従来の映り込み防止は、プラスチックフィルムのような平滑な基材に凹凸構造を形成するために、粒子を含む透明塗料を塗布し、樹脂層に粒子による凹凸を形成することによってなされていたが、この方法では、透過画像鮮明性を低下させずに、十分な映り込み防止を実現することができなかった。
これに対して本発明のディスプレイ用フィルターは、透明基材上に、遮光性凸部を有し、前記遮光性凸部の上、及び前記遮光性凸部と前記遮光性凸部の間の非凸部領域に、樹脂層が積層された積層体で構成され、かつ前記非凸部領域に前記樹脂層の凹みを有し、前記樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲であることを特徴とする。前記遮光性凸部の上及び非凸部領域に樹脂層を積層した積層体としては、前記遮光性凸部及び非凸部領域を被覆するように透明樹脂層が積層された態様が好ましい。本発明の構成のディスプレイ用フィルターとすることによって、透過画像鮮明性が低下せずに、十分な映り込み防止が実現することを見いだした。
遮光性凸部を利用せずに、単に樹脂層に凹凸構造を形成すると、樹脂層の凸部によって透過画像が乱れ、透過画像鮮明性が低下するが、本発明のように、遮光性凸部を利用して樹脂層に凹凸構造を形成すると、樹脂層の凸部による透過画像鮮明性の低下が抑制されることを見いだした。これは、透過画像鮮明性の劣化に大きく影響する、樹脂層の凸構造の特に急峻な部分における光(ディスプレイからの発光)を遮光性凸部で遮光するために、樹脂層の凸部分での透過画像鮮明性の劣化が抑制されるためと推測される。
従って、本発明にかかる樹脂層は、樹脂層に凹凸構造を形成するための比較的サイズの大きな粒子を含有せずとも、映り込みを十分に防止することができ、同時に高い透過画像鮮明性も確保することが可能になる。
上記したように、本発明は、樹脂層に粒子を含有させなくとも、十分に映り込みを防止することができるが、映り込み防止効果をより一層高める場合は、樹脂層に粒子を含有させることができる。しかし含有させる粒子の種類によっては、樹脂層に粒子を含有させることで、透過画像鮮明性が低下することがある。従って、樹脂層に粒子を含有させて、映り込み防止効果を高める場合は、透過画像鮮明性が低下しないように、粒子の平均粒子径及び含有量を慎重に選択することが重要である。樹脂層に粒子を含有させる態様についての詳細は後述する。
本発明にかかる遮光性凸部の平面形状(上面から視た形状)は、メッシュ状もしくは複数のドット状であることが好ましい(つまり遮光性凸部としては、メッシュ状凸部もしくは複数のドット上凸部であることが好ましい。)。また遮光性凸部は導電層であることが好ましく、遮光性凸部は、メッシュ状の導電層、即ち導電性メッシュであることがさらに好ましい。
以下、本発明の好ましい態様である、遮光性凸部として導電性メッシュを用い、導電性メッシュ上に樹脂層を積層したプラズマディスプレイ用フィルターについて詳細に説明する。なおプラズマディスプレイ用フィルターに好適に用いられる導電性メッシュは、金属で構成されており、そのため遮光性を有する。
前述のように本発明のディスプレイ用フィルターは、透明基材上に、遮光性凸部を有し、前記遮光性凸部の上、及び前記遮光性凸部と前記遮光性凸部の間の非凸部領域に、樹脂層が積層された積層体で構成され、かつ前記非凸部領域に前記樹脂層の凹みを有し、前記樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲である。そして本発明のプラズマディスプレイ用フィルターの好ましい態様は、遮光性凸部として導電性メッシュを用いた態様であり(そのため遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域は、導電性メッシュの存在しない部分、つまり導電性メッシュの開口部となる。)、より詳細には、透明基材上に導電性メッシュからなる導電層を有し、該導電層上に樹脂層が積層された積層体で構成され、かつ、該導電性メッシュの存在しない部分(つまり導電性メッシュの開口部であり、非凸部領域)に該樹脂層の凹みを有し、該樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲であることを特徴とするものである。
導電性メッシュからなる導電層上に積層された樹脂層の表面構造を上記のようにすることによって、透過画像の鮮明性を劣化させずに、映り込みが防止されることを見いだしたものである。また更に、導電層上に積層される樹脂層が、ハードコート機能や反射防止機能を有する機能層とすることによって、プラズマディスプレイ用フィルターの低コスト化が図られる。
(樹脂層の凹み構造)
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターに用いられる樹脂層は、遮光性凸部として導電性メッシュを用いて、導電性メッシュと導電性メッシュの開口部に配置されることが好ましい。後述するように導電性メッシュの存在しない部分(非凸部領域)に樹脂層の凹みを有し、樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲となっていれば、本発明のプラズマディスプレイ用フィルターの樹脂層は、その樹脂の種類や該樹脂層の特性は特に限定されない。また、樹脂層としては単層であっても、2層以上の積層構成となっていてもよい。なお、樹脂層が積層構成の場合は、導電性メッシュの存在しない部分(遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域)に樹脂層の凹みを有し、樹脂層の最表面層(遮光性凸部や非凸部領域とは反対側の表面)の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲となっていればよい。
本発明にかかる樹脂層の中心線平均粗さRaは、好ましくは75〜400nmの範囲であり、より好ましくは100〜300nmの範囲であり、さらに好ましくは150〜250nmの範囲である。樹脂層の中心線平均粗さRaが50nm未満の場合は、映り込み像の輪郭が明瞭になり、映り込み像が見えやすくなり、500nmを超える場合は、透過画像が劣化する。そのため本発明のプラズマディスプレイ用フィルターでは、樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲とすることが重要である。なお前述したように、樹脂層が2層以上の積層構成となっている場合、樹脂層の最表面層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲となっていることが重要である。
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターでは、導電性メッシュの存在しない部分(非凸部領域)に樹脂層の凹みを有していることが重要である。樹脂層の凹みの構造を、図1、図2、図3に例示する。図1〜3において、透明基材1上に導電性メッシュ2が形成され、更に導電性メッシュ2上に樹脂層3が積層されている。
上述したように、導電性メッシュの存在しない部分(非凸部領域)に樹脂層の凹みを有することが重要であり、樹脂層の凹みの深さ(D)は、映り込みを有効に防止するという観点から、0.5〜5μmの範囲が好ましく、0.5〜4μmの範囲がより好ましく、特に1〜3μmの範囲が好ましい。
樹脂層の凹みの深さ(D)は、凹みの山頂4から谷底5までの垂直距離である。山頂4は、導電性メッシュ上の樹脂層(樹脂層の凸部)に位置し、樹脂層の最も高い位置である。また谷底5は、導電性メッシュが存在しない部分、即ち導電性メッシュと導電性メッシュの間(導電性メッシュの開口部)の樹脂層(樹脂層の凹み部)に位置し、樹脂層の凹みにおいて最も低い位置である。
樹脂層の凹みの深さ(D)を0.5〜5μmとすることで、映り込み像の輪郭が不明瞭になり、映り込み像を見えにくくすることができ、また透過画像の劣化を抑制できるために好ましい。
本発明は、導電性メッシュの存在しない部分(遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域)に樹脂層の凹みを有するが、この凹みの形成は、導電性メッシュの厚みやピッチを制御する方法や、樹脂層を設けるために用いる塗液の粘度を制御する方法などによって、達成することができる。詳細は後述する。
従来の映り込み防止は、プラスチックフィルムのような平滑な基材上に、平均粒子径が0.5〜10μm程度の粒子を含む透明塗料を塗布して、表面に微細な凹凸を形成することによってなされていたが、この方法では、透過画像鮮明性を低下させずに、十分な映り込み防止を実現することができなかった。
これに対して、本発明の好ましい態様は、遮光性凸部として導電性メッシュからなる導電層を有し、該導電層上に樹脂層を積層し、導電性メッシュの凹凸(導電性メッシュの開口部とメッシュ部分)を利用して樹脂層に凹み(樹脂層に凹凸構造)を形成し、さらに樹脂層の中心線平均粗さRaを50〜500nmにすることによって、樹脂層に粒子を含有させずとも、十分な映り込み防止効果が得られ、同時に高い透過画像鮮明性も確保することが可能になった。
遮光性凸部(導電性メッシュ)を利用せずに、単に樹脂層に凹凸構造を形成すると、樹脂層の凸部によって透過画像が乱れ、透過画像鮮明性が低下するが、本発明のように、遮光性凸部(導電性メッシュ)の凹凸を利用して樹脂層に凹凸構造を形成すると、樹脂層の凸部による透過画像鮮明性の低下が抑制されることを見いだした。これは、透過画像鮮明性の劣化に大きく影響する、樹脂層の凸部の特に急峻な部分における光(プラズマディスプレイからの発光)を導電性メッシュで遮光するために、樹脂層の凸部での透過画像鮮明性の劣化が抑制されると推測される。なお、プラズマディスプレイ用フィルターに用いられる導電性メッシュは、通常、金属で形成されるために、十分な遮光性を有するものである。
以下、本発明のディスプレイ用フィルターの有する樹脂層の凹凸構造の好ましい構造を説明する。
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、樹脂層は、遮光性凸部と非凸部領域で構成される凹凸構造に由来する、樹脂層の凹凸構造を有するのが好ましい。即ち、遮光性凸部としてメッシュ状凸部を用いた場合、メッシュ状凸部上に樹脂層の凸部が形成され、メッシュ状凸部で囲まれた非凸部領域に樹脂層の凹み部が形成されることが好ましい。このような樹脂層の凹凸構造についても、映り込み防止の観点から好ましい凹凸構造が存在する。
即ち、樹脂層の凹凸構造において、樹脂層の凹み部における平坦部分の割合の小さい方が、蛍光灯などの映り込みの抑制に効果的である。
上記内容について、遮光性のメッシュ状凸部として導電性メッシュを用いた態様で詳細に説明する。
遮光性凸部として導電性メッシュを用いた場合、導電性メッシュを構成する細線上に樹脂層の凸部が形成され、導電性メッシュの細線で囲まれた遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域(導電性メッシュが存在しない部分;以下、開口部という)に凹み部が形成されることが好ましく、また、樹脂層の凹み部における平坦部分の割合の小さい方が好ましい。
上記の樹脂層の凹み部における平坦部分の割合は、下記のようにして代替え的に表すことができる。即ち、透明基材の面方向における、メッシュ状凸部(導電性メッシュ)で囲まれた隣合う非凸部領域(遮光性凸部が導電性メッシュであれば、非凸部領域は開口部である。)の隣合う2つの重心(G1、G2)を通るように、透明基材を直交する方向に樹脂層の断面を視たときに、メッシュ状凸部(導電性メッシュ)上の樹脂層の頂点をCとし、前記2つの重心における一方の重心(G1)を通る垂線(透明基材に対する垂線)と樹脂層の表面との交点をAとし、前記2つの重心における他方の重心(G2)を通る垂線(透明基材に対する垂線)と樹脂層の表面との交点をBとする。三角形ABCの面積をα、三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積をβとする。この時に、三角形ABCの面積αに対する、三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積βの割合は、樹脂層占有率R(R=(β/α)×100)と言う。樹脂層占有率(R)について図面を用いて説明する。
図5は、遮光性凸部として導電性メッシュを用いた本発明のディスプレイ用フィルターの断面図であり、隣合う開口部の隣合う2つの重心(G1、G2)を通るように、透明基材を直交する方向に樹脂層の断面を視た図である。図5において、樹脂層占有率(R)とは、樹脂層の凸部の頂点Cと、導電性メッシュのある1つの開口部の重心G1を通る垂線7aと樹脂層表面との交点Aと、前記開口部に隣接する開口部の重心G2を通る垂線7bと樹脂層表面との交点Bとを結んだ三角形ABCの面積(α;ドットで表示)に対して、その三角形ABCの中に存在する樹脂層の凹凸構造の面積(β;斜線で表示)の割合を表したものである。
ここで、導電性メッシュの開口部の重心とは、図4に示すように導電性メッシュを透明基材の面方向に平面視した時の、導電性メッシュの開口部8の重心6である。また、交点A及びBは、図5に示すように、2つの重心を通り、透明基材を直行する方向に樹脂層の断面を視たときに、開口部の重心6を通る垂線7a、7bと樹脂層3の表面との交点である。
樹脂層占有率(R)は、上記の三角形ABCの面積(α)と上記の三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積(β)から以下の式で表される。
(R)=(β/α)×100
樹脂層占有率(R)を算出するための、樹脂層凹凸構造の面積である三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積(β)、及び三角形ABCの面積(α)は、レーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス社製のVK−9700)で測定、算出することができる。サンプルをレーザー顕微鏡で観察・測定することによって得られた樹脂層の三次元画像データを、更に垂直方向に二次元的に解析することによって二次元プロファイルを求め、この二次元プロファイルから、三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積(β)と、三角形ABCの面積(α)を算出することができる。このとき、予め、サンプルの樹脂層表面に、スパッタ等で白金やパラジウム等の極薄膜(厚みが50〜100nm程度の均一膜)を形成することによって、樹脂層より下の導電性メッシュや基材の影響を受けない画像データが得られる。具体的な測定方法は、実施例に示す。
本発明において、上記の樹脂層占有率(R)は、20〜100%の範囲が好ましく、20〜80%の範囲がより好ましく、特に30〜70%の範囲が好ましい。上記の樹脂層占有率(R)を20〜100%の範囲にすることによって、透過画像鮮明性を低下させずに蛍光灯などの映り込みを効果的に防止できる。
樹脂層に、粒子を比較的多量(例えば、樹脂層の全成分に対して6重量%より大)に含有させた場合、粒子による樹脂層の凹凸構造により、上記の樹脂層占有率(R)が100%を越えることがあるが、100%を越えると透過画像鮮明性が低下する。
上述したように、樹脂層占有率(R)は、樹脂層の凹凸構造の凹み部における平坦部分の割合を示すものであり、この数値が大きいほど平坦部分の割合が小さい樹脂層凹凸構造を示し、この数値が小さいほど平坦部分の割合が大きい樹脂層凹凸構造を示している。
図5aと図5bを比較すると、図5aは図5bに比べて、樹脂層3の凹み部における平坦部分の割合が小さい構造となっている。図5aと図5bにおける樹脂層占有率(R)は、図面から明らかなように、図5aの方が大きくなっている。実際に図5aの方が映り込み防止に効果があることを確認している。
樹脂層の凹凸構造において、凹み部における平坦部分の割合が大きい場合は表面における正反射率が上がるために映り込み防止性が悪化し、逆に平坦部分の割合が小さい場合は正反射率が低くなり映り込み防止性が良化すると考えられる。
前述したように、本発明は、樹脂層に粒子を含有させなくとも、十分に映り込みを防止することができるが、映り込み防止効果をより一層高める場合は、樹脂層に粒子を含有させることができる。しかし、樹脂層に粒子を含有させることによって、透過画像鮮明性が低下することがある。従って、樹脂層に粒子を含有させて、映り込み防止効果を高める場合は、透過画像鮮明性が低下しないように、粒子の平均粒子径及び含有量を慎重に選択する必要がある。
なお樹脂層に粒子を含有させる場合であっても、導電性メッシュなどの遮光性凸部上及び開口部等の非凸部領域に樹脂層を積層することによって得られた樹脂層の中心線平均粗さRaの範囲、即ち、Raが50〜500nmの範囲内となるように、粒子の平均粒子径及び含有量を調整する必要がある。
樹脂層に粒子を含有させる場合は、平均粒子径が0.5〜5μmの粒子を用いるのが好ましく、特に平均粒子径が1〜3μmの粒子を用いるのが好ましい。
ここで、粒子の平均粒子径とは、例えば電気抵抗試験方法(コールターカウンター法)にて測定した球相当値で表した粒径の平均値とする。
また、樹脂層に粒子を含有させる場合、粒子の平均粒子径は、0.5〜5μmの範囲内で、かつ導電性メッシュなど遮光性凸部の厚みと同程度以下の平均粒子径を有する粒子を用いることが好ましく、特に導電性メッシュなど遮光性凸部の厚みに対して、90%以下の平均粒子径を有する粒子を用いることがより好ましく、更に、導電性メッシュなど遮光性凸部の厚みに対して、80%以下の平均粒子径を有する粒子を用いることが好ましい。なお、この際に用いる粒子の平均粒子径は0.5μm以上であれば、導電性メッシュなど遮光性凸部の厚みに対する粒径の割合に下限は特にない。
樹脂層に粒子を含有させる場合の粒子の含有量は、樹脂層の全成分100重量%に対して6重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、更に3重量%以下が好ましく、特に2.5重量以下がより好ましい。樹脂層に粒子を含有させる場合の下限の含有量は、樹脂層の全成分100重量%に対して0.1重量%程度である。
樹脂層に含有させる粒子としては、無機系、有機系のものが挙げられるが、有機系材料により形成されるものが好ましい。また、透明性に優れるものがよい。粒子の具体例としては、無機系であればシリカビーズ、有機系であればプラスチックビーズが挙げられる。さらに、そのプラスチックビーズの中でも、好ましくは透明性が優れているものが挙げられ、具体例としては、アクリル系、スチレン系、メラミン系、等が挙げられる。本発明では、透明性に優れるアクリル系を用いるのが好ましい。
また、その形状は球状(真球状、楕円状、など)のものが好ましく、より好ましくは真球状のものである。
本発明にかかる樹脂層が、ハードコート層を構成要素として含む場合は、ハードコート層に、上記した平均粒子径(0.5〜5μm)の粒子を上記の含有量(樹脂層の全成分100重量%に対して6重量%以下)で含有させることができる。
プラズマディスプレイパネルにおいて映り込み像は、プラズマディスプレイ用フィルターからの反射光とプラズマディスプレイパネルからの反射光から成る。プラズマディスプレイパネルからの反射光は、プラズマディスプレイ用フィルターで吸収されるため、プラズマディスプレイ用フィルターの透過率を下げることにより映り込み性能を向上させることができる。しかし、プラズマディスプレイ用フィルターの透過率を下げ過ぎた場合には、透過画像の輝度も低下して画像が暗くなることとなり、このような場合に輝度を維持するためにはプラズマディスプレイパネルに映す画像を明るくする必要があり、結果的に消費電力が多くなるので好ましい態様とは言えない。よって本発明のプラズマディスプレイ用フィルターの全光線透過率は好ましくは20〜60%、より好ましくは25〜50%、更に好ましくは30〜45%であり、このような透過率とすることで、映り込みの低減と透過像輝度のバランスを好適にすることができる。
(導電層)
プラズマディスプレイパネルはその構造や動作原理上パネルから強度の漏洩電磁波が発生する。近年、電子機器からの漏洩電磁波が人体や他の機器に与える影響について取り沙汰されており、例えば日本では、VCCI(voluntary control council for interference by processing equipment electronic office machine)による基準値内におさえることが求められている。具体的には、VCCIにおいては、業務用途の規制値を示すclassAでは放射電界強度50dBμV/m未満であり、民生用途の規制値を示すclassBでは40dBμV/m未満であるが、プラズマディスプレイパネルの放射電界強度は20〜90MHz帯域内で50dBμV/m(対角40インチ型の場合)を越えるため、このままの状態では家庭用途には使用できない。このため、プラズマディスプレイパネルには電磁波シールド層(導電層)を配置したプラズマディスプレイ用フィルターが必須となる。
電磁波シールド層が電磁波シールド性能を発揮するためには導電性が必要であり、プラズマディスプレイパネルの電磁波シールドに必要な導電性は、面抵抗で3Ω/□以下、好ましくは1Ω/□以下、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。よって導電層を有する本発明のディスプレイ用フィルターにおいては、該導電層の導電性が、面抵抗で3Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは1Ω/□以下、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。また、面抵抗は低いほど電磁波シールド性が向上するために好ましいが、現実的な下限は0.01Ω/□程度と考えられる。
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターにおいては、導電層として導電性メッシュが好ましく用いられる。導電性メッシュを用いることで、導電性メッシュの配置される凸部分と導電性メッシュの存在しない凹部分(導電性メッシュの開口部であり、遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域を示す。)を利用することによって、導電性メッシュの存在しない部分に樹脂層の凹みを形成することが可能となる。
本発明にかかる導電性メッシュからなる導電層は、電磁波を遮蔽するという機能に加えて、上記したように、樹脂層に凹み(樹脂層の凹凸構造)を形成するための役目を有する。
映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成するためには、導電性メッシュの厚みはある程度大きくする必要があるが、逆に厚みが大きくなりすぎると、透過画像鮮明性が低下する傾向にあり、また、樹脂層の塗工性が低下し、塗布筋やムラが発生する場合がある。
上記の観点から、導電性メッシュの厚みは、0.5〜8μmの範囲が好ましく、1〜7μmの範囲がより好ましく、特に1〜5μmの範囲が好ましい。導電性メッシュの厚さが0.5μm未満の場合は、樹脂層の凹みの深さが十分に得られず、映り込みの輪郭が明瞭になり、映り込み像が見えやすくなる傾向があり、また、必要な電磁波シールド性が得られない場合がある。また、導電性メッシュの厚さが8μmを超える場合は、樹脂層の凹みの深さが大きくなり過ぎて、透過画像が劣化する傾向があり、さらには、コストアップにつながるために好ましくない。
また、樹脂層の塗工性の観点からは、導電性メッシュの厚みは小さい方が好ましい。従って、導電性メッシュの厚みを8μm以下にすることによって、塗布スジや塗布ムラ等の生じない、良好な塗工面が得られる。導電性メッシュの厚みが8μmを越えると、樹脂層の塗工性が低下するので、映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に安定的に形成することが難しくなる。
また、遮光性凸部として導電性メッシュとした場合は、導電性メッシュのピッチについても、映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成するという観点から、好ましいピッチの範囲が存在する。ここで、導電性メッシュのピッチとは、導電性メッシュが存在しない部分(導電性メッシュの細線で囲まれた開口部分)の間隔であり、具体的には、1つの開口部の重心と、この開口部と1辺を共有する隣接する開口部の重心との、重心間の距離である。
本発明において、樹脂層に形成された凹みのピッチは、導電性メッシュのピッチに大きく依存する。従って、導電性メッシュのピッチを制御することによって、映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成することができる。ここで凹みのピッチとは、隣接する凹みの谷底間の距離であり、詳しくは、上述した図1〜3において、ある1つの凹みの谷底5と、該凹みと隣接する凹みの谷底5の距離である。
上記の観点から、導電性メッシュのピッチは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜450nmの範囲がより好ましく、100〜350μmの範囲が更に好ましい。
また、樹脂層の中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲となるように、樹脂層に凹みを形成するに際し、導電性メッシュの厚みとピッチとの間には好ましい関係が存在する。即ち、導電性メッシュの厚みが0.5μm以上4μm未満の場合は、ピッチは50〜300μmの範囲が好ましく、導電性メッシュの厚みが4μm以上6μm未満の場合は、ピッチは100〜400μmの範囲が好ましく、導電性メッシュの厚みが6μm以上8μm以下の場合は、ピッチは150〜500μmの範囲が好ましい。
また、導電性メッシュのピッチと樹脂層の凹み深さDの関係において、映り込み防止の観点から両者の間には好ましい関係が存在する。導電性メッシュのピッチが50μm以上200μm以下の場合は、凹み深さDは0.5〜4μmの範囲が好ましく、さらに0.5〜3μmの範囲が好ましい。また導電性メッシュのピッチが200μmより大きく500μm以下の場合は、凹み深さDは0.7〜5μmの範囲が好ましく、さらに1〜4μmの範囲が好ましい。
本発明にかかる導電性メッシュの線幅は、3〜30μmの範囲が好ましく、5〜20μmの範囲がより好ましい。導電性メッシュの線幅が、3μmより小さくなると電磁波シールド性が低下する傾向にあり、一方、線幅が30μmより大きくなるとプラズマディスプレイ用フィルターの透過率が低下する傾向にある。上記の電磁波シールド性と透過率は、導電性メッシュのピッチも影響するので、線幅とピッチを上記した範囲内で調整するのが好ましい。
プラズマディスプレイ用フィルターの透過率には、導電性メッシュの開口率が大きく影響する。導電性メッシュの開口率は、メッシュ部(細線部)の平面視上の総面積と開口部の平面視上の総面積の和に対する開口部の総面積の比率であり、導電性メッシュの開口率は、線幅とピッチによって決定される。本発明において、導電性メッシュの開口率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、特に80%以上が好ましい。開口率の上限は95%以下が好ましく、93%以下がより好ましい。
導電性メッシュの開口率は、例えば、以下のようにして測定することができる。
(株)キーエンス製 デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率200倍で表面観察を行い、その輝度抽出機能(ヒストグラム抽出、輝度レンジ設定0−170)を用いて、導電性メッシュが存在しない部分(開口部)と導電性メッシュが存在する部分とに2値化し、次いで、面積計測機能を用いて、全体の面積、および開口部の面積を算出し、開口部面積を全体の面積で除算することによって開口率を求める。
具体的には、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の20箇所について開口率を算出し、その平均値とすることが好ましい。
導電性メッシュのメッシュパターンの形状(開口部の形状)は、例えば、正方形、長方形、菱形等の4角形からなる格子状メッシュパターン、三角形、5角形、6角形、8角形、12角形のような多角形からなるメッシュパターン、円形、楕円形からなるメッシュパターン、前記の複合形状からなるメッシュパターン、及びランダムメッシュパターンが挙げられる。上記の中でも、4角形からなる格子状メッシュパターン、6角形からなるメッシュパターンが好ましく、更に規則的なメッシュパターンが好ましく用いられる。
メッシュパターンが、例えば格子状メッシュパターンの場合、縦横に並んで配置されたディスプレイの画素との相互作用でモワレを起こさないように、画素が並んだ線に対してメッシュパターンの線がある程度の角度(バイアス角)を有していることが好ましい。モワレを起こさないバイアス角は画素のピッチや、メッシュパターンのピッチ・線幅により変化するので、これらの条件に応じて適宜設定される。
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターにおいて、導電性メッシュからなる導電層は、透明基材上に形成される。該透明基材としては、溶液製膜法や溶融製膜法により得られる各種フィルムが好ましく用いられるが、透明基材の詳細については後述する。
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターにおいて、導電性メッシュ層を透明基材などの上に形成する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、1)透明基材上に導電性インキをパターン状に印刷する方法。2)メッキの触媒核を含むインキでパターン印刷した後にメッキを施す方法、3)導電性繊維を用いる方法、4)基材上に金属箔を接着剤で貼り合わせた後にパターニングする方法、5)基材上に気相製膜法あるいはメッキ法により金属薄膜を形成した後にパターニングする方法、6)感光性銀塩を用いる方法、及び7)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記の導電性メッシュの製造方法について詳細に説明する。
1)透明基材上に導電性インキをパターン状に印刷する方法は、透明基材上に導電性インキを、スクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷法によりパターン状に印刷する方法である。
2)メッキの触媒核を含むインキでパターン印刷した後にメッキを施す方法は、例えば、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インキを用いてパターン状に印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法である。
3)導電性繊維を用いる方法は、導電性繊維からなる編布を接着剤または粘着材を介して貼り合わせる方法である。
4)透明基材上に金属箔を接着剤で貼り合わせた後にパターニングする方法は、透明基材上に金属箔(銅、アルミニウム、又はニッケル等)を接着剤または粘着材を介して貼り合わせた後、この金属箔をフォトリソグラフィー法あるいはスクリーン印刷法などを利用してレジストパターンを作製した後、金属箔をエッチングする方法である。上記のレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法が好ましく、フォトリソグラフィー法は、金属箔上に感光性レジストを塗工又は感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してエッチングレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電性メッシュを形成する方法である。
5)透明基材上に気相製膜法あるいはメッキ法により金属薄膜を形成した後にパターニングする方法は、透明基材上に金属薄膜(銅、アルミニウム、銀、金、パラジウム、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などからなる金属)を、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の気相製膜法、あるいはメッキ法によって形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフィー法あるいはスクリーン印刷法などを利用してレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。上記のレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法が好ましく、フォトリソグラフィー法は、金属薄膜上に感光性レジストを塗工又は感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してエッチングレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電性メッシュを形成する方法である。この方法では、接着剤や粘着剤を介さずに、透明基材上に金属薄膜を形成することが好ましい。
6)感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層を透明基材上にコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法がある。形成された銀メッシュはさらに銅、ニッケルなどの金属でメッキするのが好ましい。この方法は、WO2004/7810号公報、特開2004−221564号公報、特開2006−12935号公報などに記載されており、参照することができる。
7)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記5)と同様の方法で透明基材上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で、金属薄膜のメッシュパターンを作製する方法である。
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット) などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
上記した導電性メッシュの製造方法の中でも、厚みが比較的小さい導電性メッシュ(例えば厚みが8μm以下の導電性メッシュ)を容易に製造することができ、かつ高い電磁波シールド性を確保できるという観点から、上記の2)、5)、6)及び7)の製造方法が好ましく用いられる。
また、樹脂層の塗工性、及び樹脂層と導電層との密着性の観点からは、上記の2)、5)及び7)の製造方法で製造された導電性メッシュが好ましく用いられる。特に、上記5)の製造方法は、樹脂層の塗工性が良好であり、かつ導電性メッシュの製造コストが低いことから、特に好ましく用いられる。
上記5)の製造方法について、更に詳細に説明する。
透明基材上に金属薄膜を形成する方法としては、気相製膜法が好ましい。上記の気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられるが、これらの中でも、スパッタリング及び真空蒸着が好ましい。金属薄膜を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタンなどの金属の内、1種または2種以上を組合せた合金あるいは多層のものを使用することができる。これらの中でも、良好な電磁波シールド性が得られ、メッシュパターン加工が容易で、かつ低価格であるなどの点から、銅が好ましく用いられる。
また、金属薄膜の金属として銅を用いる場合は、基材と銅薄膜との間に、5〜100nmの厚みのニッケル薄膜をさらに用いるのが好ましい。これによって、基材と銅薄膜の接着性が向上する。なお、このような態様における導電性メッシュの厚みとは、ニッケル薄膜層及び銅薄膜層の和の厚みを意味するものとする。
金属薄膜上にレジストパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィーが好ましく用いられる。かかるフォトリソグラフィー法は、金属薄膜上に感光性レジスト層を積層し、該レジスト層をメッシュパターン状に露光し、現像してレジストパターンを形成し、次いで、金属薄膜をエッチングしてメッシュパターン化し、メッシュ上のレジスト層を剥離除去する方法である。
感光性レジスト層としては、露光部分が硬化するネガレジスト、あるいは逆に露光部分が現像によって溶解するポジレジストを用いることができる。感光性レジスト層は金属薄膜上に直接に塗工して積層してもよいし、あるいはフォトレジストからなるフィルムを貼り合わせてもよい。フォトレジスト層を露光する方法としては、フォトマスクを介して紫外線等で露光する方法、もしくはレーザーを用いて直接に走査露光する方法を用いることができる。
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、レジストパターンで保護された金属部分以外の金属をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
本発明にかかる導電性メッシュは、黒化処理が施されていることが好ましい。黒化処理を施すことにより、導電性メッシュの金属光沢による視聴者側からの反射やディスプレイ側からの反射も低減することができ、さらに画像視認性の低下を低減することができ、コントラスト・視認性に優れたプラズマディスプレイ用フィルターが得られる。
導電性メッシュはディスプレイに設置したときに透光部となる部分以外、つまりは表示部ではない部分や額縁印刷に隠れた部分は、必ずしもメッシュパターンを有している必要がなく、これら部分はパターニングされていない、例えば金属箔ベタであっても良い。加えて、パターニングされていないベタ部分が、黒色であると、そのままディスプレイ用フィルターの額縁印刷として使えて好適である。
(樹脂層の積層)
本発明のディスプレイ用フィルターにおいては、遮光性凸部の上及び非凸部領域に、樹脂層が積層された積層体で構成されるが、特に本発明においては、導電性メッシュからなる導電層上に樹脂層が積層されることが好ましく、導電層上に直接に樹脂層が積層されることが好ましい。樹脂層の積層方法としては、樹脂層となる塗液(以降、単に塗液と言う)を塗工することが好ましい。
塗工に際し、塗液の粘度(23℃)を1〜50mPa・sの範囲にすることが好ましい。塗液の粘度を上記の範囲に制御することによって、映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成することができる。樹脂層に凹みを形成する上で、塗液の粘度を50mPa・s以下にすることは有効である。また、塗液の粘度が50mPa・sを越えると、塗工性が低下し、塗工筋や塗工ムラが発生する場合がある。
塗液の粘度が1mPa・sより低くなると、逆に塗工面が平滑になりやすく、映り込み防止に有効な樹脂層の凹みを形成することができなくなる場合がある。
好ましい塗液の粘度は、1〜40mPaの範囲であり、より好ましくは1〜30mPa・sの範囲であり、特に1〜20mPa・sの範囲が好ましい。
また、塗液中の固形分濃度、塗液のウェット塗工量についても、以下の範囲に調整することが好ましい。
塗液中における固形分濃度は、10〜80重量%の範囲が好ましく、20〜70重量%の範囲がより好ましく、特に30〜70重量%の範囲が好ましい。ここで、塗液中の固形分としては、樹脂成分と、必要に応じてその他の固形分(例えば、重合開始剤、塗布性改良剤等)を含む。樹脂成分としては、ポリマー、モノマー、オリゴマーを含み、塗液中の全固形分に対して樹脂成分を50重量%以上含有することが好ましく、60重量%以上含有することがより好ましい。上限は100重量%である。
塗液のウェット塗工量は、1〜50g/m2の範囲が好ましく、3〜40g/m2の範囲がより好ましく、特に5〜30g/m2の範囲が好ましい。
樹脂層用塗液の塗工方法としては、各種の塗工方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法などを用いることができる。これらの中でも、グラビアコート法、ダイコート法が好ましく用いられる。
本発明のディスプレイ用フィルターにおいては、メッシュ状凸部や複数のドット状凸部などの遮光性凸部の高さに応じて、樹脂層の乾燥状態での体積塗工量を制御することが好ましく、特に本発明において、導電性メッシュの厚みに応じて、樹脂層の乾燥状態での体積塗工量を制御することが好ましい。これによって、導電性メッシュの存在しない部分(導電性メッシュの開口部)に、映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成することができる。
導電性メッシュの厚みを(A)μmとすると、導電性メッシュの開口部のみに、導電性メッシュの厚みと同じ高さまで樹脂層を均一に埋めた場合の樹脂層の理論体積塗工量(B)cm3/m2は、以下の式で表される。但し、下記式において、Cは導電性メッシュの開口率を表す。尚、m2=1012μm2、μm3=10−12cm3、である。
B=(A×1012)×C×10−12=A×C
導電性メッシュの厚みに応じた樹脂層の体積塗工量の好ましい範囲は、上記の理論体積塗工量(B)を基準にして求めることができる。
即ち、導電性メッシュの厚みが4μm未満の場合の樹脂層の体積塗工量は、理論体積塗工量(B)100%に対して、30〜220%の範囲が好ましく、40〜200%の範囲が好ましく、特に50〜180%の範囲が好ましい。導電性メッシュの厚みが4μm未満の場合、樹脂層の体積塗工量が、理論体積塗工量(B)100%に対して、30%より小さくなると塗工性が低下し、また、220%より大きくなると映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成することが難しくなる。
導電性メッシュの厚みが4μm以上8μm以下の場合の樹脂層の体積塗工量は、理論体積塗工量(B)100%に対して、40〜250%の範囲が好ましく、50〜220%の範囲が好ましく、特に55〜200%の範囲が好ましい。導電性メッシュの厚みが4μm以上8μm以下の場合、樹脂層の体積塗工量が理論体積塗工量(B)100%に対して、40%より小さくなると塗工性が低下し、また、250%より大きくなると映り込み防止に有効な凹みを樹脂層に形成することが難しくなる。
上記の樹脂層の体積塗工量は、乾燥後の体積塗工量であるが、樹脂層がハードコート層の場合は、硬化後の体積塗工量である。
本発明において、樹脂層はハードコート層を含むことが好ましい。ハードコート層は、プラズマディスプレイ用フィルターに傷等が発生することを防止する働きがあり、その意味において、硬度が十分に高いことが好ましい。
高い硬度を得るためには、ハードコート層の樹脂成分として、多官能重合性モノマーを用いることが好ましく、これによって形成されたハードコート層の硬化後の比重は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、更に1.4以上が好ましい。ハードコート層の硬化後の比重が高くなるほど、硬度が高くなる傾向にあるので、ハードコート層の硬化後の比重は高い方が好ましい。ハードコート層の比重の上限は1.7程度である。
上記した樹脂層の体積塗工量に上記比重を掛けると、重量塗工量となる。樹脂層の重量塗工量は、塗工前後の単位面積当たりのサンプルの重量を測定することによって簡単に求めることができるために、製造工程を制御、管理する上で好ましい。
例えば、導電性メッシュの厚み(A)が5μm、導電性メッシュの開口率(C)が85%、ハードコート層の硬化後の比重が1.4とすると、樹脂層の理論体積塗工量(B)は、
B=A×C=5×0.85=4.25cm3/m2、となる。
上記したように、導電性メッシュの厚みが4μm以上8μm以下の場合の樹脂層の体積塗工量は、理論体積塗工量(B)に対して40〜250%の範囲が好ましいので、導電性メッシュの厚みが5μmの場合の樹脂層の体積塗工量は、1.7〜10.6cm3/m2、が好ましい範囲となる。
上記の体積塗工量にハードコート層の比重1.4を掛けると、厚みが5μmの導電性メッシュの場合の樹脂層の重量塗工量の好ましい範囲は、2.4〜14.9g/m2となる。より好ましい範囲(理論体積塗工量に対して50〜220%の範囲)の重量塗工量は、3.0〜13.1g/m2となり、特に好ましい範囲(理論体積塗工量に対して55〜200%の範囲)の重量塗工量は、3.3〜11.9g/m2となる。
本発明において、導電性メッシュの厚みは8μm以下が好ましいことは、前述したとおりである。導電性メッシュの厚みが8μmより大きくなると、実際の生産工程において、導電性メッシュ上に樹脂層を塗工するときの塗工性が大きく低下し、樹脂層の塗工面に筋やムラが発生する原因となる。特に樹脂層に凹みを形成するために、樹脂層の乾燥塗工量を比較的小さくすると、上記した塗工性の低下が顕著となる。樹脂層に塗工筋やムラが発生すると、プラズマディスプレイ用フィルターとしては致命的である。
導電性メッシュの厚みが8μmより大きい場合、樹脂層の良好な塗工性を確保するためには、樹脂層の重量塗工量(乾燥後)は、17g/m2以上、更には20g/m2以上必要であり、塗工後の乾燥時間や硬化時間の増大により生産性が大幅に低下する。更に、樹脂層にハードコート層を含む場合、上記のように重量塗工量(ハードコート層の場合は硬化後の重量塗工量)が大きくなると、硬化時の重合収縮によりプラズマディスプレイ用フィルターにカールが発生するという問題、及びハードコート層にクラックが発生するという問題が起こる。
よって本発明において、樹脂層の重量塗工量は、16g/m2以下が好ましく、14g/m2以下が好ましく、更に10g/m2以下が好ましく、特に9g/m2以下が好ましい。樹脂層の重量塗工量の下限は、樹脂層の硬度を確保するという観点から、1g/m2以上が好ましく、1.5g/m2以上が好ましい。なお、樹脂層が積層構成の場合は、樹脂層の最も遮光性凸部側の1層の重量塗工量が、上記範囲(1〜16g/m2)であることが好ましい。
従って、本発明において、ハードコート層の重量塗工量は、16g/m2以下が好ましく、14g/m2以下が好ましく、更に10g/m2以下が好ましく、特に9g/m2以下が好ましい。ハードコート層の重量塗工量の下限は、ハードコート層の硬度を確保するという観点から、1g/m2以上が好ましく、1.5g/m2以上が好ましい。
また、樹脂層としてハードコート層を用いる場合、樹脂層の中心線平均粗さRaが500nmより大きくなると、ハードコート層の耐擦傷性が低下する場合がある。
(樹脂層の構成)
本発明の樹脂層は、プラズマディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイに装着したときに、視聴者側(観賞側)の最表面となるように配置することが好ましい。
また本発明の樹脂層は、透明樹脂層であることが好ましい。ここで透明樹脂層とは、通常のディスプレイ用フィルターに使用されるハードコート層や反射防止層、その他の機能層(近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能、およびNeカット機能からなる群より選ばれた少なくとも1つの機能を有する層)などに要求される程度の透明性があれば十分である。より具体的には、樹脂層を有するディスプレイ用フィルターについて、可視光波長領域の視感透過率が20%以上100%以下であれば、樹脂層は透明樹脂層であることを意味する。
本発明にかかる樹脂層は、単層であっても、2層以上の積層構成であってもよい。樹脂層が単層の場合は、ハードコート層であることが好ましい。樹脂層が2層以上の積層構成の場合は、ハードコート層と反射防止層の積層構成であることが好ましい。反射防止層は、低屈折率層のみであってもよいし、高屈折率層と低屈折率層の積層構成であってもよい。ハードコート層と反射防止層の積層構成の場合は、反射防止層が視聴者側の最表面となることが好ましい。
上記積層構成の場合は、ハードコート層の塗工によって、ハードコート層に凹みを形成し、ハードコート層の中心線平均粗さRaを50〜500nmに制御することが重要である。ハードコート層上に積層される反射防止層は、極薄膜であるために、通常、ハードコート層の表面形状を追従する。
以下に、ハードコート層、反射防止層について詳細に説明する。
(ハードコート層)
ハードコート層は、傷防止のために設けられる層である。ハードコート層は硬度が高いことが好ましく、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
また、耐擦傷性を簡易的に評価するために、スチールウールによる耐擦傷性試験を用いることができる。この試験方法は、ハードコート層表面を、#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を次の5段階で評価したものである。
5級:傷が全く付かない。
4級:傷が1本以上5本以下。
3級:傷が6本以上10本以下。
2級:傷が11本以上。
1級:全面に無数の傷。
上記の試験方法において、本発明のハードコート層は、3級以上であることが好ましく、さらに好ましくは4級以上である。
本発明におけるハードコート層成分としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、性能、コスト、生産性などのバランスを考慮するとアクリレート系が好ましく適用される。
アクリレート系ハードコート膜は多官能アクリレートを主成分とする硬化組成物からなるものである。多官能アクリレートは、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーであって、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・又は・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。)を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーの使用割合は、ハードコート層構成成分総量100重量%に対して50〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。
上記の化合物以外にハードコート層の剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたりする目的で1〜2官能のアクリレートを併用するのが好ましい。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。すなわち、
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など
を用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量100重量%に対して10〜40重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
本発明において、上記のハードコート組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線等を照射する方法や高温加熱法等を用いることができ、これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層構成成分総量100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また200℃以上の高温で熱硬化させる場合には熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明で用いられるハードコート層形成組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層構成成分総量100重量%に対して、0.005〜0.05重量%が好ましい。
本発明で用いられるハードコート層形成組成物は、シリコーン系レベリング剤を含有することが好ましい。これによって、ハードコート層の凹みを安定的に形成しやすくなる。シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加されたものが好ましく、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば、東レダウコーニング(株)社製のSH190)が挙げられる。シリコーン系レベリング剤の含有量は、ハードコート層構成成分総量100重量%に対して、0.01〜5重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
また、本発明のプラズマディスプレイ用フィルターの樹脂層を、ハードコート層上に更に積層膜を設けた積層構成とする場合には、ハードコート層の上に形成する樹脂層の塗布性、接着性を阻害しない必要があり、その場合にはハードコート層にアクリル系レベリング剤を用いるのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製」などを用いるのが好ましい。レベリング剤の添加量はハードコート層構成成分総量100重量%に対して、0.01〜5重量%含有させるのが好ましい。このようにハードコート層にレベリング剤を添加することで、例えば樹脂層としてハードコート層と反射防止層の積層膜を用いる場合に、ハードコート層上に形成する反射防止層の塗布姓、接着性が向上することとなる。
本発明で必要に応じて用いられる活性線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯または炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200℃以上に加温された空気による熱が好ましく、更に好ましくは200℃以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
ハードコート層の硬化方法としては、ハードコート層の高い高度を付与するという観点、生産性の観点から、活性線を照射する方法が好ましく、特に紫外線を照射する方法が好ましい。従って、本発明のハードコート層は、紫外線硬化型のハードコート層が好ましい。
また、ハードコート層は、前述したように粒子を含有することができる。詳細は前述したとおりである。
(反射防止層)
本発明における反射防止層は、反射防止膜を有し、具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものなどがあるが、性能とコストのバランスのとれた構成としては、最表層から低屈折率層と高屈折率層を積層した構成が好ましいが、本発明では、反射防止層が積層構成ではなく低屈折率層のみの構成であっても、低屈折率層と高屈折率層の両方が積層された構成であってもよい。この反射防止層は通常ハードコート層の上に積層される。
反射防止層の形成方法は特に限定されないが、コストと性能のバランスを考慮すると、ウエットコーティングにより塗料を塗布する方法が好ましい。塗料の塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを好ましく用いることができるが、塗布厚みの均一性の点からマイクログラビアコーティングが好適に用いられる。次いで塗布後に加熱、乾燥および熱または紫外線等の活性線で硬化させることにより各々の被膜を形成する。
本発明の反射防止層は、例えば樹脂層としてハードコート層と反射防止層からなる積層体を用いた場合には、プラズマディスプレイ用フィルターの最表面に設置される。そのため、反射防止層の表面に付着した粉塵などを布で拭き取ったりした際に傷がつくと困るため、上記したスチールウールによる耐擦傷性が3級以上であることが好ましい。さらに好ましくは4級以上である。
本発明における反射防止層は反射防止性能を有していれば特に限定されるものではないが、以下に特に好ましい反射防止層の態様、特に好ましい高屈折率層の態様、特に好ましい低屈折率層の態様を示す。
本発明における特に好ましい反射防止層は、波長400〜700nmにおける5°の絶対反射スペクトルにおいて、(1)最低反射率が0.6%以下、(2)最高反射率が2.5%以下、および(3)最高反射率と最低反射率の差が2.5%未満、の3条件を満たす。最低反射率が0.6%を超えると反射防止機能が不十分となり好ましくない。また、最高反射率が2.5%を越えると、450nm近辺または700nm近辺の反射率が高くなり、反射光の色調が青みまたは赤みを帯びるため好ましくない。より好ましくは、最低反射率としては、0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下であること、最高反射率としては2.0%以下であること、最高反射率と最低反射率との差が2.0%未満、さらには1.5%未満であることをすべて満たすことで、よりフラットな反射スペクトルとなり、色目もニュートラルになることから好ましい。
特に好ましい反射防止層において、波長400〜700nmにおける絶対反射スペクトルの最低反射率および最高反射率およびその反射率差を前記の範囲とするためには、低屈折率層および高屈折率層の屈折率を以下のように調整する。
低屈折率層の屈折率(nL)は、1.23〜1.42が好ましく、更に好ましくは1.34〜1.38である。さらには、高屈折率層の屈折率(nH)は1.55〜1.80であることが好ましく、更に好ましくは1.60〜1.75である。また、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。
また、ハードコート層の屈折率も調整することが好ましい。ハードコート層の屈折率(nG)は、1.45〜1.55が好ましい。ここで、低屈折率層の屈折率(nL)、および高屈折率層の屈折率(nH)は、下記式(1)および式(2)を満足することが最低反射率をより低くできるので好ましい。
・(nH)={(nL)×(nG)}1/2 ± 0.02 (1)
・(nL)={(nH)/(nG)}1/2 ± 0.02 (2)
反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得るためには、前記した範囲にある高屈折率層の屈折率(nH)と高屈折率層の厚さ(dH)との積(光学厚みに相当する)が、反射を防止したい可視光の波長(λ)の1/4の1.0〜1.7倍となるような厚さ(dH)にすることが好ましく、さらには1.3〜1.6倍が好ましい。1.0倍を下回ると最高反射率と最低反射率との差も2.5%を越えるので好ましくない。一方、1.7倍を越えると最低反射率が0.6%よりも高くなり、反射防止性能が不十分となるので好ましくない。ここで、反射を防止したい可視光の波長(λ)は、可視光域にあれば任意に選ばれるが、通常は450〜650nmの範囲にあることが好ましい。
上述した好ましい高屈折率層の屈折率(nH)の範囲や、反射を防止したい波長(λ)を考慮すると、反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得ることためには、高屈折率層の厚さ(dH)は100〜300nmの範囲であり、好ましくは100〜200nmの範囲である。
一方、本発明の低屈折率層の厚さ(dL)の好ましい範囲は、前記した範囲にある低屈折率層の屈折率(nL)と低屈折率層の厚さ(dL)との積が、反射を防止したい可視光の波長(λ)の1/4の0.7〜1.0倍となるような厚さ(dL)にすることが好ましく、さらには0.75〜0.95倍が好ましい。これらのことを考慮すると、本発明において、反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得るためには、低屈折率層の厚さ(dL)は70〜160nmの範囲である。低屈折率層の厚さ(dL)は好ましくは80〜140nm、さらには好ましくは85〜105nmの範囲である。
また、フラットな反射スペクトルを得るためには、高屈折率層の厚さ(dH)と低屈折率層の厚さ(dL)の比(dH/dL)を、1.0〜1.9とすることが好ましい。1.0を下回る場合は、最高反射率が2.5%よりも高くなり、最高反射率と最低反射率との差も2.5%を越え、反射スペクトルがV型となって、赤や青の干渉色が現れる。一方、1.9を越える場合は、フラットな反射スペクトルが得られるものの、最低反射率が0.6%よりも高くなり、反射防止性能が不十分となる。(dH/dL)は、より好ましくは1.1〜1.8、さらに好ましくは1.2〜1.7であるとフラットな反射スペクトルで、かつ最低反射率も低くできる。
本発明における特に好ましい反射防止層において、高屈折率層の構成成分としては、反射防止層表面に帯電防止性を付与するために、樹脂組成物に金属化合物粒子を分散させたものであることが好ましい。樹脂成分には、(メタ)アクリレート化合物が用いられる。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線照射によりラジカル重合し、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるため好ましく、さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂成分は、金属化合物粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基や、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。
ここで用いられる金属化合物粒子としては、導電性の各種金属化合物粒子が好ましく用いられる。特に好ましくは錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等である。さらに好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)が用いられる。
導電性を構成する導電性金属化合物粒子について、平均1次粒径が0.005〜0.05μmの粒子が好適に使用される。該平均1次粒径が0.05μmを超えると、生成される被膜(高屈折率層)の透明性を低下させることがある。また、該平均1次粒径が0.005μm未満では、該金属化合物粒子が凝集し易く生成被膜(高屈折率層)のヘイズ値が増大する。いずれの場合も、所望のヘイズ値を得ることが困難になる。また樹脂層としてハードコート層と反射防止層の積層構成とした場合(ハードコート層を導電層側とする)で、かつハードコート層のRaを制御することによって、樹脂層のRaも制御しようとした場合に、反射防止層の高屈折率層に平均1次粒径が0.05μmを超える粒径の大きな粒子を添加すると、ハードコート層のRaに樹脂層最表面のRaが追従せず、反射防止層の粒子が樹脂層最表面のRaに影響を与える場合がある。1次粒径とは、静置した状態で電子顕微鏡やガスまたは溶質による吸着法、空気流通法、X線小角散乱法などで測定した粒径のことである。
高屈折率層の構成成分に、導電性の効果をさらに向上させることを目的としてポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリン等の導電性ポリマー、金属アルコレートおよびキレート化合物などの有機金属化合物を、さらに含有させることもできる。
高屈折率層を形成する際に、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。該開始剤としては、塗布したバインダー成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知のチオキサントン誘導体、アゾ化合物、ジアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ジアルキルアミノ安息香酸エステル、過酸化物、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体等の各種光重合開始剤が使用可能である。この光重合開始剤の量は、高屈折率層の構成成分総量100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、さらには1〜15重量部の範囲で好ましく添加される。かかる好ましい範囲であると、光重合が十分に早く、硬度および耐擦過性を満足させるために短時間の光照射でよく、一方、塗膜の導電性、耐摩耗性、耐候性等の機能が低下することもない。
また、高屈折率層を形成する際に、上記開始剤の、酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤や、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、表面硬度の向上を目的として、アルキルシリケート類およびその加水分解物、コロイダルシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン等の無機粒子、コロイド状に分散したシリカ微粒子等を、さらに含有させることもできる。
高屈折率層の構成成分の配合割合は、樹脂成分と金属化合物粒子との重量割合〔(A) /(B) 〕が10/90〜30/70であることが好ましく、さらに好ましくは15/85〜25/75である。金属化合物粒子がかかる好ましい範囲であると、得られる膜は透明性十分で、導電性も良好であり、一方、得られる膜の各種物理的、化学的強度が悪くなることもない。
プラズマディスプレイパネル用フィルターは、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理されていることが好ましい。高屈折率層によって所望水準の帯電防止性が付与されるためには、該層の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下になるよう添加量を制御することが好ましく、さらには1×1010Ω/□以下になるよう添加量を制御するのが好ましい。
高屈折率層は、鮮明性、透明性の点から、全光線透過率が好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上の層である。
高屈折率層は、好ましくは溶媒で分散させた塗布液を調整し、その塗布液をハードコート層上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成することができる。
高屈折率層形成において使用される溶剤は、塗布または印刷作業性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、樹脂成分を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、組成物の粘度の安定性、乾燥性の観点から沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、さらに、そのうち酸素原子を有する有機溶媒が金属化合物粒子との親和性がよいので好適である。かかる有機溶媒としては、具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトン等が好適に挙げられる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、有機溶媒の量は、塗布手段や、印刷手段に応じ作業性のよい状態の粘度に組成物がなるように任意の量を配合すればよいが、通常組成物の固形分濃度が60重量%以下、好ましくは、50重量%以下になる程度が適当である。本発明の光硬化性導電膜形成用組成物の調製としては、任意の方法が採用可能であるが、通常樹脂成分を有機溶媒で溶解させた溶液中に、金属化合物粒子を添加し、ペイントシェーカーや、ボールミル、サンドミル、三本ロール、アトライター、ホモミキサー等の分散機により分散させ、しかる後、光重合開始剤を添加し、均一に溶解させる方法が適当である。
本発明における特に好ましい反射防止層の態様において、低屈折率層は内部に空洞を有するシリカ微粒子、およびシロキサン化合物、および硬化剤、および溶媒からなる塗料組成物をコーティングして得られたものとすることが、屈折率をより低くし、表面反射率を低くすることができるので好ましい。
低屈折率層は、表面硬度を向上させ、耐擦傷性を優れたものとするためにマトリックス材料であるシロキサン化合物とシリカ微粒子が強固に結合していることが好ましく、そのためにはコーティング前の塗料組成物の段階で予めシロキサン化合物をシリカ微粒子表面と反応させて結合させることが好ましい。
そのための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により、加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。シラノール化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物が好ましい。
得られた塗料は、これらのシラン化合物の縮合物であるシロキサン化合物を含有する。また、これらのシラン化合物が加水分解されており、縮合していないシラノール化合物を含有しても良い。
R1Si(OR6)3 (1)
R1はフッ素が3から17のフルオロアルキル基を表わす。R1のフッ素数としては6〜8が好ましい。1分子当りのフッ素原子が多いと、得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。R1の炭素数としては3〜10が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。特に炭素数3が好ましい。R6はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R6はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(1)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の屈折率を低くすることができるので好ましい。
R2Si(OR7)3 (2)
R2はビニル基、アリール基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、シアノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。R2の炭素数としては2〜10が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R7はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(2)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
R3Si(OR8)3 (3)
R3は水素、アルキル基、アリール基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。R3の炭素数としては1〜6が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R3が炭素数6を超えると得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。R8はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R8はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(3)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
R4R5Si(OR9)2 (4)
R4およびR5は、それぞれ水素、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アルケニル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R4、R5の炭素数としては1〜6が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R9はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R9はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(4)で表される2官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の可とう性を向上させることができるので好ましい。
Si(OR10)4 (5)
R10はメチル基またはエチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。一般式(5)で表される4官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
これら一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
シロキサン化合物の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは、20重量%〜70重量%、特に好ましくは30重量%〜60重量%である。この範囲でシロキサン化合物を含有することが、被膜の屈折率を低く、かつ被膜の硬度を高めることができるため好ましい。したがって、塗料中におけるシロキサン化合物の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。
これらの中でも、低屈折率化のためには、一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物を必須成分として用い、一般式(2)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物を組み合わせて用いることが好ましい。一般式(1)で表されるシラン化合物の量は、全シラン化合物量に対して、好ましくは、20重量%〜80重量%、特に好ましくは、30重量%〜60重量%である。シラン化合物の量が20重量%を下回ると、低屈折率化が不十分になることがある。一方、シラン化合物の量が80重量%を越えると、被膜の硬度が低下する場合がある。
一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物の具体例を、以下に示す。
一般式(1)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリメトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリエトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリアセトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、およびトリフルオロプロピルトリエトキシシランが好ましい。
一般式(2)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、ビニルトリアルコキシシラン、および3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランが好ましい。
一般式(3)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが好ましい。
一般式(4)で表される2官能性シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られる被膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシランが好ましく用いられる。
一般式(5)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などが挙げられる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子は、数平均粒子径が1nm〜50nmである粒子が好適に使用される。数平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、被膜の硬度が低下することがある。一方、数平均粒子径が50nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。ここで、シリカ微粒子の平均粒子径は、種々のパーティクルカウンターを用いて、数平均の粒子径を測定することができる。塗料に添加する前のシリカ微粒子の粒子径を測定することが好ましい。また、被膜形成後は、電子走査型顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて、被膜中のシリカ微粒子の粒子径を測定する方法が好ましい。数平均粒子径測定法として透過型電子顕微鏡を用いたもの例示すると、超薄切片法で作製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて観察する(倍率10万倍程度)し、得られた画像から平均粒子径を求めることができる。
また樹脂層として、ハードコート層と反射防止層の積層構成とした場合(ハードコート層を導電層側とする)で、かつハードコート層のRaを制御することによって、樹脂層のRaも制御しようとした場合に、反射防止層の低屈折率層に数平均粒子径が50nmを越える粒径の大きな粒子を添加すると、ハードコート層のRaに樹脂層最表面のRaが追従せず、反射防止層の粒子が樹脂層最表面のRaに影響を与える場合がある。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の数平均粒子径は、形成される被膜の膜厚よりも小さいことが好ましい。被膜の膜厚を上回ると、被膜表面にシリカ微粒子が露出し、反射防止性を損なうばかりでなく、被膜の表面硬度および耐汚染性が低下する。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子としては、マトリックスのシロキサン化合物と反応しやすくするため、表面にシラノール基を有するシリカ微粒子が好ましい。また、被膜の低屈折率化のために内部に空洞を有するシリカ微粒子が好ましい。内部に空洞を有しないシリカ微粒子は、一般に粒子自体の屈折率は、1.45〜1.50であるため、屈折率低下効果が少ない。一方、内部に空洞を有するシリカ微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入による屈折率低下効果が大きい。内部に空洞を有するシリカ微粒子としては、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ微粒子等が挙げられる。これらのうち、被膜の硬度を考慮した場合、粒子自体の強度が高い多孔質のシリカ微粒子が好ましい。該微粒子の屈折率は、1.20〜1.40であり、1.20〜1.35であるのがより好ましい。また、内部に空洞を有するシリカ微粒子の数平均粒子径は、1nm〜50nmが好ましい。シリカ微粒子の屈折率は、特開2001−233611公報[0034]段落に開示されている方法によって測定できる。内部に空洞を有するシリカ微粒子は、例えば特開2001−233611号公報の[0033]〜[0046]段落に記載された方法や、特許第3272111号公報の[0043]段落に記載された方法で製造することができる。一般に市販されているものも使用することができる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは、30重量%〜80重量%、特に好ましくは40重量%〜70重量%である。したがって、塗料中におけるシリカ微粒子の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。この範囲でシリカ微粒子を被膜中に含有させると、屈折率を低くすることができるだけでなく、被膜の硬度を高めることができる。シリカ微粒子の含有量が30重量%を下回ると、粒子間の空隙による屈折率低下効果が少なくなる。また、シリカ微粒子の含有量が80重量%を越えると、コーティング膜中にアイランド現象が多数発生し、被膜の硬度が低下し、また、場所によって、屈折率が不均一になるので好ましくない。
また、前述のように低屈折率層を形成するための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により、加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができるが、この加水分解反応においては、溶媒中、酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、室温〜80℃で1〜180分反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは40〜70℃である。また、加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、そのまま、反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行なうのが好ましい。また、シロキサン化合物の重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。
加水分解反応に用いる酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に蟻酸、酢酸またはリン酸を用いた酸性水溶液が好ましい。これら酸触媒の好ましい添加量としては、加水分解反応時に使用される全シラン化合物量に対して、好ましくは、0.05重量%〜10重量%、特に好ましくは、0.1重量%〜5重量%である。酸触媒の量が、0.05重量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがあり。また、酸触媒の量が10重量%を越えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
溶媒は特に限定されないが、塗料組成物の安定性、濡れ性、揮発性などを考慮して決定される。溶媒は一種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
加水分解反応時に使用される溶媒の量は、全シラン化合物量に対して、50重量%〜500重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは、80重量%〜200重量%の範囲である。溶媒の量が50重量%を下回ると、反応が暴走し、ゲル化する場合がある。一方、溶媒の量が500重量%を越えると、加水分解が進行しない場合がある。
また、加水分解反応に用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン化合物1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いるのが好ましい。
また、塗剤を硬化させ低屈折率層を形成する目的で添加する硬化剤としては、塗料組成物の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる各種の硬化剤あるいは三次元架橋剤が挙げられる。硬化剤の具体例としては、窒素含有有機物、シリコン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。なかでも、硬化剤の安定性、得られた被膜の加工性などから金属キレート化合物が好ましく用いられる。用いられる金属キレート化合物としてはチタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および、マグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらの中から、低屈折率化の目的には、屈折率の低いアルミニウムキレート化合物および/またはマグネシウムキレート化合物が好ましい。これらの金属キレート化合物は、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン;アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを用いることができる。金属キレート化合物の好ましい具体的な例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)、およびマグネシウムビス(エチルアセトアセテート)である。保存安定性および入手容易さを考慮すると、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が、特に好ましい。添加される硬化剤の量は、塗料組成物中の全シラン化合物量に対して、好ましくは0.1重量%〜10重量%であり、特に好ましくは、1重量%〜6重量%である。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。含有量が、0.1重量%を下回ると、得られる被膜の硬度が低下する。一方、含有量が10重量%を越えると、硬化が十分となり、得られる被膜の硬度は向上するが、屈折率も高くなり、好ましくない。
さらに塗料組成物には、大気圧下沸点100〜180℃の溶媒と大気圧下沸点100℃未満の溶媒を混合して用いることが好ましい。大気圧下沸点100〜180℃の溶媒を含むことにより、塗液の塗布性が良くなり、表面が平坦な被膜を得ることができる。また、大気圧下沸点100℃未満の溶媒を含むことによって、被膜形成時に、溶媒が有効に揮発し、硬度の高い被膜を得ることができる。すなわち、表面が平坦で、かつ、硬度の高い被膜を得ることができる。
大気圧下沸点100〜180℃の溶媒としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。これらのうち、特に好ましい溶媒の例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール等である。
大気圧下沸点100℃未満の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メチルエチルケトン等があげられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
塗料組成物における全溶媒の含有量は、全シラン化合物含有量に対して、1300重量%〜9900重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは、1500重量%〜6000重量%の範囲である。全溶媒の含有量が1300重量%を下回るか、もしくは、9900重量%を越えると、所定の膜厚の被膜を形成することが困難となる。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。
なお本発明では、反射防止層に適当な粒径の粒子を含有させることで、樹脂層に反射防止層を含む場合の、樹脂層最表面のRaを制御することも可能である。しかし上述したように、反射防止層に含有される粒子は、高屈折率層では、表面硬度、耐擦傷性の向上のため、低屈折率層では、帯電防止性の向上のために添加されているので、反射防止層に用いられる各種粒子はその粒径が非常に小さいものが好ましく用いられる。このように反射防止層に非常に小さな粒径の粒子が用いられた場合は、樹脂層としてハードコート層と反射防止層の積層構成として(ハードコート層を導電層側とする)、かつハードコート層のRaを制御することによって樹脂層最表面のRaも制御しようとした場合において、反射防止層に用いられる粒子は樹脂層の中心線平均粗さRaには影響を及ぼさない。
(他の機能層)
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターは、近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能、およびNeカット機能からなる群より選ばれた少なくとも1つの機能を有する機能層を有することが好ましい。これらの機能層は、1つの層に複数の機能を有する機能層としてもよい。また機能層は、複数の層を積層してもよい。
以下に本発明のプラズマディスプレイ用フィルターを構成する機能層について述べる。
(色調補正層)
機能層の一種である、色調補正機能を有する色調補正層は、色調補正能を有する色素を含有する層であり、透過可視光の色調補正を行い、プラズマディスプレイパネルの画像特性の向上、より具体的には高コントラスト化および高鮮明色化を図るものである。また、色調補正層によりプラズマディスプレイ用フィルター全体の透過率調整が可能であり、映り込み性能の調整をする役割も担っている。
色調補正は、プラズマディスプレイ用フィルターを透過する可視光のうち、特定波長の可視光を選択的に吸収することによって達成される。したがって、色調補正層に含有される色素は、特定波長の可視光を選択的に吸収するものであり、色素は染料と顔料のいずれも使用できる。「特定波長の可視光を選択的に吸収する」とは、可視光の波長領域(波長380〜780nm)の光のうち、特定波長領域の光を特異的に吸収することを指す。ここで色素によって特異的に吸収される波長領域は、単一の波長領域であってもよく、または複数の波長領域であってもよい。
このような特定波長を吸収する色素としては、具体的には例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系などの周知の有機顔料および有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐候性が良好であることから、フタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましい。なお、上記した色素のうちいずれか1種類を色調補正層に含有させてもよいし、2種類以上を含有させてもよい。
また、プラズマディスプレイ用フィルターは、その透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求されることがある。これは、プラズマディスプレイパネルの発光特性及びコントラストを維持または向上させる必要がある場合、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。このような要求を達成する際にも上記の色素を適用することができる。
色調補正層は、色調補正能を有する色素を含有する限り様々な態様を取りことができる。色調補正層は、その態様に応じて好適な方法で形成すればよい。例えば、粘着剤中に色調補正能を有する色素を含有させた態様の場合、粘着剤中に色調補正能を有する色素を染料または顔料として添加して、塗布して所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。粘着剤としては、市販されている粘着剤を使用することができるが、好ましい具体例としては、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル共重合体、スチレンーアクリル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、スチレンーブタジエン共重合体系ゴム、ブチルゴム、又はシリコン樹脂等の粘着剤を挙げることができる。
透明基材、透明基板を着色加工して色調補正層を形成する態様の場合、色調補正能を有する色素を染料または顔料として、そのまま、または溶剤に溶解させて、塗布および乾燥させて、所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。この目的で使用される溶剤としては、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。
また、色調補正層が、色調補正能を有する色素を含有する透明基材である場合、透明基材の原料となる熱可塑性樹脂を所望の溶剤に溶解させて、色調補正能を有する色素を染料または顔料として添加して得た溶液を塗布し、乾燥させて所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。ここで使用する溶剤は、原料となる樹脂を溶解することができ、かつ添加される染料または顔料を溶解または分散することができればよい。この目的で使用される溶剤としては、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。
色調補正能を有する色素を含む溶液、または色調補正能を有する色素および透明基材の原料樹脂とを含む溶液を塗布して色調補正層を形成する方法において、塗工法としては、例えばディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、コンマコート法、ダイコート法などを選択できる。これらのコート法は連続加工が可能であり、バッチ式の蒸着法などに比べて生産性が優れている。または薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
色調補正層の厚さは、十分な色調補正能を得るために0.5μm以上であることが好ましい。また、光透過性、より具体的には可視光線透過性が優れることから40μm以下が好ましく、1〜25μmであることが特に好ましい。色調補正層の厚さが40μm以上の場合、所望の染料、顔料、透明樹脂を含む溶液を塗布して色調補正層を形成する際に溶媒が残留しやすく、色調補正層を形成する際の操作性が困難となるため好ましくない。
色調補正層が、色調補正能を有する色素を含有する粘着剤層または色調補正能を有する色素を含有する透明基材である場合、色素は、粘着剤または熱可塑性樹脂に対して、0.1重量%以上含有されることが好ましく、1重量%以上が特に好ましい。また、粘着剤層または透明基材の物性を保つため、色調補正能を有する色素の量を10重量%以下に抑えることが好ましい。
(近赤外線遮断層)
続いて機能層の一種である、近赤外線遮断機能を有する近赤外線遮断層について説明する。プラズマディスプレイパネルから発生する強度の近赤外線は、リモコン、コードレスフォン等の周辺電子機器に作用して誤動作を引き起こすため、近赤外領域の光を実用上問題ないレベルまでカットする必要がある。問題である波長領域は800〜1000nmであり、当該波長領域における透過率を20%以下、好ましくは10%以下とすることが必要である。近赤外線遮断層は、近赤外線遮断のために、通常、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素、具体的にはポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが好ましく適用され、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系が特に好ましい。なお、近赤外線吸収能を有する色素を用いる場合、いずれか1種類を含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
近赤外線吸収層の構造、形成方法、厚さ等については上述した色調補正層と同様である。近赤外線吸収層は、色調補正層と同一の層、すなわち、色調補正層に色調補正能を有する色素と、近赤外線吸収能を有する色素とを含有させたものであってもよいし、色調補正層と別の近赤外線遮断層を設けても良い。近赤外線吸収色素の量はバインダー樹脂に対して、0.1重量%以上含まれることが好ましく、特に2重量%以上が好ましいが、赤外線吸収剤を含有する粘着剤層または透明基材の物性を保つため、色調補正能を有する色素と近赤外線吸収剤の合計量を10重量%以下に抑えることが好ましい。
(Neカット層)
続いて機能層の一種である、Neカット機能を有する機能層について説明する。近赤外線遮断層あるいは色調補正層には、プラズマディスプレイパネル内に封入された放電ガス、例えばネオンとキセノンの二成分ガス、からの余分な発光色(主に560〜610nmに波長領域)を選択的に吸収・減衰させるための1種類若しくは複数種類の色調補正剤を混合して含有させることが好ましい。このような色素構成とすることによって、プラズマディスプレイパネルの表示画面から発せられる可視光のうち、放電ガスの発光に起因する余分な光が吸収・減衰され、その結果プラズマディスプレイパネルから発する可視光の表示色を表示目標の表示色に近づけることができ、自然な色調を表示し得る。
(紫外線遮断層)
続いて機能層の一種である、紫外線遮断機能を有する紫外線遮断層について説明する。本発明のプラズマディスプレイ用フィルターにおいて、紫外線遮断層はこの層よりもパネル側に位置する色調補正層、赤外線遮断層などに含まれる色素の光劣化を防止する役割を持つ。紫外線遮断層には紫外線吸収剤を含有する透明基材、粘着剤層などが用いられる。
また、紫外線吸収剤を含む層のTgは60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。Tgが低い熱可塑性樹脂中に紫外線吸収剤を含有させると、紫外線吸収剤が粘着界面または接着界面に移動して、粘着性または接着性を阻害する恐れがある。紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂のTgが60℃以上であれば、透明基材中で紫外線吸収剤が移動する可能性が低減され、プラズマディスプレイ用フィルターの他の構成要素、具体的には例えば透明基板、色調補正層または反射防止層の一部をなす他の透明基材と層間接着層を介して接合させる場合に、粘着性が阻害されない。
透明基材を構成するTgが60℃以上の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表される芳香族ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート等が例示される。これらの中、芳香族ポリエステルが好ましく、特に耐熱性、機械的強度に優れる二軸延伸フィルムを形成し得るポリエチレンテレフタレートが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmにおける紫外線遮断性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は基材フィルム中に0.5〜5重量%含有させるのが好ましい。
また更に優れた耐光性を付与するためにシアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物は、基材フィルム中に0.05〜2重量%含有させることが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)がある。これと併用する場合には前述の紫外線吸収剤は基材フィルム中に0.3〜3重量%であるのが好適である。
紫外線遮断層では波長380nmにおける透過率が5%以下であるのが好ましく、これにより紫外線から基材や染料色素などを保護することができる。
紫外線遮断層における紫外線吸収剤の含有量は0.1〜5重量%であることが好ましく、0.2〜3重量%であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1〜5重量%であると、プラズマディスプレイ用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収し、色調補正層に含まれる色素の光劣化を防止する効果に優れており、かつ、透明基材あるいは粘着層の強度を阻害しない。
紫外線遮断層、特に透明基材に紫外線吸収剤を添加する方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の重合工程、フィルム製膜前の溶融工程での熱可塑性樹脂への練込み、二軸延伸フィルムへの含浸などを例示することができる。特に、熱可塑性樹脂の重合度低下を防止する意味でもフィルム製膜前の溶融工程で熱可塑性樹脂中に練込むことが好ましい。その際の紫外線吸収剤の練込みは、該剤の粉体の直接添加法、該剤を高濃度に含有するマスターポリマーを製膜用ポリマーに添加するマスターバッチ法などにより行うことができる。
紫外線カット層は、厚さが5〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜200μm、更に好ましくは80〜200μmである。紫外線吸収層の厚さが5〜250μmの範囲であると、プラズマディスプレイ用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収する効果に優れており、かつ光透過性、具体的には可視光線透過性に優れている。
(接着層)
本発明において、上記した様々な機能層を貼合するために、あるいはプラズマディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼合するために、接着性を有する接着層を用いてもよい。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコン系あるいはポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。
更に、粘着剤は、溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤の2つに大別される。乾燥性、生産性、加工性において優れた溶剤型粘着剤は依然として主流であるが、近年、公害、省エネルギ、省資源、安全性などの点で無溶剤型粘着剤に移り変わりつつある。中でも、活性線を照射することで秒単位で硬化し、可撓性、接着性、耐薬品性などに優れた特性を有する粘着剤である活性線硬化型粘着剤を使用することが好ましい。
活性線硬化型アクリル系粘着剤の具体例は、日本接着学会編集、「接着剤データブック」、日刊工業新聞社1990年発行、第83頁から第88頁を参考とすることができるが、これらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として、日立化成ポリマー株式会社;(商品名 XY (登録商標)シリーズなど)、東邦化成工業株式会社;(商品名 ハイロック (登録商標)シリーズなど)、株式会社スリーボンド;(商品名 スリーボンド (登録商標)シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名 アロンタイト (登録商標)シリーズなど)、セメダイン株式会社;(商品名 セメロックスーパー (登録商標)シリーズなど)などの製品を利用することができるがこれらに限定されるものではない。
(透明基材)
本発明における透明基材は、通常、反射防止層、ハードコート層、赤外線カット層、導電層などを積層するための基材として用いられる。また、紫外線吸収成分を添加することで紫外線カット層としての役割を担うこともできる。
本発明における透明基材は、溶融製膜や溶液製膜可能なフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリレートなどからなるフィルムを挙げることができる。これらのフィルムは本発明における各機能層の基材として好適に用いられるが、うねり構造を形成する面に用いられる透明基材の材料として好ましいものとしては、透明性、機械的強度および寸法安定性などに優れた樹脂が求められ、具体的にはポリエステル、セルロースエステル、アクリル(ポリアクリレート)などが挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、トリアセチルセルロースが好適な材料として例示することができる。また、ポリアクリレートの中でも分子内に環状構造を有する樹脂は光学等方性に優れる好適な材料である。分子内に環状構造を有する樹脂としてはグルタル酸無水物単位を10〜50重量%含有するアクリル樹脂などを例示することができる。しかし、諸特性のすべてにおいてバランスされた性能を有し、本発明におけるすべての機能層用の基材に適用できるものとしてはポリエステルが特に好ましい。
このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートが性能・コスト面で最も好ましい。また、2種以上のポリエステルが混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のフィルムが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、ラマンスペクトル分析法により測定することができる。
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
本発明で用いられる透明基材は、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。但し、粒子などを適用する場合には透明性に影響しない程度に止める必要がある。
本発明における透明基材にポリエステルを用いる場合、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。ここで、二軸延伸により結晶配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ好適には2.5〜5倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
本発明で用いられる透明基材の厚みは、使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
本発明の透明基材中には、本発明の効果、特に光学特性を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
本発明に用いる透明基材は全光線透過率が90%以上、ヘイズが1.5%以下であるのが好ましく、このようなものを適用することで画像の視認性や鮮明度を向上させることができる。
更に本発明に用いる透明基材は透過b値が1.5以下であるのが好ましい。透過b値が1.5を越えると透明基材自体がやや黄ばんで見えるため画像の鮮明さを損なう場合がある。
b値とは、国際照明委員会(CIE)において定められた表色の方法であり、b値は彩度を表しており、正の符号であれば黄色の色相、負の符号で有れば青色の色相を表す。また、絶対値が大きい程その色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さい程彩度が小さいことを示す。0である場合には、無彩色であることを示す。表色の調整は例えば、色素を含有させることにより実現できる色素としては、有色無機顔料、有機顔料、染料などを用いることができるが、耐候性に優れることから、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、サンカクロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、ベルリンブルー、ミロリブルー、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛ブルー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレッド、コバルトバイオレット等の有機顔料が好ましく使用される。
本発明に用いられる透明基材は、導電層や前述した機能層との密着性(接着強度)を強化するためのプライマー層(易接着層、下引き層)を設けておくのが好ましい。
(透明基板)
本発明における透明基板はプラズマディスプレイパネル本体に機械的強度を付与するものであり、無機化合物成形物や透明な有機高分子成形物が用いられる。
無機化合物成形物としては、好ましくはガラス、強化もしくは半強化ガラスなどが挙げられ、厚さは通常0.1〜10mmの範囲であり、より好ましくは1〜4mmである。
高分子成形物は可視波長領域において透明であればよく、その種類を具体的にあげれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース等が挙げられる。これら透明な高分子成形物は、主面が平滑であれば板(シート)状であってもフィルム状であってもよい。シート状の高分子成形物を基材として用いた場合には、基材が寸法安定性と機械的強度に優れているため、寸法安定性と機械的強度に優れる透明積層体が得られ、特にそれが要求される場合には好適に使用できる。
また、透明な高分子フィルムは可撓性を有しており機能層をロール・ツー・ロール法で連続的に形成することができるため、これを使用した場合には効率よく、また、長尺大面積に機能層の積層体を生産できる。この場合フィルムの厚さは通常10〜250μmのものが用いられる。フィルムの厚さが10μm未満では、基材としての機械的強度に不足し、厚さが250μmを超えると可撓性が不足するためフィルムをロールで巻きとって利用するのに適さない。
本発明では、透明基板であるガラスを用いることによって、機械的強度が得られるが、ガラスを用いない場合でも、プラズマディスプレイパネルとのエアーギャップがなくなることから、二重映りが解消されるなどの利点があるため、本発明では透明基板を使用してもしなくてもよい。
(フィルターの構成について)
本発明のプラズマディスプレイ用フィルターは、上述した複数の層が積層された積層体である。その構成例を具体的に列挙する。
(1)ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層+透明基板(ハードコート層が視認側、透明基板がプラズマディスプレイパネル側)、(2)反射防止層+ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層+透明基板(反射防止層が視認側、透明基板がプラズマディスプレイパネル側)、(3)ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+透明基板(ハードコート層が視認側、透明基板がプラズマディスプレイパネル側)、(4)反射防止層+ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+透明基板(反射防止層が視認側、透明基板がプラズマディスプレイパネル側)、(5)ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層(ハードコート層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、(6)反射防止層+ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層(反射防止層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、(7)ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+接着層(ハードコート層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、(8)反射防止層+ハードコート層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+接着層(反射防止層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、
などが挙げられるが本発明のプラズマディスプレイ用フィルターはこれに限定されない。
(他の形態の遮光性凸部を用いたディスプレイ用フィルター)
遮光性凸部として導電性メッシュ用いたプラズマディスプレイ用フィルターについては上述したが、他の形態の遮光性凸部を用いたディスプレイ用フィルターについて以下に説明する。
係る遮光性凸部は、遮光性物質を含む樹脂成分で形成することができる。遮光性物質としては、各種の染料や顔料、金属等を用いることができるが、これらに限定されない。つまり、他の形態の遮光性凸部は、染料、顔料、金属などの遮光性物質を含有する凸部である。
本発明においては、遮光性物質として顔料を用いるのが好ましく、黒顔料、あるいは赤顔料、青顔料及び緑顔料の混合物を用いることができる。
黒顔料としては、Color Index No.ピグメントブラック7、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物等が使用できる。これらの顔料は1種のみで使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。赤色顔料としてはColor Index No.ピグメントレッド(以下、PRと略す)9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、254等が、緑色顔料としてはColor Index No.ピグメントグリーン(以下、PGと略す)7、36等が、青色顔料としてはColor Index No.ピグメントブルー(以下、PBと略す)15:3、15:4、15:6、21、22、60、64等が挙げられる。
上記した顔料の中でも、黒顔料が好ましく、更に、チタンブラック、カーボンブラックが好ましい。
遮光性物質である顔料の粒子径としては、顔料の分散性を考慮して、平均一次粒子径が5〜400nmの範囲のものが好ましく、10〜200nmの範囲のものがより好ましく、特に10〜100nmの範囲のものが好ましい。
遮光性物質である顔料の含有量は、遮光性凸部を形成する全成分100重量%に対して、5〜80重量%の範囲が好ましく、10〜70重量%の範囲がより好ましい。顔料の含有量が少なすぎると、十分な遮光性が得られないことがあり、一方、顔料の含有量が多くなりすぎると、遮光性凸部の強度(硬度)の低下や成型加工性が低下することがある。
遮光性凸部を構成する樹脂成分としては、熱硬化性、光硬化性等の硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。遮光性凸部を構成する樹脂としては、紫外線や電子線等のような活性光線によって硬化する光硬化性樹脂が好ましく、特に紫外線硬化樹脂が好ましく用いられる。
紫外線硬化樹脂としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等のアクリル系樹脂、あるいはエポキシ系樹脂等を挙げることができる。
光硬化性の樹脂成分の例として、アクリル系樹脂について詳しく述べる。かかるアクリル系樹脂としては、感光性を持たせるため、少なくともアクリル系ポリマー、アクリル系多官能モノマーあるいはオリゴマー、光重合開始剤を含有させた構成とすることができる。さらにエポキシを加えた、いわゆるアクリルエポキシ樹脂も用いることができる。
使用できるアクリル系ポリマーとしては、特に限定はないが、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物などがあげられる。
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nープロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、側鎖にエチレン性不飽和基を付加したアクリル系ポリマーを用いると、加工の際の感度がよくなるので好ましく用いることができる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のようなものがある。このような側鎖をアクリル系(共)重合体に付加させる方法としては、アクリル系(共)重合体のカルボキシル基や水酸基などを有する場合には、これらにグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸またはメタクリル酸クロライドを付加反応させる方法が一般的である。その他、イソシアネートを利用してエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させることもできる。ここでいうグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸またはメタクリル酸クロライドとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどが挙げられる
多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートのようなオリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独または混合して用いることができる。また、次にあげるような単官能モノマーも併用することができ、例えば、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどがあり、これらの2種以上の混合物、あるいはその他の化合物との混合物などが用いられる。これらの多官能及び単官能モノマーやオリゴマーの選択と組み合わせにより、レジストの感度や加工性の特性をコントロールすることが可能である。特に、硬度を高くするにはアクリレート化合物よりメタクリレート化合物が好ましく、また、感度を上げるためには、官能基が3以上ある化合物が好ましい。また、メラミン類、グアナミン類などもアクリル系モノマーの代わりに好ましく用いることができる。
光重合開始剤としては、特に限定はなく、公知のものが使用でき、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体などがあげられる。また、その他のアセトフェノン系化合物、イミダゾール系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、リン系化合物、トリアジン系化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、有機ホウ素酸塩化合物あるいはチタネート等の無機系光重合開始剤なども好ましく用いることができる。また、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどの増感助剤を添加すると、さらに感度を向上させることができ好ましい。また、これらの光重合開始剤は2種類以上を併用して用いることもできる。
光重合開始剤の含有量としては、遮光性凸部の全成分100重量%に対して1〜25重量%の範囲が適当である。
本発明の遮光性凸部を構成する樹脂成分として、熱硬化性樹脂を用いることができる。かかる熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Br2でブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合するなどした反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウムなどを添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂等がある。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることができる
ビニルエステル樹脂としては、例えば、普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーをスチレン等のモノマーに溶解した物である。また、分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としてはビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。
フェノール樹脂は、フェノール類とフォルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド・O,O′−ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂等、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミド等がある。
遮光性凸部を構成する樹脂成分の含有量は、遮光性凸部の全成分100重量%に対して20〜90重量%の範囲が好ましく、30〜80重量%の範囲がより好ましい。樹脂成分の含有量が少なすぎると、遮光性凸部の硬化性が低下することがあり、また樹脂成分の量が多くなりすぎると、遮光性凸部の遮光性が低下することがある。
遮光性凸部の形成方法は、上記した遮光性物質と樹脂成分を含む組成物を適当な有機溶媒で分散、溶解あるいは希釈して、遮光性凸部のための液状組成物を作製し、この液状組成物をインクジェット方式や印刷方式で、所望の遮光性凸部形状に印刷し、硬化する方式、あるいはフォトリソグラフ方式を用いて加工形成する方式が挙げられる。しかし、本発明は上記の形成方法に限定されない。
上記の印刷方式としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
上記のフォトリソグラフ方式は、上記した遮光性凸部のための液状組成物を透明基材上に適当な塗工方式、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いて、透明基材のほぼ前面に塗工し、その塗工面にドット状もしくはメッシュ状のパターンに紫外線等の活性光線で露光後、現像して、非凸部領域に相当する部分の樹脂を溶解除去する方法である。前記露光方法としては、フォトマスクを介して露光する方法、あるいはレーザーで直接に走査露光する方法が挙げられる。
上記した遮光性物質を含む樹脂成分で形成された遮光性凸部の平面形状(上面から視た形状)は、メッシュ状もしくは複数のドット状であることが好ましい。
メッシュ状凸部について、以下に詳しく説明する。
メッシュ状凸部を構成するメッシュパターンの形状(非凸部領域の形状、即ち光透過領域の形状)としては、例えば、正方形、長方形、菱形等の4角形からなる格子状メッシュパターン、三角形、5角形、6角形、8角形、12角形のような多角形からなるメッシュパターン、円形、楕円形からなるメッシュパターン、前記の複合形状からなるメッシュパターン、及びランダムメッシュパターンが挙げられる。
メッシュ状凸部の高さは、透明樹脂層に中心線平均粗さRaが50〜500nmの表面形状を形成するという観点から、0.5〜8μmの範囲が好ましく、特に1〜5μmの範囲が好ましい。メッシュ状凸部を構成する細線の幅は、3〜30μmの範囲が好ましく、5〜20μmの範囲がより好ましい。メッシュ状凸部の場合は、透明樹脂層の良好な塗工性を確保するという観点から、遮光性凸部の高さは8μm以下であることがより好ましい。
メッシュパターンからなるメッシュ状凸部のピッチは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜450nmの範囲がより好ましく、100〜350μmの範囲が更に好ましい。
上記ピッチとは、メッシュパターンの1つの光透過領域と、この光透過領域と少なくとも1辺を共有し隣接する光透過領域との重心間の距離である。
メッシュパターンは、通常、全ての細線がつながった状態を指すが、本発明のメッシュ状凸部は、メッシュパターンの細線が部分的に寸断されたものであってもよい。
次にドット状凸部について詳細に説明する。
ドット状凸部の凸構造としては、ドットの長径が2〜30μmの範囲が好ましく、3〜20μmの範囲がより好ましく、特に4〜15μmの範囲が好ましい。また、複数のドット状凸部が、ほぼ一定の長径を有していることが好ましい。
ドット状凸部の高さは、透明樹脂層に中心線平均粗さRaが50〜500nmの表面形状を形成するという観点から、0.5〜8μmの範囲が好ましく、特に1〜5μmの範囲が好ましい。また、複数のドット状凸部がほぼ一定の高さを有していることが好ましい。
ドット状凸部の平面形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形等の多角形、あるいは不定形等を採用することができる。ここでドット状凸部の長径とは、ドットが円形の場合は直径を、楕円形、多角形、不定形の場合は同一面積の円形に換算した直径を表す。
ドット状凸部とドット状凸部の間隔は、20〜300μmの範囲が好ましく、30〜200nmの範囲がより好ましく、40〜150μmの範囲が更に好ましい。
上記のドット状凸部とドット状凸部の間隔とは、ドット状凸部の頂部と頂部の平均間隔である。いずれの間隔もほぼ一定であることが好ましい。
ドット状凸部の単位面積当たりの個数は、1mm2当たり、4〜1000個の範囲が好ましい。
ドット状凸部の配置は、規則性を有する配置にしてもよいし、あるいはランダム配置してもよい。ランダム配置には、FMスクリーニング法を用いることができる。
FMスクリーニング法は、ランダム・スクリーニング法またストカスティック・スクリニーング法と呼ばれることもあり、ドットとドットの間隔すなわち周期性を変調する方法を指す。具体的には、クリスタル・ラスター・スクリーニング法(アグファ・ゲバルト社)、ダイヤモンド・スクリーン法(ライノタイプ・ヘル社)、クラス・スクリーニング法およびフルトーン・スクリーニング法(サイテックス社)、ベルベット・スクリーニング法(ウグラ・コーハン社)、アキュトーン・スクリーニング法(ダネリー社)、メガドット・スクリーニング法(アメリカン・カラー社)、クリア・スクリーニング法(シーカラー社)、モネット・スクリーニング法(バルコ社)等が知られている。これら方法はいずれもドット発生のアルゴリズムは異なっているが、ドット密度の変化により濃淡を表現する方法であり、FMスクリーニング法の種々の態様である。
FMスクリーニングでは、インクが乗るドットのサイズは一定とし、画像の濃度に応じてドットの出現頻度が変化する。FMスクリーニングにおける各ドットのサイズはいわゆる網点に比べて小さいので、必要とするパターンを高分解能で再現することが可能である。FMスクリーニングにおけるドットは、いわゆる網点とは異なり、ドットの配列が周期的ではない。FMスクリーニングでは、ドットの配列が周期的でないので、モアレは生じないという特徴を持っている。
本発明にかかる遮光性凸部の平面形状の例を、図6〜9に示す。図6は、メッシュ状凸部の一例を示す模式平面図である。透明基材13の上に、正四角形の格子状のメッシュ状凸部11が形成されている。メッシュ状凸部11は細線で形成されている。細線からなるメッシュ状凸部11で囲まれた非凸部領域(光透過領域)12は、正四角形である。非凸部領域12の形状は、前述したように、他の多角形や円形等の形状であってもよい。
図7、図8は、図6の格子状メッシュパターンが、部分的に寸断された形状の一例を示す模式平面図である。図7は、メッシュの交点部分が寸断された形状であり、図8は、メッシュパターンの交点部分以外の細線が寸断された形状である。
図9は、ドット状凸部の一例を示す模式平面図である。複数のドット状の凸部11が透明基材13の上に形成されている。このドットは円形であるが、前述したように、ドットの平面形状は、楕円、多角形、不定形であってもよい。
図10は、図6のA−A模式断面図である。符号(W)はメッシュ状凸部11を形成する細線の線幅、符号(P)はピッチである。メッシュ状凸部が正方形の格子状メッシュパターンの場合は、細線からなるメッシュ状凸部11と隣接するメッシュ状凸部11との間隔がピッチとなる。符号(T)は凸部の高さである。
図11は、図9のB−B模式断面図である。符号(L)はドット状凸部11の長径、符号(M)はドット状凸部とドット状凸部の間隔、符号(T)は凸部の高さである。図11には、断面形状が山形のドットを例示したが、円柱状であってもよい。
本発明において、遮光性凸部と遮光性凸部の間の非凸部領域(光透過領域)の全面積に対する比率は、ある程度の高い透過率を確保するという観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、特に80%以上が好ましい。上限は、95%以下が好ましく、93%以下がより好ましい。
上記の非凸部領域の比率は、例えば、遮光性凸部が形成された面の平面映像を顕微鏡で撮影し、この平面映像を輝度分布により2階調化し、非凸部領域(光透過領域)の面積を全体の面積で除算することにより求めることができる。
遮光性の凸部は、ディスプレイからの発光を遮光する役目を有するが、ここで言う遮光とは、ディスプレイからの発光をほぼ完全に遮光することが最も好ましいが、80%以上遮光することができれば、遮光性凸部としての効果が発現する。より好ましくは、90%以上遮光することであり、更に好ましくは95%以上遮光することである。
また、遮光対象の光の波長は、可視光の全域を遮光することが好ましいが、少なくとも人間の視感感度が高い500〜600nmの波長の光を、上記の遮光率で遮光することによって、遮光性凸部の効果が得られる。
(遮光性のメッシュ状凸部の他の形成方法)
遮光性凸部を形成するための他の方法について説明する。プラズマディスプレイのように強度の電磁波を発するディスプレイ用のフィルターには、通常、電磁波遮蔽のための導電性メッシュが用いられている。前述のように、この導電性メッシュ自体が遮光性凸部であるが、該導電性メッシュを利用して、さらに遮光性のメッシュ状凸部を形成する方法について詳しく説明する。
具体的には、透明基材の一方の面に遮光性凸部である導電性メッシュを形成し、他方の面に、面方向に垂直な方向に投影した場合に該導電性メッシュと重なるメッシュ状凸部をさらに形成する方法である。この方法によって得られたディスプレイ用フィルターは、透明基材の一方の面に遮光性凸部である導電性メッシュを有し、透明基材の他方の面にも、前記導電性メッシュと投影的に重なるメッシュ状凸部を有する。
上記のメッシュ状凸部は、例えば、感光性樹脂を含む層を露光・現像することによって作製することができる。透明基材の導電性メッシュとは反対面に感光性樹脂層を設け、導電性メッシュをマスクとして導電性メッシュ側から感光性樹脂層を露光し現像することによって、導電性メッシュと投影的にメッシュ状凸部を形成することができる。
上記の方法でメッシュ状凸部を形成するための感光性樹脂は、ポジ型である。即ち、透明基材の一方の面に予め形成された導電性メッシュをマスクとして透明基材の反対面に設けられた感光性樹脂層を露光する際、導電性メッシュの細線部分は光が遮断されて透過しないのでその部分の感光性樹脂層は未露光となり、一方、導電性メッシュの開口部は光が透過するのでその部分の感光性樹脂層は露光される。導電性メッシュと投影的に重なるメッシュパターンを得るためには、感光性樹脂層の未露光部でメッシュパターンを形成する必要があり、従ってポジ型の感光性樹脂が用いられる。ポジ型感光性樹脂は、光が当たった部分が現像によって溶解除去され、未露光部分が残る。前記露光には紫外線を用いるのが好ましい。
ポジ型感光性樹脂は、カラーフィルター、ブラックマトリクス、プリント配線板、平版印刷版等の分野で用いられており、本発明においても従来から公知の感光性樹脂を用いることができる。現像液、現像方法についても公知のものを用いることができる。
ポジ型感光性樹脂としては、例えばナフトキノンジアジド、ベンゾキノンジアジドなどのキノンジアジド類や、ジアゾメチルドラム酸、ジアゾジメドン、3−ジアゾ−2,4−ジオンなどのジアゾ化合物や、o−ニトロベンジルエステル、オニウム塩、オニウム塩とポリフタルアルデヒド、コリン酸t−ブチルの混合物の様な光分解剤(溶解抑制剤)と、OH基を持ちアルカリに可溶なハイドロキノン、フロログルシン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンなどのモノマーや、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂、スチレンとマレイン酸、マレイミドの共重合物、フェノール系とメタクリル酸、スチレン、アクリロニトリルの共重合物などのポリマーの混合物や縮合物、あるいはポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ヘキサフルオロブチル、ポリメタクリル酸ジメチルテトラフルオロプロピル、ポリメタクリル酸トリクロロエチル、メタクリル酸メチル−アクリルニトリル共重合体、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリα−シアノアクリレート、ポリトリフルオロエチル−α−クロロアクリレートなどが挙げられる。この中でも汎用性の面から、ノボラック樹脂の混合・縮合物が好ましく用いられる。さらに好ましくは、ノボラック樹脂とキノンジアジドの混合・縮合物が用いられる。
感光性樹脂層は、前述したように遮光性物質を含有する。遮光性物質の種類や含有量等は前述したとおりである。
上述のようにして形成されたメッシュ状凸部と導電性メッシュの関係を、図12に示す。図12において、導電性メッシュ17と投影的に重なるメッシュ状凸部11が形成されている。
上記の態様は、プラズマディスプレイのような電磁波遮蔽機能が必要なディスプレイ用フィルターに好適である。遮光性凸部である導電性メッシュと投影的に重なるメッシュ状凸部を形成することによって、導電性メッシュと遮光性のメッシュ状凸部を有するディスプレイ用フィルターの透過率の低下を防ぐことができる。また、透明基材を挟んで導電性メッシュと遮光性のメッシュ状凸部を設けることによって、外光の遮蔽効果が向上し、外光による画像のコントラスト低下を抑制することができる。また更に、上記態様は、ディスプレイ用フィルターを1枚のみの透明基材で形成することが可能となり、低コスト化が図られる。
上記態様にかかる導電性メッシュとしては、前述の導電性メッシュを用いることができる。
上記した、面方向に垂直な方向に投影した場合に遮光性凸部である該導電性メッシュと重なるメッシュ状凸部を形成する態様において、メッシュ状凸部は、遮光性を有していなくとも、本発明が目的とする効果を得ることができる。
即ち、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着するとき、メッシュ状凸部に対して導電性メッシュをディスプレイ側に配置することによって、遮光性凸部である導電性メッシュとメッシュ状凸部とはディスプレイから発光される光に対して垂直方向に重なるので、導電性メッシュの遮光性を利用することができるようになる。導電性メッシュの遮光性を利用することによって、メッシュ状凸部は遮光性を有していなくとも、遮光性を有するメッシュ状凸部と同様の効果が得られる。
また上述のようにして、透明基材上に形成された遮光性凸部と非凸部領域を被覆するように樹脂層が積層される。そして、積層された樹脂層は、中心線平均粗さRaが50〜500nmの範囲にあることが重要である。
本発明において、樹脂層の中心線平均粗さRaは、好ましくは75〜400nmの範囲であり、より好ましくは100〜300nmの範囲であり、さらに好ましくは150〜250nmの範囲である。樹脂層の中心線平均粗さRaが50nm未満の場合は、映り込み防止の効果が得られない。即ち、樹脂層の中心線平均粗さRaが50nm未満になると、映り込み像の輪郭が明瞭になり、映り込み像が見えやすくなる。一方、樹脂層の中心線平均粗さRaが500nmを超える場合は、透過画像の鮮明性が劣化する。
また、樹脂層は、非凸部領域に対応した位置に凹みが形成されており、前記凹みの深さ(D)は、0.5〜5μmの範囲が好ましく、更に0.5〜4μmの範囲が好ましく、特に1〜3μmの範囲が好ましい。これによって、更に、映り込み防止効果が発現する。
上記した樹脂層の凹みの深さ(D)は、遮光性凸部上に形成された樹脂層の頂部山頂と、非凸部領域に形成された樹脂層の谷底との垂直距離である。
図13は、メッシュ状凸部の上に樹脂層が積層された態様の一例を示す模式断面図であり、図14は、ドット状凸部の上に樹脂層が積層された態様の一例を示す模式断面図である。符号14は、樹脂層である。ここで、樹脂層の凹み深さ(D)は、山頂15と谷底16との垂直距離である。
本発明において、前述したように、樹脂層の中心線平均粗さRaを50〜500nmの範囲に制御すること、あるいは樹脂層に非凸部領域に対応する凹みを形成することは、遮光性凸部の高さ、遮光性凸部の間隔(ピッチ)、樹脂層の塗工量、樹脂層の塗液粘度を調整することによって可能になる。
ここまで説明した他の形態の遮光性凸部を用いたディスプレイ用フィルターにおける、樹脂層の積層方法、樹脂層の構成、樹脂層の組成、樹脂層の塗工量、樹脂層の凹凸構造等は、前述の遮光性凸部として導電性メッシュを用いたプラズマディスプレイ用フィルターの中で説明した内容と同様の態様を適用可能である。
また、ここまで説明した他の形態の遮光性凸部を用いたディスプレイ用フィルターに用いられる、透明基材、必要に応じて設けられる他の機能層(近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能、およびNeカット機能からなる群より選ばれた少なくとも1つの機能を有する機能層)、及び必要に応じて設けられる接着層についても、前述の遮光性凸部として導電性メッシュを用いたプラズマディスプレイ用フィルターの中で説明した内容と同様の態様を用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(評価方法)
(1)樹脂層の中心線平均粗さRaの測定
ディスプレイ用フィルターサンプルの樹脂層側の中心線平均粗さRaを、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのフィルター1枚から任意の5箇所以上について計測し、その平均値をディスプレイ用フィルターサンプルの樹脂層のRaの値とした。
なお測定の際は、ディスプレイ用フィルターサンプルの粘着層側を厚み2.5mmのガラス板に貼り付けたものを用いた。
また、上記の計測に際し、導電性メッシュ及びメッシュ状遮光性凸部の場合は、測定針の移動方向を、導電性メッシュ及びメッシュ状遮光性凸部の細線に平行で、かつ導電性メッシュ及びメッシュ状遮光性凸部の非凸部領域(開口部)のほぼ中心を通るようにセットし、測定によって得られた波形のピッチが導電性メッシュあるいはメッシュ状遮光性凸部のピッチとほぼ同じように表れている計測値を、5つ採用し、平均した。
一方、遮光性凸部がドット状凸部の場合は、任意の位置で5箇所を測定し、平均した。
・測定条件:
送り速さ;0.5mm/S
カットオフ値λc;
Raが20nm以下の場合、λc=0.08mm
Raが20nmより大きく100nm以下の場合、λc=0.25mm
Raが100nmより大きく2000nm以下の場合、λc=0.8mm
評価長さ;8mm
尚、上記測定条件で測定するに際し、まずカットオフ値λc=0.8mmで測定し、その結果、Raが100nmより大きい場合はそのRaを採用する。一方、上記測定の結果、Raが100nm以下の場合は、λc=0.25mmで再測定し、その結果、Raが20nmより大きい場合は、そのRaを採用する。一方、上記の再測定の結果、Raが20nm以下の場合は、λc=0.08mmで測定し、そのRaを採用する。
・Ra:表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)でRaと定義されたパラメータ。JIS B0601−1982の方法に基づいて測定した。
(2) 樹脂層の凹み深さ(D)の測定
樹脂層の凹み深さ(D)を、レーザー顕微鏡VK−9700((株)キーエンス)を用いて測定した。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのフィルター1枚から任意の10箇所について計測し、その平均値をディスプレイ用フィルターサンプルの凹み深さDとした。尚、測定には、ディスプレイ用フィルターサンプルの粘着層側を厚み2.5mmのガラス板に貼り付けたものを用いた。
測定方法としては、観察・測定ソフトウェアVK−H1V1を用いて、まず5cm×5cmサイズのサンプルを、導電性メッシュの開口部の上辺と下辺が画面に平行になるように設置する。倍率は、導電性メッシュの少なくとも1つの開口部が入るように設定する。焦点を合わせ、測定高さ範囲を設定した後、測定を開始する。
次に、測定データを解析ソフトウェアVK−H1A1を用いて解析する。まず、測定データの画像ノイズを自動で除去し、測定時に対象物が微妙に傾いていた場合などの傾きを補正する。その後に、線粗さを測定する。このとき、少なくとも導電性メッシュの開口部1つを含む画面に対して平行な直線で解析する。
各種補正(高さスムージング→±12単純平均、傾き補正→直線(自動))を行い、カットオフ値λc=0.08mm、λs、λfはなしで、うねり曲線を算出し、JIS B0633−2001の規格に基づき算出される最大高さWzを樹脂層の凹み深さ(D)とした。
(3) 遮光性凸部の高さ、及び導電性メッシュの厚みの測定
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)にて観察し、遮光性凸部の高さ及び導電性メッシュの厚みを計測した。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について計測し、その平均値を導電性メッシュの厚みとした。
(4) 遮光性凸部の幅(長径)、ピッチ(間隔)、及び導電性メッシュの線幅、ピッチの測定
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、格子状導電性メッシュのピッチを測長した。各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の25箇所について計測し、その平均値を導電性メッシュの線幅、ピッチとした。なお、導電性メッシュのピッチとは、メッシュ構造のある開口部と、この開口部と1辺を共有する隣接する開口部との重心間の距離とする。尚、ディスプレイ用フィルターサンプルの粘着層側を厚み2.5mmのガラス板に貼り付けたものをサンプルとして用いた。
また、上記と同様の方法で、ドット状凸部の長径、凸部と凸部の間隔、及び1mm2当たりのドット状凸部の個数を計測した。
(5)粘度の測定
ブルックフィールド製デジタルレオメータ(DV―E)を用いて、スピンドルをLV1、回転数を100rpmに設定して、23℃における粘度の測定を行った。各サンプルについて、10回測定を行い、その平均値をハードコート層塗料の粘度とした。
(6)屈折率の測定
シリコンウエハー上に乾燥膜厚が0.1μmとなるように、測定対象となる層の原料塗剤を、スピンコーターを用いて塗布する。ついでイナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、130℃で1分間、加熱硬化することにより(低屈折率層の硬化条件)、被膜を得る。形成した被膜について、位相差測定装置(ニコン(株)製:NPDM−1000)で633nmにおける屈折率を測定する。
(7)積層の厚み測定
ディスプレイ用フィルターサンプルの断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて観察する。ガラス基板を用いたフィルターの場合はガラスから剥がして評価する。試料調整は超薄切片法を用いる。10万倍の倍率で観察し、各々の層の厚みを測定する。
(8)視感透過率の測定
ディスプレイ用フィルターサンプルについて、分光光度計(島津製作所製、UV3150PC)を用いて、観察者側(樹脂層側)からの入射光に対する透過率を波長300〜1300nmの範囲で測定し、可視光波長領域(380〜780nm)の視感透過率を求める。ここで、視感透過率(T)とは、フィルターを透過する光束Φtと、物体に入射する光束Φiとの比(Φt/Φi、JIS Z 8105にて規定)を百分率で表わした値、すなわちXYZ表色系における透過による物体色の三刺激値のYである。(JIS Z8701にて規定)
尚、ディスプレイ用フィルターサンプルの粘着層側を厚み2.5mmのガラス板に貼り付けたものをサンプルとして用いた。
(9)映り込みの評価
ディスプレイ用フィルターサンプルを視認面側(樹脂層側)が上になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に貼り付ける(粘着層側を黒紙に貼り付ける)。得られたサンプルを暗室中で、フィルターサンプルの樹脂層最表面から直上50cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。フィルターサンプルの視認面を正面30cmの距離から肉眼観察し、フィルターサンプル視認面に映り込んだ蛍光灯像の輪郭の鮮明性を評価する。
・映り込み像の輪郭が不鮮明 : ○(良)
・映り込み像の輪郭が僅かに不鮮明 : △(可)
・映り込み像の輪郭が鮮明に見える : ×(不可)
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
(10) 透過画像の評価
ディスプレイ用フィルターサンプルの粘着層側を厚み2.5mmのガラス板に貼り付ける。このサンプルをプラズマテレビ(TH-42PX500、松下電器産業(株)社製。但し、純正のフィルターを取り外したものを使用。)に、フィルターサンプルのガラス側がプラズマディスプレイパネルに面するようにし、プラズマディスプレイパネル表面からフィルターサンプルの視認側最表面(樹脂層最表面)までの距離が20mmとなる位置にパネル表面とフィルターサンプル視認面(樹脂層)が平行になるように設置し、ディスプレイパネルに白地に黒色の格子状のパターン画像を表示する。フィルターサンプル越しにパターン画像を目視評価して、透過画像の鮮明度を判定する。観察はフィルターの視認面の正面30cmの距離から行う。
・透過像が明瞭に見える : ○(良)
・透過像が僅かに不鮮明 : △(可)
・透過像がぼける : ×(不可)
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
(11)樹脂層占有率(R)の測定
各実施例・比較例について、レーザー顕微鏡VK−9700((株)キーエンス)を用いて、20cm×20cmサイズのフィルターサンプル1枚から任意の10箇所について計測し、その平均値を求めた。
まずサンプルを1cm×1cmサイズにカットし、イオンコーターを用いてフィルターサンプルの樹脂層側の表面を白金でスパッタする。スパッタの条件は、真空度が13.3Pa、電流値が2mA、スパッタ時間が15分間である。
次に、フィルターサンプルの樹脂層側の三次元画像データをソフトウェアVK−H1V1(観察・測定ソフトウェア)を用いて測定する。このとき、導電性メッシュの1つの開口部(遮光性メッシュ状凸部の非凸部領域)の重心と隣接する開口部の重心の間の樹脂層の3次元画像データを撮る。
次に、上記で得られた3次元画像データを解析ソフトウェアVK−H1A1を用いて、垂直方向に二次元的に解析し、二次元プロファイルを求める。まず、3次元画像データの画像ノイズを自動で除去し、測定時に対象物が微妙に傾いていた場合などの傾きを補正する。その後に、点A、点B、点Cを通る直線でプロファイルを表示する。このプロファイルから、直線ABからの点Cの高さを測定し、三角形ABCの面積(α)を算出する(直線ABの長さは導電性メッシュのピッチに等しい)。また、区分として点Aと点B間を選択すると、三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積(β)が算出される。得られた三角形ABCの面積(α)、及び三角形ABCの中に存在する樹脂層の面積(β)から、下記式により樹脂層占有率(R)を算出する。
R=(β/α)×100
[実施例1]
以下の要領でプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<導電層の作製>
透明基材として光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標)U46、厚み100μm)を用い、易接着面に両面黒化処理された銅箔を接着剤で貼合した。銅箔の周辺部を残してフォトリソグラフィ法で、導電性メッシュの線幅が12μm、ピッチが100μmとなるように格子状にパターニングして導電性メッシュを有する導電層を作製した。導電性メッシュの厚みは3μmで、開口率は75%であった。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が50%重量となるようにメチルエチルケトンで希釈した塗料に、更に、平均粒子径3μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を1重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗料の粘度は5mPa・sであった。尚、上記のアクリル系粒子の濃度は、ハードコート層の有機溶媒を除く全成分100重量%に対する濃度であり、以下の実施例も同義である。
この塗料を、上記で得られた導電層の導電性メッシュ上及び開口部上に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、3.5g/m2であった。
<反射防止層の作製>
上記ハードコート層形成面に、市販の高屈折率・帯電防止塗料(JSR製 オプスター (登録商標) TU4005)をイソプロピルアルコールで固形分濃度8%に希釈後、マイクログラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層上に屈折率が1.65、厚みが135nmの高屈折率層を形成した。
次に、上記高屈折率層形成面に、下記の低屈折率層の塗料をマイクログラビアコーターで塗布した。次いで130℃で1分間、乾燥および硬化させ、高屈折率層上に屈折率1.36、厚み90nmの低屈折率層を形成することで、反射防止層を作製した。
<低屈折率層用塗料の作製>
メチルトリメトキシシラン95.2重量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4重量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル300重量部、イソプロパノール100重量部に溶解した。
この溶液に、数平均粒子径50nmの外殻の内部に空洞を有するシリカ微粒子分散液(イソプロパノール分散型、固形分濃度20.5%、触媒化成工業社製)297.9重量部、水54重量部およびギ酸1.8重量部を、撹拌しながら反応温度が30℃を越えないように滴下した。
滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、その後、溶液をバス温85℃で2時間加熱し、内温を80℃まで上げて、1.5時間加熱した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液に、アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名 アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)4.8重量部をメタノール125重量部に溶解したものを添加し、さらにイソプロパノール 1500重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル250重量部を添加して、室温にて2時間撹拌し、低屈折率塗料を作製した。
<Neカット機能を有する近赤外線遮断層の作製>
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製 KAYASORB(登録商標) IRG−050を14.5重量部、日本触媒(株)製 イーエクスカラー(登録商標) IR−10Aを8重量部、さらに593nmに主吸収ピークを有する有機色素として、山田化学工業(株)製TAP−2を2.9重量部、メチルエチルケトン2000重量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製 ハルスハイブリッド(登録商標) IR−G205(固形分濃度29%溶液)2000重量部と攪拌混合して塗料を作製した。
ハードコート層を形成した側と反対側の光学用ポリエステルフィルム面に、ダイコーターを用いて上記塗料を塗工し、120℃で乾燥して、厚み10μmの近赤外線遮断層を作製した。
<色補正層の作製>
アクリル系透明粘着剤中に有機系色補正色素を含有させた。各水準における色素添加量は、最終的なフィルターの視感透過率が40%になるように調整した。この粘着剤を上記の近赤外線遮断層の上に厚み25μmで積層した。
[実施例2]
下記の導電層とハードコート層を用いる点、及びハードコート層上に反射防止層は積層しない点を除いては、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<導電層の作製>
透明基材として光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標)U46、厚み100μm)を用い、易接着面に両面黒化処理された銅箔を接着剤で貼合した。銅箔の周辺部を残してフォトリソグラフィ法で、導電性メッシュの幅が12μm、ピッチが300μmとなるように格子状にパターニングして導電性メッシュを有する導電層を作製した。導電性メッシュの厚みは5μmで、開口率は88%であった。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が50重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、更に、平均粒子径3μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を1重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗料の粘度は6mPa・sであった。この塗料を、上記で得られた導電層の導電性メッシュ上及び開口部上に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、8g/m2であった。
[実施例3]
実施例2と同様にして、光学用ポリエステルフィルム上に導電層を形成し、更に、ハードコート層を積層した。続いて、ハードコート層上に、実施例1と同様にして低屈折率層を形成して、プラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[比較例1]
実施例2と同様にして導電層を作製した。導電層の導電性メッシュ上に、下記のハードコート層を塗工する以外は、実施例2と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が50重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、更に、平均粒子径5μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を20重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は6mPa・sであった。この塗料を、上記で得られた導電層の導電性メッシュ上及び開口部上に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、8g/m2であった。
[比較例2]
実施例2と同様にして、厚みが9μm、線幅が12μm、ピッチが300μmの導電性メッシュを有する導電層を作製した。導電性メッシュの開口率は87%であった。導電性メッシュ上に、実施例2と同様のハードコート層用塗液を、重量塗工量が7g/m2となるように塗工したところ、塗工面に筋やムラが発生し、評価ができるサンプルが得られなかった。
(評価)
上記で作製したそれぞれのサンプルについて、樹脂層の凹みの深さ(D)、樹脂層の中心線平均粗さRa、映り込み、及び透過画像鮮明性について評価した。その結果を表1に示す。
表1から、本発明の実施例は、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例1は、ハードコート層が粒子を多く含むために、樹脂層の中心線平均粗さRaが500nmを越えており、その結果、透過画像鮮明性が低下している。
比較例2は、導電性メッシュの厚みが9μmと大きいために、ハードコート層の塗工性が悪く、塗工ムラや筋が発生した。
[実施例4]
<導電層の作製>
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U36、厚み100μm)の片面に、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いて、格子状メッシュパターンにグラビア印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施すことによって、導電性メッシュを作製した。
この導電性メッシュは、線幅が20μm、ピッチが300μm、厚みが5μm、開口率が87%であった。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料を、上記で得られた導電性メッシュ上及び開口部上に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、6.5g/m2であった。
<反射防止層の作製>
上記のハードコート層上に、実施例1と同様にして低屈折率層を塗工形成した。
その他は、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例5]
実施例4と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、実施例4と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が8.5g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例4と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例6]
実施例4と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、実施例4と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が10.5g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例4と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例7]
実施例4と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、下記のハードコート層用塗料を、重量塗工量が4.5g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例4と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、平均粒子径1.5μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を2重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
[実施例8]
実施例4と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、下記のハードコート層用塗料を、重量塗工量が7g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例4と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを30重量部、N−ビニルピロリドンを8重量部、メチルメタクリレートを2重量部、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング(株)製のSH190)を1重量部、メチルエチルケトンを60重量部含む塗液を作製した。この塗液の粘度は4mPa・sであった。
(評価)
上記で作製したそれぞれのサンプルについて、樹脂層の凹みの深さ(D)、樹脂層の中心線平均粗さRa、映り込み、及び透過画像鮮明性について評価した。但し、透過画像鮮明性については、プラズマディスプレイパネル面に直接にフィルターを貼り付けて、実施例1の評価基準に準じて評価した。その結果を表2に示す。
表2の結果から分かるように、本発明の実施例は、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れている。
[実施例9]
<導電層の作製>
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U426、厚み100μm)の片面に、常温にて3×10−3Paの真空下で、真空蒸着法によりニッケル層(厚み0.02μm)を形成した。さらにその上に、同じく常温にて3×10−3Paの真空下で、真空蒸着法により銅層(厚み3μm)を形成した。その後、この銅層側の表面にフォトレジスト層を塗工形成し、格子状メッシュパターンのマスクを介してフォトレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施して、導電性メッシュを作製した。さらに、導電性メッシュに黒化処理(酸化処理)を施した。この導電性メッシュは、線幅が13μm、ピッチが300μm、厚みが3μm、開口率が89%であった。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料を、上記で得られた導電性メッシュ上及び開口部上に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、2.5g/m2であった。
<反射防止層の作製>
上記のハードコート層上に、実施例1と同様にして低屈折率層を塗工形成した。
その他は、実施例1と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例10]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、実施例9と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が3.6g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例11]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、下記のハードコート層用塗料を、重量塗工量が4.2g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、平均粒子径1.5μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を2重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
[実施例12]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、下記のハードコート層用塗料を、重量塗工量が3.6g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを30重量部、N−ビニルピロリドンを8重量部、メチルメタクリレートを2重量部、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング(株)製のSH190)を1重量部、メチルエチルケトンを60重量部含む塗液を作製した。この塗液の粘度は4mPa・sであった。
[比較例3]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。導電性メッシュ上に、実施例9と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が17g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例13]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。但し、導電性メッシュの線幅が7μm、ピッチが150μmとなるように作製した。この導電性メッシュの厚みは3μmで、開口率は88%であった。導電性メッシュ上に、実施例9と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が3.6g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例14]
実施例13と同様の導電性メッシュ上に、実施例9と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が2.8g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例15]
実施例9と同様にして、導電性メッシュを作製した。但し、導電性メッシュの線幅が4μm、ピッチが100μmとなるように作製した。この導電性メッシュの厚みは3μmで、開口率は90%であった。導電性メッシュ上に、実施例9と同様のハードコート層用塗料を、重量塗工量が4.2g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[実施例16]
実施例13と同様にして導電性メッシュを作製した。この導電性メッシュ上に、下記の高屈折率ハードコート層を、重量塗工量が3.6g/m2となるように塗工形成した。更に、高屈折率ハードコート層上に実施例1の低屈折率層を塗工形成した。
<高屈折率ハードコート層の作製>
東洋インキ(株)製の高屈折率性ハードコート層塗工液「TYS63−004」(平均一次粒子径が40nmの酸化アンチモン微粒子を含有;粘度6.5mPa・s)を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。このハードコート層の屈折率は、1.63であった。
[実施例17]
実施例13と同様の導電性メッシュ上に、ハードコート層用塗料として市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%;粘度9mPa・s)を、重量塗工量が10g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
[比較例4]
実施例13と同様の導電性メッシュ上に、下記のハードコート層用塗料を、重量塗工量が2.8g/m2となるように塗工した。反射防止層は積層しなかった。その他は、実施例9と同様にしてプラズマディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、平均粒子径3.5μmの架橋ポリスチレン系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)SXシリーズ)を9重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
(評価)
上記で作製したそれぞれのサンプルについて、樹脂層の凹みの深さ(D)、樹脂層の中心線平均粗さRa、映り込み、及び透過画像鮮明性について評価した。但し、透過画像鮮明性については、プラズマディスプレイパネル面に直接にフィルターを貼り付けて、実施例1の評価基準に準じて評価した。その結果を表3に示す。
表3の結果から分かるように、本発明の実施例は、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れている。
比較例3は、ハードコート層の塗工量が17g/m2と多く、そのために樹脂層(ハードコート層)に導電性メッシュの存在しない部分に凹みを形成することができず、また、樹脂層表面の中心線平均粗さRaも50nm未満であり、映り込み防止性能が全く得られなかった。また、更に、比較例3は、上記したようにハードコート層の塗工量が多いために、プラズマディスプレイ用フィルターにカールが発生した。
比較例4は、導電性メッシュの厚み3μmより大きい粒子(平均粒子径3.5μm)を比較的多量に含有しており、樹脂層の中心線平均粗さRaが500nmを越え、透過画像鮮明性が低下した。
(実施例101)
透明基材として光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標)U46、厚み100μm)を用い、このフィルムの片面に、下記の遮光性凸部形成用塗料を乾燥膜厚みが5μmとなるように塗工、乾燥して、遮光性凸部形成用皮膜を積層した。
<遮光性凸部形成用塗料>
三菱マテリアル(株)製チタンブラック13M−T(窒化チタン)8.4重量部、大同化成(株)製の酸性処理カーボンブラック9930CF 12.5重量部、Degussa(株)製のカーボンブラックPRINTEX25 12.5重量部、“ソルスパース(登録商標)”12000(アビシヤ(株)製)1.68重量部とアクリルポリマー(下記参照)の3―メチル―3―メトキシブタノール45重量%溶液56.14重量部、ビックケミ・ジャパン(株)製“Disperbyk(登録商標)”167(分散剤)24.29重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート884.5重量部を秤量し、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて2500rpmで3時間分散し、顔料濃度3.34重量%の顔料分散液を得た。
この顔料分散液57.74重量部にアクリルポリマー(下記参照)の3―メチル―3―メトキシブタノール45重量%溶液0.63重量部、ビスフェノキシエタノールフルオレン系4官能アクリレート化合物(下記参照)の3−メチル−3−メトキシ−ブチルアセテート30重量%溶液7.56重量部、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)の3−メチル−3−メトキシ−ブチルアセテート30重量%溶液3.24重量部、光重合開始剤として“イルガキュア(登録商標)”379 0.24重量部、旭電化工業(株)“アデカ(登録商標)オプトマー”N−1919 1.47重量部およびN,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン0.19重量部、接着性改良剤としてビニルトリメトキシシラン0.14重量部、シリコーン系界面活性剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10重量%溶液0.28重量部を3―メチル―3−メトキシ−ブチルアセテート28.51重量部に溶解した溶液を添加、混合し、遮光性凸部形成用塗料を調製した。上記塗料における黒色顔料の含有比率は、有機溶剤を除く全成分に対して、11重量%である。
<アクリルポリマー>
日本国特許第3120476号公報の実施例1に記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(重量組成比33/34/33)を合成後、グリシジルメタクリレート33重量部を付加させ、精製水で再沈、濾過、乾燥することにより、平均分子量(Mw)9,000、酸価70(mgKOH/g:JIS K−5407による)の特性を有するアクリルポリマー(P1)粉末を得た。
<ビスフェノキシエタノールフルオレン系4官能アクリレート化合物>
先ず、容器に、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル296重量部(エポキシ当量296g/eq)、ジメチルベンジルアミン3.4重量部、p−メトキシフェノール0.34重量部、アクリル酸72.06重量部(1モル)を仕込み、20ml/分の流速で空気を吹き込みながら昇温し、110〜120℃の温度で反応させた。この間、酸価を測定し、2.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで10時間を要した。これによってビスフェノキシエタノールフルオレン型アクリレートを得た。
次いで、容器に、上記で合成したビスフェノキシエタノールフルオレン型アクリレート184.0重量部(水酸基当量368g/eq、計算値)、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート100重量部、トリエチルアミン26.6重量部(0.263モル)を仕込み溶解させ水浴で冷却した後、イソフタルクロライド25.38重量部(0.125モル:水酸基の半分を酸塩化物と反応させるのに必要な量)を3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート100重量部に溶解した溶液を滴下し加えた。さらに室温で2時間反応させ、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート267.3重量部で希釈後、生じた白色沈殿を加圧濾過し、ビスフェノキシエタノールフルオレン系4官能アクリレート化合物の30重量%の溶液を得た。
<遮光性凸部の形成>
上記のようにして透明基材上に積層された遮光性凸部形成用皮膜に、正方形の格子状パターンからなるフォトマスクを介して紫外光で露光した。続いて、アルカリ現像液を用いて現像処理を施し、凸部の幅が20μm、ピッチが300μm、高さが5μmの遮光性のメッシュ状凸部を形成した。このメッシュ状凸部の開口率は87%であった。
<透明樹脂層の塗工>
上記で作製した遮光性凸部と非凸領域を被覆するように、下記のハードコート層を塗工した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈してハードコート層用の塗料を作製した。塗液の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、6.5g/m2であった。
<フィルターの作製>
上記で得たハードコート層を積層したフィルムのハードコート層とは逆の面に、近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素とを含有し、透過率調整を目的として有機系色補正色素を含有するアクリル樹脂系粘着剤を厚さ25μmで積層した。有機系色補正色素は作製したフィルターの視感透過率が40%となるように添加量を調整した。
(実施例102)
ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)を8.5g/m2に変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(実施例103)
ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)を10.5g/m2に変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(実施例104)
ハードコート層の作製を下記のように変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、平均粒子径1.5μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を2重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗料の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、4.5g/m2であった。
(実施例105)
ハードコート層の作製を下記のように変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを30重量部、N−ビニルピロリドンを8重量部、メチルメタクリレートを2重量部、シリコーン系レベリング剤(東レダウコーニング(株)製のSH190)を1重量部、メチルエチルケトンを60重量部含む塗料を作製した。この塗料の粘度は4mPa・sであった。この塗料をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、7g/m2であった。
(実施例106)
実施例102で遮光性凸部の上に塗工形成されたハードコート層の上に、更に、下記の反射防止層(高屈折率層/低屈折率層)を作製した。
その他は実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
<反射防止層の作製>
上記ハードコート層形成面に、市販の高屈折率・帯電防止塗料(JSR製 オプスター (登録商標) TU4005)をイソプロピルアルコールで固形分濃度8%に希釈後、マイクログラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層上に屈折率が1.65、厚みが135nmの高屈折率層を形成した。
次に、上記高屈折率層形成面に、下記の低屈折率層の塗料をマイクログラビアコーターで塗布した。次いで130℃で1分間、乾燥および硬化させ、高屈折率層上に屈折率1.36、厚み90nmの低屈折率層を形成することで、反射防止層を作製した。
<低屈折率層用塗料の作製>
メチルトリメトキシシラン95.2重量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン65.4重量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテル300重量部、イソプロパノール100重量部に溶解した。
この溶液に、数平均粒子径50nmの外殻の内部に空洞を有するシリカ微粒子分散液(イソプロパノール分散型、固形分濃度20.5%、触媒化成工業社製)297.9重量部、水54重量部およびギ酸1.8重量部を、撹拌しながら反応温度が30℃を越えないように滴下した。
滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、その後、溶液をバス温85℃で2時間加熱し、内温を80℃まで上げて、1.5時間加熱した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液に、アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名 アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)4.8重量部をメタノール125重量部に溶解したものを添加し、さらにイソプロパノール 1500重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル250重量部を添加して、室温にて2時間撹拌し、低屈折率塗料を作製した。
(実施例107)
実施例102で遮光性凸部の上に塗工形成されたハードコート層の上に、更に、実施例106の低屈折率層用塗料のみを、実施例106と同様に塗工した。
その他は実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(比較例101)
ハードコート層の作製を下記のように変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
<ハードコート層の作製>
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534;固形分濃度60重量%)を、固形分濃度が40重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈し、更に、平均粒子径5μmのアクリル系粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を20重量%添加してハードコート層用の塗料を作製した。塗料の粘度は2.5mPa・sであった。この塗料を、上記で得られた遮光性凸部上及び非凸部領域に、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)は、8.5g/m2であった。
(比較例102)
ハードコート層の重量塗工量(乾燥、硬化後)を23g/m2に変更する以外は、実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(比較例103)
黒色顔料を添加しない以外は、実施例101と同様にしてメッシュ状凸部を形成した。このメッシュ状凸部の上に、実施例104と同様のハードコート層を実施例104と同様にして塗工した。
その他は実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(評価)
上記のようにして作製したディスプレイ用フィルターについて、透明樹脂層の凹みの深さ(D)、中心線平均粗さRa、映り込みの評価、及び透過画像評価の結果を表4に示す。但し、透過画像鮮明性については、プラズマディスプレイパネル面に直接にフィルターを貼り付けて、実施例1の評価基準に準じて評価した。
表4から、本発明の実施例は、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れていることが分かる。
これに対して、比較例101は、ハードコート層が粒子を多く含むために、透明樹脂層の中心線平均粗さRaが500nmを越えており、その結果、透過画像鮮明性が低下している。
比較例102は、ハードコート層の塗工量が23g/m2と多いために、透明樹脂層の中心線平均粗さRaが50nmより小さく、かつ透明樹脂層の凹み深さ(D)が0.1μmと小さく、その結果、映り込みを防止することができない。また、比較例102は、ハードコート層の塗工量が23g/m2と多いために、ディスプレイ用フィルターが大きくカールした。
比較例103は、メッシュ状凸部が黒色顔料を含まず、遮光性を有していないので、透過画像鮮明性が低下している。
(実施例108)
透明基材として光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標)U46、厚み100μm)を用い、このフィルムの片面に、実施例1と同様の遮光性凸部形成用塗料を乾燥膜厚みが3μmとなるように塗工、乾燥して、遮光性凸部形成用皮膜を積層した。
<遮光性凸部の形成>
上記のようにして透明基材上に積層された遮光性凸部形成用皮膜に円形パターンからなるフォトマスクを介して紫外光で露光した。続いて、アルカリ現像液を用いて現像処理を施し、凸部の長径が20μm、間隔が40μm、高さが3μmの遮光性のドット状凸部を形成した。ドット状凸部の1mm2当たりの個数は、625個であり、開口率は80%であった。
<ハードコート層の作製>
実施例101と同様のハードコート層を、重量塗工量(乾燥、硬化後)が3g/m2となるように塗工した。
その他は実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(実施例109)
<遮光性凸部の形成>
実施例108と同様にしてドット状凸部を形成した。但し、ドット状凸部の高さを5μmに変更した。
<ハードコート層の作製>
実施例101と同様のハードコート層を、重量塗工量(乾燥、硬化後)が7g/m2となるように塗工した。
その他は実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(比較例104)
黒色顔料を含まず、遮光性を有しない以外は、実施例109と同様にして、ドット状凸部を形成し、実施例101と同様のハードコート層を重量塗工量が7g/m2となるように塗工した。
その他は実施例101と同様にしてディスプレイ用フィルターを作製した。
(評価)
上記のようにして作製したディスプレイ用フィルターについて、透明樹脂層の凹みの深さ(D)、中心線平均粗さRa、映り込みの評価、及び透過画像評価の結果を表25に示す。但し、透過画像鮮明性については、プラズマディスプレイパネル面に直接にフィルターを貼り付けて、実施例1の評価基準に準じて評価した。
表5から、本発明の実施例は、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れていることが分かる。
比較例104は、ドット状凸部が黒色顔料を含まず、遮光性を有していないので、透過画像鮮明性が低下している。
(実施例110)
<導電性メッシュの作製>
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製のルミラー(登録商標)U426、厚み100μm)の片面に、常温にて3×10−3Paの真空下で、真空蒸着法によりニッケル層(厚み0.02μm)を形成した。さらにその上に、同じく常温にて3×10−3Paの真空下で、真空蒸着法により銅層(厚み3μm)を形成した。その後、この銅層側の表面にフォトレジスト層を塗工形成し、格子状メッシュパターンのマスクを介してフォトレジスト層を露光、現像し、次いでエッチング処理を施して、導電性メッシュを作製した。さらに、導電性メッシュに黒化処理(酸化処理)を施した。この導電性メッシュは、線幅が13μm、ピッチが300μm、厚みが3μm、開口率が89%であった。
<メッシュ状凸部の形成>
ポジ型感光性樹脂(ノボラック樹脂/キノンジアジド系樹脂溶液;シプレイ・ファーイースト(株)製)に、実施例1の遮光性凸部形成用塗料の顔料分散液を、樹脂成分に対して黒色顔料が8重量%となるように混合して、遮光性凸部形成用塗料を調製した。この塗料を、前記光学ポリエステルフィルムの導電性メッシュとは反対面に、乾燥厚みが3μmになるように塗工して遮光性凸部形成用皮膜を積層した。
次いで、導電性メッシュをマスクとして導電性メッシュ側から紫外線を照射して上記遮光性凸部形成用皮膜を露光した後、アルカリ水溶液で現像して、導電性メッシュと投影的に重なるメッシュパターンからなる遮光性メッシュ状凸部を形成した。
<ハードコート層の作製>
実施例101と同様のハードコート層を、メッシュ状凸部の上に、重量塗工量(乾燥、硬化後)が3.6g/m2となるように塗工した。
<フィルターの作製>
次に導電性メッシュの形成面に、近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素とを含有し、透過率調整を目的として有機系色補正色素を含有するアクリル樹脂系粘着剤を厚さ25μmで積層した。有機系色補正色素は作製したフィルターの視感透過率が40%となるように添加量を調整した。
(実施例111)
<導電性メッシュの作製>
実施例110と同様にして導電性メッシュを作製した。
<メッシュ状凸部の形成>
次に、導電性メッシュとは反対面に、ポジ型感光性樹脂(ノボラック樹脂/キノンジアジド系樹脂溶液;シプレイ・ファーイースト(株)製)を、乾燥厚みが3μmになるように塗工して凸部形成用皮膜を積層した。但し、この凸部形成用皮膜は、遮光性を有しない。
次いで、導電性メッシュをマスクとして導電性メッシュ側から紫外線を照射して上記遮光性凸部形成用皮膜を露光した後、アルカリ水溶液で現像して、導電性メッシュと投影的に重なるメッシュパターンからなる遮光性を有しないメッシュ状凸部を形成した。
<ハードコート層の作製>
実施例101と同様のハードコート層を、メッシュ状凸部の上に、重量塗工量(乾燥、硬化後)が3.6g/m2となるように塗工した。
<フィルターの作製>
次に導電性メッシュの形成面に、近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素とを含有し、透過率調整を目的として有機系色補正色素を含有するアクリル樹脂系粘着剤を厚さ25μmで積層した。有機系色補正色素は作製したフィルターの視感透過率が40%となるように添加量を調整した。
(評価)
上記のようにして作製したディスプレイ用フィルターについて、透明樹脂層の凹みの深さ(D)、中心線平均粗さRa、映り込みの評価、及び透過画像評価の結果を表6に示す。但し、透過画像鮮明性については、プラズマディスプレイパネル面に直接にフィルターを貼り付けて、実施例1の評価基準に準じて評価した。
表6から、実施例110は、導電性メッシュと投影的に重なるメッシュパターンからなる遮光性メッシュ状凸部を形成した態様であるが、映り込み防止及び透過画像鮮明性に優れていることが分かる。
また、実施例111は、導電性メッシュと投影的に重なるメッシュパターンからなる遮光性を有しないメッシュ状凸部を形成した態様であるが、メッシュ状凸部の垂直下方には遮光性の導電性メッシュが配置されているので、結果的にメッシュ状凸部はディスプレイからの発光を遮蔽していることになり、透過画像鮮明性は良好となり、かつ、映り込み防止も優れている。