JP2004315251A - 高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法 - Google Patents

高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法 Download PDF

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Mutsumi Mizukoshi
睦視 水越
Yoshio Uchida
美生 内田
Maki Aoki
真材 青木
Takuya Konishi
拓也 小西
Tokuichi Maeda
徳一 前田
Takaharu Ichiyanagi
隆治 一柳
Koichiro Shimomo
孝一郎 紫桃
Yasushi Uehigashi
泰 上東
Shoji Nojima
昭二 野島
Kiyohisa Ono
聖久 小野
Kenji Kubota
賢司 窪田
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

【課題】高い強度や靱性が付与された新規なセメント複合体及び該複合体の製造法を提供すること。
【解決手段】セメント、骨材、水及び有機短繊維を含有する繊維補強セメント複合体であって、該繊維の引張強度が2,500〜6,000N/mmであり、該繊維の繊維混入率が0.75〜2.5体積%であり、且つ水セメント比(W/C)が50%以下であることを特徴とする高強度・高靱性セメント複合体、並びにその製造法。
【選択図】なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々のコンクリート構造物に用いられる高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート構造物は、圧縮には強いが引張には弱いという脆性的な材料であるため、引張強度等の強度や靱性を改善するために、それを構成するセメント中に無機系、有機系の短繊維補強材を混入することが行われている。
【0003】
例えば、引張強度が1,500〜2,400N/mmのポリビニルアルコール短繊維を1〜3体積%含有させたクラック分散型の短繊維補強セメント複合体が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、このセメント複合体においては、上記短繊維の力学性能が低いため、高い靱性を得るためには、実際上2体積%以上というかなり高い繊維混入率が必要であった。このため、繊維を均一に分散させるために、保湿剤や増粘剤を添加したり、特殊なミキサーを使用したり、繊維を水に溶かしてから練り混ぜるなどの煩雑な製造工程が必要であった。また、高強度且つ高靱性のセメント複合体とするため、モルタルの強度を高くすると、繊維とモルタルの付着は強くなるが、繊維自身の引張強度が限界に達し、ひび割れ面で繊維が破断するため、高い靱性を得ることが困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−193653号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い強度や靱性が付与された新規なセメント複合体及び該複合体を好適に製造できる製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来技術の現状に鑑み、セメント、骨材、水及び有機短繊維を含有する繊維補強セメント複合体における補強繊維について鋭意研究したところ、特定の高い引張強度等を有する有機短繊維を用いる場合には、比較的低い繊維混入率で十分に高い強度及び高い靱性が付与されたセメント複合体が得られること、かかるセメント複合体は有機繊維のマルチフィラメント繊維を水溶性樹脂で集束したものを用いる特定の方法により、好適に製造できること等を見出し、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法に係るものである。
【0009】
1.セメント、骨材、水及び有機短繊維を含有する繊維補強セメント複合体であって、該繊維の引張強度が2,500〜6,000N/mmであり、該繊維の弾性係数が45〜300kN/mmであり、該繊維の繊維混入率が0.75〜2.5体積%であり、且つ水セメント比(W/C)が50%以下であることを特徴とする高強度・高靱性セメント複合体。
【0010】
2.JIS R 5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容し、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上である上記項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
【0011】
3.有機短繊維が、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、パラ型アラミド繊維及びポリアリレート繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種である上記項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
【0012】
4.有機短繊維が、直径50μm以下、長さ3〜20mmのモノフィラメント繊維である上記項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
【0013】
5.(1)有機繊維のマルチフィラメント繊維を、水溶性樹脂で集束し、カットしてなる補強用チップと、セメント及び骨材とを混合する工程、
(2)工程(1)の混合物に、水及び空気量調整剤を混合し、空気量を10〜20体積%の範囲に調節して混練する工程、及び
(3)工程(2)の混練物に、消泡剤を加え、空気量を2〜8体積%の範囲に調節して混練する工程を含むことを特徴とする上記項1〜4のいずれかに記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
【0014】
6.水溶性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂である上記項5に記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
【0015】
7.空気調整剤が、AE剤である上記項5に記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
【0016】
【発明の実施の形態】
高強度・高靱性セメント複合体
本発明の高強度・高靱性セメント複合体は、セメント、骨材、水及び有機短繊維を含有する繊維補強セメント複合体であって、該繊維の引張強度が2,500〜6,000N/mm程度であり、該繊維の弾性係数が45〜300kN/mm程度であり、該繊維の繊維混入率が0.75〜2.5体積%であり、且つ水セメント比(W/C)が50%以下程度であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明のセメント複合体は、上記特定の有機短繊維により補強されていることにより、例えば、JIS R 5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容でき、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上という高強度・高靱性を達成することも可能である。
【0018】
本発明の繊維補強セメント複合体において、混入される有機短繊維としては、高強度且つ高弾性であることが必要であり、具体的には、該繊維の引張強度が2,500〜6,000N/mm程度であり、且つ、該繊維の弾性係数が45〜300kN/mm程度であることが、必要である。
【0019】
引張強度が2,500N/mm未満ではセメント複合体の強度が十分ではない場合があり、一方6,000N/mmを超えるような繊維は入手困難である。また、該繊維の弾性係数が45kN/mm未満ではセメント複合体の靱性が十分ではない場合があり、一方300kN/mmを超えるような繊維は入手困難である。
【0020】
有機短繊維の引張強度は2,600〜5,800N/mm程度であるのが好ましく、又該繊維の弾性係数は70〜200kN/mm程度であるのが好ましい。
【0021】
また、本発明セメント複合体は、上記有機短繊維の繊維混入率が0.75〜2.5体積%程度であることが必要である。該混入率が0.75体積%未満ではセメント複合体の強度や靱性が十分ではない場合があり、一方2.5体積%を超えると、繊維の分散が不完全となり、繊維混入率に見合う靭性改善効果が得られなくなるので好ましくない。該混入率は、1.0〜2.0体積%であることが好ましい。
【0022】
ここで、本発明における繊維混入率(V、fiber volume fraction)は、式
=(V/V)×100 (I)
(式中、Vは繊維補強セメント複合体の単位体積(1,000リットル=1m)中に混入された補強繊維の体積(リットル)を示し、Vは繊維補強セメント複合体の単位体積(1,000リットル=1m)を示す。)で表される割合(体積%)である。
【0023】
更に、本発明セメント複合体の水セメント比(W/C)は、通常、50%以下であることを必要とする。この値よりも水セメント比が高いと、繊維の引き抜けによる靱性能の低下が著しくなるので、好ましくない。水セメント比は、20〜50%であるのが好ましく、25〜45%であるのがより好ましい。
【0024】
本発明において用いられる有機短繊維の原材料としては、例えば、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、パラ型アラミド繊維、ポリアリレート繊維等を挙げることができ、これらの一種を、又は二種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0025】
また、上記有機短繊維は、通常、直径50μm以下程度、長さ3〜20mm程度のモノフィラメント繊維であるのが、繊維混入による補強効果、即ち高強度・高靱性付与の観点から、好ましい。該モノフィラメント繊維の直径は、5〜30μm程度、長さは4〜15mm程度であるのがより好ましい。
【0026】
高強度・高靱性セメント複合体の製造法
本発明の高強度・高靱性セメント複合体は、常法に従って、本発明特定の有機短繊維を、セメント、骨材及び水、必要に応じて、混和剤等と共に混合することにより、調製することも可能である。しかし、通常の方法では、混練時の有機短繊維の飛散防止が困難であり、又該繊維をモルタル中に均一に分散させることが困難であるという問題がある。
【0027】
本発明者は、混練時の有機短繊維の飛散を有効に防止でき、しかも該繊維をモルタル中に均一に分散させることができる製造方法として、前記本発明の高強度・高靱性セメント複合体の製造法を、開発することに成功した。
【0028】
本発明の高強度・高靱性セメント複合体の製造法は、以下の三工程を必須の工程として含んでいる。
(1)有機繊維のマルチフィラメント繊維を、水溶性樹脂で集束し、カットしてなる補強用チップと、セメント及び骨材とを混合する工程、
(2)工程(1)の混合物に、水及び空気量調整剤を混合し、空気量を10〜20体積%程度の範囲に調節して混練する工程、及び
(3)工程(2)の混練物に、消泡剤を加え、空気量を2〜8体積%程度の範囲に調節して混練する工程。
【0029】
工程(1)は、有機繊維のマルチフィラメント繊維を、水溶性樹脂で集束し、カットしてなる補強用チップと、セメント及び骨材とを混合する工程であり、いわゆる空練り工程である。
【0030】
集束剤として用いる水溶性樹脂は、工程(1)における繊維飛散防止性能が高く、工程(2)の混練時に速やかに解繊してモノフィラメント繊維になる性能が高い樹脂であることが好ましい。かかる水溶性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド誘導体の有機塩又は無機塩、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等を挙げることができる。水溶性樹脂としては、アクリル系樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂を使用するのが、上記性能の観点から、好ましい。
【0031】
有機繊維のマルチフィラメント繊維の集束は、該フィラメント繊維に水溶性樹脂を含浸後、乾燥することにより、行われる。この際の樹脂使用量は、繊維重量に対して、固形分量で、通常、5〜25重量%程度とするのが適当である。集束されたマルチフィラメント繊維は、適当な長さにカットして補強用チップとする。カットする長さは、解繊後に補強短繊維となるモノフィラメント繊維の長さであり、通常、3〜20mm程度の長さとするのが適当である。
【0032】
上記工程(1)の補強用チップとセメント及び骨材との混合は、通常の方法により行うことができる。また、この際に、通常、コンクリート中の該補強短繊維の含有量が0.75〜2.5体積%程度、好ましくは1.0〜2.0体積%程度となるように調整するのが好ましい。
【0033】
上記セメントとしては、例えば、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメント、耐硫酸塩セメント等の各種ポルトランドセメント;ジェットセメント、アルミナセメント、ポリマーセメント等の特殊セメント等を使用することができる。
【0034】
骨材としては、例えば、川砂利、砕石、スラグ砕石等を使用することができる。
【0035】
工程(2)は、工程(1)の混合物に、水及び空気量調整剤を混合し、空気量を10〜20体積%程度の範囲に調節して混練する工程であり、いわゆる本練り工程である。この混練時に、前記補強用チップが速やかに解繊してモノフィラメント繊維になるが、この際上記範囲内の空気量に調節することにより、局所的な繊維の集中、いわゆる繊維ダマの生成を防止でき、又モノフィラメント繊維をフレッシュモルタル中に均一に分散させることができる。空気量調整剤としては、例えば、空気連行剤であるAE剤を好適に使用することができる。
【0036】
上記工程(2)の混練の際に、必要に応じて、例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等の各種混和剤を添加、使用することができる。
【0037】
工程(3)は、工程(2)における空気量のままでは、硬化後のセメント複合体の力学性能に悪影響を及ぼすことを防止する観点から、例えばシリコン系消泡剤等の消泡剤を添加して、空気量を2〜8体積%程度の範囲に調節する工程であり、消泡剤添加後更に混練することにより行われる。工程(3)における空気量調節は、脱気等により行うことも可能であるが、本発明方法においては、作業性、消泡の確実性等の観点から、消泡剤を添加して行うのが、好ましい。空気量は、3〜6体積%程度の範囲に調節するのが、好ましい。
【0038】
上記本発明製造法によれば、保湿剤等の添加、特殊なミキサーの使用、繊維を水に溶かしてから混練する等の煩雑な製造工程を全く行うことなく、高強度且つ高靱性の本発明セメント複合体を、好適且つ容易に収得することができる。
【0039】
本発明の高強度・高靱性繊維補強セメント複合体は、常法に従って、現場施工用、プレキャスト構造体用等として使用でき、高強度且つ高靱性のコンクリート構造体が得られる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。
【0041】
実施例1
引張強度が2,600N/mmで、弾性係数が88kN/mmである超高分子量ポリエチレン繊維(商品名「ダイニーマ」、東洋紡績(株)製)のマルチフィラメント長繊維を、水溶性アクリル酸エステル系樹脂溶液(商品名「DICNAL RS100C」、大日本インキ化学工業(株)製)に、繊維重量に対して樹脂固形分が12.8重量%になるように、含浸し、110℃で2分間乾燥して、直径600μmの集束されたマルチフィラメント繊維を得た。これを、長さ6mmにカットして、補強用チップを得た。このマルチフィラメント繊維を構成するモノフィラメント繊維の直径は、12μmであった。
【0042】
上記補強用チップと、早強ポルトランドセメント1,080kg/m、砂(珪砂7号)464kg/m及び補強用チップをビニール袋中でプレミックスした後、ホバートミキサーにて、15秒間空練りし、これに水486kg/m及びAE剤((株)エヌエムビー社製、商品名「マイクロエア775S」)セメント重量に対して0.06重量%を加えて、2分間混練して、空気量を12.5体積%に調節した。この混練により、補強用チップが解繊してモノフィラメント短繊維になった。次いで、消泡剤((株)エヌエムビー社製、商品名「マイクロエア404」)をセメント重量に対して0.24重量%加えて、更に1分間混練した。この配合において、W/Cは45%、s/cは43%、繊維混入量は1.0体積%であった。
【0043】
練り混ぜられた繊維補強モルタルは、主に目視及び触診により調べた結果、繊維ダマは殆ど無かった。JIS R 5201に準じたフローは、208mmであった。また、空気量(JIS A 1108に準じて測定)は5.5体積%であった。
【0044】
上記の繊維補強モルタルを、20℃の恒温室で打設し、翌日脱型して、40×40×160mmの硬化した供試体を得た。この供試体を、7日間20℃の水中で養生後、曲げ試験に供した。この供試体の圧縮強度は、60N/mmであった。
【0045】
曲げ試験は、JIS R 5201に規定される三点曲げ試験に準じて、供試体を、スパン100mmで単純支持し、中央集中載荷することにより行い、スパン中央たわみが1mmに達するまでの曲げ応力−たわみ関係を調べた。
【0046】
図1に、上記超高分子量ポリエチレン繊維混入量が1.0体積%の3個の各セメント複合体から得た供試体(No.1、2及び3)について、曲げ試験を行った際の曲げ応力−たわみ曲線のグラフを示す。
【0047】
図1より、本発明複合体から得られた供試体は、作用応力が増加しても急激な繊維の破断は生じず、初期ひび割れ発生後も曲げ応力は低下することがなく、載荷終了間際まで、ひずみ硬化現象が現れることが認められた。また、図1より、JIS R 5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容し、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上であることが明らかである。
【0048】
従って、本発明の繊維補強セメント複合体によるコンクリート構造体では、例えば圧縮強度で60N/mmという高強度領域においても、高い靱性が得られることが明らかである。
【0049】
実施例2
引張強度が5,800N/mmで、弾性係数が180kN/mmであるポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(商品名「ザイロン」、東洋紡績(株)製)のマルチフィラメント長繊維を、水溶性アクリル酸エステル系樹脂溶液(商品名「DICNAL RS100C」、大日本インキ化学工業(株)製)に、繊維重量に対して樹脂固形分が7.3重量%になるように、含浸し、110℃で2分間乾燥して、直径300μmの集束されたマルチフィラメント繊維を得た。これを、長さ6mmにカットして、補強用チップを得た。このマルチフィラメント繊維を構成するモノフィラメント繊維の直径は、12μmであった。
【0050】
上記補強用チップと、早強ポルトランドセメント1,080kg/m、砂(珪砂7号)464kg/m及び補強用チップをビニール袋中でプレミックスした後、ホバートミキサーにて、15秒間空練りし、これに水486kg/m及びAE剤((株)エヌエムビー社製、商品名「マイクロエア775S」)セメント重量に対して0.06重量%を加えて、2分間混練して、空気量を12.5体積%に調節した。この混練により、補強用チップが解繊してモノフィラメント短繊維になった。次いで、消泡剤((株)エヌエムビー社製、商品名「マイクロエア404」)をセメント重量に対して0.24重量%加えて、更に1分間混練した。この配合において、W/Cは45%、s/cは43%、繊維混入量は1.0体積%であった。
【0051】
練り混ぜられた繊維補強モルタルは、主に目視及び触診により調べた結果、繊維ダマは殆ど無かった。JIS R 5201に準じたフローは、193mmであった。また、空気量(JIS A 1108に準じて測定)は5.2体積%であった。
【0052】
上記の繊維補強モルタルを、20℃の恒温室で打設し、翌日脱型して、40×40×160mmの硬化した供試体を得た。この供試体を、7日間20℃の水中で養生後、曲げ試験に供した。この供試体の圧縮強度は、63N/mmであった。曲げ試験は、JIS R 5201に準じて、実施例1と同様に行った。
【0053】
図2に、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維混入量が1.0体積%の3個の各セメント複合体から得た供試体(No.1、2及び3)について、曲げ試験を行った際の曲げ応力−たわみ曲線のグラフを示す。
【0054】
図2より、本発明複合体から得られた供試体は、作用応力が増加しても急激な繊維の破断は生じず、初期ひび割れ発生後も曲げ応力は低下することがなく、載荷終了間際まで、ひずみ硬化現象が現れることが認められた。また、図2より、JIS R 5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容し、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上であることが明らかである。
【0055】
従って、本発明の繊維補強セメント複合体によるコンクリート構造体では、例えば圧縮強度で63N/mmという高強度領域においても、高い靱性が得られることが明らかである。
【0056】
前記図1及び図2の結果から、本発明繊維補強セメント複合体による供試体では、ひび割れ部分における繊維の架橋能力が高いため、あるひび割れ面の繊維が破断する前に、他の箇所でひび割れが発生し、多数のひび割れ部分において繊維の引張り応力がうまく分配されることに基づいて、曲げ耐荷力は、上昇と下降を繰り返しながら試験のほぼ最終段階まで、急激な耐荷力低下もなく、高い靱性が得られていることが判る。従って、本発明の繊維補強セメント複合体は、高強度且つ高靱性であることが明らかである。
【0057】
【発明の効果】
本発明の繊維補強セメント複合体によれば、高い引張強度、曲げ強度等を有し、且つ高い靱性を有しており、特に、ひび割れの生成及び進展を効果的に抑制でき、又ひび割れ分散性が高いコンクリート構造物が得られるという顕著な効果が奏される。
【0058】
具体的には、本発明繊維補強セメント複合体によれば、例えば、JIS R5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容でき、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上という高強度・高靱性を達成することも可能である。また、例えば、本発明の繊維補強セメント複合体によれば、モルタルの強度が圧縮強度で60N/mmという高強度領域においても、高い靱性を発揮するコンクリート構造体を得ることもできる。
【0059】
従って、本発明高強度・高靱性繊維補強セメント複合体は、例えば、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等のプレキャスト部材接合部や柱梁接合物等の過密な配筋が起こり易い部位、構造物等に好適に使用できる。また、高耐久・長寿命コンクリート構造物用として、永久型枠、カーテンウォール等の二次製品、橋梁床板補修補強材等としても好適に使用できる。
【0060】
上記本発明の繊維補強セメント複合体の効果は、ひび割れ部分における繊維の架橋能力が高いため、あるひび割れ面の繊維が破断する前に、他の箇所でひび割れが発生し、多数のひび割れ部分において繊維の引張り応力がうまく機能することに基づいて、ひび割れ発生後も曲げ耐荷力が低下することなく高い水準で維持できることに起因すると考えられる。
【0061】
また、本発明製造法によれば、保湿剤等の添加、特殊なミキサーの使用、繊維を水に溶かしてから混練する等の煩雑な製造工程を全く行うことなく、高強度且つ高靱性の本発明セメント複合体を、好適且つ容易に収得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において、超高分子量ポリエチレン繊維の繊維混入量が1.0体積%の3個の各セメント複合体から得た供試体(No.1、2及び3)について、曲げ試験を行った際の曲げ応力−たわみ曲線のグラフを示す。
【図2】実施例2において、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維の繊維混入量が1.0体積%の3個の各セメント複合体から得た供試体(No.1、2及び3)について、曲げ試験を行った際の曲げ応力−たわみ曲線のグラフを示す。

Claims (7)

  1. セメント、骨材、水及び有機短繊維を含有する繊維補強セメント複合体であって、該繊維の引張強度が2,500〜6,000N/mmであり、該繊維の弾性係数が45〜300kN/mmであり、該繊維の繊維混入率が0.75〜2.5体積%であり、且つ水セメント比(W/C)が50%以下であることを特徴とする高強度・高靱性セメント複合体。
  2. JIS R 5201に規定される三点曲げ試験において、0.75mm以上のたわみを許容し、且つ、たわみ0.75mmにおける曲げ応力が10N/mm以上である請求項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
  3. 有機短繊維が、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、パラ型アラミド繊維及びポリアリレート繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
  4. 有機短繊維が、直径50μm以下、長さ3〜20mmのモノフィラメント繊維である請求項1に記載の高強度・高靱性セメント複合体。
  5. (1)有機繊維のマルチフィラメント繊維を、水溶性樹脂で集束し、カットしてなる補強用チップと、セメント及び骨材とを混合する工程、
    (2)工程(1)の混合物に、水及び空気量調整剤を混合し、空気量を10〜20体積%の範囲に調節して混練する工程、及び
    (3)工程(2)の混練物に、消泡剤を加え、空気量を2〜8体積%の範囲に調節して混練する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
  6. 水溶性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂である請求項5に記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
  7. 空気調整剤が、AE剤である請求項5に記載の高強度・高靱性セメント複合体の製造法。
JP2003107854A 2003-04-11 2003-04-11 高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法 Pending JP2004315251A (ja)

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