JP2009221619A - 前駆体繊維、並びに、前駆体繊維、耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法 - Google Patents

前駆体繊維、並びに、前駆体繊維、耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度、高伸度の炭素繊維製造用前駆体繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理することを特徴とする、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である炭素繊維製造用前駆体繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度、高伸度の炭素繊維製造用の前駆体繊維、並びに、前駆体繊維、耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法に関する。
従来、炭素繊維製造用の前駆体繊維を原料として用い、これに耐炎化処理を施して耐炎化繊維を得ること、更にこの耐炎化繊維に炭素化処理を施して高性能炭素繊維を得ることは広く知られている。また、この方法は工業的にも実施されている。
一般に、炭素繊維製造用の前駆体繊維としてはアクリル系繊維が用いられる。このアクリル系繊維から炭素繊維を製造する場合、アクリル系繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気下で延伸又は収縮を行いながら耐炎化処理を行った後、300℃以上、場合により1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化して炭素繊維を製造する。
炭素繊維製造の効率を高めるためには、安定して耐炎化処理をすることが必要とされている。この耐炎化処理の安定化に関する技術については多くの提案がなされている(例えば、特許文献1〜6参照)。
特許文献1には、耐炎化工程に先立ち別個の前処理工程を設けて繊維密度が所定の範囲になるまで前処理して次行程の耐炎化処理を安定化させることが開示されている。
特許文献2、3には、耐炎化処理に先立ち200℃以上の加熱体表面に繰返し接触させて前処理し、次行程の耐炎化処理を安定化させることが開示されている。
特許文献4〜6には、耐炎化処理に先立ち酸化性雰囲気の乾燥機中200℃以下で熱処理することが開示されている。
しかし、特許文献1〜6の何れの従来技術においても、得られる炭素繊維の強度、伸度は不充分である。
特開昭53−45425号公報 (特許請求の範囲) 特開昭61−174423号公報 (特許請求の範囲) 特開平6−158435号公報 (特許請求の範囲) 特開2004−232134号公報 (特許請求の範囲) 特開2006−299439号公報 (特許請求の範囲) 特開2000−96353号公報 (特許請求の範囲)
本発明者は、上記問題を解決するため検討を重ねた。その結果、従来の方法で得られる前駆体繊維は水蒸気を用いたガス吸着法で評価される水蒸気の吸着量が多く、水を吸い易い構造であることを見出した。これに対し、アクリル系共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で、所定温度で熱処理(予備熱処理)して得られる繊維は、水蒸気吸着量が極端に減少すると共に、上記繊維を前駆体繊維として耐炎化処理、炭素化処理して得られる炭素繊維は、高強度、高伸度であることを本発明者は見出し、本発明を完成するに到った。
よって、本発明の目的とするところは、上記問題を解決し、高強度、高伸度の炭素繊維製造用の前駆体繊維及び耐炎化繊維の製造方法、並びに、炭素繊維の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である炭素繊維製造用前駆体繊維。
〔2〕 アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理することを特徴とする、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である炭素繊維製造用前駆体繊維の製造方法。
〔3〕 アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理して、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの炭素繊維製造用前駆体繊維を得、前記前駆体繊維を、空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃、延伸比0.80〜1.20で熱処理することを特徴とする耐炎化繊維の製造方法。
〔4〕 アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理して、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの炭素繊維製造用前駆体繊維を得、前記前駆体繊維を、空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃、延伸比0.80〜1.20で熱処理して耐炎化繊維を得、前記耐炎化繊維を不活性ガス雰囲気中、温度800〜2500℃で炭素化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
本発明の製造方法によれば、紡糸後、空気中で他の物に接触することなく、所定温度で熱処理して水蒸気吸着量を用いて表現される繊維の細孔を所定の範囲に低減させているので、高強度、高伸度の炭素繊維を容易に得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維製造用前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られた繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、油剤等の添加物を添加すること無く空気中に浮かんだ状態で、他の支持体等に接触することなく170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理して得られる、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である。
この前駆体繊維を、空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃、延伸比0.80〜1.20で熱処理することにより本発明の炭素繊維製造用耐炎化繊維は製造される。
この耐炎化繊維を、不活性ガス雰囲気中、温度800〜2500℃で炭素化処理することにより本発明の炭素繊維は製造される。
更に具体的に述べると、本発明の炭素繊維製造用前駆体繊維、耐炎化繊維、炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<紡糸原液>
本例の炭素繊維ストランドの製造方法に用いる前駆体繊維の紡糸原液は、炭素繊維製造用の紡糸原液であれば従来公知のものが何ら制限なく使用できる。そのなかでもアクリル系炭素繊維製造用の紡糸原液が好ましい。具体的には、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは94質量%以上含有する単量体を重合した共重合体からなる紡糸原液が挙げられる。アクリロニトリルと共重合する単量体としては、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸等の公知の単量体が挙げられる。
<紡糸>
上記紡糸原液を、1つの紡糸口金に好ましくは1000以上の孔、より好ましくは20000以上の孔を有する紡糸口金から紡糸原液を紡出し、紡糸後の炭素繊維製造用原料繊維とする。この紡糸に際しては、低温に冷却した凝固液(紡糸する際の溶媒−水混合液)を入れた凝固浴中に紡出する方法、湿式紡糸方法又は乾湿式紡糸方法等を用いることができるが、直接凝固液に紡出する湿式紡糸方法が好ましい。乾湿式紡糸方法は、空気中にまず吐出させた後、3〜5mm程度の空間を有して凝固浴に投入し凝固させる方法である。最終的に得られた炭素繊維が表面に襞を形成し、樹脂との接着性が期待できるので、湿式紡糸方法がより好ましい。
凝固した後は、水洗・乾燥・スチーム延伸処理し、延伸処理後の炭素繊維製造用原料繊維とする。
乾燥工程においては、温度勾配をかけた幾層にも連なる部屋を有する熱風乾燥機で乾燥することが好ましい。乾燥温度については、70〜150℃で適宜調節して行うことが好ましく、80〜140℃で適宜調節して行うことが更に好ましい。乾燥時間については、1〜10分間が好ましい。
スチーム延伸条件において飽和スチーム圧力は、0.6〜0.8MPa(絶対圧)とすることが好ましい。延伸倍率は、水洗・乾燥・スチーム延伸処理を通してのトータル延伸倍率で10〜15倍とすることが好ましい。スチーム延伸処理後の繊度は0.5〜0.7dtexとすることが好ましい。
<予備熱処理>
スチーム延伸処理後の繊維は、引き続き加熱空気中170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で100〜300秒熱処理(予備熱処理)される。この予備熱処理により得られる繊維は、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置で後述する測定方法によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの炭素繊維製造用前駆体繊維に調製される。
この処理は空気中に浮かんだ状態で行われ、他の物(ローラー、支持ガイド等)に一切接触しないことが重要である。ローラー等に接触すると、所望の性能の炭素繊維製造用前駆体繊維が得られない。
このことは、次のように考えられる。即ち、150℃以下の熱処理しか受けていないスチーム延伸処理後の繊維は構造が不安定であり、予備熱処理では均一な加熱を必要とする。しかし、予備熱処理中に繊維がローラー等に接触すると、ストランドの接触面と非接触面との間で温度斑が生じたり、接触の前後で張力変化が生じたりするため、所望の性能の炭素繊維製造用前駆体繊維が得られない。
予備熱処理温度が170℃未満の場合、若しくは延伸比が1.10を超える場合は、前駆体繊維の水蒸気吸着量が過多になり、前駆体繊維を耐炎化処理、炭素化処理して得られる炭素繊維の強度、伸度が低下するので好ましくない。予備熱処理温度が250℃を超える場合は、炭素化処理して得られる炭素繊維の強度、伸度が低下するので好ましくない。なお、延伸比が0.9未満の場合は予備熱処理工程及びその後の熱処理工程が不安定となるのため好ましくない。
予備熱処理して得られる前駆体繊維の密度は1.2g/cm3以下とすることが好ましい。
<耐炎化処理>
前駆体繊維は、引き続き加熱空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃で耐炎化処理される。この耐炎化処理により、前駆体繊維がアクリル系繊維の場合、アクリル系繊維の環化反応を生じさせ、酸素結合量を増加させて不融化、難燃化させてアクリル系耐炎化繊維(OPF)を得る。
耐炎化処理においては、前駆体繊維を耐炎化炉内に長時間滞留させる必要がある。また、生産効率から炉内の前駆体繊維の走行速度は上げる必要がある。そのため、前駆体繊維は一旦耐炎化炉の外部に出た後、折り返して耐炎化炉に繰り返し通過させる方法が採られる。それでも、炉内を走行する前駆体繊維は長いものとなり、炉内で撓んでしまう。すると、前駆体繊維は下方を走行する繊維や炉底等に接触し易くなり、糸切れや汚染などの運転トラブルを生ずる。このことから、前駆体繊維は炉内で撓まないようにローラー又は支持ガイドに接触させつつ耐炎化処理することになる。しかし、上述したように、予備熱処理していない従来の前駆体繊維は構造が不安定であるため、ローラー又は支持ガイドに接触すると、所望の性能の炭素繊維製造用耐炎化繊維が得られない。
これに対し、本発明の前駆体繊維は、上記予備熱処理を施しているので、予備熱処理していない従来の前駆体繊維ほどは均一な加熱を必要としない。そのため、耐炎化炉内を、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、耐炎化処理しても、所望の性能の炭素繊維製造用耐炎化繊維を得ることができる。耐炎化炉内におけるローラー又は支持ガイドの間隔は1〜10mが好ましく、2〜4mがより好ましい。
この耐炎化処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.30の範囲で延伸されることが好ましい。この耐炎化処理により、密度1.3〜1.5g/cm3の耐炎化繊維が得られる。耐炎化時の張力は上記延伸倍率の範囲を超えない限り特に限定されない。
なお、耐炎化工程の工程安定化のため、前述の前駆体繊維に公知のプロセスオイルを付与することも有効である。
<第一炭素化処理>
上記耐炎化繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化することができる。例えば、窒素雰囲気下300〜800℃の焼成炉(第一炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけ、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の炭素化(第一炭素化)をする。
<第二炭素化処理>
より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下で昇温し、焼成炉(第二炭素化炉)で徐々に温度勾配をかけ、第一炭素化繊維の張力を制御して弛緩条件で焼成する。
焼成温度については、第二炭素化炉で温度勾配をかけていき、最高温度領域で、好ましくは800℃から2500℃、より好ましくは1200℃から2100℃がよい。
炉内の高温部での滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られることになるので好ましくない。
<表面酸化処理>
上記第二炭素化処理繊維は、引き続き表面酸化処理を施す。表面酸化処理には気相、液相処理も用いることができるが、工程管理の簡便さと生産性を高める点から、液相処理が好ましい。液相処理のうちでも、液の安全性・安定性の面から、電解液を用いる電解処理が好ましい。電解酸化処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などが挙げられる。
<サイジング処理>
上記表面酸化処理後の繊維は、必要に応じ、引き続いてサイジング処理を施す。サイジング方法は、従来の公知の方法で行うことができ、サイジング剤は、用途に即して適宜組成を変更して使用し、均一付着させた後に、乾燥することが好ましい。
以上の製造方法により得られる炭素繊維は、5920MPa以上の高強度、1.98%以上の高伸度である。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における処理条件、並びに、前駆体繊維、耐炎化繊維及び炭素繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<耐炎化繊維の密度>
アルキメデス法により測定した。試料繊維はアセトン中にて脱気処理し測定した。
<前駆体繊維の水蒸気吸着量>
前駆体繊維の水蒸気吸着量は、前駆体繊維を長さ15cm程度(0.3g程度)に切り出したものを、ユアサアイオニクス(株)社製全自動ガス吸着量装置「AUTOSORB-1」を使用し、下記条件
吸着ガス:H2
死容積:He
吸着温度:293K
測定範囲:相対圧(P/Po) = 0〜1.0
P:測定圧、Po:H2Oの飽和蒸気圧
により測定した。湿度90%での水蒸気吸着量の値は、相対圧(P/Po)が0.9となる箇所で得た値である。
<炭素繊維の強度、弾性率、伸度>
JIS R 7601に規定された方法により炭素繊維(CF)の強度、弾性率、伸度を測定した。
実施例1
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を、1つの紡糸口金に24000の孔を有する紡糸口金(24000フィラメント用の紡糸口金)を通して、塩化亜鉛水溶液中に吐出して凝固させ、凝固糸を得た。
この凝固糸を、水洗・乾燥・スチーム延伸処理し、スチーム延伸処理後の繊維を得た。水洗・乾燥・スチーム延伸処理を通してのトータル延伸倍率は14倍であり、得られたスチーム延伸処理後の繊維の繊度は0.72dtexであった。
この繊維を、表1に示す処理条件に設定した乾燥機(予備熱処理装置)に滞留時間3分で空気中に浮かんだ状態で通過させて予備熱処理し、表1に示す水蒸気吸着量で、密度1.18g/cm3の前駆体繊維を得た。
この前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉の最高温度域を250℃に設定した加熱空気中、炉内のガイドで支持しつつ通過させ、延伸倍率を0.9〜1.1の範囲内で制御して耐炎化処理し、密度1.36g/cm3の耐炎化繊維を得た。耐炎化炉内の支持ガイドの間隔は3mであった。
この耐炎化繊維を、第一炭素化炉の不活性雰囲気中300〜800℃の温度域を通過させて第一炭素化処理を施した。
この第一炭素化処理繊維を、第二炭素化炉の不活性雰囲気中800〜2000℃の温度域を通過させて第二炭素化処理を施した。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、硫酸アンモニウム水溶液を電解液として用い、炭素繊維1g当り30クーロンの電気量で表面処理を施した。
引き続き公知の方法で、サイジング剤を施し、乾燥して表1に示す強度、弾性率、伸度の炭素繊維を得た。
実施例2
実施例1で得られた前駆体繊維について、シリコーン系油剤をプロセスオイル(PO)として用い、繊維質量に対し0.1質量%付与した。PO付与後の前駆体繊維は、実施例1と同様に、耐炎化処理、第一炭素化処理、第二炭素化処理、表面酸化処理、サイジング処理を行い、耐炎化繊維、表1に示す強度、弾性率、伸度の炭素繊維を得た。
実施例3〜5、比較例1〜4
実施例1と同様に凝固、水洗、乾燥、スチーム延伸して得られた繊維を、表1に示す処理条件で予備熱処理し、表1に示す水蒸気吸着量、密度の前駆体繊維を得た。得られた各前駆体繊維について、シリコーン系油剤をプロセスオイル(PO)として用い、繊維質量に対し0.1質量%付与した。PO付与後の各前駆体繊維は、実施例1と同様に、耐炎化処理、第一炭素化処理、第二炭素化処理、表面酸化処理、サイジング処理を行い、耐炎化繊維、表1に示す強度、弾性率、伸度の炭素繊維を得た。
予備熱処理工程での延伸比が0.70と低い比較例3の場合、乾燥機(予備熱処理装置)内において前駆体繊維が撓んでしまい、その通過性が著しく悪化した。また、予備熱処理工程での延伸比が1.20と高い比較例4の場合、水蒸気吸着量が本発明の構成範囲から外れてしまう結果となった。
Figure 2009221619

Claims (4)

  1. 水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である炭素繊維製造用前駆体繊維。
  2. アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理することを特徴とする、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの繊維である炭素繊維製造用前駆体繊維の製造方法。
  3. アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理して、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの炭素繊維製造用前駆体繊維を得、前記前駆体繊維を、空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃、延伸比0.80〜1.20で熱処理することを特徴とする耐炎化繊維の製造方法。
  4. アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した共重合体を紡糸して得られるアクリル系繊維を、水洗、乾燥、スチーム延伸処理し、次いで、空気中に浮かんだ状態で170〜250℃、延伸比0.90〜1.10で熱処理して、水蒸気を用いたガス吸着量測定装置によって測定される湿度90%での水蒸気吸着量が3〜9cm3/gの炭素繊維製造用前駆体繊維を得、前記前駆体繊維を、空気中、ローラー又は支持ガイドに接触させつつ、200〜300℃、延伸比0.80〜1.20で熱処理して耐炎化繊維を得、前記耐炎化繊維を不活性ガス雰囲気中、温度800〜2500℃で炭素化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
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