JP5648250B2 - スルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物および有機化合物、それらの製造方法、およびそれらを用いたイオン交換体、電解質膜、医薬品、触媒、膜電極接合体、燃料電池 - Google Patents
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Description
親電子置換反応の例としては、ニトロ化、スルホン化、ハロゲン化およびFriedel−Crafts反応などが挙げられ、非常に激しい条件でのみ(Friedel−Crafts反応は反応が進行しない)行われることが知られている(非特許文献1)。
また、東京工業大学の辻らはベンゼン環に二つの水酸基を持つカテコールを、ピリジン溶媒下、銅触媒により開環反応を行っている。これはすなわち、反応過程で発生するラジカルとも反応せず、ベンゼン環に比べ格段にラジカルに安定であることを意味している(非特許文献2)。これらから示されるように含窒素複素環を有する有機化合物は化学的に安定な物質である。
例えば、19世紀にO.Fischerらによりピリジンと濃硫酸とを反応させることによってスルホン化ピリジンが得られることが報告されている。このときの反応温度は、300℃から350℃という高温である。その後1943年に、硫酸水銀の添加により、反応温度を230℃に低下させる方法を、S.M.MC.ElvainとM.A.Goeseは見出している。この反応は工業的に現在、利用されている方法であるが、以下の3点から問題となっている。
すなわち、先ず(1)長時間高温反応であることにより高エネルギーコストがかかること、(2)高温時に生じる腐食性SO3 蒸気により、高価な耐腐食性生産施設が必要なこと、(3)硫酸水銀の環境負荷が高く、廃棄物処理が大変なこと、の3点である。
すなわち、ピリジン自体の出発物質を用いずにクロル化されたピリジンを用いて、これをまずN−オキシドに化学反応を行うことによって変化させ、その後、公知の方法によりスルホン化を行う。次に、得られた3−クロルピリジン−3−スルホン酸−N−オキシドに亜硫酸ナトリウムを加え、145℃と中程度の温度領域で反応させた後、濃塩酸で酸性化して単離し、ピリジン−3−スルホン酸−N−オキシドを得る。最後に、水素雰囲気下ニッケル触媒を用いて、水素添加を行い、目的のスルホン化ピリジンを得ている。
しかし、(1)反応のステップ数が多いこと、(2)出発物質が3−クロルピリジンでありピリジンではないこと、(3)ニッケル触媒を使用し環境負荷が高いこと、(4)水素雰囲気下にしなければならず、工業上、危険であること、(5)145℃と比較的高い温度であること、の5点により、更なる改善が求められている。
主鎖がピリジンのみから成るポリピリジンは、ピリジンの化学的性質を反映し、化学的に非常に安定である。また、高分子にすることによって高い耐熱性を有するようになる。高分子の長所である軽量性・加工性などの特徴も併せ持つため、期待される用途は多岐に亘る。
ポリピリジンを機能性材料として実用化するには、その用途に応じた機能を発現するための官能基を導入する、すなわちポリピリジンを化学修飾することが必要となる。しかし、構成要素であるピリジンが化学的に安定で特にスルホン化を始めとする多くの親電子置換反応に対し不活性であるのと同様、ポリピリジンを直接化学修飾することは非常に困難である。加えて、ピリジンとは違い、ポリピリジンが溶媒にほとんど溶けず反応が進みづらいことも化学修飾を困難にしている一因である。ピリジンをスルホン化するためには、先に述べた通り、高い反応温度が必要であったり環境負荷の大きな触媒を使用したりと、様々な問題点があるが、ポリピリジンをスルホン化する場合、著しく溶媒に溶け難い為、それ以上に過酷な反応条件を必要となる可能性が高い。そのため、我々の調査では、ポリピリジンのスルホン化の例は学会でも、一件も見出されなかった。
スルホン酸基のような官能基を有するポリピリジンを合成するには、ポリピリジンを直接反応させる以外にも、目的の官能基を有するピリジンのモノマーを合成し、これを重合させる方法がある。しかし、モノマー合成もピリジンの化学的安定性の高さから容易ではない。また、合成のステップ数は大幅に増える。そのため、ポリピリジンを少ないステップ数で、かつ環境的負荷の小さい方法で直接化学修飾する技術は非常に大きなメリットを持つ。
ここで燃料電池とは、水素やメタノールなどの燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
このうち、陽イオン交換膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は、用いる電解質膜を薄くすることにより燃料電池内の内部抵抗を低減できるため高電流で操作でき、小型化が可能である。このような利点から固体高分子型燃料電池の研究が盛んである。
しかしこれらの高分子電解質材料は合成経路が複雑であり、高価であるという問題を抱えている。また、スルホン酸基含有フッ素樹脂は、ガラス転移温度が低く、耐熱性が低いため、動作温度が80℃以下と低くなってしまうという問題点も抱えている。さらに、フッ素というハロゲン系の樹脂であるため、環境負荷が大きく、触媒として用いられる白金のリサイクル性が悪いという欠点がある。
そのため、フッ素を含まないスルホン酸基含有炭化水素系樹脂を原料とする、高温安定性の高い、プロトン伝導性高分子電解質膜が開発されてきているが、耐OHラジカル性に劣っており、化学的安定性がスルホン酸基含有フッ素樹脂には及ばず、耐OHラジカル性に優れている材料開発が急務となっている。
図1および図2に示したように、従来の固体高分子型燃料電池(PEFC)の単セル11は、固体高分子電解質膜1(パーフルオロカーボンスルホン酸膜)をそれぞれカーボンブラック粒子に触媒物質[主として白金(Pt)あるいは白金族金属(Ru、Rh、Pd、Os、Ir)]を担持した空気極側触媒層2と燃料極側触媒層3とで挟持したセルの空気極側触媒層2と燃料極側触媒層3とをそれぞれ空気極側ガス拡散層4と燃料極側ガス拡散層5で挟持して空気極6および燃料極7を構成した膜電極接合体12を備えている。
そして、空気極側ガス拡散層4と燃料極側ガス拡散層5に面して反応ガス流通用のガス流路8を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9を備えた導電性でかつガス不透過性の材料よりなる一組のセパレータ10により挟持して単セル11が構成される。
そして、空気などの酸化剤を空気極6に供給し、水素を含む燃料ガスもしくは有機物燃料を燃料極7に供給して発電するようになっている。
燃料極側:2H2 →4H+ +4e-
空気極側:O2 +4H+ +4e- →2H2 O
燃料極側では水素分子(H2 )の酸化反応が起こり、空気極側では酸素分子(O2 )の還元反応が起こることで、燃料極7側で生成されたH+ イオンは固体高分子電解質膜1中を空気極6側に向かって移動し、e- (電子)は外部の負荷を通って空気極6側に移動する。
一方、空気極6側では酸化剤ガスに含まれる酸素と、燃料極7側から移動してきたH+ イオンおよびe- とが反応して水が生成される。かくして、固体高分子形燃料電池は、水素と酸素から直流電流を発生し、水を生成することになる。
H2 O2 +Fe(II)→OH・+OH- +Fe(III )
生成したOH・(OHラジカル)は酸化力が大きく、固体高分子電解質膜1を酸化し分解し劣化する。
モリソン・ボイド 有機化学 下巻 J.Tsuji,J.Am.Chem.Soc.,96,7349(1974)
本発明の第2の目的は、低温度で、かつ環境に負荷を与えない製造方法で、含窒素複素環を有する高分子有機化合物および有機化合物を容易に経済的にスルホン化してスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物および有機化合物を製造するための方法を提供することであり、
本発明の他の目的は、スルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物または有機化合物を用いたイオン交換体、電解質膜、医薬品、触媒、膜電極接合体、燃料電池を提供することである。
すなわち、本発明の請求項2記載の高分子有機化合物に存在する芳香族環は、ピリジン環のみである。ここで、ピリジン環誘導体とは、無置換のピリジン環もしくは、化学修飾されたピリジン環をいう。
前記錯形成する物質が、カンファースルホン酸であることを特徴とする。
前記含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物がピリジン環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物であることを特徴とする。
前記含窒素複素環を有する有機化合物がピリジン環を1つ有する有機化合物であることを特徴とする。
本発明の高分子有機化合物は、製膜が容易であり、従来の炭化水素系樹脂では得られなかった高い耐OHラジカル性を有し、かつ優れたプロトン伝導性、高いイオン交換容量を有し、酸触媒としての活性が高いので、触媒、イオン交換体、電解質膜、膜電極接合体、燃料電池として有効に使用できるという顕著な効果を奏する。
スルホン酸密度が、0.1〜8ミリ当量/gであるので、燃料電池用に適する確実に優れた高いプロトン伝導性を有するというさらなる顕著な効果を奏する。
前記含窒素複素環がピリジン環であるので、化学的安定性が高いというさらなる顕著な効果を奏する。
化学的安定性が特に高いというさらなる顕著な効果を奏する。
低温度で、かつ環境に負荷を与えず(重金属触媒を使用せずに)に、化学的に安定な含窒素複素環を容易にスルホン化してスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物を製造することができる上、合成のステップ数も、2段階と少なく、合成にかかるエネルギーも少なく経済的であるという顕著な効果を奏する。
スルホン化率を上げることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
前記含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物がピリジン環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物であることを特徴とするものであり、
ピリジン環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物を使用することで、スルホン化を容易に行って化学的安定性が高いスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物を容易に製造できるというさらなる顕著な効果を奏する。
前記含窒素複素環を有する有機化合物がピリジン環を1つ有する有機化合物であることを特徴とするものであり、
ピリジン環を1つ有する有機化合物を使用することで、スルホン化をさらに容易に行って化学的安定性が高いスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物をさらに容易に製造できるというさらなる顕著な効果を奏する。
高いプロトン伝導性を有するとともにイオン交換容量が大きい上、安価で安定性が高いという顕著な効果を奏する。
次世代クリーンエネルギーとして使用される燃料電池の材料自体の環境負荷が大きいことは問題であり、環境問題は全体として考えなければならず、環境負荷の低減を目指すという意味でも本発明の電解質膜はその効果が大きく、さらに高分子有機化合物を用いれば容易に製膜して電解質膜を得ることができ、また有機化合物を用いる場合は例えばバインダーを混合して容易に製膜して電解質膜を得ることができ、得られる電解質膜は従来の炭化水素系樹脂では得られなかった高い耐OHラジカル性を有し、かつ燃料電池用に適する高いプロトン伝導性を有するとともに、安価で安定性が高いという顕著な効果を奏する。
スルホン酸基を有するので酸触媒としての活性が高く、安価で安定性に優れているという顕著な効果を奏する。
次世代クリーンエネルギーとして使用される燃料電池の材料自体の環境負荷が大きいことは問題であり、環境問題は全体として考えなければならず、環境負荷の低減を目指すという意味でも本発明の膜電極接合体はその効果が大きく、さらに請求項12記載の電解質膜を用いたので燃料電池用に適する高いプロトン伝導性を有するとともに耐OHラジカル性が高い上、安価で安定性が高いという顕著な効果を奏する。
スルホン酸基含有フッ素樹脂はフッ素を含有する電解質膜やそれを用いた膜電極接合体は環境負荷が高く、また、資源が少ない燃料電池の触媒として使用されるプラチナのリサイクル性も低い問題があり、次世代クリーンエネルギーとして使用される燃料電池の環境負荷が大きいことは問題であり、環境問題は全体として考えなければならず、環境負荷の低減を目指すという意味でも本発明の燃料電池はその効果が大きく、さらに高いプロトン伝導性を有するとともに耐OHラジカル性が高い請求項8記載の電解質膜を用いているので、発電効率が高く、安価で信頼性が高いという顕著な効果を奏する。
本発明の第1の目的は、耐OHラジカル性が高く、プロトン伝導性に優れ、触媒、イオン交換体、電解質膜、膜電極接合体、燃料電池として有効に使用できる他に医薬品としても利用可能なスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物および有機化合物を提供することである。
このようなものとしては以下のものが例示できる。
すなわち、ピリジン、ピコリン酸などのピリジン環を1つ有する有機化合物や、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンや、これらを一部に含有する多環式複素環(例えばインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリンなど)を例示でき、また、これらを化学修飾した複素環やポリマー化した高分子有機化合物を例示できる。
その中でもピリジン環を有しているものは化学的安定性が高い。ピリジン環を有しているものの中でも、ピリジンは化学的安定性が特に高く、ピリジン環を有しているスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物は燃料電池用途や触媒用途として好適に使用ができる。
このような物質の例としては、Pt、Rh、Feなどを有する金属錯体や、酸性の官能基を有している物質を使用すると良好な結果を示すことが多い。酸性の官能基を有している物質を使用すると良好な結果が得られる理由は、含窒素複素環を有する有機化合物が塩基性を示しやすく酸・塩基反応で錯形成するためである。
この中でも、スルホン酸基は酸性度が高く、含窒素複素環を有する有機化合物とは良好に錯形成しやすい。スルホン酸基としては、カンファースルホン酸がスルホン化含窒素複素環のスルホン化率を上げることができるので特に良い。
使用するスルホン化剤としては、具体的には一般に知られているものを用いることができ、例えば、発煙硫酸、硫酸、フルオロ硫酸、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸、SO2 、SO3 、NaHSO3 、プロパンスルトン、ブタンスルトンや、その他のスルホン化物などを例示できる。
この中でも、クロロスルホン酸は、得られたスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を精製しやすくよい。
汎用溶媒としては、具体的には、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、水などを例示できる。
本発明のスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を利用して誘導できると考えられる医薬として、具体的には、例えば日本薬局方(第15改正)に記載の下記の医薬を挙げることができる。
スルホン化含窒素複素環を有する有機化合物自体がポリマーであり膜特性を有する場合は、熱溶融することにより電解質膜を形成することができる。
また、スルホン化含窒素複素環を有する有機化合物もしくは高分子有機化合物が溶媒に可溶である場合は、適当な溶媒に溶かした後、支持体に塗布後、乾燥させることにより、電解質膜を形成する方法を用いることができる。
ポリマーではないスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物など、それ自体に膜特性を有しない場合は、スルホン化含窒素複素環を有する有機化合物にバインダーを混合させて膜化させることもできる。
本発明のスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物あるいは有機化合物を用いて、イオン交換体や触媒を製造する際にも上記のように熱溶融することにより形成することができ、また適当な溶媒に溶かした後、支持体に塗布・コーティングしたり、担持させたりすることにより形成でき、その形成法は特に限定されるものではない。
またバインダーとして、これらの樹脂の変性体や共重合体を使用してもよく、例えば、これらの樹脂にスルホン酸基を導入して変性した変性体を用いることによりプロトン伝導性をさらに向上できるので好適に用いられる。
具体的には、樹脂としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、プロピレン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ビニリデン樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、フェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ビニル樹脂、カルボン酸樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、スチロール樹脂、エンジニアリングプラスチックなどを例示できる。
また、上記のような有機樹脂だけでなく、有機無機ハイブリッド樹脂やシリケート樹脂、水ガラス、各種無機ポリマーなども使用できる。上記のようにこれらの樹脂にスルホン酸基や水酸基などを導入した変性体も好適に用いられる。
まず、本発明のスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を用いて前述した製造法により、電解質膜を形成する。さらに必要に応じてその上へ保護フィルムを積層して保存する。そして使用時に、この支持体、保護フィルムを剥離させた後、電解質膜の両側に触媒層、ガス拡散層を含有する電極層を形成し、これにより図1に示した膜電極接合体(MEA)が得られる。この膜電極接合体(MEA)に図2に示したようにセパレータや図示しない補助的な装置(ガス供給装置、冷却装置など)を装着して組み立て、単一あるいは積層することにより燃料電池を作製することができる。
[スルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物の合成]
ナード社製のポリピリジン500mgに、テトラクロロエタン15mlを加えた。ここにカンファースルホン酸を3g加え60℃30分間撹拌した。撹拌すると濃赤色となり錯化した。
次にポリピリジンのユニットモル数に対し3倍当量のクロロスルホン酸を含むテトラクロロエタン溶液10mlを滴下し、反応温度120から150℃で40時間撹拌した。
反応終了後、純水、アセトンでよく洗浄を行った。これを乾燥することでスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物(ポリピリジンスルホン酸)を350mg得た。
実施例1でカンファースルホン酸を加えない以外は、反応温度140℃、反応時間40時間の条件で実施例1と同様に反応を行った。
実施例1でカンファースルホン酸を加えず、反応温度を70℃、反応時間を18時間にした以外は、実施例1と同様に反応を行った。
実施例1でカンファースルホン酸を加えず、反応温度を室温、反応時間を60時間にした以外は、実施例1と同様に反応を行った。
(1)カンファースルホン酸に特有のカルボニル基の確認:
実施例1、比較例1〜3で得られた化合物をJASCO社製FT/IR−460plusにて、赤外スペクトルを計測し確認した。確認は、カンファースルホン酸に特有のカルボニル基に由来する1740cm-1のピークの有無により行った。
図3に原料のポリピリジン、実施例1で得られた錯形成する物質であるカンファースルホン酸と錯化したポリピリジン、および、実施例1で得られた、錯形成する物質であるカンファースルホン酸を洗浄して除去した後のスルホン化ポリピリジンの赤外スペクトルを示す。
実施例1、比較例1〜3で得られた化合物を、さらに、アンモニア水溶液で2回、純水で1回洗浄した。得られた化合物を、JASCO社製FT/IR−460plusにて、赤外スペクトルを計測し確認した。スルホン酸基の有無の確認は、1185cm-1、1040cm-1付近の−SO3 H特有の吸収ピークにより行った。
水酸化ナトリウム水溶液を滴下することにより、計測した。その滴下した量により酸価を算出した。
<フェントン試験>
実施例1で得られた物質を用いて、ワニスを調整する。ワニスをシャーレに入れ、150℃で溶媒を除去して、電解質膜を作製した。
作製した電解質膜をフェントン試薬(80℃、3%H2 O2 、2ppmFe2+)に入れ、80℃3時間条件で、電解質膜の色が目視で変化するまでの時間を測定した。
測定した時間が長ければ、耐OHラジカル性に優れ、測定した時間が短かければ耐OHラジカル性が劣るとして、耐OHラジカル性を評価した。
(耐OHラジカル性)
○:優れている
△:やや優れている
×:劣っている
表2に、実施例1、比較例1〜3で得られた化合物の赤外スペクトルの分析により実施例1において錯形成後、錯形成する物質が洗浄により除去されたかどうか、スルホン酸基の有無、酸価を分析した結果、および実施例1における耐OHラジカル性を評価した結果を示す。
赤外スペクトルでは、カルボニル基の吸収ピークは一般に他のピークよりも鋭く感度もよいことが知られている。
表2および図3に示したように、実施例1、比較例1〜3で得られた化合物の赤外スペクトルを分析した結果、実施例1において錯形成後、スルホン化剤でスルホン化した後、水、アセトンによる洗浄方法で錯形成したカンファースルホン酸が除去できたことがわかる。
表2の比較例1でスルホン酸基のピークがわずかに計測された理由は明確にはわかっていないが、酸価が実施例1と比べ、格段に低いことから、含窒素複素環を有する有機化合物に錯形成する物質を添加し、錯形成後にスルホン化剤でスルホン化することにより、スルホン化が大きく促進されることがわかる。
また、比較例2、3のように反応温度が低いと、スルホン酸基のピークが計測されることもなく、酸価も計測されなかった。
そして本発明のスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物の製造方法によれば、低温度で、かつ環境に負荷を与えず(重金属触媒を使用せずに)に、化学的に安定な含窒素複素環を容易にスルホン化してスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物を製造することができる上、合成のステップ数も、2段階と少なく、合成にかかるエネルギーも少なく経済的であるという顕著な効果を奏し、
そして本発明の製造方法によるスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは本発明の高分子有機化合物を用いた耐OHラジカル性に優れたプロトン伝導膜、触媒、イオン交換体、膜電極接合体、燃料電池を提供することができるので、産業上の利用価値が高い。
2 空気極側電極触媒層
3 燃料極側電極触媒層
4 空気極側ガス拡散層
5 燃料極側ガス拡散層
6 空気極
7 燃料極
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 単セル
12 膜電極結合体
Claims (11)
- スルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物であって、前記含窒素複素環がピリジン環であり、スルホン酸密度が、0.1〜8ミリ当量/gであることを特徴とする高分子有機化合物。
- スルホン化ピリジン環と、ピリジン環誘導体のみで構成されることを特徴とする請求項1記載の高分子有機化合物。
- 含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物に錯形成する物質を添加し、錯形成した前記有機化合物あるいは前記高分子有機化合物を作り、これをスルホン化した後、前記錯形成する物質を除去することにより製造することを特徴とするスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物の製造方法。
- 前記錯形成する物質が、カンファースルホン酸であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 前記含窒素複素環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物がピリジン環を有する有機化合物あるいは高分子有機化合物であることを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載の製造方法。
- 前記含窒素複素環を有する有機化合物がピリジン環を1つ有する有機化合物であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 請求項1あるいは請求項2記載のスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を用いて構成されることを特徴とするイオン交換体。
- 請求項1あるいは請求項2記載のスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を用いて構成されることを特徴とする電解質膜。
- 請求項1あるいは請求項2記載のスルホン化含窒素複素環を有する高分子有機化合物を用いるかあるいは請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたスルホン化含窒素複素環を有する有機化合物を用いて構成されることを特徴とする触媒。
- 請求項8記載の電解質膜を用いて構成されることを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項8記載の電解質膜を用いて構成されることを特徴とする燃料電池。
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