JP2009245640A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することのできる電極を備えたスパークプラグを提供すること。
【解決手段】中心電極2と、一端が前記中心電極2と火花放電間隙Gを介して対向するように配置された接地電極6とを備えたスパークプラグ1であって、前記中心電極2及び前記接地電極6の少なくとも一方は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料で形成されてなることを特徴とするスパークプラグ1。
【選択図】 図1

Description

この発明は、スパークプラグに関し、さらに詳しくは、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することのできる電極を備えたスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関に使用されるスパークプラグは、内燃機関の燃焼室に配置される中心電極と、一端がこの中心電極と火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極とを備え、前記燃焼室内で、中心電極の先端と接地電極の先端との間に形成される火花放電間隙に火花放電され、燃焼室内に充填された燃料を燃焼させる。
このようなスパークプラグの電極は、通常、耐熱性等に優れたNi基合金等で形成される。例えば、「Cr:0.5〜5%,Mn:0.1〜3%,Si:0.1〜3%,Y:0.00001〜0.5%,を含有し、残りがNiおよび不可避不純物からなる組成(以上、重量%)を有するNi基合金で構成したことを特徴とするNi基合金製点火プラグ電極」が特許文献1に、また、「Si:0.1〜1.5%,Mn:0.1〜0.65%,Al:3.1〜5%,を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有することを特徴とする高温強度のすぐれた内燃機関の点火プラグ電極用Ni基合金」が特許文献2にそれぞれ記載されている。さらに、「重量比で、Si:1.0〜2.5%、Cr:0.5〜2.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.6〜2.0%を含有し、残部が実質的にNiと不可避不純物からなることを特徴とする、点火プラグ用合金」が特許文献3に、また、「質量%で、C:0.1%以下(0を含む)、Si:0.3〜3.0%、Mn:0.5%未満(0を含む)、Cr:0.5%未満(0を含む)、Al:0.3%以下(0を含む)、Y及び希土類元素のうち1種または2種以上を合計で0.01〜0.3%、残部はNi及び不可避不純物からなることを特徴とする点火プラグ用電極材料」が特許文献4にそれぞれ記載されている。
内燃機関に使用されるスパークプラグは、火花放電間隙に火花放電が生じることによって、燃焼室に充填された燃料を燃焼させるから、スパークプラグ特にその電極には、高温においても酸化腐食しにくい特性(この発明において「高温耐食性」と称する。)、加熱・冷却サイクル等によって電極の表面に形成された酸化皮膜が剥離しても、電極が酸化される前に新たな酸化皮膜が速やかに再生する特性(この発明において「皮膜再生能力」と称する。)、さらに、火花放電間隙に火花放電されても電極が著しく消耗することのない特性(この発明において「耐火花消耗性」と称する。)等の特性が要求される。
ところで、地球環境への関心が高まり、温暖化防止、化石燃料の節約等に貢献する内燃機関が注目されている。このような内燃機関として、例えば、燃費の向上、空燃比を大きく設定する等の対策が講じられている。このような内燃機関例えばリーンバーンエンジンにおいては、その燃焼室、特に、中心電極の先端及び接地電極の先端が位置する領域近傍の温度が高温化する傾向がある。このような燃焼室の高温化は、内燃機関のより一層の低燃費化等の要求等に応えるため、近年著しく、特に希薄燃料を用いる場合等の高負荷時には1000℃を超える程にまでになっている。
このような内燃機関に使用されるスパークプラグの中心電極及び/又は接地電極を従来のNi基合金で形成すると、形成されたこれらの電極は、これまで想定されていない程の高温環境下におかれるから、その高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性のいずれも十分に満足できるほどの特性を発揮することができなかった。
特開昭63−18033号公報 特開平2−34734号公報 特開平4−45239号公報 特開2006−316344号公報
この発明は、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することのできる電極を備えたスパークプラグを提供することを目的とする。
スパークプラグの電極において、皮膜再生能力及び高温耐食性と耐火花消耗性とは相反関係にあり、例えば、電極を形成するNi基合金内におけるSi、Cr等の含有率を多くすれば、皮膜再生能力及び高温耐食性が向上する一方で耐火花消耗性が低下し、これらの特性のいずれをも満足のできる程度にまで向上させることができなかったところ、特定の含有率のMn及び/又はYを含有するNi基合金に、保護皮膜を形成することのできる含有率のSiと、単独で保護皮膜を形成するのに十分な含有量未満の含有量であっても特定範囲の含有率のAlとを含有させると、このNi基合金で形成した電極が、予想に反して、皮膜再生能力及び高温耐食性を保持しつつ、良好な耐火花消耗性を維持することができ、希薄燃料を用いる場合等の高負荷時においても、皮膜再生能力及び高温耐食性と耐火花消耗性とを高い水準でバランスよく発揮することができることを、発明者は見出して、この発明を完成した。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、中心電極と、一端が前記中心電極と火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極とを備えたスパークプラグであって、前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料で形成されてなることを特徴とするスパークプラグであり、
請求項2は、前記電極材料は、Crをさらに含有し、Ni、Si、Al、Mn、Y及びCrの合計が100質量%となるように、Crの含有率が0.5〜1質量%の範囲から選択されることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグである。
この発明に係るスパークプラグは特定量のSiとAlとMn及び/又はYとを含有する電極材料で形成されてなる中心電極及び/又は接地電極を備えているから、これらの電極は、電極表面に緻密な保護皮膜が形成されて高温においても酸化腐食されにくくなると共に、新たな酸化皮膜を速やかかつ連続的に再生することができるにもかかわらず、熱伝導率を維持しつつ新たな保護皮膜の過剰な生成を抑制して火花放電による保護皮膜等の消耗量を低減することができる。したがって、この発明によれば、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することのできる中心電極及び/又は接地電極を備えたスパークプラグを提供することができる。
この発明に係るスパークプラグは、中心電極と、一端が中心電極と火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極とを備えている。この発明に係るスパークプラグは、このような構成を有するスパークプラグであれば、その他の構成は特に限定されず、公知の種々の構成を採ることができる。
この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを図1に示す。図1(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の一部断面全体説明図であり、図1(b)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグ1の主要部分を示す断面説明図である。なお、図1(a)では紙面下方を軸線AXの先端方向、紙面上方を軸線AXの後端方向として、図1(b)では紙面上方を軸線AXの先端方向、紙面下方を軸線AXの後端方向として説明する。
このスパークプラグ1は、図1(a)及び(b)に示されるように、略棒状の中心電極2と、中心電極2の外周に設けられた略円筒状の絶縁体3と、絶縁体3を保持する円筒状の主体金具4と、一端が中心電極2の先端面と火花放電間隙Gを介して対向するように配置されると共に他端が主体金具4の端面に接合された接地電極6とを備えている。
前記主体金具4は、円筒形状を有しており、絶縁体3を内装することにより絶縁体3を保持するように形成されている。主体金具4における先端方向の外周面にはネジ部9が形成されており、このネジ部9を利用して図示しない内燃機関のシリンダヘッドにスパークプラグ1が装着される。主体金具4は、導電性の鉄鋼材料、例えば、低炭素鋼により形成されることができる。
前記絶縁体3は、主体金具4の内周部に滑石(タルク)又はパッキン等(図示せず。)を介して保持されており、絶縁体3の軸線方向に沿って中心電極2を保持する軸孔を有している。絶縁体3は、絶縁体3における先端方向の端部が主体金具4の先端面から突出した状態で、主体金具4に固着されている。絶縁体3は、熱を伝えにくい材料で形成されていればよく、このような材料として、例えば、アルミナを主体とするセラミック焼結体が挙げられる。
中心電極2は、外材7と、外材7の内部の軸心部に同心に埋め込まれるように形成されてなる内材8とにより形成されている。中心電極2は、その先端部が絶縁体3の先端面から突出した状態で絶縁体3の軸孔に固定されており、主体金具4に対して絶縁保持されている。中心電極2は、後述する電極材料又はこの電極材料以外の公知の材料で形成され、特に中心電極2の外材7は後述する電極材料で形成されるのがよい。
前記接地電極6は、例えば、角柱体に形成されてなり、一端が主体金具4の端面に接合され、途中で略L字に曲げられて、その先端部が中心電極2の軸線方向に位置するように、その形状及び構造が設計されている。接地電極6がこのように設計されることによって、接地電極6の一端が中心電極6と火花放電間隙Gを介して対向するように配置されている。火花放電間隙Gは、中心電極2の先端面と接地電極6の表面との間の間隙であり、この火花放電間隙Gは、通常、0.3〜1.5mmに設定される。接地電極6は、後述する電極材料又はこの電極材料以外の公知の材料で形成されればよいが、通常、接地電極6は中心電極2よりも高温に曝されるため、接地電極6は後述する電極材料で形成されるのがよい。
スパークプラグ1においては、前記のように、中心電極2及び接地電極6の少なくとも一方が下記電極材料で形成され、好ましくは、より高温に達する接地電極6が下記電極材料で形成される。これらの電極を形成する電極材料は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料である。
この電極材料において、Niは、電極材料を構成する主成分であり、この電極材料は所謂「Ni基合金」である。この発明において「主成分」とは含有率が最も多い成分をいう。
電極材料におけるNiの含有率が90質量%未満であると、後述するSi、Al等を含有していても、電極としたときに、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することができないことがある。Niの含有率は、電極材料の全質量が100質量%となるように、後述するSi、Al等の含有率等に応じて適宜調整される。
この電極材料において、Siは、その酸化物を主成分とする緻密な保護皮膜を形成する。
電極材料におけるSiの含有率が3質量%未満であると、電極としたときに、その表面に緻密な保護皮膜を形成して電極内部への酸素等の侵入を防止することができず、耐食性特に高温耐食性を向上させることができない。また、電極材料が後述するAlを含有していても、緻密な保護皮膜を速やかかつ連続的に再生することができず、電極の皮膜再生能力が低下する。さらに、電極内部に酸素等が容易に侵入して、火花放電によって剥離しやすい疎な酸化物層が電極内部まで形成され、その結果、火花放電によってこの酸化物層が一挙に剥離するから、電極としたときの耐火花消耗性を向上させることができない。一方、Siの含有率が6質量%を超えると、電極としての熱伝導率が低下してしまう。そうすると、燃料の燃焼により電極が受熱した熱の、主体金具4への伝導(「熱引き」ともいう)が悪化し、内燃機関の運転状況によっては電極が溶け、耐火花消耗性がかえって悪化することがある。また、電極の製造過程においても、電極中にNi−Siの金属間化合物が析出して加工性が悪化することもある。電極としたときの高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を向上させることができる点で、電極材料におけるSiの含有率は、3.0〜6.0質量%であるのが好ましく、3.5〜6.0質量%であるのがより好ましく、4.0〜5.0質量%であるのが特に好ましい。
この電極材料において、Alは、Siから形成される保護皮膜をより一層緻密化すると共に、電極としたときの皮膜再生能力を高め、かつ、耐火花放電特性を向上させる。また、Alは、前記保護皮膜の下方にAlを主成分とする酸化物を形成して、前記保護皮膜の耐食性を補強する。
電極材料におけるAlの含有率が0.5質量%未満であると、電極としたときに、Alの前記機能を十分に発揮させることができず、前記保護皮膜のより一層の緻密化、皮膜再生能力及び耐火花放電特性の少なくとも1つの特性を向上させることができない。一方、Alの含有率が1質量%を超えると、電極としたときに、前記保護皮膜の下方にAlを主成分とする酸化物が過剰に生成して保護皮膜を損傷させ、かえって、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性の少なくとも1つの特性を低下させる。また、電極の加工性が悪化することがある。電極としたときの高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく向上させることができる点で、電極材料におけるAlの含有率は、0.5〜1.0質量%であるのが好ましい。
この電極材料は、前記含有率の範囲内の含有率でSiとAlとを含有していればよいが、電極としたときの高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性をより一層高い水準でバランスよく発揮させることができる点で、Siの含有率とAlの含有率との比(Al/Si)が1/12〜1/3であるのが好ましい。
この電極材料において、Mn及びYは、電極としたときに、前記保護皮膜の緻密性及び密着性を向上させて高温耐食性を向上させると共に、皮膜再生能力を高める。この電極材料において、Mn及びYはそれらの少なくとも一方を含有していればよく、具体的には、Mnのみ、Yのみ、又は、Mn及びYの両方を含有していてもよい。
電極材料におけるMn及びYの含有率(電極材料にMn及びYの両方を含有する場合にはそれらの合計含有率)が0.1質量%未満であると、電極としたときに、Mn及び/又はYの前記機能を十分に発揮させることができず、皮膜再生能力及び高温耐食性の少なくとも1つの特性を向上させることができない。一方、Mn及びYの含有率が2質量%を超えると、電極としたときに、電極内部に、Mn及び/又はYの酸化物及び/又は硫化物が過剰に生成して、かえって、皮膜再生能力及び高温耐食性の少なくとも1の特性を低下させる。電極材料がMn及びYの双方を含有する場合には、これらの含有率が前記範囲内にある限り、Mn及びYそれぞれの含有率は特に制限されない。
この電極材料は、SiとAlとMn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計含有量が100質量%となるように、含有している。より詳細にいうと、この電極材料は、91質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料である。換言すると、この電極材料は、その全質量を100質量%としたときに、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、合計0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、残部がNiとからなる電極材料である。
この電極材料は、Si、Al、Mn及びYの少なくとも一種に加えて、Crを含有していてもよい。特に、電極材料におけるSiの含有率が3〜4質量%程度の比較的低含有率である場合にはCrを含有させるのが好ましい。すなわち、この電極材料は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、0.5〜1質量%のCrとを、Ni、Si、Al、Mn、Y及びCrの合計が100質量%となるように、含有する電極材料である。より詳細にいうと、この電極材料は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、0.5〜1質量%のCrとを、Ni、Si、Al、Mn、Y及びCrの合計が100質量%となるように、含有する電極材料である。換言すると、この電極材料は、その全質量を100質量%としたときに、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、合計0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、0.5〜1質量%のCrと、残部がNiとからなる電極材料である。前記含有率でCrを含有する電極材料において、Si、Al、Mn及びYは前記した通りである。
この電極材料において、Crは、Alの前記機能を補強し、Siから形成される保護皮膜をより一層緻密化すると共に、電極としたときの皮膜再生能力を高め、かつ、耐火花消耗性を向上させる。また、Crは、前記保護皮膜の下方にCrを主成分とする酸化物を形成して、前記保護皮膜の耐食性を補強する。
この電極材料におけるCrの含有率が0.5〜1質量%の範囲内にあると、Siの含有率が3〜4質量%程度の比較的低含有率であっても、電極としたときに、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮させることができる。具体的には、Crの含有率が前記上限値を超えると、電極としたときに、Crの酸化物が電極の表面付近に過剰に生成して保護皮膜を損傷させ、かえって電極の高温耐食性を低下させることがある。また、Crの含有率が前記上限値を超えると、電極としての熱伝導率が大幅に低下して、前記のように、電極の耐火花消耗性が低下することがある。高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性をより一層高い水準で発揮させることができる点で、Crの含有率は、0.5〜1.0質量%であるのが好ましい。
このように、Crを含有する電極材料で中心電極2及び接地電極6の少なくとも一方を形成すれば、Siの含有率が比較的低含有率であっても、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性をより一層高い水準でバランスよく発揮することのできる電極を備えたスパークプラグを提供するという目的を達成することができる。
この電極材料は、前記含有率の範囲から選択された含有率の、NiとSiとAlとMn及びYの少なくとも一種とから実質的になる電極材料、又は、前記含有率の範囲から選択された含有率の、NiとSiとAlとMn及びYの少なくとも一種とCrとから実質的になる電極材料である。ここで、「実質的に」とは、前記成分以外の成分を添加等により電極材料に積極的に含有させないことを意味する。ところが、この電極材料の各成分には微量の不可避的な各種不純物を含有していることがある。これらの不純物は極力除去するのが好ましいが、現実的には、完全に除去することはできない。したがって、中心電極2及び接地電極6を形成する電極材料は、この発明の目的を損なわない範囲で、SiとAlとMn及びYの少なくとも一種と所望により含有されるCrとに加えて、不可避不純物を含有していてもよい。このような電極材料に含有してもよい不可避不純物としては、例えば、C、Ca、Mg、Fe、P、S、N、O等が挙げられる。これらの不可避不純物の含有量が少ない方がよく、例えば、SiとAlとMn及びYの少なくとも一種と所望により含有されるCrとの合計質量を100質量部としたときに、総量で0.5質量部以下であるのがよい。
この電極材料は、前記のように、特定量のSiとAlとMn及び/又はYとを含有するから、この電極材料でスパークプラグ1の中心電極2及び接地電極6を作製すると、これらの電極2及び6の表面は酸化されて、電極2及び6の表面に緻密な保護皮膜が形成される。そして、内燃機関の高負荷時においても、この緻密な保護皮膜が電極2及び6内部への酸素の侵入を効果的に防止するから、電極2及び6は、酸化腐食されにくく高い高温耐食性を発揮する。
また、内燃機関の作動によって、中心電極2及び接地電極4は熱サイクルが連続して生じる環境下に配置されるから、通常、これらの電極2及び6の表面に形成された保護皮膜は幾度となく剥離する。ところが、この中心電極2及び接地電極6は、特定量のSiとAlとMn及びYの少なくとも1種と所望によりCrとを含有する前記電極材料で形成されているから、中心電極2及び接地電極6の表面に形成された保護皮膜が幾度となく剥離しても、保護皮膜が剥離した電極表面が酸化される前に、この電極表面に電極内部に存在するSi、Al、Mn、Y、Crを速やかに供給する特性を長期間にわたって連続的に発揮することができる。その結果、この中心電極2及び接地電極6は、高い皮膜再生能力を発揮する。
電極の耐火花消耗は、電極材料中のSi、Cr等の含有量に依存し、酸化層(保護皮膜)の厚さと熱伝導率とに起因して、起こる。例えば、Si、Cr等の含有量が多くなると、酸化層(保護皮膜)の厚さが小さくなって電極の消耗量が低減する傾向がある反面、電極の熱伝導率が低下して溶融しやすく電極の消耗量が増大する傾向があるから、電極の耐火花消耗は、酸化層(保護皮膜)の厚さと熱伝導率とに起因する合計消耗量が小さくなるように、電極材料中のSi、Cr等の含有量等を調整することが重要である。
この点において、スパークプラグ1の中心電極2及び接地電極6は、前記電極材料で形成されているから、新たな保護皮膜を再生するにあたって、電極内部への酸素等の侵入による疎な酸化物層を形成することなく、また、高温耐食性を満たすのに必要な量をはるかに超える保護皮膜の過剰な生成を抑制して、緻密な保護皮膜を再生することができる。また、中心電極2及び接地電極6は、前記電極材料で形成されているから、熱伝導率が低下することなく電極として要求される熱伝導率を保持して、燃焼により受熱した熱を主体金具4に速やかに伝導させることができ、受熱による溶融を防止することができる。その結果、中心電極2及び接地電極6は、内燃機関の作動によって生じる火花放電によって電極表面に形成又は再生された保護皮膜の消耗量を低減することができると共に溶融による電極自体の消耗を低減することができ、高い耐火花消耗性を発揮する。
したがって、この電極材料で形成された中心電極2及び接地電極6は、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することができる。このように、この電極材料で中心電極2及び接地電極6を作製すると、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することのできる電極を備えたスパークプラグを提供するという目的を達成することができる。
前記スパークプラグ1は例えば次のようにして製造される。まず、前記組成の電極材料を、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、所望により0.5〜1質量%のCrとを溶解して、調整する。
このようにして調整した電極材料を所定の形状に加工して中心電極2及び/又は接地電極6を作製する。電極材料の調整及び加工を連続して行うこともできる。例えば、真空溶解炉を用いて、所望の組成を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した後、この鋳塊を、熱間加工、線引き加工等して、所定の形状及び所定の寸法に適宜調整して、中心電極2及び/又は接地電極6を作製することができる。なお、内材8をカップ状に形成した外材7に挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて中心電極2を形成することもできる。
次いで、所定の形状に塑性加工等によって形成した主体金具4の端面に、接地電極6の一端部を電気抵抗溶接等によって接合し、所望により10%程度の塩酸及び水等により洗浄する。次いで、セラミック等を所定の形状に焼成することによって絶縁体3を作製し、中心電極2を絶縁体3に公知の手法により組み付け、接地電極6が接合された主体金具4にこの絶縁体3を組み付ける。そして、接地電極6の先端部を中心電極2側に折り曲げて、接地電極6の一端が中心電極2の先端部と対向するようにして、スパークプラグ1が製造される。
本発明に係るスパークプラグは、自動車用の内燃機関例えばガソリンエンジン等の点火栓として使用され、内燃機関の燃焼室を区画形成するヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に前記ネジ部9が螺合されて、所定の位置に固定される。この発明に係るスパークプラグは、如何なる内燃機関にも使用することができるが、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮するから、この発明の目的をよく達成することができる点で、特に、高負荷となる内燃機関例えばリーンバーンエンジン等に好適に使用されることができる。
この発明に係るスパークプラグは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記スパークプラグ1は、中心電極2の先端面と接地電極6における一端の表面とが、中心電極の軸線方向で、火花放電間隙Gを介して対向するように配置されているが、この発明において、中心電極の側面と接地電極における一端の先端面が、中心電極の半径方向で、火花放電間隙を介して対向するように配置されていてもよい。この場合に、中心電極の側面に対向する接地電極は単数が設けられても複数が設けられてもよい。
また、前記スパークプラグ1は、中心電極2及び接地電極6が共に前記電極材料で形成されているが、この発明において、中心電極のみが前記電極材料で形成されていてもよく、接地電極のみが前記電極材料で形成されていてもよい。この発明に係るスパークプラグは、通常、中心電極よりも接地電極の方がより高温に曝されるため、少なくとも接地電極を前記電極材料で形成するのが好ましい。なお、中心電極が前記電極材料以外の材料で形成される場合には、例えば、外材が前記電極材料以外の公知のNi合金等で形成され、内材が銅(Cu)又は銀(Ag)等の熱伝導性に優れた金属材料により形成される。
さらに、前記スパークプラグ1は、中心電極2及び接地電極6を備えているが、この発明においては、中心電極の先端部、及び/又は、接地電極の表面に、貴金属チップを備えていてもよい。中心電極の先端部及び接地電極の表面に形成される貴金属チップは、通常、円柱形状を有し、適宜の寸法に調整され、適宜の溶接手法例えばレーザ溶接又は電気抵抗溶接により中心電極の先端部、接地電極の表面に溶融固着される。中心電極の先端部に形成された貴金属チップの表面と接地電極の表面に形成された貴金属チップの表面とで前記火花放電間隙が形成される。この貴金属チップを形成する材料は、例えば、Pt、Pt合金、Ir、Ir合金等の貴金属が挙げられる。
通常の真空溶解炉を用いて、第1表に示す組成(質量%)を有する合金の溶湯を調製し、真空鋳造にて各溶湯から鋳塊を調製した。その後、この鋳塊を、熱間加工、線引き加工して、長さ10mm、幅2.7mm、厚さ1.3mmの試験片を作製した。なお、第1表において「−」は対応する成分が実質的に含有されていないことを示す。
Figure 2009245640
第1表における組成1〜7及び9〜11は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料であり、また、組成8は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種と、0.5〜1質量%のCrとを、Ni、Si、Al、Mn、Y及びCrの合計が100質量%となるように、含有する電極材料であり、いずれも、本願発明の範囲内に含まれる電極材料である。一方、第1表における組成12〜17は、Siの含有率、Alの含有率、Mn及びYの含有率のいずれかが本願発明の範囲外にある電極材料である。
<高温耐食性試験>
前記のようにして作製した各試験片を、大気中、内温が1000℃に調整された電気炉内に100時間にわたって静置した後の腐食率を測定した。腐食率は以下の方法により算出した。すなわち、前記静置後の試験片を長手方向に沿って厚さ方向に0.9mmの間隔で2個所切断して、各断面における緻密な保護皮膜が剥離した部分(内部酸化部と称することがある。この内部酸化部は試験片の内部まで疎な酸化物が形成された領域である。)の長手方向の合計長さを計測した。前記長さの計測は、走査型電子顕微鏡(SEM)及び金属顕微鏡を用いて断面を観察した顕微鏡写真を用いて行った。次いで、各断面における、試験片の全長10mmに対する内部酸化部の合計長さを算出し、算出した値の算術平均値を試験片の腐食率とした。この腐食率は、1000℃の高温環境下における、試験片の腐食のしやすさを評価する試験であり、5%以下であると電極としたときの高温耐食性に優れ、その値が大きくなるにつれて電極としたときの高温耐食性が低下することを表す。この結果を第2表に示す。
<皮膜再生能力試験>
前記のようにして作製した各試験片を、大気中で、室温(30℃)環境下に15分にわたる静置と内温が1000℃に調整された電気炉への30分にわたる静置とを交互に行う急熱・急令サイクルを1000サイクル繰り返した後の腐食率を測定した(なお、急熱・急令サイクルにおける1サイクルは前記室温静置1回と前記1000℃静置1回とからなる。)。この腐食率は、前記高温耐食性試験における腐食率と同様にして算出した。この腐食率は、急熱・急令サイクル1000サイクル中に、保護皮膜が速やかかつ連続的に再生するか否かを評価する試験であり、急熱・急令サイクル1000サイクル後の腐食率が5%以下であると電極としたときの皮膜再生能力に優れ、その値が大きくなるにつれて電極としたときの皮膜再生能力が劣ることを表す。この結果を第2表に示す。
<耐火花消耗性試験(酸化層厚さ評価)>
前記皮膜再生能力試験において、急熱・急令サイクルを1000サイクル繰り返した後の試験片を切断した各切断面に確認される保護皮膜の厚さ、及び、前記内部酸化部の厚さを測定し、測定した厚さの最大値を酸化層厚さとした(第2表において、熱サイクル酸化層厚さと称する。)。この酸化層厚さは、保護皮膜が剥離した部分において、新たに形成又は再生した保護皮膜の形成量を評価する試験であり、酸化層厚さが10μm以下であると、新たな保護皮膜の過剰な生成が抑制されて電極としたときの耐火花消耗性に優れ、その値が大きくなるにつれて、新たな保護皮膜が過剰に生成して電極としたときの耐火花消耗性に劣ることを表す。これらの結果第2表に示す。
<熱伝導率の測定>
前記酸化層厚さ評価による耐火花消耗性試験に加えて、第1表に示す組成を有する電極材料を用いて、電極の溶融を原因とする耐火花消耗性を評価した。具体的には、第1表に示す組成を有する試験片を前記のようにして作製し、各試験片の表面を研削した後、レーザフラッシュ法により、各試験片の常温(25℃)における熱伝導率(W/mK)を測定した。熱導電率は、電極の溶融を原因とする耐火花消耗性を評価する特性であり、この値が大きいほど電極の溶融を原因とする耐火花消耗性に優れ、この値が小さいほど電極の溶融を原因とする耐火花消耗性に劣ることを表す。組成No.1、2、6、8、13及び17を有する電極材料を用いた実施例1、2、6及び8並びに比較例2及び6の結果を第2表に示す。これら以外の実施例の結果は第1表に示されていないがいずれも耐火花消耗性に優れていた。
<耐火花消耗性試験(机上評価)>
前記酸化層厚さ評価による耐火花消耗性試験に加えて、第1表に示す組成No.1、2、6、8、13及び17を有する電極材料でスパークプラグ1を作製して、机上での耐火花消耗性を評価した。具体的には、前記試験片の作製と同様にして、第1表に示す組成No.1、2、6、8、13及び17を有する電極材料で、接地電極6として断面寸法1.6mm×2.7mmの線材を作製した。銅からなる円柱状の内材8と、Ni合金よりなる電極材料でカップ状に形成した外材7とをそれぞれ作製した。そして、作製した内材8を外材7に挿入し、押し出し加工等の塑性加工にて、内材8と外材7とからなる直径4mmの中心電極2を作製した。次いで、所定の形状及び寸法に塑性加工によって形成した主体金具4の端面に、接地電極6の一端部を電機抵抗溶接で接合した。次いで、アルミナを主成分とするセラミックを所定の形状に焼成することによって絶縁体3を作製し、中心電極2を絶縁体3に組み付け、さらに、接地電極6が接合された主体金具4にこの絶縁体3を組み付けた。次いで、接地電極6の先端部を中心電極2側に折り曲げて、接地電極6の一端が中心電極2の先端部と対向するようにして、スパークプラグ1を製造した。大気中で、接地電極6と中心電極2との火花放電間隙Gに火花放電を発生させるべく、周波数60Hzの高電圧をスパークプラグ1に300時間連続して印加した。この後に、接地電極6の消耗量(消耗により生じた陥没部の最大深さ)を、レーザ形状測定器を用いて、計測した。接地電極6の消耗量は、実機における火花放電による電極の消耗量を評価する試験であり、この消耗量が0.3mm以下であると耐火花消耗性に優れ、その値が大きくなるにつれて耐火花消耗性が劣ることを表す。この結果を第2表に示す。
Figure 2009245640
本願発明の範囲内に含まれる電極材料で形成された試験片は、第2表に示すように、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性を高い水準でバランスよく発揮することができた。そして、これらの試験片で作製したスパークプラグ1の机上評価においても耐火花消耗性に優れていることを確認することができた。
一方、本願発明の範囲外にある電極材料で形成された試験片は、第2表に示すように、高温耐食性、皮膜再生能力及び耐火花消耗性の少なくとも1つの特性が劣り、近年の内燃機関に用いられるスパークプラグとしての特性を十分に満足することができなかった。比較例1〜6はいずれも酸化層厚さ評価に劣るが、比較例6はCrの含有量が2.0質量%であって、熱伝導率が低く机上評価においても耐火花消耗性に大きく劣っていた。
図1は、この発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグを説明する説明図であり、図1(a)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの一部断面全体説明図であり、図1(b)はこの発明に係るスパークプラグの一実施例であるスパークプラグの主要部分を示す断面説明図である。
符号の説明
1 スパークプラグ
2 中心電極
3 絶縁体
4 主体金具
5 貴金属チップ
6 接地電極
7 外材
8 内材
9 ネジ部
G 火花放電間隙

Claims (2)

  1. 中心電極と、一端が前記中心電極と火花放電間隙を介して対向するように配置された接地電極とを備えたスパークプラグであって、
    前記中心電極及び前記接地電極の少なくとも一方は、90質量%以上のNiと、3〜6質量%のSiと、0.5〜1質量%のAlと、0.1〜2質量%の、Mn及びYの少なくとも一種とを、Ni、Si、Al、Mn及びYの合計が100質量%となるように、含有する電極材料で形成されてなることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記電極材料は、Crをさらに含有し、Ni、Si、Al、Mn、Y及びCrの合計が100質量%となるように、Crの含有率が0.5〜1質量%の範囲から選択されることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
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