が8μm以上11μm未満
「△」…孔の位置ずれの平均値が11μm以上14μm未満
「×」…孔の位置ずれの平均値が14μm以上。
厚さ1.5mmのベークライニング製のすて板上に、両面に厚さ12μmの銅板を積層した総厚0.1mmのエポキシ樹脂製プリント配線用素板を4枚積み重ね、最上位の素板上に、実施例1〜5及び比較例1〜2のいずれかの孔あけ加工用当て板を潤滑層側を上向きにして配置し、上方から径0.1mmのドリルにより、該当て板からすて板に達する5000ヒットの孔あけ加工を行った。そして、孔あけ加工の各素板について5000ヒットの孔位置を座標測定機で測定して設定位置からのずれを調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…孔の位置ずれの平均値が8μm未満
「○」…孔の位置ずれの平均値が8μm以上11μm未満
「△」…孔の位置ずれの平均値が11μm以上14μm未満
「×」…孔の位置ずれの平均値が14μm以上。
<ドリル折損防止性の評価法>
前記5000ヒットの孔あけ加工を100本のドリルについて行い、100本中の折損数を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…100本中の折損数が0本
「○」…100本中の折損数が1本
「△」…100本中の折損数が2〜4本
「×」…100本中の折損数が5本以上。
前記5000ヒットの孔あけ加工を100本のドリルについて行い、100本中の折損数を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…100本中の折損数が0本
「○」…100本中の折損数が1本
「△」…100本中の折損数が2〜4本
「×」…100本中の折損数が5本以上。
<孔の内壁粗さの評価法>
前記孔あけ加工された最下位のプリント配線用素板に形成された孔の内周壁面の粗さを観察した。即ち、配線用素板を埋め込み樹脂で固化した後、孔の切断面を顕微鏡で観察し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…孔の内周壁面の粗さが3μm未満
「○」…孔の内周壁面の粗さが3μm以上5μm未満
「△」…孔の内周壁面の粗さが5μm以上10μm未満
「×」…孔の内周壁面の粗さが10μm以上。
前記孔あけ加工された最下位のプリント配線用素板に形成された孔の内周壁面の粗さを観察した。即ち、配線用素板を埋め込み樹脂で固化した後、孔の切断面を顕微鏡で観察し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…孔の内周壁面の粗さが3μm未満
「○」…孔の内周壁面の粗さが3μm以上5μm未満
「△」…孔の内周壁面の粗さが5μm以上10μm未満
「×」…孔の内周壁面の粗さが10μm以上。
表1、2から明らかなように、この発明の実施例1〜5の孔あけ加工用当て板は、孔あけの位置精度に優れ、ドリルの折損が極めて少ない上に、孔の内壁粗さは十分に低減されていた。
これに対し、単層の潤滑層を備えた比較例1の孔あけ加工用当て板は、ドリルの折損防止性が不十分である上に、孔の内壁は荒れていた。また、同じく単層の異なる潤滑層を備えた比較例2の孔あけ加工用当て板は、孔あけの位置精度に劣っていた。
この発明の孔あけ加工用当て板は、種々の被加工物に対する孔あけ加工に適用できるが、中でもプリント配線用素板に対する孔あけ加工に好適に用いられる。
1…孔あけ加工用当て板
2…アルミニウム製基板
3…潤滑層
4…第1潤滑層
5…第2潤滑層
2…アルミニウム製基板
3…潤滑層
4…第1潤滑層
5…第2潤滑層
Claims (7)
- アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成された孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、
主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量は、前記第2潤滑層を構成するポリエチレングリコールの数平均分子量よりも大きく、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。 - アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成された孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、
数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第1潤滑層と、
前記アルミニウム製基板と前記第1潤滑層の間に配設され、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコールを50質量%以上含有してなる第2潤滑層と、を少なくとも備えてなり、
前記第1潤滑層のメルトインデックスは、前記第2潤滑層のメルトインデックスよりも小さいことを特徴とする孔あけ加工用当て板。 - 前記第1潤滑層は、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる請求項2に記載の孔あけ加工用当て板。
- 前記第2潤滑層は、数平均分子量1000以上15000未満のポリエチレングリコール50〜70質量%と、数平均分子量15000以上50000未満のポリエチレングリコール10〜30質量%と、数平均分子量50000以上200000以下のポリエチレングリコール5〜30質量%とを含有してなる請求項2または3に記載の孔あけ加工用当て板。
- 前記第1潤滑層のメルトインデックスは10〜100g/10分の範囲であり、前記第2潤滑層のメルトインデックスは100〜1000g/10分の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
- 前記潤滑層は、前記第1潤滑層及び前記第2潤滑層に加えて、
該第1潤滑層と該第2潤滑層の間に配設され、主成分としてポリエチレングリコールを含有してなる中間潤滑層をさらに備えてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。 - 積み重ねた複数枚のプリント配線用素板の上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板を配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成することを特徴とする孔あけ加工方法。
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JP2004009193A (ja) * | 2002-06-05 | 2004-01-15 | Otomo Kagaku Sangyo Kk | プリント配線基板等の孔あけ加工用当て板 |
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- 2008-04-10 JP JP2008102240A patent/JP2009248274A/ja active Pending
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