JP2009216483A - 混合samの作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】二以上の異なるSAM構成分子の比率を所望の比率で基板上に形成させ、かつその比率を安定な状態で維持できる混合SAMの作製方法、並びにそのような混合SAMを有するセンサチップ及びその作製方法の提供を目的とする。
【解決方法】混合SAMを多段階的に形成させる混合SAMの作製方法、すなわち、一方の末端に固定基を有し、他方の末端に第1連結基を有する第1ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む混合液に基板表面を接触させ、前記固定基を介して第1PEG鎖を前記基板表面に固定するステップ、及び一方の末端に第2連結基を有する二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液に前記基板表面を接触させ、前記第2連結基と前記第1連結基とを介して第2PEG鎖を前記第1PEG鎖と連結するステップを含む方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、混合SAMの作製方法、並びに当該方法で作製された混合SAMを用いたセンサチップの作製方法及び当該センサチップを用いたセンサに関する。
近年、高感度センサにおいて、自己組織化単分子膜(Self-Assembling Monolayer:SAM)がプローブを固体基板上に配置する目的で利用されている(非特許文献1、2)。SAMとは、基板を溶液に浸漬することにより、自発的に該基板表面に形成される高密度かつ高配向な単分子膜である。中でもポリエチレングリコール(PEG)を配向させたSAMは、PEGの持つ溶液中での高い可撓性、親水性、非イオン性によって、非特異的吸着を抑制することが知られている(非特許文献3)。このようなSAMは、高感度能を有しながらも物質の特異的な結合と非特異的吸着とを識別することはできない表面プラズモン共鳴(SPR)測定センサにおいて、特に有用である。しかしながら、SPR測定センサと抗原抗体反応を組み合わせた超高感度なセンサシステム(抗原抗体/SPRセンサシステム)等において、ppbオーダー以上の感度を必要とするときには単一のPEGのみで形成されるSAMだけでは、非特異的吸着の抑制は、十分ではない。このような場合、一般に、バックグラウンドとしてEG(エチレングリコール)末端を有する化合物を一定比率で混在させた混合SAM(mixed SAM)が利用される。混合SAMとは、複数の異なるSAM構成分子を基板上に配向したSAMである。PEGを含むSAMの中でもEG末端を有する化合物は、非特異的吸着の抑制効果が特に優れていることが知られている(非特許文献3、4)。したがって、EG末端を有する化合物を含む混合SAMにおいては、SAMの非特異的吸着の抑制効果をさらに高めることができる。
ところで、前記混合SAMは、通常、基板となる金薄膜に異なる二つのPEG構成分子、すなわちEG末端を有するアルカンチオール化合物とリガンドを結合するための末端を有するアルカンチオール化合物とを一定比率で混合した溶液中に直接浸漬することによって作製される。ところが、従来の方法は、溶液中で混合SAMが高密度に配向されるまでに数日という長い時間を要していた。そのため、その間にPEG構成分子が熱力学的に安定な長鎖アルカンチオールへと置換してしまい(非特許文献5)、溶液中の異なる2つのチオール化合物の混合比率をセンサチップ表面に反映させることできないという問題があった(非特許文献6)。これは、センサチップ毎に検出感度、及び非特異的吸着の抑制効果が異なる原因となり、ひいては、センサの検出精度に大きな影響を及ぼしていた。
Yu, Q., et al., Sens. Actuators B, 107, pp.193-201, 2005 Gobi, K. V., et al., Biosens. Bioelectron., 22, pp.1382-1389, 2007 藤井永治ら, 2007, BUNSEKI KAGAKU, Vol.52, pp.311-317 Silin, V., et al., J. Colloid Interface Sci., 185, pp.94-103, 1997. Xing, Y. F., et al., J. Electroanal. Chem., 583, pp.124-132, 2005 K. E. Nelson, et al., Langmuir, 17, pp.2807-2816, 2001
本発明は、二以上の異なるSAM構成分子の比率を所望の比率で基板上に形成させ、かつその比率を安定な状態で維持できる混合SAMの作製方法、並びにそのような混合SAMを有するセンサチップ及びその作製方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために混合SAMを多段階的に形成させる新たな方法を開発した。そこで、本発明者らは、当該研究結果に基づき、以下の発明を提供する。
本願第1の発明は、(1)一方の末端に固定基を有し、他方の末端に第1連結基を有する第1ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む混合液に基板表面を接触させ、前記固定基を介して第1PEG鎖を前記基板表面に固定するステップと、(2)一方の末端に第2連結基を有する二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液に前記基板表面を接触させ、前記第2連結基と前記第1連結基の結合により第2PEG鎖を前記第1PEG鎖と連結するステップを含む混合SAMの作製方法を提供する。
第1の発明の一の態様において、少なくとも一の第2PEG鎖が他方の末端に非特異的吸着抑制基を有する混合SAMの作製方法を提供する。前記非特異的吸着抑制基は、例えば、ヒドロキシル基(−OH)又はメトキシ基(−OCH3)とすることができる。
第1の発明の一の態様において、少なくとも一の第2PEG鎖が他方の末端にリガンド連結基を有する混合SAMの作製方法を提供する。前記リガンド連結基は、例えば、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH3)、アルデヒド基(−CHO)、チオール基(−SH)、スルホ基(-SO3H)、オキシム(>C=N-OH)、シアノ基(-C≡H)、ニトロ基(-NO2)からなる群より選択することができる。
第1の発明の一の態様において、前記第1連結基と前記第2連結基は、アミノ基とアルデヒド基、チオール基とマレイミド基、アジド基とアセチレン基、アジド基とアミノ基、ヒドラジン基とケトン基、ヒドラジン基とアルデヒド基、及びビオチンとアビジン若しくはストレプトアビジンからなる群より選択される組であり、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖を直接的に結合する混合SAMの作製方法を提供する。
他の態様において、第1の発明は、前記(1)ステップの後に、リンカーを含む混合液に第1PEG鎖を固定した基板を接触させるステップをさらに含み、前記(2)ステップで、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する作製方法を提供する。
他の態様において、第1の発明は、前記(2)ステップの混合液中にリンカーをさらに含み、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する作製方法を提供する。
第1の発明の一の態様において、基板表面が金属である作製方法を提供する。前記金属は、金、白金、銀及び銅からなる群より選択することができる。このとき、前記固定基をチオール基とすることができる。
本願第2の発明は、第1の発明のいずれかの作製方法によって作製された混合SAMの表面に、リガンドを含む混合液を接触させ、第2PEG鎖における他方の末端に前記リガンドを結合させるセンサチップの作製方法を提供する。前記リガンドは、例えば、核酸、ペプチド若しくはタンパク質又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンとすることができる。
本願第3の発明は、基板と、該基板の少なくとも一表面に固定基を介して結合された第1PEG鎖と、第1PEG鎖と連結された二以上の異なる第2PEG鎖とを有する混合SAMと、前記二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の第2PEG鎖に連結されたリガンド部とを備えるセンサチップを提供する。前記リガンド部は、核酸、ペプチド若しくはタンパク質又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンとすることができる。
第3の発明の一の態様において、前記二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の第2PEG鎖の末端が非特異的吸着抑制基を備えるセンサチップを提供する。前記非特異的吸着抑制基は、ヒドロキシル基又はメトキシ基とすることができる。
他の態様において、第3の発明は、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖との間にリンカー部をさらに有するセンサチップを提供する。
第3の発明の一の態様において、前記基板の少なくとも一表面が金属であるセンサチップを提供する。前記金属は、金、白金、銀及び銅からなる群より選択することができる。このとき、前記固定基をチオール基とすることができる。
本願第4の発明は、上記センサチップを有するセンサを提供する。前記センサは、SPR測定センサ及びQCM測定センサからなる群より選択することができる。
本発明の混合SAMの作製方法によれば、混合SAMを構成する二以上の異なる第2PEG鎖間での置換が起きにくく、異なる第2PEG鎖を所望の比率で基板表面上に維持させることができる。
本発明のセンサチップの作製方法によれば、二以上の異なる第2PEG鎖の比率がセンサチップ間で安定している均一なセンサチップを作製することができる。
本発明のセンサチップによれば、非特異的吸着を効率的に抑制することができる。これにより、本センサチップを使用するセンサの検出精度をより高めることができる。また、センサチップの均一性により、各センサチップによる測定結果のバラつきを低減することが可能となる。
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態は、一方の末端に固定基を有し、他方の末端に第1連結基を有する第1ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む混合液に基板表面を接触させ、前記固定基を介して第1PEG鎖を前記基板表面に固定するステップ(第1ステップ)と、一方の末端に第2連結基を有する二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液に前記基板表面を接触させ、前記第2PEG鎖を前記第1PEG鎖と連結するステップ(第2ステップ)を含む混合SAMの作製方法である。以下、各ステップについて説明をする。
(第1ステップ)
本実施形態において、第1ステップは、第1PEG鎖を基板表面に固定するステップである。
「第1PEG鎖」とは、ポリエチレングリコール(PEG)由来の骨格構造を有し、一方の末端に固定基を、また他方の末端に第1連結基を有する鎖状分子をいう。
「ポリエチレングリコール(PEG)」とは、エチレングリコール(EG)基が重合した構造を有する鎖状高分子化合物であり、通常、HO-(CH2-CH2-O)n-Hの構造式で表される。PEGに由来する鎖状骨格は、本発明の混合SAMにおいて基本骨格をなす。これは、前述のようにPEGがタンパク質や核酸等の非特異的な吸着に対して高い抑制効果を有するためである(非特許文献3)。一般に、SAMで観察される非特異的物質の吸着の主な原因は、疎水性相互作用、静電気的結合作用、及び物理的吸着と考えられている(非特許文献3)。PEGは、その親水性により疎水性相互作用の抑制効果を有し、また、その非イオン性により静電気的結合の抑制作用を有し、さらに、単結合からなる骨格構造による自由回転運動及びフレキシビリティーから物理的吸着を排除することができる。したがって、本発明の混合SAMは、上記PEGの性質を有する。
第1PEG鎖は、EG基の重合構造を基本骨格とするが、このEG基は必ずしも連続的に重合している必要はない。例えば、一以上のEG基で構成される二以上の各セグメント鎖間に一以上のEG基以外の基を含むことができる。具体的に説明すると、第1PEG鎖は、-(CH2-CH2-O)n-を基本骨格とするが、-(CH2-CH2-O)n1-X-(CH2-CH2-O)n2-、又は-(CH2-CH2-O)n1-X-(CH2-CH2-O)n2-Y-(CH2-CH2-O)n3-(式中、X、YはEG基以外の基を、n1〜n3は整数を表す)のような構造を有する分子も含む。前記セグメント鎖間にEG基以外の化学基を導入する場合、前述したPEGが有する非特異的吸着の抑制効果を喪失又は著しく減退させない基の種類、及び数を選択するように留意しなければならない。さらに、第1PEG鎖は、側鎖を有することもできる。
第1PEG鎖を構成するEG基の数は、後述する第2PEG鎖のEG基の数との和による総数を考慮して決定される。一般に、EG基の数が多いほど、すなわちPEG構造が長いほど、非特異的吸着の抑制効果は高いと考えられている。しかしながら、PEG構造は長くなるほど粘性が高まるため、逆にSAM作製においては洗浄処理時間が長くなる等の問題が生じる。それ故、第1PEG鎖のEG基と第2PEG鎖のEG基の総数は、5〜100の範囲内にあることが好ましく、8〜80の範囲内にあることがより好ましく、12〜60の範囲内にあることがさらに好ましい。したがって、第1PEG鎖を構成するEG基の数は、上記総数の範囲内で第2PEG鎖のEG基の数を勘案して決定すればよい。例えば、EG基を4つ有する第2PEG鎖の使用を所望する場合、第1PEG鎖は、EG基の数を好ましくは1〜99個、より好ましくは4〜76個、さらに好ましくは8〜56個有する分子を選択すればよい。
「固定基」とは、第1PEG鎖を基板表面に固定するための基である。本明細書において「固定」とは、化学的吸着、物理的吸着又は親和力によって固定化することである。化学的吸着は共有結合又はイオン結合のような化学結合を含み、物理的吸着は、ファンデルワールス力を含む。本明細書において「基」とは、官能基を意味するだけでなく、所望の機能を有するあらゆる物質を含む。例えば、官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物(ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む)、アミノ酸若しくはペプチド、金属、磁石、樹脂、シリカ(二酸化ケイ素)、又はセラミックス、又はそれらの組み合わせが含まれる。官能基は、例えば、ヒドロキシル基(-OH)、ケトン基(-C(=O)-)、アルデヒド基(-CHO)、カルボキシル基(-COOH)、メトキシ基(-OCH3)、スルホ基(-SO3H)、アミノ基(-NH3)、オキシム(>C=N-OH)、カルボニル基(-C(=O)-)、チオール基(-SH)、シアノ基(-C≡H)、ニトロ基(-NO2)、又はアゾ基(-N=N-)を含む。本発明で低分子化合物とは、分子量約数百〜数千の天然物又は化学合成物であり、例えば、ビタミン類(ビオチンを含む)、テルペノイド(例えば、カロチノイド、ヘム、クロロフィル)、又はポリフェノール(例えば、フラボノイド、カテキン、タンニン)を含む。核酸は、DNA、RNA、LNA(Locked Nucleic Acid:LNAは登録商標)若しくはPNA(Peptide Nucleic Acid)のような核酸類似物、又はそれらの断片を含む。ペプチドは、酵素、又は抗体若しくは人工抗体(例えば、ヒト化抗体又はダイアボディー等の人工多価抗体)を包含するタンパク質、又はその断片を含む。本発明で磁石とは、永久磁石をいい、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジウム磁石、又はサマリウムコバルト磁石を含む。本発明で樹脂とは、天然樹脂(例えば、天然ゴム、漆)又は合成樹脂(プラスチック)を含む高分子化合物をいう。セラミックスは、無機化合物成形体(例えば、ガラス)、半導体(例えば、シリコン)、又はファインセラミックスを含む。したがって、本発明の固定基も、第1PEG鎖を基板表面に固定し、かつそれを配向する機能を有する前述のあらゆる基を含む。
固定基は、第1PEG鎖の一方の末端に二以上存在していてもよい。各固定基は、同一の又は異なる固定基とすることができる。このように第1PEG鎖が複数の固定基を有するような場合、第1PEG鎖は、その一方の末端に複数の固定基を連結する機能をもつ第1連結分子を有することができる。ここでいう第1連結分子は、それ自身は固定基として機能しない、又はそれ自身も同時に固定基として機能し得る官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物、アミノ酸若しくはペプチド、金属、樹脂、シリカ、又はセラミックスを含む。このような複数の固定基を有する第1PEG鎖の具体例としては、芳香環アルカンジチオールが挙げられる。この場合、第1PEG鎖は、一方の末端に連結分子としてのフェノール環に固定基としての2つのチオール基が結合した芳香環ジチオールを有することとなる。第1PEG鎖が複数の固定基を有することは、本発明の構成上、特に好ましい。なぜなら、第1PEG鎖あたりの固定基の数が多いほど基板表面への固定が強固となり、形成されたSAMの剥離が生じにくくなるからである。これによって、本発明の混合SAMは、酸、アルカリ等による洗浄に対しても剥離し難くなり、再生利用が可能となる。
基板表面が金属である場合、固定基はチオール基又はジスルフィド基,もしくはチオール基又はジスルフィド基を有するほかの物質であることが望ましい。チオール基に含まれる硫黄(S)は、金属に対して高い吸着性と高配向性を有しているためである。
固定基は、前記第1PEG鎖におけるPEGの末端(通常、ヒドロキシル基)に、共有結合、イオン結合若しくは水素結合等の化学的結合、又はファンデルワールス結合のような分子間力によって付加される。結合力が強い共有結合による付加が、好ましい。固定基の前記末端への結合方法は、当該分野では公知である。例えば、Johnsson, B., et al., Anal. Biochem., 198, pp. 268-277, 1991を参照されたい。
本発明で「第1連結基」は、第1PEG鎖のPEG鎖長軸において前記固定基を有する末端とは反対側の末端に配置されており、第1PEG鎖と第2PEG鎖とを不可逆的に結合する際に直接寄与する基である。すなわち、第1PEG鎖は、第1連結基を介して第2PEG鎖と連結される。第1連結基には、例えば、官能基、低分子化合物、アミノ酸若しくはペプチドが含まれる。ただし、これらに限定はされない。また、第1連結基は、一の第1PEG鎖において固定基と同一の基であってもよい。本発明においては、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが、直接的又は間接的に、不可逆的な結合をしていなければならない。ここでいう不可逆的な結合とは、反応が可逆的に進行しない結合、すなわち、一旦形成された後に逆反応によって解離しない結合、又はその解離が無視できる程度の結合をいう。例えば、官能基間の求核的付加反応、求核置換反応若しくは求電子置換反応といった化学反応による共有結合、又はビオチンとアビジン若しくはストレプトアビジン間の結合のような高親和力による非共有結合が含まれる。第1連結基が官能基の場合には、相手分子と共有結合による連結が可能な化学活性を有する活性官能基であることが好ましい。例えば、アルデヒド基(-CHO)、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、アミノ基(-NH3)、チオール基(-SH)、シアノ基(-C≡H)、ニトロ基(-NO2)が含まれる。あるいは、第1連結基が高親和力によって連結される場合、例えば、第1連結基と直接結合する相手分子がアビジン若しくはストレプトアビジンであれば、第1連結基にはビオチンを選択することが好ましい。その逆に、相手分子がビオチンであれば、第1連結基にはアビジン若しくはストレプトアビジンを選択することが好ましい。
本発明において「基板」とは、SAMを形成するための支持体である。基板の材質は、少なくともその一の表面が、第1PEG鎖の一方の末端を固定できる材質であればよい。例えば、金属、ガラス、プラスチック、セラミックス、天然樹脂(例えば、天然ゴム又は漆)、天然繊維若しくは化学繊維又はそれらの集合体(例えば、紙、不織布、フィルター)、寒天のような多糖類高分子(例えば、寒天)、ゲル化タンパク質(例えば、ゼラチン(コラーゲン))、又はそれらの混合物が挙げられる。基板は、混合SAMの使用用途に応じて、適切な材質を適宜選択することが好ましい。例えば、SPR測定センサやQCM測定センサに用いる場合、基板となるセンサチップ表面を構成する材質は、金属であることが好ましい。金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)は、より好ましい。中でも金は、化学的に不活性であり、信号の発生効率がよく、チオール基の吸着力が極めて強い(209kJ/mol:J.Christopher Love,et al., (2005) Self-Assembled Monolayers of Thiolates on Metals as a Form of Nanotechnology, Chemical Review,105:1103-1169.)等の理由から、特に好ましい。また、比色/蛍光法、又はELISA法で用いる場合、基板の材質は、コスト面、加工面及び扱いやすさ等の理由から、プラスチックやガラス等が便利である。プラスチックは、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコールを含む。
基板の大きさ、厚さ及び形状は、本発明の混合SAMの使用用途に応じて適宜定めることができる。例えば、本発明の混合SAMをSPR測定センサのセンサチップに使用するのであれば、基板は使用するSPR測定センサに適合する大きさ及び厚さにすればよい。このとき基板の形状は、一般には、スライドグラスのような板状となり得る。また、本発明の混合SAMをELISAに用いるのであれば、基板は、例えば96穴マイクロタイタープレートの大きさ、及び厚さとすることができる。このとき基板の形状は、そのプレートの形状とすることができる。さらに、本発明の混合SAMをグラスビーズに形成させる場合には、基板は直径約1μm〜約1cmの大きさの球体とすることができる。
本発明の基板は、二以上の材質からなる多層構造体とすることもできる。例えば、ガラス表面に金薄膜が積層されている基板が該当する。このように基板が多層構造を有する場合、少なくとも一の表面を構成する層は、前記第1PEG鎖の一方の末端を固定できる材質でなければならない。また、当該第1PEG鎖の一方の末端を固定する層は、必ずしも基板全体と同じ形状、大きさである必要はなく、本発明の混合SAMの使用用途に応じて適宜定めればよい。例えば、本発明の混合SAMを、SPR測定センサのセンサチップに使用するのであれば、前記層は、基板全体を構成するセンサチップ上のサンプル検出領域相当の大きさがあればよい。また、その形状も、例えば、矩形のセンサチップに対して円形とすることができる。また前記第1PEG鎖の一方の末端を固定する層の厚さは、使用用途に応じて決定される。例えば、SPR測定センサに用いる場合、20〜80nmの厚さにすることができる。
本発明において「基板表面」とは、基板が第1PEG鎖を含む混合液と接触し得る部分をいう。したがって、基板表面は、使用する基板の形状によって変化する。例えば、基板がスライドグラスのような板状の形状の場合、基板表面は表裏及び側面が含まれる。また、基板がチューブ形状の場合、基板表面はチューブ外面、内面及び断面が含まれる。さらに、基板が球体形状の場合、基板表面は球体外表面が含まれる。ただし、球体が内部空間を有し、当該内部空間が外界に一部開いている場合には球体内面も含まれる。
第1ステップは、第1PEG鎖を含む混合液に基板表面を接触させることによって達成される。
「第1PEG鎖を含む混合液」とは、少なくとも第1PEG鎖を溶解若しくは懸濁している液体である。本液体は、水、又は低級アルコール、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタンのような有機溶媒を含む。一般に、PEGが可溶なものが好ましい。いずれの液体を用いるかは、基板の材質、固定基及び第1連結基の種類を勘案して決定される。通常は、エタノールが用いられるが、その使用に問題がある場合には、他の適切な液体を用いるようにする。例えば、基板の材質がエタノールに可溶な場合又は固定基又は第1連結基がエタノールによって変性される場合が該当する。当該混合液中に含まれる第1PEG鎖の濃度は、使用する第1PEG鎖の種類、及び使用する液体によって適宜定めればよい。例えば、PEG6-芳香環アルカンジチオールをエタノールに溶解する場合、その濃度は、0.1〜10mM、好ましくは0.5〜5mM、より好ましくは1〜2mMであればよい。
「接触」とは、2つの物質の物理的触れ合いをいう。ここでは、特に、前記混合液と基板表面との物理的触れ合いを意味する。例えば、混合液への基板の浸漬、基板表面での混合液の流通、又は基板表面への混合液の塗布若しくは吹き付けが含まれる。基板表面に十分量の第1PEG鎖を固定させ、かつ配向させるためには、接触は前記浸漬による方法又は前記流通による方法が好ましい。接触によって第1PEG鎖を基板表面に固定する時間、温度等の反応条件は、選択した基板の材質、第1PEG鎖の固定基の種類、第1PEG鎖の濃度又は前記接触方法等の構成要件に応じて適宜定められる。各構成要件に対する反応については、当該分野では公知技術であり、多くの文献が存在する。例えば、Love, J.C., et al., Chem. Rev. 105, pp. 1103-1169, 2005を参照されたい。一般に、配向性の高いSAMを基板表面に高集積に形成せるためには、第1PEG鎖を基板表面に固定する反応時間は長い方が好ましい。前記構成要件にもよるが、反応時間は、12〜48時間であることが好ましい。通常は、約24時間で十分なSAMを形成させることができる。反応温度は、構成要件にもよるが、一般に室温(10〜30℃)が適切であり、また操作上も簡便である。ただし、反応温度は、基板表面と固定基との反応性、又は基板の材質によって、より低い温度(0〜10℃)又はより高い温度(例えば、30〜80℃)であってもよい。具体例として、基板を金、第1PEG鎖の固定基をチオール基、第1PEG鎖の濃度を1mM、及び基板を混合液へ浸漬する方法とする場合、反応時間を15〜30時間、反応温度を18〜25℃とすることができる。
以下の第2ステップに進む前に、第1ステップ終了後の基板表面を洗浄し、基板表面上に残った混合液又は基板表面に十分に固定されなかった第1PEG鎖等の不要物を除去しておくことが望ましい。洗浄条件は、選択した基板の材質、第1PEG鎖の固定基の種類、第1PEG鎖の濃度又は前記接触方法に応じて適宜定められる。一般に、洗浄は、第1ステップ終了後の基板を水、有機溶媒又はそれらの混合液に適当な時間、適当な回数で浸漬するか、又はそれらを前記基板の表面に適当な時間流通させることにより達成される。また、超音波洗浄を行うこともできる。超音波洗浄は、水等の液体のみによる洗浄では除ききれない不純物等を、超音波の振動によって効率的に除去できるので好ましい。超音波洗浄の方法は、当該分野では公知である。前記水、有機溶媒又はそれらの混合液による洗浄と、前記超音波を用いた洗浄とを組み合わせることもできる。
(第2ステップ)
本実施形態において、第2ステップは、二以上の異なる第2PEG鎖を前記第1PEG鎖と連結するステップである。
「第2PEG鎖」とは、PEG由来の骨格構造を有し、一方の末端に第2連結基を有する鎖状分子をいう。「異なる第2PEG鎖」とは、少なくとも一方の末端に共通する第2連結基を有する、異なる種類の第2PEG鎖をいう。
第2PEG鎖は、第1PEG鎖同様、EG基の重合構造を基本骨格とするが、このEG基は必ずしも連続的に重合している必要はない。例えば、一以上のEG基で構成される二以上の各セグメント鎖間に一以上のEG基以外の基を含むことができる。構造式を用いて具体的に説明すると、第2PEG鎖は、-(CH2-CH2-O)n-を基本骨格とするが、-(CH2-CH2-O)n1-X-(CH2-CH2-O)n2-、又は-(CH2-CH2-O)n1-X-(CH2-CH2-O)n2-Y-(CH2-CH2-O)n3-(式中、X、YはEG基以外の基を、n1〜n3は整数を表す)のような構造を有する分子も含む。前記セグメント鎖間にEG基以外の化学基を導入する場合、前述したPEGが有する非特異的吸着の抑制効果を喪失又は著しく減退させない基の種類、及び数を選択するように留意しなければならない。また、第2PEG鎖は、側鎖を有することもできる。
第2PEG鎖を構成するEG基の数は、前述のように第1PEG鎖のEG基の数との和による総数を考慮して決定される。これについては、第1PEG鎖の項で説明した通りである。
「第2連結基」とは、第2PEG鎖を前記第1PEG鎖に不可逆的に連結する際に直接寄与する基である。すなわち、当該連結は、第1PEG鎖の第1連結基及び第2PEG鎖の第2連結基の結合により行われる。第1連結基と第2連結基の結合は、直接的結合又は後述するリンカーを用いた間接的結合のいずれであってもよい。前述のように、本発明においては、第1PEG鎖と第2PEG鎖が、直接的又は間接的に不可逆的な連結をしていなければならない。ここでいう不可逆的な連結には、前記第1連結基と同様に、共有結合、又はビオチン−アビジン若しくはストレプトアビジン結合のような高親和力による非共有結合が含まれる。それ故、第2連結基についてもそれが官能基の場合には相手分子と共有結合による連結が可能な化学活性を有する活性官能基であることが好ましい。例えば、アルデヒド基(-CHO)、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、アミノ基(-NH3)、チオール基(-SH)、シアノ基(-C≡H)、ニトロ基(-NO2)が含まれる。特に、第1連結基と第2連結基が直接的に結合する場合であって、かつ互いが官能基である場合には、両官能基の組み合わせに留意する。一般的には、化学反応の結果、両官能基間で共有結合を形成し得る組み合わせを選択することが望ましい。例えば、アミノ基とアルデヒド基、チオール基とマレイミド基、アジド基とアセチレン基、アジド基とアミノ基、ヒドラジン基とケトン基、及びヒドラジン基とアルデヒド基が含まれる。
あるいは、高親和力によって第2連結基が第1連結基と結合する場合、例えば、第2連結基と直接結合する相手分子がアビジン若しくはストレプトアビジンであれば、第2連結基にはビオチンを選択することが好ましい。その逆に、相手分子がビオチンであれば、第2連結基にはアビジン若しくはストレプトアビジンを選択することが好ましい。第2連結基は、第2PEG鎖の一方の末端に、当該分野で公知の技術によって付加することができる。
本発明の一の態様において、少なくとも一の第2PEG鎖は、他方の末端に非特異的吸着抑制基を有することができる。「他方の末端」とは、第2PEG鎖のPEG鎖長軸において前記第2連結基を有する末端とは反対側の末端をいう。ここでいう「非特異的吸着抑制基」とは、SAMにおける非特異的吸着の抑制効果の高い基をいう。「非特異的吸着」とは、前記のように疎水性相互作用、物理的吸着、静電気的結合を原因とする、標的物質以外の物質の吸着をいう。非特異的吸着抑制基は、前記非特異的吸着の抑制効果を有するあらゆる物質を含むことができる。例えば、官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物(ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む)、アミノ酸若しくはペプチド、金属、樹脂(天然又は合成樹脂を含む)、シリカ(二酸化ケイ素)、又はセラミックス、又はそれらの組み合わせが含まれる。一の態様において、非特異的吸着抑制基が官能基である場合、ヒドロキシル基(-OH)又はメトキシ基(-OCH3)とすることができる。特に、ヒドロキシル基は、親水性であることから形成されるSAM表面の親水性を向上させ、疎水性相互作用による非特異的吸着を軽減できるので、好ましい。抑制基を末端に有するPEG鎖は、基本骨格であるPEG鎖と非特異的吸着抑制基のそれぞれが有する非特異的吸着抑制効果によって、非常に高い非特異的吸着抑制効果を発揮し得る。したがって、本非特異的吸着抑制基を末端に有する第2PEG鎖を所定の比率で混合した混合SAMは、極めて高い非特異的吸着の抑制効果を有し得る。
本発明の一の態様において、少なくとも一の第2PEG鎖は、他方の末端にリガンド連結基を有することができる。本発明において「リガンド」とは、本発明の混合SAMを用いて目的の物質を処理することができる物質をいう。「目的の物質を処理する」とは、目的の物質と相互作用することによって、目的の物質の検出、選択、分離、除去、分解、又は改変を行うことをいう。リガンドは、例えば、官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物(ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む)、アミノ酸若しくはペプチド、金属、磁石、樹脂、シリカ(二酸化ケイ素)、又はセラミックス、又はそれらの組み合わせを含む。核酸は、DNA、RNA、LNA(Locked Nucleic Acid:LNAは登録商標)若しくはPNA(Peptide Nucleic Acid)のような核酸類似物又はそれらの断片を含む。ペプチドは、酵素又は抗体若しくは人工抗体(例えば、ヒト化抗体又はダイアボディー等の人工多価抗体)を含むタンパク質、又はその断片を含む。本発明で磁石とは、永久磁石をいい、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、ネオジウム磁石、又はサマリウムコバルト磁石を含む。本発明で樹脂とは、天然樹脂(例えば、天然ゴム又は漆)又は合成樹脂(プラスチック)を含む高分子化合物をいう。セラミックスは、無機化合物成形体(例えば、ガラス)、半導体(例えば、シリコン)、又はファインセラミックスを含む。具体的な例を挙げると、目的の物質が抗原又はハプテンの場合には、本発明のリガンドは、その抗原若しくはハプテンに対する抗体、又はその抗原若しくはハプテンに対して結合性を有する抗体断片とすることができる。また、目的の物質がDNA若しくはRNA又はそれらの断片の場合には、本発明のリガンドは、そのDNA若しくはRNA又はそれらの断片が有する塩基配列に相補的なDNA若しくはRNA又はそれらの断片とすることができる。さらに、本発明のリガンドは、目的の物質を基質とする酵素とすることができる。また、目的の物質がアビジン又はストレプトアビジンである場合には、本発明のリガンドは、ビオチンとすることができる。目的の物質とリガンドとは相互に関連することから、通常、前記目的の物質とリガンドは、相互に交換することも可能である。
「リガンド連結基」とは、第2PEG鎖の長軸において前記第2連結基とは反対の末端に配置されており、第2PEG鎖にリガンドを連結する際に直接寄与する基である。すなわち、第2PEG鎖とリガンドは、リガンド連結基を介して直接的に、又は間接的に連結することができる。第2PEG鎖とリガンドが直接的に連結する場合、リガンド連結基は、リガンドと連結可能なあらゆる基を含む。例えば、官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物(ヌクレオシド又はヌクレオチドを含む)、アミノ酸若しくはペプチド、金属、磁石、樹脂、シリカ(二酸化ケイ素)、又はセラミックス、又はそれらの組み合わせが含まれる。官能基は、リガンドとの化学的連結(例えば、共有結合又はイオン化結合)が可能な化学活性を有する活性官能基であることが好ましい。例えば、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、スルホ基、オキシム、シアノ基、ニトロ基からなる群より選択される活性官能基を含む。いずれの基を用いるかは、リガンドの種類、及び/又はリガンドとの結合様式によって適宜定めればよい。例えば、リガンドが2,4,6,-トリニトロトルエン(TNT)のような低分子化合物であり、この化合物のカルボキシル基と第2PEG鎖とを共有結合的に連結させる場合には、リガンド連結基を、例えばアミノ基とし、両官能基をアミンカップリング法によって連結することができる。このような基の選択及び/又はそれらの連結技術は、当該分野では公知である。例えば、Johnsson, B., et al., Anal. Biochem., 198, pp. 268-277, 1991を参照されたい。リガンド連結基は、一の第2PEG鎖において第2連結基と同一の種類の基であってもよい。
同一の又は異なる二以上のリガンド連結基が、第2PEG鎖の一方の末端に存在していてもよい。このとき、第2PEG鎖は、その一方の末端に複数のリガンド連結基を連結する機能をもつ介在分子を有することができる。ここでいう介在分子は、それ自身はリガンド連結基として機能しない、又はそれ自身も同時にリガンド連結基として機能し得る官能基、低分子化合物、核酸若しくはその構成物、アミノ酸若しくはペプチド、金属、樹脂、シリカ、又はセラミックスを含む。
リガンド連結基は、適当な保護基を含んでいてもよい。保護基は、当該分野では公知の用語である。すなわち、反応性の高い官能基の活性を一時的に抑え、その特性を保護する目的で導入される置換基をいう。保護基は、原則として、所定の反応後に脱保護されることにより元の官能基の状態に戻すことができる。したがって、リガンド連結基が保護基を含む場合、第2ステップ終了後に、その保護基を脱保護するための脱保護ステップを行う必要がある。本発明において、保護基の導入が必要となるケースは、例えば、第2ステップにおいて第1連結基と第2連結基とを化学反応によって直接連結するときに、リガンド結合基が第1連結基と反応してしまう場合が考えられる。この様なケースでは、リガンド結合基を予め適当な保護基で保護しておき、第2ステップの反応終了後にその保護基を適当な方法で脱保護すればよい。反応性の高い官能基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基)の保護基については、当該分野における公知慣用の技術として、それぞれに適当なものが知られている。例えば、Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience, 1999を参照されたい。どのような保護基を用いるかは、リガンド連結基、及び第1連結基、第2連結基又は後述するリンカーが有する官能基の種類に応じて決定される。選択した官能基間の反応性、脱保護基の導入の必要性、リガンド連結基への保護基の導入方法又は脱保護方法については、当業者には周知の事項である。
第2ステップは、二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液に前記第1ステップ後の基板表面を接触させることによって達成される。
「二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液」とは、二以上の異なる第2PEG鎖を所定の比率で溶解若しくは懸濁している液体である。本液体は、水、又は低級アルコール、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタンのような有機溶媒を含む。通常、PEGが可溶で、かつ第1PEG鎖と第2PEG鎖の連結を可能にする液体が好ましい。いずれの液体を用いるかは、基板の材質、第2連結基及びリガンド連結基の種類を勘案して決定する。一般には、水が用いられる。前記所定の比率は、基板表面に混合SAMを形成させるにあたり、混合SAMの使用用途に応じて所望する任意の比率とすることができる。本発明は、混合液中の二以上の異なる第2PEG鎖の比率を混合SAMに反映させることができるからである。例えば、実施例1で示すように、基板上に混合SAMを、末端にリガンドを担持したSAM構成分子と非特異的吸着抑制基を有するSAM構成分子とが8:2となるように形成させたい場合には、本混合液において、例えばリガンド結合基を有する第2PEG鎖と非特異的吸着抑制基を有する第2PEG鎖とを8:2の比率で混合しておけばよい。第2PEG鎖の濃度は、使用する各第2PEG鎖の種類、及び使用する液体によって適宜定めることができる。一般に、各第2PEG鎖の総濃度が、0.1〜100mM、好ましくは0.5〜50mM、より好ましくは1〜20mMであればよい。
「接触」とは、前記実施形態1の定義の通りであるが、ここでいう接触とは、特に、第2PEG鎖を含む混合液と基板表面との物理的触れ合いを意味する。具体的には、例えば、前記混合液への基板の浸漬、基板表面での混合液の流通、又は基板表面への混合液の塗布若しくは吹き付けが含まれる。接触は前記流通による方法が好ましい。これは、本発明を利用した装置において前記第1ステップから連続して行う際に処理が容易なこと(すなわち、自動化が可能なこと)、及び第2ステップの混合液中における二以上異なる第2PEG鎖の比率を一定に維持し、かつその比率をより正確に混合SAMの反映させることができるからである。本発明の目的の一つは、この混合液中の二以上の異なる第2PEG鎖の比率を反映させた混合SAMの作製方法を提供することである。それには、二以上異なる第2PEG鎖を混合液中で均一な比率で存在させる必要がある。流通は、その混合液を流動、攪拌することで混合溶液中の各第2PEG鎖の比率を偏らせることなく、常に全体として均一な状態で保持できることから非常に有用である。
第2ステップにおける連結反応条件(例えば、温度、又は反応時間)は、使用する第1連結基と第2連結基の種類、結合反応の種類(例えば、アミド結合、エステル結合)に応じて適宜定めればよい。例えば、第1連結基と第2連結基のそれぞれがカルボキシル基とアミノ基であり、両連結基を直接的に化学結合させる場合には、それらの連結基がアミンカップリング反応によりアミド結合を形成できる連結反応条件を選択すればよい。また、第1連結基と第2連結基のそれぞれがアビジンとビオチンであり、高親和力によって連結させる場合には、両物質が結合可能な条件(すなわち、いずれか一方又は両方の物質が被覆や立体構造のような物理的障害によって、あるいは変性によって、結合不能とならないような条件)であればよい。このような技術は、当該分野では周知である。本ステップは、既に基板上に形成された第1PEG鎖に第2PEG鎖を化学反応的に、又は親和力によって連結させることから、通常、5分〜2時間程度で完了する。すなわち、従来の混合SAMの作製方法のように基板上に混合SAMを配向形成させるための長い時間(一般に4〜30時間)を必要としない。それ故、混合SAM形成時において二以上の異なるSAM構成分子(本発明では第2PEG鎖)間における置換反応が生じにくく、混合液中に含まれる二以上の異なるSAM構成分子の比率を正確に反映することが可能である。また、本ステップは、基板上にSAMを配向形成させる必要がないことから、前記のように二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液を基板上に流通させた状態であっても目的の混合SAMを形成させることができる。したがって、第2ステップの反応時間は、2分〜4時間、好ましくは5分〜2時間である。反応温度は、構成要件にもよるが、0〜80℃、好ましくは30〜50℃、より好ましくは室温(10〜30℃)である。
以上のステップによって、基板表面に所望の比率で二以上の異なるPEG鎖を配向した混合SAMを作製することができる。任意で、第2ステップ終了後の基板を、前記第1ステップ終了後と同様の方法で洗浄することもできる。
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態は、前記第1の実施形態における混合SAM作製方法において、第1ステップの後に、リンカーを含む混合液に第1PEG鎖を固定した基板を接触させるステップ(リンカー連結ステップ)をさらに含み、前記第2ステップで、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する混合SAM作製方法である。本実施形態の混合SAM作製方法の基本構成は、前記実施形態1と同様であるが、第1ステップと第2ステップ間に、さらにリンカー連結ステップを有することを特徴とする。以下、本実施形態について詳細に説明をするが、第1ステップの全て及び第2ステップの多くは、前記実施形態1の第1ステップ及び第2ステップと同じであることからその説明を割愛し、ここではリンカー連結ステップ及び第2ステップにおいて本実施形態に特徴的な構成について説明をする。
(リンカー連結ステップ)
本実施形態において、リンカー連結ステップは、リンカーを第1PEG鎖に連結させるステップである。リンカー連結ステップは、前記実施形態1の第1ステップの後、第2ステップ前に行われる独立したステップである。
「リンカー」とは、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖の結合を仲介する物質である。例えば、リンカーは、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖の直接的な結合が物理的に又は化学反応的に困難な場合、その結合を円滑に行うことができる物質、又は前記結合は困難ではないが混合SAMの作製上、両鎖の結合にそれを用いることでより優位となる(例えば、作製方法全体を考慮した場合の簡便性、コスト面、両鎖の結合強度の増加、混合SAMの特性の増強等)物質を含む。前記化学反応的に困難な場合とは、第1連結基と第2連結基の組が、例えば、アミノ基とアミノ基、アミノ基とチオール基、アミノ基とカルボキシル基、アミノ基とヒドロキシル基、チオール基とチオール基、チオール基とカルボキシル基、及びチオール基とヒドロキシル基の場合を含む。リンカーは、それ自身が基であってもよく、又は一以上の基とキャリアとからなる複合体であってもよい。ここでいう基は、前記実施形態1に記載した通りである。本実施形態では、特に、第1連結基、第2連結基及び/又は他のリンカーと直接、かつ不可逆的に結合し得る基をいう。ここでいう結合は、共有結合又は高い親和力による結合(例えば、ビオチン−アビジン若しくはストレプトアビジン結合)が望ましい。また、前記キャリアとは、一又は異なる二以上の基を担持できる支持体をいう。キャリアは、官能基、低分子化合物、核酸(DNA及びRNA又はそれらの断片を含む)若しくはその構成物、アミノ酸若しくはペプチド(タンパク質を含む)、樹脂(天然樹脂又は合成樹脂)、又はそれらの組み合わせが含まれる。リンカーは、本発明の混合SAM形成後に、本混合SAMのPEG鎖が有するフレキシビリティーや非イオン性を阻害又は減退させない物質を選択することが望ましい。リンカーは、通常、第1連結基及び/又は第2連結基と直接結合できる基をそれぞれ少なくとも1つ有する。いずれの基を用いるかは、第1連結基及び/又は第2連結基の種類によって決定される。すなわち、前述のようには第1連結基及び第2連結基との不可逆的な結合が可能となる基を選択する。例えば、第1連結基がカルボキシル基であれば、それとアミンカップリング反応によりアミド結合の形成ができるアミノ基を第1連結基に対する基として選択すればよい。リンカーは、さらに、他のリンカーと直接結合できる基を一以上有することもできる。この場合、リンカーは、二以上連続して連結することができる。異なるリンカーが三以上連続して、第1PEG鎖と第2PEG鎖の連結に寄与する場合には、例外的に、少なくとも1のリンカーは第1PEG鎖及び他のリンカーとそれぞれ直接連結できる基を有し、少なくとも1のリンカーは第2PEG鎖及び他のリンカーとそれぞれ直接連結できる基を有し、又はそれ以外のリンカーは一以上の他のリンカーと直接連結できる基を複数有する。
リンカー連結ステップは、第1ステップの後に、リンカーを含む混合液に第1PEG鎖を固定した基板を接触させることによって達成される。
「リンカーを含む混合液」とは、リンカーを溶解若しくは懸濁している液体である。本液体は、水、又は低級アルコール、ベンゼン、アセトン、ジクロロメタンのような有機溶媒を含む。通常、リンカーが可溶で、かつ第1PEG鎖とリンカーとの連結を可能にする液体が好ましい。いずれの液体を用いるかは、基板の材質、第1連結基及びリンカーが有する基の種類を勘案して決定する。一般には、水が用いられる。リンカーの濃度は、リンカーの種類、第1連結基との反応性、及び使用する液体によって適宜定められる。通常は、1mM〜1M、好ましくは5mM〜500mMであればよい。
「接触」の定義は、前記実施形態1の通りであるが、ここでいう接触とは、特に、リンカーを含む混合液と第1ステップ終了後の基板表面との物理的触れ合いを意味する。例えば、前記混合液への基板の浸漬、基板表面での前記混合液の流通、又は基板表面への前記混合液の塗布若しくは吹き付けが含まれる。浸漬による方法又は前記流通による接触が好ましい。流通による接触は特に好ましい。
リンカー連結ステップにおける連結反応条件(例えば、温度、反応時間)は、使用する第1連結基とリンカーの有する基の種類、結合反応の種類(例えば、アミド結合、エステル結合、ビオチン−アビジン結合)に応じて決定される。本ステップにおいて、リンカーと第1連結基との連結は、化学反応、又は親和力によって達成されるため、通常、短時間で完了する。したがって、反応時間は、2分〜4時間、好ましくは5分〜2時間である。反応温度は、構成要件にもよるが、0〜80℃、好ましくは30〜50℃、より好ましくは室温(10〜30℃)である。
以下の第2ステップに進む前に、リンカー連結ステップ終了後の基板表面は、洗浄により、基板表面上に残ったリンカーを含む混合液、又は第1PEG鎖に十分に連結しなかったリンカー等を除去されておくことが望ましい。洗浄条件は、選択した基板の材質、リンカーの種類、濃度又は結合反応の種類に応じて適宜定められる。一般に、洗浄は、リンカー連結終了後の基板を水、有機溶媒又はそれらの混合液に適当な時間、適当な回数で浸漬するか、又はそれらの液体を前記基板の表面に適当な時間流通させることで達成される。また、超音波洗浄を行うこともできる。超音波洗浄は、前記水等の液体のみによる洗浄では除ききれない不純物等を除去できるので、好ましい。超音波洗浄の方法は、当該分野では公知である。前記水、有機溶媒又はそれらの混合液による洗浄と、前記超音波を用いた洗浄とを組み合わせることもできる。
(第2ステップ)
基本構成は、前記実施形態1の第2ステップと同じであるが、本実施形態は、特に、第1PEG鎖と第2PEG鎖がリンカーを介して連結されることを特徴とする。すなわち、本実施形態では、第2連結基は、第1連結基と直接結合せず、既に第1連結基と連結しているリンカーと結合をする。したがって、本実施形態における第2ステップは、リンカーの有する基と第2連結基の種類、両基の結合反応の種類(例えば、アミド結合、エステル結合)に応じて適宜定めればよい。
本ステップの終了後、リンカーは、形成されたPEG鎖内に通常、その一部が残存する。連結後のPEG鎖内に残存するリンカーは、元のリンカーの同定が可能な程度に、又はそのごく一部のみで同定不能な痕跡程度で残っていてもよい。後者の例としては、リンカーがキャリアを有する場合、本ステップにおいてキャリアが外れ、ステップ終了後のPEG鎖内にキャリアが残存しない場合等が挙げられる。
以上のステップによって、基板表面に所望の比率で二以上の異なるPEG鎖を配向した混合SAMを作製することができる。任意で、第2ステップ終了後の基板を、前記リンカー連結ステップ終了後と同様の方法で洗浄することもできる。
本実施形態によれば、第1連結基と第2連結基の直接的な連結が困難な場合若しくは直接的な連結の効率が低い場合、適当な基を担持したリンカーを用いることにより、第1連結基と第2連結基を仲介し、連結を容易にする若しくは効率を高めることができる。また、本実施形態によれば、第1連結基と第2連結基の直接的な連結が所望しない連結を形成する場合にリンカーの仲介により、その問題を解決することができる。
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態は、前記第1の実施形態における第2ステップの混合液中にリンカーをさらに含み、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する混合SAM作製方法である。本実施形態の混合SAM作製方法の基本構成は、前記実施形態1と同様であるが、第2ステップに特徴的な構成を有する。以下、本実施形態に特徴的な構成について説明をする。
本実施形態は、第2ステップの混合液中に二以上の異なる第2PEG鎖、及びリンカーを含む。すなわち、前記第2実施形態がリンカーを第1PEG鎖に連結するためのステップ(リンカー連結ステップ)を独立して有していたのに対し、本実施形態では前記ステップを第2ステップと同時に行うことを特徴とする。リンカーを使用する目的は、前記第2実施形態と同様である。「第2ステップの混合液」とは、前記実施形態1で記載した「二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液」を指す。
本実施形態は、原則として、前記実施形態1の第2ステップに準ずる。ただし、第1連結基と第2連結基の直接的な連結によって所望しない連結が生じないこと、又はリガンド連結基がリンカーと連結しない若しくはほとんど連結しないことを前提要件とする。具体的な実施形態としては、「第2ステップの混合液」の条件下(例えば、溶液組成、pH)でリンカーが第1連結基及び第2連結基と(場合によっては、リンカー間で)結合可能であれば、単に「第2ステップの混合液」中に必要量のリンカーを添加して混合すればよい。あるいは、前記実施形態2の「リンカーを含む混合液」の条件下(例えば、溶液組成、pH)で二以上の異なる第2PEG鎖がリンカーと連結可能であれば、逆に二以上の異なる第2PEG鎖を適当量で所望する比率にて「リンカーを含む混合液」に添加して混合することもできる。後者の場合、結果的に「リンカーを含む混合液」が「第2ステップの混合液」となる。さらに、単にリンカー又は二以上の異なる第2PEG鎖を、それぞれ「第2ステップの混合液」又は「リンカーを含む混合液」に添加したのみでは、リンカー又は二以上の異なる第2PEG鎖が機能しない、すなわち目的の対象物と結合できない場合には、リンカー及び二以上の異なる第2PEG鎖のいずれもが結合可能となるように、溶液組成、pHを適宜調整してもよい。第2ステップの混合液において、リンカーが第1連結基と連結する前に、第2連結基と連結していても構わない。その後、第2ステップでリンカーが第1連結基と連結すれば、結果的に形成される混合SAMは、本発明の混合SAMとなり得るからである。
本実施形態によれば、本発明の混合SAMの作製において、ステップを増やすことなく、リンカーを用いることができる。
<第4実施形態>
本発明の第4の実施形態は、前記第1〜第3実施形態に記載の方法によって作製された混合SAMの表面に、リガンドを含む混合液を接触させ、第2PEG鎖における他方の末端に前記リガンドを結合させるセンサチップの作製方法である。
「センサチップ」は、後述するセンサに供せられ、主としてセンサ内において目的の物質を検出するための検出部として機能し得るものである。センサチップの大きさ、厚さ、及び形状は、前記実施形態1で記載した基板と同一とすることができる。あるいは、前記基板よりも大きく、厚く、及び/又は異なる形状であってもよい。例えば、前記基板を後述するセンサ内にセットするためアダプタに嵌合した状態のセンサチップが、該当する。
本実施形態で、「リガンド」とは、前記実施形態1で記載したリガンドと同義である。本実施形態の1の態様において、リガンドは、特に、核酸(DNA、RNA、LNA若しくはPNAのような核酸類似物、又はそれらの断片を含む)、ペプチド若しくはタンパク質(抗体又は酵素を含む)又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンであることが好ましい。「第2PEG鎖における他方の末端」とは、前記実施形態1で記載のように、第2PEG鎖のPEG鎖長軸において前記第2連結基を有する末端とは反対側の末端をいう。
本実施形態において、リガンドは、あらゆる方法で混合SAMにおける第2PEG鎖の少なくとも一の他方の末端に結合させることができる。例えば、リガンドは、前記実施形態1に記載した「リガンド結合基」を介して、当該分野で公知の技術によって、化学的に(例えば、リガンド結合基との共有結合、イオン化結合又は水素結合により)、高親和力で(例えば、ビオチン−アビジン又はストレプトアビジン結合により)、又は磁力で結合してもよい。いずれの基も有していない第2PEG鎖の他方の末端は、一般的にはPEGの末端であるヒドロキシル基を有する。したがって、リガンドは、リガンド結合基を介さず、このヒドロキシル基に化学結合によって第2PEG鎖に直接結合させてもよい。
本実施形態によれば、所望の比率を有する混合SAMをもつセンサチップを作製することができる。したがって、混合SAM作製時に非特異的吸着抑制基を有する第2PEG鎖を使用した場合には、非特異的吸着の抑制効果の高いセンサチップを作製できる。
<第5実施形態>
本発明の第5の実施形態は、混合SAMとリガンド部とを備えるセンサチップである。以下、本実施形態の構成について説明する。
本実施形態の混合SAMは、基板と第1PEG鎖と二以上の異なる第2PEG鎖を有する。
「基板」とは、前記実施形態1に記載した基板と同義であり、特に断りのない限りその構成も同じである。本実施形態の1の態様において、基板は、第1PEG鎖の固定基を結合する少なくとも一表面が金属で構成されている。これは、本実施形態のセンサチップを後述の表面プラズモン共鳴測定センサ又は水晶振動子測定センサに用いる場合に都合がよいためである。このとき、金属は、金、白金、銀又は銅のいずれかであることがより好ましい。中でも金は特に好ましい。
「第1PEG鎖」とは、前記実施形態1に記載した第1PEG鎖と同義である。ただし、本実施形態の第1PEG鎖は、遊離した状態ではなく、センサチップ上において、実施形態1に記載の第1PEG鎖が第1ステップにおいて前記基板の少なくとも一表面に固定基を介して結合された後の状態と同じ構成を有する。「固定基」とは、前記実施形態1に記載の固定基と同一の構成を有する。本実施形態の一の態様において、前記基板の少なくとも一表面が金属の場合、好ましくは金、白金、銀又は銅のいずれかである場合、固定基は、チオール基であることが好ましい。これは、実施形態1に記載した理由と同様の理由による。
「第2PEG鎖」とは、前記実施形態1に記載した第2PEG鎖と同義である。ただし、本実施形態の第2PEG鎖は、遊離した状態ではなく、センサチップ上において、実施形態1に記載の第2PEG鎖が前記基板の少なくとも一表面に固定基を介して結合された後の状態と同じ構成を有する。本実施形態の1の態様において、二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の末端が非特異的吸着抑制基を備えることができる。「非特異的吸着抑制基」とは、前記実施形態1に記載の非特異的吸着抑制基と同一の構成、及び性質を有する。非特異的吸着抑制基は、ヒドロキシル基又はメトキシ基であることが好ましい。実施形態1に記載した理由と同様の理由による。
本実施形態の1の態様において、混合SAMは、リンカー部をさらに有する。「リンカー部」とは、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖との間に存在し、両鎖の連結を介在する部である。すなわち、リンカー部は、前記実施形態2又は3に記載の第2ステップ後の混合SAMのPEG鎖内に存在するリンカー若しくはその一部と同様の構成を有する。
「リガンド部」とは、前記混合SAMの二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の第2PEG鎖に連結された部である。すなわち、リンカー部は、前記実施形態4に記載の混合SAMの第2PEG鎖における少なくとも一の他方の末端に結合した後のリガンドと同様の構成を有する。本実施形態の1の態様において、リガンド鎖は、核酸、ペプチド若しくはタンパク質又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンとすることができる。
本発明のセンサチップによれば、当該センサチップ上における非特異的吸着を効率的に抑制することができる。さらに、二以上の異なる第2PEG部のうち少なくとも一の末端が非特異的吸着抑制基を有する場合は、非特異的吸着をほとんど抑制することができる。これによって、当該センサチップを使用するセンサの検出精度をより高めることができる。
<第6実施形態>
本発明の第6の実施形態は、前記第5実施形態に記載のセンサチップを有するセンサである。ここでいう「センサ」とは、本発明の混合SAMが形成されたセンサチップを用いて対象物を検出することを目的とする器機又は装置である。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定センサ、水晶振動子(QCM)測定センサ、プレートリーダー、マイクロプレートリーダー、アレイリーダーが含まれる。あるいは、ELISA法による検出で用いるマイクロタイタープレートのようにセンサチップ自体がセンサの機能を果たし得る場合は、センサチップをセンサと見なすこともできる。SPR測定センサ、又はQCM測定センサが好ましい。
「SPR測定センサ」とは、表面プラズモン共鳴現象を利用して、金属薄膜表面上の吸着物を高感度に測定するセンサである。表面プラズモン共鳴現象とは、金属薄膜へのレーザー光の入射角度を変化させると特定の入射角度(共鳴角)において反射光強度が著しく減衰する現象をいう。本技術は、当該分野において周知である。例えば、永田和弘、及び半田宏, 生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法, シュプリンガー・フェアラーク東京, 東京, 2000を参照されたい。
「QCM測定センサ」とは、水晶振動子に取り付けた電極表面への物質が吸着するとその質量に応じて水晶振動子の共振周波数が減少する現象を利用して、共振周波数の変化量によって極微量な吸着物を定量的に捕らえる質量測定センサである。本技術は、当該分野において周知である。例えば、J.Christopher Love,L.A.Estroff,J.K.Kriebel,R.G.Nuzzo,G.M.Whitesides(2005) Self-Assembled Monolayers of a Form of Nanotechnology, Chemical Review,105:1103-1169;森泉豊榮,中本高道,(1997) センサ工学,昭晃堂を参照されたい。
本実施形態によれば、非特異的吸着による誤検知を大幅に低減し、目的の物質との結合特異性の高い、すなわち検出精度の高い測定センサを提供することができる。
以下に、例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、単なる例示であって、本発明を何ら制限するものではない。
<混合SAMの作製>
(PEG17/10混合SAMの作製)
図1及び図2を用いて、EG基を17個及び10個有する混合SAMの作製について説明する。ここでは、前記第2実施形態のようにリンカーを用い、かつ第2PEG鎖のリガンド連結基が保護基を有する例を挙げる。
(1)金薄膜の予備洗浄
混合SAMの基板である50nm膜厚の金薄膜(Biacore)(図1, 1)を超音波洗浄器(US-1;アズワン社)によってアセトンで10分間、エタノールで2分間、2−プロパノールで2分間、それぞれ洗浄した。
(2)第1PEG鎖の金薄膜への固定(第1ステップ:図1, S101)
予備洗浄後の金薄膜をSC1洗浄液(超純水:過酸化水素:アンモニア=容量比5:1:1)中に浸漬し、90℃で20分問加熱洗浄した後、第1PEG鎖である1mMのPEG6-COOH芳香族アルカンジチオール(SensoPath technologies社)(図2a)エタノール溶液中に室温で約24時間浸漬し、金薄膜表面に固定基である2つのチオール基を固定した。その後、金薄膜をエタノール中で5分間超音波振とうして洗浄した。
(3)末端カルボキシル基のNHSエステル化(リンカー連結ステップ:図1, S102)
第1ステップ後の金薄膜を0.4MのN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(Biacore)水溶液及び0.1M N-ヒドロキシスクシイミド(NHS)(Biacore)水溶液の混合溶液(容量比1:1)に室温で30分間浸漬し、第1PEG鎖の第1連結基であるカルボキシル基末端にNHSエステル化によって、リンカーを連結した。
(4)第2PEG鎖のリンカーへの連結(第2ステップ:図1, S103)
リンカー連結ステップ後の4枚の金薄膜を、異なる2つの第2PEG鎖である10mMのモノ-N-t-Boc-アミノ-dPEG11アミン(Quanta Biodesign)(図2b)の10mM ホウ酸8.5バッファ(10mM 四ホウ酸二ナトリウムpH 8.5 + 1M NaCl)溶液とアミノ-dPEG4アルコール(Quanta Biodesign)(図2c)の10mM ホウ酸8.5バッファ溶液とを10:0、8:2、5:5、2:8及び1:9の容量比で混合した溶液にそれぞれ約1時間浸漬した。アミノ-dPEG4アルコールは、非特異的吸着抑制基であるヒドロキシル基を有する。これにより、各第2PEG鎖の第2連結基であるアミノ基とリンカーが有する基であるNHS化したカルボキシル基との間でアミンカップリング反応が行われ、アミド結合による第2PEG鎖とリンカーの連結が完了した。
(5)保護基の脱保護処理(図1, S104)
第2ステップ後の金薄膜を超純水で3回洗浄後、4N塩酸に1時間浸漬して、第2PEG鎖のリガンド連結基であるアミノ基末端のBoc(tert-ブトキシカルボニル)保護基を脱保護した。以上のステップにより、本発明によるPEG17/10混合SAMが作製された。前記第2PEG鎖の各容量比の混合SAMを、それぞれPEG17/10(10:0)混合SAM、PEG17/10(8:2)混合SAM、PEG17/10(5:5)混合SAM、PEG17/10(2:8)混合SAM及びPEG17/10(1:9)混合SAMとした。
(PEG3−SAM及びPEG0−SAMの作製)
EG基を17個及び10個有するEG基の長さと非特異的吸着の抑制効果の関係を検証するためのPEG17/10混合SAMのコントロールとして、EG基を3つ有するPEG3−SAMとEG基を持たないPEG0−SAMを作製した。
(1)PEG3−SAMの作製
基本的な手順は、前記PEG17/10混合SAMの作製方法に準じた。洗浄後の金薄膜をlmMの4,4’-ジチオジブタン酸(DDA)(Moritex)のエタノール溶液に約24時間浸漬し、第1PEG鎖を基板に固定した(第1ステップ)。次に、第1PEG鎖の第1連結基であるカルボキシル基に前記EDC/NHS溶液で処理してリンカーを連結し(リンカー連結ステップ)、続いて第2連結基であるN-Boc-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(Sigma-Aldrich)の第2連結基であるアミノ基をアミンカップリング反応によりリンカーと連結させた(第2ステップ)。最後に、4N塩酸でリガンド連結基にあったBoc保護基を脱保護し、PEG3−SAMを完成させた(図3a)。
(2)PEG0−SAMの作製
基本的な手順は、前記PEG17/10混合SAMの作製方法に準じた。洗浄後の金薄膜をlmMの11-アミノ-1-ウンデカンチオール塩酸塩(11-AUT)(同仁化学研究所)のエタノール溶液に約24時間浸漬し、第1PEG鎖を基板に固定した(第1ステップ)。次に、第1PEG鎖の第1連結基であるカルボキシル基に前記EDC/NHS溶液で処理してリンカーを連結し(リンカー連結ステップ)、続いて第2連結基であるN-Boc-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(Sigma-Aldrich)の第2連結基であるアミノ基をアミンカップリング反応によりリンカーと連結させた(第2ステップ)。最後に、4N塩酸でリガンド連結基にあったBoc保護基を脱保護し、PEG0−SAMを完成させた(図3b)。
<センサチップの作製>
実施例1で作製した様々な混合比率を有するPEG17/10混合SAM、コントロールであるPEG3−SAM及びPEG0−SAMのリガンド連結基にリガンドを連結したセンサチップの作製方法について説明する。本実施例では、SPRセンサに間接競合法を導入したため、リガンドとして、爆薬抗原のハプテンである3種のトリニトロトルエン(TNT)類似化合物、すなわち2,4,6-Trinitrophenyl glycine(TNPグリシン);N-(2,4-Dinitrophenyl)グリシン(DNPグリシン);及び2,4-Dinitrophenyl acetic acid(DNP酢酸)をそれぞれ連結した。間接競合阻害法とは、感度増幅手法の一つで、目的とする対象物である抗原と一定濃度の抗体とを混合した試料液を抗原又は類似化合物を固定したセンサチップ表面に流通して測定する方法である。この方法によれば、試料液中に目的とする抗原が含まれる場合、その抗原と抗体が予め反応するため、その分、センサ応答値は抗体溶液のみの場合に比べて小さくなる。したがって、試料液中に含まれる抗原量は、応答値の減少分として間接的に求めることができる。
(1)TNT類似化合物の固定
今回用いた3種類のTNT類似化合物は、いずれもカルボキシル基を有する。そこで、あらかじめこのカルボキシル基をEDC/NHSで活性化する処理を行った。まず、TNPグリシン(Research Organics)、DNPグリシン(東京化成)、又はDNP酢酸(東京化成)の各10mMジメチルホルムアミド(DMF)溶液50μlを、0.4mMのEDC水溶液50μl及び0.1mMのNHS/DMF溶液50μlの混合液に加え、1.5mlマイクロチューブ内で約1時間反応させた。その後、マイクロチューブにDMFで希釈したトリエチルアミン溶液を適量加え、溶液のpHを約8.5に調整した。この溶液に実施例1で作製した各PEG17/10混合SAM、PEG3−SA M及びPEG0−SAMを約1〜2時間浸漬し、アミンカップリング反応により核混合SAM又はSAMのリガンド結合基(アミノ基)に前記各TNT類似化合物を連結した(図1, S105)。以下、各センサチップを、例えばDNPグリシンをリガンドとして担持するPEG17/10(10:0) 混合SAMであれば、DNPグリシン−PEG17/10(10:0)センサチップと呼ぶ。
<各種タンパク質の非特異的吸着量の測定>
実施例2で作製したセンサチップを用いて、各センサチップのタンパク質の非特異的吸着効果を検証した。
(実験方法)
測定には実施例2で作製した5種類のうち4種類(10:0、8:2、5:5及び2:8)のDNPグリシン−PEG17/10センサチップ、並びにコントロールとしてDNPグリシン−PEG3センサチップ及びDNPグリシン−PEG0センサチップの計6種類のセンサチップを用いた。これらのセンサチップをSPRセンサ(Biacore J:Biacore)にセットし、25℃で、1000ppmのウシ血清アルブミン(BSA)、100ppmのヒトIgG、100ppmのウサギ抗マウスIgG溶液をそれぞれ1分間(60μl)流通させ、添加終了5秒後のセンサ応答値を測定した。ランニング緩衝液は、PBST(100mM リン酸緩衝生理食塩水:PBS、150mM NaCl、0.05%(v/v) Tween 20、pH7.2)を用い、流速60μl/minで流通させた。各タンパク質溶液について3回ずつ非特異的吸着量の測定を行った。
(結果)
結果を図4に示す。縦軸は、センサ応答値を示す。単位RU(Resonance Unit)は、l000RUが0.1゜の共鳴色変化量を表し、これはセンサ表面における約1ng/mm2の質量変化に相当する(永田和弘、半田宏, 生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法, シュプリンガー・フェアラーク東京, 東京, 2000)。エラーバーは、測定値の標準偏差の値を示す。DNPグリシン−PEG0、3及び17/10(10:0)センサチップの非特異的吸着量の結果から、本発明の作製方法によるSAMもEG基を多く有するほど非特異的吸着を効果的に抑制できることが立証された。
また、従来より、混合SAMのリガンドを担持したSAM構成分子とEG末端を有したSAM構成分子との比率において、EGを有するSAM構成分子の比率が50%以上であれば非特異的吸着は無視できるレベルになると解されてきた。これは、本発明の作製方法によるSAMのDNPグリシン−17/10(5:5)及び(2:8)センサチップの結果からも確認された。ところで、混合SAMにけるEGを有するSAM構成分子の比率を高くすれば、相対的にリガンドを有するSAM構成分子の比率が低下する。それ故、非特異的吸着は抑制されるが、逆に目的の物質の検出感度が落ちると言う相反する問題が、従来の混合SAMにはあった。しかし、本結果から、本発明の作製方法による混合SAMのDNPグリシン−17/10(8:2)センサチップは、EGを有するSAM構成分子の比率がわずか20%であってもDNPグリシン−17/10(5:5)及び(2:8)センサチップと同等、又はそれ以上の非特異的吸着の抑制効果を有することが明らかとなった。これは、すなわち、本発明の作製方法による混合SAMは、高感度性を保持させながら、非特異的吸着をほとんど抑制できること意味している。
<第2PEG鎖の比率が異なるセンサチップによる測定>
実施例2で作製したセンサチップを用いて、本発明によって作製されたセンサチップが、その表面に混合液中の異なる2つの第2PEG鎖の比率を反映させ、かつ安定的に維持していることを検証した。
(実験方法)
測定には実施例2で作製した5種類のうち4種類(8:2、5:5、2:8及び1:9)のDNPグリシン−PEG17/10センサチップのセンサチップを用いた。これらのセンサチップをSPRセンサ(Biacore J:Biacore)にセットし、25℃で、10ppm マウス抗TNTモノクローナル抗体(Strategic Biosolutions, USA)をそれぞれ1分間(60μl)流通させてセンサ応答値を測定した。ランニング緩衝液は、PBST(100mM リン酸緩衝生理食塩水:PBS、150mM NaCl、0.05%(v/v) Tween 20、pH7.2)を用い、流速60μl/minで流通させた。マウス抗TNTモノクローナル抗体は、DNPグリシンと特異的に結合する。
(結果)
結果を図5に示す。縦軸は、センサ応答値を示す。それぞれのインジェクション終了時の応答値を図中に示した。この結果から、DNPグリシン−17/10(5:5)センサチップのみは、期待値よりもやや低い応答値であるが、DNPグリシン−17/10(8:2)、(2:8)、(1:9)は、第2PEG鎖の比率と応答値とが、それぞれ比例関係にあることがわかる。これに対して、非特許文献6では、2種類のアルカンチオールを混合したエタノール溶液を用いた従来の浸漬法により混合SAMを形成させた場合、溶液濃度組成と表面組成が大きく変動すること、すなわち、応答値が比例関係とはならないことが記載されている。したがって、本発明によれば、従来法では成し得なかった異なる第2PEG鎖を所望の比率で基板表面上に反映させ、かつ安定的に維持することが、可能であることが立証された。
本発明によるPEG17/10混合SAM及び当該混合SAMを用いたセンサチップの作製フロー PEG17/10の作製に用いた第1PEG鎖及び第2PEG鎖 本発明により作製されたコントロール用のPEG3 SAM及びPEG 0 SAMの構造 混合比率を変えたPEG17/10混合SAMにおける非特異的吸着の抑制効果 各比率のPEG17/10混合SAMにおけるTNT抗体の測定結果
符号の説明
S101:第1ステップ、S102:リンカー連結ステップ、S103:第2ステップ、S104:脱保護、S105:リガンドの連結

Claims (23)

  1. (1)一方の末端に固定基を有し、他方の末端に第1連結基を有する第1ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む混合液に基板表面を接触させ、前記固定基を介して第1PEG鎖を前記基板表面に固定するステップと、
    (2)一方の末端に第2連結基を有する二以上の異なる第2PEG鎖を含む混合液に前記基板表面を接触させ、前記第2連結基と前記第1連結基の結合により第2PEG鎖を前記第1PEG鎖と連結するステップを含む
    混合自己組織化単分子膜(混合SAM)の作製方法。
  2. 少なくとも一の第2PEG鎖が他方の末端に非特異的吸着抑制基を有する、請求項1に記載の作製方法。
  3. 前記非特異的吸着抑制基がヒドロキシル基(−OH)又はメトキシ基(−OCH3)である、請求項2に記載の作製方法。
  4. 少なくとも一の第2PEG鎖が他方の末端にリガンド連結基を有する、請求項1又は2に記載の作製方法。
  5. リガンド連結基がカルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH3)、アルデヒド基(−CHO)、チオール基(−SH)、スルホ基(−SO3H)、オキシム(>C=N-OH)、シアノ基(−C≡H)、ニトロ基(−NO2)からなる群より選択される活性官能基である、請求項4に記載の作製方法。
  6. 前記第1連結基と前記第2連結基が、アミノ基とアルデヒド基、チオール基とマレイミド基、アジド基とアセチレン基、アジド基とアミノ基、ヒドラジン基とケトン基、ヒドラジン基とアルデヒド基、及びビオチンとアビジン若しくはストレプトアビジンからなる群より選択される組であり、前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖を直接的に結合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の作製方法。
  7. 前記(1)ステップの後に、リンカーを含む混合液に第1PEG鎖を固定した基板を接触させるステップをさらに含み、
    前記(2)ステップで、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の作製方法。
  8. 前記(2)ステップの混合液中にリンカーをさらに含み、第1PEG鎖と第2PEG鎖とが前記リンカーを介して結合する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の作製方法。
  9. 基板表面が金属である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の作製方法。
  10. 前記金属が金、白金、銀及び銅からなる群より選択される、請求項9に記載の作製方法。
  11. 前記固定基がチオール基である、請求項9又は10に記載の作製方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の作製方法によって作製された混合SAMの表面に、リガンドを含む混合液を接触させ、第2PEG鎖における他方の末端に前記リガンドを結合させるセンサチップの作製方法。
  13. リガンドが核酸、ペプチド若しくはタンパク質又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンである、請求項12に記載の作製方法。
  14. 基板と、該基板の少なくとも一表面に固定基を介して結合された第1PEG鎖と、第1PEG鎖と連結された二以上の異なる第2PEG鎖とを有する混合SAMと、
    前記二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の第2PEG鎖に連結されたリガンド部と
    を備えるセンサチップ。
  15. 前記リガンド部が核酸、ペプチド若しくはタンパク質又はそれらの断片、ハプテンを含む抗原、あるいはビオチンである、請求項14に記載のセンサチップ。
  16. 前記二以上の異なる第2PEG鎖のうち少なくとも一の第2PEG鎖の末端が非特異的吸着抑制基を備える、請求項14又は15に記載のセンサチップ。
  17. 前記非特異的吸着抑制基がヒドロキシル基又はメトキシ基である、請求項16に記載のセンサチップ。
  18. 前記第1PEG鎖と前記第2PEG鎖との間にリンカー部をさらに有する、請求項14〜17のいずれか1項に記載のセンサチップ。
  19. 前記基板の少なくとも一表面が金属である、請求項14〜18のいずれか1項に記載のセンサチップ。
  20. 前記金属が金、白金、銀及び銅からなる群より選択される、請求項19に記載のセンサチップ。
  21. 前記固定基がチオール基である、請求項19又は20に記載のセンサチップ。
  22. 請求項14〜21に記載のいずれか1項に記載のセンサチップを有するセンサ。
  23. 前記センサが、表面プラズモン共鳴(SPR)測定センサ及び水晶振動子(QCM)測定センサからなる群より選択される、請求項22に記載のセンサ。
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