以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る火災報知設備の概略的なシステム構成図である。
図1において、火災受信機10と、この火災受信機10に伝送線L1を通じて接続された試験機能付き電源供給用中継器(以下、電源供給用中継器と略称)50および試験機能付き中継器20(20a、20b、20c、20d)と、この試験機能付き中継器20に感知器回線L2を通じて接続された複数の自動試験機能付き感知器(以下、AT感知器と略称)30とが示されている。この火災受信機10には、伝送線L1を通じて、AT感知器30とは異なる伝送線L1を介して状態情報を送信する火災感知器等のその他の端末機器が、図示しないが、必要に応じて複数接続されている。
また、図1において、火災受信機10は、試験機能付き中継器20c、20dおよびその他の端末機器と第1の端末電源線(以下、端末電源線と略称)L3を通じて接続されて、これら端末機器に対して、内部に設けられる端末電源部15(図2)から電源を供給している。さらに、試験機能付き中継器20c、20dに感知器回線L2を通じて接続された複数のAT感知器30に対しても、内部に設けられる端末電源部15(図2)から端末電源線L3を介して電源を供給している。
一方、図1において、電源供給用中継器50は、試験機能付き中継器20a、20bと第2の端末電源線(以下、端末電源線と略称)L4を通じて接続されて、これら端末機器に対して、内部に設けられる電源部55(図3)から電源を供給している。さらに、試験機能付き中継器20a、20bに感知器回線L2を通じて接続された複数のAT感知器30に対しても、内部に設けられる電源部55(図3)から端末電源線L4を介して電源を供給している。またさらに、電源供給用中継器50は、内部に設けられる電源部55(図3)から自身の各回路に電源を供給している。
そして、前述した電源供給方式のシステム構成とすることによって、火災受信機10の端末電源部15の電源容量では電源供給できない端末機器(およびそれら端末機器に回線を介して接続されているAT感知器30等の監視用機器あるいは被制御機器)がある場合であっても、火災受信機10の代わりに電源供給用中継器50が電源を供給することができるので、設備の規模に関係なく、または、リニューアルなどによって設備全体に必要な電源容量が変化しても、全ての端末機器へ電源を供給可能とすることができる。
図2は火災受信機10の構成を示すブロック図である。
図2において、火災受信機10は、制御部11と、表示操作部12と、記憶部13と、送受信部14と、端末電源部15とから構成されている。それぞれ詳細に説明しないが、この制御部11は、CPUやタイマ等を含み、表示操作部12は、LCD等の表示装置および各種スイッチ類を含み、また、記憶部13は、接続される端末機器に関するデータベースDBを含む。また、送受信部14は、伝送線L1を介して電源供給用中継器50等の伝送線L1上の全ての端末機器と接続され、さらに、端末用電源部15は、端末電源線L3を介して試験機能付き中継器20c、20dおよびその他の端末機器に接続されている。
図3は電源供給用中継器50の構成を示すブロック図である。
図3において、電源供給用中継器50は、制御部51と、記憶部53と、送受信部54と、電源部55とから構成されている。
電源部55は、AC/DCコンバータとしての電源ユニット55aとバッテリとしての予備電源55bと充電回路55cとを有し、端末電源線L4を介して試験機能付き中継器20a、20bに接続されている。電源ユニット55aは、商用電源AC100Vからの電源供給を受けて、通常時に端末電源線L4を介して接続された試験機能付き中継器20a、20bおよび自身の内部回路に電源を供給する。予備電源55bは、商用電源AC100Vからの電源供給を受ける充電回路55cに通常時に接続されて充電され、一方、電源ユニット55aの異常時または商用電源AC100Vの停電時には充電回路55cから切り離されて、電源ユニット55aに代わって、端末電源線L4を介して接続された試験機能付き中継器20a、20bおよび自身の内部回路に電源を供給する。
制御部51は、CPUやタイマ等を含み、さらに電源部55の状態を定期的に監視する電源監視部51aを有し、電源監視部51aによって、電源ユニット55a、予備電源55b、および商用電源AC100Vの状態をそれぞれ監視する。例えば、電源ユニット55aが出力する出力電圧値、予備電源55bと充電回路55cとの接続状態、商用電源AC100Vから入力される入力電圧値のそれぞれに基づいて、それぞれの正常または異常を検出する。そして、これら検出した状態情報に基づいて、電源ユニット55aまたは予備電源55bのいずれかを選択して、端末電源線L4等に電源を供給させる制御を行う。
また、制御部51は、火災受信機10から送信される電源部試験命令(後に詳細に述べる)としての自動試験命令または予備電源試験命令を受信したときには、前記した監視内容の他に、予備電源55bの電源電圧値を監視する。予備電源55bの電源電圧値の監視を試験命令受信時のみに行う理由としては、予備電源55bの電源電圧値を監視するためには、充電回路55cから予備電源55bを切り離す必要があり、このように切り離した状態を多くすると予備電源55bが満充電になりにくくなるためである。
記憶部53は、電源監視部51aによって検出された電源部55の状態情報を記憶する。電源部55の状態情報としては、電源部55全体での正常または異常を示す情報である。また、その他の状態情報として、伝送線L1を介して火災受信機10から送信される電源部試験命令受信の有無を示す状態情報も記憶する。さらに、電源部55の詳細状態情報として、電源ユニット55a、予備電源55bおよび商用電源AC100V毎の正常または異常の情報、それぞれの監視した電圧値などのより詳細な状態情報も記憶する。そして、送受信部54は、伝送線L1を介して火災受信機10に接続されている。
図4は端末電源線L4に接続される端末機器の一例として、中継器20aの構成を示すブロック図であり、中継器20bも同様の構成である。
中継器20aは、制御部21と、送受信部22と、信号検出部23と、信号送出部24、定電圧回路25とから構成されている。それぞれ詳細に説明しないが、この制御部21は、CPUやタイマ等を含む。また、送受信部22は、伝送線L1を介して火災受信機10と接続され、さらに、信号検出部23および信号送出部24は、感知器回線L2を介して複数のAT感知器30に接続され、またさらに、定電圧回路25は、端末電源線L4を介して電源供給用中継器50と接続されて、自身の各部に電源を供給している。また、端末電源線L4は、感知器回線L2と接続されて回線L2上の複数のAT感知器30に電源を供給している。
図5は端末電源線L3に接続される端末機器の一例として、中継器20cの構成を示すブロック図であり、中継器20d等も同様の構成である。
中継器20cは、中継器20aと同様に、制御部21と、送受信部22と、信号検出部23と、信号送出部24、定電圧回路25とから構成されているので、各部の説明を省略する。そして、中継器20aとの相違点としては、中継器20aは定電圧回路25が端末電源線L4を介して電源供給用中継器50と接続されているのに対して、中継器20cは定電圧回路25が端末電源線L3を介して火災受信機10と接続されている点のみである。また、端末電源線L3は、感知器回線L2と接続されて回線L2上の複数のAT感知器30に電源を供給している。
そして、図4および5のAT感知器30は、感知器回線L2に対して図示しない一般型感知器(オンオフ型)と混在して接続されており、AT感知器30は、試験情報送出のためパルスを利用したコード信号を用いる信号伝送を行う。なお、AT感知器30からの火災信号は、図示しない一般型感知器と同じようにオンオフ信号であり、試験機能付き中継器20の信号検出部23で検出される。つまり、AT感知器30からの火災信号は、信号伝送ではなく、いわゆるスイッチング動作を行い、感知器回線L2を低インピーダンス状態とする。
図6は、火災受信機10内に設けられるデータベースDBの構成例を示す図である。
図6において、データベースDBは、アドレス131と、端末名称132と、メッセージ133と枝番134とを備えて構成され、これらの項目以外に、連動設定、感度設定、蓄積有無など、個々の端末機器に必要なデータ設定が行える。アドレス131は、伝送線L1に接続される試験機能付き中継器20等の端末機器に個別に付与される001、002、…、などの番号である。端末名称132は、監視用機器および被制御機器の端末機器として用いられている機種を特定するため、実際には簡略的なコードが設定されている。メッセージ133は、「1階1番 実験室」等の設置場所を表すために文字列が設定され、例えば最大16文字とされる。
また、枝番134は、端末機器が試験機能付き中継器20の場合に、感知器回線L2に接続されているAT感知器30の有無を示しており、図1に示すシステム構成の起動時に、中継器20が各枝番ごとに応答の有無を検出し、その結果を火災受信機10が取り込んで、個々の枝番134に対するAT感知器30の有無がデータベースDBに設定される。
このようなデータベースDBを用いて、一例として図7に示すような、表示操作部12への表示内容とすることができる。図7は、表示操作部12における表示画面の一例であり、最上段d1の左側において、アドレス131が「050」で、端末名称が中継器(試験機能付き中継器20は「感知器」と表示することとしている)で、メッセージ133として「1階1番 実験室」が表示され、さらに、アドレス131への枝番134として「04」が表示されている。これによって、試験機能付き中継器20に接続されている感知器のうち、出力値異常の発生しているAT感知器30を特定することができる。
なお、アドレス131の「050」の前にハイフンを介して示されている「1」は、伝送線L1の系統を区別しており、伝送線L1が複数設置されるときに、いずれの系統かを区別するものである。
また、図7において、最上段d1は火災に関する情報(火災感知器に関する情報を含む)を表示する領域であり、第2段d2は火災以外の情報(防排煙機器や地区音響装置などに関する情報)を表示する領域であり、そして、第3段d3はガス漏れ警報に関する情報を表示する領域である。このように火災報知設備に関する端末機器の状態情報は、最上段d1、第2段d2または第3段d3のいずれかに区別されて表示される。
また、図1の試験機能付き中継器20のように、伝送線L1に接続されている各端末機器は、図示しないが、端末機器ごとに順次2桁の16進数によって定められるアドレスが付与されている。すなわち、各端末機器には、00h、01h、02h、…、FEhのようなアドレスが付与されている。ただし、以下の説明では、便宜上アドレスを10進数で表すこともある。なお、このアドレスは、データベースDB上の項目、アドレス131に対応するものである。
アドレス00h〜FEhが付与されている端末機器は、16個のグループG0〜G15に分けられ、また、各グループ内にはそれぞれ原則16個の端末機器が属することができる。すなわち、原則最大255個の端末機器が1本の伝送線L1に接続可能であり、伝送コードでは各アドレスは8ビットで表されることになる。
図8は、上記実施形態における端末機器のアドレスを8ビット構成のコードで示す図であり、図8(1)、(2)は、それぞれ10進数の10番目、255番目のアドレスを示している。
各端末機器の個々の2進数コードのアドレスは、図8に示されるように、上位4ビット(以下、上位桁という)と、下位4ビット(以下、下位桁という)とに分けられ、上位桁によって0からはじまるグループ番号を表し、下位桁によって0からはじまるグループ内の端末機器番号を表している。すなわち、図8(1)の10番目の端末機器に着目すると、アドレスコードは2進数で「00001001」であり(10進数の「9」)、そのアドレスコードの上位桁が「0000」であるので(0h)、10番目の端末機器は第0グループ(G0)に属し、その下位桁が「1001」であるので(9h)、そのグループ内における端末機器番号が9に対応することを示しており、これら上位桁と下位桁とを組み合わせた「0Ah」が、設備全体から見た端末機器の順番として、アドレス0からはじまり10番目であるアドレス9を示している。
また、図8(2)によるアドレス254に対応する255番目の端末機器に着目すると、その2進数によるアドレスコードが「11111110」であり、その上位桁が「1111」であるので(Fh)、255番目の端末機器は第15グループ(G15)に属し、その下位桁が「1110」であるので(Eh)、そのグループ内における端末機器番号が15に対応することを示しており、これら上位桁と下位桁とを組み合わせた「FEh」が、設備全体から見た端末機器の順番として、255番目であるアドレス254(10進数)を示している。
すなわち、各端末機器のアドレスは、8ビットのコード全体で、設備全体からみたアドレスを示し、同時に8ビットのコードの上位桁によってグループ番号を、8ビットのコードの下位桁によってグループ内の端末機器番号を示している。
このように、複数の端末機器のそれぞれに、複数の桁数で表されるアドレスを付与し、アドレスの中の特定の桁によってグループ番号を表しているので、「ポイントポーリング」においてグループ番号が共通する複数の端末機器を同時に呼出すことができる。また、呼出されたグループ番号を有する複数の端末機器のそれぞれは、グループ内の端末機器番号が互いに異なるので、各端末機器ごとに応答タイミングを割り当てることができる。
図9は、上記実施形態におけるポイントポーリングの動作を示すタイムチャートであり、ポイントポーリングは「グループ情報収集フレーム」と「発信機検出フレーム」とで構成されている。
「グループ情報収集フレーム」は、各端末機器を個々にポーリングするのではなく、上記のようにグループ化したグループごとに火災受信機10が呼出すフレームである。呼出されたグループに属する各端末機器は、それぞれに割り当てられた応答タイミング時に、状態情報あるいは種別情報ID等のポイントポーリングによって要求されたデータを順次火災受信機10に返信する。
つまり、上記ポイントポーリングによって、複数の端末機器が複数のグループに分けられ、火災受信機10がグループごとに呼出を行い、複数のグループのうちの所定のグループに属する複数の端末機器から状態情報を、時分割で火災受信機10が受信するものである。この方式によれば、1つのグループに属する端末機器が多数であるときに、状態変化の有る端末機器を迅速に検出することができる。
ここで、「状態情報」とは、端末機器がアナログ式火災感知器である場合は、検出した火災現象の物理量データであり、通常の中継器である場合は、一般型感知器等の監視用機器が接続されているときに、火災信号等を示すデータであり、防排煙機器等の被制御機器が接続されているときに、これらの機器の作動状態を示すデータである。さらに、試験機能付き中継器20である場合は、感知器回線L2上の一般型感知器またはAT感知器30からの火災信号、あるいは、感知器回線L2上のAT感知器から情報収集した結果の異常信号の有無を示すデータである。またさらに、電源供給用中継器50である場合は、電源監視部51aが監視した電源部55の正常または異常の状態信号を示すデータであり、さらに、火災受信機10からの電源部試験命令受信の有無の状態情報を示すデータである。
ポイントポーリングを構成する「発信機検出フレーム」は、図示しない発信機が人為的に操作されるものであり、信頼性が高いので、速やかに作動情報を収集するために設けられたフレームである。したがって、発信機検出フレームは、図9に示すように、一つのグループに対してポイントポーリングが1回実行されるたびに、伝送線L1に接続されている全ての発信機が応答可能であり、発報中の発信機が存在すると、その発信機はポイントポーリングによる呼出に対して発信機に指定されているタイムスロットに自分のアドレスを火災受信機10に対して返信する。
なお、図9における「システムポーリング」は、火災受信機10が全ての端末機器に対して所定の制御命令を送信し、全ての端末機器を制御するものである。ここで、システムポーリングを用いて、火災受信機10が全ての端末機器に対して行う制御命令は、例えば、火災復旧命令(全ての端末機器を正常な監視状態に復旧させる命令)、蓄積復旧命令(火災状態が継続しているかどうかを判別する蓄積動作を行うために、火災信号を送信した火災感知器や中継器等の端末機器を復旧させる命令)、地区音響停止命令(鳴動中の地区ベル等の音響装置を停止させる命令)などである。
また、図9における「セレクティング」は、個別の端末機器に対してアドレスを指定して所定の制御命令を送信し、当該端末機器を制御したり、また、任意の端末機器に状態情報等の要求命令を特定の端末装置に送信して、個々に端末機器から状態情報等を収集する動作である。ここで、「制御命令」とは、端末機器が電源供給用中継器50である場合は、当該中継器50に電源部55の状態監視を行わせるための電源部試験命令であり、例えば一週間毎に定期的に送信される自動試験命令、表示操作部12の図示しない予備電源試験スイッチの操作入力に基づいて送信される予備電源試験命令である。
図9における伝送フレームのタイムチャートについて説明する。
ポイントポーリングは「グループ情報収集フレーム」と「発信機検出フレーム」とで構成され、「グループ情報収集フレーム」は受信機10が端末機器の呼出しを行う「受信機フィールド」と、それに続けて伝送が行われない「第1ウェイティングフィールドWF1」と、呼出された端末機器が信号伝送を行う「端末機器フィールド」とで構成され、また、「発信機検出フレーム」は受信機10と図示しない発信機との間で信号伝送を行う「発信機フィールド」とそれに続けて伝送が行われない「第2ウェイティングフィールドWF2」とで構成される。
ここで、端末機器フィールドにおいて、呼出しを受けたグループに属する16個の端末機器が、グループ内の端末機器番号に基づいた各端末機器ごとに割り当てられた応答タイミングに、順次データを返信する。
そして、1回のポイントポーリングが終了すると、火災受信機10は次ぎのグループを指定するポイントポーリングを実行し、これを繰り返して全てのグループに対してポイントポーリングを行うことで、全ての端末機器から状態情報または種別情報IDを収集することができる。さらに、最終のグループに対するポイントポーリングが終了すると、原則的に再度最初のグループからポイントポーリングを実行し、状態情報等の収集を続ける。
図9における横線の上の信号は、火災受信機10から送信される信号であり、その横線の下の信号は、端末機器から送信される信号である。そして、火災受信機10から送信されるアドレスAD、コマンドCM1、CM2、一次サムチェックコードPSの各コードと、端末機器から返信される返送データD1、二次サムチェックコードSS、自己のアドレスDA、返送データD1、D2の各コードとについて説明する。ここで、各コードはスタートビットおよびストップビットが追加された8ビットのデータ領域の10ビットでそれぞれ構成される。
まず、アドレスADは、2桁の16進数で表す00hからFEhまでの端末機器のアドレスを指定するためのデータ領域であり、通常のアドレスが示される場合には、セレクティング動作であり、特定のアドレス、ここではFFhである場合に、ポイントポーリングまたはシステムポーリングであることを示している。
コマンドCM1は、アドレスADがFFhである場合、コマンドCM1は行われているポーリングの種類を示している。例えば、コマンドCM1が0Xhである場合にはポイントポーリング動作であることを示し、FXhである場合にはシステムポーリング動作であることを示している。ここで、Xは0からFまでであり(16進数)、コマンドCM1が00hであれば、状態情報を返送させるポイントポーリングを示し、01hであれば、種別情報ID(端末機器の機種等を示すコード)を返送させるIDポイントポーリングであることを示している。また、コマンドCM1がF0hであれば、システムポーリングによる火災復旧命令を示しており、F1hであれば蓄積復旧命令、あるいは、F2hであれば地区音響停止命令を示している。
また、セレクティングの場合にコマンドCM1はその内容を示し、例えば、01hであれば状態情報返送命令であることを示し、02hであれば試験命令、03hまたは04hであれば確認灯点灯命令または確認灯消灯制御命令等であることを示している。さらに、拡張セレクティングの場合は、セレクティングのコマンドCM1を、例えば71hとすることで、拡張セレクティングであることを示し、異常状態等に関する詳細状態情報返送命令であることを示している。
コマンドCM2はポイントポーリングである場合に主に使用され、コマンドCM2の下位桁によって、所定の情報を返送すべきグループを示している。例えば、コマンドCM2は0Xhで表され、Xは上記と同様でグループ番号を示す。
一次サムチェックコードPSは、火災受信機10からの伝送が正常に行われたかどうか端末機器が確認するためのコードであり、所定の演算によって得られる。
他方、複数の端末機器から返信されるデータは、ポイントポーリングの場合、返送データD1が状態情報または種別情報IDであり、同時に二次サムチェックコードSSが所定の演算の結果として送信される。また、セレクティングの場合、アドレスDAは送信する端末機器の自己のアドレスであり、返送データD1、D2は状態情報、種別情報ID等である。
次に、上記実施形態における電源供給用中継器50の内部状態情報の格納に関する動作について説明する。図10は、上記実施形態における電源供給用中継器50の内部状態情報の格納動作を示すフローチャートである。
まず、電源ユニット55aの出力電圧値、および商用電源AC100Vの入力電圧値を検出して、それぞれの基準値と比較してそれぞれの正常または異常を判別することによって、また、予備電源55bと充電回路55cとの接続状態を判別することによって、電源部55の状態監視を行い(S10)、状態監視の結果として、電源部55全体としての正常または異常を示す状態情報を記憶部53に格納し(S11)、さらに、電源ユニット55a、予備電源55b、および商用電源AC100Vそれぞれの正常または異常を示すデータ、さらには、電源ユニット55aの出力電圧値、および商用電源AC100Vの入力電圧値を示すデータを、詳細状態情報として記憶部53に格納する(S12)。
そして、詳細状態情報として、電源ユニット55aの異常または停電(商用電源AC100Vの異常)かどうかを判別し(S13)、電源ユニット55aの異常または停電でない通常時には、予備電源55bと充電回路55cとを接続状態として予備電源を充電し(S14)、電源ユニット55aを用いて、端末電源線L4および内部の各部に電源供給を行う(S15)。一方、電源ユニット55aの異常または停電である異常時には、予備電源55bを充電回路55cから切り離し、予備電源55bを用いて、端末電源線L4および内部の各部に電源供給を行う(S16)。
つぎに、送受信部54を介して自己のアドレスと一致する電源部試験命令(セレクティング命令)の受信の有無を判別し(S17)、電源部試験命令を受信していなければ、電源部試験命令受信を示す状態情報を消去する(S25)一方、電源部試験命令を受信したならば、応答信号を返送する(S18)。この応答信号は、セレクティングにおける端末フィールドであり、その内容は、アドレスDAが自己アドレス、返送データD1、D2は受信機フィールドのコマンドCM1、CM2を返し、二次チェックサムコードSSを送信する。
そして、予備電源55bを充電回路55cから切り離し(S19)、 前述のステップS10の電源部55の状態監視に加えて、予備電源55bの電源電圧値の検出を行い(S20)、試験終了したら、予備電源55bと充電回路55cを接続して、予備電源55bを再び充電する(S21)。そして、状態監視の結果として、電源部55全体としての正常または異常を示す状態情報を記憶部53に格納し(S22)、また、予備電源55bの電源電圧値を含む電源部55の詳細状態情報を記憶部53に格納し(S23)、さらに、電源部試験命令受信を示す状態情報を記憶部53に格納する(S24)。その後、ステップS10へ戻り、上記動作(S10〜S25)を繰り返して、電源部55の状態監視を行って、電源部55の状態情報、および予備電源55bの電源電圧値を含む詳細状態情報の更新を行っていく。
次に、上記実施形態における伝送線L1上でのポーリングに関する動作について説明する。図11は、上記実施形態における火災受信機10の伝送動作を示すフローチャートである。
まず、電源を投入することによって立ち上げが行われた後、初期設定を行い(S1)、例えば全てのアドレスについてデータベースDBとして登録されている機種が実際に設置されている機種と一致することを確認する状態合わせの動作、および、試験機能付き中継器20があるときにその感知器回線L2に接続されているAT感知器30の枝番を収集する拡張セレクティング動作など、実際の監視制御を行う前に設定、確認されるべき動作を行う。
そして、表示操作部12からのオペレータの端末機器制御入力等によるセレクティング命令の有無を判断し(S2)、セレクティング命令がない場合、後述するように設定される拡張セレクティング命令の有無を判断し(S7)、拡張セレクティング命令がない場合、表示操作部12からの復旧入力等のシステムポーリング命令の有無を判断し(S3)、システムポーリング命令がない場合、呼出すグループを特定して、ポイントポーリングを行う(S4)。その後、ステップS2へ戻り、上記動作(S2〜S4)を繰り返して、順次グループを変えてポイントポーリング(S4)を行っていく。
このポイントポーリングにおける各端末機器からの情報収集は(S4)、常時状態情報を収集しており、所定のタイミング、例えば5回に1回の頻度でIDポイントポーリングを行って、各端末機器の種別情報IDを返送させて端末機器の設置状態を確認する。
そして、ポイントポーリングにおいて(S4)、状態情報の収集結果として、いずれかの端末機器に状態変化があると判別されるときに、その端末機器の状態に合わせて音声警報や情報表示のような報知動作を行う。ここで、ポイントポーリングによる状態変化の有無は、図9のタイムチャートに示されるような個々の端末機器から返送されてきた状態情報を示す返送データD1、D2を保存し、前回収集した状態情報との対比によって変化の有無が判別される。なお、端末機器がアナログ式火災感知器に場合には、返送データD1、D2は検出した煙や温度のレベルに関するアナログデータであり、火災判別処理の結果によって状態を判別する。
また、このポイントポーリングにおいて(S4)、状態情報の収集結果として、状態変化がある端末機器が試験機能付き中継器20である場合、かつ、状態変化が異常と判別される場合に、その試験機能付き中継器20からAT感知器30が設定される全アドレスに関する状態情報を返送させるために、拡張セレクティング命令をセットする。その後、ステップS2へ戻るときに、セレクティング命令なしとなり(S2)、続けて、拡張セレクティング命令の有無の判断において、拡張セレクティング命令有りとなり(S7)、試験機能付き中継器20に対する異常状態に基づく拡張セレクティングを行う(S8)。
さらに、このポイントポーリングにおいて(S4)、状態情報の収集結果として、状態変化がある端末機器が電源供給用中継器50である場合、かつ、状態変化が異常(電源部55の異常)、または電源部試験命令の受信状態と判別される場合に、その電源供給用中継器50から電源部55の詳細状態情報を返送させるために、拡張セレクティング命令をセットする。その後、ステップS2へ戻るときに、セレクティング命令なしとなり(S2)、続けて、拡張セレクティング命令の有無の判断において、拡張セレクティング命令有りとなり(S7)、電源供給用中継器50に対する異常状態等に基づく拡張セレクティングを行う(S8)。
ここで、電源部試験命令としては、火災受信機10に備えられている定期的な電源部55の自動試験命令、または、表示操作部12からのオペレータの端末機器制御入力等に基づく予備電源試験命令であり、セレクティング命令としての電源部試験命令がある場合(S2)に行われるセレクティング動作(S6)に基づいて火災受信機10から送信される。そのため、セレクティング動作して(S6)、その後、ステップS2へ戻るときに、セレクティング命令なしとなり(S2)、続けて、拡張セレクティング命令の有無の判断において、拡張セレクティング命令なしとなり(S7)、システムポーリング命令の有無の判断において、システムポーリング命令なしとなって(S3)、ポイントポーリングを行うときに、このポイントポーリングにおいて(S4)、状態情報の収集結果として、状態変化がある端末機器が電源供給用中継器50である場合、かつ、状態変化が電源部試験命令の受信状態と判別される場合に、その電源供給用中継器50から電源部55の詳細状態情報を返送させるために、拡張セレクティング命令をセットすることができる。
ここで、拡張セレクティングとセレクティングとの違いについて、図12を用いて説明する。図12において、図12(a)は図9と同様のセレクティングのタイムチャートであり、図12(b)は拡張セレクティングのタイムチャートである。
セレクティングにおける1伝送フレームの時間は、一例として図12(a)に示すように、受信機フィールドが約17ms、ウェイティングフィールドが約4ms、端末機器フィールドが約17ms、待機時間約13秒で、合計約50msである。
これに対して、拡張セレクティングにおける1伝送フレームの時間は、一例として図12(b)に示すように、受信機フィールドが約17ms、ウェイティングフィールドが約4ms、端末機器フィールドが約75ms、待機時間約13秒で、合計約108msである。これらを対比すると明らかなように、端末機器フィールドのデータ領域だけが約8倍に拡張されており、火災受信機10は、拡張セレクティングの信号送信を行うと同時に、拡大されたデータ領域を受信するようにタイミングを取り、拡張セレクティングを用いることによって、通常のセレクティングでは一度に送れない多量のデータを送信することを可能とする。
なお、セレクティングでは、データD1には受信機フィールドにおけるコマンドCM1を返し、データD2において端末機器の状態情報を返信する。これに対し、拡張セレクティングでは、端末機器が試験機能付き中継器20の場合は、データD1からD16までのデータ領域のうち、データD1には受信機フィールドにおけるコマンドCM1を返し、データD2からD6までにおいて、AT感知器30の状態として通番1から30までの出力異常の情報を、データD8からD12までにおいて、AT感知器30の状態として通番1から30までの無応答に関する情報を、それぞれ割り当て返送する。なお、データD7およびD13からD16まではここでは未使用である。
また、拡張セレクティングでは、端末機器が電源供給用中継器50の場合は、データD1からD16までのデータ領域のうち、データD1には受信機フィールドにおけるコマンドCM1を返し、データD2には電源部試験命令の受信の有無を示す情報を、データD3、D4、D5には電源ユニット55a、予備電源55b、商用電源AC100Vの異常の有無を示す情報を、データD6からD9までにおいて、電源ユニット55aの出力電圧値の情報を(データD6からD9は、出力電圧値の10の位、1の位、0.1の位、0、01の位の情報にそれぞれ対応している)、データD10からD13までにおいて、予備電源55bの電源電圧値の情報を(データD10からD13は、電源電圧値の10の位、1の位、0.1の位、0、01の位の情報にそれぞれ対応している)、それぞれ割り当て返送する。なお、D14からD16まではここでは未使用である。このようなデータ構成については、情報に応じて任意に設定することができる。
このように、電源供給用中継器50が異常状態を示す場合、または電源部試験命令の受信状態を示す場合のみ、拡張セレクティングを用いることで、通常のセレクティングによる個々の端末機器の制御動作の時間を短縮することができる。そして、端末機器が電源供給用中継器50である場合には、このような拡張セレクティングを用いることによって、図7に示すような、表示操作部12への表示画面上に、予備電源55bの電源電圧値などの詳細状態情報を表示することができる。
次ぎに、感知器回線L2を介する試験機能付き中継器20とAT感知器30との間の信号伝送について説明する。
図13は、感知器回線L2上の信号伝送の一例を示す波形図である。
図13において、「親」は図1における中継器20であり、「子」は図1におけるAT感知器30である。感知器回線L2ごとに一般型感知器と混在して設けられる複数のAT感知器30に個別のアドレスが付与されていて、中継器20は、そのアドレスに基づいてAT感知器30をグループ化して、15アドレス単位でAT感知器30のデータを収集するもので、起動パルス、基準パルス、コマンドCMを送出する。
起動パルスは、AT感知器30に伝送開始を認識させるためのパルスであり、中継器20はパルス幅2msのローパルスを送出する。このパルスに基づき、AT感知器30の図示しないマイコンは、スリープモードから立ち上がる。この図示しないマイコンは、火災検出動作等の必要な動作後にスリープモードに入るものであり、スリープモードからスタートして安定に動作するには所定の時間が必要となる。
基準パルスは、伝送上のパルス間隔の基本長となるパルスであり、図13に示されるように、立下りエッジ(レベルのハイからローへの変化タイミング)の間隔で、ここでは4msとなっている。
コマンドCMは、AT感知器30への制御コマンドであり、8ビット(b7〜b0)のコードを4つのパルス間隔で示し、各パルスそれぞれについて間隔を判断して信号伝送のコードに置き換える。
このように、1つの立下りエッジ間隔で2ビットのコードを示し、エッジ間隔が4msが00b、6msが01b、8msが10b、10msが11bであり、これらの組み合わせによって、アドレス1〜15のデータを収集するポーリング1と、アドレス16〜30のデータを収集するポーリング2等のコマンドCMを形成する。そして、AT感知器30はコマンドCMを解析して伝送内容を認識する。また、詳細に説明しないが、AT感知器30を指定して試験命令等の制御コマンドとしてのセレクティング、AT感知器30全てをスリープモードとするスリープ開始命令等に利用される。
スロット0〜14は、AT感知器30から中継器20へ送信するタイミングを定めるものであり、AT感知器30は、ポーリング1またはポーリング2に合わせた自己のアドレスに基づくスロット位置(図14(a)参照)を判断し、該当するスロットに正常または異常を表すコードを示すパルス(図14(b)参照)を送信する。すなわち、各AT感知器30において、試験機能の結果として機能が正常であればパルス幅2ms、異常であればパルス幅4ms、いずれか一つのパルスが返送される。
このような信号伝送を用い、中継器20は、制御コマンドCM内にポーリング1またはポーリング2の制御内容を含めて送信することで、感知器回線L2に接続された最大30個のAT感知器30の正常または異常の情報について個別に収集することができる。ここで、各スロット内のパルスの有無につき、図14(b)に示すようなパルスが返信されないときに、中継器20は、そのスロットのAT感知器30が無応答であると判断し、異常を示すパルス返送と区別して無応答と判別する。この無応答の状態は、AT感知器30の故障もあるが、感知器回線L2からの脱落(取外しを含む)の場合が多い。
なお、ここでは1本の感知器回線L2にアドレス指定できるAT感知器30は30個までとなっているが、この個数に限定する必要はなく、スロットの数やポーリング1または2の個数によって任意に設定することができる。
このようにして、試験機能付き中継器20がAT感知器30から火災信号を従来の中継器と同様にスイッチング動作によって、一般型感知器を含めて検出するものであって、そして、感知器回線L2における信号伝送によって各AT感知器30の自動試験結果および接続の有無を収集できるものであり、異常または無応答となったAT感知器30を中継器20が認識する。
したがって、中継器20が受信する感知器回線L2におけるAT感知器30の情報は、火災検出時には検出と同時にスイッチング動作によって火災信号が中継器20に認識でき、また、AT感知器30の機能異常の検出時には、火災検出時に比較して急がないので、信号伝送は安定したものでよいことになる。例えば、試験機能付き中継器20による各AT感知器30の自動試験結果および接続の有無収集動作は、試験機能付き中継器20の動作に基づき所定時間、3分毎等で定期的に行えばよい。
また、中継器20は、感知器回線L2が複数設置され、各感知器回線L2ごとにAT感知器30を含む火災感知器からの火災信号を認識するとともに、各AT感知器30の枝のアドレスも感知器回線L2ごとに認識する。なお、ここでいう一つの中継器20に複数の感知器回線L2が設けられる場合、火災受信機10とのポーリング動作に応答する端末機器としてのアドレスは感知器回線L2ごとに設定され、このことから、伝送線L1上において一つの中継器20は複数アドレスを有してそれぞれのアドレスに対して応答することとなる。