JP4013853B2 - 磁気センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐環境性に優れる磁気センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、巨大磁気抵抗素子(以下、「GMR素子」とも称する。)などの抵抗値を呈するスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサが提案され、実用に供されている。
このGMR素子は、磁化の向きが所定の向きにピン止めされたピンド層と、磁化の向きが外部磁界に対応して変化するフリー層とを備え、外部磁界が加わった場合に、ピンド層の磁化の向きとフリー層の磁化の向きとの相対関係に応じた抵抗値を呈するもので、この抵抗値を測定することで外部磁界を検出するようになっている。
【0003】
図11は、従来の磁気センサの概略構成を示す断面図である。
この磁気センサは、所定の厚みを有する石英またはシリコンウエハからなる基板101と、この基板101上に配されたGMR素子からなる磁気抵抗効果素子102と、この磁気抵抗効果素子102の両端にそれぞれ接続され、基板101上に非磁性材料からなる下地膜103を介して配された永久磁石膜からなるバイアス磁石層104と、磁気抵抗素子102およびバイアス磁石層104の上面を全て被覆するように設けられた酸化ケイ素膜からなる第一保護膜105と、窒化ケイ素膜からなる第二保護膜106とから概略構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
ここで、第一保護膜105と第二保護膜106を併せて保護膜107と言うこともある。
【0004】
この磁気センサでは、磁気抵抗効果素子102の両端の下面が、バイアス磁石層104の上面の全域を覆っていない。そのため、バイアス磁石層104の上面の一部にかかった状態で接続されている。このような磁気センサは、熱冷サイクル試験などによって、バイアス磁石層104と保護膜107の界面において、保護膜107が剥離することがあった。
【0005】
【特許文献1】
特開平12−137906号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、耐環境性に優れる磁気センサを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、基板上にスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子が配され、該磁気抵抗効果素子の両端部には永久磁石膜からなるバイアス磁石層がそれぞれ接続されており、該磁気抵抗効果素子および該バイアス磁石層の上面を被覆するように保護膜が設けられた磁気センサにおいて、平面視にて、前記磁気抵抗効果素子の両端部において、前記永久磁石膜の上面におけるバイアス磁石層の形成領域の外形が、同面上の磁気抵抗効果素子形成領域の外形よりも大きくなるように、前記バイアス磁石層の上面が磁気抵抗効果素子の両端部の下面に覆われており、前記永久磁石膜の上面におけるバイアス磁石層の形成領域の外形と、同面上の磁気抵抗効果素子形成領域の外形との間隔は、3μmを超えず、前記磁気抵抗効果素子の両端部を除く部分は、帯状に、平行して複数配置されているとともに、該両端部を介して全体として直列回路を構成するように配置されている磁気センサを提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の磁気センサについて図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の磁気センサの一実施形態を示す概略断面図である。図2は、本発明の磁気センサの一実施形態における保護膜側から磁気抵抗効果素子を見た状態を示す概略平面図であり、(a)は全体図、(b)はバイアス磁石の周縁部を示す部分図である。
【0010】
この実施形態の磁気センサ10は、所定の厚みを有する石英またはシリコンウエハからなる基板11と、この基板11上に配されたGMR素子をなす磁気抵抗効果素子12と、この磁気抵抗効果素子12の両端部にそれぞれ接続され、基板11上に非磁性材料からなる下地膜13を介して配された永久磁石膜からなるバイアス磁石層14と、磁気抵抗素子12およびバイアス磁石層14の上面を全て被覆するように設けられた第一保護膜15と、この第一保護膜15の上面に設けられた第二保護膜16とから概略構成されている。
ここで、第一保護膜15と第二保護膜16を併せて保護膜17と言うこともある。
【0011】
磁気センサ10では、磁気抵抗効果素子12の両端部の下面12aが、バイアス磁石層14の上面14aのほぼ全域を覆うように設けられている。
【0012】
ここで、磁気抵抗効果素子12の両端部の下面12aが、バイアス磁石層14の上面14aのほぼ全域を覆うとは、次のようなことを示している。すなわち、図2に示すように、バイアス磁石層14の周縁部14dにおいて、磁気抵抗効果素子12の側面12bと、バイアス磁石層14の側面14bが同一面上に配されることなく、かつ、磁気抵抗効果素子12の側面12cと、バイアス磁石層14の側面14cが同一面上に配されることなく、磁気抵抗効果素子12の両端の下面12aが、上面14aを覆っていることを示している。
【0013】
また、磁気センサ10では、バイアス磁石層14の周縁部14dにおいて、保護膜17側から磁気抵抗効果素子12を見たときに、磁気抵抗効果素子12の両端部の側面と、バイアス磁石層14の側面との間隔が3μmを超えないように、磁気抵抗効果素子12の両端の下面12aが、上面14aを覆っている。すなわち、図2(b)に示すように、バイアス磁石層14の周縁部14dにおいて、磁気抵抗効果素子12の側面12bと、バイアス磁石層14の側面14bとの間隔d、および、磁気抵抗効果素子12の側面12cと、バイアス磁石層14の側面14cとの間隔dが3μmを超えないようになっている。
【0014】
磁気抵抗効果素子12の両端部の側面と、バイアス磁石層14の側面との間隔が3μmを超えると、バイアス磁石層14と保護膜17との密着性が不十分となり、熱冷サイクル試験などによって、外部から剪断応力を繰り返し加えた場合、バイアス磁石層14と保護膜17の界面において、保護膜17が剥離するおそれがある。
【0015】
磁気抵抗効果素子12は、例えば、フリー層、銅(Cu)からなる導電性のスペーサ層、コバルト−鉄(CoFe)合金からなるピンド層、白金−マンガン(PtMn)合金からなるピニング層、チタン(Ti)、タンタル(Ta)などの金属薄膜からなるキャッピング層が順次積層されてなるものである。
【0016】
フリー層は、外部磁界の向きに応じて磁化の向きが変化する層であり、例えば、コバルト−ジルコニウム−ニオブ(CoZrNb)アモルファス磁性層と、CoZrNbアモルファス磁性層上に積層されたニッケル−鉄(NiFe)磁性層と、NiFe磁性層上に積層されたコバルト−鉄(CoFe)層とから構成されている。
このフリー層には、その一軸異方性を維持するために、所定の方向にバイアス磁石層14によりバイアス磁界が付与されている。
【0017】
CoZrNbアモルファス磁性層とNiFe磁性層は、軟質の強磁性体であり、CoFe層はNiFe磁性層のニッケルおよびスペーサ層の銅の拡散を防止するものである。
【0018】
スペーサ層は、銅もしくは銅合金からなる金属薄膜である。
ピンド層は、コバルト−鉄(CoFe)磁性層により構成されている。このCoFe磁性層は、後述する反強磁性膜に交換結合的に裏打されることにより磁化の向きがピン止め(固着)されている。
【0019】
ピニング層は、CoFe磁性層上に積層された白金を45〜55mol%含むPtMn合金からなる反強磁性膜により構成されている。
これらピンド層とピニング層を併せてピン層と称する。
【0020】
下地膜13は、膜厚40nm程度のクロム(Cr)からなる金属薄膜である。
バイアス磁石層14は、膜厚90nm程度のコバルト−白金−クロム(CoCrPt)合金からなる金属薄膜である。
【0021】
第一保護膜15は、酸化ケイ素(SiO膜)からなる薄膜である。
第二保護膜16は、窒化ケイ素(SiN膜)からなる薄膜である。
【0022】
次に、図3および図4〜図10を用いて本発明に係る磁気センサの製造方法について説明する。
図3は、本発明に係る磁気センサの製造方法の手順を示すフローチャートである。図4〜図10は、本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【0023】
この磁気センサの製造方法では、まず石英またはシリコンウエハからなる基板11を用意する。基板11には、あらかじめ磁気センサ制御用のLSI部分を形成しておくことができる。その場合には、工程Aにおいて、公知の方法にてトランジスタなどの素子、および配線、絶縁膜、コンタクトなどを形成し保護膜を形成し、この保護膜に接続用の開口部を形成しておく。
【0024】
次いで、図4に示すように、石英またはシリコンウエハからなる基板11の上面にスパッタリング法により、膜厚40nm程度のクロムからなる下地膜13を形成する。続いて、下地膜13の上面にスパッタリング法により、膜厚90nm程度のコバルト−白金−クロム合金からなるバイアス磁石層14を形成する(工程B−1)。
【0025】
次いで、図5に示すように、バイアス磁石層14の上面に、スピンコート法、ディップコート法などにより任意の厚みのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に任意のパターンのマスクを配置して露光した後、現像処理を行って不必要なフォトレジストを除去する。続いて、フォトレジストを加熱してリフローさせ、両端部が曲面をなすようにレジスト膜20を形成する(工程B−2)。
【0026】
次いで、図6に示すように、イオンミリングにより、レジスト膜20で覆われていない部分の下地膜13およびバイアス磁石層14を除去すると同時に、下地膜13およびバイアス磁石層14を所定の形状に形成する(工程B−3)。この工程B−3において、レジスト膜20の両端部の曲面形状に応じて、イオンミリングにより、下地膜13およびバイアス磁石層14の側面が基板11に対して傾斜するように形成される。
【0027】
次いで、図7に示すように、アセトン、N−メチル−2−ピロリドンなどの洗浄液でレジスト膜20を除去し、バイアス磁石層14の表面を洗浄し、レジスト膜20を除去する(工程B−4)。
【0028】
次いで、図8に示すように、基板11の上面、下地膜13の側面、バイアス磁石層14の上面および側面に、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法などにより、磁気抵抗効果素子12を形成する(工程B−5)。
【0029】
次いで、外部空間に設けたマグネットアレイを、バイアス磁石層14に対して所定の位置に配置し、ピン層に対して所定の方向に磁場を印加する(工程B−6)。
【0030】
次いで、マグネットアレイと、バイアス磁石層14との配置を固定したまま、真空中にて、280℃で4時間熱処理する。これにより、磁気抵抗効果素子12のピン層のうち、ピニング層の規則化熱処理を行う(工程B−7)。
【0031】
次いで、マグネットアレイを所定の位置から取り外す(工程B−8)。
【0032】
次いで、図9に示すように、磁気抵抗効果素子12の上面に、スピンコート法、ディップコート法などにより任意の厚みのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に任意のパターンのマスクを配置して露光した後、現像処理を行って不必要なフォトレジストを除去する。続いて、フォトレジストを加熱してリフローさせ、両端部が曲面をなすようにレジスト膜21を形成する(工程B−9)。
【0033】
次いで、イオンミリングにより、レジスト膜21で覆われていない部分の磁気抵抗効果素子12を除去すると同時に、磁気抵抗効果素子12を所定の形状に形成する(工程B−10)。この工程B−10において、レジスト膜21の両端部の曲面形状に応じて、イオンミリングにより、磁気抵抗効果素子12の側面が基板11に対して傾斜するように形成される。
【0034】
次いで、アセトン、N−メチル−2−ピロリドンなどの洗浄液でレジスト膜21を除去し、磁気抵抗効果素子12の表面を洗浄し、レジスト膜21を除去する(工程B−11)。
【0035】
次いで、磁気抵抗効果素子12の上面に、プラズマCVD法により、膜厚150nm程度の酸化ケイ素膜からなる第一保護膜15を形成する(工程B−12)。
【0036】
次いで、第一保護膜15の上面に、プラズマCVD法により、膜厚300nm程度の窒化ケイ素膜からなる第二保護膜16を形成する(工程B−13)。
ここで、第一保護膜15および第二保護膜16の上に、さらにポリイミド樹脂からなる第三保護膜を設けてもよい。
【0037】
次いで、工程Cにおいて、第一保護膜15および第二保護膜16の所定の箇所において開口し、パッドを形成した後、ウエハをダイシングして個々のチップに切断する。そして、個々のチップは樹脂により封止される。
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例)
上述の本発明に係る磁気センサの製造方法に従って、膜厚5nmの磁気抵抗効果素子を有する磁気センサを作製した。
この際、バイアス磁石層の周縁部において、保護膜(素子の上面)側から磁気抵抗効果素子を見たとき、磁気抵抗効果素子の両端部の側面と、バイアス磁石層の側面との間隔dが1μm、2μm、3μmの磁気センサを作製した。
また、得られた磁気センサを用いて、プラスチックモールドパッケージを作製した。
【0040】
(1)密着性試験
磁気センサの上面(保護膜が設けられている側の面)にスコッチ3M社製のメンディングテープを貼付した後、このメンディングテープを引き剥がして、磁気センサのバイアス磁石層と保護膜の界面における剥離の有無を調べた。同様の試験を磁気センサ100個について行い、界面における剥離が生じた磁気センサの数を数えた。結果を表1に示す。
【0041】
(2)熱冷サイクル試験
磁気センサのプラスチックモールドパッケージを、−65℃で30分間保持、5分間で室温まで昇温、室温で30分間保持、5分間で150℃まで昇温、150℃で30分間保持、5分間で室温まで降温、室温で30分間保持、5分間で−65℃まで降温の温度サイクルを1サイクルとして500回繰り返し温度変化させる環境に放置した。
その後、このプラスチックモールドパッケージを、発煙硝酸を用いるエッチングにより開封し、磁気センサのバイアス磁石層と保護膜の界面における剥離の有無を調べた。同様の試験を磁気センサのプラスチックモールドパッケージ20個について行い、界面における剥離が生じた磁気センサの数を数えた。結果を表1に示す。
【0042】
(比較例)
上述の本発明に係る磁気センサの製造方法に準じて、膜厚50nmの磁気抵抗効果素子を有する磁気センサを作製した。
この際、バイアス磁石層の周縁部において、保護膜側から磁気抵抗効果素子を見たとき、磁気抵抗効果素子の両端部の側面と、バイアス磁石層の側面との間隔dが15μmの磁気センサを作製した。
また、得られた磁気センサを用いて、プラスチックモールドパッケージを作製した。
【0043】
実施例と同様にして、得られた磁気センサおよび磁気センサのプラスチックモールドパッケージについて、密着性試験および熱冷サイクル試験を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004013853
【0045】
表1の結果から、実施例の磁気センサは、バイアス磁石層と保護膜との密着性に優れ、耐環境性にも優れたものであることが確認された。
一方、比較例の磁気センサは、バイアス磁石層と保護膜との密着性が不十分であるため、耐環境性にも劣るものであることが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気センサは、磁気抵抗効果素子の両端部の下面が、バイアス磁石層の上面の略全域を覆うように、磁気抵抗効果素子を設けることにより、バイアス磁石層と保護膜との密着性が向上し、耐環境性、特に温度変化に対する耐性に優れ、信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気センサの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の磁気センサの一実施形態における保護膜側から磁気抵抗効果素子を見た状態を示す概略平面図であり、(a)は全体図、(b)はバイアス磁石の周縁部を示す部分図である。
【図3】 本発明に係る磁気センサの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図5】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図6】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図7】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図8】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図9】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図10】 本発明に係る磁気センサの製造方法を示す概略断面図である。
【図11】 従来の磁気センサの概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
10・・・磁気センサ、11・・・基板、12・・・磁気抵抗効果素子、13・・・下地膜、14・・・バイアス磁石層、14d・・・周縁部、15・・・第一保護膜、16・・・第二保護膜、17・・・保護膜、20,21・・・レジスト膜。

Claims (1)

  1. 基板上にスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子が配され、該磁気抵抗効果素子の両端部には永久磁石膜からなるバイアス磁石層がそれぞれ接続されており、該磁気抵抗効果素子および該バイアス磁石層の上面を被覆するように保護膜が設けられた磁気センサにおいて、
    平面視にて、前記磁気抵抗効果素子の両端部において、前記永久磁石膜の上面におけるバイアス磁石層の形成領域の外形が、同面上の磁気抵抗効果素子形成領域の外形よりも大きくなるように、前記バイアス磁石層の上面が磁気抵抗効果素子の両端部の下面に覆われており、
    前記永久磁石膜の上面におけるバイアス磁石層の形成領域の外形と、同面上の磁気抵抗効果素子形成領域の外形との間隔は、3μmを超えず、
    前記磁気抵抗効果素子の両端部を除く部分は、帯状に、平行して複数配置されているとともに、該両端部を介して全体として直列回路を構成するように配置されていることを特徴とする磁気センサ。
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