JP2009236889A - 磁界測定方法及び磁気センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】ゲインを大きくすると共に、測定誤差を低減することが可能な磁界測定方法及び磁気センサを提供する。
【解決手段】磁化自由層3、非磁性層5、及び磁化固定層7を積層した積層体2を有し、長手方向を有する磁気抵抗効果素子14と、磁界を発生する磁界印加手段22とを備え、磁化固定層7の磁化方向7Mは、磁化自由層3の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定され、磁界印加手段22が発生する磁界は、磁化自由層3の長手方向と45度以下の角度を成す磁気センサ50を準備する工程と、磁界印加手段22によって磁化自由層3の磁化を飽和させ、磁化自由層3をその長手方向に沿った一方の方向に磁化する磁界印加工程と、磁化自由層3に対して、その長手方向に沿った他方の方向に外部磁界を印加することによってその強度を測定する磁界測定工程とを有することを特徴とする磁界測定方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁界測定方法及び磁気センサに関する。
GMR(Giant Magneto-Resistive)素子等の磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサが知られている。これは、磁気抵抗効果素子の抵抗値が磁気抵抗効果素子内の磁化自由層及び磁化固定層のそれぞれの磁化の向きの相対的な角度に依存する現象を利用した磁気センサである。具体的には、磁気抵抗効果素子に一定電流のセンス電流を流しながら、測定対象である外部磁界を磁気センサ内の磁化自由層に印加させてその磁化方向を変化させ、磁気抵抗効果素子の抵抗値を測定することにより外部磁界の測定を行う。
磁化自由層に外部磁界を印加した場合、磁化自由層の磁化の大きさと外部磁界の関係にはヒステリシスが存在する(以下、「磁化自由層のヒステリシス」という。)。そのため、磁気抵抗効果素子の抵抗値と外部磁界の関係にも、ヒステリシスが存在することになる(以下、「素子抵抗のヒステリシス」という)。つまり、同じ強度の外部磁界を印加しても、磁化自由層に直前に印加した外部磁界の強度に依存して、磁気抵抗効果素子の抵抗値や、ゲイン(外部磁界対磁気抵抗効果素子の抵抗値のグラフにおける傾き)が変化してしまう場合がある。このようなことが起きると、磁気センサによる外部磁界測定の際に誤差が生じてしまう。
このような誤差を低減させるため、従来の磁気センサにおいては、磁化固定層の磁化方向を、磁化固定層の長手方向と直交する方向に固定している(例えば、下記特許文献1参照)。これにより、磁化自由層のヒステリシスが小さくなるため、外部磁界測定の際の誤差が低減される。
特開2006−19383号公報
しかしながら、上述の従来の磁気センサにおいては、磁化自由層のヒステリシスを小さくしているため、外部磁界測定の際のゲインが小さくなってしまうという問題があった。ゲインを大きくするために磁化自由層のヒステリシスを大きくすると、外部磁界測定の際の誤差が多くなってしまう。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、外部磁界測定の際に、ゲインを大きくすると共に、測定誤差を低減することが可能な磁界測定方法及び磁気センサを提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明に係る磁界測定方法は、磁化自由層と磁化固定層との間に非磁性層が位置するよう、磁化自由層、非磁性層、及び磁化固定層を積層した積層体を有し、その積層方向と垂直な一方向を長手方向とする磁気抵抗効果素子と、電流が供給されることにより磁界を発生する磁界印加手段とを備える磁気センサであって、磁化固定層の磁化方向は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定され、磁界印加手段が発生する磁界は、磁化自由層内において、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す磁気センサを準備する工程と、磁界印加手段によって磁化自由層の磁化が飽和するように磁化自由層に対して磁界を所定の時間印加し、磁化自由層をその長手方向に沿った一方の方向に磁化する磁界印加工程と、磁界印加工程後に、磁化自由層に対して、その長手方向に沿った他方の方向に測定対象である外部磁界を印加することによって外部磁界の強度を測定する磁界測定工程とを有することを特徴とする。
本発明の磁界測定方法によれば、磁化固定層の磁化方向は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定されているため、磁化自由層のヒステリシスが大きくなる。これにより、外部磁界測定時のゲインを大きくすることができる。
加えて、磁界印加工程において、磁化自由層の磁化を磁化自由層の長手方向に沿った一方の方向に飽和させているため、磁界測定工程における磁化自由層の磁化状態は、磁界印加工程前における磁化自由層の磁化状態に関わらず一定となる。また、測定対象である外部磁界を、磁化自由層の磁化を飽和させた方向と逆方向に印加させているため、外部磁界対磁気抵抗効果素子の抵抗値の関係における直線性の高い領域を利用して、外部磁界の測定を行うことができる。これにより、外部磁界測定の際の誤差を低減することが可能となる。
さらに、磁界印加手段は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と直交する方向と45度以下の角度を成す方向に沿って延びる電流経路部であることが好ましい。これにより、磁界印加手段の構成が簡単になる。
さらに、磁化印加手段が発生する磁界は、磁化自由層内において、積層方向から見て磁化自由層の長手方向に沿っていることが好ましい。これにより、磁化印加手段によって容易に磁化自由層の磁化を飽和させることができる。
さらに、磁化固定層の磁化方向は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向に沿って固定されていることが好ましい。これにより、磁化自由層のヒステリシスが特に大きくなる。その結果、外部磁界測定時のゲインを特に大きくすることができる。
さらに、磁界測定工程において、磁界印加手段によって、磁化自由層に対してその長手方向に沿った他方の方向に所定の強度のバイアス磁界を印加しながら、測定対象である外部磁界を磁化自由層の長手方向に沿った他方の方向に印加することが好ましい。これにより、外部磁界対磁気抵抗効果素子の抵抗値の関係において特に直線性の高い領域を利用して外部磁界の測定を行うことができる。その結果、外部磁界測定の際の誤差をさらに低減させることができる。
本発明に係る磁気センサは、磁化自由層と磁化固定層との間に非磁性層が位置するよう、磁化自由層、非磁性層、及び磁化固定層を積層した積層体を有し、その積層方向と垂直な一方向を長手方向とする磁気抵抗効果素子と、電流が供給されることにより磁界を発生する磁界印加手段とを備え、磁化固定層の磁化方向は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定され、磁界印加手段が発生する磁界は、磁化自由層内において、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成すことを特徴とする。
本発明に係る磁気センサによれば、磁化固定層の磁化方向は、積層方向から見て磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定されているため、磁化自由層のヒステリシスが大きくなる。これにより、外部磁界測定時のゲインを大きくすることができる。
さらに、磁界測定工程前に磁界印加手段によって磁化自由層の磁化を磁化自由層の長手方向に沿った一方の方向に飽和させれば、外部磁界測定時における磁化自由層の磁化状態は、磁化自由層の磁化を飽和させる前の磁化自由層の磁化状態に関わらず一定となる。また、測定対象である外部磁界を、磁化自由層の磁化を飽和させた方向と逆方向に印加させれば、外部磁界対磁気抵抗効果素子の抵抗値の関係における直線性の高い領域を利用して、外部磁界の測定を行うことができる。これにより、外部磁界測定の際の誤差を低減することが可能となる。
本発明によれば、外部磁界測定の際に、ゲインを大きくすると共に、測定誤差を低減することが可能な磁界測定方法及び磁気センサが提供される。
以下、実施の形態に係る磁気センサ及びそのような磁気センサを用いた磁界強度測定方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
図1は、本実施形態に係る磁気センサの概略的な構成を示す図である。図1に示すように、磁気センサ50は、磁気抵抗効果素子14と、磁界印加手段としての電流経路部22と、一対の電極層16と、絶縁層18とを備えている。
磁気抵抗効果素子14はZ軸に沿った方向に積層された複数の層からなっている。(即ち、磁気抵抗効果素子14の積層方向は、Z軸の正方向又はZ軸の負方向に沿った方向となる。)磁気抵抗効果素子14は、その積層方向と垂直な方向の一つであるX軸に沿った方向を長手方向としている。また、磁気抵抗効果素子14の長手方向の両端には、非磁性金属であるCu,Au,Ti,Al等の導電材料で構成される一対の電極層16が設けられている。一対の電極層16間に電圧を印加することにより、磁気抵抗効果素子14にはセンス電流が供給される。
磁気抵抗効果素子14の厚さは、特に制限されないが、例えば20〜100nmとすることができる。また、磁気抵抗効果素子14の長手方向の長さ及び長手方向と垂直な方向(Y軸に沿った方向)の長さも特に制限されないが、例えばそれぞれ50〜300μm、及び2〜20μmとすることができる。また、磁気抵抗効果素子14の長手方向の長さをX、長手方向と垂直な方向(Y軸に沿った方向)の長さをYとしたとき、XをYで除した値であるX/Yは、例えば25〜150とすることができる。
電流経路部22は、磁気抵抗効果素子14と積層方向に離間するように、例えばAlOx等のセラミクス系絶縁材、SiOx、ポリイミドに代表される高分子系絶縁材等の絶縁材料で構成される絶縁層18を介して磁気抵抗効果素子14に設けられている。この絶縁層18は、複数の絶縁体からなる層の積層膜であることが好ましい。
電流経路部22は、特に制限されないが、非磁性金属であるCu,Au,Ti,Al等の導電材料で構成され、例えば、スパッタ、蒸着などの真空薄膜形成プロセスやメッキ等の湿式プロセスで形成することができる。そして、電流経路部22は磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁気抵抗効果素子14の長手方向と直交する方向に沿って延びている。電流経路部22の厚さは、例えば0.1〜20μmとすることができる。また、電流経路部22のY軸に沿った方向の長さは、電流経路部22が発生する磁界(詳細は後述)が磁気抵抗効果素子14全体に概ね均一に印加されるようにするために、磁気抵抗効果素子14のY軸に沿った方向の長さよりも長いことが好ましい。このように磁気抵抗効果素子14全体に印加される磁界が概ね均一となれば、後述する磁化自由層の磁化の初期化を安定に行うことが可能となる。また、電流経路部22の幅(X軸に沿った方向の長さ)は、例えば、1〜10μmとすることができる。
また、本実施形態においては、電流経路部22は電流が供給されることにより、測定対象である外部磁界を発生する役割も兼ねている。即ち、本実施形態では、測定対象である外部磁界を発生する部材は、磁気センサ50と物理的に一体となって形成されている。その外部磁界は、磁気センサ50によって測定される。また、本実施形態では、磁気センサ50は電流経路部22を3つ備えているが、磁気センサ50は電流経路部22を1つ又は2つ備えていてもよく、4つ以上備えていてもよい。
図2は、磁気抵抗効果素子の詳細を示す断面図(XZ断面)である。図2に示すように、磁気抵抗効果素子14は、磁化自由層3と、非磁性層5と、磁化固定層7とがこの順に積層された積層体2を有している。即ち、磁化自由層3、非磁性層5、及び磁化固定層7は、磁化自由層3と磁化固定層7との間に非磁性層5が位置するように積層されている。また、積層体2は下地層1上に積層されており、また、積層体2上には反強磁性層9とキャップ層11がこの順に積層されている。
磁化自由層3は、強磁性材料で構成されており、例えば厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されている。そして磁化自由層3の磁化方向3Mは、交換結合によって固定されていない。そのため、外部磁界が印加されると、磁化自由層3の磁化方向3Mは外部磁界の印加方向に容易に回転する。また、外部磁界が印加されていない場合、磁化自由層3の磁化方向3Mは、磁化自由層3の形状異方性により、磁気抵抗効果素子14の長手方向であるX軸に沿った方向に弱く固定されている。
非磁性層5は、厚さ1〜3nm程度のCu等の非磁性の導電性金属で構成されている。
磁化固定層7は、厚さ1〜5nm程度のCoFe等の強磁性体で構成されている。磁化固定層7上には、厚さ5〜15nm程度のIrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる反強磁性体で構成された反強磁性層9が積層されている。反強磁性層9と磁化固定層7は交換結合をしており、磁化固定層7の磁化方向7MはX軸の正方向に実質的に固定されている。なお、磁化固定層7は、Ru等の非磁性中間層をCoFe等の一対の強磁性層で挟んだ3層構造とすることもできる。この場合、非磁性中間層の膜厚を適当に選択すれば、非磁性中間層を挟む一対の強磁性層の磁化は反平行に交換結合し、磁化固定層7はいわゆるシンセティックフェリピンド構造となる。この場合、磁化固定層7の磁化方向がより強く固定される。
下地層1は、Ta等の材料で形成され、磁気抵抗効果素子14の下地層1上に積層された各層の結晶性向上等の目的で設けられている。また、キャップ層11は、Ta等の材料で形成され、磁気抵抗効果素子14の各層を保護する目的等で設けられている。なお、磁気抵抗効果素子14は、下地層1及び/又はキャップ層11を有していなくてもよい。
一対の電極層16(図1参照)間に電圧を印加することにより、磁気抵抗効果素子14には、その膜面に平行にセンス電流が流れる。即ち、磁気抵抗効果素子14は面内通電型 (Current in Plane, CIP)のGMR(Giant Magneto-Resistive)素子である。
次に、本実施形態に係る磁気センサによる外部磁界強度の測定方法について図3〜図6を参照しながら説明する。
図3は、磁気抵抗効果素子14(図2参照)が有する積層体2、及び電流経路部22の位置関係を概略的に示す図である。積層体2を構成する磁化自由層3、非磁性層5、及び磁化固定層7は、本来この順に積層されているが(図2参照)、図3(及び後述の図9及び図11)においては便宜的にそれぞれ分離して示している。また、図3では、一対の電極層16と絶縁層18の図示は省略している。図4は、磁化自由層3を磁気抵抗効果素子14の積層方向から見た図であり、磁化自由層3の磁化方向3Mと磁化固定層7の磁化方向7Mとの関係を示している。図5は、磁化自由層3を磁気抵抗効果素子14の積層方向から見た図であり、磁化自由層3と電流経路部22との関係を示している。
図3及び図4に示すように、磁化固定層7の磁化方向7Mは、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁化自由層3の長手方向に沿って固定されている。また、図4及び図5に示すように、電流経路部22は、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁化自由層3の長手方向と直交する方向に沿って延びている。
(磁界印加工程)
外部磁界の測定を行う場合、外部磁界の測定に先立って、図5(a)に示すように電流経路部22にY軸に負方向に沿って流れる電流Iを供給し、電流経路部22が発生する磁界22Rを磁化自由層3に印加させる。具体的には、磁化自由層3の磁化が飽和するように、磁化自由層3に対して電流経路部22が発生する磁界22Rを所定の時間印加し、磁化自由層3をその長手方向のうちの一方の方向(本実施形態ではX軸の負方向)に磁化させる。磁化自由層3と電流経路部22は上述のような位置関係を有しているため、電流経路部22が発生する磁界22Rは、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁化自由層3の長手方向に沿っている。なお、磁化自由層3に磁界22Rを印加させる時間は、磁化自由層3の磁化を飽和させるのに必要な時間以上であればよい。
(磁界測定工程)
続いて、外部磁界の測定を行う。外部磁界の測定は、図5(b)に示すように、電流経路部22にY軸の正方向に沿って流れる電流Iを供給し、電流経路部22が発生する磁界22M(測定対象である外部磁界)を磁化自由層3に印加させる。磁化自由層3と電流経路部22は上述のような位置関係を有しているため、測定対象である外部磁界は、磁化自由層3の磁化を飽和させた方向と逆方向、即ち、磁化自由層3の長手方向のうちの他方の方向(本実施形態ではX軸の正方向)に印加される。
磁界22Mの印加によって磁化自由層3の磁化方向3Mが変化するため、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見た場合の磁化自由層3の磁化方向3Mと磁化固定層7の磁化方向7M(図3及び図4参照)との相対的な角度が変化する。例えば、磁界22Mが非常に強く磁化自由層3の磁化を飽和させる場合、磁化自由層3の磁化方向3Mは、図5(b)に示すように磁化自由層3の長手方向であるX軸の正方向に沿った方向に向く。即ち、磁化自由層3の磁化方向3Mは、磁界22Mの大きさに依存して、磁化自由層3内において磁化自由層3の長手方向であるX軸の負方向からX軸の正方向までの間を回転するように変化する。そして磁気抵抗効果によって、磁化方向3Mと磁化方向7Mとの相対的な角度に依存して磁気抵抗効果素子14の抵抗値が変化する。磁化方向3Mの変化量は磁界22Mの強度に依存するため、例えば、一対の電極層16(図1参照)間に電圧を印加し、磁気抵抗効果素子14に一定のセンス電流を流しながら磁化自由層3に磁界22Mを印加すれば、一対の電極層16間の電圧は磁界22Mの強度に応じて変化する。そのため、一対の電極層16間の電圧を測定すれば磁界22Mの強度を測定することができる。
上述のように外部磁界の測定に先立って磁化自由層3に磁界22Rを印加する効果について、図6を参照しながら説明する。図6は、磁気抵抗効果素子の素子抵抗値と外部磁界の関係を示す図であり、縦軸を磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値とし、横軸を磁化自由層3に印加された外部磁界の強度としており、X軸の正方向に外部磁界が印加された場合を正方向として示している。
図6に示すように、磁化自由層3に外部磁界が印加されると磁化自由層3の磁化方向3Mと磁化固定層7の磁化方向7Mとの相対的な角度が変化するため、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値が変化する。しかし、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値と外部磁界の関係にはヒステリシスがあるため、外部磁界と磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値の関係は必ずしも一対一に対応するとは限らない。このヒステリシスの存在は、外部磁界測定における誤差の原因となる。
しかし、上述のように本実施形態に係る磁気センサ50による外部磁界強度の測定方法においては、測定対象の外部磁界22Mを磁化自由層3に印加するのに先立って、磁化自由層3の磁化が飽和するように磁界22Rを印加している(図4参照)。そのため、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値は、図6のDの値になった後に、Eの値となる。その後、測定対象である磁界22M(図5参照)が印加されると、磁気抵抗効果素子14の抵抗値はE−G−Fの経路(直線領域L2の経路)を通るように変化する。
即ち、磁化自由層3の磁化が飽和するように磁界22Rを印加した後の磁化自由層3の磁化状態は、磁界22Rを印加する前の磁化自由層3の磁化状態に関わらず一定となる。これは、外部磁界22Mの測定前に、磁化自由層3の磁化の初期化を行っていると見ることができる。この磁化の初期化の効果で、磁界22Mの強度と磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値とが一対一に対応することになり、磁界22Mの強度を正確に測定することが可能となる。
外部磁界22Mを複数回測定する場合、このような磁化自由層3の磁化の初期化は外部磁界22Mの測定前に毎回行ってもよいし、一定回数測定した後に次の測定前に行ってもよい。また、一定時間経過後に磁化の初期化を行うこともできる。ただし、例えば図6のGの強度の外部磁界22Mを測定した後の磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値は、図6のHの値となる。この状態から再び外部磁界を測定すると、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値は直線領域L2の経路上の値とは異なることになる。そのため、磁化自由層3の磁化の初期化は外部磁界22Mの測定前に毎回行うことが好ましい。
また、本実施形態においては、磁化自由層3の磁化の初期化の際に印加される磁界22Rと測定対象である外部磁界22Mの方向は、互いに逆向きとしている。そのため、図6の磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値と外部磁界の関係におけて、直線領域L2の直線部分が長くなり、外部磁界22M測定の際の測定レンジが広くなる。それに対して、仮に磁化自由層3の磁化の初期化の際に印加される磁界22Rを測定対象である外部磁界22Mの方向と同方向に印加してしまうと、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値は、Aの値になった後にCの値となる。この状態から測定対象の外部磁界22Mを印加すると、磁気抵抗効果素子14の抵抗値はC−Bの経路(直線領域L1の経路)を通るように変化する。そして、直線領域L1は直線部分が短いため、外部磁界22M測定の際の測定レンジが狭くなってしまう。
上述の磁界測定方法によれば、外部磁界22M測定時のゲイン(図6の直線領域L2の傾き)を大きくすることができる。即ち、磁化固定層7の磁化方向7Mは、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て磁化自由層3の長手方向に沿った方向に固定されている。そのため、外部磁界22M測定の際、磁化自由層3の磁化方向3Mの向きは、磁化自由層3の面内において磁化自由層3の長手方向の一方から他方までの間で回転するように変化する。そして、磁化自由層3の長手方向の一方と他方は、磁化自由層3の形状異方性によって、それぞれ磁化方向3Mが最も向き易い方向となる。その結果、図6の磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値と外部磁界の関係におけるヒステリシスが大きくなるため、外部磁界22M測定時のゲインが大きくなる。
また、本実施形態では、電流経路部22が発生する磁界22Rは、磁化自由層3内において、積層方向から見て磁化自由層3の長手方向に沿っている。これにより、電流経路部22によって容易に磁化自由層3の磁化を飽和させることができる。
また、本実施形態では、磁化固定層7の磁化方向7Mは、積層方向から見て磁化自由層3の長手方向に沿って固定されている。これにより、磁化自由層3のヒステリシスが特に大きくなる。その結果、外部磁界22M測定時のゲインが特に大きくなっている。
なお、本実施形態に係る磁気センサ50は、電流経路部22から発生する磁界22Mを測定しているが、この磁界22Mの強度に加え、磁気センサ50と電流経路部22との相対的な位置関係の情報が既知であれば、電流経路部22を流れる電流値を測定することができる。即ち、本実施形態に係る磁気センサ50は、電流センサとして用いることも可能である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が可能である。
例えば、図7に示すように、磁化固定層7の磁化方向7Mは、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁化自由層3の長手方向とθの角度を成していてもよい。この場合θの角度を変えることにより磁化自由化層3のヒステリシスの大きさを可変することができるため、積極的にゲイン調整を行うことができるという利点がある。θの角度は、45度以下であることが好ましい。磁化自由層3のヒステリシスが十分に大きくなり、外部磁界22M測定時のゲインが十分に大きくなるためである。
また、図8(a)及び図8(b)に示すように、電流経路部22は、磁気抵抗効果素子14の積層方向から見て、磁化自由層3の長手方向と直交していなくてもよい。この場合、電流経路部22が発生する磁界22R、22Mは、磁化自由層の長手方向とθの角度を成す。この場合角度θを変えることにより、電流経路部22が発生する磁界22R、22Mに対する磁化自由層3の磁化方向3Mの相対角度を可変することができるため、ゲインを積極的に可変することができるという利点がある。θの角度は、45度以下であることが好ましい。何故なら、磁化自由層3の磁化方向3Mと磁化固定層7の磁化方向7Mとの相対的な角度が十分広い範囲で変化するため、測定対象である外部磁界22Mを測定する際のゲイン調整が容易になるためである。
また、図9に示すように、測定対象である外部磁界を発生する磁界発生部25を、電流経路部22と別途設けてもよい。磁界発生部25は、例えば、磁気抵抗効果素子14の長手方向と直交する方向に延びる金属層である。磁界発生部25に電流を流し、測定対象である外部磁界25Mを発生させる。磁界発生部25は、磁気センサ50と物理的に一体化するように形成されていてもよいし、磁気センサ50とは物理的に分離していてもよい。また、磁界発生部25は一定方向に延びる金属層に限られず、発生する磁界が磁化自由層3の磁化を飽和させた方向と逆方向に印加される態様であればよく、例えば、磁界発生部25はコイル等であってもよい。
また、磁界測定工程において、電流経路部22によって、磁化自由層3に対してその長手方向に沿った他方の方向(磁化の初期化を行った際の印加磁界とは逆の方向)に所定の強度のバイアス磁界を印加しながら、測定対象である外部磁界を磁化自由層3の長手方向に沿った他方の方向に印加してもよい。これは、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値と外部磁界の関係が図10に示すようなヒステリシスを有する場合に特に有効である。即ち、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値が、磁化自由層3の磁化の初期化のためにBの値を経てCの値となる。このCの値がヒステリシスのDからEまでの直線領域L3から離れている場合、電流経路部22によってバイアス磁界Hを印加することが好ましい。この状態で測定対象の外部磁界が磁化自由層3に印加されると、磁気抵抗効果素子14の素子抵抗値は、DからEまでの直線領域L3上の値に変化する。これにより、外部磁界対磁気抵抗効果素子14の抵抗値の関係において特に直線性の高い直線領域L3を利用して外部磁界の測定を行うことができる。その結果、外部磁界測定の際の誤差をさらに低減させることができる。
また、磁界印加手段としての電流経路部22の態様は、一定方向に延びる金属層に限られず、図11に示すようなX軸を囲んで巻回されたコイル22aを磁界印加手段として用いることもできる。また、上述の実施形態では、磁界印加手段である電流経路部22はスパッタ、蒸着などの真空薄膜形成プロセスやメッキ等の湿式プロセスで形成された層状の部材であるが、電流経路部は銅線等の線状の部材であってもよい。
また、上述の実施形態では、磁気抵抗効果素子14は、CIP型のGMR素子であったが、CPP(Current Perpendicular in Plane)型のGMR素子又は、TMR(Tunnel Magneto-Resistive)素子であってもよい。CPP型のGMR素子の場合、一対の電極層16(図1参照)は、磁気抵抗効果素子14の積層方向の両端面に電気的に接続される。また、TMR素子の場合、さらに、非磁性層5(図2参照)が、Cu等の非磁性金属に替えて厚さ1〜2nm程度のAlやMgO等の非磁性絶縁材料で構成される。
また、本実施形態においては、磁気センサ50によって電流から発生する磁界を測定しているが、例えば永久磁石から発生する磁界の強度や、永久磁石との距離を磁界の強さで検知する距離測定等の用途に用いてもよい。
実施形態に係る磁気センサの概略的な構成を示す図である。 磁気抵抗効果素子の詳細を示す断面図である。 磁気抵抗効果素子が有する積層体及び電流経路部の位置関係を概略的に示す図である。 磁化自由層を磁気抵抗効果素子の積層方向から見た図である。 磁化自由層を磁気抵抗効果素子の積層方向から見た図である。 磁気抵抗効果素子の素子抵抗値と外部磁界の関係を示す図である。 磁化自由層を磁気抵抗効果素子の積層方向から見た図である。 磁化自由層を磁気抵抗効果素子の積層方向から見た図である。 磁気抵抗効果素子が有する積層体及び電流経路部の位置関係を概略的に示す図である。 磁気抵抗効果素子が有する積層体及び電流経路部の位置関係を概略的に示す図である。 磁気抵抗効果素子が有する積層体及び電流経路部の位置関係を概略的に示す図である。
符号の説明
2・・・積層体、3・・・磁化自由層、3M・・・磁化自由層の磁化方向、5・・・非磁性層、7・・・磁化固定層、7M・・・磁化固定層の磁化方向、14・・・磁気抵抗効果素子、22・・・電流経路部(磁界印加手段)、50・・・磁気センサ。

Claims (6)

  1. 磁化自由層と磁化固定層との間に非磁性層が位置するよう、前記磁化自由層、前記非磁性層、及び前記磁化固定層を積層した積層体を有し、その積層方向と垂直な一方向を長手方向とする磁気抵抗効果素子と、
    電流が供給されることにより磁界を発生する磁界印加手段と、
    を備える磁気センサであって、
    前記磁化固定層の磁化方向は、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定され、
    前記磁界印加手段が発生する磁界は、前記磁化自由層内において、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す磁気センサ、を準備する工程と、
    前記磁界印加手段によって前記磁化自由層の磁化が飽和するように前記磁化自由層に対して磁界を所定の時間印加し、前記磁化自由層をその長手方向に沿った一方の方向に磁化する磁界印加工程と、
    前記磁界印加工程後に、前記磁化自由層に対して、その長手方向に沿った他方の方向に測定対象である外部磁界を印加することによって当該外部磁界の強度を測定する磁界測定工程と、
    を有することを特徴とする磁界測定方法。
  2. 前記磁界印加手段は、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向と直交する方向と45度以下の角度を成す方向に沿って延びる電流経路部であることを特徴とする請求項1に記載の磁界測定方法。
  3. 前記磁化印加手段が発生する磁界は、前記磁化自由層内において、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向に沿っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁界測定方法。
  4. 前記磁化固定層の磁化方向は、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向に沿って固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁界測定方法。
  5. 前記磁界測定工程において、前記磁界印加手段によって、前記磁化自由層に対してその長手方向に沿った前記他方の方向に所定の強度のバイアス磁界を印加しながら、測定対象である前記外部磁界を前記磁化自由層の長手方向に沿った前記他方の方向に印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁界測定方法。
  6. 磁化自由層と磁化固定層との間に非磁性層が位置するよう、前記磁化自由層、前記非磁性層、及び前記磁化固定層を積層した積層体を有し、その積層方向と垂直な一方向を長手方向とする磁気抵抗効果素子と、
    電流が供給されることにより磁界を発生する磁界印加手段と、
    を備え、
    前記磁化固定層の磁化方向は、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成す方向に固定され、
    前記磁界印加手段が発生する磁界は、前記磁化自由層内において、前記積層方向から見て前記磁化自由層の長手方向と45度以下の角度を成すことを特徴とする磁気センサ。
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