この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う磁界検出装置100の概略構成図である。
図1を参照して、磁界検出装置100は、磁気抵抗効果素子2と、バイアス部4と、検出回路6とからなる。
磁気抵抗効果素子2は、たとえば、スピンバルブ構造を有するTMR素子(Tunnel Magneto Resistive)またはGMR素子(Giant Magneto Resistive)からなる。そして、磁気抵抗効果素子2は、検出対象の外部磁界およびバイアス部4からのバイアス磁界を受け、その受けた磁界に応じて抵抗値を変化させる。なお、実施の形態1においては、一例として、磁気抵抗効果素子2は、スピンバルブ構造を有するTMR素子で構成されるとして以下の説明を行なう。
検出回路6は、磁気抵抗効果素子2に所定の電圧または電流を与え、磁気抵抗効果素子2が生じる抵抗値を検出し、外部磁界に応じた検出信号を出力する。なお、検出回路6から出力される検出信号を受け、その検出信号を外部磁界の大きさに変換する演算回路をさらに備えてもよい。
バイアス部4は、所定のバイアス磁界を磁気抵抗効果素子2へ印加し、外部磁界に対する磁気抵抗効果素子2の抵抗値特性を変化させる。すなわち、バイアス部4は、磁気抵抗効果素子2が検出する外部磁界の検出範囲や検出感度といった検出特性を変化させる。そして、バイアス部4は、磁石、電磁石、電磁コイルおよび基板上に形成された強磁性体薄膜などからなり、外部電源を必要とせずにバイアス磁界を生じる磁石が好ましい。なお、実施の形態1においては、一例として、バイアス部4が磁石で構成されるとして、以下の説明を行なう。
図2は、磁気抵抗効果素子2の概略構成図である。
図2を参照して、磁気抵抗効果素子2は、反強磁性層10、強磁性層12、非磁性層14および強磁性層16の順で接合された積層構造をもつ。また、強磁性層12および16は、それぞれ内部磁界または外部磁界などにより磁化される。
強磁性層12は、反強磁性層10と接合されるため、交換結合磁界が生じ、その磁化方向は固着され、外部磁界に関わらず一定の方向となる。以下、このように磁化方向が固着される強磁性層12を固着層とも称す。
一方、強磁性層16は、非磁性層14と接合されるため、強磁性層12および反強磁性層10からの影響を受けることなく、外部磁界に応じてその磁化方向を変化させる。以下、このように磁化方向が外部磁界に応じて変化する強磁性層16を自由層とも称す。
また、TMR素子で構成される磁気抵抗効果素子2は、たとえば、IrMnからなる反強磁性層10、NiFeおよびCoFeの組成物からなる強磁性層12、Al2O3からなる非磁性層14、NiFeからなる強磁性層16で構成することができる。
さらに、反強磁性層10として、FeMn,IrMn,PtMnなどを用いることができる。また、強磁性層12および16として、Co,Fe,CoFe合金,CoNi合金,CoFeNi合金などのCo,Ni,Feなどを主成分とする金属材料またはNiMnSb,CoMnGeなどの合金を用いることができる。また、非磁性層14は、トンネル効果を生じる絶縁物であればよく、Ta2O5,SiO2,MgOなどの金属の酸化物または金属のフッ化物を用いることができる。
磁気抵抗効果素子2の抵抗値は、強磁性層12(固着層)の磁化方向と強磁性層16(自由層)の磁化方向との相対関係に応じて変化する。すなわち、外部磁界に応じて回転する強磁性層16の磁化ベクトルと、固着される強磁性層12の磁化ベクトルとのなす角度に応じて、磁気抵抗効果素子2の抵抗値は変化する。
そして、TMR素子で構成される磁気抵抗効果素子2は、絶縁体である非磁性層14を介して強磁性層12と強磁性層16との間を電流が流れるように、強磁性層16に接続された配線8.1および強磁性層12に接続された配線8.2を介して電流が供給される。すなわち、絶縁体である非磁性層14をトンネル効果により通過するトンネル電流は、外部磁界に応じて変化するため、磁気抵抗効果素子2の抵抗値が外部磁界に応じて変化する。
磁気抵抗効果素子2を構成する各層の接合面に対する垂直方向のサイズ、すなわち各層の厚さは、各層の面内方向における短辺側のサイズに比較して、約1/100である。そのため、磁気抵抗効果素子2は、形状磁気異方性の影響を強く受け、接合面に対して垂直方向の磁化成分は、接合面に平行な磁界成分に対してほぼ無視できる。したがって、磁気抵抗効果素子2は、接合面に対して垂直方向からの外部磁界を受けてもその抵抗値はほとんど変化せず、主として、接合面に平行な外部磁界を受けてその抵抗値を変化させる。
そのため、以下では、強磁性層16(自由層)および強磁性層12(固着層)に生じる磁化ベクトルは、面内方向においてのみ変化する2次元ベクトルとみなして説明を行なう。
強磁性層16(自由層)は、外部磁界を受け、その磁化ベクトルが変化するが、外部磁界が印加されていない状態における強磁性層16(自由層)の磁化方向を予め決定することもできる。そのため、外部磁界が印加されていない状態において、強磁性層12(固着層)に生じる磁化ベクトルと、強磁性層16(自由層)に生じる磁化ベクトルとを直交させることで、外部磁界に対する抵抗値の感度を高めることもできる。
このような強磁性層12(固着層)の磁化方向を予め決定する方法として、磁気抵抗効果素子2を製作した後、所望する磁化方向の外部磁界を強磁性層12(固着層)へ印加しながら、熱処理加工(アニール)を施すことで、強磁性層12(固着層)の磁化方向をその所望する磁化方向に決定できる。
また、面内方向において長方形の形状を有する強磁性層16(自由層)は、形状磁気異方性により、その長辺方向に磁化ベクトルを生じる。そのため、所望する磁化ベクトルの方向とその長辺方向とを一致させるように、長方形の強磁性層16(自由層)を製作することで、強磁性層16(自由層)の磁化方向を決定できる。
図3は、TMR素子で構成される磁気抵抗効果素子2の要部を示す図である。
図3を参照して、磁気抵抗効果素子2は、基板32上に積層される反強磁性層10および強磁性層12を含む。そして、強磁性層12の反強磁性層10の接合面と反対側の面上に非磁性層14および強磁性層16が積層される。さらに、配線8.1がコンタクト24.1および24.2を介して強磁性層16と接続され、配線8.2がコンタクト24.3を介して強磁性層12と接続される。
なお、配線8.1および8.2は、たとえば、Alなどからなる。
このように基板上に積層される反強磁性層10、強磁性層12、非磁性層14および強磁性層16は、それぞれDCマグネトロンスパッタリングなどのスパッタリング法、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)などの蒸着法および光CVDなどの化学気相法(CVD:Chemical Vapor Deposition)により形成することができる。
そして、基板上にそれぞれの層を積層した後、フォトレジスト処理により所望のパターンを転写し、さらに、イオンミリング処理または反応性イオンエッチング処理により所望の構造に形成するフォトリソグラフィー法を用いることで、図3に示すような磁気抵抗効果素子2を製作することができる。また、フォトリソグラフィー法に代えて、電子線リソグラフィー法または集束イオンビーム法を用いてもよい。
図4は、検出回路6の概略構成図である。
図4を参照して、検出回路6は、配線8.1および8.2を介して定電流を磁気抵抗効果素子2へ供給し、その定電流により磁気抵抗効果素子2に生じる電圧に応じた検出信号を出力する。そして、検出回路6は、定電流源30と、プリアンプ31とからなる。
定電流源30は、磁気抵抗効果素子2の抵抗値に関わらず一定の電流を供給する。
プリアンプ31は、定電流源30と磁気抵抗効果素子2との接続点における電位と、基準電位との電位差を所定の増幅率をもって増幅して出力する。
図5は、この発明の実施の形態1に従う磁界検出装置100の要部を示す図である。
図5(a)は、磁界検出装置100の斜方図である。
図5(b)は、磁界検出装置100の平面図である。
図5(a)を参照して、磁界検出装置100は、基板32上に形成される磁気抵抗効果素子2と、磁気抵抗効果素子2と対向して配置されるバイアス部4とからなる。そして、磁界検出装置100においては、バイアス部4は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2の中心軸と一致するように配置される。
図5(b)を参照して、バイアス部4は、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線に沿って、磁気抵抗効果素子2からバイアス部4に向けてバイアス磁界Hbを生じる。
一方、磁気抵抗効果素子2において、固着層の磁化ベクトル40は、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線に沿って、磁気抵抗効果素子2からバイアス部4へ向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42は、外部磁界Hexを受けて、固着層の磁化ベクトル40と直交する向きから固着層の磁化ベクトル40と平行するように回転する。
すなわち、磁気抵抗効果素子2は、固着層の磁化ベクトル40と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。そのため、外部磁界Hexが十分大きい場合に、自由層の磁化ベクトル42が固着層の磁化ベクトル40と平行または反平行となるので、外部磁界Hexの変化に伴う抵抗値の変化幅を大きくとることができる。
上述のように、磁気抵抗効果素子2には、バイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexが印加される。ここで、バイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexは、同一直線上に生じるので、バイアス磁界Hbは、磁気抵抗効果素子2へ印加される外部磁界Hexを妨げるように機能する。そのため、磁気抵抗効果素子2における自由層の磁化が抑制され、磁化ベクトル42の回転角度も減少する。
したがって、外部磁界Hexに対する磁気抵抗効果素子2の抵抗値の特性は、バイアス磁界Hbだけシフトする。
図6は、磁界検出装置100における外部磁界Hexと抵抗値Rとの関係を示す模式図である。
図6を参照して、磁気抵抗効果素子2は、バイアス部4からのバイアス磁界Hbが存在しない場合において、−Hk〜Hk(Hk:飽和磁界)の範囲内で線形領域を有する。
ここで、たとえば、外部磁界Hexの大きさを測定する場合には、外部磁界Hexの大きさと抵抗値R、すなわち外部磁界Hexと検出信号とが比例関係にあることが望ましい。そのため、外部磁界Hexの大きさを測定する場合には、磁気抵抗効果素子2が線形領域となる範囲(−Hk〜Hk)が測定可能範囲となる。
そこで、バイアス部4からバイアス磁界Hbを印加することで、磁気抵抗効果素子2の線形領域は、(−Hk+Hb)〜(+Hk+Hb)の範囲へ移動する。そのため、磁界検出装置100の測定可能範囲は、バイアス磁界Hb分だけシフトする。
上述のように、測定対象の外部磁界Hexの変動範囲に応じて、適切なバイアス磁界Hbを選択することで、磁界検出装置100は、大きな直流成分を含む外部磁界Hexに対して、微小な交流成分を検出することができる。
図7は、バイアス部4とバイアス磁界Hbとの関係を示す一例である。なお、図7は、バイアス部4として、各辺が1mmの立方体に形成されたSmCo磁石(希土類サマリウム・コバルト磁石)を用いた場合を示す。
図7(a)は、バイアス部4と磁気抵抗効果素子2との位置関係を示す図である。
図7(b)は、バイアス部4と磁気抵抗効果素子2との離隔距離に対するバイアス磁界Hbの大きさの特性を示す図である。
図5(b)および図7(a)を参照して、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線上において、バイアス部4の端面と磁気抵抗効果素子2の中心点との距離を離隔距離と定義する。
図7(b)を参照して、たとえば、離隔距離を2.5(mm)とすると、磁気抵抗効果素子2へ印加されるバイアス磁界Hbは、55×103/4π(A/m)となる。したがって、磁界検出装置100の検出範囲は、55×103/4π(A/m)だけシフトする。
図8は、図7(b)において、離隔距離を2.5(mm)とした場合における、外部磁界Hexと抵抗値Rとの関係を示す一例である。
図8を参照して、バイアス磁界Hbを印加しない場合においては、外部磁界Hex=0を中心として、抵抗値Rが外部磁界Hexにほぼ比例する線形領域が生じる。一方、バイアス部と磁気抵抗効果素子2との離隔距離を2.5(mm)とすると、55×103/4π(A/m)のバイアス磁界Hbが磁気抵抗効果素子2へ印加されるので、抵抗値Rは、バイアス磁界Hbを中心として、抵抗値Rが外部磁界Hexにほぼ比例する線形領域が生じる。
さらに、磁界検出装置100においては、外部磁界による検出信号に対するノイズを抑制することが望ましい。そこで、磁気抵抗効果素子2およびプリアンプ31を共通の基板上に形成することで、プリアンプ31から磁気抵抗効果素子2までの配線距離を短縮し、配線へ侵入するバイアス磁界および外部磁界からのノイズを抑制できる。
図9は、磁気抵抗効果素子2および検出回路6の要部を示す図である。
図9を参照して、磁気抵抗効果素子2の構造は、図3と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。そして、基板32の磁気抵抗効果素子2が形成される面と反対側の面において、ゲート66が形成される。そして、ソース62およびドレイン64が酸化膜60を介してゲート66と反対側の面に形成される。また、ゲート66、ソース62、ドレイン64および酸化膜60は、プリアンプ31を構成する。
さらに、ゲート66は、コンタクト24.4を介して配線8.1と接続され、ソース62は、コンタクト24.5を介して配線8.4と接続され、ドレイン64は、コンタクト24.6を介して配線8.3と接続される。
したがって、ゲート66は、磁気抵抗効果素子2の強磁性層16に生じる電圧を受け、ソース62からドレイン64へその電圧に応じた電流を発生させる。そして、ソース62からドレイン64へ流れる電流は、配線8.3を介して検出信号として出力される。
上述のように、検出回路6を構成するプリアンプ31のゲート66が、磁気抵抗効果素子2と共通の基板32上に形成される構造を採用して配線距離を短縮することで、バイアス磁界および外部磁界からの影響を抑制し、ノイズの少ない磁界検出装置100を実現できる。
(変形例1)
上述の実施の形態1においては、磁気抵抗効果素子2がスピンバルブ構造を有するTMR素子で構成される場合について説明したが、TMR素子に代えて、スピンバルブ構造を有するGMR素子で構成してもよい。
図10は、GMR素子で構成する場合の磁気抵抗効果素子の要部を示す図である。
図10(a)は、概略構成図である。
図10(b)は、要部を示す図である。
図10(a)を参照して、GMR素子は、基板32上に積層される反強磁性層10および強磁性層12を含む。そして、強磁性層12の反強磁性層10の接合面と反対側の面上に金属体である非磁性層15および強磁性層16が積層される。
図10(b)を参照して、さらに、GMR素子は、配線8.1および8.2がそれぞれコンタクト24.1および24.2を介して強磁性層16と接続される。なお、金属体である非磁性層15として、たとえば、Cuなどを用いることができる。
図10(a)および図10(b)を参照して、検出回路6(図示しない)から強磁性層16に接続された配線8.1を介して供給される電流は、主として非磁性層15においてその面内方向を流れ、強磁性層16に接続された配線8.2から出力される。そして、強磁性層12(固着層)の磁化ベクトルおよび強磁性層16(自由層)の磁化ベクトルに応じて、非磁性層15を流れる電流が影響を受け、GMR素子の抵抗値は変化する。
非磁性層15を流れる電流(電子)は、非磁性層15の両界面、すなわち強磁性層16と非磁性層15との接合面および強磁性層12と非磁性層15との接合面において散乱される。ここで、この電流(電子)に対する散乱の程度は、強磁性層12(固着層)の磁化ベクトルと強磁性層16(自由層)の磁化ベクトルとの差に応じて決まる。すなわち、強磁性層12(固着層)の磁化ベクトルおよび強磁性層16(自由層)の磁化ベクトルの向きが一致している場合において、電流(電子)は散乱されにくく、電気抵抗は小さくなる。一方、強磁性層12(固着層)の磁化ベクトルおよび強磁性層16(自由層)の磁化ベクトルの向きが互いに反対方向になっている場合において、電流(電子)は散乱されやすく、電気抵抗は大きくなる。
上述のように、GMR素子は、TMR素子とその磁気抵抗効果を生じる原理は異なるものの、外部磁界に対する特性および検出回路から見た特性は、ほぼ等価であるため、TMR素子に代えてGMR素子により磁気抵抗効果素子2を構成することもできる。
(変形例2)
さらに、図2に示すスピンバルブ構造において、単一の強磁性層からなる固着層に代えて、強磁性層および非磁性層を積層したSAF(Synthesis Anti-Ferroelectrics)構造の固着層を採用してもよい。
図11は、SAF構造の固着層を含む磁気抵抗効果素子の概略構成図である。
図11を参照して、SAF構造の固着層を含む磁気抵抗効果素子は、図2に示す磁気抵抗効果素子2において、強磁性層12に代えて、強磁性層18、非磁性層20および強磁性層22を配置したものである。なお、非磁性層20は、たとえば、Ru,Cuなどからなる。
そして、強磁性層18および22は、それぞれ互いに打消し合うような磁化をもつ。そのため、強磁性層22と強磁性層16(自由層)との関係で見ると、強磁性層22および強磁性層16はいずれも磁化ベクトルをもつので、図2に示す磁気抵抗効果素子2と同様の特性を有する。一方、強磁性層18および22の全体として見ると、磁化は互いに打消し合い、ほぼゼロとなる。よって、固着層を構成する強磁性層18および22に対して、その面内方向と垂直な方向から強い外部磁界が印加された場合においても、それぞれがもつ磁化に変動が生じにくく、固着層全体の磁化ベクトルを安定させることができる。
なお、実施の形態1においては、バイアス部4を所定の位置に予め固着する場合について説明したが、バイアス部4を移動させる手段をさらに備えることで、さまざまな外部磁界Hexの検出が可能となる。
この発明の実施の形態1によれば、バイアス部が外部磁界と同方向のバイアス磁界を印加するので、磁気抵抗効果素子に印加される外部磁界は、バイアス部と打消し合う。そのため、磁気抵抗効果素子には、実質的にバイアス部から印加されるバイアス磁界を加算または減算した外部磁界が印加される。よって、磁気抵抗効果素子の外部磁界に対する抵抗値の特性をバイアス磁界分だけシフトさせることができるため、最適なバイアス磁界を設定することで、外部磁界の変動範囲に応じて、検出範囲を所望の領域にシフトする磁界検出装置を実現できる。
[実施の形態2]
上述の実施の形態1においては、外部磁界と平行になるようにバイアス磁界を印加する構成について説明した。一方、実施の形態2においては、外部磁界と直交するようにバイアス磁界を印加する構成について説明する。
図12は、この発明の実施の形態2に従う磁界検出装置200の要部を示す図である。
図12(a)は、磁界検出装置200の斜方図である。
図12(b)は、磁界検出装置200の平面図である。
図12(a)を参照して、磁界検出装置200は、基板32上に形成される磁気抵抗効果素子2と、磁気抵抗効果素子2と対向して配置されるバイアス部4とからなる。そして、磁界検出装置200においては、バイアス部4は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2の中心軸と一致するように配置される。そして、磁界検出装置200は、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線と直交する方向において、その向きおよびその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。
図12(b)を参照して、バイアス部4は、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線に沿って、磁気抵抗効果素子2からバイアス部4に向けてバイアス磁界Hbを生じる。
磁気抵抗効果素子2は、固着層の磁化ベクトル40と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。また、磁気抵抗効果素子2において、固着層の磁化ベクトル40は、バイアス部4の中心軸と磁気抵抗効果素子2の中心軸とを結ぶ線と直交する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42は、全体として見ると、外部磁界Hexを受けて、固着層の磁化ベクトル40と直交する向きから固着層の磁化ベクトル40と平行する向きへ回転する。
上述のように、磁気抵抗効果素子2には、バイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexが印加される。ここで、バイアス磁界Hbは、磁気抵抗効果素子2における自由層の磁化ベクトル42をバイアス部4の向きへ保持しようと機能する。すなわち、自由層の磁化ベクトル42は、バイアス磁界Hbによりその向きの変化を妨げされられるので、外部磁界Hexに対する自由層の磁化ベクトル42の応答性(感度)が低下する。
したがって、外部磁界Hexに対する磁気抵抗効果素子2の抵抗値の特性は、その変化量がバイアス磁界Hbに応じて緩やかになる。
図13は、磁界検出装置200における外部磁界Hexと抵抗値Rとの関係を示す模式図である。
図13を参照して、磁気抵抗効果素子2は、バイアス部4からのバイアス磁界Hbが存在しない場合において、−Hk〜Hk(Hk:飽和磁界)の範囲内で線形領域を有する。一方、バイアス部4からバイアス磁界Hbを印加すると、磁気抵抗効果素子2の線形領域は、−Hk’〜Hk’(Hk’:バイアス磁界Hbを受けた場合における飽和磁界)へ拡大する。
実施の形態1と同様に、外部磁界Hexの大きさを測定する場合には、磁気抵抗効果素子2が線形領域となる範囲が測定可能範囲となる。そのため、バイアス磁界Hbを印加することで、磁界検出装置200の測定可能範囲は、Hk’/Hk倍だけ拡大する。
上述のように、測定対象の外部磁界Hexの変動量に応じて、適切なバイアス磁界Hbを選択することで、磁界検出装置200は、その測定範囲を拡大させ、より広い範囲の外部磁界Hexを検出することができる。
図14は、図7に示すSmCo磁石をバイアス部4として用いた場合における、外部磁界Hexと抵抗値Rとの関係を示す一例である。なお、図14においては、図7に示すバイアス部4と磁気抵抗効果素子2との離隔距離を5.6(mm)とする。
図14を参照して、バイアス磁界Hbを印加しない場合においては、外部磁界Hexが約±10×103/4π(A/m)の範囲内において線形領域を生じる。一方、バイアス磁界Hbを印加すると、外部磁界Hexが約±20×103/4π(A/m)の範囲内において線形領域を生じる。
すなわち、バイアス磁界Hbにより外部磁界Hexに対する抵抗値Rの感度が低下し、外部磁界Hexの検出可能範囲が拡大することが解る。
その他の点については、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
この発明の実施の形態2によれば、バイアス部が磁気抵抗効果素子の固着層の磁化方向と直交する方向のバイアス磁界を印加するので、磁気抵抗効果素子の自由層における磁化ベクトルを固着層の磁化方向と直交する方向に維持しようとする。そのため、磁気抵抗効果素子の自由層における磁化ベクトルは、外部磁界を受けても、固着層の磁化方向に回転しにくくなり、外部磁化に対する感度が低下する。よって、磁気抵抗効果素子の外部磁界に対する抵抗値の検出感度を鈍化させることができるため、最適なバイアス磁界を設定することで、外部磁界の変動範囲に応じて、検出範囲を所望の幅に拡大する磁界検出装置を実現できる。
[実施の形態3]
上述の実施の形態1および2においては、外部磁界と平行または直交するようにバイアス磁界を印加する構成について説明した。一方、実施の形態3においては、外部磁界と平行する成分とおよび外部磁界と直交する成分が同時に生じるようにバイアス磁界を印加する構成について説明する。
図15は、この発明の実施の形態3に従う磁界検出装置300の要部を示す図である。
図15(a)は、磁界検出装置300の斜方図である。
図15(b)は、磁界検出装置300の平面図である。
図15(a)を参照して、磁界検出装置300は、基板32上に形成される磁気抵抗効果素子2と、磁気抵抗効果素子2と対向して配置されるバイアス部4とからなる。
図15(b)を参照して、バイアス部4は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2の中心軸と平行で、かつ、所定の間隔だけ離して配置される。そして、磁気抵抗効果素子2は、固着層の磁化ベクトル40と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。
図16は、磁界検出装置300における磁気抵抗効果素子2へ印加されるバイアス磁界Hbを説明するための図である。
図16を参照して、磁気抵抗効果素子2の中心軸は、バイアス部4の中心軸から所定の間隔だけ離れているので、磁気抵抗効果素子2には、その中心軸に対して所定の角度をもつバイアス磁界Hbが印加される。ここで、磁気抵抗効果素子2の中心軸を基準とし、バイアス磁界Hbを互いに直交する平行成分Hb1および直交成分Hb2に分解する。
平行成分Hb1は、磁気抵抗効果素子2の中心軸と平行であり、かつ、外部磁界Hexとも平行である。また、直交成分Hb2は、磁気抵抗効果素子2の中心軸と直交し、かつ、外部磁界Hexとも直交する。
図15(b)および図16を参照して、磁界検出装置300における磁気抵抗効果素子2の固着層の磁化ベクトル40は、外部磁界Hexと平行するため、バイアス磁界Hbの平行成分Hb1は、外部磁界Hexと平行し、バイアス磁界Hbの直交成分Hb2は、外部磁界Hexと直行する。
すなわち、外部磁界Hex、バイアス磁界の平行成分Hb1および磁気抵抗効果素子2の固着層の磁化ベクトル40が互いに平行であるため、バイアス磁界の平行成分Hb1による効果は、上述した実施の形態1に従う磁界検出装置100におけるバイアス磁界による効果と等価である。
一方、外部磁界Hexおよび磁気抵抗効果素子2の固着層の磁化ベクトル40が平行であり、かつ、バイアス磁界の平行成分Hb1がそれぞれ外部磁界Hexおよび磁気抵抗効果素子2の固着層の磁化ベクトル40と直交するため、バイアス磁界の直交成分Hb2による効果は、上述した実施の形態2に従う磁界検出装置200におけるバイアス磁界による効果と等価である。
したがって、磁界検出装置300におけるバイアス磁界Hbによる検出特性の変化は、バイアス磁界の平行成分Hb1による検出範囲のシフトおよびバイアス磁界の直交成分Hb2による検出範囲の拡大を合成したものとなる。
図17は、磁気抵抗効果素子2に対するバイアス部4の配置を示す一例である。なお、図17においては、図7に示すSmCo磁石をバイアス部4として用いる。
図17を参照して、磁気抵抗効果素子2の中心軸上において、バイアス部4の端面と磁気抵抗効果素子2の中心点との距離が2.5(mm)、かつ、磁気抵抗効果素子2の中心軸とバイアス部4の中心軸との距離が0.25(mm)となるようにバイアス部4を配置する。すると、磁気抵抗効果素子2における、バイアス磁界Hbの平行成分Hb1は、55×103/4π(A/m)となり、バイアス磁界Hbの直交成分Hb2は、7×103/4π(A/m)となる。
したがって、磁界検出装置300における外部磁界Hexと抵抗値Rとの関係は、図8に示す実施の形態1に従う磁界検出装置100の検出特性と、図14に示す実施の形態2に従う磁界検出装置200の検出特性を合成したものとなる。すなわち、図8に示すように、磁界検出装置300の検出範囲は、55×103/4π(A/m)だけシフトし、かつ、図14に示すように、磁界検出装置300の検出範囲は、±10×103/4π(A/m)から±20×103/4π(A/m)へ拡大する。よって、これらの検出特性を合成すると、バイアス磁界Hbを印加することで、磁界検出装置300の検出範囲を−10×103/4π(A/m)〜10×103/4π(A/m)から33×103/4π(A/m)〜75×103/4π(A/m)へ変化させることができる。
上述のように、磁気抵抗効果素子2の中心軸に対して所定の角度をもつバイアス磁界Hbを印加することで、磁界検出装置300の検出範囲を自在に変更させることができる。
その他の点については、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
この発明の実施の形態3によれば、バイアス部が外部磁界と同方向の成分および磁気抵抗効果素子の固着層の磁化方向と直交する成分を含むバイアス磁界を印加するので、実施の形態1および実施の形態2における効果を同時に発揮することができる。すなわち、最適なバイアス磁界を設定することで、外部磁界の変動範囲に応じて、検出範囲を所望の領域にシフトし、かつ、検出範囲を所望の幅に拡大する磁界検出装置を実現できる。
[実施の形態4]
上述の実施の形態1〜3においては、自由層を構成する強磁性体のうち、外部磁界により磁化される比率が外部磁界の大きさに略比例する非飽和状態を利用して、外部磁界を検出する磁界検出装置について説明した。一方、実施の形態4においては、自由層を構成する強磁性体のほぼすべてが外部磁界により磁化されている飽和状態を利用して、外部磁界を検出する磁界検出装置について説明する。
図18は、この発明の実施の形態4に従う磁界検出装置400の概略構成図である。
図18を参照して、磁界検出装置400は、磁気抵抗効果素子2.1,2.2と、バイアス部4.1,4.2と、検出回路50とからなる。
磁気抵抗効果素子2.1および2.2は、それぞれ外部磁界およびバイアス磁界を受け、その抵抗値を変化させる。その他については、実施の形態1における磁気抵抗効果素子2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
検出回路50は、磁気抵抗効果素子2.1および2.2と接続され、それぞれの抵抗値をブリッジ回路により差動演算し、その抵抗値の変化を検出する。そして、検出回路50は、検出した抵抗値の変化を検出信号として出力する。
バイアス部4.1および4.2は、それぞれ、磁気抵抗効果素子2.1および2.2に対してそれぞれの自由層を飽和状態とするだけの大きさをもつバイアス磁界を印加する。その他については、実施の形態1におけるバイアス部4と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
図19は、この発明の実施の形態4に従う磁界検出装置400の要部を示す図である。
図19(a)は、磁界検出装置400の斜方図である。
図19(b)は、磁界検出装置400の平面図である。
図19(a)を参照して、磁界検出装置400は、基板32上に形成される磁気抵抗効果素子2.1および2.2と、磁気抵抗効果素子2.1および2.2とそれぞれ対向して配置されるバイアス部4.1および4.2とからなる。そして、磁界検出装置400においては、バイアス部4.1は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と一致するように配置され、かつ、バイアス部4.2は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2.2の中心軸と一致するように配置される。そして、磁気抵抗効果素子2.1は、固着層の磁化ベクトル40.1と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出し、磁気抵抗効果素子2.2は、固着層の磁化ベクトル40.2と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。なお、外部磁界Hexは、互いに共通である。
また、バイアス部4.1および4.2は互いに同一であり、かつ、磁気抵抗効果素子2.1および2.2は互いに同一である。そのため、磁気抵抗効果素子2.1および2.2がそれぞれ外部磁界Hexを受けて生じる抵抗値変化は、略一致する。
図19(b)を参照して、バイアス部4.1は、バイアス部4.1の中心軸と磁気抵抗効果素子2.1の中心軸とを結ぶ線に沿って、磁気抵抗効果素子2.1からバイアス部4.1に向けてバイアス磁界Hbを生じる。また同様に、バイアス部4.2は、バイアス部4.2の中心軸と磁気抵抗効果素子2.2の中心軸とを結ぶ線に沿って、磁気抵抗効果素子2.2からバイアス部4.2に向けてバイアス磁界Hbを生じる。
一方、磁気抵抗効果素子2.1において、固着層の磁化ベクトル40.1は、バイアス部4.1の中心軸と磁気抵抗効果素子2.1の中心軸とを結ぶ線と直交する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.1は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。また同様に、固着層の磁化ベクトル40.2は、バイアス部4.2の中心軸と磁気抵抗効果素子2.2の中心軸とを結ぶ線と直交する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.2は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。ここで、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の自由層は、そのほぼすべてが磁化ベクトル42.1および42.2の向きに磁化されており、飽和状態となる。
図20は、検出回路50の概略構成図である。
図20を参照して、検出回路50は、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の抵抗値変化をブリッジ回路で検出し、その検出電圧に応じた検出信号を出力する。そして、検出回路50は、プリアンプ54と、参照抵抗52.1,52.2とからなる。
参照抵抗52.1および52.2は、互いに同一の抵抗値をもつ抵抗器である。なお、参照抵抗52.1および52.2を自由層の磁化方向を固着した磁気抵抗効果素子で構成することもできる。
参照抵抗52.1の一端は、磁気抵抗効果素子2.1の一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子2.1の他端には電源電圧Vccが与えられ、参照抵抗52.1の他端には接地電圧が与えられる。
参照抵抗52.2の一端は、磁気抵抗効果素子2.2の一端と接続され、さらに、参照抵抗52.2の他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子2.2の他端には接地電圧が与えられる。
プリアンプ54は、参照抵抗52.1と磁気抵抗効果素子2.1との接続点における電位と、参照抵抗52.2と磁気抵抗効果素子2.2との接続点における電位との電位差を所定の増幅率をもって増幅して出力する。
上述のように、検出回路50は、磁気抵抗効果素子2.1および2.2を対辺とするブリッジ回路を構成し、その電位差を検出するので、1つの磁気抵抗効果素子の抵抗値を検出する場合に比較して、その検出感度を約2倍にすることができる。また、同相ノイズの影響を軽減できる。
図21は、自由層が飽和状態である場合の磁気抵抗効果素子2.1および2.2の抵抗値の変化を説明するための図である。
図21を参照して、抵抗値Rは、固着層の磁化ベクトル40と自由層の磁化ベクトル42とのなす角度θとして、(1)式で表される。
R=Rm+R0cosθ・・・(1)
すなわち、自由層が飽和状態であれば、外部磁界の大きさに関わらずその抵抗値は固着層の磁化ベクトル40と自由層の磁化ベクトル42とのなす角度で決定される。そこで、磁界検出装置400においては、自由層を飽和状態に維持しながら、外部磁界により回転する自由層の磁化ベクトル42と固着層の磁化ベクトル40とのなす角度θに応じて変化する抵抗値Rを検出する。
図22は、磁界検出装置400における磁気抵抗効果素子2.1へ印加されるバイアス磁界Hbを説明するための図である。
図22を参照して、バイアス部4.1の中心軸は、磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と一致するので、磁気抵抗効果素子2.1には、その中心軸に対して平行なバイアス磁界Hbが印加される。また、磁気抵抗効果素子2.1には、バイアス部4.1の中心軸と磁気抵抗効果素子2.1の中心軸とを結ぶ線と直交する方向において、その大きさを変化させる外部磁界Hexが印加される。
したがって、磁気抵抗効果素子2.1には、互いに直交するバイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexが印加されるため、これらを合成した合成磁界Hと、固着層の磁化ベクトル40.1とのなす角度θは、(2)式で表させる。
θ=tan−1(Hb/Hex)・・・(2)
(2)式を(1)式に代入すると、磁気抵抗効果素子2.1の抵抗値Rは、(3)式で表される。
R=Rm+R0cos(tan−1(Hb/Hex))・・・(3)
(3)式から、磁気抵抗効果素子2.1の抵抗値Rは、外部磁界Hexを含む関数で表されるので、磁界検出装置400は、外部磁界Hexに応じた抵抗値Rの変化を検出することができる。
また、磁気抵抗効果素子2.2は、磁気抵抗効果素子2.1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
ところで、(3)式で表されるように、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の抵抗値の変化率(感度)は、外部磁界Hexの大きさとバイアス磁界Hbの大きさとの相対関係で決まることがわかる。
図23は、磁界検出装置400の感度の変化を説明するための図である。
図23(a)は、バイアス磁界Hbが外部磁界Hexに対して相対的に大きい場合である。
図23(b)は、図23(a)に示すバイアス磁界より小さいバイアス磁界Hbが印加される場合である。
図23(a)を参照して、磁気抵抗効果素子2.1,2.2へ外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbが印加され、その合成磁界Hと固着層の磁化ベクトルとのなす角度をαとする。そして、外部磁界HexがΔHexだけ増加した場合の合成磁界H’と固着層の磁化ベクトルとのなす角度をα’とする。
図23(b)を参照して、図23(a)における外部磁界と同一の外部磁界Hexおよび図23(a)におけるバイアス磁界より小さいバイアス磁界Hbが磁気抵抗効果素子2.1,2.2へ印加され、その合成磁界Hと固着層の磁化ベクトルとのなす角度をβとする。そして、図23(a)と同一のΔHexだけ外部磁界Hexが増加した場合の合成磁界H’と固着層の磁化ベクトルとのなす角度をβ’とする。
図23(a)および図23(b)を参照して、角度βから角度β’への変化分は、角度αから角度α’への変化分より大きく(β−β’>α−α’)、これは、磁界検出装置400の図23(b)における感度は、図23(a)における感度より高いことを意味する。すなわち、外部磁界Hexに同一の外部磁界の変化ΔHexが生じたとしても、バイアス磁界Hbとの関係により、磁界検出装置400の感度の調整が可能であることを意味している。
したがって、外部磁界Hexの変動範囲に応じて、バイアス磁界Hbを設定することで、磁界検出装置400の感度を調整し、適切な検出範囲を実現することができる。
この発明の実施の形態4によれば、バイアス部は、外部磁界と直交するようにバイアス磁界を印加し、磁気抵抗効果素子は、外部磁界とバイアス磁界との合成磁界を受ける。そして、磁気抵抗効果素子の自由層は、合成磁界を受けて飽和し、合成磁界の方向に磁化ベクトルを生じため、外部磁界に対する抵抗値の特性は、外部磁界に対する合成磁界の変位に応じて変化する。よって、外部磁界に対する抵抗値の特性は、バイアス磁界の大きさと外部磁界の大きさとの相対関係でその検出感度が変化するため、外部磁界の変動範囲に応じて、検出範囲を所望の幅に拡大する磁界検出装置を実現できる。
また、この発明の実施の形態4によれば、バイアス部が外部磁界と直交する方向にバイアス磁界を印加するので、合成磁界を構成する成分を互いに独立の変数として表すことができる。よって、外部磁界の大きさに関わらず、バイアス部との相対比を一定に保つことができるので、検出範囲内における抵抗値の検出特性を線形化することができる。
また、この発明の実施の形態4によれば、2つの磁気抵抗効果素子を用いて、その抵抗値の変化をブリッジ回路により検出するので、基準電流や基準電圧などが不要となり、かつ、その検出感度を2倍にできるので、より高精度に外部磁界を検出できる。さらに、同相のノイズが互いに相殺されるので、検出誤差を抑制できる。
[実施の形態5]
上述の実施の形態4においては、磁気抵抗効果素子の固着層の磁化方向と同方向の外部磁界を検出する構成について説明した。一方、実施の形態5においては、磁気抵抗効果素子の固着層の磁化方向と直交する外部磁界を検出する構成について説明する。
この発明の実施の形態5に従う磁界検出装置500の概略構成図は、図18に示す実施の形態4に従う磁界検出装置400と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
図24は、この発明の実施の形態5に従う磁界検出装置500の要部を示す図である。
図24(a)は、磁界検出装置500の斜方図である。
図24(b)は、磁界検出装置500の平面図である。
図24(a)を参照して、磁界検出装置500は、基板32上に形成される磁気抵抗効果素子2.1および2.2と、磁気抵抗効果素子2.1および2.2とそれぞれ対向して配置されるバイアス部4.1および4.2とからなる。
図24(b)を参照して、バイアス部4.1は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と平行で、かつ、所定の間隔だけ離して配置される。同様に、バイアス部4.2は、その中心軸が磁気抵抗効果素子2.2の中心軸と平行で、かつ、所定の間隔だけ離して配置される。そして、磁気抵抗効果素子2.1および2.2は、それぞれ固着層の磁化ベクトル40.1および40.2と同方向にその大きさを変化させる外部磁界Hexを検出する。なお、外部磁界Hexは、互いに共通である。
磁気抵抗効果素子2.1において、固着層の磁化ベクトル40.1は、バイアス部4.1の中心軸および磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と直交する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.1は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。同様に、固着層の磁化ベクトル40.2は、バイアス部4.2の中心軸および磁気抵抗効果素子2.2の中心軸と直交する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.2は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。ここで、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の自由層は、そのほぼすべてが磁化ベクトル42.1および42.2の向きに磁化されており、飽和状態となる。
また、バイアス部4.1および4.2は互いに同一であり、かつ、磁気抵抗効果素子2.1および2.2は互いに同一である。そのため、磁気抵抗効果素子2.1および2.2がそれぞれ外部磁界Hexを受けて生じる抵抗値変化は、ほぼ同一であるとみなすことができる。
図25は、磁界検出装置500における磁気抵抗効果素子2.1へ印加されるバイアス磁界Hbを説明するための図である。
図25を参照して、磁気抵抗効果素子2.1の中心軸は、バイアス部4.1の中心軸から所定の間隔だけ離れているので、磁気抵抗効果素子2.1には、その中心軸に対して所定の角度をもつバイアス磁界Hbが印加される。ここで、磁気抵抗効果素子2.1の中心軸を基準とし、バイアス磁界Hbを互いに直交する平行成分Hb1および直交成分Hb2に分解する。
平行成分Hb1は、磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と平行であり、かつ、外部磁界Hexとも平行である。また、直交成分Hb2は、磁気抵抗効果素子2.1の中心軸と直交し、かつ、外部磁界Hexとも直交する。
したがって、バイアス磁界Hbと外部磁界Hexとの合成磁界Hは、バイアス磁界Hbの平行成分Hb1と外部磁界Hexとからなる成分およびバイアス磁界Hbの直交成分Hb2からなる成分で構成される。そのため、自由層の磁化ベクトル42.1(合成磁界H)と固着層の磁化ベクトル40.1とのなす角度θは、(4)式で表させる。
θ=tan−1((Hb1+Hex)/Hb2)・・・(4)
(4)式を実施の形態4における(1)式に代入すると、磁気抵抗効果素子2.1の抵抗値Rは、(5)式で表される。
R=Rm+R0cos(tan−1((Hb1+Hex)/Hb2))・・・(5)
(5)式から、磁気抵抗効果素子2.1の抵抗値Rは、外部磁界Hexを含む関数で表されるので、磁界検出装置500は、外部磁界Hexに応じた抵抗値Rの変化を検出することができる。
また、磁気抵抗効果素子2.2は、磁気抵抗効果素子2.1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
さらに、(5)式で表されるように、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の抵抗値の変化率(感度)は、バイアス磁界Hbの平行成分Hb1および外部磁界Hexの大きさと、バイアス磁界Hbの直交成分Hb2の大きさとの相対関係で決まることがわかる。したがって、磁気抵抗効果素子2.1,2.2へ印加するバイアス磁界Hbの大きさおよび向きを適切に設定することで、磁界検出装置500の検出範囲を調整することができる。
すなわち、磁気抵抗効果素子2.1,2.2に対するバイアス部4.1,4.2の相対的な位置を適切に設定することで、磁界検出装置500の検出範囲を任意に変更することができる。
なお、磁界検出装置500においては、ほぼ同一の外部磁界Hexをそれぞれ磁気抵抗効果素子2.1および2.2へ印加することで、外部磁界Hexを検出する。そこで、以下のような電流検出回路に応用することができる。
図26は、実施の形態5に従う磁界検出装置500を応用した電流検出回路の要部を示す図である。
図26を参照して、磁気抵抗効果素子2.1および2.2の上部に検出対象の電流が流れる電路69が配置される。検出対象の電流が電路69を流れることで、電路69の周方向に電流磁界が生じ、その大きさは電路69に沿って一様である。この電流磁界は、検出対象の電流の大きさに比例するので、電流磁界を検出することで、電流の大きさを測定できる。
したがって、上述したように、磁界検出装置500は、検出対象の電流が電路69を流れることにより生じる外部磁界Hexを検出し、その検出した外部磁界Hexに基づいて、電流を導出する。
この発明の実施の形態5によれば、磁気抵抗効果素子は、外部磁界とバイアス磁界との合成磁界を受ける。そして、磁気抵抗効果素子の自由層は、合成磁界を受けて飽和し、合成磁界の方向に磁化ベクトルを生じため、外部磁界に対する抵抗値の特性は、外部磁界に対する合成磁界の変位に応じて変化する。よって、外部磁界に対する抵抗値の特性は、バイアス磁界の大きさと外部磁界の大きさとの相対関係でその検出感度が変化するため、最適なバイアス磁界を設定することで、外部磁界の変動範囲に応じて、検出範囲を所望の幅に拡大する磁界検出装置を実現できる。
[実施の形態6]
実施の形態4および5においては、複数の磁気抵抗効果素子に対して、それぞれ対応するバイアス部がバイアス磁界を印加する構成について説明した。一方、実施の形態6においては、複数の磁気抵抗効果素子に対して、共通のバイアス部がバイアス磁界を印加する構成について説明する。
図27は、この発明の実施の形態6に従う磁界検出装置600の概略構成図である。
図27を参照して、磁界検出装置600は、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1b,2.2a,2.2bと、バイアス部4と、検出回路56とからなる。
磁気抵抗効果素子2.1a,2.1b,2.2a,2.2bは、互いに同一の素子であり、磁気抵抗効果素子2.1aおよび2.1bは、互いに近接して配置され、また、磁気抵抗効果素子2.2aおよび2.2bは、互いに近接して配置される。そのため、磁気抵抗効果素子2.1aおよび2.1bが外部磁界およびバイアス磁界を受けて生じる抵抗値の変化は互いに等しく、また、磁気抵抗効果素子2.2aおよび2.2bが外部磁界およびバイアス磁界を受けて生じる抵抗値の変化は互いに等しい。その他については、実施の形態1における磁気抵抗効果素子2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
検出回路56は、磁気抵抗効果素子2.1aおよび2.2aの直列回路と、磁気抵抗効果素子2.1bおよび2.2bの直列回路とからなるブリッジ回路を構成し、それぞれの抵抗値を差動演算し、その抵抗値の変化を検出する。そして、検出回路56は、検出した抵抗値の変化を検出信号として出力する。
バイアス部4は、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1b,2.2a,2.2bに対して、それぞれの自由層を飽和状態とするだけの大きさをもつバイアス磁界を印加する。その他については、実施の形態1におけるバイアス部4と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
図28は、この発明の実施の形態6に従う磁界検出装置600の要部を示す図である。
図28を参照して、磁界検出装置600は、基板32上に形成されるバイアス部4と、バイアス部4の中心軸に対して対称となるように配置される磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bとからなる。
そして、磁界検出装置600は、バイアス部4の中心軸と直交する方向に直線運動する移動体90に付加される磁界発生部92の変位を検出する。すなわち、磁界検出装置600は、外部磁界Hexを発生する磁界発生部92の位置に応じて、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bが受ける外部磁界と、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bが受ける外部磁界との差により生じる抵抗値の差に基づいて、磁界発生部92の変位を検出する。
図29は、検出回路56の概略構成図である。
図29を参照して、検出回路56は、磁気抵抗効果素子2.1a,2.2aおよび2.2a,2.2bの抵抗値変化をブリッジ回路で検出し、その検出電圧に応じた検出信号を出力する。そして、検出回路56は、プリアンプ54を含む。
磁気抵抗効果素子2.1aの一端は、磁気抵抗効果素子2.2aの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子2.1aの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子2.2aの他端には接地電圧が与えられる。
磁気抵抗効果素子2.1bの一端は、磁気抵抗効果素子2.2bの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子2.2bの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子2.1bの他端には接地電圧が与えられる。
プリアンプ54は、磁気抵抗効果素子2.1aと磁気抵抗効果素子2.2aとの接続点における電位と、磁気抵抗効果素子2.2bと磁気抵抗効果素子2.2bとの接続点における電位との電位差を所定の増幅率をもって増幅して出力する。
上述のように、検出回路56は、磁気抵抗効果素子2.1aおよび2.1bを第1の対辺とし、磁気抵抗効果素子2.2aおよび2.2bを第1の対辺とするブリッジ回路を構成し、その電位差を検出するので、参照抵抗を必要とせず、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bに対する磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bの抵抗値の変化を検出することができる。
図30は、磁界検出装置600における磁気抵抗効果素子2.1a,2.1b,2.2a,2.2bへ印加される外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbを説明するための図である。
図30を参照して、磁気抵抗効果素子2.1aと磁気抵抗効果素子2.1bとの距離は、バイアス部4との距離および磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bとの距離に比較して十分に小さく、磁気抵抗効果素子2.1aおよび2.1bに対するバイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexによる影響は等価であるとみなすことができる。また、同様に、磁気抵抗効果素子2.2aおよび2.2bに対するバイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexによる影響についても等価であるとみなすことができる。したがって、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bをそれぞれ互いに等価な磁気抵抗効果素子として扱うことができる。
磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.1は、バイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.1は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。また同様に、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.2は、バイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.2は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。ここで、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bの自由層は、そのほぼすべてが磁化ベクトル42.1および42.2の向きに磁化されており、飽和状態となる。
また、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bは、バイアス部4の中心軸に対して対称となるように配置される。そのため、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bへ印加されるバイアス磁界Hbは、バイアス部4の中心軸に対して対称となる。そのため、外部磁界Hexが印加されなければ、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bにおける固着層の磁化ベクトル40.1と自由層の磁化ベクトル42.1とのなす角度は、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bにおける固着層の磁化ベクトル40.2と自由層の磁化ベクトル42.2とのなす角度と一致する。
よって、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bが生じる抵抗値は、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bが生じる抵抗値とほぼ同一となり、ブリッジ回路の出力電圧はほぼゼロになる。
次に、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bに外部磁界Hexが印加されると、実施の形態4に従う磁界検出装置400および実施の形態5に従う磁界検出装置500と同様に、自由層の磁化ベクトル42.1および42.2の方向が変化する。そのため、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bが生じる抵抗値も変化する。
再度、図28を参照して、直線運動する移動体90に付加される磁界発生部92の変位に応じて、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bには、異なる大きさの外部磁界Hexが印加される。したがって、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bの抵抗値に差が生じる。
再度、図30を参照して、たとえば、磁界発生部92が磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bに近接すると、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bにより大きな外部磁界が印加される。すると、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bの自由層の磁化ベクトル42.1は、外部磁界Hexにより磁化方向が変化し、固着層の磁化ベクトル40.1とのなす角度は、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bの自由層の磁化ベクトル42.2と固着層の磁化ベクトル40.2とのなす角度に比較して、小さくなる。
さらに、磁界発生部92が移動し、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bに近接すると、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bにより大きな外部磁界が印加される。すると、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bの自由層の磁化ベクトル42.2は、外部磁界Hexにより磁化方向が変化し、固着層の磁化ベクトル40.2とのなす角度は、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bの自由層の磁化ベクトル42.1と固着層の磁化ベクトル40.1とのなす角度に比較して、小さくなる。
図31は、磁界発生部92の変位と磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bの抵抗値との関係を示す図である。なお、磁界発生部92の変位は、図28において、バイアス部4の中心軸に対して紙面右側を正としている。
図31を参照して、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bの抵抗値は、磁界発生部92の変位が負側、すなわち磁界発生部92が磁気抵抗効果素子2.1a,2.1b側に移動した場合において、最小値をとる。一方、磁気抵抗効果素子2.2a,2.2bの抵抗値は、磁界発生部92の変位が正側、すなわち磁界発生部92が磁気抵抗効果素子2.2a,2.2b側に移動した場合において、最小値をとる。
したがって、磁界発生部92の変位に応じて、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bが発生する抵抗値の特性は異なるので、検出回路56は、ブリッジ回路を用いて、その抵抗値の差を検出する。
図32は、磁界発生部92の変位と検出回路56から出力される検出信号との関係を示す図である。なお、離隔距離dは、図28において、磁界発生部92から磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bまでの距離である。
図32を参照して、磁界発生部92の変位がゼロ、すなわち磁界発生部92がバイアス部4の中心軸上に位置すると、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bの抵抗値が互いに一致するので、ブリッジ回路が平衡状態となり、検出信号はゼロになる。そして、検出信号は、磁界発生部92の変位に応じて、その値を増加または減少させる。
また、離隔距離dが小さいほど、検出信号の変化量(振幅)は大きくなる。これは、磁界発生部92と磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bとが近接するほど、磁界発生部92から生じる外部磁界Hexの偏りが大きくなるからである。
上述のように、磁界検出装置600は、バイアス部4の中心軸と直交する方向に直線運動する移動体90に付加される磁界発生部92の変位を検出できる。なお、磁界発生部92の変位だけではなく、時間領域における変位の変化を導出することで、その角速度を検出することもできる。
なお、磁界発生部92は、移動体90に取り付けられた磁石で構成されてもよいし、移動体90の一部が所望の向きに着磁されたものでもよく、さらに、磁界検出装置600の時間検出部の側に凸となるように移動体90に設けられた歯車状の突起部でもよい。
また、磁界検出装置600は、直線運動する移動体90だけではなく、たとえば、バイアス部4の中心軸の延長線上に回転軸をもち、回転運動する移動体を検出することもできる。
ところで、上述のように、外部磁界Hexが印加されない状態、またはバイアス部4の中心軸の延長線上に磁界発生部92が存在する状態において、ブリッジ回路を平衡状態とするため、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bがそれぞれ発生する抵抗値は互いに一致することが望ましい。そのため、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bに対して、バイアス部4の位置を調整することが必要となる。
図33は、バイアス部4の位置を調整するための検出回路58の概略構成図である。
図33を参照して、検出回路58は、図29に示す検出回路56において、パッド部59.1,59.2,59.3を加えたものである。
パッド部59.1および59.2は、それぞれプリアンプ54に入力される電位を測定するための端子である。
パッド部59.3は、プリアンプ54から出力される電位を測定するための端子である。
バイアス部4の位置を調整する場合には、外部磁界が印加されない状態において、パッド部59.1および59.2を介してプリアンプ54に入力される2つの電圧(測定電圧1および2)を連続測定しながらバイアス部4を移動させ、その電圧が互いに一致する位置に決定する。
または、パッド部59.3を介してプリアンプ54から出力される電圧(測定電圧3)を連続測定しながらバイアス部4を移動させ、その電圧がゼロとなる位置に決定する。
なお、バイアス部4を移動させる手段は、どのような機構であってもよいが、高い検出精度を実現するため、磁気抵抗効果素子2.1a,2.1bおよび2.2a,2.2bのサイズに応じて、移動幅が十分に小さいことが望ましい。
この発明の実施の形態6によれば、互いに異なる2つの位置に配置されたそれぞれ2つの磁気抵抗効果素子における抵抗値の変化をブリッジ回路を用いて検出し、その抵抗値の時間的な変化に基づいて、移動体に付加された磁界発生部の位置を検出する。よって、移動体の位置を非接触で検出する磁界検出装置を実現できる。
また、この発明の実施の形態6によれば、外部磁界が印加されていない状態において、ブリッジ回路の電位を測定しながらバイアス部を移動させるので、ブリッジ回路が平衡するバイアス部の位置を決定できる。よって、検出誤差が少なく、高精度な検出が可能な磁界件検出装置を実現できる。
[実施の形態7]
実施の形態6においては、移動体の変位を検出できる構成について説明した。一方、実施の形態7においては、移動体の変位量およびその変位方向を検出する構成について説明する。
図34は、この発明の実施の形態7に従う磁界検出装置700の概略構成図である。
図34を参照して、磁界検出装置700は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2b,3.3a,3.3b,3.4a,3.4bと、バイアス部4と、検出回路70とからなる。
磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2bは、互いに同一の素子であり、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.1bは、互いに近接して配置され、また、磁気抵抗効果素子3.2aおよび3.2bは、互いに近接して配置される。そのため、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.1bが外部磁界およびバイアス磁界を受けて生じる抵抗値の変化は互いに等しく、また、磁気抵抗効果素子3.2aおよび3.2bが外部磁界およびバイアス磁界を受けて生じる抵抗値の変化は互いに等しい。
磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bは、互いに同一の素子である。そして、磁気抵抗効果素子3.3aおよび3.3bは、互いに近接して配置され、磁気抵抗効果素子3.4aおよび3.4bは、互いに近接して配置される。
また、磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bは、バイアス部4から一定方向の十分大きな外部磁界を受けるので、その抵抗値を一定とする参照抵抗として機能する。
磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2b,3.3a,3.3b,3.4a,3.4bのその他については、実施の形態1における磁気抵抗効果素子2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
検出回路70は、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.2aの直列回路と、磁気抵抗効果素子3.1bおよび3.2bの直列回路とからなるブリッジ回路を構成し、それぞれの抵抗値を差動演算し、その抵抗値の変化を検出する。さらに、検出回路70は、磁気抵抗効果素子3.3aおよび3.3aの直列回路と、磁気抵抗効果素子3.3bおよび3.3bの直列回路とからなるブリッジ回路を構成し、それぞれの抵抗値を差動演算し、その抵抗値の変化を検出する。そして、検出回路70は、検出したそれらの抵抗値の変化に基づいて、回転角度および回転方向を演算し、出力する。
バイアス部4は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2b,3.3a,3.3b,3.4a,3.4bに対して、バイアス磁界を印加する。そして、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2b,3.3a,3.3b,3.4a,3.4bは、バイアス部4から受けるバイアス磁界により、それぞれの自由層が飽和状態になる。その他については、実施の形態1におけるバイアス部4と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
図35は、この発明の実施の形態7に従う磁界検出装置700の要部を示す図である。
図35を参照して、磁界検出装置700は、基板32の上方に所定の距離だけ離れて配置されるバイアス部4と、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸に対して対称となるように配置される磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび磁気抵抗効果素子3.2a,3.2bと、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸上に沿って配置される磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bとからなる。そして、磁界検出装置700は、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸の延長線上にある回転軸を中心として回転運動する移動体96の回転角度および回転方向を検出する。
すなわち、磁界検出装置700は、外部磁界Hexを発生する磁界発生部98の位置に応じて、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bが受ける外部磁界と、磁気抵抗効果素子3.2a,3.2bが受ける外部磁界との差により生じる抵抗値の差に基づいて、磁界発生部98の回転角度を検出する。また、磁界検出装置700は、外部磁界Hexを発生する磁界発生部98の位置に応じて、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bが受ける外部磁界により生じる抵抗値と、外部磁界Hexに関わらず一定となる磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bの抵抗値とを差動演算し、磁界発生部98の回転角度を検出する。さらに、磁界検出装置700は、2つの検出結果に基づいて、磁界発生部98の回転方向を検出する。
図36は、検出回路70の概略構成図である。
図36を参照して、検出回路70は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.2aおよび3.2a,3.2bの抵抗値変化をブリッジ回路で検出し、かつ、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3aおよび3.4a,3.4bの抵抗値変化をブリッジ回路で検出し、回転角度および回転方向を出力する。そして、検出回路56は、プリアンプ74,75および演算部72を含む。
磁気抵抗効果素子3.1aの一端は、磁気抵抗効果素子3.2aの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子3.1aの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子3.2aの他端には接地電圧が与えられる。
磁気抵抗効果素子3.1bの一端は、磁気抵抗効果素子3.2bの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子3.2bの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子3.1bの他端には接地電圧が与えられる。
プリアンプ74は、磁気抵抗効果素子3.1aと磁気抵抗効果素子3.2aとの接続点における電位と、磁気抵抗効果素子3.1bと磁気抵抗効果素子3.2bとの接続点における電位との電位差を所定の増幅率をもって増幅して演算部72へ出力する。
磁気抵抗効果素子3.3aの一端は、磁気抵抗効果素子3.4aの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子3.3aの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子3.4aの他端には接地電圧が与えられる。
磁気抵抗効果素子3.3bの一端は、磁気抵抗効果素子3.4bの一端と接続され、さらに、磁気抵抗効果素子3.4bの他端には電源電圧Vccが与えられ、磁気抵抗効果素子3.3bの他端には接地電圧が与えられる。
プリアンプ75は、磁気抵抗効果素子3.3aと磁気抵抗効果素子3.4aとの接続点における電位と、磁気抵抗効果素子3.3bと磁気抵抗効果素子3.4bとの接続点における電位との電位差を所定の増幅率をもって増幅して演算部72へ出力する。
演算部72は、プリアンプ74から出力される電圧信号およびプリアンプ75から出力される電圧信号を受け、回転角度および回転方向を演算して出力する。
図37は、磁界検出装置700における磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b,3.2a,3.2b,3.3a,3.3b,3.4a,3.4bへ印加される外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbを説明するための図である。
図37を参照して、磁気抵抗効果素子3.1aと磁気抵抗効果素子3.1bとの距離は、バイアス部4との距離および移動体96との距離に比較して十分に小さく、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.1bに対するバイアス磁界Hbおよび外部磁界Hexによる影響は等価であるとみなすことができる。他の磁気抵抗効果素子についても同様であり、磁気抵抗効果素子3.2aおよび3.2b、磁気抵抗効果素子3.3aおよび3.3b、磁気抵抗効果素子3.4aおよび3.4bは、それぞれ互いに等価な磁気抵抗効果素子とみなすことができる。
磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.1は、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.1は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。また同様に、磁気抵抗効果素子3.2a,3.2bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.2は、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.2は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じた角度に向けられる。ここで、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bの自由層は、そのほぼすべてが磁化ベクトル42.1および42.2の向きに磁化されており、飽和状態となる。
また、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bは、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸に対して対称となるように配置される。そのため、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bへ印加されるバイアス磁界Hbは、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸に対して対称となる。そのため、外部磁界Hexが印加されなければ、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bにおける固着層の磁化ベクトル40.1と自由層の磁化ベクトル42.1とのなす角度は、磁気抵抗効果素子3.2a,3.2bにおける固着層の磁化ベクトル40.2と自由層の磁化ベクトル42.2とのなす角度と一致する。
次に、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bに外部磁界Hexが印加されると、自由層の磁化ベクトル42.1および42.2の方向が変化する。
したがって、検出回路70により検出される磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bからなるブリッジ回路の出力電圧は、実施の形態6に従う磁界検出装置600におけるブリッジ回路の出力電圧と同様である。
一方、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.3は、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.3は、外部磁界Hexおよびバイアス磁界Hbに応じて、その向きが反転する。また、磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bにおいて、固着層の磁化ベクトル40.4は、基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸と平行する向きに固着され、自由層の磁化ベクトル42.4は、バイアス磁界Hbの向きに固着され、外部磁界Hexの影響を受けない。
したがって、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bは、磁界発生部98の回転角度に応じて、その磁化方向を交互に反転させるため、抵抗値を大きく変化させる。一方、磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bは、外部磁界Hexの影響を受けないので、磁界発生部98の位置に関わらず一定の抵抗値をもち、参照抵抗として機能する。このように、磁気抵抗効果素子3.4a,3.4bに一定のバイアス磁界を印加し、参照抵抗とすることで、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bとブリッジ回路を構成した場合に、それぞれの抵抗値の温度依存性を打消し合うことができるため、温度要因による誤差の発生を抑制できる。
図38は、磁界発生部98の回転角度と検出回路70内における電圧信号との関係を示す図である。
図38(a)は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路から出力される電圧信号である。
図38(b)は、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bから構成されるブリッジ回路から出力される電圧信号である。
図37および図38(a)を参照して、磁界発生部98がB点、すなわち磁界発生部98が基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸上に位置すると、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bの抵抗値が互いに一致するので、ブリッジ回路が平衡状態となり、電圧信号はゼロになる。また、磁界発生部98がA点、すなわち磁界発生部98が磁気抵抗効果素子3.2a,3.2b側に位置すると、磁気抵抗効果素子3.2aおよび3.2bの抵抗値が小さくなり、電圧信号は正側に増大する。さらに、磁界発生部98がC点、すなわち磁界発生部98が磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b側に位置すると、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.1bの抵抗値が小さくなり、電圧信号は負側に減少する。上述のように、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路の電圧信号は、磁界発生部98の回転運動に伴い周期的に変動する。
図37および図38(b)を参照して、磁界発生部98がB点、すなわち磁界発生部98が基板32上に写像されるバイアス部4の中心軸上に位置すると、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bは、その自由層の磁化方向が反転するので、抵抗値が大きく変化し、電圧信号は極大値をとる。そして、磁界発生部98がA点およびC点、すなわち磁界発生部98が磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bから離れると、自由層の磁化方向を反転状態に維持できなくなるので、ブリッジ回路が平衡状態となり、電圧信号はゼロになる。
また、磁界発生部98がA点、すなわち磁界発生部98が磁気抵抗効果素子3.2a,3.2b側に位置すると、磁気抵抗効果素子3.2aおよび3.2bの抵抗値が小さくなり、電圧信号は正側に増大する。さらに、磁界発生部98がC点、すなわち磁界発生部98が磁気抵抗効果素子3.1a,3.1b側に位置すると、磁気抵抗効果素子3.1aおよび3.1bの抵抗値が小さくなり、電圧信号は負側に減少する。上述のように、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bから構成されるブリッジ回路の電圧信号は、磁界発生部98の回転運動に伴い周期的に変動する。
図38(a)および図38(b)を参照して、検出回路70の演算部72は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路の電圧信号を受け、磁界発生部98の回転角度を演算する。さらに、検出回路70の演算部72は、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路の電圧信号を磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bから構成されるブリッジ回路の電圧信号と比較することで回転方向を演算する。
たとえば、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bから構成されるブリッジ回路の電圧信号が極大値となる時点を基準にし、それ以降の磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路の電圧信号の符号を判別することで回転方向を決定することができる。すなわち、磁気抵抗効果素子3.3a,3.3bおよび3.4a,3.4bから構成されるブリッジ回路の電圧信号が極大値となる時点以降において、磁気抵抗効果素子3.1a,3.1bおよび3.2a,3.2bから構成されるブリッジ回路の電圧信号が正であれば、B点からA点方向に回転していると判断でき、電圧信号が負であれば、B点からC点方向に回転していると判断できる。
なお、磁界発生部98は、移動体96に取り付けられた磁石で構成されてもよいし、移動体96の一部が所望の向きに着磁されたものでもよく、さらに、磁界検出装置700の時間検出部の側に凸となるように移動体96に設けられた歯車状の突起部でもよい。
また、上述の説明においては、移動体の変位量および変位方向として、回転運動する移動体の回転角度および回転方向を検出する場合について説明したが、直線運動する移動体の変位量および変位方向を検出することもできることは言うまでもない。
この発明の実施の形態7によれば、互いに異なる2つの位置に配置されたそれぞれ2つの磁気抵抗効果素子における抵抗値の変化をブリッジ回路を用いて検出し、かつ、さらに異なる位置に配置された2つの磁気抵抗効果素子における抵抗値の変化をブリッジ回路を用いて検出する。そして、それぞれのブリッジ回路で検出されたそれぞれの時間的な変化に基づいて、移動体の回転角度および回転方向を検出できる。よって、移動体の変位量および変位方向を非接触で検出する磁界検出装置を実現できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。