JP2009234796A - セメント系成形体用補強短繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリプロピレン樹脂を主成分とする延伸繊維であって、該繊維の断面形状が4個の突起部を有する略四角形であり、かつ該略四角形の対向する2面に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部と、該略四角形の突起部に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部とを備えていることを特徴とするセメント系成形体用補強短繊維である。
【選択図】なし
Description
しかし、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂製の補強繊維は、セメントとの接着性が弱く、従来の繊維形態のままでは充分な補強効果が得られ難いという問題点があった。
この問題を克服する為、延伸による必要強度付与に引き続き、繊維表面に機械的な凹凸を付与することによって、セメント硬化体への定着力を向上し、引抜き時の抵抗を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、この特許文献1に記載の技術は、ギヤ或いはプレス成形ロールを使用して、連続的に機械加工が可能であり、繊維の製造工程上も簡便で、コスト的に安価に製造でき、有利ではあるが、セメントへの定着性は未だ充分なものではない。
しかし、この繊維を用いることによって、セメントとの定着性を高めることは出来るが、この様な、突起部の先端に凹部又は凸部を有する繊維では、セメント成形体としての荷重時においては、先ず、引張応力が、最大径側である繊維の突起部先端に掛かり、その後、順次中心部に向かって掛かる。このため、引張応力が集中しやすい繊維断面の突起部分に、凹部又は凸部等、特に凸部の付形を施すことは、好ましくない。
しかし、この様な突起部先端を有する繊維では、前述のように繊維の破断が発生しやすいばかりでなく、セメント系フレッシュへの投入、練り混ぜ時において表面の凸凹により繊維同士が引っかかり、かつ、開繊が不充分となり、ひいてはセメント系成形体への均一分散において問題が発生する恐れがあった。
このように、従来のポリプロピレン系繊維においては、耐アルカリ性、軽量性等においての利点は有するものの、実用上満足できるセメント系成形体用補強短繊維は未だ得られていない。
すなわち、本発明は、
(1)ポリプロピレン樹脂を主成分とする延伸繊維であって、該繊維の断面形状が4個の突起部を有する略四角形であり、かつ該略四角形の対向する2面に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部と、該略四角形の突起部に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部とを備えていることを特徴とするセメント系成形体用補強短繊維、
(2)繊度が3,000〜3,500dtexであり、辺部の凹部の深さが0.1〜0.2mm、長さが0.8〜1.2mm、かつ繊維長手方向の凹部の配置間隔が2.5〜3.5mmであって、突起部の凹部の深さが0.1〜0.2mm、長さが0.5〜0.7mm、かつ繊維長手方向の凹部の配置間隔が2.0〜3.0mmである請求項1に記載のセメント系成型体用補強短繊維、及び
(3)前記略四角形の断面が、X形である請求項1又は2記載のセメント系成形体用補強短繊維、
を提供するものである。
また、本発明の補強用短繊維は、4つの突起を有する略四角形の特有の断面形状の辺部と、突起部先端に、それぞれ所定の深さと所定の間隔で凹部が付形されているので、付形による繊維の引張り物性の低下を抑制しつつ、凹部によってセメントとの高い引き抜き抵抗性を有している。その結果、セメント硬化後のコンクリート成形物において、高い曲げ靭性係数が得られ、極めて優れた補強効果を発現できる。
また、ポリプロピレン樹脂製の繊維で、比重が小さいため、運搬、コンクリートに配合する場合の投入作業、及びコンクリート打設における施工性(ワーカビィリティ)に優れた補強用短繊維を提供できる。
なお、略四角形断面は、より正方形に近い方が、従来の丸形断面や扁平丸形断面を有する繊維に比べて、見掛けの繊維厚みが増すため、繊維の断面二次モーメントが向上する。このため、比較的小さな引張ヤング率の短繊維であっても、セメント配合時の粗骨材、細骨材などとの衝突による短繊維の屈曲が抑制され、補強に有効な形態で分散して繊維補強効果を発現でき、高いコンクリート物性向上効果を発揮できる。
セメントとの接触面積と前述の断面二次モーメントの観点から、特に、断面X形が好ましい。また、繊維断面がX形であると、辺部の溝数が4であり、一対のローラーにより、相対向する2つの溝に凹部を付形することができ、安定的に生産し易い。
繊維の断面は、凹部を付形する繊維の表面加工の観点から、4個の突起を有する略四角形であることが最も好ましく、当該突起に連なり形成される辺部溝底と、突起先端側に繊維の長手方向に沿ってそれぞれが、所定の間隔で付形された凹部が連続的に形成されている必要がある。好ましくは2面の溝底とこれに連なる4つの突起部先端側に形成されていることが望ましい。また辺部の凹付形と突起部の凹付形との繊維の長手方向対する位置関係は、一部で重なっていてもよいし、ずれていてもよい。セメントとの定着効果の点から、すべての凹付形の位置がずれていることがより好ましい。
本発明において2面とは、繊維断面の対向するそれぞれの辺が含まれる面であり、辺ないし辺部とは、繊維断面において隣り合う突起部(角部、頂点)間を結ぶ稜線(実在線)を意味し、溝部とは、隣り合う突起部(頂点)間を結ぶ稜線(実在線)が、隣り合う突起部間を結ぶ直線(仮想線)より、繊維断面の中心側に湾曲することによって形成される凹部分を意味し、例えば、X形の断面では、V字状または円弧状の溝状部分であって、繊維の長手方向に連続して形成される窪みを意味する。なお、辺部は、辺が含まれる面(表面)を含めた意味も有する。
即ち、前述の溝底部と同様に凸ではなく、凹の付形であって、繊維の太さのディメンジョンに対して比較的小さな付形とし、凹部の数を増やすことが必要である。
総合的には上記辺部の溝底と、突起部先端への付形の配分バランスを考慮することによって、開繊性、セメント系フレッシュへの分散性、及び繊維物性を良好に維持した上で、セメント系硬化体との定着性を向上することができる。
そのためには、辺部の凹部の深さが0.1〜0.2mmであり、長さが0.8〜1.2mmであり、かつ長手方向の凹部の配置間隔が、2.5〜3.5mmであって、突起部先端の凹部の深さが0.1〜0.2mmであり、長さが0.5〜0.7mmであり、かつ、長手方向の凹部の配置間隔が2.0〜3.0mmであることが望ましい。
しかしながら、突起部先端の付形間隔yについては、良好な開繊性の維持のため繊維の太さ(幅w及び厚みt)のディメンジョンに対して付形長さl2を短く設定することが必要であり、これを受けて、溝底部への付形間隔xより短くすること(即ち数を増やすこと)によってセメント系硬化体での定着力を高く維持できる。
突起部先端への付形間隔yについては、2.0〜3.0mmの範囲であることが好ましく、2.0mm以上でであれば、付形により繊維強度が必要物性未満に低下することがなく、また、付形間隔が3.0mm以下であれば、セメント系硬化体中で必要な引き抜き抵抗が低下することがなく、高い定着力が得られる。
なお、溝部に付形する凹部の形については特に限定するものではないが、繊維巾wより長さl1が幾分長い寸法を有する形状が定着力の点から望ましい。
エンボスローラーやギヤローラーによる凹部が深すぎる場合、及びその数が多すぎる場合は、セメントペーストとの定着性は向上するが、反面、繊維の引張強度が低下し、充分な補強が困難になる。また逆に浅すぎる場合及び数が少ない場合は、繊維の引張強度の低下は少ないが、セメントペーストとの定着性が低下し補強は困難となる。繊維引張強度としては、日本道路公団のトンネル施工管理要領(繊維補強覆工コンクリート編、平成15年9月)によれば、トンネル用のセメントコンクリート補強に必要な繊維強度は450N/mm2以上と規定されており、これを満足する必要があり、凹部の深さ及び配置間隔はこれらを考慮して決定される。
本発明の突起部先端側の凹部の付形に用いられるギヤ目状平歯車ローラーは、平歯車であって、歯形が並歯、モジュールが0.75、圧力角が20°、歯数が132、歯先長さが0.5mm、ローラー直径が100.5mm、ローラー巾が160mm、円周方向のギヤピッチが2.4mm程度のものを利用できる。
これは一対のエンボスローラーのそれぞれの付形位置をずらすことによって可能である。
辺部の溝部にこの様な凹部付形をするエンボスローラーの表面形状は、公称太さ3,300dtexの繊維の場合には、円周方向に沿って直線配置した多列の凸部を彫刻したエンボスローラーであって、円周方向への凸部の間隔が1mmから5mm、ローラー巾方向の多列凸部間隔が0.7mmから0.8mm、彫刻した凸部の高さが0.5mmから1mm程度のエンボスで、凸部の先端が円形状或いは多角形状に平坦に加工され、多列の凸部先端が相互に千鳥目に配置されたエンボスローラーを使用することによって、多数本の延伸ストランド(繊維)を連続的に、当該溝部だけに凹部加工することが出来る。
すなわち、1本1本のストランドは、エンボスローラーの凸部が円周方向に直線配置されているため、繊維断面の当該溝部とエンボスローラーの凸部とが互いにカップリングして、嵌まり込み、断面溝底部のみに凹部付形が可能となる。
なお、突起部先端側の凹部付形と、辺部の溝の凹部付形との順序は、特に問わず、何れが先であってもよい。
上記により得られた未延伸繊維は、次に、熱延伸、及び必要に応じて熱弛緩処理を施す。この熱処理によって繊維の剛性を高めて、伸びの小さいセメント補強用として好適な繊維とすることができる。熱延伸はポリプロピレン樹脂の融点以下、軟化点以上の温度下に行われる。
熱延伸法としては、熱ロール式、熱板式、赤外線照射式、熱風オーブン式、熱水式、水蒸気式などの加熱方式を採用できる。延伸操作は、1段延伸、2段延伸、多段延伸のいずれでもよい。
3,000dtex以上であれば、エンボスローラーによる溝底部への凹部の付形が可能であり、3,500未満であれば繊維のセメント混和物中での本数が減少して、セメント硬化体での補強効果が低下することがなく有効に補強効果を発現できる。
界面活性剤としては、疎水性であるポリプロピレン繊維とセメントペーストとの親和性を向上させるため、親水性の界面活性剤を使用するのが好ましい。ポリプロピレン繊維に親水性を付与することにより分散性が向上し、繊維とセメントペーストが均質に混合されることによって繊維補強効果が向上する。
親水性の界面活性剤としては、セメント水和反応に悪影響しないものであれば、特に限定なく使用することができるが、なかでもポリエチレングリコールアルキルエステル系ノニオン界面活性剤、アルキルフォスフェート系アニオン界面活性剤、多価アルコール型アマイドノニオン系界面活性剤などを好ましく使用できる。
アルキルホスフェートは、平均炭素数18以下、好ましくは6〜16、より好ましくは8〜14のアルキル基を1分子中に1〜2個、好ましくは1個有するホスフェートであり、塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。好ましいアルキルフォスフェートの具体例としては、オクチルホスフェート、ラウリルホスフェート、ステアリルホスフェートのような高級アルコールの燐酸エステルのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの塩及びアミン塩が挙げられる。その中和は遊離水酸基の50%以上、特に完全中和物が好ましい。
多価アルコール型アマイドノニオンは、炭素数4〜18のアルキルアミンと、3〜13個の水酸基を持つポリグリセリンとの付加反応物が用いられ、好ましくは炭素数11〜17のアルキルアミンと、3〜6個の水酸基を持つポリグリセリンとの付加反応物が用いられる。
本発明の補強用短繊維は、短繊維の繊維長(見かけ長さ)が10〜80mm、好ましくは15〜70mm、さらに好ましくは20〜60mmである。繊維長が10mm以上であれば、セメントからの抜けが生じ難く、80mm以内であれば、分散性が不良となることがない。
より具体的には、セメント、細骨材、粗骨材、水等よりなるコンクリート混合物をベースコンクリートとし、このベースコンクリートを混練後に、続けて補強用短繊維を投入し混練を行なうことが好ましい。混練時間は1回当たりの混合量により異なるが、一般的には、ベースコンクリートの混練は45〜90秒、補強用短繊維を投入後の混練についても45〜90秒の範囲が適当である。
コンクリート製品としては、型枠成型による矢板、中空円筒形製品のコンクリートパルプ、パイル、ポール等にも用いることができる。道路用コンクリートとしては、歩道用コンクリート平板、鉄筋コンクリートU形、コンクリートガードレール等に用いることができる。その他、左官用モルタル、建築関係部材として外装材料や屋根材、内装材として壁材、レリーフ、床材、天井材等に利用することもできる。
孔数が22個、孔形がX型のノズルを備えた1軸溶融押出し機を使用し、MFR=2g/10分のアイソタクチックポリプロピレン樹脂(WF464N;住友化学株式会社製)を、240℃で溶融押出しし、押出された樹脂を冷却水槽中に導いて、冷却固化させながら5本の平行ローラーを備えた第一延伸機で、定速で引き取り、この繊維ストランドをそのまま連続して、92℃の温水加熱延伸槽に導き、第二延伸ローラーで7.2倍延伸した。更にこれに連続して129℃の蒸気加熱延伸槽に導いて、第三延伸ローラーで1.71倍延伸し、合計12.3倍の2段延伸を行った。
続けて、この延伸ストランドを下記の上下一対のギヤ目形状の付形ローラー(第1付形ローラー)と、上下一対のヤスリ目形状の付形ローラー(第2付形ローラー)の順に導いて、突起部先端とX形断面の辺部中央溝底に、ストランド方向に沿って、それぞれ連続的に、凹部を付形した。
・第1付形ローラー:平歯車、歯形:並歯、モジュール0.75、圧力角20°、歯数132、歯先長さ0.5mm、ローラー直径100.5mm、ローラー巾160mm、円周方向のギヤピッチ2.4mm。
上記の第1付形ローラーを用い、上下歯車の最短先端クリアランスを0.46mmに調整し、先端速度をストランドの速度と同速度で順回転させ、X断面の上下左右4つ突起先端部に凹形状を付形した。
・第2付形ローラー:エンボスローラー、先端形状:短対角線長0.35mm×長対角線長0.625mmの菱形状で、円周方向の凸部間隔が2.93mm、ローラー巾方向の凸部間隔が1.33mm、凸部の高さが0.9mm、ローラー直径101mm、ローラー巾160mm。
上記の第2付形ローラーを用い、上下ローラーのエンボスの凸部の最短先端クリアランスを0.16mmに調整し、表面速度をストランドの速度と同速度で順回転させ、X断面の上下2辺の中央溝底に凹部を付形した。
また、物性は、繊度3,260dtex、引張強度521N/mm2であった。(繊維物性:表1参照)
延伸ストランドの付形ローラーを、実施例とは異なる下記の上下一対のギヤ目形状の付形ローラー(第1付形ローラー)のみとし、下記の付形条件として、ファン型カッターの定長カット長を40mmのみとした以外は実施例1と同様にして、ポリプロピレン短繊維を製造した。
・第1付形ローラー:平歯車、歯形:並歯、モジュール1.0、圧力角20°、歯数100、歯先長さ0.9mm、ローラー直径102mm、ローラー巾160mm、円周方向のギヤピッチ3.1mm。
上記第1付形ローラーを用いて、上下歯の最短先端クリアランスを0.42mmに調整し、先端速度をストランドの速度と同速度で順回転させ、X断面の対向する上下辺に連なる左右に存在する合計4つ突起先端部に凹形状を付形した。
このポリプロピレン製短繊維の形状はX形断面で、4つの突起先端部のみに凹部が付形されており、各凹部は、略三角柱状で、凹部の最大深さは0.16mm、長さは1.1mm、繊維長さ方向の間隔は2.9mmであった。また物性は、繊度3,300dtex、引張強度482N/mm2であった。これらの結果をまとめて表1に示す。(繊維物性:表1参照)
延伸ストランドの付形ローラーを、上下一対のヤスリ目形状の付形ローラー(第2付形ローラー)のみとした他は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン短繊維を製造した。
実施例1及び実施例2と同様にファン型カッターで40mmにカットしたもの(比較例2)、及び48mmにカットしたもの(比較例3)をポリプロピレン製短繊維として製造した。
このポリプロピレン製短繊維の形状はX形断面で、凹部は対向する2辺の中央溝底部のみに付形されており、辺部の凹部深さは0.15mm、長さは1.0mm、繊維長さ方向の間隔は2.9mmであった。
また、物性は、繊度3,340dtex、引張強度531N/mm2であった。これらの結果をまとめて表1に示す。(繊維物性:表1参照)
(1)繊度、引張強度:JIS L 1013に準じる。
(2)付形凹部の深さ測定
i)突起先端部の凹部深さ測定:突起先端部の凹部深さとは、短繊維の上下それぞれの付形面の突起先端部において、隣接する未付形部間に接線を引いた時、この接線からこの間に存在する凹成形部の最も深い位置への垂線長さを言う。
即ち、測定方法は繊維上下付形面の横方向から写真撮影し、市販のパソコン画像距離測定ソフトを使い、或いは撮影写真を拡大プリントし、標準尺を測定基準として、ペーパー上で垂線長さを測定した。
ii)辺部溝底部の凹部深さ測定:辺部溝底部の凹部深さとは、溝底未付形部の上端から付形部の下端までの距離のことであり、上記と同様に短繊維の上下それぞれ付形面の隣接する隣接する未付形部間に接線を引いた時、この接線からこの間に存在する凹付形部の最も深い位置への垂線長さを言う。
測定方法は、表面粗さ測定器(東京精密(株)製:Surfcom E−MD−S138A型)を
使用し、検知針を繊維方向範囲6mm〜8mmを走査することによって凹部深さを測定した。
(1)、(2)ともに無作為に採取したカット繊維50本の100箇所以上の凹部深さを測定し、その平均値を凹部深さとした。
(3)凹部の長さ測定
凹部の長さとは、付形ローラーによって押印された凹部の繊維長さ方向の長さを言う。
測定方法は、繊維上下付形面を写真撮影し、市販のパソコン画像距離測定ソフトを使い、或いは撮影写真を拡大プリントし、標準尺を測定基準とし、ペーパー上で凹部長さを測定した。
(4)凹部の間隔測定
カット繊維長あたりの凹部数をカウントし、繊維長/凹部数で算出した。これをカット繊維100本で同様に測定し、その平均値を凹部間隔とした。
(5)繊維長
カット繊維100本の繊維長をノギスで測定し、その平均値を繊維長とした。
〔繊維の引抜き抵抗〕
セメントモルタルに繊維1本を約15mm埋設し、7日間常温で気中養生後、テンシロンにて2mm/分の速度で繊維をセメントから引抜き、その際の応力(引抜き抵抗値)の最大値を測定した。
セメントモルタルは、早強セメントモルタル(トーヨーマテラン(株)製:早強ポルトランドセメント及びシリカサンドプレ配合品)を使用し、水配合量=水214(cc)/早強セメントモルタル1(kg)の比率で練り混ぜしたものを使用した。
繊維の凹部付形の違いによる引抜き抵抗値を比較する上で、各繊維測定サンプルの実測埋設長を測定し、これを15mmあたりの埋設長さに比例換算し、引抜き抵抗値とした。結果を表1に示す。
(1)コンクリート物性試験供試体の製造
50L強制2軸型ミキサーを使用し、全量35Lになるように、セメント350kg/m3、細骨材873kg/m3、粗骨材900kg/m3、水175kg/m3、高性能AE減水剤2.8kg/m3の配合比率で予め90秒間練り混ぜた。次いで実施例1、2及び比較例1〜3の繊維をそれぞれ2.73kg/m3の配合比率で添加し、45秒間更に練り混ぜた。
得られたフレッシュコンクリートを使用し、JSCE−F552−1983(鋼繊維補強コンクリートの強度及びタフネス試験用供試体の作り方)に従い、圧縮及び曲げ試験用の供試体を作製した。
なお供試体は常温型枠養生を24時間行った後、脱型し、その後材齢28日まで水中養生したものを供試体とした。
使用した材料:
・セメント:普通ポルトラントセメント(比重:3.16、太平洋セメント製)
・細骨材:
S1:陸砂(表乾密度:2.60g/cm3、粗粒率:2.40)、神栖産
S2:砕砂(表乾密度:2.70g/cm3,粗粒率:3.10)、佐野(唐沢鉱山)産
S1とS2を7対3の重量比率で混ぜて使用した。
・粗骨材:砕石(表乾密度:2.67g/cm3、最大粒度25mm)、石岡(石岡市染谷)産
・水:市水
・高性能AE減水剤:レオビルドSP8SV X2.5(BASFポゾリス社製)
曲げ物性試験を実施した後、供試体を割れ面で完全に分離し、破壊面の繊維の引き抜け状態、切断状態を目視観察した。両破壊面に目視確認できる繊維本数を、引き抜きによる本数と切断による本数とに区別し、全本数をカウントし、それぞれの占有率(引き抜け率、切断率)を100分率(%)で算出した。結果を表1に示す。
・曲げ強度、曲げ靭性試験:JHS 730−2002(繊維補強覆工コンクリートの曲げ靭性試験方法)に従う。
・圧縮強度:JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に従う。
・スランプ試験:JIS A 1118(コンクリートのスランプ、空気量試験)に従う。
・空気量試験:JIS A 1118(コンクリートのスランプ、空気量試験)に従う。
(1)繊維の開繊性試験
アジテータ車への繊維投入機の投入ホッパーに設置した繊維開繊用格子(外寸法:490mm×700mm;格子角目間隔:75mm一定、格子素材:φ2.5SUS棒)を使用し、人が手動で、繊維3kgを通過させる時間を測定した。
・実施例1の繊維(繊維長40mm):40、37、42、44、35秒(平均:40秒)
・実施例2の繊維(繊維長48mm):55、65、62、54、60秒(平均:59秒)
・比較例1の繊維(繊維長40mm):57、46、51、48、51秒(平均:51秒)
・比較例2の繊維(繊維長40mm):43、37、40、38、41秒(平均:40秒)
・比較例3の繊維(繊維長48mm):65、64、59、58、60秒(平均:61秒)
通常、繊維の表面に付形すると繊維間の拘束性が増大し、開繊性は低下するが、本件発明の実施例の繊維は、同一繊維長での比較において、比較例の繊維に対して開繊性が悪化することはなく、良好な開繊性を維持している。従って実施例の繊維は、繊維塊を容易に開繊(バラバラに)することができ、実施工時における繊維投入の所要時間によるセメントフレッシュ硬化を最小限に抑制することが出来、かつ、セメントフレッシュ中での繊維分散を良好に維持することができる。従って、コンクリート打設におけるワーカビリティーの向上に寄与できる。
フレッシュコンクリート4.5m3を積載したアジテータ車に、ミキサードラム高速回転の状態で実施例の繊維、及び比較例の繊維をそれぞれ12.3kg(0.3vol%相当)を、上記φ75mm開繊格子を備えた投入機を使用して、約3分(繊維長40mmの実施例1、及び比較例2繊維)、約3.5分(繊維長40mmの比較例1繊維)、4.4分(繊維長48mmの実施例2、比較例3の繊維)で投入し、そのまま2分間混練を継続した。この繊維混入フレッシュコンクリートをアジテータ車から排出させ、コンクリートの出し始め、中間、最後のそれぞれについて繊維の練り混ぜ分散状態を、シャベルを使って目視で観察した。
実施例の繊維、比較例の繊維に遜色はなく、いずれの分散性も良好であった。
以上の結果をまとめて表1に示す。
特に、実施例2の繊維長48mmを使用した供試体破壊面の繊維は、切断率55%で、半数以上が切断しており、セメントとの定着性に極めて優れていた。
また曲げ靭性試験における靭性カーブにおいても、実施例2の繊維を使用したコンクリート供試体の応力挙動は、図5に示すように、曲げたわみ量の増大にともなって小幅の応力低下と回復を繰り返すものであり、緊張状態にある載荷下面方向の位置に存在する繊維の一部が破断したものと解釈できる。なお、比較例2及び3の繊維によるものも、設計基準の曲げ耐力(4.1kN)、管理曲げ靭性係数(1.40N/mm2)を上回っているが、応力挙動の図6及び図7から分かるように、実施例と比較して、繊維長が同じものの比較で、それぞれ実施例が比較例の荷重を上回っていた。
この結果は、実施例2の繊維に施された付形によるセメント定着性が破壊面に存在する繊維の引張強力を上回っていたことを示すものであり、セメントとの定着性に極めて優れていることを表している。
また、本発明の実施例の補強短繊維は、アジテータ車への繊維投入作業性及びコンクリート中での分散性においても問題なく、優れていた。
表1から明らかな通り、本発明の実施例1の補強用短繊維は比較例1の繊維より、引張強度が高く、引抜き抵抗値が約1.7倍も大きく、セメントペーストとの定着性に極めて優れていた。
また、本発明の実施例1の補強短繊維は、アジテータ車への繊維投入作業性及びコンクリート中での分散性にも比較例の補強短繊維よりも優れていた。
そして、実施例の繊維を使用したコンクリート成形物は、比較例の繊維を使用したコンクリートより曲げ靭性係数が大きく、補強効果において優れていた。
2 突起部
S 辺部
3 溝部
4、4' 辺部に付形された凹部
5,5' 突起部の先端に付形された凹部
Claims (3)
- ポリプロピレン樹脂を主成分とする延伸繊維であって、該繊維の断面形状が4個の突起部を有する略四角形であり、かつ該略四角形の対向する2面に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部と、該略四角形の突起部に繊維の長手方向に沿って所定の間隔で付形された凹部とを備えていることを特徴とするセメント系成形体用補強短繊維。
- 繊度が3,000〜3,500dtexであり、辺部の凹部の深さが0.1〜0.2mm、長さが0.8〜1.2mm、かつ繊維長手方向の凹部の配置間隔が2.5〜3.5mmであって、突起部の凹部の深さが0.1〜0.2mm、長さが0.5〜0.7mm、かつ繊維長手方向の凹部の配置間隔が2.0〜3.0mmである請求項1に記載のセメント系成形体用補強短繊維。
- 前記略四角形の断面が、X形である請求項1又は2記載のセメント系成形体用補強短繊維。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008078877A JP4956472B2 (ja) | 2008-03-25 | 2008-03-25 | セメント系成形体用補強短繊維 |
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