JP2010048854A - ディスプレイ用フィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】
導電層上に直接、光吸収機能を含む機能性表面層を積層することにより、1枚基材コーティング技術特有の問題である、メッシュ状の導電性に起因する外光の反射と散乱を抑制しコントラストの低下を抑制したディスプレイ用フィルターを提供する。
【解決手段】
透明基材上に、メッシュ状の導電層と該導電層上に直接に配置された機能性表面層を有するディスプレイ用フィルターであって、該機能性表面層が黒色粒子を含有するディスプレイ用フィルターであって、その機能性表面層は、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能および防汚機能からなる群から選ばれた少なくとも一つの機能を持つディスプレイ用フィルター。
【選択図】 図1

Description

本発明は、メッシュ状の導電層(導電性メッシュ)に起因するコントラストの低下を抑制した低コストのディスプレイ用フィルターに関するものである。
プラズマディスプレイパネルには、プラズマディスプレイパネルの機能を向上させるため、その前面に光学フィルターが取り付けられている。このようなディスプレイ用フィルターに必要な機能として、(1)薄膜ガラス製のディスプレイ本体(パネル)に対する機械的強度の付与、(2)プラズマディスプレイパネルから放出される電磁波の遮蔽、(3)プラズマディスプレイパネルから放出される赤外線の遮蔽、(4)外光の反射防止、および(5)色調補正等を挙げることができる。
現在、市場に出ているプラズマディスプレイに搭載されているディスプレイ用フィルターは、各々上記(1)〜(5)の機能を有する複数の層を積層することで形成されている。具体的には、プラズマディスプレイパネルに対して機械的強度を付与するために、ガラス等の透明基板、電磁波を遮蔽するための導電層、赤外線を遮蔽するための近赤外線遮断層、紫外線を遮断するための紫外線遮断層、外光の反射防止のための反射防止層、および色調を補正するために可視光領域に吸収のある色素を含有した色調補正層などで形成されている。
プラズマディスプレイに要求される性能は年々厳しくなってきており、ディスプレイ用フィルターに対する要求もより高度になってきている。また、プラズマディスプレイの低価格化に伴って、ディスプレイ用フィルターも年々低価格化してきており、コストダウンの要求も厳しくなっている。一般的なディスプレイ用フィルターは、反射防止層、色調補正層および近赤外線遮断層等を有する光学機能性プラスチックフィルムと導電層が形成されたプラスチックフィルムとを接着層を介して積層して形成されるが、この2枚プラスチックフィルムからなるディスプレイ用フィルターに対して、1枚のプラスチックフィルムに樹脂層や反射防止層を積層するディスプレイ用フィルターが提案されている(特許文献1および特許文献2参照。)。
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2で提案されている1枚基材コーティング技術では、従来の2枚プラスチックフィルムを使用したディスプレイ用フィルターに比べ、コスト面では改善されているが、色吸収層が導電性メッシュよりパネル側にあるため、照明や太陽光などの外光が、光吸収層で吸収される前に導電性メッシュにより反射し、導電性メッシュの輝度がそのまま反射、散乱されてしまい、明所コントラストが低下しやすいという、1枚基材コーティング技術特有の新たな問題は認識されていない。
一方、高コントラストを目的に、導電性メッシュ(メッシュ状の導電層)自体の輝度を抑えるため、導電性メッシュ製造時に黒化メッキや黒化処理等の処理を行い反射輝度の低下を目的とした導電性メッシュも提案されている。
しかしながら、導電性メッシュ自体の輝度を抑えるため、黒化処理(例えば、酸化処理)や黒化メッキ等の導電性メッシュ製造時の処理だけでは、導電性メッシュとしての性能はよいが、導電性メッシュより視認側に光吸収層が無い場合は、反射輝度が高くコントラストがなお不十分である。
特開2007−140282号公報 特開2007−243158号公報
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、導電層上に直接、光吸収機能を含む機能性表面層を積層することにより、1枚基材コーティング技術特有の問題である、メッシュ状の導電性に起因する外光の反射と散乱を抑制し高コントラスト、且つ、反射防止機能、防眩機能および防汚機能を付与することができるディスプレイ用フィルターを低コストで提供することにある。
本発明は上記目的を達成せんとするものであって、本発明のディスプレイ用フィルターは、透明基材上に、メッシュ状の導電層と該導電層上に直接に配置された機能性表面層を有するディスプレイ用フィルターであって、該機能性表面層が黒色粒子を含有することを特徴とするディスプレイ用フィルターである。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記の機能性表面層は、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能および防汚機能からなる群から選ばれた少なくとも一つの機能を持つことである。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記の機能性表面層の厚みは、導電性メッシュ上に積層された状態で1〜15μmの厚さである。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記の機能性表面層は、平均粒径0.01〜8μmの黒色粒子を含有することである。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記の機能性表面層は、全成分に対して前記の黒色粒子を0.01〜20質量%含有するものである。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記のメッシュ状の導電層の厚みは、0.1〜8μmの範囲である
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、前記のメッシュ状の導電層上に機能性表面層を積層した状態での全光線透過率は40%〜90%の範囲である。
本発明のディスプレイ用フィルターの好ましい態様によれば、本発明のディスプレイ用フィルターは、更に、近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能、およびNeカット機能からなる群から選ばれた少なくとも1つの機能を有する機能層を有するものである。
本発明によれば、導電メッシュ状の導電層に起因するコントラストの低下を抑制した低コストのディスプレイ用フィルターが得られる。
プラズマディスプレイパネルにおいて明所コントラストは、主に、プラズマディスプレイパネルからの発光(白輝度)と、ディスプレイパネル、ディスプレイフィルターの表面、および界面での反射光(黒輝度)から成る。白輝度については、ディスプレイ用フィルターの透過率に比例し依存しているので、特にコントラストの問題は無い。しかしながら、黒輝度においては、メッシュ状の導電層からの散乱と反射光(主に拡散反射の強度)により左右される。プラズマディスプレイパネルからの外光の反射については、二枚基材構成、一枚基材構成でも同じように、ディスプレイフィルター内の光吸収層(色補正層など)によって吸収されるためコントラストは問題ではないが、ディスプレイフィルターの表面および界面の反射光は、反射光が強いメッシュ状の導電層より、光吸収層が視認側かパネル側に積層されているかどうかで大きく表面の反射強度が変わってしまう。二枚基材構成のディスプレイ用フィルターでは、主にメッシュ状の導電層より視認側に光吸収層が積層されており、メッシュ状の導電層の反射光は光吸収層により吸収されるため、コントラストの低下は起きない。しかしながら、メッシュ状の導電層上に塗布する一枚基材構成の場合、これまでの技術では、メッシュ状の導電層上には、主にハードコート層またはハードコート層と反射防止層からなるほぼ透明な機能性表面層しかなく、光を吸収する層がメッシュ状の導電層上にないため、メッシュ状の導電層の外光反射光が光吸収層で吸収されること無く反射されるため、反射光により黒輝度が著しく増加してしまう。その結果、コントラストが低下し、黒輝度の高いフィルターとなってしまう問題があった。
本発明のディスプレイ用フィルターは、フィルター内の光吸収層の積層位置を、従来の二枚基材構成と同じ、メッシュ状の導電層より視認側、すなわち、メッシュ状の導電層上に光吸収層も兼ね備える機能性表面層を積層することにより、一枚基材構成のフィルターでも、コントラストの低下を抑制することができ、コントラスト抑制以外に、防眩機能、反射防止機能および防汚機能を付与することが可能なディスプレイ用フィルターを低コストで得ることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、透明基材上に、メッシュ状の導電層とそのメッシュ状の導電層上に直接に配置された機能性表面層を有する積層体であり、その機能性表面層は黒色粒子を含有するものである。
本発明のディスプレイ用フィルターを構成する積層体において、機能性表面層は、メッシュ状の導電層上に直接配置され、かつメッシュ状の導電層上の機能性表面の厚さは、好ましくは1〜15μmであり、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは3〜8μmであり、この機能性表面層はハードコート性であっても良い。また、機能性表面層に含有させる黒色粒子のより好ましい平均粒径や含有量は後述するが、平均粒径が0.01〜8μmの黒色粒子を機能性表面層全成分に対して0.01〜20質量%含有することが好ましい。
本発明において、機能性表面層は、反射防止機能、防眩機能、防汚機能およびハードコート機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有することが好ましい。機能性表面層は、単一層であっても複数層で構成されていてもよく、また複数の機能を併せ持った層であってもよい。次に、機能性表面層を構成する反射防止機能、防眩機能、防汚機能、およびハードコート機能を有する機能層について具体的に説明する。
本発明において、反射防止層は、反射防止性能を有しているものであり、次に特に好ましい反射防止層の態様、特に好ましい高屈折率層の態様と特に好ましい低屈折率層の態様を説明する。
反射防止層は、反射防止膜であってもよく、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低い屈折率のものが好ましく用いられる。反射防止膜としては、具体的には、フッ素系透明高分子樹脂、フッ化マグネシウムやシリコン系樹脂または酸化珪素の薄膜等を、例えば、1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、および屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物および硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂、アクリル樹脂およびフッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものなどが挙げられる。性能とコストのバランスのとれた構成の反射防止膜としては、最表層から低屈折率層と高屈折率層を積層した構成のものが好ましいが、本発明では、反射防止層が積層されていなくても、低屈折率層のみが積層されていても、低屈折率層と高屈折率層の両方が積層されていてもよい。この反射防止層は、通常ハードコート層の上に積層される。
本発明で用いられる反射防止層の形成方法としては、コストと性能のバランスを考慮すると、ウエットコーティングにより塗料を塗布する方法が好ましい。塗料の塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングおよび流し塗り法などを好ましく用いることができるが、塗布厚みの均一性の点から、マイクログラビアコーティングが好適に用いられる。次いで、塗布後に加熱、乾燥および熱または紫外線等の活性線で硬化させることにより、各々の被膜(層)を形成する。
本発明で用いられる機能性表面層として、例えばハードコート層と反射防止層からなる機能性表面層を用いた場合には、この機能性表面層がディスプレイ用フィルターの最表面に設置される。そのため、反射防止層の表面に付着した粉塵などを布で拭き取ったりした際に傷がつくと困るため、この機能性表面層の耐擦傷性は3級以上であることが好ましく、さらに好ましくは4級以上である。耐擦傷性は、反射防止層側表面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を、次の5級〜1級の5段階で評価したものである。
5級:傷が全く付かない。
4級:傷が1本以上5本以下。
3級:傷が6本以上10本以下。
2級:傷が11本以上。
1級:全面に無数の傷あり。
本発明における特に好ましい反射防止層は、波長400〜700nmにおける5°の絶対反射スペクトルにおいて、(1)最低反射率が2.5%以下であること、(2)最高反射率が4.0%以下であること、および(3)最高反射率と最低反射率の反射率差が2.0%未満であることの3条件を満たすものである。最低反射率が2.5%を超えると反射防止機能が不十分となることがある。より好ましい最低反射率としては、1.5%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であること、より好ましい最高反射率としては2.0%以下であること、またより好ましい最高反射率と最低反射率との反射率差が2.0%未満であり、さらに好ましくは1.5%未満であることをすべて満たすことにより、よりフラットな反射スペクトルとなり、色目もニュートラルになる。
特に好ましい反射防止層において、波長400〜700nmにおける絶対反射スペクトルの最高反射率を前記の数値以下とするためには、低屈折率層および高屈折率層の屈折率を以下のように調整する。
低屈折率層の屈折率(nL)は、1.23〜1.42が好ましく、更に好ましくは1.34〜1.38である。さらには、高屈折率層の屈折率(nH)は1.55〜1.80であることが好ましく、更に好ましくは1.60〜1.75である。また、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。
また、ハードコート層の屈折率も調整することが好ましい。ハードコート層の屈折率(nG)は、1.45〜1.55であることが好ましい。ここで、低屈折率層の屈折率(nL)および高屈折率層の屈折率(nH)は、最低反射率をより低くできるという観点で、下記式(1)および式(2)を満足することが好ましい。
・(nH)={(nL)×(nG)}1/2±0.02・・・(1)
・(nL)={(nH)/(nG)}1/2±0.02・・・(2)
反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得るためには、高屈折率層の屈折率(nH)と高屈折率層の厚さ(dH)との積(光学厚みに相当する)が、反射を防止したい可視光の波長(λ)の1/4の1.0〜1.7倍となるような厚さ(dH)にすることが好ましく、さらには1.3〜1.6倍が好ましい。前記の倍率が1.0倍を下回ると、最高反射率と最低反射率との差も2.5%を超えるので好ましくない。一方、前記の倍率が1.7倍を超えると、最低反射率が0.6%よりも高くなり、反射防止性能が不十分となるので好ましくない。ここで、反射を防止したい可視光の波長(λ)は、可視光域にあれば任意に選ばれるが、通常は450〜650nmの範囲にあることが好ましい。
上述した好ましい高屈折率層の屈折率(nH)の範囲や、反射を防止したい波長(λ)を考慮すると、反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得ることためには、高屈折率層の厚さ(dH)は好ましくは100〜300nmの範囲であり、より好ましくは100〜200nmの範囲である。一方、本発明の低屈折率層の厚さ(dL)の好ましい範囲は、前記した範囲にある低屈折率層の屈折率(nL)と低屈折率層の厚さ(dL)との積が、反射を防止したい可視光の波長(λ)の1/4の0.7〜1.0倍となるような厚さ(dL)にすることが好ましく、さらには0.75〜0.95倍が好ましい。これらのことを考慮すると、本発明において、反射防止層がよりフラットな反射スペクトルを得るためには、低屈折率層の厚さ(dL)は好ましくは70〜160nmの範囲である。低屈折率層の厚さ(dL)はより好ましくは80〜140nmであり、さらには好ましくは85〜105nmの範囲である。
また、フラットな反射スペクトルを得るためには、高屈折率層の厚さ(dH)と低屈折率層の厚さ(dL)の比(dH/dL)を、1.0〜1.9とすることが好ましい。前記の比が1.0を下回る場合は、最高反射率が2.5%よりも高くなり、最高反射率と最低反射率との差も2.5%を超え、反射スペクトルがV型となって、赤や青の干渉色が現れる。一方、前記の比が1.9を超える場合は、フラットな反射スペクトルが得られるものの、最低反射率が0.6%よりも高くなり、反射防止性能が低下する。前記の比(dH/dL)は、より好ましくは1.1〜1.8であり、さらに好ましくは1.2〜1.7である。前記の比(dH/dL)を上記のようにすることにより、フラットな反射スペクトルで、かつ最低反射率も低くすることができる。
本発明における特に好ましい反射防止層において、高屈折率層の構成成分としては、反射防止層表面に帯電防止性を付与するために、樹脂組成物に金属化合物粒子を分散させたものであることが好ましい。
樹脂組成物を構成する樹脂成分には、(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線照射によりラジカル重合し、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるため好ましく用いられる。さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましく用いられる。このような(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂成分としては、金属化合物粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基、リン酸基およびスルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、および2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合およびエーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
ここで用いられる金属化合物粒子としては、導電性の各種金属酸化物粒子が好ましく用いられる。特に好ましく用いられる金属化合物粒子としては、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、および酸化アンチモン粒子等が挙げられ、中でも錫含有酸化インジウム粒子(ITO)が最も好ましく用いられる。
導電性を構成する導電性金属化合物粒子について、平均1次粒径が0.005〜0.05μmの粒子が好適に使用される。平均1次粒径が0.05μmを超えると、生成される被膜(高屈折率層)の透明性を低下させることがある。また、平均1次粒径が0.005μm未満では、金属化合物粒子が凝集し易く生成被膜(高屈折率層)のヘイズ値が増大することがある。いずれの場合も、所望のヘイズ値を得ることが困難になる。1次粒径とは、静置した状態で電子顕微鏡、ガスまたは溶質による吸着法、空気流通法、およびX線小角散乱法などで測定した粒径のことである。
高屈折率層の構成成分に、導電性の効果をさらに向上させることを目的として、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリン等の導電性ポリマーや、金属アルコレートおよびキレート化合物などの有機金属化合物を、さらに含有させることもできる。
高屈折率層を形成する際に、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。開始剤としては、塗布したバインダー成分をラジカル反応、アニオン反応およびカチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知のチオキサントン誘導体、アゾ化合物、ジアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ジアルキルアミノ安息香酸エステル、過酸化物、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体およびキノキサリン誘導体等の各種光重合開始剤が使用可能である。この光重合開始剤の量は、高屈折率層の構成成分総量100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、さらには1〜15質量部の範囲で好ましく添加される。光重合開始剤の添加量このような範囲であると、光重合が十分に早く、硬度および耐擦過性を満足させるために短時間の光照射でよく、一方、塗膜の導電性、耐摩耗性および耐候性等の機能が低下することもない。
また、高屈折率層を形成する際に、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤およびシランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、表面硬度の向上を目的として、アルキルシリケート類およびその加水分解物、コロイダルシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン等の無機粒子、およびコロイド状に分散したシリカ微粒子等を、さらに含有させることもできる。高屈折率層の構成成分の配合割合は、樹脂成分(B)と金属化合物粒子(A)との質量割合〔(A)/(B)〕が10/90〜30/70であることが好ましく、さらに好ましくは15/85〜25/75である。金属化合物粒子の割合がこのような好ましい範囲であると、得られる膜は透明性十分で導電性も良好であり、一方、得られる膜の各種物理的強度や化学的強度が低下することもない。
ディスプレイパネル用フィルターは、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理されていることが好ましい。高屈折率層によって所望水準の帯電防止性が付与されるためには、高屈折率層の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下になるように帯電防止剤の添加量を制御することが好ましく、さらには表面抵抗値が1×1010Ω/□以下になるように帯電防止剤の添加量を制御することが好ましい。
高屈折率層は、鮮明性と透明性の点から、全光線透過率が好ましくは40%以上の層であり、さらに好ましくは50%以上の層である。
高屈折率層は、好ましくは溶媒で分散させた塗布液を調整し、その塗布液をハードコート層上に塗布した後、乾燥し、硬化させることによって形成することができる。
高屈折率層形成において使用される溶剤は、塗布または印刷作業性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、樹脂成分を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、塗料組成物の粘度の安定性と乾燥性の観点から沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、さらに、そのうち酸素原子を有する有機溶媒が金属化合物粒子との親和性がよく好適である。
このような有機溶媒としては、具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、およびアセチルアセトン等が好適に挙げられる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、有機溶媒の量は、塗布手段や印刷手段に応じ作業性のよい状態の粘度に塗料組成物がなるように任意の量を配合すればよいが、通常塗料組成物の固形分濃度が好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下になる程度の量が適当である。本発明で用いられる高屈折率層組成物の調製としては、任意の方法が採用可能であるが、通常樹脂成分を有機溶媒で溶解させた溶液中に、金属化合物粒子を添加し、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、三本ロール、アトライターおよびホモミキサー等の分散機により分散させ、しかる後、光重合開始剤を添加し、均一に溶解させる方法が適当である。
本発明における特に好ましい反射防止層の態様において、屈折率をより低くし表面反射率を低くすることができるという観点から、低屈折率層は内部に空洞を有するシリカ微粒子、シロキサン化合物、硬化剤および溶媒からなる塗料組成物をコーティングして得られたものとすることが好ましい。低屈折率層は、表面硬度を向上させ耐擦傷性を優れたものとするために、マトリックス材料であるシロキサン化合物とシリカ微粒子が強固に結合していることが好ましい。そのためには、コーティング前の塗料組成物の段階で、予めシロキサン化合物をシリカ微粒子表面と反応させて結合させることが好ましい。
そのための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下に、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、得られたシラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。好ましいシラノール化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物が挙げられる。得られた塗料組成物は、これらのシラン化合物の縮合物であるシロキサン化合物を含有する。また、これらのシラン化合物は、加水分解されており縮合していないシラノール化合物を含有しても良い。
R1Si(OR6) ・・・ (1)
式中、R1はフッ素が3〜17のフルオロアルキル基を表わす。R1のフッ素数としては6〜8が好ましい。1分子当りのフッ素原子が多いと、得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。また、得られる被膜の耐擦傷性を高くすることができるという観点から、R1の炭素数は3〜10であることが好ましく、特に炭素数3が好ましい。R6はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ同一でも異なっていても良い。R6としては、メチル基とエチル基が特に好ましく用いられる。上記一般式(1)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の屈折率を低くすることができる。
R2Si(OR7) ・・・ (2)
式中、R2はビニル基、アリール基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、シアノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるという観点から、R2の炭素数は2〜10であることが好ましい。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R7としては、メチル基とエチル基が特に好ましく用いられる。上記一般式(2)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができる。
R3Si(OR8) ・・・ (3)
式中、R3は水素、アルキル基、アリール基およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるという観点から、R3の炭素数は1〜6であることが好ましい。R3の炭素数が6を超えると、得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。R8はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表わし、それぞれ、同一でも異なっていても良い。R8としては、メチル基とエチル基が特に好ましく用いられる。上記一般式(3)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができる。
R4R5Si(OR9) ・・・ (4)
式中、R4およびR5は、それぞれ水素、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アルケニル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基およびそれらの置換体から選ばれた基を表わし、それぞれ、同一でも異なっていても良い。得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるという観点から、R4とR5の炭素数は1〜6であることが好ましい。R9はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも異なっていても良い。R9としては、メチル基とエチル基が特に好ましく用いられる。上記一般式(4)で表される2官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の可とう性を向上させることができる。
Si(OR10) ・・・ (5)
式中、R10はメチル基またはエチル基を表わし、それぞれ、同一でも異なっていても良い。上記一般式(5)で表される4官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができる。
これらの一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。
シロキサン化合物の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは20質量%〜70質量%であり、特に好ましくは30質量%〜60質量%である。この範囲でシロキサン化合物を含有することにより、被膜の屈折率を低く、かつ被膜の硬度を高めることができる。したがって、塗料組成物中におけるシロキサン化合物の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。
これらのシラン化合物の中でも、低屈折率化のためには、上記一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物を必須成分として用い、上記一般式(2)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物を組み合わせて用いることが好ましい。上記一般式(1)で表されるシラン化合物の量は、全シラン化合物量に対して、好ましくは20質量%〜80質量%であり、特に好ましくは30質量%〜60質量%である。シラン化合物の量が20質量%を下回ると、低屈折率化が不十分になることがある。一方、シラン化合物の量が80質量%を超えると、被膜の硬度が低下する場合がある。
上記一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物の具体例を、次に示す。
上記一般式(1)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリメトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリエトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリアセトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランおよびトリフルオロプロピルトリエトキシシランが特に好ましく用いられる。
上記一般式(2)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシランおよびδ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、ビニルトリアルコキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランが特に好ましく用いられる。
上記一般式(3)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが特に好ましく用いられる。
上記一般式(4)で表される2官能性シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシランおよびオクタデシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られる被膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシランが特に好ましく用いられる。
上記一般式(5)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランなどが挙げられる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子は、数平均粒子径が1nm〜50nmである粒子が好適に使用される。数平均粒子径が1nmを下回ると、材料との結合が不十分となり、被膜の硬度が低下することがある。一方、数平均粒子径が50nmを超えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。ここで、シリカ微粒子の平均粒子径は、種々のパーティクルカウンターを用いて、数平均の粒子径を測定することにより得ることができる。塗料組成物に添加する前のシリカ微粒子の粒子径を測定することが好ましい。また、被膜形成後は、電子走査型顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて、被膜中のシリカ微粒子の粒子径を測定する方法が好ましい。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の数平均粒子径は、形成される被膜の膜厚よりも小さいことが好ましい。シリカ微粒子の数平均粒子径が被膜の膜厚を上回ると、被膜表面にシリカ微粒子が露出し、反射防止性を損なうばかりでなく、被膜の表面硬度および耐汚染性が低下する。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子としては、シロキサン化合物と反応しやすくするため、表面にシラノール基を有するシリカ微粒子が好ましい。また、被膜の低屈折率化のために、内部に空洞を有するシリカ微粒子が好ましい。内部に空洞を有していないシリカ微粒子は、一般に粒子自体の屈折率は、1.45〜1.50であるため、屈折率低下効果が少ない。一方、内部に空洞を有するシリカ微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入による屈折率低下効果が大きい。内部に空洞を有するシリカ微粒子としては、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ微粒子や、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ微粒子等が挙げられる。これらのシリカ微粒子のうち、被膜の硬度を考慮した場合、粒子自体の強度が高い多孔質のシリカ微粒子が好ましい。該これらのシリカ微粒子の屈折率は、好ましくは1.20〜1.40であり、より好ましくは1.20〜1.35である。
また、内部に空洞を有するシリカ微粒子の数平均粒子径は、1nm〜50nmであることが好ましい。シリカ微粒子の屈折率は、特開2001−233611公報の段落番号[0034]に記載されている方法によって測定することができる。内部に空洞を有するシリカ微粒子は、例えば特開2001−233611号公報の段落番号[0033]〜[0046]に記載された方法や、特許第3272111号公報の段落番号[0043]に記載された方法で製造することができる。一般に市販されているものも使用することができる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは30質量%〜80質量%であり、特に好ましくは40質量%〜70質量%である。したがって、塗料組成物中におけるシリカ微粒子の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。この範囲でシリカ微粒子を被膜中に含有させると、屈折率を低くすることができるだけでなく、被膜の硬度を高めることができる。シリカ微粒子の含有量が30質量%を下回ると、粒子間の空隙による屈折率低下効果が少なくなる。また、シリカ微粒子の含有量が80質量%を超えると、コーティング膜中にアイランド現象が多数発生して被膜の硬度が低下し、また、場所によって、屈折率が不均一になるので好ましくない。
また、前述のように低屈折率層を形成するための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下に、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、該得られたシラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができるる。この加水分解反応においては、溶媒中、酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、常温〜80℃で1〜180分反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは40〜70℃である。また、加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、そのまま反応液を、50℃以上の温度で、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行なうことが好ましい。また、シロキサン化合物の重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。
加水分解反応に用いられる酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、およびイオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に蟻酸、酢酸またはリン酸を用いた酸性水溶液が好ましい。これら酸触媒の添加量は、加水分解反応時に使用される全シラン化合物量に対して、好ましくは0.05質量%〜10質量%であり、特に好ましくは0.1質量%〜5質量%である。酸触媒の添加量が0.05質量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがある。また、酸触媒の添加量が10質量%を超えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
溶媒は、塗料組成物の安定性、濡れ性および揮発性などを考慮して決定される。溶媒は、一種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、およびジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
加水分解反応時に使用される溶媒の量は、全シラン化合物量に対して、50質量%〜500質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは80質量%〜200質量%の範囲である。溶媒の量が50質量%を下回ると、反応が暴走しゲル化する場合がある。一方、溶媒の量が500質量%を超えると、加水分解が進行しない場合がある。
また、加水分解反応に用いられる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン化合物1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
また、塗料組成物を硬化させ低屈折率層を形成する目的で添加する硬化剤としては、塗料組成物の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる各種の硬化剤あるいは三次元架橋剤が挙げられる。硬化剤の具体例としては、窒素含有有機物、シリコン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂および尿素樹脂などがあり、これらを一種類ないし2種類以上添加しても良い。なかでも、硬化剤の安定性と得られた被膜の加工性などから、金属キレート化合物が好ましく用いられる。用いられる金属キレート化合物としては、チタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物およびマグネシウムキレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、低屈折率化の目的には、屈折率の低いアルミニウムキレート化合物および/またはマグネシウムキレート化合物が好ましく用いられる。これらの金属キレート化合物は、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン;アセト酢酸エチルおよびベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを用いることができる。
金属キレート化合物の好ましい具体的な例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノソプロピレートおよびマグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらのうち、特に好ましい金属キレート化合物は、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)およびマグネシウムビス(エチルアセトアセテート)である。保存安定性および入手容易さを考慮すると、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が、特に好ましく用いられる。
添加される硬化剤の含有量は、塗料組成物中の全シラン化合物量に対して、好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、特に好ましくは1質量%〜6質量%である。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。硬化剤の含有量が0.1質量%を下回ると、得られる被膜の硬度が低下する。一方、硬化剤の含有量が10質量%を超えると、硬化が十分となり得られる被膜の硬度は向上するが、屈折率も高くなる。
さらに塗料組成物には、大気圧下沸点100〜180℃の溶媒と大気圧下沸点100未満の溶媒を混合して用いることが好ましい。大気圧下沸点100〜180℃の溶媒を含むことにより、塗料組成物の塗布性が良くなり、表面が平坦な被膜を得ることができる。また、大気圧下沸点100未満の溶媒を含むことによって、被膜形成時に溶媒が有効に揮発し、硬度の高い被膜を得ることができる。すなわち、表面が平坦で、かつ、硬度の高い被膜を得ることができる。
大気圧下沸点100〜180℃の溶媒としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。これらのうち、特に好ましい溶媒の例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびジアセトンアルコール等である。
また、大気圧下沸点100℃未満の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールおよびメチルエチルケトン等が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
塗料組成物における全溶媒の含有量は、全シラン化合物含有量に対して、1300質量%〜9900質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは1500質量%〜6000質量%の範囲である。全溶媒の含有量が1300質量%を下回るか、もしくは、9900質量%を超えると、所定の膜厚の被膜を形成することが困難となる。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。
本発明のディスプレイ用フィルターは、防汚層を設けることができる。防汚層は、ディスプレイ用フィルターに、人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。このような防汚層には、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤およびシリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
次に本発明の機能性表面層の、一態様であるハードコート層について説明する。本発明におけるハードコート層成分としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂およびフッ素系樹脂等の熱硬化型や光硬化型樹脂等が挙げられるが、性能、コストおよび生産性などのバランスを考慮すると、アクリレート系樹脂が好ましく適用される。アクリレート系ハードコート膜は、多官能アクリレートを主成分とする硬化組成物からなるものである。多官能アクリレートは、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーであって、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本明細書において「、、、(メタ)アクリ、、、」とは、「、、、アクリ、、、又は、、、メタアクリ、、、」を略して表示したものである。)を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマーおよびプレポリマーの使用割合は、ハードコート層構成成分総量100質量%に対して50〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
上記の化合物以外に、ハードコート層の剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたりする目的で、1〜2官能のアクリレートを併用することが好ましい。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば、特に限定されずに使用することができる。
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど。
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど。
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど。
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパンおよび2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど。
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など。
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドンおよびN−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量100質量%に対して10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。
また、本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料および安定剤などを用いることができる。これらの改質剤は、活性線または熱による反応を損なわない範囲内で、ハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
本発明において、上記のハードコート組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、前記のハードコート組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントンおよび2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよいし2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイパーオキサイドやジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層構成成分総量100質量部に対して、0.01〜10質量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また、200℃以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明で用いられるハードコート層形成組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルおよび2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層構成成分総量100質量%に対して、好ましくは0.005〜0.05%である。
また、本発明のディスプレイ用フィルターの機能性表面層を、機能性表面層上に更に積層膜を設けた積層構成とする場合には、機能性表面層の上に形成する樹脂層の塗布性と接着性を阻害しない必要があり、機能性表面層がハードコート層である場合の一例として、アクリル系レベリング剤を用いることが好ましい。このようなレベリング剤としては、「“ARUFON”(登録商標)−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製」などを用いることができる。レベリング剤の添加量は、ハードコート層構成成分総量100質量%に対して、0.01〜10質量%含有させることが好ましい。このように、ハードコート層にレベリング剤を添加することにより、例えば、樹脂層としてハードコート層と反射防止層の積層膜を用いる場合に、ハードコート層上に形成する反射防止層の塗布姓と着性が向上することとなる。
本発明において必要に応じて用いられる活性線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましく用いられる。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯および炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気や不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材や塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられる。中でも、200℃以上の温度に加温された空気による熱が好ましく、更に好ましくは200℃以上の温度に加温された窒素による熱が、硬化速度が早く好ましい。
ハードコート層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1〜15μmが好ましく、より好ましくは0.5〜10μmであり、更に好ましくは1〜8μmである。ハードコート層の厚さが0.1μm未満の場合には、十分硬化していても薄すぎるために表面硬度が十分でなく傷が付きやすくなる傾向にあり、一方、厚さが15μmを超える場合には、硬化時のカールや、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入り易くなる傾向にある。
本発明のディスプレイ用フィルターでは、黒色粒子を導電層上のハードコート性を持った機能性表面層内に分散混合することにより、コントラストの低下を抑制することができるが、その効果はコントラスト低下抑制だけでなく、黒色粒子の素材や大きさなどを目的の機能に合わせて選定することにより、例えば防眩機能等が得られる。
本発明において、機能性表面層に含まれる防眩機能を有する層は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩機能を付与するには、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させる方法、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させる方法などが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JIS K 7136;2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。
本発明で用いられる黒色粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜8μmの範囲であり、より好ましくは0.01〜7μmの範囲である。
本発明で用いられる黒色粒子の黒色とは、JIS Z8721(1958/03/2制定)で示される、マンセル表示法の明度がN3.5〜N1のものが特に好ましい。本発明で用いられる黒色粒子としては、例えば、チタンブラック、カーボンブラック、有機・無機ハイブリッド粒子および金属酸化物などが挙げられる。市販品としては、御国色素(株)カーボンブラック(#201)や根上工業(株)“アートパール(G−800BK)”(登録商標)などが挙げられる
本発明において、黒色粒子としては、耐光性の観点から顔料が好ましい。また、着色性の観点からは、無機微粒子が好ましい。また、防眩性と着色性からは、黒色無機粒子(着色機能)と有機粒子(防眩機能)など2種を混合分散することなどにより、公知の防眩機能に着色機能を付与することが好ましい態様であるが、有機または無機のハイブリット粒子を一種使用し、防眩性と着色性の機能を得ることも可能である。具体的に、機能性表面層に添加する黒色粒子としては、無機系粒子と有機系粒子が挙げられるが、分散面から有機系材料により形成される粒子が好ましい。有機系粒子としては、着色プラスチックビーズなどが挙げられ、無機系粒子としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄およびその他無機複合酸化物などが挙げられる。さらに、そのプラスチックビーズの中でも、好ましくは優れているものが挙げられ、具体例としては、アクリル系、スチレン系、メラミン系およびウレタン等のプラスチックビーズが挙げられる。添加される黒色粒子は、一種または複数種を混合することができる。
また、黒色粒子の濃度は、機能性表面層内の固形分濃度に対し0.005〜10質量%であることが好ましく、更に好ましくは、0.01〜5質量%とすることにより、上述したように防眩と着色機能をバランス良く得ることができる。
本発明において、導電層側に着色ハードコート層を積層し、その上に反射防止層の一部である高屈折率層を積層し、最表面に反射防止層の他の一部である低屈折率層が積層されている構成において、メッシュ状の導電層上に上記機能性表面層を積層したフィルムを透過率40%〜90%に最適化させるには、ハードコート層中に平均粒径0.01〜10μmの黒色粒子を、ハードコート層構成成分総量の100質量%に対して0.01〜20質量%含有することにより達成することができる。コントラスト低下抑制とフィルターとしての透過率を好適にするには、メッシュ状の導電層上に機能性表面層を積層した状態で、全光線透過率が好ましくは30〜90%であり、より好ましくは35〜85%であり、更に好ましくは40〜80%である。
機能性表面層は、前述したように塗布により塗工形成することが好ましい。塗布方式としては、ディップコーティング法、スピンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、リーバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、スプレー法およびロールコーティング法等のウェットコーティング法を用いることができる。
プラズマディスプレイパネルからは、その構造や動作原理上パネルから強度の漏洩電磁波が発生する。近年、電子機器からの漏洩電磁波が人体や他の機器に与える影響について取り沙汰されており、例えば日本では、VCCI(voluntary control council for interference by processing equipment electronic office machine)による基準値内に抑えることが求められている。具体的には、VCCIにおいては、業務用途の規制値を示すclassAでは放射電界強度50dBμV/m未満であり、民生用途の規制値を示すclassBでは40dBμV/m未満であるが、プラズマディスプレイパネルの放射電界強度は20〜90MHz帯域内で50dBμV/m(対角40インチ型の場合)を超えるため、このままの状態では家庭用途には使用できない。そのため、プラズマディスプレイパネルには電磁波シールド層を配置したディスプレイ用フィルターが必須となる。
電磁波シールド層が電磁波シールド性能を発揮するためには導電性が必要であり、プラズマディスプレイパネルの電磁波シールドに必要な導電性は、面抵抗で通常3Ω/□以下であり、好ましくは1Ω/□以下であり、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。したがって、導電層を有する本発明のディスプレイ用フィルターにおいては、その導電層の導電性が、面抵抗で3Ω/□以下であることが好ましく、より好ましくは1Ω/□以下であり、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。また、面抵抗は低いほど電磁波シールド性が向上するために好ましいが、現在の技術では0.05Ω/□未満にすることは困難と考えられる。したがって、現実的な下限は0.05Ω/□程度と考えられる。
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、メッシュ状の導電層は、透明基材上に形成される。その透明基材としては、溶液製膜法や溶融製膜法により得られる各種のフィルムが好ましく用いられる。透明基材の詳細については、後述する。
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、メッシュ状の導電層を透明基材などの上に形成する方法としては、例えば、1)透明基材上に、導電性インキをスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法によりパターン印刷する方法、2)導電性繊維からなる編布を、接着剤または粘着材を介して貼り合わせる方法、3)銅、アルミニウムおよびニッケル等からなる金属箔を、接着剤や粘着材を介して貼り合わせた後にパターニングする方法、4)銅、アルミニウムおよびニッケル等からなる金属薄膜を、蒸着、スパッタリングおよび無電解メッキ等の各種公知の薄膜形成方法によって形成した後にパターニングする方法等が挙。上記の3)と4)のパターニング方法としては、例えばフォトリソグラフィ法が挙げられる。具体的には、金属箔または金属薄膜上に感光性レジストを塗工または感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電性メッシュフィルムを形成することができる。
本発明のディスプレイ用フィルターにおいては、メッシュ状の導電層の厚さは0.1〜8μmであることが好ましい。メッシュ状の導電層の厚さは、より好ましくは0.3〜7μmであり、さらに好ましくは0.5〜6μmであり、特に好ましくは1〜4μmである。メッシュ状の導電層の厚さが0.1μm未満の場合は、必要な電磁波遮断性が得られない場合がある。また、メッシュ状の導電層の厚さが8μmを超える場合は、機能性表面層の厚みが大きくなり過ぎて、透過画像や加工性が劣化する傾向があり、さらには、コストアップにつながる。
メッシュ状の導電層のパターンは、線幅は細いほど、ピッチが広いほど、開口率と透過率が高くなり、また、ディスプレイの画素との相互作用によって発生するモワレを起こしにくくなり好適である。しかしながら、開口率を上げすぎるとメッシュ状の導電層の持つ導電性が不足するため、線幅は5〜25μmが好ましく使用され、ピッチは50〜500μmが好ましく採用される。ピッチはより好ましくは75〜450nmであり、さらに好ましくは100〜350μmであり、特に好ましくは150〜300μmである。さらに、メッシュ状の導電層のパターンは、例えば、格子パターンの場合、縦横に並んで配置されたディスプレイの画素との相互作用でモワレを起こさないように、画素が並んだ線に対してメッシュ状の導電層のパターンの線がある程度の角度(バイアス角)を有していることが好ましい。モワレを起こさないバイアス角は、画素のピッチ、メッシュ状の導電層のパターンのピッチおよび線幅により変化する。ここで、本発明におけるメッシュ状の導電層のパターンのピッチとは、メッシュ構造のある開口部と、この開口部と1辺を共有する隣接する開口部との重心間の距離とする。
メッシュ状の導電層が、銅、アルミニウムおよびニッケル等の金属からなる場合、そのメッシュ状の導電層の透明基材側もしくはその反対側(機能性表面層側)のいずれか、あるいは両側に、必要に応じて黒化処理や黒化メッキを施しても良い。黒化処理や黒化メッキを施すことにより、メッシュ状の導電層の金属光沢による視聴者側からの反射やディスプレイ側からの反射も低減することができ、さらに画像視認性の低下を低減することができ、コントラストと視認性に優れたディスプレイ用フィルターが得られる。
メッシュ状の導電層は、ディスプレイに設置したときに、透光部となる部分以外、すなわち表示部ではない部分や額縁印刷に隠れた部分は、必ずしもメッシュ状のパターンを有している必要がなく、これら部分はパターニングされていない、例えば金属箔ベタの層であっても良い。加えて、パターニングされていないベタ部分が黒色であると、そのままディスプレイ用フィルターの額縁印刷として使えることができ好適である。
本発明のディスプレイ用フィルターは、近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能およびNeカット機能からなる群から選ばれた少なくとも1つの機能を有する機能層を有することが好ましい。これらの機能層は、1つの層に複数の機能を有する機能層としてもよい。また機能層は、複数の層を積層してもよい。
次に、本発明のディスプレイ用フィルターの製造に必要な電極取り出し、接着層および各機能層について説明する。
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整することが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、プラスチックフィルムに近赤外線吸収色素や顔料を混錬することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。あるいは、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼り付けるための接着層に、近赤外線遮蔽機能を持たせてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収色素や顔料を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。
本発明においては、近赤外線吸収色素や顔料を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは接着層に上記近赤外線吸収色素や顔料を含有させる態様が好ましく用いられる。近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物およびジイモニウム系化合物等の色素が挙げられる。上記した近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合は、プラスチックフィルムと導電層との間、もしくはプラスチックフィルムに対して導電層とは反対面に設けることが好ましく、特に後者が好ましい態様である。
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に、赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽することが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させることが好ましい。更に、白色度を向上させるために、波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させることが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、プラスチックフィルム、近赤外線遮蔽層および接着層に付与してもよいし、あるいは新たに透過率調整層を設けてもよい。
上述した色調調整機能を有する機能層及び可視光透過率調整機能を有する機能層をそれぞれ新たに設ける場合、これらの機能層は、プラスチックフィルムと導電層との間、もしくはプラスチックフィルムに対して導電層とは反対面に設けることが好ましく、特に後者が好ましい態様である。
本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイに貼り付けるための接着層を有することが好ましい。接着層は、プラスチックフィルムに対して導電層とは反対面側の最表面に設けられる。接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能および可視光透過率調整機能を付与することができる。また、接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを100μm以上にすることが好ましく、接着層の厚みはより好ましくは300μm以上であり、特に好ましくは500μm以上である。接着層の厚みの上限は、接着層のコーティング適性を考慮して好ましくは3000μm以下である。
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラールおよびエチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート 、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォンおよびフェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、前述した構成の積層体からなり、積層体の機能層側表面から機能層を貫通して少なくとも導電層に達する空隙を、積層体の周辺部の少なくとも一部に有する。ディスプレイ用フィルターの強度や取り扱い性の観点から、その空隙は積層体を貫通しないことが好ましい。
本発明が対象とするディスプレイ用フィルターには、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着し筐体に組み立てたときに、導電層と筐体の外部電極とを電気的に接続するための電極を設ける必要がある。上記した空隙には、導電層が露出しており、この導電層の露出部が電極となる。
本発明において、上記の空隙は積層体の周辺部の少なくとも一部に設けられるが、ここで、積層体の周辺部とは、かかる積層体からなるディスプレイ用フィルターをディスプレイに設置した際に、ディスプレイの画像表示領域の外周に相当する部分のことを言い、好ましくはディスプレイ用フィルターの端部から1mm以上内側で、画像表示領域に相当する部分から1mm以上外側の範囲である。
本発明が対象とするディスプレイ用フィルターは、通常長方形であり、それに用いられる積層体も長方形である。上記の空隙は、少なくとも対向する2辺の端縁部に設けることが好ましく、さらには積層体の4辺の端縁部にそれぞれ形成することが好ましい。この空隙は、側辺に略平行に直線状に細長く溝状に形成することが好ましい。ここでいう「直線状」には、曲がりのない一直線の形状みではなく、多少曲がりのあるほぼ直線の形状も含むものとする。空隙の幅は、3mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以下であり、更に好ましくは1.5mm以下である。空隙の幅の下限は、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上である。空隙の幅が3mmを超えて大きくなると、導電層の露出面が大きくなり導電層が酸化劣化しやすくなるという問題、後述するように生産効率が低下するという問題、および後述するように空隙に導電性材料を配置したときに導電性材料が剥離しやすくなるというような問題が生じる場合がある。一方、空隙の幅が0.3mmより小さくなると、ディスプレイ筐体(外部電極)との導通が不十分になり十分な電磁波遮蔽効果が得られない場合がある。
ディスプレイ用フィルターの1辺における空隙の長さは、辺の長さに対して10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上であり、特に好ましくは50%以上である。上記の比率は、電磁波遮蔽性能の観点から、高い方が好ましい。本発明において、上記の空隙は、直線状に連続した空隙であってもよいし、破線状の不連続な空隙であってもよい。後者の不連続な空隙の場合は、合計の長さが上記比率の対象となる。
次に、空隙の形成方法について説明する。本発明において、導電層の上に位置する機能層等を物理的な方法で剥離することなく空隙を形成することが好ましく、そのために機能層等の有機物を蒸発あるいは燃焼させることによって空隙を形成する方法が好ましく用いられる。かかる方法として、レーザーを照射する方法が好ましく用いられる。レーザーを照射する方法は、積層体に物理的な接触なしに空隙が形成できること、ほぼ一定の幅で空隙を形成できること、および空隙の深さ方向の制御が精度よくできるという利点がある。このようなレーザーの出力源としては、ヨウ素、YAGおよびCOなどがあるが、特にCOレーザーは、空隙幅および空隙深さが精度よく制御できること、および金属からなる導電層は破壊せずに機能層を蒸発・燃焼させて空隙を形成できる点で好ましく用いられる。
空隙形成方法として、ナイフ等のカッター刃を用いて積層体表面から切り込みを入れる方法があるが、この方法では本発明が意図する空隙、即ち0.3mm以上の幅の空隙は形成できないので導通が取れないこと、および導電性メッシュが切断されて導通が不十分になる場合がある。空隙形成の他の方法として、超音波半田コテを用いて機能層を除去する方法があるが、この方法は高温のコテ先を積層体に接触させるので積層体のプラスチックフィルムが熱変形を起こす可能性があること、および導電層の露出を完全にかつ安定的に行うことが難しいという問題がある。更に他の方法として、ドライエッチングする方法があるが、この方法は装置が大がかりとなること、および操作中に高温となり積層体が変形することがある。
上述に鑑み、メッシュ状の導電層上に積層された機能層を貫通しメッシュ状の導電層が露出するような空隙を形成する方法としては、レーザーを用いる方法が極めて有益である。
空隙をレーザー照射で形成する場合、空隙の幅および深さは、レーザーの焦点位置、レーザーの出力およびレーザーの走査速度(ヘードスピード)を調整することによって制御することができる。空隙の幅は、更に走査回数を調整することによって制御することができるが、1回の走査でも本発明が所望とする空隙を形成することができる。空隙の幅は、3mm以下であることが好ましいことは前述したとおりであるが、幅が3mmを超える空隙を形成するためにはレーザーの走査回数を多くする必要があり、生産効率が低下する。
本発明において空隙は、レーザーを用いて機能層を蒸発あるいは燃焼させて形成するので、導電層を完全に露出することが可能となる。
本発明では、上記した空隙を設けることによって、アース効率を十分に確保することができる。本発明のディスプレイ用フィルターでは、導電層の上にはプラスチックフィルムおよび接着層は存在しないので、導電層表面からフィルターの機能層側最表面までの距離が従来の一般的なディスプレイ用フィルターに比べて大幅に小さくなり、空隙の幅が3mm以下であっても外部電極との導通が十分に得られる。即ち、導電層表面から最表面までの距離(L)を十分に小さくすることによって、電極取出しのための空隙の幅を小さくすることが可能となる。
上記観点から、導電層表面からフィルターの機能性表面層側最表面までの距離(L)は、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下1μm以上である。上記の距離(L)は、機能性表面層の厚みに大きく左右されるので、機能性表面層の合計の厚みを調整することによって上記の範囲内に納めることができる。
また、レーザーによる空隙形成の観点からも、導電層表面からフィルターの機能性表面層側最表面までの距離(L)を小さくすることは有益である。距離(L)を小さくすることは、即ち機能層等を構成する有機物の絶対量が小さくなることであり、これによってレーザー照射による空隙形成時に発生する有機物の分解物残渣の量が少なくなるので、分解物残渣によるディスプレイ用フィルターの空隙部周辺への汚染や周辺機器のへの汚染が軽減できるという利点がある。更に、上記の距離(L)を小さくすることによって、レーザー照射の出力を小さくできるのでレーザー装置の低価格化が図られる。
一方、レーザーによる空隙形成の精度(空隙の深さ精度)や安定操業の観点からは、レーザーによる加工深さはある程度の厚みがあった方がよい。ディスプレイ用フィルターの機能層側表面に更にカバーフィルムを積層し、カバーフィルムの上からレーザー加工することによってレーザーによる加工厚みを稼ぐことでき、レーザー加工の精度が向上する。カバーフィルムは、機能層を保護する等の目的で設けられるものであり、最終的には剥離除去される。また、カバーフィルムの上からレーザーを照射して空隙形成することによって、空隙形成時に発生する有機物の分解物残渣がディスプレイ用フィルターに再付着するのを防止するという利点もある。
上述した、レーザー加工による分解物残渣の発生量、レーザー照射装置の低価格化およびよび空隙形成の精度を考慮し、カバーフィルムの厚み(積層のための粘着層が必要な場合は粘着層を含む)を20〜80μmの範囲とすることが好ましい。
本発明で用いられるカバーフィルムとしては、各種プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムおよびポリブチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリアセチルセルロースフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、エポキシ系フィルムおよびポリウレタンフィルム等が挙げられ、これらの中でもポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましく用いられる。
カバーフィルムは、最終的にはディスプレイ用フィルターから剥離除去されるので、剥離可能な粘着材または接着材が用いられる。あるいは、カバーフィルムとして粘着性を有するフィルムを用いる場合には、粘着材等は不要である。カバーフィルムは、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着する前もしくは装着した後に剥離除去することが好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターは、前述したように空隙形成のみで十分に導電層と外部電極との導通を取ることができるが、空隙部に導電性材料を配置することによって更に外部電極との導通が安定的に確保することができる。
空隙に導電性材料を配置する1つの態様として、空隙に導電性ペーストやはんだ等の流動性の導電性材料を塗布あるいは充填する態様がある。導電性ペーストとしては、銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などを含有する金属ペーストを用いることができる。
空隙に導電性材料を配置する他の態様として、空隙に挿入することができるように加工された導電性固体を配置する態様がある。導電性固体としては、導電性金属あるいは非導電体の表面に導電性金属を被覆したものが好適に用いられる。
空隙に導電性材料を配置する更に他の態様として、導電性粘着テープを空隙の上から貼り付ける態様がある。導電性粘着テープを貼り付けた後にヒートシーラー等で導電性粘着テープを加熱加圧することが好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターは、フィルター最表面から導電層表面までの距離が短いため、導電性粘着テープを加熱加圧することにより、導電性粘着テープを導電層と接触させることができる。導電性粘着テープは、金属箔の一方の面に導電性粒子を分散させた粘着層を設けたものであって、この粘着層には、アクリル系、ゴム系およびシリコン系の粘着剤や、エポキシ系およびフェノール系の樹脂に硬化剤を配合したものなどを用いることができるが、特に架橋型導電粘着剤であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体を主成分とするポリマーとその架橋剤とを含む後架橋型接着層であるものが好ましい。
空隙形成および空隙への導電性材料の配置は、カバーフィルムが存在する状態で行うことが好ましい。
次に、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法は、プラスチックフィルム等の透明基材上にメッシュ状の導電層を形成する工程、その導電層上にプラスチックフィルムおよび接着層を介さずに、反射防止機能、ハードコート機能および防眩機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層を直接塗工して積層体を得る工程、その積層体の周辺部の少なくとも一部にレーザーを照射して積層体表面から機能層を貫通して導電層に達する空隙を形成する工程を少なくとも有する。
上記のそれぞれの工程については前述したとおりであるが、透明基材上にメッシュ状の導電層を形成する工程および導電層上に機能層を塗工して積層体を得る工程は、ロール・ツー・ロール方式で連続的に行うことが好ましい。
前述したように、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法の好ましい態様においては、機能層側の表面にカバーフィルムを積層したカバーフィルム付き積層体を用いることができることである。このような製造方法は、透明基材上にメッシュ状の導電層を形成する工程、その導電層上にプラスチックフィルムおよび接着層を介さずに、反射防止機能、ハードコート機能および防眩機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層を塗工して積層体を得る工程、前記積層体にカバーフィルムを積層してカバーフィルム付き積層体を得る工程、カバーフィルム付き積層体の周辺部の少なくとも一部にレーザーを照射してカバーフィルム表面からカバーフィルムおよび機能層を貫通して導電層に達する空隙を形成する工程を少なくとも有するものである。
上記の製造方法においても、カバーフィルム付き積層体を得る工程まではロール・ツー・ロール方式で連続的に行うことが好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法において、透明基材の導電層とは反対面に近赤外線遮蔽層を積層する工程を有することが好ましく、更にその近赤外線遮蔽層の上に接着層を積層する工程を有することが好ましい。これらの工程もロール・ツー・ロール方式で連続的に行うことが好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法は、更に空隙に導電性材料を配置する工程を有することが好ましい。この工程においては、導電性ペーストもしくははんだをディスペンサー等で空隙に塗布することが好適である。
また、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法において、レーザーを用いて電極を形成する方法は、積層体をディスプレイに装着した後にも適用することができる。即ち、積層体をディスプレイに装着した後、積層体の周辺部にレーザーを照射して空隙を形成し、本発明のディスプレイ用フィルターを完成させた後、ディスプレイ筐体を組み立てることができる。更に、空隙に導電性ペースト等の導電性材料をディスペンサー等で塗布した後、ディスプレイ筐体を組み立てることができる。
また、カバーフィルム付き積層体を用いた場合は、空隙を形成後あるいは導電性ペーストを空隙に塗布した後にカバーフィルムを剥離して、本発明のディスプレイ用フィルターを完成させた後、ディスプレイ筐体を組み立てることができる。
本発明において、電極形成方法としては、積層体に電極を形成したディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着することもできるし、また、上記したようにディスプレイの製造過程の中でディスプレイに積層体を装着した後に電極を形成することもできる。後者のディスプレイの製造過程を適用する場合は、積層体をロール形状で供給し、ディスプレイの製造工程の中でロール状積層体を所定サイズのシート状に切断して用いることが好ましい。
本発明で用いられる積層体は、1枚のみのプラスチックフィルムで構成されるので、剛性が比較的弱く、ディスプレイに積層体を装着した後に空隙を形成することは、予め積層体に空隙を形成したディスプレイ用フィルターの取り扱い性を考慮すれば、好ましい態様である。
本発明のディスプレイ用フィルターを構成する積層体は、従来技術では4辺に電極を取り出すことはできなかったが、上述した本発明によって4辺に電極の取り出しが可能となった。
続いて、機能層の一種である紫外線遮断機能を有する紫外線遮断層について説明する。本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、紫外線遮断層は、この層よりもパネル側に位置する色調補正層や赤外線遮断層などに含まれる色素の光劣化を防止する役割を持つ。紫外線遮断層には、紫外線吸収剤を含有する透明基材や粘着剤層などが用いられる。
また、紫外線吸収剤を含む層のガラス転移点(Tg)は60℃以上であることが好ましく、Tgはより好ましくは80℃以上である。Tgの低い熱可塑性樹脂中に紫外線吸収剤を含有させると、紫外線吸収剤が粘着界面または接着界面に移動して、粘着性または接着性を阻害する恐れがある。紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂のTgが60℃以上であれば、透明基材中で紫外線吸収剤が移動する可能性が低減され、ディスプレイ用フィルターの他の構成要素、具体的には例えば透明基材層、色調補正層または反射防止層の一部をなす他の透明基材と層間接着層を介して接合させる場合に、粘着性が阻害されない。
透明基材を構成するTgが60℃以上の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表される芳香族ポリエステル、ナイロン6やナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドおよびポリカーボネート等が例示される。これらの中でも、芳香族ポリエステルが好ましく、特に耐熱性と機械的強度に優れている二軸延伸フィルムを形成し得るポリエチレンテレフタレートが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物および環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが、380nm〜390nmにおける紫外線遮断性と色調などの点から、ベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましく用いられる。これらの化合物は、1種で用いても良いし2種以上併用しても良い。また、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤を併用することもより好ましい態様である。
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は、基材フィルム中に0.5〜5質量%含有させることが好ましい。
また、更に優れた耐光性を付与するために、シアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物は、基材フィルム中に0.05〜2質量%含有させることが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)が挙げられる。このシアノアクリレート系4量体化合物を併用する場合には、前述の紫外線吸収剤は基材フィルム中に0.3〜3質量%であることが好適である。
紫外線遮断層では、波長380nmにおける透過率が5%以下であることが好ましく、これにより紫外線から基材や染料色素などを保護することができる。
紫外線遮断層における紫外線吸収剤の含有量は0.1〜5質量%であることが好ましく、その含有量は更に好ましくは0.2〜3質量%である。紫外線吸収剤の含有量が0.1〜5質量%であると、ディスプレイ用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収し、色調補正層に含まれる色素の光劣化を防止する効果に優れており、かつ、透明基材あるいは粘着層の強度を阻害しない。
紫外線遮断層、特に透明基材に紫外線吸収剤を添加する方法としては、熱可塑性樹脂の重合工程やフィルム製膜前の溶融工程での熱可塑性樹脂への練込み、および二軸延伸フィルムへの含浸などを例示することができる。特に、熱可塑性樹脂の重合度低下を防止する意味でも、フィルム製膜前の溶融工程で熱可塑性樹脂中に練込むことが好ましい。その際の紫外線吸収剤の練込みは、その紫外線吸収剤の粉体を直接添加する方法や、その紫外線吸収剤を高濃度に含有するマスターポリマーを製膜用ポリマーに添加するマスターバッチ法などにより行うことができる。
紫外線カット層は、厚さが5〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜200μmであり、更に好ましくは80〜200μmである。紫外線吸収層の厚さが5〜250μmの範囲であると、ディスプレイ用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収する効果に優れており、かつ光透過性、具体的には可視光線透過性に優れている。
本発明で用いられる透明基材は、通常、反射防止層、ハードコート層、赤外線カット層およびメッシュ状の導電層などを積層するための基材として用いられる。また、紫外線吸収成分を添加することにより、紫外線カット層としての役割を担うこともできる。本発明では、透明基材上にメッシュ状の導電層を積層し、そのメッシュ状の導電層上に機能性表面層を積層している様態となっており、反対面に、機能層が少なくとも一層または一層以上積層していることが好ましい。
本発明で用いられる透明基材は、溶融製膜や溶液製膜可能なフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、セルロースエステル、ポリカーボネートおよびアクリレートなどからなるフィルムを挙げることができる。これらのフィルムは、本発明における各機能層の基材として好適に用いられるが、うねり構造を形成する面に用いられる透明基材の材料として好ましいものとしては、透明性、機械的強度および寸法安定性などに優れた樹脂が求められる。このような樹脂としては、具体的には、ポリエステル、セルロースエステルおよびアクリル(ポリアクリレート)などが挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびトリアセチルセルロースが好適な材料として例示することができる。また、ポリアクリレートの中でも、分子内に環状構造を有する樹脂は光学等方性に優れる好適な材料である。分子内に環状構造を有する樹脂としては、グルタル酸無水物単位を10〜50質量%含有するアクリル樹脂などを例示することができる。しかしながら、諸特性のすべてにおいてバランスされた性能を有し、本発明におけるすべての機能層用の基材に適用できるものとしては、ポリエステルが特に好ましく用いられる。
このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートが性能とコスト面で最も好ましいポリエステルである。また、2種以上のポリエステルが混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のフィルムが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、ラマンスペクトル分析法により測定することができる。
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。JIS K7367(2002/08/20 制定)に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定。
本発明で用いられる透明基材は、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムや、内層部に粒子を有し表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルムなどが挙げられる。また、上記の複合体フィルムは、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。但し、粒子などを適用する場合には、透明性に影響しない程度に止める必要がある。
本発明において、透明基材にポリエステルフィルムを用いる場合、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。ここで、二軸延伸により結晶配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ好適には2.5〜5倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
本発明で用いられる透明基材の厚みは、使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmである。
本発明で用いられる透明基材は、本発明の効果、特に光学特性を阻害しない範囲内で各種の添加剤、樹脂組成物および架橋剤などを含有していても良い。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤および各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
本発明で用いられる透明基材は、全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが1.5%以下であることが好ましく、このようなものを適用することにより画像の視認性や鮮明度を向上させることができる。
更に、本発明で用いられる透明基材は、透過b値が1.5以下であることが好ましい。透過b値が1.5を超えると、透明基材自体がやや黄ばんで見えるため画像の鮮明さを損なう場合がある。
b値とは、国際照明委員会(CIE)において定められた表色の方法であり、b値は彩度を表しており、正の符号であれば黄色の色相、負の符号で有れば青色の色相を表す。また、絶対値が大きい程その色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さい程彩度が小さいことを示す。b値が0である場合には、無彩色であることを示す。表色の調整は、例えば、色素を含有させることにより実現できる色素としては、有色無機顔料、有機顔料および染料などを用いることができるが、耐候性に優れることから、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、サンカクロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、ベルリンブルー、ミロリブルー、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛ブルー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレッド、およびバルトバイオレット等の有機顔料が好ましく使用される。
本発明における透明層は、ディスプレイパネル本体に機械的強度を付与するものであり、無機化合物成形物や透明な有機高分子成形物が用いられる。無機化合物成形物としては、好ましくはガラス、強化ガラスもしくは半強化ガラスなどが挙げられる。透明層の厚さは、通常0.1〜10mmの範囲であり、より好ましくは1〜4mmである。
また、有機高分子成形物は、可視波長領域において透明であればよく、その種類を具体的にあげれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリイミド、トリアセチルセルロース等が挙げられる。これらの透明な有機高分子成形物は、主面が平滑であれば板(シート)状であってもフィルム状であってもよい。シート状の高分子成形物を基材として用いた場合には、基材が寸法安定性と機械的強度に優れているため、寸法安定性と機械的強度に優れる透明積層体が得られ、特にそれが要求される場合には好適に使用できる。
また、透明な有機高分子成形物からなるフィルムは、可撓性を有しており機能層をロール、ツー、ロール法で連続的に形成することができるため、これを使用した場合には効率よく、また、長尺大面積に機能層の積層体を生産できる。この場合、フィルムの厚さは通常10〜250μmのものが用いられる。フィルムの厚さが10μm未満では、基材としての機械的強度に不足し、厚さが250μmを超えると可撓性が不足するためフィルムをロールで巻きとって利用するのには適さない。
本発明のディスプレイ用フィルターの機能性表面層の好ましい具体例としては、(1)機能性表面層が特定粒径の粒子を特定量含有したハードコート層である場合、および(2)機能性表面層が特定粒径の粒子を特定量含有したハードコート層と反射防止層の積層構成となっている場合(ハードコート層が導電層側、反射防止層が最表面側)などが挙げられる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、上述した複数の層が積層された積層体である。その構成例を、次に具体的に列挙する。
(1)機能性表面層+導電層+透明基材+Ne光カットを兼ねる近赤外線遮断層+色調補正用接着層(機能性表面層が視認側、色調補正用接着層がプラズマディスプレイパネル側)、
(2)機能性表面層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層(機能性表面層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、
(3)機能性表面層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+透明基材層(機能性表面層が視認側、透明基材層がプラズマディスプレイパネル側)、
(4)機能性表面層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+色調補正層+近赤外線遮断層+接着層+透明基材層(機能性表面層が視認側、透明基材層がプラズマディスプレイパネル側)、
(5)機能性表面層+導電層+透明基材+紫外線遮断層+近赤外線遮断層+色調補正層+接着層(機能性表面層が視認側、接着層がプラズマディスプレイパネル側)、
(6)機能性表面層+導電層+透明基材(紫外線遮断層)+近赤外線遮断層+色調補正層+接着層(機能性表面層が視認側、透明基材層がプラズマディスプレイパネル側)、
などが挙げられるが本発明のディスプレイ用フィルターはこれに限定されない。
(7)機能性表面層+導電層+透明基材(紫外線遮断層、近赤外線遮断層、色調補正層)+接着層(機能性表面層が視認側、透明基材層がプラズマディスプレイパネル側)、
上記(1)の構成を有する本発明のディスプレイ用フィルターについて、図面を用いて説明する。図1と図2は、本発明のディスプレイ用フィルターの一例を示す概略断面図である。
図1は、後述の実施例1の態様を表すものであり、機能性表面層を構成するハードコート層が黒色粒子としてカーボンブラックを含有する態様の概略断面図である。図2は、後述の実施例2の態様を表すものであり、機能性表面層を構成するハードコート層が黒色粒子として、平均粒径が6.5μmの有機/無機ハイブリット粒子を含有する態様の概略断面図である。
上記の図1および図2のディスプレイ用フィルターは、透明基材1の上にメッシュ状の導電層2を有し、メッシュ状の導電層2の上に直接に、黒色粒子4を含有するハードコート層3が積層されており、透明基材1のメッシュ状の導電層2とは反対面には、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層5と、色補正用粘着層6が順次積層された構成になっている。
図1は、ハードコート層3が黒色粒子4として平均粒径が0.01〜0.1μmのカーボンブラックを含有する態様である。図2は、ハードコート層3が黒色粒子4として平均粒径が6.5μmの有機/無機ハイブリット粒子を含有する態様であり、平均粒径が比較的大きい黒色粒子を用いているので、防眩効果が発現する。
以下、本発明のディスプレイ用フィルターについて実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(評価方法)
(1)メッシュ状の導電層の厚み
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製S―800、加速電圧26kV、観察倍率3000倍)で観察し、メッシュ状の導電層の厚みを計測した。各実施例および比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の5箇所について計測し、その平均値をメッシュ状の導電層の厚みとした。
(2)メッシュ状の導電層のメッシュのピッチ
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、格子状導電性パターンのピッチを測長した。各実施例および比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の25箇所について計測し、その平均値を導電層のメッシュのピッチとした。導電層のメッシュのピッチとは、メッシュ構造のある開口部と、この開口部と1辺を共有する隣接する開口部との重心間の距離とする。
(3)粘度の測定
ブルックフィールド製デジタルレオメータ(DV―E)を用いて、スピンドルをLV1、回転数を100rpmに設定して、粘度の測定を行った。各実施例および各比較例について、10回測定を行い、その平均値をハードコート層塗料の粘度とした。
(4)積層の厚み測定
ディスプレイ用フィルターサンプルの断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて観察する。試料調整は、超薄切片法を用いる。10万倍の倍率で観察し、各々の層の厚みを測定する。
(5)防眩性の評価
ディスプレイ用フィルターサンプルを視認面側(機能性表面層側)が上になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に置き、4隅を透明テープで固定する。得られたサンプルを暗室中で、フィルターサンプルの直上50cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック製3波長形昼白色 F.L 15EX−N 15W)を設置する。フィルターの視認面を正面30cmの距離から肉眼観察し、フィルター視認面に映り込んだ蛍光灯像の輪郭が比較的不鮮明に見える場合を防眩効果あり、比較的鮮明に見える場合を防眩効果なし、として評価した。
(6)黒輝度測定
ディスプレイ用フィルターサンプルを、プラズマテレビ(TH−42PX500、松下電器産業(株)社製。但し、純正のフィルターを取り外したものを使用。)に、裏面(視認側とは反対側の表面)(機能性表面層側とは反対の面)がプラズマディスプレイパネルに直に面するように設置した。さらに、パネルの鉛直照度と水平照度を、それぞれ100ルクスと70ルクスとなるように設置した。光源は、3波長蛍光灯(東芝ライテック(株) ネオラインラピッドマスター 3波長形昼白色FLR40S N−EDL/M)。プラズマディスプレイパネル表面から輝度計のレンズまでの距離が1.3mとなる位置にパネルとレンズを水平に合わせ、コニカミノルタ製CS−1000をフィルター中心部のパネル無点灯時の黒輝度を測定した。
この場合フィルターには、透過率による影響、界面、パネルからの反射の影響をほぼ0に抑え正確に表面機能層の効果を検証するため、フィルター裏に黒テープを貼った状態で行い、より導電層からの外光の反射を顕著に測定できるようにして行った。その他測定条件はカラープラズマディスプレイモジュール測定法に基づく。
黒輝度0.01(cd/m)は、明所コントラスト2〜3%に相当し、明所コントラストが5%違えば、明らかに有意差があるということができる。
(導電層の作製方法)
光学用ポリエステルフィルム(東レ(株)製の“ルミラー”(登録商標)U46、厚み100μm)の片面に、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いて、正方形のメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施すことによって、線幅20μm、線ピッチ300μm、厚み5μmのメッシュパターンが形成された電磁波シールドフィルムを作製した。
(ハードコート層の作製方法)
上記で得られたメッシュ状の導電層のメッシュ上に、市販のハードコート剤(JSR製“オプスター”(登録商標)Z7534)を、各実施例および各比較例に記載した濃度に希釈した塗料に、各実施例および各比較例に記載した平均粒径および濃度となるように黒色粒子を添加し得られた塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、90℃の温度で1分乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚みが8μmの着色ハードコート層を形成した。
(Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層の作製方法)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製“KAYASORB”(登録商標)IRG−050を14.5質量部、日本触媒(株)製“イーエクスカラー”(登録商標)IR−10Aを8質量部、さらに593nmに主吸収ピークを有する有機色素として、山田化学工業(株)製TAP−2を2.9質量部を、メチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド”(登録商標)IR−G205(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して塗料を作製した。反射防止層を形成した側と反対側の光学用ポリエステルフィルム面に、ダイコーターを用いて上記塗料を塗工し、120℃の温度で乾燥して、厚み10μmの樹脂層を形成し、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層を作製した。
(色補正用粘着剤層の作製)
アクリル系透明粘着剤中に有機系色補正用色素を含有させた、厚みが25μmの色補正用粘着剤層を、上記近赤外線遮断層の上に積層した。
[実施例1]
固形分濃度40%に調節したハードコート剤に、カーボンブラック粒子(約0.01〜0.1μm)分散体(御国色素(株)#201)を濃度が0.13質量%になるように添加し、粘度が2mPasである、ハードコート層用塗料を用いて、導電層上にハードコート層を形成した。さらに、光学用ポリエステルフィルムの導電層を形成した側とは反対側の面に、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層および色補正用粘着剤層を形成した。
[実施例2]
固形分濃度40%に調節したハードコート剤に、さらに、有機/無機ハイブリット粒子(アクリル樹脂/カーボンブラック)(根上工業(株)GR−650)の平均粒径が6.5μm、濃度が2.5質量%添加し、粘度が2mPasである、ハードコート層用塗料を用いて、導電層上にハードコート層を形成した。さらに、さらに、光学用ポリエステルフィルムの導電層を形成した側とは反対側の面に、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層および色補正用粘着剤層を形成した。
[比較例1]
固形分濃度40%に調節したハードコート剤を用い、粘度が2mPasである塗料を得て、導電層上に、ハードコート層を形成した。さらに、光学用ポリエステルフィルムの導電層を形成した側とは反対側の面に、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層および色補正用粘着剤層を形成した。
[比較例2]
固形分濃度40%に調節したハードコート剤に、架橋アクリル粒子を(総研化学(株)製のMR1HG1とMR2HGを7:3の割合で含む)を3.0質量%添加し、粘度が2mPasである、ハードコート層用塗料を用いて、導電層上にハードコート層を形成した。さらに、光学用ポリエステルフィルムの導電層を形成した側とは反対側の面に、Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層および色補正用粘着剤層を形成した。
実施例1と実施例2および比較例1と比較例2の測定結果を、表1にまとめて示す。
Figure 2010048854
表1の結果から、実施例1と実施例2は、黒輝度が低く、明所コントラストに優れていることが分かる。また、実施例2は、黒色粒子として粒子径が比較的大きい有機/無機ハイブリット粒子を用いているので、防眩効果が発現している。
一方、ハードコート層に黒色粒子を含有しない比較例1と比較例2は、黒輝度が高く、明所コントラストが劣っていることが分かる。
上記のとおり、本発明により、メッシュ状の導電層上に直接、着色性ハードコート層を含む機能性表面層を積層することにより、一枚基材フィルターに起こるメッシュ状の導電層からの外光の反射と散乱を抑制し、高コントラストなフィルターを低コストで作成することが可能である。
図1は、本発明のディスプレイ用フィルターの一例を説明するための概略横断面図である。 図2は、本発明のディスプレイ用フィルターの他の一例を説明するための概略横断面図である。
符号の説明
1 透明基材
2 メッシュ状の導電層
3 ハードコート層
4 黒色粒子
5 Ne光カット機能を併せ持つ近赤外線遮断層
6 色補正用粘着剤層

Claims (8)

  1. 透明基材上に、メッシュ状の導電層と該導電層上に直接に配置された機能性表面層を有するディスプレイ用フィルターであって、該機能性表面層が黒色粒子を含有することを特徴とするディスプレイ用フィルター。
  2. 機能性表面層が、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能および防汚機能からなる群から選ばれた少なくとも一つの機能を持つことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用フィルター。
  3. 機能性表面層の厚みが、メッシュ状の導電層上に積層された状態で1〜15μmの厚さであることを特徴とする請求項1または2記載のディスプレイ用フィルター。
  4. 機能性表面層が、平均粒径0.01〜8μmの黒色粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
  5. 機能性表面層が、黒色粒子を機能性表面層の全成分に対して0.01〜20質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
  6. メッシュ状の導電層の厚みが0.1〜8μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
  7. メッシュ状の導電層上に機能性表面層のみを積層した状態での全光線透過率が40%〜90%の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
  8. 更に、近赤外線遮断機能、色調補正機能、紫外線遮断機能およびNeカット機能からなる群から選ばれた少なくとも1つの機能を有する機能層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のディスプレイ用フィルター。
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