JP2008158023A - プラズマディスプレイ用フィルター - Google Patents

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Tatsuro Tsuchimoto
達郎 土本
Minoru Yoshida
実 吉田
Nobuyasu Kai
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Abstract

【課題】
防汚性、耐擦傷性、映り込み防止性に優れ、さらに極めて優れた透過画像鮮明性を兼ね備えたプラズマディスプレイ用フィルターを提供する。また、好ましくは干渉縞防止性にも優れたプラズマディスプレイ用フィルターを提供する。
【解決手段】
反射防止層と、反射防止層の視認側表面に設けられた撥水性及び/又は撥油性の防汚層を有し、
防汚層の視認側表面の中心線平均粗さRaが15〜100nm、及び10点平均粗さRzが50〜1000nmであり、
防汚層の視認側表面に表面うねり幅が1〜100μm、表面うねり長さが1〜500μm、及び表面うねり占有率が60〜100%の表面うねり構造が形成されているプラズマディスプレイ用フィルターにより上記課題を解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、防汚性、耐擦傷性、映り込み防止性、透過画像鮮明性に優れたプラズマディスプレイ用フィルターに関する。さらには、干渉防止性をも兼ね備えたプラズマディスプレイ用フィルターに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と略す。)には、PDPの機能を向上させるため光学フィルターが前面に取り付けられている。このようなPDP用フィルターに必要な機能として、(1)薄膜ガラス製のPDP本体(パネル)に対する機械的強度の付与、(2)PDPから放出される電磁波の遮蔽、(3)PDPから放出される赤外線の遮蔽、(4)外光の反射防止、(5)色調補正、(6)表面の耐久性(耐擦傷性、防汚性)等を挙げることができる。現在市場に出ているPDPに搭載されているPDP用フィルターは、各々上記(1)〜(6)の機能を有する複数の層を積層することで形成されている。具体的には、PDPパネルに対して機械的強度を付与するためにガラス等の透明基板、電磁波を遮蔽するために導電性膜、赤外線を遮蔽するために赤外線吸収フィルム、外光の反射防止のために反射防止膜、色調を補正するために可視光領域に吸収のある色素を含有した層、表面の耐久性を向上させるために各種の保護層が使用されている。
PDPに要求される性能は年々厳しくなっており、PDP用フィルターに対する要求もより高度になっている。中でも、より画質特性を向上させるため、高コントラスト化、干渉縞抑制、蛍光灯等のPDP表面への映り込みの軽減、などが強く求められるようになっている。映り込みの問題については、理論的にはフィルターを構成する各層間の屈折率差を限りなくゼロに近づけることで改善でき、また、フィルター表面に光拡散層を設けて映り込み像の輪郭を不鮮明にすることで更なる改善ができると考えられる。干渉縞抑制については、表面の平滑化、光拡散層の適用などの方法により改善が検討されている。
例えば、映り込みを軽減するために、反射防止層が前面光学フィルターの両側に設置された技術が開示されている(特許文献1)。
また、映り込みの軽減と同時に干渉縞の発生も抑制するために、フィルター表面に凹凸構造を有する光拡散層を設けて映り込み像の輪郭を不鮮明にする技術も提案されている(特許文献2,3)。さらに、フィルターをPDPパネルに直接貼り付けることによってパネル表面からの反射、フィルター裏面からの反射を抑制して映り込み軽減を図る技術も開示されている(特許文献4,5)。
また、PDPフィルターの特性において、特に強く改善が要求されているもう一つの項目として表面の耐久性が挙げられる。中でも指紋などの油汚れの拭き取り性、耐擦傷性の向上については更なる改良が望まれている。油汚れ防止(防汚性)についてはフッ素やシリコーンなどの撥油性の材料を表面に積層することが一般に実施されており、例えば、防汚性を改善するために、反射防止層の表面に防汚層が設置された反射防止フィルムに関する技術が開示されている(特許文献6、7)。また、超撥水性の表面を形成する技術として、表面に凹凸構造を形成させその上にフッ素樹脂層を形成する技術も提案されている(特許文献8)。
また、耐擦傷性改良については表面の滑り性を良くする方法と表面硬度の向上や各積層膜の密着性により材料の機械的強度を向上させる方法があり、滑り性向上についてはフッ素やシリコーンなどの撥油性の材料の表面への積層が(特許文献6,7)、機械的強度については材料組成や接着成分の検討がなされてきた。
特開2000−156182号公報 特開2001−281411号公報 特開2004−126495号公報 特開2005−242227号公報 特開2005−243509号公報 特開平9−197103号公報 特開平11−258405号公報 特開2002−53689号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、反射防止性能が不十分であるために、十分な映り込み軽減効果が期待できない。
また、特許文献2,3の技術では、フィルター表面での光拡散性の最適化が不十分であるため、映り込みを軽減する特性が良好であっても、透過光の拡散性が高く、PDP画面に映る画像の鮮明性が悪くなり(透過画像鮮明性が悪い)、逆に透過画像鮮明性が良好でも映り込みの軽減が必ずしも良好でない場合がある。
さらに、特許文献4,5の技術では、映り込みを軽減する効果が十分ではない。
また、特許文献6、7の技術では、防汚性や耐擦傷性の改善効果は得られるものの最近の厳しいレベルの要求特性を満たすものではなかった。これに対して、特許文献8の技術のように、フィルター表面に凹凸構造を形成させてその上に防汚層を形成させることで、防汚層の滑り性に加えて対象物との接触面積を減らすことが可能となり耐擦傷性の向上が期待できる。例えば基材の表面に粒子を含む樹脂層を積層したいわゆるアンチグレアフィルムなどの上に防汚性の材料を積層することで防汚性と耐擦傷性に優れるフィルター表面を形成できると考えられる。しかし、この技術を用いた場合にはフィルター表面での光拡散性が大きくなり、耐擦傷性向上効果および映り込み軽減効果は期待できるが、透過光の拡散性が高くPDP画面に映る画像の鮮明性が悪くなる(透過画像鮮明性が悪い)ことが懸念される。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、防汚性、耐擦傷性、映り込みを軽減する効果(以下、映り込み防止性とする)に優れ、さらに極めて優れた透明画像鮮明性を兼ね備えたプラズマディスプレイ用フィルターを提供することを目的とする。また、好ましくは干渉縞防止性にも優れたプラズマディスプレイ用フィルターを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のプラズマディスプレイ用フィルターは以下の構成をとるものである。すなわち、本発明のプラズマディスプレイ用フィルターは、
反射防止層と、反射防止層の視認側表面に設けられた撥水性及び/又は撥油性の防汚層を有し、
防汚層の視認側表面の中心線平均粗さRaが15〜100nm、及び10点平均粗さRzが50〜1000nmであり、
防汚層の視認側表面に表面うねり幅が1〜100μm、表面うねり長さが1〜500μm、及び表面うねり占有率が60〜100%の表面うねり構造が形成されたものである。
また、本発明のプラズマディスプレイ用フィルターは、
複数の機能層が積層された構成を有し、そのうち1つ以上の界面に、うねり幅1〜100μm、うねり長さ1〜500μm、うねり高さ0.05〜3.0μm、及びうねり占有率60〜100%の界面うねり構造が形成されたものであること、
透明樹脂層の視認側にハードコート層、その上に反射防止層が積層された構成を有し、ハードコート層と透明樹脂層の界面に前記界面うねり構造を持つこと、
前記透明樹脂層がポリエステルフィルムであること、等の特徴を好ましい態様として持つものである。
また、本発明のプラズマディスプレイは、上記のプラズマディスプレイ用フィルターを使用したものである。
本発明によれば、防汚性、耐擦傷性、映り込み防止性に優れ、透過画像鮮明性を兼ね備えたPDP用フィルターを提供できる。また、本発明の好ましい態様によれば、更に干渉縞防止性も兼ね備えるPDP用フィルターを提供できる。
(視認側最表面の構造(表面うねり構造))
前述したようにPDPに要求される性能は年々厳しくなっており、PDP用フィルターに対する要求もより高度になっている。中でも、更なる画質特性の向上を図るために、PDP表面への映り込みの軽減については最も重要な課題としてその改善が強く求められるようになっている。映り込みの軽減については、理論的にはフィルター最表面の屈折率を低くすること、フィルターを構成する各層間の屈折率差を限りなくゼロに近づけること、フィルターに光拡散層を設けて映り込み像の輪郭を不鮮明にすることで達成することができると考えられており、既に様々な検討がされてきた。しかし、最表面の屈折率低下と屈折率差の低下には限界があり、最表面層に多量の粒子を適用したいわゆるアンチグレアフィルムのような拡散性の高いものをフィルター表面に適用した場合には、映り込みは大幅に軽減できるがPDP画面に映る画像の鮮明性が悪くなる傾向があるため、総合的にバランスのとれた特性とすることは容易ではなかった。
本発明ではこのような実状を鑑み、フィルター視認側最表面の形状を最適化することによって、映り込み低減と透過画像鮮明性とが両立した最も優れた画質が得られるフィルター光学特性を見出したものである。(フィルター視認側表面とは、フィルターをPDPパネルにセットした時の観察者側の表面を表す。)具体的には、本発明のPDP用フィルターは視認側最表面に極めてなだらかな凹凸構造(表面うねり構造)を高密度に形成させたものであり、視認側最表面の中心線平均粗さRaが15〜100nm、視認側最表面の10点平均粗さRzが50〜1000nmであり、表面うねり幅1〜100μm、表面うねり長さ1〜500μm、及び表面うねり占有率60〜100%の表面うねり構造が視認側最表面に形成されたものである(図1を参照)。
視認側最表面の中心線平均粗さRaは、好ましくは20〜80nm、より好ましくは25〜60nm、更に好ましくは30〜50nmである。10点平均粗さRzは好ましくは70〜250nm、より好ましくは90nm以上200nm以下である。表面うねり幅は好ましくは10〜60μm、より好ましくは10〜40μmである。表面うねり長さは好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜60μmである。表面うねり占有率は好ましくは70〜90%、より好ましくは75〜85%である。表面うねり構造の形状については、金属蒸着された表面の構造を光学顕微鏡で撮影した写真において、短軸側の長さを「表面うねり幅」、長軸側の長さを「表面うねり長さ」と規定する。円型に近い場合はその直径、楕円に近い場合には、短軸を表面うねり幅とする。また、本発明における表面うねり構造は凸構造であっても、凹構造であっても構わない。なお、表面うねり構造の形成方法については、後述する界面うねり構造の形成方法に続いて説明する。
Raが15nm未満の場合、映り込み像の輪郭が明瞭になり映り込み像が見やすくなる傾向があり、100nmを越える場合は透過画像が劣化する傾向がある。Rzが50nm未満の場合、映り込み像の輪郭が明瞭になり映り込み像が見やすくなる傾向があり、1000nmを越える場合は透過画像が劣化する傾向がある。表面うねり幅が100μmを越える場合、透過画像にぎらつきが発生する傾向があり、1μm未満の場合は透過画像が劣化する傾向がある。表面うねり長さが500μmを越える場合、透過画像にぎらつきが発生する傾向があり、1μm未満の場合は透過画像が劣化する傾向がある。表面うねり占有率が60%未満の場合、映り込み像の輪郭が明瞭になり映り込み像が見やすくなる傾向がある。
また、映り込み像はPDP用フィルターからの反射光とパネルからの反射光から成る。パネルからの反射光はPDP用フィルターで吸収されるため、PDP用フィルターの透過率を下げることにより映り込み性能を向上させることができる。しかし、透過率を下げ過ぎた場合には透過画像の輝度も低下して画像が暗くなり、輝度を維持するためにはPDPパネルに映す画像を明るくする必要があり、結果的に消費電力が多くなるので好ましい態様とは言えない。本発明のPDP用フィルターの全光線透過率は好ましくは20〜60%、より好ましくは25〜50%、更に好ましくは30〜45%であり、このような透過率とすることで、映り込みの低減と透過像輝度のバランスを好適にすることができる。
(防汚層について)
本発明の最も大きな特徴は非常に優れた防汚性と耐擦傷性にあり、これはフィルター最表面に防汚性材料からなる層を設け、該防汚層の表面に極めてなだらかな凹凸構造(表面うねり構造)を高密度に形成させることで達成することができるものである。具体的には、本発明における防汚層の最表面は、中心線平均粗さRaが15〜100nm、視認側最表面の10点平均粗さRzが50〜1000nmであり、表面うねり幅1〜100μm、表面うねり長さ1〜500μm、及び表面うねり占有率60〜100%の表面うねり構造が形成されているものである(図1を参照)。
このような形状とすることで上記したようにPDPの透過画像の劣化を極力抑制した状態で対象物との接触面積を減らすことが可能となるため、光学特性を高レベルに維持しつつ耐擦傷性を向上させることができると考えられる。また、同時に防汚性も大きく向上させることができる。
防汚層を形成した視認側最表面の中心線平均粗さRaは、好ましくは20〜80nm、より好ましくは25〜60nm、更に好ましくは30〜50nmである。10点平均粗さRzは好ましくは70〜250nm、より好ましくは90nm以上200nm以下である。表面うねり幅は好ましくは10〜60μm、より好ましくは10〜40μmである。表面うねり長さは好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜60μmである。表面うねり占有率は好ましくは70〜90%、より好ましくは75〜85%である。
Raが15nm未満、Rzが50nm未満、又は表面うねり占有率が60%未満の場合には耐擦傷性が悪化することがあるため好ましい態様ではない。
本発明の防汚層の材料は特に限定されるものではなく防汚性の高い一般的な材料であれば適用可能である。防汚性材料の具体例としては、シリコーン系材料、フッ素系材料があり、より具体的にはポリテトラフルオロエチレンまたはその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルのようなフッ素系樹脂の他、パーフルオロアルキルシリル化合物などのフッ化シリル化合物やパーフルオロアルキルアクリレート化合物などの反応物などを例示することができる。中でも防汚層の下地層となる反射防止層との密着性の観点から、フッ化シリル化合物の反応物を用いるのがより好ましい。
本発明における防汚層の厚みは1〜30nmであることが好ましい。防汚層の厚みが1nm未満場合には防汚効果および耐擦傷性効果が発現しにくくなり、30nmより厚い場合には視感反射率が大きくなり映り込み防止性が悪化する場合がある。
本発明のPDP用フィルターおいて防汚層の形成方法は特に限定されないが、コストと性能のバランスを考慮すると、ウエットコーティングにより塗料を塗布する方法が好ましい。塗料の塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを好ましく用いることができるが、塗布厚みの均一性の点からマイクログラビアコーティングが好適に用いられる。次いで塗布後に加熱、乾燥および熱または紫外線等の活性線で硬化させることにより被膜を形成する。
(フィルターの構成について)
本発明のPDP用フィルターは複数の層が積層された積層体である。これらの層はそれぞれに特有の機能を持つ機能層となっている。本発明にかかる機能層としては、防汚層、反射防止層、ハードコート層、透明樹脂層、紫外線カット層、赤外線カット層、電磁波シールド層、色補正層、透明基材層、層間粘着層などが挙げられる。これらの機能層の順番は最表層に防汚層次に反射防止層が配置される以外は特に限定されるものではないが、好ましい態様としては、反射防止層より下側にハードコート層が配置され、更に下側に色補正層が配置され、更に下側に電磁波シールド層が配置される。赤外線カット層に赤外線吸収剤を用いる場合には紫外線による劣化を防止するためにこの層より上側に紫外線防止層を配置するのがよい。好ましい積層順番としては、防汚層/反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層/紫外線カット層/色補正層/赤外線カット層/電磁波シールド層/透明基材層、防汚層/反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層/紫外線カット層/色補正層/赤外線カット層/透明基材層/電磁波シールド層、防汚層/反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層/紫外線カット層/色補正層/透明基材層/赤外線カット層/電磁波シールド層、防汚層/反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層/紫外線カット層/色補正層/透明基材層/電磁波シールド層/赤外線カット層などを例示することができる。
本発明のPDP用フィルターは、PDPパネルの表示面に取り付けて用いることができる。ここで、PDPパネルの表示面に取り付ける際、該表示面にPDP用フィルターを直接貼り付けてもよく、該表示面との間に間隔をおいて設置してもよいが、パネルの表示面(最表面)からフィルター視認側最表面の距離dが2〜20mmとなるように設置した場合に、最も透過画像を維持して映り込み性能を改善することができる。
(界面うねり構造)
本発明にかかるPDP用フィルターの構成として、複数の層が積層された積層体であって、そのうちの少なくとも1つの層間界面にうねり構造が形成された構成が好ましい。この構成を特定の条件を満たしながら形成させることで、さらに映り込み特性と透過画像鮮明性に優れ、干渉縞抑制性能に優れるPDP用フィルターを提供することができる。
具体的には、本発明の好ましい構成では、複数の層が積層された積層体において、少なくとも1つの層間の界面に幅、長さ、高さ、密度が制御された微細な凹凸構造(界面うねり構造)が形成されている。本発明における界面うねり構造は、以下に述べる形状であることが好ましい。界面うねり幅は好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは10〜30μmである。界面うねり長さは好ましくは1〜500μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜60μm、特に好ましくは10〜30μmである。界面うねり高さは好ましくは0.05〜3μm、より好ましくは0.05μm〜1.5μm、さらに好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmである。界面うねり占有率は好ましくは60〜100%であり、より好ましくは70〜90%、さらに好ましくは75〜85%である。このような界面のうねり構造は凸構造であっても、凹構造であっても構わない(図1を参照)。
このような特定の条件を満たす界面うねり構造と表面うねり構造の両者を共存させることによって、透過画像鮮明性を高いレベルに保持しながら、更に良好な映り込み特性を発現させることができる。界面うねり構造の形状については、光学顕微鏡により界面構造を撮影した写真において、短軸側の長さを「界面うねり幅」、長軸側の長さを「界面うねり長さ」と規定する。円型に近い場合はその直径、楕円に近い場合には、短軸を界面うねり幅とする。
界面うねり高さが0.05μm未満の場合、又は界面うねり占有率が60%未満の場合には映り込み抑制効果が少なくなる傾向がある。界面うねり幅が100μmを越える場合、又は界面うねり長さが500μmを越える場合には、界面うねり構造がレンズ効果を持つことに起因する画面のぎらつきが発生する傾向がある。また、界面うねり幅若しくは界面うねり長さが1μm未満の場合、界面うねり高さが3μm以上の場合、透過画像鮮明性が悪くなる傾向がある。
本発明では、複数の層が積層された積層体において、界面うねり構造が形成された面を挟む2つの層の屈折率差が0.05〜0.3であることが好ましい。屈折率差はより好ましくは0.1〜0.2である。屈折率差が0.3を越えると光拡散性が強くなり画像鮮明性が悪くなる傾向が見られる。屈折率差が0.05未満であると光拡散性が弱くなり映り込み軽減の効果が少なくなる傾向が見られる。また、この光拡散性界面が上述したうねり構造で形成されている態様がより好ましい。
本発明のPDP用フィルターでは、最表層から順に反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層と配置するのが好ましい構成である。このような構成にすることで反射率を低下させて映り込みを軽減させるとともに表面硬度を上げることができるからである。この構成の問題点としてハードコート層に厚みムラがある時に干渉縞(ニュートンリング)が発生するというものがあるが、ハードコート層と透明樹脂層の界面に界面うねり構造を形成することで、上述した映り込み軽減と透過画像鮮明性保持が実現でき、更に干渉縞の発生を抑制することもできる。ここで、界面うねり高さ、界面うねり占有率が高いほど干渉縞の低減には好ましいが、界面うねり幅、界面うねり高さ、界面うねり占有率が最適な値に制御されていないとフィルターのヘイズが高くなり透過画像鮮明性などの画質特性に悪影響を及ぼすことがある。しかし、上記した範囲内で界面うねり幅、界面うねり長さ、界面うねり高さ、界面うねり占有率を制限することにより、良好な映り込み特性、良好な透過画像鮮明性、干渉縞の抑制を同時に満たすことができる。
また、最表面あるいはうねり構造界面以外に光拡散層を適用することも可能であり、バインダー成分に対して屈折率差を有する成分を分散させた光拡散層などを例示することができる。屈折率差を有する成分を分散させる層としては、反射防止層、ハードコート層、透明樹脂層、紫外線カット層、赤外線カット層、電磁波シールド層、色補正層、透明基材層、層間粘着層などがあり特に限定されないが、その層本来の機能を阻害せず、生産性を損なわないといった観点から、透明樹脂層、層間粘着層に屈折率差を有する成分を分散させるのが好ましい。これらの層に屈折率差を有する成分を分散させることで、その層本来の機能に加えて光拡散の機能を付与することができる。もちろん、樹脂に屈折率差を有する成分を分散させて、光拡散の機能のみを有する層を光拡散層とすることもできる。屈折率差を有する成分としては光学特性を阻害しない範囲内で各種の有機、無機の添加成分を用いことができる。具体的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などの無機粒子、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂など組成を持つ有機粒子を挙げることができる。また、光拡散層として、その表面に後述するうねり構造を形成した層を設けてもよい。
(界面うねり構造の形成方法)
界面うねり構造の形状を制御する方法としては、凹凸構造を有するエンボスロールなどの鋳型の表面形状を転写させる方法がある。凹凸構造を転写させるエンボスロールの表面平均粗さを種々変化させ、押しつけ後の転写形状を変化させることができ、結果として形成される凹凸の幅、高さ、占有率を制御することができる。また、転写の際の押しつけ圧、及び押しつけ温度によっても制御することができる。ハードコート層と透明樹脂層の間に凹凸構造を形成する場合には、透明熱可塑性フィルムなどの透明樹脂層に凹凸構造を転写させた後、凹凸構造を形成させた面にハードコート層を積層することで目的の構造を得ることができる。凹凸構造形成に用いられる鋳型ロールとしては、凹凸が細かいもの、粗いものまで、適宜選択して適用でき、模様、マット状、レンチキュラーレンズ状、球状の凹凸が規則正しく、もしくはランダムに配列されたものが使用できる。例えば、凸部または凹部の直径1〜100μm、高さが0.01〜0.5μmの球の一部からなる凸部もしくは凹部等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
エンボスロールを用いた転写法は界面うねり構造を形成させる有力な方法であるが、比較的高さの低い凹凸構造を均一に形成するためには以下に述べるインラインコーティング法を用いるのが好ましい。インラインコーティング法とは透明樹脂層として熱可塑性樹脂フィルムを用い、熱可塑性樹脂フィルム製膜工程の途中でコーティングを行うもので、熱可塑性樹脂として結晶性ポリマーを用いて製膜条件とコート剤の選択により、透明樹脂層とコート層の間に制御された界面うねり構造を形成する方法である。
インラインコーティング法を用いたハードコート層/透明樹脂層の界面への界面うねり構造形成方法の一例として、透明樹脂層にポリエステルフィルムを用いた場合について説明する。上記した界面うねり構造は、通常の二軸延伸されたポリエステルフィルム上にハードコート層を塗布し、硬化積層させる方法では達成することができない。本発明にかかる界面うねり構造の形成方法としては、結晶配向が完了する前の適度に結晶化しているポリエステルフィルム(フィルム断面からラマン法により測定した結晶化度が3〜25%の状態のポリエステルフィルム)にハードコート塗布剤を塗布し、その後、延伸、熱処理を施し、必要に応じて紫外線などの活性線を照射することによって得る方法が好ましい。適度に結晶化しているポリエステルフィルムとするためには、溶融押出された未延伸フィルム表面を加熱して長手方向に2.5〜3.5倍延伸することによって得ることができる。またフィルム中に結晶化核剤を添加して結晶化を促進させたり微結晶を形成させる方法も有効である。ハードコート塗布剤を塗布後、未硬化状態のハードコート剤が積層された状態のポリエステルフィルムを幅方向に延伸するが、ハードコート塗布剤の組成を調整してハードコート塗布剤をポリエステルフィルム中に部分的浸透させることにより、浸透部分と非浸透部分との延伸性の違いにより凹凸構造が形成される。幅方向に延伸されたフィルムは、連続的に熱処理工程に導かれ、約220℃〜245℃程度で熱処理されることにより、ハードコート層が硬化すると共に基材フィルムとの接着性を向上させる。熱処理時間は長い方が好ましいが、温度に応じて10〜40秒程度とするのが望ましい。また高速で製膜し、熱量が不足する場合には熱処理後に紫外線などの活性線を照射して硬化させる方法が有効である。
凹凸構造を形成させる方法として、上記の他、1軸延伸により結晶配向している熱可塑性ポリエステルフィルムの片面に、鋳型を押し当てて表面に凹凸構造を形成し、得られたフィルム上にハードコート塗剤を塗布し、220〜245℃の高温で10〜40秒程度の熱処理を行うのが有効である。
次に、本発明における界面にうねり構造を持つハードコート層/透明樹脂層積層体の製造方法の一例について、透明樹脂層としてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明する。
平均粒子経0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有するPETペレット(極限粘度0.62dl/g)を、180℃で約2時間真空乾燥して十分に水分を除去した後、押出機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出し、T字型の口金からシート状に成形する。このようにして得られたシート状物を、鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを、70〜120℃に加熱したロール群で長手方向に2.5〜3.5倍の延伸を行なう。次いで、このようにして1軸に延伸されたフィルムの表面に、ハードコート塗剤を塗布し、その後フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で70℃〜110℃に予熱後、幅方向に80℃〜125℃で約2〜5倍延伸する。幅方向に延伸された積層フィルムは、更に220〜245℃の雰囲気中で3〜10%の弛緩処理を行いつつ、PETフィルムの結晶配向と塗膜硬化を完了させる熱処理を行う。
(表面うねり構造の形成方法)
フィルター視認側表面に形成される表面うねり構造の形状を制御する方法としては、界面うねり構造と同様に凹凸構造を有するエンボスロールなどの鋳型の表面形状を転写させる方法があるが、最表面に反射防止層を適用し、この反射防止層に鋳型構造を転写させる場合には該層が100nm前後と薄いため安定した反射防止能を維持させたまま凹凸構造を形成させるのは困難である。反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層という構成の場合には、ハードコート層に鋳型構造を転写したのち反射防止層を形成させることで、最表面に目的のうねり構造を形成させることができる。
これに対して、前述のインラインコーティング法ではインラインコート後のレベリング条件のコントロールにより、表面に高さの低い凹凸構造を均一に形成することができるため、非常に好ましい態様である。具体的には、インラインコーティング法を用いてハードコート層/透明樹脂層の界面とハードコート層表面へうねり構造を形成し、その後、ハードコート層表面に反射防止層を設けることで、反射防止層表面に表面うねり構造をもつ反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層という構成の部材を製造する場合について説明する。ハードコート層/透明樹脂層の界面うねり構造は、長手方向に延伸することで得た適度に結晶化したフィルム上にハードコート塗布剤を塗布後、未硬化状態のハードコート剤が積層された状態のポリエステルフィルムを幅方向に延伸する際、ハードコート塗布剤をポリエステルフィルム中に部分的浸透させることにより形成されるが、界面うねり構造が形成された直後のフィルム温度をコントロールすることで、ハードコート表面のうねり構造を調整することができる。界面うねり構造ができた直後はハードコート表面には大きなうねり構造が形成されているが、硬化までの温度に応じてハードコート剤はレベリングして平滑化する。得られたハードコートフィルムは制御された表面うねり構造と界面うねり構造を有しており、これに100〜300nmの薄膜の反射防止層を塗設しても表面うねり構造は保持され、反射防止層表面のうねり構造と界面のうねり構造が制御されたフィルムを製造することができる。
次に、本発明のPDP用フィルターを構成する各層について、より具体的に説明する。
(透明樹脂層)
本発明における透明樹脂層は、通常、反射防止層、ハードコート層、赤外線カット層、電磁波シールド層などを積層するための基材として用いられる。また、紫外線吸収成分を添加することで紫外線カット層としての役割を担うこともできる。
本発明における透明樹脂層は、溶融製膜や溶液製膜可能なフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリレートなどからなるフィルムを挙げることができる。これらのフィルムは本発明における各機能層の基材として好適に用いられるが、うねり構造を形成する面に用いられる透明樹脂層の材料として好ましいものとしては、透明性、機械的強度および寸法安定性などに優れた樹脂が求められ、具体的にはポリエステル、セルロースエステル、アクリル(ポリアクリレート)などが挙げられ、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、トリアセチルセルロースが好適な材料として例示することができる。また、ポリアクリレートの中でも分子内に環状構造を有する樹脂は光学等方性に優れる好適な材料である。分子内に環状構造を有する樹脂としてはグルタル酸無水物単位を10〜50重量%含有するアクリル樹脂などを例示することができる。しかし、諸特性のすべてにおいてバランスされた性能を有し、本発明におけるすべての機能層用の基材に適用できるものとしてはポリエステルが特に好ましい。
このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートが性能・コスト面で最も好ましい。また、2種以上のポリエステルが混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のフィルムが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、ラマンスペクトル分析法により測定することができる。
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
本発明で用いられる透明樹脂層は、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた積層体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。但し、粒子などを適用する場合には透明性に影響しない程度に止める必要がある。
本発明における透明樹脂層にポリエステルを用いる場合、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。ここで、二軸延伸により結晶配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ好適には2.5〜5倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
本発明で用いられる透明樹脂層の厚みは、使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
本発明の透明樹脂層中には、本発明の効果、特に光学特性を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
本発明に用いる透明樹脂層は全光線透過率が90%以上、ヘイズが1.5%以下であるのが好ましく、このようなものを適用することで画像の視認性や鮮明度を向上させることができる。
更に本発明に用いる透明樹脂層は透過b値が1.5以下であるのが好ましい。透過b値が1.5を越えると透明樹脂層自体がやや黄ばんで見えるため画像の鮮明さを損なう場合がある。
b値とは、国際照明委員会(CIE)において定められた表色の方法であり、b値は彩度を表しており、正の符号であれば黄色の色相、負の符号で有れば青色の色相を表す。また、絶対値が大きい程その色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さい程彩度が小さいことを示す。0である場合には、無彩色であることを示す。表色の調整は例えば、色素を含有させることにより実現できる色素としては、有色無機顔料、有機顔料、染料などを用いることができるが、耐候性に優れることから、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、サンカクロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、ベルリンブルー、ミロリブルー、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛ブルー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレッド、コバルトバイオレット等の有機顔料が好ましく使用される。
(ハードコート層)
本発明におけるハードコート層は、通常、透明樹脂層の少なくとも片面に積層されたハードコートフィルムが用いられる。ハードコート層成分としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型又は光硬化型樹脂等が挙げられるが、性能、コスト、生産性などのバランスを考慮するとアクリレート系が好ましく適用される。
アクリレート系ハードコート膜は多官能アクリレートを主成分とする硬化組成物からなるものである。多官能アクリレートは、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーであって、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・又は・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。)を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーの使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して50〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。
上記の化合物以外にハードコート層の剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させる目的で1〜2官能のアクリレートを併用するのが好ましい。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。すなわち、
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など
を用いることができ、分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して10〜40重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができる。
また、適宜反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
これらのアクリルオリゴマー、反応性希釈剤などの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができる。
また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては三菱レイヨン株式会社;(商品名 ダイヤビーム(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名 デナコール (登録商標)シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名 NKエステル (登録商標)シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名 UNIDIC (登録商標)シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名 アロニックス (登録商標)シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名 ブレンマー (登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名 KAYARAD (登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名 ライトエステル (登録商標)シリーズ、ライトアクリレート (登録商標)シリーズなど)などの製品を利用することができる。
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
本発明において、上記のハードコート組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができ、これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成組成物100重量部に対して、0.01〜10重量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また200℃以上の高温で熱硬化させる場合には熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明で用いられるハードコート層形成組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5−t−ブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層形成組成物総重量に対し、0.005〜0.05重量%が好ましい。
本発明において、インラインコーティング法を用いて透明樹脂層上にハードコート層を形成させる場合、塗剤中にメラミン系架橋剤を含有させるのが良い。メラミン系架橋剤を含有しない場合には、透明樹脂層との接着性が不十分となり、更には干渉縞低減効果も不十分となる場合がある。
メラミン系架橋剤の種類は特に限定しないがメラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。またメラミン系架橋剤としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。
エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。官能基としてはイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、完全アルキル型メチル化メラミン等である。その中でもメチロール化メラミン、完全アルキル化メラミンが接着性や干渉縞レス化の点で好ましい。
メラミン系架橋剤の量は特に限定しないがハードコート形成塗剤固形分中で2〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%であるのが接着性と硬度、干渉縞レスのバランスの点で好ましい。
また、メラミンの硬化を促進する目的で酸触媒を併用するのが好ましい。酸触媒としてはp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジメチルピロリン酸、スチレンスルホン酸およびこれらの誘導体などが好適に使用できる。酸触媒の添加量はメラミン架橋剤に対し、固形分比で0.05〜10重量%、好ましくは1から5重量%であるのが望ましい。メラミン系架橋剤を添加する場合、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレートを用いるのが接着性向上の点で特に好ましい。
また、本発明のハードコート層形成にあたり、ハードコート層表面を平滑化するためにレベリング剤を用いるのが好ましい。代表的なレベリング剤としてはシリコーン系、アクリル系、フッ素系などが挙げられるが平滑性のみを要求する場合にはシリコーン系が少量の添加で有効である。シリコーン系レベリング剤としてはポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基を付加したもの(例えばトーレダウコーニングシリコーン(株)製SH190)が好適である。
一方、ハードコート層上に更に積層膜を設ける場合には積層膜の塗布性、接着性を阻害しない必要があり、その場合にはアクリル系レベリング剤を用いるのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製」などを用いるのが好ましい。レベリング剤の添加量はハードコート層形成組成物中に0.01〜5重量%含有させるのが好ましい。
本発明においては透明樹脂層とハードコート層の間には接着層を介在させないことが好ましい。接着層が介在すると透明樹脂層やハードコート層との屈折率差によって干渉縞が発生したり、接着層の紫外線による劣化や高温多湿状態での接着耐久性が劣る場合がある。
ハードコート塗剤の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法などを用いることができる。
本発明で必要に応じて用いられる活性線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯または炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。また更に、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200℃以上に加温された空気による熱が好ましく、更に好ましくは200℃以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
ハードコート層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1μm〜30μmが好ましく、より好ましくは1μm〜15μm、更に好ましくは2〜8μmである。ハードコート層の厚さが0.1μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために表面硬度が十分でなく傷が付きやすくなる傾向にあり、一方、厚さが30μmを超える場合には、硬化時にカールしたり、折り曲げなどの応力により硬化膜にクラックが入りやすくなる傾向にあり、いずれも好ましくない。
(透明基材層)
本発明における透明基材層はPDP本体に機械的強度を付与するものであり、無機化合物成形物や透明な有機高分子成形物が用いられる。
無機化合物成形物としては、好ましくはガラス、強化もしくは半強化ガラスなどが挙げられ、厚さは通常0.1〜10mmの範囲であり、より好ましくは1〜4mmである。
高分子成形物は可視波長領域において透明であればよく、その種類を具体的にあげれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース等が挙げられる。これら透明な高分子成形物は、主面が平滑であれば板(シート)状であってもフィルム状であってもよい。シート状の高分子成形物を基材として用いた場合には、基材が寸法安定性と機械的強度に優れているため、寸法安定性と機械的強度に優れる透明積層体が得られ、特にそれが要求される場合には好適に使用できる。
また、透明な高分子フィルムは可撓性を有しており機能層をロール・ツー・ロール法で連続的に形成することができるため、これを使用した場合には効率よく、また、長尺大面積に機能層の積層体を生産できる。この場合フィルムの厚さは通常10〜250μmのものが用いられる。フィルムの厚さが10μm未満では、基材としての機械的強度に不足し、厚さが250μmを超えると可撓性が不足するためフィルムをロールで巻きとって利用するのに適さない。
(色調補正層)
色調補正層は、色調補正能を有する色素を含有する層であり、透過可視光の色調補正を行い、PDPの画像特性の向上、より具体的には高コントラスト化および高鮮明色化を図るものである。また、色調補正層によりPDP用フィルター全体の透過率調整が可能であり、映り込み性能の調整をする役割も担っている。
色調補正は、PDP用フィルターを透過する可視光のうち、特定波長の可視光を選択的に吸収することによって達成される。したがって、色調補正層に含有される色素は、特定波長の可視光を選択的に吸収するものであり、色素は染料と顔料のいずれも使用できる。「特定波長の可視光を選択的に吸収する」とは、可視光の波長領域(波長380〜780nm)の光のうち、特定波長領域の光を特異的に吸収することを指す。ここで色素によって特異的に吸収される波長領域は、単一の波長領域であってもよく、または複数の波長領域であってもよい。
このような特定波長を吸収する色素としては、具体的には例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、キナクリドン系、メチン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ピロール系、チオインジゴ系、金属錯体系などの周知の有機顔料および有機染料、無機顔料が挙げられる。これらの中でも、耐候性が良好であることから、フタロシアニン系、アンスラキノン系色素が特に好ましい。なお、上記した色素のうちいずれか1種類を色調補正層に含有させてもよいし、2種類以上を含有させてもよい。
また、PDP用フィルターは、その透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求されることがある。これは、PDPの発光特性及びコントラストを維持または向上させる必要がある場合、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。このような要求を達成する際にも上記の色素を適用することができる。
色調補正層は、色調補正能を有する色素を含有する限り様々な態様を取りことができる。色調補正層は、その態様に応じて好適な方法で形成すればよい。例えば、粘着剤中に色調補正能を有する色素を含有させた態様の場合、粘着剤中に色調補正能を有する色素を染料または顔料として添加して、塗布して所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。粘着剤としては、市販されている粘着剤を使用することができるが、好ましい具体例としては、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル共重合体、スチレンーアクリル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、スチレンーブタジエン共重合体系ゴム、ブチルゴム、又はシリコーン樹脂等の粘着剤を挙げることができる。
透明樹脂層、透明基材層を着色加工して色調補正層を形成する態様の場合、色調補正能を有する色素を染料または顔料として、そのまま、または溶剤に溶解させて、塗布および乾燥させて、所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。この目的で使用される溶剤としては、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。
また、色調補正層が、色調補正能を有する色素を含有する透明樹脂層である場合、透明樹脂層の原料となる熱可塑性樹脂を所望の溶剤に溶解させて、色調補正能を有する色素を染料または顔料として添加して得た溶液を塗布し、乾燥させて所望の厚さを有する色調補正層を形成すればよい。ここで使用する溶剤は、原料となる樹脂を溶解することができ、かつ添加される染料または顔料を溶解または分散することができればよい。この目的で使用される溶剤としては、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤等が挙げられる。
色調補正能を有する色素を含む溶液、または色調補正能を有する色素および透明樹脂層の原料樹脂とを含む溶液を塗布して色調補正層を形成する方法において、塗工法としては、例えばディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、コンマコート法、ダイコート法などを選択できる。これらのコート法は連続加工が可能であり、バッチ式の蒸着法などに比べて生産性が優れている。または薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
色調補正層の厚さは、十分な色調補正能を得るために0.5μm以上であることが好ましい。また、光透過性、より具体的には可視光線透過性が優れることから40μm以下が好ましく、1〜25μmであることが特に好ましい。色調補正層の厚さが40μm以上の場合、所望の染料、顔料、透明樹脂を含む溶液を塗布して色調補正層を形成する際に溶媒が残留しやすく、色調補正層を形成する際の操作性が困難となるため好ましくない。
色調補正層が、色調補正能を有する色素を含有する粘着剤層または色調補正能を有する色素を含有する透明樹脂層である場合、色素は、粘着剤または熱可塑性樹脂に対して、0.1質量%以上含有されることが好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、粘着剤層または透明樹脂層の物性を保つため、色調補正能を有する色素の量を10質量%以下に抑えることが好ましい。
(赤外線カット層)
PDPから発生する強度の近赤外線は、リモコン、コードレスフォン等の周辺電子機器に作用して誤動作を引き起こすため、近赤外領域の光を実用上問題ないレベルまでカットする必要がある。問題である波長領域は800〜1000nmであり、当該波長領域における透過率を20%以下、好ましくは10%以下とすることが必要である。近赤外線カットには、通常、最大吸収波長が750〜1100nmである近赤外線吸収能を有する色素、具体的にはポリメチン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、アミニウム系、イモニウム系、ジイモニウム系、アンスラキノン系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系の化合物などが好ましく適用され、金属錯体系、アミニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジイモニウム系が特に好ましい。なお、近赤外線吸収能を有する色素を用いる場合、いずれか1種類を含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。
近赤外線吸収層の構造、形成方法、厚さ等については上述した色調補正層と同様である。近赤外線吸収層は、色調補正層と同一の層、すなわち、色調補正層に色調補正能を有する色素と、近赤外線吸収能を有する色素とを含有させたものであってもよいし、色調補正層と別の赤外線カット層を設けても良い。近赤外線吸収色素の量はバインダー樹脂に対して、0.1質量%以上含まれることが好ましく、特に2質量%以上が好ましいが、赤外線吸収剤を含有する粘着剤層または透明樹脂層の物性を保つため、色調補正能を有する色素と近赤外線吸収剤の合計量を10質量%以下に抑えることが好ましい。
(Neカット層)
赤外線カット層あるいは色調補正層には、PDPパネル内に封入された放電ガス、例えばネオンとキセノンの二成分ガス、からの余分な発光色(主に560〜610nmに波長領域)を選択的に吸収・減衰させるための1種類若しくは複数種類の色調補正剤を混合して含有させることが好ましい。このような色素構成とすることによって、PDPの表示画面から発せられる可視光のうち、放電ガスの発光に起因する余分な光が吸収・減衰され、その結果PDPのパネルから発する可視光の表示色を表示目標の表示色に近づけることができ、自然な色調を表示し得る。
(紫外線カット層)
本発明のPDP用フィルターにおいて、紫外線カット層はこの層よりもパネル側に位置する色調補正層、赤外線カット層などに含まれる色素の光劣化を防止する役割を持つ。紫外線カット層には紫外線吸収剤を含有する透明樹脂層、粘着剤層などが用いられるが、非常に好ましい態様としては、観察者側最表面から、防汚層/反射防止層/ハードコート層/透明樹脂層・・・と続く構成において、透明樹脂層中に紫外線吸収剤を含有させるのがよい。
また、紫外線吸収剤を含む層のTgは60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。Tgが低い熱可塑性樹脂中に紫外線吸収剤を含有させると、紫外線吸収剤が粘着界面または接着界面に移動して、粘着性または接着性を阻害する恐れがある。紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂のTgが60℃以上であれば、透明樹脂層中で紫外線吸収剤が移動する可能性が低減され、PDP用フィルターの他の構成要素、具体的には例えば透明基材層、色調補正層または反射防止層の一部をなす他の透明樹脂層と層間接着層を介して接合させる場合に、粘着性が阻害されない。
透明樹脂層を構成するTgが60℃以上の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表される芳香族ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66に代表される脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート等が例示される。これらの中、芳香族ポリエステルが好ましく、特に耐熱性、機械的強度に優れる二軸延伸フィルムを形成し得るポリエチレンテレフタレートが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmにおける紫外線カット性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は基材フィルム中に0.5〜5重量%含有させるのが好ましい。
また更に優れた耐光性を付与するためにシアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物は、基材フィルム中に0.05〜2重量%含有させることが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)がある。これと併用する場合には前述の紫外線吸収剤は基材フィルム中に0.3〜3重量%であるのが好適である。
紫外線カット層では波長380nmにおける透過率が5%以下であるのが好ましく、これにより紫外線から基材や染料色素などを保護することができる。
紫外線カット層における紫外線吸収剤の含有量は0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜3質量%であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1〜5質量%であると、PDP用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収し、色調補正層に含まれる色素の光劣化を防止する効果に優れており、かつ、透明樹脂層あるいは粘着層の強度を阻害しない。
紫外線カット層、特に透明樹脂層に紫外線吸収剤を添加する方法は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の重合工程、フィルム製膜前の溶融工程での熱可塑性樹脂への練込み、二軸延伸フィルムへの含浸などを例示することができる。特に、熱可塑性樹脂の重合度低下を防止する意味でもフィルム製膜前の溶融工程で熱可塑性樹脂中に練込むことが好ましい。その際の紫外線吸収剤の練込みは、該剤の粉体の直接添加法、該剤を高濃度に含有するマスターポリマーを製膜用ポリマーに添加するマスターバッチ法などにより行うことができる。
紫外線カット層は、厚さが5〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜200μm、更に好ましくは80〜200μmである。紫外線吸収層の厚さが5〜250μmの範囲であると、PDP用フィルターの観察者側から入射する紫外線を吸収する効果に優れており、かつ光透過性、具体的には可視光線透過性に優れている。
(反射防止層)
本発明における反射防止層は、反射防止膜を有し、具体的には、可視域において屈折率が好適には1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものなどがあるが、性能とコストのバランスのとれた構成としては、最表層から低屈折率層と高屈折率層を積層した構成が好ましい。この反射防止層は通常ハードコート層の上に積層される。
本発明の反射防止フィルムおいて各々の層の形成方法は特に限定されないが、コストと性能のバランスを考慮すると、ウエットコーティングにより塗料を塗布する方法が好ましい。塗料の塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを好ましく用いることができるが、塗布厚みの均一性の点からマイクログラビアコーティングが好適に用いられる。次いで塗布後に加熱、乾燥および熱または紫外線等の活性線で硬化させることにより各々の被膜を形成する。
本発明における反射防止層は反射防止性能を有していれば特に限定されるものではないが、以下に好ましい反射防止層の態様、特に好ましい高屈折率層の態様、特に好ましい低屈折率層の態様を示す。
本発明における好ましい反射防止層は、波長380〜780nmにおける5°の絶対反射スペクトルから求められた視感反射率が1.2%以下である。より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下である。視感反射率が1.2%より大きくなると、フィルターの映り込み防止性が悪化する傾向が出てくる。なお、視感反射率の測定方法の詳細は後述する。
本発明における好ましい反射防止層において、波長380〜780nmにおける5°の絶対反射スペクトルから求められた視感反射率を前記の範囲とするためには、低屈折率層および高屈折率層の屈折率を以下のように調整する。
低屈折率層の屈折率(nL)は、1.23〜1.42が好ましく、更に好ましくは1.34〜1.38である。さらには、高屈折率層の屈折率(nH)は1.55〜1.80であることが好ましく、更に好ましくは1.60〜1.75である。また、低屈折率層と高屈折率層の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。
また、ハードコート層の屈折率も調整することが好ましい。ハードコート層の屈折率(nG)は、1.45〜1.55が好ましい。ここで、低屈折率層の屈折率(nL)、および高屈折率層の屈折率(nH)は、下記式(1)および式(2)を満足することが最低反射率をより低くできるので好ましい。
・(nH)={(nL)×(nG)}1/2 ± 0.02 (1)
・(nL)={(nH)/(nG)}1/2 ± 0.02 (2)。
本発明における好ましい反射防止層において、高屈折率層の構成成分としては、反射防止層表面に帯電防止性を付与するために、樹脂組成物に金属化合物粒子を分散させたものであることが好ましい。樹脂成分には、(メタ)アクリレート化合物が用いられる。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線照射によりラジカル重合し、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるため好ましく、さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂成分は、金属化合物粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基や、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。
ここで用いられる金属化合物粒子としては、導電性の各種金属酸化物粒子が好ましく用いられる。特に好ましくは錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等である。さらに好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)が用いられる。
導電性を構成する導電性金属化合物粒子について、平均1次粒子径(BET法により測定される球相当径)が0.5μm以下の粒子が好適に使用される。より好ましくは、0.001〜0.3μm、さらに好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、この範囲を超えると生成される被膜(高屈折率層)の透明性を低下させ、この範囲未満では、該金属化合物粒子が凝集し易く生成被膜(高屈折率層)のヘイズ値が増大する。いずれの場合も、所望のヘイズ値を得ることが困難になる。
高屈折率層の構成成分に、導電性の効果をさらに向上させることを目的としてポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリン等の導電性ポリマー、金属アルコレートおよびキレート化合物などの有機金属化合物を、さらに含有させることもできる。
高屈折率層を形成する際に、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。該開始剤としては、塗布したバインダー成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知のチオキサントン誘導体、アゾ化合物、ジアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ジアルキルアミノ安息香酸エステル、過酸化物、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体等の各種光重合開始剤が使用可能である。この光重合開始剤の量は、樹脂成分100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、さらには1〜15質量部の範囲で好ましく添加される。かかる好ましい範囲であると、光重合が十分に早く、硬度および耐擦過性を満足させるために短時間の光照射でよく、一方、塗膜の導電性、耐摩耗性、耐候性等の機能が低下することもない。
また、高屈折率層を形成する際に、上記開始剤の、酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤や、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、表面硬度の向上を目的として、アルキルシリケート類およびその加水分解物、コロイダルシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン等の無機粒子、コロイド状に分散したシリカ微粒子等を、さらに含有させることもできる。
高屈折率層の構成成分の配合割合は、樹脂成分と金属化合物粒子との質量割合〔(A) /(B) 〕が10/90〜30/70であることが好ましく、さらに好ましくは15/85〜25/75である。金属化合物粒子がかかる好ましい範囲であると、得られる膜は透明性十分で、導電性も良好であり、一方、得られる膜の各種物理的、化学的強度が悪くなることもない。
PDP用フィルターは、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理されていることが好ましい。高屈折率層によって所望水準の帯電防止性が付与されるためには、該層の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下になるよう添加量を制御することが好ましく、さらには1×1010Ω/□以下になるよう添加量を制御するのが好ましい。
高屈折率層は、鮮明性、透明性の点から、全光線透過率が好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上の層である。
高屈折率層は、好ましくは溶媒で分散させた塗布液を調整し、その塗布液をハードコート層上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成することができる。
高屈折率層形成において使用される溶剤は、塗布または印刷作業性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、樹脂成分を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、組成物の粘度の安定性、乾燥性の観点から沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、さらに、そのうち酸素原子を有する有機溶媒が金属化合物粒子との親和性がよいので好適である。かかる有機溶媒としては、具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトン等が好適に挙げられる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、有機溶媒の量は、塗布手段や、印刷手段に応じ作業性のよい状態の粘度に組成物がなるように任意の量を配合すればよいが、通常組成物の固形分濃度が60質量%以下、好ましくは、50質量%以下になる程度が適当である。本発明の光硬化性導電膜形成用組成物の調製としては、任意の方法が採用可能であるが、通常樹脂成分を有機溶媒で溶解させた溶液中に、金属化合物粒子を添加し、ペイントシェーカーや、ボールミル、サンドミル、三本ロール、アトライター、ホモミキサー等の分散機により分散させ、しかる後、光重合開始剤を添加し、均一に溶解させる方法が適当である。
本発明における好ましい反射防止層の態様において、低屈折率層は内部に空洞を有するシリカ微粒子、およびシロキサン化合物、および硬化剤、および溶媒からなる塗料組成物をコーティングして得られたものとすることが、屈折率をより低くし、表面反射率を低くすることができるので好ましい。
低屈折率層は、表面硬度を向上させ、耐擦傷性を優れたものとするためにマトリックス材料であるシロキサン化合物とシリカ微粒子が強固に結合していることが好ましく、そのためにはコーティング前の塗料組成物の段階で予めシロキサン化合物をシリカ微粒子表面と反応させて結合させることが好ましい。
そのための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により、加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。シラノール化合物としては、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物が好ましい。
得られた塗料は、これらのシラン化合物の縮合物であるシロキサン化合物を含有する。また、これらのシラン化合物が加水分解されており、縮合していないシラノール化合物を含有しても良い。
R1Si(OR6) (1)
R1はフッ素が3から17のフルオロアルキル基を表わす。R1のフッ素数としては6〜8が好ましい。1分子当りのフッ素原子が多いと、得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。R1の炭素数としては3〜10が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。特に炭素数3が好ましい。R6はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R6はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(1)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の屈折率を低くすることができるので好ましい。
R2Si(OR7) (2)
R2はビニル基、アリル基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、シアノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。R2の炭素数としては2〜10が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシエチル基、またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R7はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(2)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
R3Si(OR8) (3)
R3は水素、アルキル基、アリール基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表す。R3の炭素数としては1〜6が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R3が炭素数6を超えると得られた被膜の硬度が低下する傾向にある。R8はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R8はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(3)で表される3官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
R4R5Si(OR9) (4)
R4およびR5は、それぞれ水素、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アルケニル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、およびそれらの置換体から選ばれた基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R4、R5の炭素数としては1〜6が、得られた被膜の耐擦傷性を高くすることができるので好ましい。R9はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはアセチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。R9はメチル基またはエチル基がより好ましい。一般式(4)で表される2官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の可とう性を向上させることができるので好ましい。
Si(OR10) (5)
R10はメチル基またはエチル基を表わし、それぞれ、同一でも、異なっていても良い。一般式(5)で表される4官能性シラン化合物を用いると、得られる被膜の硬度を向上させることができるので、好ましい。
これら一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
シロキサン化合物の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは、20質量%〜70質量%、特に好ましくは30質量%〜60質量%である。この範囲でシロキサン化合物を含有することが、被膜の屈折率を低く、かつ被膜の硬度を高めることができるため好ましい。したがって、塗料中におけるシロキサン化合物の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。
これらの中でも、低屈折率化のためには、一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物を必須成分として用い、一般式(2)〜(5)で表されるシラン化合物から選ばれた1種以上のシラン化合物を組み合わせて用いることが好ましい。一般式(1)で表されるシラン化合物の量は、全シラン化合物量に対して、好ましくは、20質量%〜80質量%、特に好ましくは、30質量%〜60質量%である。シラン化合物の量が20質量%を下回ると、低屈折率化が不十分になることがある。一方、シラン化合物の量が80質量%を越えると、被膜の硬度が低下する場合がある。
一般式(1)〜(5)で表されるシラン化合物の具体例を、以下に示す。
一般式(1)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリメトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリエトキシシラン、トリフルオロアセトキシエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリアセトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリアセトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、およびトリフルオロプロピルトリエトキシシランが好ましい。
一般式(2)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、ビニルトリアルコキシシラン、および3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランが好ましい。
一般式(3)で表される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。これらのうち、得られた被膜の硬度の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが好ましい。
一般式(4)で表される2官能性シラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジアセトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られる被膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシランが好ましく用いられる。
一般式(5)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、などが挙げられる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の数平均粒子径は、1nm〜200nmが好ましく、特に好ましくは、数平均粒子径1nm〜70nmである。数平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、被膜の硬度が低下することがある。一方、数平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。ここで、シリカ微粒子の平均粒子径は、種々のパーティクルカウンターを用いて、数平均の粒子径を測定することができる。塗料に添加する前のシリカ微粒子の粒子径を測定することが好ましい。また、被膜形成後は、電子走査型顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて、被膜中のシリカ微粒子の粒子径を測定する方法が好ましい。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の数平均粒子径は、形成される被膜の膜厚よりも小さいことが好ましい。被膜の膜厚を上回ると、被膜表面にシリカ微粒子が露出し、反射防止性を損なうばかりでなく、被膜の表面硬度および耐汚染性が低下する。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子としては、マトリックスのシロキサン化合物と反応しやすくするため、表面にシラノール基を有するシリカ微粒子が好ましい。また、被膜の低屈折率化のために内部に空洞を有するシリカ微粒子が好ましい。内部に空洞を有しないシリカ微粒子は、一般に粒子自体の屈折率は、1.45〜1.50であるため、屈折率低下効果が少ない。一方、内部に空洞を有するシリカ微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入による屈折率低下効果が大きい。内部に空洞を有するシリカ微粒子としては、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ微粒子等が挙げられる。これらのうち、被膜の硬度を考慮した場合、粒子自体の強度が高い多孔質のシリカ微粒子が好ましい。該微粒子の屈折率は、1.20〜1.40であり、1.20〜1.35であるのがより好ましい。また、内部に空洞を有するシリカ微粒子の数平均粒子径は、5nm〜100nmが好ましい。シリカ微粒子の屈折率は、特開2001−233611公報[0034]段落に開示されている方法によって測定できる。内部に空洞を有するシリカ微粒子は、例えば特開2001−233611号公報の[0033]〜[0046]段落に記載された方法や、特許第3272111号公報の[0043]段落に記載された方法で製造することができる。一般に市販されているものも使用することができる。
低屈折率層で用いられるシリカ微粒子の含有量は、被膜を形成した際、被膜の全量に対して、好ましくは、30質量%〜80質量%、特に好ましくは40質量%〜70質量%である。したがって、塗料中におけるシリカ微粒子の含有量は、溶媒を除く全成分に対して前記の範囲であることが好ましい。この範囲でシリカ微粒子を被膜中に含有させると、屈折率を低くすることができるだけでなく、被膜の硬度を高めることができる。シリカ微粒子の含有量が30質量%を下回ると、粒子間の空隙による屈折率低下効果が少なくなる。また、シリカ微粒子の含有量が80質量%を越えると、コーティング膜中にアイランド現象が多数発生し、被膜の硬度が低下し、また、場所によって、屈折率が不均一になるので好ましくない。
また、前述のように低屈折率層を形成するための塗料組成物は、シリカ微粒子の存在下、シラン化合物を溶媒中、酸触媒により、加水分解することによって、シラノール化合物を形成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができるが、この加水分解反応においては、溶媒中、酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、室温〜80℃で1〜180分反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは40〜70℃である。また、加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、そのまま、反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行なうのが好ましい。また、シロキサン化合物の重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。
加水分解反応に用いる酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に蟻酸、酢酸またはリン酸を用いた酸性水溶液が好ましい。これら酸触媒の好ましい添加量としては、加水分解反応時に使用される全シラン化合物量に対して、好ましくは、0.05質量%〜10質量%、特に好ましくは、0.1質量%〜5質量%である。酸触媒の量が、0.05質量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがあり。また、酸触媒の量が10質量%を越えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
溶媒は特に限定されないが、塗料組成物の安定性、濡れ性、揮発性などを考慮して決定される。溶媒は一種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
加水分解反応時に使用される溶媒の量は、全シラン化合物量に対して、50質量%〜500質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは、80質量%〜200質量%の範囲である。溶媒の量が50質量%を下回ると、反応が暴走し、ゲル化する場合がある。一方、溶媒の量が500質量%を越えると、加水分解が進行しない場合がある。
また、加水分解反応に用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン化合物1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いるのが好ましい。
また、塗剤を硬化させ低屈折率層を形成する目的で添加する硬化剤としては、塗料組成物の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる各種の硬化剤あるいは三次元架橋剤が挙げられる。硬化剤の具体例としては、窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。なかでも、硬化剤の安定性、得られた被膜の加工性などから金属キレート化合物が好ましく用いられる。用いられる金属キレート化合物としてはチタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および、マグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらの中から、低屈折率化の目的には、屈折率の低いアルミニウムキレート化合物および/またはマグネシウムキレート化合物が好ましい。これらの金属キレート化合物は、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン;アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを用いることができる。金属キレート化合物の好ましい具体的な例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)、およびマグネシウムビス(エチルアセトアセテート)である。保存安定性および入手容易さを考慮すると、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が、特に好ましい。添加される硬化剤の量は、塗料組成物中の全シラン化合物量に対して、好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、特に好ましくは、1質量%〜6質量%である。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。含有量が、0.1質量%を下回ると、得られる被膜の硬度が低下する。一方、含有量が10質量%を越えると、硬化が十分となり、得られる被膜の硬度は向上するが、屈折率も高くなり、好ましくない。
さらに塗料組成物には、大気圧下沸点100〜180℃の溶媒と大気圧下沸点100未満の溶媒を混合して用いることが好ましい。大気圧下沸点100〜180℃の溶媒を含むことにより、塗液の塗布性が良くなり、表面が平坦な被膜を得ることができる。また、大気圧下沸点100未満の溶媒を含むことによって、被膜形成時に、溶媒が有効に揮発し、硬度の高い被膜を得ることができる。すなわち、表面が平坦で、かつ、硬度の高い被膜を得ることができる。
大気圧下沸点100〜180℃の溶媒としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブタノール、イソブチルアルコール、ペンタノ−ル、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。これらのうち、特に好ましい溶媒の例は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール等である。
大気圧下沸点100℃未満の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メチルエチルケトン等があげられる。これらは単独あるいは混合して用いてもかまわない。
塗料組成物における全溶媒の含有量は、全シラン化合物含有量に対して、1300質量%〜9900質量%の範囲が好ましく、特に好ましくは、1500質量%〜6000質量%の範囲である。全溶媒の含有量が1300質量%を下回るか、もしくは、9900質量%を越えると、所定の膜厚の被膜を形成することが困難となる。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言う。
(電磁波シールド層)
PDPはその構造や動作原理上パネルから強度の漏洩電磁波が発生する。近年、電子機器からの漏洩電磁波が人体や他の機器に与える影響について取り沙汰されており、例えば日本では、VCCI(voluntary control council for interference by processing equipment electronic office machine)による基準値内におさえることが求められている。具体的には、VCCIにおいては、業務用途の規制値を示すclassAでは放射電界強度50dBμV/m未満であり、民生用途の規制値を示すclassBでは40dBμV/m未満であるが、PDPの放射電界強度は20〜90MHz帯域内で50dBμV/m(対角40インチ型の場合)を越えるため、このままでは家庭用途には使用できない。このため、電磁波シールド層の配置が必須となる。電磁波シールド性能を発揮するためには導電性が必要であり、PDPの電磁波シールドに必要な導電性は、面抵抗で3Ω/□以下、好ましくは1Ω/□以下、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。
本発明における電磁波シールド層としては、例えば、特開2003−5663号公報に開示された導電性フィルムが挙げられる。同公報では、導電性フィルムとして、導電性メッシュフィルム、金属透明導電性フィルムが例示されている。
金属透明導電性フィルムは、透明樹脂層に透明な金属薄膜を積層したもの、より具体的には、Agスパッタフィルム、ITO蒸着フィルムが挙げられる。透明な樹脂フィルムに透明な金属薄膜を積層したものとは、透明な樹脂フィルムにスパッタリング法または蒸着法により、ITO、AZO、AgPd等の金属薄膜を積層させたものである。ここで、金属薄膜は、単層であってもよく、異なる金属薄膜を積層させたものであってもよい。特に、Agなどの金属層とITOが交互に積層されたものが、電磁波シールド性と透明性の観点から好ましい態様である。
電磁波シールド層の厚さは、必要に応じて適宜選択することができるが、全体として80〜400μmであるのが好ましい。透明樹脂層に金属薄膜を積層させた金属透明導電性フィルムの場合、電磁波シールドに必要な導電性を考慮すると、金属薄膜の厚さは100〜500nmであるのが好ましく、透明樹脂層の厚さは80〜300μmであるのが好ましい。
電磁波シールド層の構成材料は、適宜選択可能であるが、例えば、金属透明導電性フィルムの場合、構成材料として用いられる金属は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、スズ、鉛、鉄、銀、クロム;ステンレス等のこれらの合金が例示され、中でも、銅、ステンレス、アルミニウムが好ましい。また、金属透明導電性フィルムの基材として用いられる透明樹脂層の樹脂は、既に述べたものが適用できる。
一方、電磁波シールド層として導電性メッシュフィルムを用いる場合について次に説明する。メッシュ形状としては格子状、ハニカム状であっても良く、特に限定はされない。導電性メッシュ層を透明樹脂層などの上に形成方法は公知の方法を用いることができ、例えば、1)透明樹脂層上に導電性インキをスクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷法によりパターン印刷する方法、2)導電性繊維からなる編布を接着剤または粘着材を介して貼り合わせる方法、3)銅、アルミニウム、又はニッケル等からなる金属箔を接着剤または粘着材を介して貼り合わせた後にパターニングする方法、4)銅、アルミニウム、又はニッケル等からなる金属薄膜を蒸着、スパッタリング、無電解メッキ等の各種公知の薄膜形成方法によって形成した後にパターニングする方法、等が挙げられるが特に限定はされない。上述の3)、4)のパターニング方法としては、例えばフォトリソグラフィ法が挙げられる。具体的には、金属箔又は金属薄膜上に感光性レジストを塗工又は感光性レジストフィルムをラミネートし、パターンマスクを密着させて露光後、現像液で現像してレジストパターンを形成し、さらに適当なエッチング液でパターン部以外の金属を溶出させて所望の導電性メッシュフィルムを形成することができる。
導電性メッシュフィルム中のメッシュ層の厚さとしては、0.5〜20μm程度であり、必要な電磁波シールド能、すなわち導電性と、必要な開口率、導電性メッシュ層の形成方法によって層厚が決定される。前述のようにPDPの電磁波シールドに必要な導電性は、面抵抗で3Ω/□以下、好ましくは1Ω/□以下、更に好ましくは0.5Ω/□以下である。メッシュ層の厚さが薄すぎると導電性が不足し、厚すぎるとコストアップにつながる為、好適には5〜15μmである。
メッシュ層のパターンは、線幅は細いほど、ピッチが広いほど、開口率と透過率が高くなり、また、ディスプレイの画素との相互作用によって発生するモワレを起こしにくくなり好適である。しかしながら、開口率を上げすぎるとメッシュ層の持つ導電性が不足する為、線幅は5〜20μm、ピッチは150〜400μmが好適に採用できる。さらに、メッシュパターンは例えば格子パターンの場合、縦横に並んで配置されたディスプレイの画素との相互作用でモワレを起こさないように、画素が並んだ線に対してメッシュパターンの線がある程度の角度(バイアス角)を有していることが肝要である。モワレを起こさないバイアス角は画素のピッチや、メッシュパターンのピッチ・線幅により変化するので、特に限定されない。
メッシュ層が銅やアルミニウム、ニッケル等の金属からなる場合、その表面及び/又はその透明樹脂層との界面に、黒色顔料又は黒色染料を含有する層、又は、クロム等からなる黒色層を有することが好ましく、これによって金属による反射を防止することでき、コントラスト・視認性に優れたPDP用フィルターが得られる。
メッシュ層はディスプレイに設置したときに透光部となる部分以外、つまりは表示部ではない部分や額縁印刷に隠れた部分は、必ずしもメッシュパターンを有している必要がなく、これら部分はパターニングされていない、例えば金属箔ベタの層であっても良い。加えて、パターニングされていないベタ部分が、黒色であると、そのままディスプレイ用フィルタの額縁印刷として使えて好適である。
電磁波シールド層は、PDP用フィルタのパネル側寄りに形成しても、観察者側寄りに形成してもよいが、電磁波シールド層は反射率が高いことが多いためパネル側寄りに形成することが好ましい。また、電磁波シールド層より観察者側にフィルターの透過率を低下させる色調補正層や近赤外線カット層を配置することは、電磁波シールド層からの反射光を低減させることができるため好ましい態様である。
(層間接着層)
本発明において、上記した様々な機能層を貼合するために接着性を有する層間接着層を用いてもよい。このとき用いられる粘着剤としては、2つの物体をその粘着作用により接着させる接着剤であれば特に限定されず、ゴム系、アクリル系、シリコーン系あるいはポリビニルエーテル系などからなる接着剤を用いることができる。
更に、粘着剤は、溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤の2つに大別される。乾燥性、生産性、加工性において優れた溶剤型粘着剤は依然として主流であるが、近年、公害、省エネルギ、省資源、安全性などの点で無溶剤型粘着剤に移り変わりつつある。中でも、活性線を照射することで秒単位で硬化し、可撓性、接着性、耐薬品性などに優れた特性を有する粘着剤である活性線硬化型粘着剤を使用することが好ましい。
活性線硬化型アクリル系粘着剤の具体例は、日本接着学会編集、「接着剤データブック」、日刊工業新聞社1990年発行、第83頁から第88頁を参考とすることができるが、これらに限定されるものではない。市販品として多官能アクリル系紫外線硬化塗料として、日立化成ポリマー株式会社;(商品名 XY (登録商標)シリーズなど)、東邦化成工業株式会社;(商品名 ハイロック (登録商標)シリーズなど)、株式会社スリーボンド;(商品名 スリーボンド (登録商標)シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名 アロンタイト (登録商標)シリーズなど)、セメダイン株式会社;(商品名 セメロックスーパー (登録商標)シリーズなど)などの製品を利用することができるがこれらに限定されるものではない。
本発明のPDP用フィルターの評価方法について以下に述べる。
・ 防汚性
PDP用フィルターサンプルの非測定面側からの反射の影響がないようにするため、非測定面側をJIS Z 8741に基づく60℃光沢度が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色・黒化する。防汚層の表面に指紋を付着させた後、40℃×90%条件下で120時間放置し、付着部分をベンコットM−3(小津産業(株)社製)にて荷重250gで30往復拭き取り、以下の基準で評価する。評価は、暗室にて3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))の直下30cmの距離にサンプルを置いて実施した。
・付着部分と未付着部との差が認識できない。 : ○
・極薄い付着跡が認識できる。 : △
・明らかな付着跡が認識できる。 : ×
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
2)耐擦傷性
耐擦傷性は、防汚層表面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を次の3段階で評価した。なお、各水準について5枚のサンプルフィルターを評価し、各サンプルフィルターの傷の本数の平均値をその水準での傷の本数とした。
・傷が5本以下 : ○
・傷が6本以上20本以下 : △
・傷が21本以上 : ×。
3)中心線平均粗さRa、10点平均粗さRz
PDP用フィルターサンプルの表面粗さを、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した。フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を下記の方法で評価する。各測定点での測定はフィルターの長辺方向と短辺方向について実施して平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルのRa、Rzの値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスに貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。
・測定条件:SPEED;0.5mm/S、カットオフ値;0.25mm、測定長さ;8mm
・Ra:表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)でRaと定義されたパラメータ。JISB0601-1982の方法に基づいて測定した。
・Rz:表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)でRzDと定義されたパラメータ。
4)表面うねり長さ、表面うねり幅
PDP用フィルターサンプルの表面(うねり形成面)にアルミニウム薄膜を蒸着し、得られたサンプルを光学顕微鏡(測定機:検査・研究顕微鏡 DMLB HC /ライカマイクロシステムズ製。条件:微分干渉フィルター設置して、反射モードにて観察。光学倍率50倍。)にて観察し、デジタルカメラを用いて1300×1030pixelsのデジタル画像を取り込む。得られた写真画像をA4サイズで印刷し、200μm×200μm(うねり構造の実寸)の領域中のすべてのうねり構造について長軸と短軸の長さをそれぞれ測定する。画像の濃淡からうねり構造の境界を同定する。フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を上記の方法で評価し、評価領域中の全うねり構造の長軸、短軸の平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルの表面うねり長さ、表面うねり幅の値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスに貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。尚、長軸をうねり長さ、短軸をうねり幅と定義する。
5)表面うねり占有率
4)項で撮影した写真を、Image-Pro Plus ver.4.0((株)プラネトロン製)により画像処理を行い、200μm×200μm角視野内の全面積に占めるうねり構造の面積割合を表面うねり占有率とする。具体的には、うねり構造を撮影した写真の対象領域中のうねり部分をマジックで黒く塗りつぶして、得られた写真をスキャナーで取り込むことでうねり部分と非うねり部分とを2値化し、Pseudo-Color Areas(疑似カラー面積比率)処理により面積比を算出し、うねり部分の占める面積割合を表面うねり占有率とする。フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を上記の方法で評価し、評価領域中の密度の平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルの表面うねり占有率の値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスにうねり構造を有するフィルムが貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。
6)界面うねり長さ、界面うねり幅
PDP用フィルターサンプルを光学顕微鏡(測定機:検査・研究顕微鏡 DMLB HC /ライカマイクロシステムズ製。条件:透過モード。光学倍率50倍。うねり構造にコントラストをつけるためにコンデンサ位置は最下位置に設定。)にて観察し、デジタルカメラを用いて1300×1030pixelsのデジタル画像を取り込む。得られた写真画像をA4サイズで印刷し、200μm×200μm(うねり構造の実寸)の領域中のすべてのうねり構造について長軸と短軸の長さをそれぞれ測定する。画像の濃淡からうねり構造の境界を同定する。フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を上記の方法で評価し、評価領域中の全うねり構造の長軸、短軸の平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルの界面うねり長さ、界面うねり幅の値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスに貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。尚、長軸を界面うねり長さ、短軸を界面うねり幅と定義する。
7)界面うねり占有率
6)項で撮影した写真を、Image-Pro Plus ver.4.0((株)プラネトロン製)により画像処理を行い、200μm×200μm角視野内の全面積に占めるうねり構造の面積割合を界面うねり占有率とする。具体的には、うねり構造を撮影した写真の対象領域中のうねり部分をマジックで黒く塗りつぶして、得られた写真をスキャナーで取り込むことでうねり部分と非うねり部分とを2値化し、Pseudo-Color Areas(疑似カラー面積比率)処理により面積比を算出し、うねり部分の占める面積割合を界面うねり占有率とする。フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を上記の方法で評価し、評価領域中の密度の平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルの界面うねり占有率の値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスにうねり構造を有するフィルムが貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。
8)界面うねり高さ
PDP用フィルターサンプルを平滑な金属板上に置き、フェザー剃刃S片刃を用いて進行方向に30度に刃先を傾けて切断する。ハードコート層と透明樹脂層の間にうねり構造がある場合はハードコート面の上面から刃を入れる。ガラスにうねり構造を有するフィルムが貼合されている場合はガラスから剥離して評価してもよい。次に、切断面を、光学顕微鏡(測定機:検査・研究顕微鏡 DMLB HC /ライカマイクロシステムズ製。条件:反射モード。微分干渉フィルター設置。光学倍率1000倍)にて観察し、デジタルカメラを用いて1300×1030pixelsのデジタル画像を取り込む。得られた写真画像を断面厚み方向に5倍に拡大し、A4サイズで印刷する。うねり構造の形状線において隣り合う極小点を結んだ直線と極大点との最短距離(図2参照)からうねりの高さを算出する。これを視野角内で観察された全突起について測定し、その平均値を求め、拡大倍率から実際のサイズに換算して突起高さとする。尚、界面うねり構造の形状線は、断面の色濃度の違いから識別する。
フィルター0.5mを5等分し、各々のサンプルの中心部を上記の方法で評価し、評価領域中の高さの平均値を求める。さらに5サンプルの平均値を求めてこのPDP用フィルターサンプルの界面うねり高さの値とする。フィルターが多層構造であるためうねり構造が観察しにくい場合やガラスにうねり構造を有するフィルムが貼合されていて切断が困難である場合は、うねり構造が形成された層を剥離して評価に用いても良い。
9)屈折率の測定
シリコンウエハー上に乾燥膜厚が0.1μmとなるように、測定対象となる層の原料塗剤を、スピンコーターを用いて塗布する。ついでイナートオーブンINH−21CD(光洋サーモシステム(株)社製)を用いて、130℃で1分間、加熱硬化することにより(低屈折率層の硬化条件)、被膜を得る。形成した被膜について、位相差測定装置(ニコン(株)製:NPDM−1000)で633nmにおける屈折率を測定する。
10)積層の厚み測定
PDP用フィルターサンプルの断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて加速電圧100kVにて観察する。ガラス基板を用いたフィルターの場合はガラスから剥がして評価する。試料調整は超薄切片法を用いる。10万倍または20万倍の倍率で観察し、各々の層の厚みを測定する。
11)視感反射率、視感透過率
PDP用フィルターサンプルについて、分光光度計(島津製作所製、UV3150PC)を用いて、観察者側からの入射光に対する透過率を波長300〜1300nmの範囲で測定し、可視光波長領域(380〜780nm)の視感透過率を求める。また、下記のようにして、測定面から5度の入射角で波長380〜780nmの範囲で反射率(片面反射)を算出し、視感反射率(JIS Z8701−1999において規定されている反射の刺激値Y)を求める。
PDP用フィルターサンプルの非測定面側からの反射の影響がないようにするため、非測定面側をJIS Z 8741に基づく60℃光沢度が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色し(黒化処理)、分光光度計で分光立体角を測定し、JIS Z8701に基づいて視感性反射率(片面光線反射)を算出する。算出式は以下の通りである。
T=K・ ∫S(λ)・y(λ)・ R(λ) ・dλ (ただし、積分区間は380〜780nm)
T:片面光線反射率(%)
S(λ) :色の表示に用いる標準の光の分布
y(λ) :XYZ表示系における等色関数
R(λ) :分光立体角反射率。
12)干渉縞の評価
裏面反射の影響をなくすために、9)項の視感反射率測定時と同様に測定面(ハードコート層面側)の裏面を黒色塗料にて着色して調整したサンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))の直下30cmに置き、視点を変えながらサンプルを目視したときに、虹彩模様が視認できるか否かで評価した。
・虹彩模様がみえない : ○
・非常に弱い虹彩模様が見える : △
・虹色模様が見える : ×
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
13)映り込みの評価
PDP用フィルターサンプルを視認面が表面になるように黒紙(王子特殊紙(株)製 ACカード #300)の上に置き4隅を透明テープで固定する。得られたサンプルを暗室中で視認側面が鉛直方向になるように設置し、フィルターサンプルの直上50cmの場所に3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))を設置する。フィルターの視認面を正面30cmの距離から肉眼観察し、フィルター視認面に映り込んだ観察者像の鮮明性を評価する。
・映り込み像の輪郭が不鮮明 : ○
・映り込み像の輪郭が僅かに不鮮明 : △
・映り込み像の輪郭が鮮明に見える : ×
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
14)透過像の評価
PDP用フィルターサンプルをPDPテレビ(TH-42PX500、松下電器産業(株)社製。但し、純正のフィルターを取り外したものを使用。)に、裏面(視認側とは反対側の表面)がPDPパネルに面するようにし、PDPパネル表面からフィルターの視認側最表面までの距離が20mmとなる位置に、パネル表面とフィルター視認面が平行になるように設置する装着する。PDPテレビのPDPパネルに図4に示すパターン画像(白地に黒色パターン:大きさ5×100mmを配置)を表示する。
(フィルターを設置した場所にパターン画像を表示する)フィルター越しにパターン画像を目視評価して、透過画像の鮮明度を判定する。観察はフィルタの視認面の正面30cmの距離から行う。
・透過像が明瞭に見える : ○
・透過像が僅かに不鮮明 : △
・透過像がぼける : ×
評価は5名で各水準について1枚のフィルターを評価して、最も頻度の高い判定結果を採用する。最も頻度の高い判定結果が2つある場合は、悪い方の評価結果を採用する(最も頻度の高い判定結果が「○」と「△」の2つなら「△」、「△」と「×」の2つなら「×」、「○」と「×」の2つなら「×」と判定する。)。
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
1.低屈折率塗料の調整
(塗料A)
メチルトリメトキシシラン 95.2質量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 65.4質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル300質量部、イソプロパノール100質量部に溶解した。この溶液に、数平均粒子径50nmの外殻の内部に空洞を有するシリカ微粒子分散液(イソプロパノール分散型、固形分濃度20.5%、触媒化成工業社製)297.9質量部、水54質量部およびギ酸1.8質量部を、撹拌しながら、反応温度が30℃を越えないように滴下した。滴下後、得られた溶液をバス温40℃で2時間加熱し、その後、溶液をバス温85℃で2時間加熱し、内温を80℃まで上げて、1.5時間加熱した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液Aを得た。
得られたポリマー溶液Aに、アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)(商品名 アルミキレートA(W)、川研ファインケミカル(株)社製)4.8質量部をメタノール125質量部に溶解したものを添加し、さらにイソプロパノール 1500質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル250質量部を添加して、室温にて2時間撹拌し、塗料Aを作製した。
塗料Aの被膜をシリコンウエハー上に形成し、上記した方法で求めた屈折率は1.36であった。
2.色素を含有する塗料の調整
(塗料−1)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製 KAYASORB(登録商標) IRG−050を14.5質量部、日本触媒(株)製 イーエクスカラー(登録商標) IR−10Aを8質量部、さらに593nmに主吸収ピークを有する有機色素として、山田化学工業(株)製TAP−2を2.9質量部をメチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製 ハルスハイブリッド(登録商標) IR−G205(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して塗料−1を作製した。
3.ハードコートフィルムの作製
(HC塗料1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(KAYARAD−DPHA:日本化薬(株)製)70重量部、トリメチロールプロパン・エチレンオキサイド変性トリアクリレート(M−350:東亞合成(株)製)25重量部、完全アルキル化型メラミン(サイメルC303:日本サイテックインダストリーズ(株)製)5重量部、燐酸系触媒(キャタリスト296−9:日本サイテックインダストリーズ(株)製)1重量部の混合塗布組成物を作成した。HC塗料1の被膜をシリコンウエハー上に形成し、230℃×1分加熱して硬化させた後、上記した方法で求めた屈折率は1.52であった。
(HC1〜14)
フィラーを含まないポリエチレンテレフタレート(以下PET極限粘度0.63dl/g)チップを、180℃で3時間十分に真空乾燥した。乾燥したチップを押出機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押出した。押し出された樹脂を静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸シートとした。このようにして得られた未延伸シートを、95℃に加熱したロール群で長手方向に3.5倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。この1軸延伸フィルムの片面に、上述のHC塗料1をダイコート方式で塗布した。HC塗料1が塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ80〜100℃の予熱ゾーンに導き、引き続き90〜100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.0〜4.0倍延伸した後、熱処理の前に160〜200℃のレベリングゾーンで表面粗さの調整(レベリング)を行った。さらに連続的に5%の幅方向の弛緩処理を行いながら230℃の熱処理ゾーンで17秒間の熱処理を施し、塗膜硬化、熱固定させて、総厚みが125μm、ハードコート層厚みが5μm、ハードコート層の屈折率が1.52、PET基材の屈折率が1.64のハードコートフィルムを得た。各ハードコートフィルム得るための製膜条件、及び得られたハードコートフィルムのハードコート層表面の表面粗さ及び表面うねり構造、ハードコード層とPET層との界面の界面うねり構造のデータを表1に示す。
(HC15)
光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標) U46、厚み100μm)を用い、易接着面に市販のハードコート剤(JSR製 デソライト (登録商標) Z7528)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を設け、ハードコートフィルムHC15を作製した。得られたハードコートフィルムのハードコート層表面の表面粗さのデータを表1に示す。
(HC16)
光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標) U46、厚み100μm)を用い、易接着面に市販のハードコート剤(JSR製 デソライト (登録商標) Z7528)にアクリル樹脂粒子(粒子径5.0μm 屈折率1.53 濃度:塗剤固形分中の3重量%)を添加したものをイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を設け、アンチグレアタイプのハードコートフィルムHC16を作製した。得られたハードコートフィルムのハードコート層表面の表面粗さ及び表面うねり構造のデータを表1に示す。
(HC17〜20)
光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標) U46、厚み100μm)を用い、易接着面にHC塗料1をワイヤーバーを用いて塗布し膜厚み10μmの塗膜を形成した。
塗膜を形成した表面に下記金型を押しあて、基材側から紫外線1.0J/cmを照射して塗膜を硬化させ、金型を離型し、表面うねり構造のみを有するハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムの表面には、表2に示す表面粗さ、表面うねり構造が形成された。
(HC17用の金型)
断面形状 :半楕円(長軸;30μm、半短軸;0.1μm)
面内パターン:円(半径;30μm)
配列 :図3のパターン。
(HC18用の金型)
断面形状 :半楕円(長軸;30μm、半短軸;0.2μm)
面内パターン:円(半径;30μm)
配列 :図3のパターン。
(HC19用の金型)
断面形状 :半楕円(長軸;30μm、半短軸;1μm)
面内パターン:円(半径;30μm)
配列 :図3のパターン。
(HC20用の金型)
断面形状 :半楕円(長軸;30μm、半短軸;1.2μm)
面内パターン:円(半径;30μm)
配列 :図3のパターン。
4.反射防止層の作製
(AR1)
ハードコートフィルムのハードコート層形成面に、市販の高屈折率・帯電防止塗料(JSR製 オプスター (登録商標) TU4005)をイソプロピルアルコールで固形分濃度8%に希釈後、マイクログラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、ハードコート層上に屈折率が1.65、厚みが135nmの高屈折率層を形成した。
次に、上記高屈折率層形成面に、低屈折率層として、上記した低屈折率塗料Aをマイクログラビアコーターで塗布した。次いで130℃で1分間、乾燥および硬化させ、高屈折率層上に屈折率1.36、厚み90nmの低屈折率層を形成することで、反射防止フィルムを作製した(この反射防止層をAR1とする)。
5.防汚層の作製
上記で得た反射防止フィルムの反射防止層形成面に、市販のフルオロシラン系防汚塗料(GE東芝シリコーン(株)社製 XC98−B2472 )をマイクログラビアコーターで塗布し130℃で2分間乾燥硬化させて、反射防止層上に計算上の厚みが5nmの防汚層を形成した(この防汚層をF1とする)。
6.赤外線カット層の作製
(NIR1)
反射防止フィルムの反射防止面に、保護フィルムとしてサンエー科研製 サニテクト (登録商標)(厚み50μm)を貼り合わせた後、反射防止層と反対側の基材フィルム面に、ダイコーターを用いて有機色素を含有する塗料−1を塗工し、120℃で乾燥して、厚み10μmの樹脂層を形成し、反射防止・赤外線カットフィルムを作製した(この赤外線カット層をNIR1とする)。
7.色補正層の作製
(色補正層1)
アクリル系透明粘着剤中に有機系色補正色素を含有させた。各水準における色素添加量は最終的なフィルターの視感透過率が40%になるように調整した。
8.電磁波シールド層
(EMI1)
光学用ポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー (登録商標)U46、厚み100μm)を用い、易接着面に両面黒化処理された厚さ10μmの銅箔を接着剤を介して貼合した。銅箔を周辺部を残してフォトリソグラフィー法で線幅10μm、ピッチ300μm、バイアス角度40°格子をパターンニングして導電性メッシュ層を形成した。得られたメッシュ部分の上に周辺部を残して20μmの透明アクリル系樹脂層を積層することで、電磁波シールドフィルム(EMI1)を作製した。
[実施例1]
上記したハードコートフィルム(HC1)のハードコート面に反射防止層(AR1)を積層し、更にAR1の上に防汚層(F1)を積層した。得られた防汚性反射防止フィルムの反射防止面とは逆の面に、上記の方法で赤外線カット層(NIR1)を積層して、反射防止・赤外線カットフィルムを作製した。得られた反射防止・赤外線カットフィルムを、色補正色素含有粘着剤(色補正1)を用いてガラス基板に貼合した後、オートクレーブ処理(圧力:0.5MPa、温度:70℃、処理時間:1時間)を行った。次に、ガラス基板の反対面(反射防止・赤外線カットフィルムを貼合していない面)に、アクリル系透明粘着剤を用いて基材面がガラス側になるように電磁波シールドフィルム(EMI1)を貼合した後、オートクレーブ処理(圧力:0.5MPa、温度:70℃、処理時間:1時間)を行い、表3に示した構成のPDP用フィルターを作製した。なお、前述した通り、作成したPDP用フィルターの視感透過率が40%となるように、色補正層1は調整した。
作製したPDP用フィルターの特性を表4に示す。視感反射率は0.9、透過率は40%であり、目視評価では、映り込み抑制効果が高く、透過画像も極めて鮮明であり、干渉縞も見られなかった。また、防汚性、耐擦傷性ともに極めて良好なレベルであった。
[実施例2〜14]
PDP用フィルターに用いる各構成層を表3のように変更する以外は、実施例1と同様にして、PDP用フィルターを作製した。なお、前述した通り、作成したPDP用フィルターの視感透過率が40%となるように、色補正層1は調整した。
作製したPDP用フィルターの特性を表4に示す。いずれのフィルターにおいても、視感反射率は0.8〜1.1、透過率は40%であり、目視評価では、映り込み抑制効果が高く、透過画像も極めて鮮明であり、干渉縞も見られなかった。また、防汚性、耐擦傷性ともに極めて良好なレベルであった。
[比較例1〜11]
PDP用フィルターに用いる各構成層を表3のように変更する以外は、実施例1と同様にして、PDP用フィルターを作製した。なお、前述した通り、作成したPDP用フィルターの視感透過率が40%となるように、色補正層1は調整した。
作製したPDP用フィルターの特性を表5に示す。比較例1〜4は表面粗さが大きいものの防汚層が積層されていないため、防汚性と耐擦傷性が若干不良であった。比較例5は表面粗さが大きく耐擦傷性は良いが、防汚層が積層されていないため防汚性が若干不良であった。比較例6,7は防汚層があるものの表面粗さが小さいため、耐擦傷性が若干不良であった。比較例8は表面うねり構造、界面うねり構造の占有率がともに低いため光拡散効果が小さく、映り込み防止性が不良で、耐擦傷性も良くなかった。また、比較例9は表面にも界面にもうねり構造がないため、映り込みが非常に明瞭に観察できるものであり、耐擦傷性も不良であった。一方、比較例10ではアンチグレアフィルムを用いることで表面粗さが非常に大きくなり、透過画像鮮明性が不良であった。また比較例11も表面粗さが大きく、透過画像鮮明性が不良であった。
Figure 2008158023
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うねり構造の模式図 うねり高さの定義を示す図 鋳型法で表面うねり構造を作成する際に使用する金型の配列を示す図(図(b)は図(a)のA−A断面矢視図)

Claims (9)

  1. 反射防止層と、反射防止層の視認側表面に設けられた撥水性及び/又は撥油性の防汚層を有し、
    防汚層の視認側表面の中心線平均粗さRaが15〜100nm、及び10点平均粗さRzが50〜1000nmであり、
    防汚層の視認側表面に表面うねり幅が1〜100μm、表面うねり長さが1〜500μm、及び表面うねり占有率が60〜100%の表面うねり構造が形成されているプラズマディスプレイ用フィルター。
  2. 波長380〜700nmにおける5°の絶対反射スペクトルから求められる視感反射率が1.2%以下である請求項1に記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  3. 複数の機能層が積層された構成を有し、そのうち1つ以上の界面に、界面うねり幅が1〜100μm、界面うねり長さが1〜500μm、界面うねり高さが0.05〜3.0μm、及び界面うねり占有率が60〜100%の界面うねり構造が形成されている請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  4. 透明樹脂層の視認側にハードコート層、その上に前記反射防止層が積層された構成を有し、ハードコート層と透明樹脂層の界面に前記界面うねり構造が形成されている請求項3に記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  5. 前記透明樹脂層がポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、又はアクリルフィルムである請求項4に記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  6. 前記ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルム、または、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである請求項5に記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  7. 前記透明樹脂層の片面にハードコート塗布剤を塗布して前記ハードコート層を設け、その後少なくとも一方向に延伸した後ハードコート層を硬化させる工程を有するインラインコーティング法によりハードコート層を形成した請求項4〜6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルター。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用フィルターを用いたプラズマディスプレイ。
  9. プラズマディスプレイパネル表面からプラズマディスプレイ用フィルターの視認側最表面との距離dが2〜20mmである請求項8に記載のプラズマディスプレイ。
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