JP2009235260A - スルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有する高分子有機化合物、およびスルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環から成る有機化合物、それらを用いた医薬品、農薬、消毒剤あるいは抗菌剤、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池 - Google Patents
スルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有する高分子有機化合物、およびスルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環から成る有機化合物、それらを用いた医薬品、農薬、消毒剤あるいは抗菌剤、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ヒドロキシ基(−OH)を有するピリジンスルホン酸を出発原料に、Williamson反応を行うことによって得られる有機化合物、また、この方法で得られたスルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩化ピリジロキシ基を有する芳香環をさらに出発物質とし、単独あるいは適当な試薬と各種重合反応を行うことにより得られる高分子有機化合物。
【選択図】図2
Description
これはすなわち、ピリジンが反応過程で発生するラジカルとも反応せず、ベンゼン環に比べ格段に高いラジカル耐性を誇ることを意味している(非特許文献1)。
例えば、Bartonらはシクロヘキサンや硫化水素の酸化反応において、ピコリン酸やピコリン酸−N−オキシドが鉄と配位した触媒により、高収率で目的物が得られるとしている(非特許文献2)。
また、Bianchiらもトルエンの過酸化水素による酸化反応において、ピリジン−2−カルボン酸やピラジンカルボン酸が鉄と配位した触媒を用い、目的物のフェノールを高収率で得ている(非特許文献3)。
これらから示されるように、含窒素複素環とりわけピリジン環を有する有機化合物はその安定性ゆえに、安定した触媒化合物を作ることができ、触媒としても有用である。
加えて、低分子とは違い、これらの高分子が汎用の有機溶媒に不溶なものが多いことも反応が進みづらいことも化学修飾を困難にしている一因である。そのため、ポリピリジンのスルホン化を例に取ると、我々がその方法を開発するまでは、調査した限り報告例は一例も存在しなかった( 特許文献1) 。
しかしモノマー合成もピリジンの化学的安定性の高さから容易ではない。そのため、CASを用い化合物調査したところ、スルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩化ピリジロキシ基を有し、かつ重合反応の際に脱離基として働くハロゲン原子を含むようなベンゼン環誘導体やピリジン環誘導体の報告例は、我々が調査した限り、存在しなかった。
少ないステップ数で、かつ環境的負荷の小さい方法で、目的の高分子を得るためのピリジン誘導体を得る技術は非常に大きなメリットを持つ。また、このような化合物が得られれば、高分子のみならず、様々な機能性分子を合成するための出発物質あるいは中間体としての利用価値も高い。
ここで燃料電池とは、水素やメタノールなどの燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
このうち、陽イオン交換膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は、用いる電解質膜を薄くすることにより燃料電池内の内部抵抗を低減できるため高電流で操作でき、小型化が可能である。このような利点から固体高分子型燃料電池の研究が盛んである。
図1および図2に示したように、従来の固体高分子型燃料電池(PEFC)の単セル11は、固体高分子電解質膜1(パーフルオロカーボンスルホン酸膜)をそれぞれカーボンブラック粒子に触媒物質[主として白金(Pt)あるいは白金族金属(Ru、Rh、Pd、Os、Ir)]を担持した空気極側触媒層2と燃料極側触媒層3とで挟持したセルの空気極側触媒層2と燃料極側触媒層3とをそれぞれ空気極側ガス拡散層4と燃料極側ガス拡散層5で挟持して空気極6および燃料極7を構成した膜電極接合体12を備えている。
そして、空気極側ガス拡散層4と燃料極側ガス拡散層5に面して反応ガス流通用のガス流路8を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9を備えた導電性でかつガス不透過性の材料よりなる一組のセパレータ10により挟持して単セル11が構成される。
そして、空気などの酸化剤を空気極6に供給し、水素を含む燃料ガスもしくは有機物燃料を燃料極7に供給して発電するようになっている。
燃料極側:2H2 →4H+ +4e-
空気極側:O2 +4H+ +4e- →2H2 O
燃料極側では水素分子(H2 )の酸化反応が起こり、空気極側では酸素分子(O2 )の還元反応が起こることで、燃料極7側で生成されたH+ イオンは固体高分子電解質膜1中を空気極6側に向かって移動し、e- (電子)は外部の負荷を通って空気極6側に移動する。
一方、空気極6側では酸化剤ガスに含まれる酸素と、燃料極7側から移動してきたH+ イオンおよびe- とが反応して水が生成される。かくして、固体高分子形燃料電池は、水素と酸素から直流電流を発生し、水を生成することになる。
H2 O2 +Fe(II)→OH・+OH- +Fe(III )
生成したOH・(OHラジカル)は酸化力が大きく、固体高分子電解質膜1を酸化し分解し劣化する。
まず合成経路が複雑であるため、原料・製造プロセスのコストが高い点である。また、スルホン酸基含有フッ素樹脂は、ガラス転移温度が低く、耐熱性が低いため、動作温度が80℃以下と低くなってしまうという問題点も抱えている。さらに、フッ素というハロゲン系の樹脂であるため、環境負荷が大きいという欠点がある。
J.Tsuji,J.Am.Chem.Soc.,96,7349(1974) D.H.R.Barton et al.,Chem.Commun.,557(1997) D.Bianchi et al.,J. Mol.Catal.A:Chem.,204−205,419(2003) モリソン・ボイド 有機化学 下巻
本発明の第2の目的は、前記高分子有機化合物および前記有機化合物を用いた医薬品、消毒剤あるいは抗菌剤、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池を提供することである。
本発明の第1の目的は、耐ラジカル性・耐熱性に優れ、高いイオン交換容量を有し、高いプロトン伝導度を有し、酸触媒としての活性が高いので、医薬品、消毒剤あるいは抗菌剤、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池として有効に使用できる、スルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有する高分子有機化合物およびスルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環から成る有機化合物を提供することである。
前記一般式(1)中のスルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基は1以上4であってよいので、前記一般式(1)は下記一般式(6)で表すことができる。下記一般式(6)で表わされるピリジン環または芳香環にはアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、カルボキシル基等の他の官能基があってもよい。
本発明におけるピリジン環を含む複素環とは、フェナントロリン、キノリン、ナフチリジン、フェナンチリジン、アクリジンが例として挙げられる。これらをニトロ基やヒドロキシル基やカルボキシル基、ハロゲン基等で化学修飾したものも例示できる。
このようなものとしては、ピリジン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンや、これらを一部に含有する多環式複素環(例えばインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリンなど)などを例示できる。
ハロゲンを2つ有した化合物から重縮合反応によって高分子有機化合物を合成する例を挙げたが、他の例として様々な反応により、その誘導体である有機化合物を得ることができる。その反応例としては、メタノールと反応させることによりハロゲンを水酸基に置換する反応や、ハロゲンを脱離させベンゼンと結合するフォトリシス反応、Pd触媒を用いてハロゲンを脱離させ任意の置換基(例えば、アルキルチオエーテル基)を導入する反応などを挙げることができる。
また、前記のような有機樹脂だけでなく、有機無機ハイブリッド樹脂やシリケート樹脂、水ガラス、各種無機ポリマーなども使用できる。前記のようにこれらの樹脂にスルホン酸基や水酸基などを導入した変性体も好適に用いられる。
まず、本発明の高分子有機化合物を用いて前述した製造法により、電解質膜を形成する。さらに必要に応じてその上へ保護フィルムを積層して保存する。そして使用時に、この支持体、保護フィルムを剥離させた後、電解質膜の両側に触媒層、ガス拡散層を含有する電極層を形成し、これにより図1に示した膜電極接合体(MEA)が得られる。
この膜電極接合体(MEA)に図2に示したようにセパレータや図示しない補助的な装置(ガス供給装置、冷却装置など)を装着して組み立て、単一あるいは積層することにより燃料電池を作製することができる。
[赤外吸収スペクトル]
少量の試料と臭化カリウムの混合物をペレット状に押し固めたものを測定に用いた。測定は日本分光製FT/IR−460型を用いた。
[ 1H−NMRスペクトル]
試料を重溶媒に溶かしたものをNMR用サンプル管に入れ、日本電子製核磁気共鳴装置JNM−EX300により測定した。
〔スルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環7の合成〕
1gの4−ヒドロキシピリジン−3−スルホン酸と0.79gの炭酸カリウムを溶媒に溶かし、撹拌した。その後、2.0gの2,3,5−トリブロモピリジンを加え、反応させた。得られた粗生成物を回収し、精製、乾燥することで、下記構造式(7)で表される化合物7を白色粉末として2.9g(収率88%)得た。
〔スルホン化ピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有する高分子有機化合物8の合成〕
0.96gのニッケル−1,5−シクロオクタジエン錯体[ビス(1,5)−(シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(Ni(cod)2 ]および5mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加え撹拌した。これに0.43mlの1,5−シクロオクタジエン、0.55gの2,2’−ビピリジルを加え、撹拌した。ここに、0.20gの化合物Iと0.33gの2,5−ジブロモピリジンを含む溶液10mlを加え、反応させた。
反応粗成物を回収し、精製、乾燥させた。得られた生成物を酸で処理して塩を除去することで、下記構造式(8)で表されるスルホン化ピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有する高分子有機化合物8を0.13g(収率68%)得た。
イオン交換容量はスルホン酸基量に比例する。化合物8について、元素分析を行い硫黄元素の量からスルホン酸基量を計算した。得られた元素分析値は、化合物8で0.81重量%であった。このことから、スルホン酸基量は0.3ミリ当量/gであることがわかった。
実施例2で得られた化合物8を溶媒に溶解させ塗布し、溶媒を除去することで、化合物8の膜を得た。
〔フェントン試験〕
化合物8を用いて前記の方法で作製した膜を、フェントン試薬(15%H2 O2 、20ppmFe2+)に入れ、60℃3時間条件で行い、膜の変化を目視で確認した。
この試験条件下では、通常の炭化水素系電解質膜ではラジカルによって分解してしまうが、化合物8の膜はただれや形状変化もなかった。この結果から、本発明の有機化合物は優れた耐ラジカル性を有していることがわかった。
一方、通常の炭化水素系電解質膜であるスルホン化ポリエーテルエーテルケトンでは、これよりもかなり弱い試験条件である60℃3時間、3%H2 O2 、4ppmFe2+でも、ただれが観察される。別の炭化水素系樹脂であるポリフェニレン樹脂でもただれが観察される。
〔熱重量分析〕
実施例2で合成した化合物8の耐熱性を評価するため、島津製作所製熱重量分析装置TGA−50、および同社製温度アナライザーTA−50WSを用いて熱重量分析を行った。測定は試料を5mg程度秤量して白金器に乗せ、窒素雰囲気下で毎分10℃の速度で室温から900℃まで昇温し、その間の重量変化をプロットした。
そして本発明の高分子有機化合物は、スルホン化ピリジロキシ基またはスルホン酸塩を結合したピリジロキシ基を有する芳香環を構成単位として分子内に有することを特徴とするものであり、従来の炭化水素系樹脂では得られなかった高い耐ラジカル性を有し、かつ優れたプロトン伝導性、高いイオン交換量を有し、酸触媒としての活性が高いので、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池として有効に使用できるという顕著な効果を奏し、
そして本発明の有機化合物あるいは高分子有機化合物を用いて、耐ラジカル性・耐熱性に優れた医薬品、消毒剤あるいは抗菌剤、イオン交換体、電解質膜、触媒、膜電極接合体、燃料電池を提供することができるので、産業上の利用価値が高い。
2 空気極側電極触媒層
3 燃料極側電極触媒層
4 空気極側ガス拡散層
5 燃料極側ガス拡散層
6 空気極
7 燃料極
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 単セル
12 膜電極結合体
Claims (18)
- 前記芳香環が含窒素複素環であることを特徴とする請求項1記載の高分子有機化合物。
- 前記含窒素複素環がピリジン環もしくはピリジン環を含む複素環であることを特徴とする請求項2記載の高分子有機化合物。
- 下記一般式(2)で表される繰り返し単位のみから成る、下記一般式(3)で表されるような重合体、もしくは下記一般式(2)で表される構成単位と、他の芳香環Arを含む構成単位から選択される少なくとも一種から成る下記一般式(4)で表されるような共重合体であることを特徴とする請求項3記載の高分子有機化合物。
- 前記他の芳香環Arがピリジン環であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の高分子有機化合物。
- スルホン酸密度が、0.1〜5ミリ当量/gであることを特徴とする請求項1から請求項6いずれか一項に記載の高分子有機化合物。
- 前記芳香環が含窒素複素環であることを特徴とする請求項8記載の有機化合物。
- 前記含窒素複素環がピリジン環であることを特徴とする請求項8記載の有機化合物。
- 請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の有機化合物を出発原料もしくは中間体として得られる有機化合物あるいはその誘導体であることを特徴とする有機化合物。
- 請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする農薬または医薬品。
- 請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする消毒剤あるいは抗菌剤。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とするイオン交換体。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする電解質膜。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする触媒。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の有機化合物から構成されることを特徴とする燃料電池。
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