JP3902097B2 - 型枠用接合部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は型枠用接合部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設現場等においてコンクリートやモルタル等の打込み材料を流し込んで構造物を製造するための方法として、従来から、転用型枠工法、先付け型枠工法、打ち込み型枠工法等が知られている。転用型枠工法は、型枠を建て込み、打込み材料を流し込んで硬化させた後、型枠を解体し、コンクリートがむき出しになった構造物を得る工法である。先付け型枠工法は、コンクリートと接触する内側の面に予め化粧板を取り付けた型枠を建て込み、打込み材料を流し込んで硬化させた後、化粧板を残して型枠を解体し、化粧板に覆われた構造物を得る工法である。打ち込み型枠工法は、型枠を建て込み、打込み材料を流し込んで硬化させた後、型枠を解体することなく永久的に残し、型枠に覆われた構造物を得る工法である。特に、打ち込み型枠工法で使用される型枠は「永久型枠」と呼ばれている。
【0003】
そのような工法においては複数の型枠が使用されるが、それらの継ぎ目からの打込み材料や水の流出や隣接する型枠のズレによる目違いの発生を防止するために、型枠の接合用部材を使用するのが一般的である。接合部材は、例えば、略T字状または略H字状の断面形状を有し、プラスチック、アルミ、スチール等から構成される(特開平7-247616号公報)。
【0004】
しかしながら、そのようなプラスチックからなる接合部材を使用すると、強度的に問題があり、特に打ち込み型枠工法では接合部材も永久的に残るため、プラスチック接合部材が劣化し、劣化による強度低下の問題が顕著であった。また金属からなる接合部材を使用すると、錆びることが問題となり、特に海岸沿い地域での打ち込み型枠工法で使用すると、錆びによる強度低下の問題が顕著であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、劣化及び錆による強度低下を起こさない、靭性の高い型枠用接合部材、およびその使用方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は型枠の縁部を嵌合するための型枠嵌合用溝を有する型枠用接合部材であって、繊維補強水硬性組成物から成形されてなることを特徴とする型枠用接合部材に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の型枠用接合部材は水硬性組成物から成形されてなる無機系硬化体であり、好ましくは曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する高い靭性を有するものである。
【0008】
本発明において、「多重亀裂」とは次のことを意味する。曲げ応力が印加されてセメント硬化体に最初の亀裂が入った段階で、その亀裂部に応力が集中して、通常のセメント硬化体ではそのまま破断に至る。すなわち応力−歪曲線が直線となる弾性変形の段階で破断に至る。そのためエネルギー吸収能が低く、脆性破壊を呈する。これに対して最初の亀裂が入ったのちも、直ちに材料全体の破断に至らず、最初の亀裂に続いて複数の亀裂が発生する現象が存在する。これを多重亀裂という。多重亀裂が発生すると、応力が分散されるため、最初の亀裂発生後も増加する荷重に耐えて大きな歪に至るまで破壊せず、高いエネルギー吸収能と高い靭性を示す。
【0009】
そのような多重亀裂が起こる本発明の接合部材を構成する水硬性組成物は、少なくとも水硬性セメントを含むマトリックスに繊維を配合・補強してなる繊維補強水硬性組成物である。マトリックスは好ましくはさらにシリカ質原料、パルプおよび水溶性セルロースを含み、減水剤などの混和剤、鉱物繊維および軽量骨材が配合されてもよい。
【0010】
本発明において配合される繊維は、配合によって、水硬性組成物を硬化させてなる硬化体に、曲げ載荷時の多重亀裂を起こさせ得る補強繊維であれば、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系繊維(PVA繊維)、ポリプロピレン系繊維(PP繊維)、ポリエチレン系繊維(PE繊維)、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維、レーヨン系繊維、ガラス繊維、スチール繊維等が挙げられる。製造コストを低減し、多重亀裂をより有効に起こす観点から好ましくはPVA繊維、PE繊維、PP繊維、アラミド繊維であり、特にPVA繊維である。
【0011】
これらの繊維は繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜200μm、アスペクト比が150〜1000である。繊維長がより短い、繊維径がより大きい、またはアスペクト比がより小さい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、最初に亀裂が生じたときに、繊維が架橋しても応力を負担することができず、すぐに引き抜け、多重亀裂を発生する前に破壊してしまう。
一方、繊維長がより長い、繊維径がより小さい、またはアスペクト比がより大きい場合は、曲げ応力が負荷された状態において、繊維の引き抜けよりも先に、繊維自体が破断してしまうために多重亀裂が発生しない。
【0012】
本発明において、繊維の「アスペクト比」とは、繊維長を繊維断面の面積と同面積を有する相当円の直径で除した値である。
【0013】
PVA繊維は通称ビニロン繊維とも呼ばれているもので、PVA繊維を使用する場合は、繊維長が3〜50mm、好ましくは3〜15mm、特に6〜12mm、繊維径が10〜100μm、好ましくは20〜50μm、アスペクト比が100〜400、好ましくは150〜300であることが望ましい。
【0014】
最も好ましいPVA繊維は特に、繊度2〜150dtex、特に4〜25dtex、引張強度4cN/dtex以上、特に6〜20cN/dtexを有する。
繊度は、繊維状物の一定糸長の重量を測定して見掛け繊度をn=5以上で測定した平均値を用いている。なお、一定糸長の重量測定により繊度が測定できないもの(細デニール繊維)はバイブロスコ−プにより測定している。
強度は、予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間繊維を放置して調湿したのち、単繊維を糸長20cm、引張速度10cm/分としてインストロン試験機「島津製作所製オートグラフ」にて測定した値を用いている。なお繊維長が20cmより短い場合は、そのサンプルの可能な範囲での最大長さを把持長として測定することとしている。
【0015】
そのような好ましいPVA繊維として、市販のクラロンK―II 「パワロン」(クラレ社製)が入手可能である。
【0016】
またPP繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0017】
またPE繊維を使用する場合は、繊維長が3〜15mm、好ましくは6〜12mm、繊維径が5〜40μm、好ましくは10〜30μm、アスペクト比が150〜1000、好ましくは200〜700であることが望ましい。
【0018】
上記繊維は硬化後の硬化体における体積混入率が0.1〜10%、好ましくは2〜7%となるように配合される。繊維の体積混入率がより小さいと亀裂が入ったときにそこに集中する応力を支えることができないで架橋作用を発揮できない。また体積混入率がより大きいと繊維同士の接触部分が増加してセメントとの一体化を妨害するため十分な補強効果が得られなくなる。
【0019】
繊維の「体積混入率」とは、以下の方法によって測定された値を用いている。セメント硬化体を押出方向に対して直角方向に裁断し、その裁断面を走査電子顕微鏡を用いて、加速電圧25kVで反射電子像を観察した。セメント硬化体中の繊維混入率Vfは、顕微鏡の視野にある観察面の繊維の断面積の合計を、電子顕微鏡の視野の面積で除した値として求めた。繊維混入率Vfは、試験片の裁断面中の異なる3つの視野について測定した値の平均値を採用した。
【0020】
本発明において使用される水硬性セメントは、水との反応により硬化体を形成できる限り、特に限定されず、例えば、各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカセメント、マグネシアセメント、硫酸塩セメント等をすべて含む。
【0021】
シリカ質原料としては、珪石粉、高炉スラグ、珪砂、フライアッシュ、珪藻土、シリカヒューム、非晶質シリカ等を使用することができる。好ましくは、接合部材の強度向上および寸法安定性に寄与する点から、珪石粉、珪砂である。これらのシリカ質原料として好ましくは比表面積(JIS R 5201に記載の方法による)が3000〜15000cm2/gのものを使用する。シリカ質原料は水硬性セメント100重量部に対して40〜100重量部、好ましくは50〜80重量部の割合で配合される。シリカ質原料が40重量部より少ないと接合部材の強度が低下する上に、エフロレッセンスが発生し易くなり、100重量部より多くても接合部材の強度が低下する。
【0022】
パルプは、綿パルプまたは木材パルプ等の天然パルプが好ましい。天然パルプであれば特に限定されず、バージンパルプのみならず古紙からの再生パルプも使用できる。また木材パルプの場合、木材の組織からリグニンを化学的に取り除いた化学パルプ、木材を機械的に処理した機械パルプのいずれも使用できる。パルプは繊維長が0.05〜10mmのものが好ましい。パルプは水硬性セメント100重量部に対して1〜80重量部、好ましくは2〜30重量部の割合で配合される。1重量部より少ないと補強効果を発揮できず、また80重量部より多いと分散不良となり、接合部材の表面平滑性が悪化したりする。
【0023】
水溶性セルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。水溶性セルロースは、水硬性組成物の各成分を混合・混練し、押出成形する際に、混練物に粘性を付与し、成形性を向上させるものである。水溶性セルロースは水硬性セメント100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部の割合で配合される。0.1重量部より少ないと可塑性がなく成形できない。一方10重量部より多い場合にはコストの上昇を招くだけであり、これ以上の効果の向上は期待できない。
【0024】
鉱物繊維としては、セピオライト、ワラストナイト、タルク、アタパルジャイト、ロックウール等を例示することができる。鉱物繊維は水硬性セメント100重量部に対して0〜40重量部、好ましくは3〜25重量部の割合で配合される。鉱物繊維が40重量部より多いと接合部材の強度が低下する。
【0025】
軽量骨材としては、火山れきなどの天然軽量骨材、焼成フライアッシュバルーンなどの人工軽量骨材、真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトなどの超軽量骨材、膨張スラグなどの副産物軽量骨材を使用することができる。好ましくは、比重を0.06〜0.5に設定できる真珠岩パーライト、黒曜石パーライト、バーミキュライトである。
【0026】
本発明の水硬性組成物には、上記以外の添加剤として、必要に応じて、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム等のシリカ以外の無機質材料、減水剤、界面活性剤、増粘剤等を配合することもできる。
【0027】
本発明の接合部材は、水硬性組成物を構成する上記成分の混合物に水を加え、成形・硬化することによって得られる。好ましくは押出成形により成形されるものである。このように押出成形することにより、補強繊維が押出方向により支配的に配向するため、押出方向に直角な方向からの曲げ応力または押出方向に対する引張応力に対して繊維の架橋作用による補強効果をより効果的に発揮することができる。さらに押出成形することにより、一般により緻密な成形体が得られ、結果として以下に示すような比較的複雑な形状の本発明の接合部材を容易に成形できる。水硬性組成物中における水の配合量は一般に水硬性セメント100重量部に対して40〜90重量部が好適である。
【0028】
型枠用接合部材の形状
本発明の接合部材は型枠の縁部と嵌合するための型枠嵌合用溝を有し、当該接合部材の軸方向に対する垂直断面(以下、単に「垂直断面」という)において上記溝を形成する凹部を有している。
【0029】
接合部材における溝の数、すなわち垂直断面での凹部の数は、接合部材を介して接合される型枠の数に応じて適宜、決定され、通常、2以上、好ましくは2〜4である。一般的には2本の上記溝を有する接合部材がよく使用される。
【0030】
2枚の型枠の接合
接合部材が2枚の型枠を接合する場合、例えば、図1(A)に示すように接合部材10は押出方向Pに2本の型枠嵌合用溝1a、2aを有する。すなわち、図1(B)に示すように、垂直断面が2個の凹部1b、2bを有する。使用時において接合部材10は、図1(C)に示すように、それらの溝で型枠11、12の縁部と嵌合し、結果として型枠を挟み込んで支持する。
【0031】
溝の寸法は型枠の寸法に応じて決定される。図1(B)において溝の幅X1は型枠の厚みと略等しくなければならないというわけではなく、型枠の厚みよりもう少し大きめにして、嵌合時、溝の側面(図1(B)における3、4)と接触し得る型枠端部の側面と溝側面3,4との間にシーリング剤を介在させてもよい。また嵌合時において溝の底面(図1(B)における7)と型枠の端面との間にもシーリング剤を介在させてもよい。シーリング剤を介在させることにより、水分の漏出をより完全に防止できる。
【0032】
シーリング剤は液状、ペースト状等の形態のものが使用され、例えば、シリコン系充填材等の物質が使用可能である。またこれらの物質を多孔質体(例えば、スポンジ)又は不織布等に含浸させたものをシーリング剤として上記のように型枠と溝との間に介在させてもよい。介在させるに際してシーリング剤は型枠または溝のいずれに適用されてよく、例えば、溝の側面および/または底面にシーリング剤を適用した後で溝に型枠を嵌合させてもよいし、または型枠端部の側面および/または端面にシーリング剤を適用した後で溝に型枠を嵌合させてもよい。
【0033】
溝の側面(図1(B)における3と4)は、当該溝に型枠の端部が嵌合できる範囲内で、略平行であり、溝は、例えば溝の底面7に近づくに従って幅X1が広がる形状を有していても良いし、または狭まる形状を有していても良い。
【0034】
接合部材の他の寸法、例えば、図1(B)におけるX2およびY1〜Y3は、構造物の製造時において型枠と共にコンクリートやモルタル等(本明細書中、「打込み材料」という)の流出を防ぎ、成形を行うという接合部材本来の目的を達成できる限り特に制限されない。
【0035】
本発明の接合部材の別の実施形態では、図2の垂直断面図に示すように、接合部材20の打込み材料27との接触面21にアンカー25が形成されてもよい。図2は、本発明の別の実施形態の接合部材20を型枠11、12とともに使用し、打込み材料27を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【0036】
アンカー20の断面形状は特に制限されず、例えば、図3(A)に示すように棒形状28であっても、図3(B)に示す様にT字形状29であってもよい。垂直断面におけるアンカー20の太さは特に制限されないが、成形容易性およびアンカー部分の破損防止の観点から、最も細い部分で5mm以上であることが好ましい。
【0037】
またアンカーは押出方向で連続的に形成されてもよいし、または断続的に突起状に形成されてもよい。接合部材は押出成形によって成形される観点からは、アンカーは押出方向で連続的に、本体部分24と同様の材料、すなわち前記水硬性組成物から本体部分24と一体的に形成されることが好ましい。
【0038】
図1において2本の溝1a、2a(図1(A))、すなわち垂直断面上、2個の凹部1b、2b(図1(B))は互いに反対の方向に開口するように設けられており、2つの溝の開口方向は180°をなしているが、溝の開口方向は接合される型枠の所望の接合角度に応じて決定されればよく、180°以下の範囲、一般的には90〜180°の範囲で設定可能である。
【0039】
例えば、型枠を水平面上、直角に接合する場合は、図4(A)に示すように、接合部材30の2つの溝の開口方向のなす角θを90°とする。図4(A)中、X1、X2、Y1、Y2およびY3はそれぞれ前記図1(B)におけるX1、X2、Y1、Y2およびY3と同様である。
【0040】
図4(A)の接合部材30は、例えば図4(B)の概略断面図に示すようにして型枠31〜34とともに使用される。打込み材料35はそれらの中に流し込まれて成形され、硬化し、構造物が得られる。
【0041】
また例えば、2つの溝の開口方向のなす角θが120°のときの接合部材40は、例えば図5の概略断面図に示すようにして型枠41〜46とともに使用される。打込み材料47はそれらの中に流し込まれて成形され、硬化し、構造物が得られる。
【0042】
また上記したいずれの図においても接合部材は、平板状の型枠を接合するのに適した形状、すなわち垂直断面において略方形の型枠嵌合用溝を有しているが、曲面板状の型枠を接合するのに適した形状の型枠嵌合用溝を有していても良い。そのような形状を有する溝を備えた接合部材として、例えば、図6の概略断面図に示すような接合部材50がある。接合部材50は例えば、曲面板状型枠51〜54とともに使用され、それらの中に打込み材料55が流し込まれて成形され、硬化し、円柱形状を有する構造物を得ることができる。
【0043】
上記のように2本の溝が形成された接合部材は、アンカーを有する場合を除いて、転用型枠工法、先付け型枠工法、打ち込み型枠工法のいずれの工法で使用されてもよいが、特に打ち込み型枠工法で使用されることが好ましい。本発明の接合部材はそれ自体、高い靭性を有するため、打ち込み型枠工法で使用することによって、他の工法で製造された構造物と比較して、より耐震性に優れた構造物を得ることができる。また打ち込み型枠工法によると、工期が短縮される。さらに打ち込み型枠工法では接合部材および型枠の解体はなく、廃棄物は出ないため、省力化が可能で、環境保護にもよい。
【0044】
また2本の溝が形成された接合部材は上記の工法以外に、補強工事やリニューアル工事にも有用である。例えば、既設の構造物の周りに当該接合部材および型枠を建て込み、構造物と接合部材および型枠との間に打込み材料を流し込む。
【0045】
3〜4枚の型枠の接合
打ち込み型枠工法で接合部材を使用する場合、接合部材は3または4枚の型枠を接合するために使用されてもよい。このとき、接合部材は3または4本の型枠嵌合用溝を有する。3本の溝を有する接合部材は例えば、図7の概略断面図中、60で示されるような断面形状を有する。4本の溝を有する接合部材は例えば、図7の概略断面図中、70で示されるような断面形状を有する。これらの接合部材60および70において、溝は開口方向90°の等間隔で形成されているが、開口方向の間隔は180°以下の範囲で任意に設定可能である。接合部材60および70は溝の数、開口方向が異なること以外、図1(B)の接合部材と同様である。図7中、接合部材30は図4における接合部材30と同様である。
【0046】
このような接合部材30、60、70を使用して型枠を接合し、分割された各部屋65〜68に打込み材料を流し込んで成形し、硬化させることにより、耐震性が顕著に向上した構造物が得られる。構造物内部に靭性の高い接合部材および型枠が存在することにより、構造物の全体としての靭性が飛躍的に向上するためである。
【0047】
以上のような本発明の接合部材と共に使用される型枠はセメント系の材料からなっていることが好ましく、より好ましくは本発明の接合部材を構成する前記した水硬性組成物と同様のものからなっている。打ち込み型枠工法でいずれも前記水硬性組成物からなる接合部材および型枠(永久型枠)を使用することにより、より耐震性に優れた構造物が得られるためである。
【0048】
【実施例】
実施例 1
普通ポルトランドセメント100重量部に、長さ6mm、繊維径40μm(アスペクト比150)のPVA短繊維(クラレ社製、商品名「クラロンK-II“パワロン”)5.1重量部、珪石粉(比表面積4000cm2/g)60重量部、パルプ(広葉樹系パルプ)5重量部、およびメチルセルロース(信越化学工業社製)6重量部を加えて、ミキサーにより粉体混合した。粉体混合を続けながらこれに水70.0重量部を混合したのちニーダーに移して混練してセメントペーストを練り上げた。
得られたセメントペーストをシリンダー式真空押出成形機から金型を通して押出成形した。金型の吐出口寸法は幅80mm、高さ15mmの長方形のものを用いた。金型から吐出された押出物はトレーに受けた。
押出成形体は恒温恒湿器中で蒸気養生し、硬化させた。
【0049】
得られた繊維補強セメント硬化体の曲げ特性(曲げ強度、曲げ強度時変位、破壊エネルギー、亀裂数)および比重を評価し、結果を表1に記載した。表1に示すようにセメント硬化体は曲げ試験において多重亀裂破壊を起し、高い物性値を示現した。また硬化体中のPVA繊維の体積混入率は3.0%であった。硬化体の曲げ特性、亀裂の数は次のようにして評価した。
【0050】
(1)曲げ特性の評価法
幅約80mm、厚さ約15mm長さ250mmの2点載荷の単純曲げ試験用の試験体を切り出した。
載荷点間距離は60mm、支点間距離は180mm、クロスヘッド速度は0.5mm/minで行った。測定した荷重Pをもとに、下記式(1)により曲げ応力σbを評価した:
σb=PL/bt2 (1)
式中、bは試験片の幅、tは試験片の厚さ、Lは支点間距離を表す。
図8に2点載荷の単純曲げ試験の状況を示した。矢印は集中荷重、三角は支点を示す。
【0051】
(2)発生した亀裂数の測定
曲げ試験により発生した亀裂の数は、破断後の試験片について目視により計数した。亀裂数は3個の試験体の平均値で表した。
【0052】
実施例 2〜3
PVA繊維の代わりにそれぞれPP繊維(繊維径(df)=18μm、繊維長(Lf)=6mm)、PE繊維(df=12μm、Lf=6mm)を表1に記載の配合比率で使用したこと以外、実施例1と同様にして繊維補強セメント硬化体を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。実施例2〜3の硬化体も多重亀裂破壊を起こし、優れた曲げ特性を発現した。
また、図9には実施例1〜3の曲げ応力−変位曲線を示した。図中、「PVA」は実施例1の結果を、「PP」は実施例2の結果を、「PE」は実施例3の結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明の接合部材は水硬性組成物からなる無機系硬化体であるため、靭性に優れ、耐錆性および耐塩害性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の一実施形態の接合部材の概略見取り図であり、(B)は(A)の接合部材の概略断面図であり、(C)は(A)の接合部材を型枠とともに使用したときの概略見取り図である。
【図2】 本発明の別の実施形態の接合部材を型枠とともに使用し、コンクリートやモルタル等を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【図3】 (A)および(B)は本発明の別の実施形態の接合部材の概略断面図である。
【図4】 (A)は本発明の別の実施形態の接合部材の概略見取り図であり、(B)は(A)の接合部材を型枠とともに使用し、コンクリートやモルタル等を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【図5】 本発明の別の実施形態の接合部材を型枠とともに使用し、コンクリートやモルタル等を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【図6】 本発明の別の実施形態の接合部材を型枠とともに使用し、コンクリートやモルタル等を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【図7】 本発明の別の実施形態の接合部材を型枠とともに使用し、コンクリートやモルタル等を流し込んで構造物を製造するときの概略断面図である。
【図8】 セメント硬化体の2点載荷単純曲げ試験状況を示す説明図である。
【図9】 実施例1〜3のセメント硬化体の曲げ応力−撓み関係図である。
【符号の説明】
1a、2a;型枠嵌合用溝、1b、2b;凹部、3,4;溝の側面、7;溝の底面、10、20、30、40、50、60;接合部材、11、12、31〜34、41〜46、51〜54;型枠、21;接合部材の打込み材料との接触面、24;接合部材本体、25、28、29;アンカー、27、35、47、55;打込み材料、65〜68;分割された小部屋。
Claims (5)
- 型枠の縁部と嵌合するための型枠嵌合用溝を有する型枠用接合部材であって、水硬性セメント100重量部、シリカ質原料40〜100重量部、パルプ1〜80重量部および水溶性セルロース0 . 1〜10重量部を含んでなるマトリックスに、繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜200μm、アスペクト比が150〜1000であり、引張強度が4cN/dtex以上のポリビニルアルコール系繊維を補強繊維として配合した繊維補強水硬性組成物を押出成形することにより成形されてなり、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことを特徴とする型枠用接合部材。
- 型枠の縁部と嵌合するための型枠嵌合用溝を有する型枠用接合部材であって、水硬性セメント100重量部、シリカ質原料40〜100重量部、パルプ1〜80重量部および水溶性セルロース0 . 1〜10重量部を含んでなるマトリックスに、繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜40μm、アスペクト比が150〜1000であるポリプロピレン繊維を補強繊維として配合した繊維補強水硬性組成物を押出成形することにより成形されてなり、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことを特徴とする型枠用接合部材。
- 型枠の縁部と嵌合するための型枠嵌合用溝を有する型枠用接合部材であって、水硬性セメント100重量部、シリカ質原料40〜100重量部、パルプ1〜80重量部および水溶性セルロース0 . 1〜10重量部を含んでなるマトリックスに、繊維長が3〜100mm、繊維径が5〜40μm、アスペクト比が150〜1000であるポリエチレン繊維を補強繊維として配合した繊維補強水硬性組成物を押出成形することにより成形されてなり、曲げ載荷に際して多重亀裂を生じて破壊する性質を示すことを特徴とする型枠用接合部材。
- 前記型枠嵌合用溝を少なくとも2本以上有する請求項1〜3のいずれかに記載の型枠用接合部材。
- 前記型枠用接合部材が、打込み材料との接触面にアンカーを有する請求項1〜4のいずれかに記載の型枠用接合部材。
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