JP2011121832A - 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材 - Google Patents

耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材 Download PDF

Info

Publication number
JP2011121832A
JP2011121832A JP2009282250A JP2009282250A JP2011121832A JP 2011121832 A JP2011121832 A JP 2011121832A JP 2009282250 A JP2009282250 A JP 2009282250A JP 2009282250 A JP2009282250 A JP 2009282250A JP 2011121832 A JP2011121832 A JP 2011121832A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cement
crack
coarse aggregate
kneaded material
composite material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009282250A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsushi Kanda
徹志 閑田
Noboru Sakata
昇 坂田
Daisuke Hayashi
大介 林
Yuji Uchida
雄士 内田
Suryanto Benny
ベニー・スリヤント
Kohei Nagai
宏平 長井
Koichi Maekawa
宏一 前川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kajima Corp
Original Assignee
Kajima Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kajima Corp filed Critical Kajima Corp
Priority to JP2009282250A priority Critical patent/JP2011121832A/ja
Publication of JP2011121832A publication Critical patent/JP2011121832A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B28/00Compositions of mortars, concrete or artificial stone, containing inorganic binders or the reaction product of an inorganic and an organic binder, e.g. polycarboxylate cements
    • C04B28/02Compositions of mortars, concrete or artificial stone, containing inorganic binders or the reaction product of an inorganic and an organic binder, e.g. polycarboxylate cements containing hydraulic cements other than calcium sulfates

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Structural Engineering (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Bridges Or Land Bridges (AREA)
  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)

Abstract

【課題】ECCの優れた変形能を活かしつつ、耐せん断破断性を改善した短繊維補強セメント複合材料を提供する。
【解決手段】繊維直径30〜50μm、繊維長さ5〜20mmのPVA短繊維を1.0〜3.0体積%含有し、下記[A]に記載の性質を持ち、水セメント比30%以上、砂セメント比0〜100%であるセメント系組成物Xと、粗骨材Yとを混合し、粗骨材Yの含有量が混練物全体の5〜15体積%である混練物とし、これを打設してセメント複合材料とする。
[A]セメント系組成物X(粗骨材Yを含まないもの)を練り混ぜてPVA短繊維を3次元方向にランダムに分散させた混練物についての標準水中養生による材齢28日の硬化体が、引張試験において1%以上の引張ひずみを呈すること。
【選択図】図4

Description

本発明は、引張強度、曲げ強度および靱性に優れたクラック分散型の短繊維補強セメント複合材料において、特に、最初に生じたクラック部分での「せん断ずれ」に対する抵抗力(本明細書では「耐せん断破断性」と呼んでいる)を向上させたものに用いるための混練物、並びにその混練物を用いて得られる複合材料および橋梁部材に関する。
短繊維を配合させることにより曲げ強度や靱性を向上させた短繊維補強セメント複合材料(FRC)は既に種々のものが実用化されている。中でも、PVA(Poly Vinyl Alcohol)短繊維を配合し、原材料の組み合わせを適正化することによって、1%以上という大きな引張ひずみを呈するセメント系材料が開発され、各種補修材料や、梁、床版等の構造材料として注目されている。この種の材料は、本来、引張荷重に対する変形能がほとんどないとされるセメント系材料において、靱性を飛躍的に向上させるものであり、ひずみ硬化型と呼ばれる高靱性繊維補強セメント複合材料(ECC;Engineered Cementitous Composite)として知られている。ECCを構成する組成物の詳細は、例えば特許文献1に開示されている。
特開2000−7395号公報
Benny SURYANTO, Kohei NAGAI, Koichi MAEKAWA,"Role of Coarse Aggregate in High Performance Fiber Reinforced Cementitious Composite",コンクリート工学年次論文集, 2009, Vol.31, No.1, pp.385-390.
ECCは、引張荷重が付与された際に、セメントマトリクスに多数の細かいクラックが分散して生じることによって材料全体のひずみ量を吸収し、破断することなく引張変形や曲げ変形に追従する性質を有している。その追従性能は引張ひずみにして1%以上であり、一般的なセメント系材料と比べ飛躍的に高い変形能を有するものである。
ECCの卓越した変形能は、例えば土木分野ではトンネルの吹き付けなどに適用する高耐久補修材料として優れた効果を発揮する。また、建築分野においても、例えば超高層集合住宅の梁部材などに適用した場合に耐震性の向上に有効であることが確かめられている。
ところが、ECCを橋梁の構造部材である床版や梁に適用するに際しては、さらなる特性改善が望まれる場合がある。橋梁の部材は車両走行荷重を頻繁に受ける。橋梁部材が受ける車両走行荷重は、走行に伴って荷重作用点が逐次移動することや、走行毎に車両の走行軸が異なることによって、主応力軸を常に変化させている。このため橋梁部材は、最初にある主応力軸を持つ第1の主応力(引張応力)が作用して微細な第1のクラックが生じ、その主応力軸による荷重が除荷されたのち、次に別の主応力軸を持つ第2の主応力(引張応力)が付与されるという状況を経験する。このような状況では、第2の主応力によって新たに微細な第2のクラックが生じるよりも優先して、既に生じている第1のクラックがせん断ずれを起こしやすくなる場合がある。そうなると第1のクラック部分で比較的容易に材料の破断に至ることとなり、耐久性に関しては必ずしも十分とはいえない。
ECCは優れた変形能を持つ反面、上記のような問題が顕在化する懸念があるため、道路床版などの構造部材への積極的な適用が阻まれているのが現状である。
本発明はこのような現状に鑑み、ECCの優れた変形能を活かしつつ、耐せん断破断性を改善した短繊維補強セメント複合材料を提供しようというものである。
発明者らは研究の結果、ECCの配合を有するセメント系組成物に少量の粗骨材を混合したとき、第1の主応力(最初に微細クラックを生じさせた引張効力)に対して、その後に負荷される第2の主応力がどのような方向を向いていても、耐せん断破断性が安定して改善されることを見出した。また、粗骨材を混合することによって効果が低減するであろうと考えられた「最初の微細クラックが形成される際の変形能(引張ひずみ)」も、ECC以外のセメント系材料と比べ十分に優れた水準が維持されることがわかった。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、繊維直径30〜50μm、繊維長さ5〜20mmのPVA短繊維を1.0〜3.0体積%含有し、下記[A]に記載の性質を持ち、水セメント比30%以上、砂セメント比0〜100であるセメント系組成物Xと、粗骨材Yとを混合した混練物であって、粗骨材Yの含有量が混練物全体の5〜15体積%である、耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物が提供される。
[A]セメント系組成物X(粗骨材Yを含まないもの)を練り混ぜてPVA短繊維を3次元方向にランダムに分散させた混練物についての標準水中養生による材齢28日の硬化体が、引張試験において1%以上の引張ひずみを呈すること。
また、本発明では、前記混練物を硬化させてなる耐せん断破断性に優れたセメント複合材料が提供される。そのような複合材料として、橋梁部材(特に橋梁を構成する梁部材および床版)が例示できる。
本発明によれば、引張変形能力に優れるECCを改良したセメント系材料として、主応力軸が種々の方向に回転するような引張応力に曝される構造物において、既に生成した微細クラックのせん断ずれに起因した破断に対して優れた抵抗力を発揮するセメント系複合材料が提供可能となった。これにより、ECC配合を有するセメント系組成物の適用範囲が広がり、特に車両が通行する道路構造物における梁や床版の耐久性向上に寄与しうる。
従来のECCについて、第1の主応力によって微細クラックが発生した後に第2の主応力が付与された状態における第1および第2の主応力軸を含む断面内の応力状態を模式的に示した図。 図1の状態の後に第2の主応力に起因してせん断破断を起こした場合の断面を模式的に示した図。 本発明の混練物を硬化させてなるセメント複合材料について、第1の主応力によって微細クラックが発生した後に第2の主応力が付与された状態における第1および第2の主応力軸を含む断面内の応力状態を模式的に示した図。 図3の状態の後に第2の主応力に起因して新たな微細クラックが発生した場合の断面を模式的に示した図。 実施例における試験方法を示す図。
図1に、従来のECCについて、第1の主応力によって微細クラックが発生した後に第2の主応力が付与された状態における第1および第2の主応力軸を含む断面内の応力状態を模式的に示す。ECCからなる短繊維補強セメント複合材料3には、第1の主応力軸1の方向に作用した第1の主応力(引張応力)1A、1Bによって、既に微細な第1のクラック10が生じており、そのクラックを挟んでセメントマトリクスは3Aと3Bに分断されている。第1のクラック10は第1の主応力1A、1Bの方向(すなわち第1の主応力軸1の方向)に対して概ね垂直に生じる。
第1のクラック10の内部には図示していないが両側のセメントマトリクス3Aと3Bを繋ぐPVA短繊維が多数存在している。それらのPVA短繊維は3Aおよび3B両方のセメントマトリクスとタイトに接合しており、3Aと3Bの間に掛かる引張応力を負担できる状態になっている。そして、そのような微細な第1のクラック10が短繊維補強セメント複合材料3の中に概ね平行に多数導入されることにより、当該材料全体として第1の主応力軸1の方向における引張ひずみ量が賄われ、結果的に材料破断を起こさずに優れた変形能を呈するのがECCの特徴である。
図1の場面は、第1の主応力1A、1Bが一旦除荷された後に、第1の主応力軸1とは方向を異にする第2の主応力軸2の方向に、新たな引張応力である第2の主応力2A、2Bが付与された状態を想定したものである。第1の主応力軸1と第2の主応力軸2のなす角度θを本明細書では「第1/第2主応力軸角度」と呼ぶ。第2の主応力2A、2Bを第1のクラック10に作用する分力として示すと、垂直方向分力21A、21Bと、せん断方向分力22A、22Bに分けることができる。
第1の主応力1A、1Bと、第2の主応力2A、2Bの大きさが同等レベルであれば、垂直方向分力21A、21Bは通常、第1のクラック10を生成させた第1の主応力1A、1Bよりも小さい。このため、垂直方向分力21A、21Bによって、第1のクラック10の幅が、過去に第1の主応力によって拡げられた最大幅を超えて更に拡大し材料破断を引き起こすに足るサイズにまで増大することは、希である。
一方、せん断方向分力22A、22Bは、既に存在する第1のクラック10にせん断ずれを生じさせる応力として作用する。第1のクラック10の内壁面は比較的平滑であるため、壁面同士のぶつかり合いによるせん断ずれに対する抵抗力は小さい。このため、せん断ずれに対する抵抗力は主としてクラック内部に介在するPVA短繊維が負担することになる。しかし、このPVA繊維による抵抗力はそれほど大きくはなく、第2の主応力2A、2Bによって第2の主応力軸2と概ね垂直方向の新たな微細クラックが生じるよりも早期に、第1のクラック10の部分でのせん断ずれ量が、材料破断を引き起こす程度に大きくなってしまう事態が生じやすい。特に第1/第2主応力軸角度θが大きくなると、せん断方向分力22A、22Bが増大するので、第1のクラック10でのせん断破断は一層起こりやすくなると考えられる。
図2に、図1の状態から上記のせん断破断が生じるに至った状態の断面を模式的に示す。220A、220Bは第1のクラックのせん断破断を生じさせた応力である。これは、図1に示したせん断方向分力22A、22Bに概ね相当する。短繊維補強セメント複合材料3は、せん断破断を起こした第1のクラック100によって3Aと3Bに分離している。多数の第1のクラック10のうち、1つでもせん断破断を起こしたものが出現すると、その部分を起点として材料破断が起こる。このような状況を招きやすい点が、道路床版等に適用する際のECCの弱点として挙げられる。
図3に、本発明の混練物を硬化させてなるセメント複合材料について、第1の主応力によって微細クラックが発生した後に第2の主応力が付与された状態における第1および第2の主応力軸を含む断面内の応力状態を模式的に示す。ECC組成のセメント系組成物と粗骨材4の混練物が硬化してなるセメント複合材料3には、第1の主応力軸1の方向に作用した第1の主応力(引張応力)1A、1Bによって、既に微細な第1のクラック10が生じており、そのクラックを挟んでセメントマトリクスは3Aと3Bに分断されている。第1のクラック10は第1の主応力1A、1Bの方向(すなわち第1の主応力軸1の方向)に対して概ね垂直に生じる。この点は図1に示したECCの場合と同様である。
また、第1のクラック10の内部には図示していないが両側のセメントマトリクス3Aと3Bを繋ぐPVA短繊維が多数存在しており、3Aと3Bの間に掛かる引張応力を負担できる状態になっている点、および、そのような微細な第1のクラック10が短繊維補強セメント複合材料3の中に概ね平行に多数導入されることにより、主応力軸1の方向に優れた変形能を呈する点についても、ECCの特徴が活かされている。
図3の場面は、図1と同様、第1の主応力1A、1Bが一旦除荷された後に、第1の主応力軸1とは方向を異にする第2の主応力軸2の方向に、新たな引張応力である第2の主応力2A、2Bが付与された状態を想定したものである。第1のクラック10に作用する第2の主応力2A、2Bの垂直方向分力21A、21Bは通常、第1のクラック10を生成させた第1の主応力1A、1Bよりも小さい。このため、垂直方向分力21A、21Bによって、第1のクラック10の幅が、過去に第1の主応力によって拡げられた最大幅を超えて更に拡大し材料破断を引き起こすに足るサイズにまで増大することは、希である。この点も前述した従来のECCの場合と同様である。
ところが、本発明の混練物を硬化させてなる短繊維補強セメント複合材料3においては、粗骨材4が配合されている。第1のクラック10の部分に介在する粗骨材4は、セメントマトリクス3A、3Bのいずれか一方と接合状態を保ちながら、他方のセメントマトリクス中にも一部が埋まり込んだ状態で存在するものが大部分である。そのため、第1のクラック10の部分に介在する粗骨材4は、第2の主応力2A、2Bのせん断方向分力22A、22Bに起因して第1のクラック10がせん断ずれを起こそうとする動きに対して、大きな抵抗力を発揮する。したがって、第1のクラック10におけるせん断ずれは、従来のECCに比べ、起こりにくくなる。特に第1/第2主応力軸角度θが大きくなるほど、すなわちせん断方向分力22A、22Bが増大する場合ほど、従来のECCではせん断ずれが生じやすくなるが、粗骨材4を配合した本発明に係る材料はそのような場合でもせん断ずれに対する大きな抵抗力を維持する
図4に、図3の状態の後にどうなるかを模式的に示す。この場合、第1のクラック10の部分でのせん断ずれが抑制されるので、第2の主応力軸2の方向に働く引張応力によって、第2の主応力軸2に対して概ね垂直な第2のクラック20が新たに生じることとなる。図4中に記載した応力2A1、2A2、および2B1、2B2はそれぞれセメントマトリクス3Aおよび3Bの内部に第2のクラック20を生じさせた引張応力を示している。これらの引張応力は、図3に示した第2の主応力2A、2Bに概ね相当する大きさを有すると考えられる。形成された第2のクラック20においても、第1のクラック10と同様、粗骨材4によるせん断ずれに対する抵抗力が発揮されるので、その後さらに主応力軸の方向が異なる第3の主応力(引張応力)が付与された場合にも新たな微細クラックの生成によって優れた変形能を呈し、せん断破断が抑止できる。ただし後述するように、粗骨材4の量が多すぎると、第1のクラック10をはじめとする新たな微細クラックが生じる際の最大変位量(引張変形能)が低減してしまい、優れた耐せん断破断性が得られなくなることがわかった。したがって、粗骨材4の配合量は本発明において極めて重要である。
〔セメント系組成物X〕
本発明のセメント複合材料用混練物を得るためのセメント系組成物Xは、従来のECC組成物を適用することができる。その詳細は特許文献1に開示されているところであるが、以下に簡単に説明する。
短繊維としてはPVA短繊維を使用する。繊維直径は30〜50μm、繊維長さは5〜20mmの範囲とする。直径が30μmより小さいか、または長さが5mmより短い場合には、クラック分散型の特性が得られにくくなる。直径が50μmを超えるものや、長さが20mmを超えるものを使用すると、水セメント比および砂セメント比を後述のように調整した組成物において繊維を3次元方向にランダム(均質)に分散させることが難しくなる。特に長さ20mmを超える短繊維を使用した場合には後述の繊維配合量範囲においてクラック分散型の特性が得られにくくなる。このため、PVA短繊維は、直径が30〜50μmの範囲、長さが5〜20mmの範囲のものを使用する必要があるが、直径は35〜45μmであることがより好ましく、長さは8〜15mmであることがより好ましい。なお、PVA短繊維は直径や長さが異なる複数の種類のものを混合して用いてもよいが、その場合は個々の短繊維の直径および長さが上記の規定を満たすようにする。
PVA短繊維の配合量は、セメント系組成物X中において1.0〜3.0体積%とする。1.0体積%より少なくなればクラック分散型の特性が得られない。1.5体積%以上とすることがより好ましい。ただし、3.0体積%を超えて多量に配合させても効果は飽和し不経済となる。2.5質量%以下とすることがより好ましい。
使用するPVA短繊維の引張強さ(短繊維を引張試験機のチャック間に挟んで引張試験を行った際の最大荷重を、短繊維の初期断面積で処した値)は、1000〜2400MPaの範囲であることが好ましい。さらに見かけの繊維強度が700〜1800MPaであることがより好ましい。ここで見かけの繊維強度は、当該PVA繊維が、当該ECC組成のセメント系組成物Xの硬化体(標準水中養生、材齢28日)の材料中で破断する強度であり、これはそのような硬化体について引張破断試験を行うことによって実測できる。
セメント系組成物Xの水セメント比は、30%以上とする。水セメント比が30%未満であると、上記PVA短繊維にとってはマトリクスの弾性係数と破断靱性が高くなってクラック分散型の性質が発揮されない場合が生じやすい。水セメント比は40%以上とすることがより好ましい。一方、水セメント比の上限については、それぞれの用途で要求される強度レベルや、工事現場で型枠に打設するか、あるいは工場でプレキャスト材を製造するか、などに応じて適宜設定することができる。後述する[A]の性質を満たす配合とすることにより、必然的に水セメント比の上限は制約を受けるので、特に上限を設けなくてよい。道路構造物の床版や梁といった橋梁部材として適用することを考慮した場合、水セメント比は50%以下の範囲とすることが好ましく、45%以下の範囲が一層好ましい。
ECCの配合によっては、セメントの一部を、養生時に硬化作用を発現する他の粉体に置換することがある。そのような粉体として、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、製鋼スラグ微粉末、γC2S粉末など、モルタルやコンクリートにセメント置換材料として使用することができる材料が挙げられ、これらのうち1種以上を適用することができる。本発明における水セメント比を算出する際の「セメント」には、上記のような養生時に硬化作用を発現する他の粉体が含まれる。すなわち、本発明に用いるセメント系組成物Xにおける「水セメント比」は、下記(1)式によって定義される。
[水セメント比(%)]=W/(C+P)×100 …(1)
ここで、W;水の質量、C;セメントの質量、P;セメントの一部を置換する粉体の合計質量(0である場合を含む)
上記Pを構成する粉体による置換率;P/(C+P)×100は、0〜50%の範囲とすることが好ましい。より具体的には、粉体として例えばフライアッシュおよびシリカフュームの1種または2種を使用する場合、35%以下の置換率とすることがより好ましい。
セメント系組成物Xの砂セメント比は、0〜100%とする。砂セメント比が100%を超えると、上記PVA短繊維にとってはマトリクスの弾性係数と破断靱性が高くなってクラック分散型の性質が発揮されない場合が生じやすい。砂セメント比は0〜80%とすることがより好ましく、20〜80%とすることが一層好ましい。ここでいう「砂」としては、例えばモルタル・コンクリート用の細骨材が使用できる。
本発明における砂セメント比を算出する際の「セメント」には、上記の水セメント比の場合と同様、養生時に硬化作用を発現する他の粉体が含まれる。すなわち、本発明に用いるセメント系組成物Xにおける「砂セメント比」は、下記(2)式によって定義される。
[砂セメント比(%)]=S/(C+P)×100 …(1)
ここで、S;砂の質量、C;セメントの質量、P;セメントの一部を置換する粉体の合計質量(0である場合を含む)
本発明に適用するセメント系組成物Xは、ECCとしての優れた変形能を発揮しうる配合を有している必要がある。具体的には、前述のPVA短繊維、水セメント比、および砂セメント比に関するそれぞれの規定に加え、下記[A]の性質を満たす配合を有していることが必要である。
[A]セメント系組成物X(粗骨材Yを含まないもの)を練り混ぜてPVA短繊維を3次元方向にランダムに分散させた混練物についての標準水中養生による材齢28日の硬化体が、引張試験において1%以上の引張ひずみを呈すること。
この[A]の性質は、クラック分散型のECCとしての基本な性質を特定したものである。上記のPVA短繊維、水セメント比、および砂セメント比に関する各規定範囲内において、[A]を満たす配合を設定することができる。その設定には、特許文献1などに開示された技術を利用すればよい。なお、セメント系組成物Xには、必要に応じて各種混和材料を添加することができる。
〔粗骨材Y〕
本発明のセメント複合材料用混練物は、ECCの配合を有するセメント系組成物Xと、粗骨材Yとを混合したものである点に大きな特徴がある。粗骨材Yの主たる役割は、図3、図4を例示して上述したとおり、既に生成した微細なクラックの部分でのせん断ずれに対する抵抗力を持たせることにある。一般的に粗骨材を添加すると、ECC本来のクラック分散型の性質が弱められ、引張荷重に対する初期の変形能(第1の微細クラックが多数発生することによる優れた変形特性)が低下することが懸念される。しかし、発明者らの詳細な検討によれば、混練物全体(セメント系組成物X+粗骨材Y)に占める粗骨材Yの割合を15体積%以下に抑えれば、道路橋梁部材をはじめとする種々の構造部材において、ECCに特有の優れた変形能が発揮されることが確認された。その変形能は粗骨材を添加しない従来のECCと比較すると多少低下するが、普通コンクリートに比べ大幅に優れた変形能を呈する。
既に生成した微細クラック部分でのせん断ずれに対する抵抗力に関しては、5体積%以上の粗骨材配合量を確保することによって、粗骨材を添加しない従来のECCに対して上記抵抗力の顕著な改善効果が得られることがわかった。7体積%以上とすることがより好ましい。一方、粗骨材の配合量が過剰となると、初期の変形能が低下することに加え、第2の主応力(引張応力)に対する変形能にも劣ることがわかった。種々検討の結果、混練物全体(セメント系組成物X+粗骨材Y)に占める粗骨材Yの割合を15体積%以下とすれば、第2の主応力(引張応力)に対する変形能を安定して顕著に向上させることが可能である。粗骨材Yの割合を12体積%以下とすることがより好ましい。
〔セメント複合材料の製造〕
上述のセメント系組成物Xと、粗骨材Yを、粗骨材の配合量が全体の5〜15体積%となるように混練することにより、本発明の混練物を得ることができる。PVA短繊維は、混練によって3次元方向にランダムに分散させることが可能である。そのような状態にした後、型枠に打設し、構造材料とする。工事現場で打設することもできるし、工場でプレキャスト材とすることもできる。用途によっては内部に鉄筋を存在させても構わない。
本発明の混練物を硬化させてなるセメント複合材料は、供用中に主応力軸が変化する梁や床版などの構造部材に適している他、既存のセメント系構造物のうち多方向にひび割れが発生する箇所への補修・補強用途にも適している。また、普通コンクリート構造物の靱性向上や剥落防止を図りたい場合には、そのコンクリートの代替としても適している。
セメント系組成物Xとして、従来のECCの一例である配合を採用した。セメントは普通ポルトランドセメント(記号C)を使用し、硬化に寄与するその他の粉体としてフライアッシュ(記号FA)を置換率FA/(C+FA)×100=30%で配合させた。水セメント比W/(C+FA)×100=42.2%、砂セメント比S/(C+FA)×100=70%、単位水量(粗骨材を除く部分について)は350kg/m3である。PVA短繊維は、直径40μm、長さ12mmのものを使用し、その配合量は2.0体積%(粗骨材を除く部分において)とした。このセメント系組成物Xは前記[A]の性質を満たすことが確認されている。
粗骨材Yとして、JIS A5005に規定される市販の砕石2005を10mm以下に篩ったものを用意した。
セメント系組成物Xのみを練り混ぜるか、あるいはセメント系組成物Xと粗骨材Yを混合して練り混ぜることにより、PVA短繊維が3次元方向にランダムに分散した状態の混練物を得た。ここに例示する実験において、混練物における粗骨材の含有量は、0体積%(通常のECC)、9体積%、および19体積%の3種類とした。各混練物を型枠に打設し、脱型後、20℃、60%R.H.の大気環境で養生した材齢約28日のセメント複合材料の板状体を得た。この板状体のサイズは420×550×20(mm)である。
上記の420×550×20(mm)の板状体について、その板の長辺方向が第1の主応力軸となる曲げ変形を加えることにより、第1のクラックを導入した。そのクラックの導入は、図5のFig.1の右上に示すように、長辺方向510mmの間隔で2箇所の支点を設け、310mmの間隔で2箇所の作用点から荷重を負荷する「4点曲げ試験」によって行った。最大引張ひずみ量が40%となるように片面から荷重を負荷した後、裏返して同様の荷重を負荷することにより、第1の微細なクラックを導入した(図5のFig.2参照)。この第1のクラックが導入された板状体を、ここでは「初期クラック導入材」と呼ぶ。
次に、その初期クラック導入材から、250×長辺L×20(mm)の供試材を切り出した。その際、初期クラック導入材の長辺方向(第1の主応力軸の方向)と、供試材の長辺方向とのなす角度θが、20°、45°、70°または90°となるように種々の方向の供試材を切り出した。図5中のFig.1の中に、供試材(グレーで表示される部分)を切り出す際のレイアウトを示してある。供試材の長辺Lは、少なくとも340mm以上の寸法を確保してある。前記θが前述の「第1/第2主応力軸角度θ」に相当する。なお、初期クラックを導入していない供試材も用意した。
切り出された供試材について、図5のFig.1の左上に示すように、長辺方向340mmの間隔で2箇所の支点を設け、170mmの間隔で2箇所の作用点から荷重を負荷する「4点曲げ試験」を実施した。供試材が破断に至るまで0.5mm/minの一定速度で作用点に押し当てる治具を降下させる方法で行った。破断までの最大荷重時における変位量を測定し、当該供試材に第2の主応力を付与した際の変形能を評価した。
結果を表1に示す。
表1からわかるように、従来のECCにおいては、第1のクラックがない場合(すなわち、第1のクラックが生成する際)、および第1/第2主応力軸角度θが45°程度までと小さい場合は良好な変形能を有するが、θがそれより大きくなると変形能が低下する。この変形能の低下は第1のクラック部分で大きなせん断ずれが生じたことに起因する。
適正量の粗骨材を混合した本発明例の混練物を用いた場合は、第1のクラックがない場合(すなわち、第1のクラックが生成する際)の変形能については従来のECCに対して低下が見られる。しかし、一旦、第1のクラックが生じた後においては、第1/第2主応力軸角度θが90°までの全てのθにおいて、優れた変形能が維持できる。これは、骨材により第1のクラックにおけるせん断ずれが抑止され、θに依存せずに第2のクラックが優先的に生じるためである。したがって、道路床版のように主応力軸が種々変化する用途において、本発明の混練物を用いたセメント複合材料は安定して優れた耐久性を呈することが期待される。
粗骨材の混合量が過剰である比較例の混練物を用いた場合は、第1のクラックがない場合(すなわち、第1のクラックが生成する際)の変形能が低いとともに、第1のクラックが生じた後の変形能についても改善が見られない。このことから、ECCに普通コンクリート並みの粗骨材を混合させると、本来のECCに特有の優れた変形能が十分に発揮されなくなることがわかる。
1 第1の主応力軸
2 第2の主応力軸
3 短繊維補強セメント複合材料
4 粗骨材
10 第1のクラック
20 第2のクラック
100 せん断破断を起こした第1のクラック
1A、1B 第1のクラックを生じさせた応力
2A、2B 第2の主応力
21A、21B 第1のクラックに作用する第2の主応力の垂直方向分力
22A、22B 第1のクラックに作用する第2の主応力のせん断方向分力
2A1、2A2、2B1、2B2 第2のクラックを生じさせた応力
220A、220B 第1のクラックのせん断破断を生じさせた応力

Claims (3)

  1. 繊維直径30〜50μm、繊維長さ5〜20mmのPVA短繊維を1.0〜3.0体積%含有し、下記[A]に記載の性質を持ち、水セメント比30%以上、砂セメント比0〜100%であるセメント系組成物Xと、粗骨材Yとを混合した混練物であって、粗骨材Yの含有量が混練物全体の5〜15体積%である、耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物。
    [A]セメント系組成物X(粗骨材Yを含まないもの)を練り混ぜてPVA短繊維を3次元方向にランダムに分散させた混練物についての標準水中養生による材齢28日の硬化体が、引張試験において1%以上の引張ひずみを呈すること。
  2. 請求項1に記載の混練物を硬化させてなる耐せん断破断性に優れたセメント複合材料。
  3. 請求項1に記載の混練物を硬化させてなる耐せん断破断性に優れた橋梁部材。
JP2009282250A 2009-12-11 2009-12-11 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材 Pending JP2011121832A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009282250A JP2011121832A (ja) 2009-12-11 2009-12-11 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009282250A JP2011121832A (ja) 2009-12-11 2009-12-11 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011121832A true JP2011121832A (ja) 2011-06-23

Family

ID=44286109

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009282250A Pending JP2011121832A (ja) 2009-12-11 2009-12-11 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011121832A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58103596A (ja) * 1981-12-14 1983-06-20 Nippon Ester Co Ltd ポリエステル繊維詰綿用油剤
JP2015124139A (ja) * 2013-12-27 2015-07-06 鹿島建設株式会社 複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料
CN114873967A (zh) * 2022-05-05 2022-08-09 中铁二十局集团市政工程有限公司 一种pva纤维增强水泥基复合材料及其在桥梁工程中的应用
WO2023179254A1 (zh) * 2022-03-23 2023-09-28 长江水利委员会长江科学院 一种水工ecc材料及其应用

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58103596A (ja) * 1981-12-14 1983-06-20 Nippon Ester Co Ltd ポリエステル繊維詰綿用油剤
JP2015124139A (ja) * 2013-12-27 2015-07-06 鹿島建設株式会社 複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料
WO2023179254A1 (zh) * 2022-03-23 2023-09-28 长江水利委员会长江科学院 一种水工ecc材料及其应用
CN114873967A (zh) * 2022-05-05 2022-08-09 中铁二十局集团市政工程有限公司 一种pva纤维增强水泥基复合材料及其在桥梁工程中的应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Farhan et al. Behaviour of ambient cured steel fibre reinforced geopolymer concrete columns under axial and flexural loads
Wang et al. Ultra-lightweight engineered cementitious composite using waste recycled hollow glass microspheres
EP2275390A1 (en) Cementitious matrices for high performance fibre reinforced cement composites (HPFRCC), in particular ultra-high performance fibre reinforced concretes (UHPFRC)
CN101723620A (zh) 一种聚乙烯醇纤维增强水泥基材料组合物及其制法和应用
JP2009203106A (ja) コンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント、およびこの高靱性ポリマーセメントを用いたコンクリート躯体の曲げ補強工法
CN103964795A (zh) 一种纤维编织网增强水泥基复合材料及其制备方法
KR20140105965A (ko) 자기다짐 콘크리트 복합재료
Alengaram et al. Development of lightweight concrete using industrial waste material, palm kernel shell as lightweight aggregate and its properties
JP2011121832A (ja) 耐せん断破断性に優れたセメント複合材料用の混練物並びに複合材料および橋梁部材
KR100945141B1 (ko) 경량 시멘트 복합체 및 그 제조방법
JP2006321664A (ja) 繊維補強された軽量セメント系硬化体
JP2006219900A (ja) 合成床版
KR101304548B1 (ko) 고인성 무시멘트 알칼리 활성 모르터 복합체 및 상기 모르터 복합체로 제조된 모르터 제품
Pi et al. Crack propagation and failure mechanism of 3D printing engineered cementitious composites (3DP-ECC) under bending loads
Sarmah et al. Effect of chopped basalt fibers on the cyclic behavior of RCC beam–column subassemblies
KR20170076146A (ko) 그래핀부산물이 혼입된 시멘트-모르타르 복합체
Wegian et al. Influence of fly ash on behavior of fibres reinforced concrete structures
JP6214393B2 (ja) 複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料
Sherir et al. Fracture energy characteristics of engineered cementitious composites incorporating different aggregates
KR20130075334A (ko) 비정질 강섬유 시멘트 복합체 및 이를 이용한 콘크리트
CN113582627A (zh) 一种纳米氧化铝改性超轻质水泥基复合材料及其制备方法和应用
JP2005001965A (ja) 自己充填性を有する低収縮性のひずみ硬化型セメント系複合材料
JP2004315251A (ja) 高強度・高靱性セメント複合体及びその製造法
Deshpande et al. Ductile concrete using engineered cementitious composites
JP2004123414A (ja) プレストレスト水硬性硬化体