JP2013231685A - 検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的低い濃度の被測定対象であっても、広範囲の濃度の被測定試料を検出することができる検出装置を提供すること。
【解決手段】 検出装置10は、第1光源11Aと、第2光源11Bと、第1光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第1検出部12Aと、第2光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第2検出部12Bと、を有する。第1検出部は、第1密度で誘電体16上にて第1金属粒子17が形成され、第2検出部は、第1密度よりも低い第2密度で誘電体16上にて第2金属粒子18が形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、検出装置等に関する。
近年、医療診断や飲食物の検査等に用いられるセンサーチップの需要が増大しており、高感度かつ小型のセンサーチッブの開発が求められている。このような要求に応えるために、電気化学的な手法をはじめ様々なタイプのセンサーチップが検討されている。これらの中で、集積化が可能であること、低コスト、測定環境を選ばないこと等の理由から、表面プラズモン共鳴(SPR: Surface Plasmon Resonance)を利用した分光分析、特に表面増強ラマン散乱分光(SERS: Surface Enhanced Raman Scattering)用いたセンサーチップに対する関心が高まっている。
ここで、表面プラズモンとは、表面固有の境界条件により光とカップリングを起こす電子波の振動モードである。表面プラズモンを励起する方法としては、金属表面に回折格子を刻み、光とプラズモンを結合させる方法やエバネッセント波を利用する方法がある。例えば、SPRを利用したセンサーとしては、全反射型プリズムと、当該プリズムの表面に形成された標的物質に接触する金属膜と、を具備して構成されるものがある。このような構成により、抗原抗体反応における抗原の吸着の有無など、標的物質の吸着の有無を検出している。
ところで、金属表面に伝搬型の表面プラズモンが存在する一方、金属微粒子には局在型の表面プラズモンが存在する。局在型の表面プラズモン、つまり、表面の金属微細構造上に局在する表面プラズモンが励起された際には、著しく増強された電場が誘起されることが知られている。
更に、金属ナノ粒子を用いた局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)によって形成される増強電場にラマン散乱光が照射されると表面増強ラマン散乱現象によってラマン散乱光が増強されることが知られており、高感度のセンサー(検出装置)が提案されている。この原理を用いることで、各種の微量な物質を検出することが可能になる。
増強電場は、金属粒子の周囲、特に隣り合う金属粒子間の間隙で大きく、流体試料中の標的分子を金属粒子間の間隙に止まらせる必要がある。例えば、特許文献1や非特許文献1には、センサーチップの金属表面上に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer))を形成している。また、特許文献2には、異なる種類のSAM膜を混合して形成することが提案されている。
特開2009−222401号公報 特開2009−216483号公報
ところで、この種の検出装置では、極めて低い濃度の被測定試料を検出できる点で優れているが、被測定試料によっては検出される濃度範囲が広いことも予想される。しかし、比較的低い濃度の被測定対象であっても、その濃度範囲が広い被測定試料を検出するには限界があり、SERS信号レベルが飽和してしまう。
そこで、本発明の幾つかの態様は、比較的低い濃度の被測定対象であっても、広範囲の濃度の被測定試料を検出することができる検出装置を提供することを目的とする。
(1)本発明の一態様は、
第1光源と、
第2光源と、
前記第1光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第1検出部と、
前記第2光源からの光が入射され、前記被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第2検出部と、
を有し、
前記第1検出部は、第1密度で誘電体上にて第1金属粒子が形成され、
前記第2検出部は、前記第1密度よりも低い第2密度で前記誘電体上にて第2金属粒子が形成されている検出装置に関する。
本発明の一態様では、第1密度の第1金属粒子を有する第1検出部では、第1金属粒子間に増強電場が形成されるホットスポットの密度も高くできる。よって、被測定試料が低濃度であっても、増強電場によって被測定試料を反映した検出光に基づく信号レベルが確保される。一方、第2密度の第2金属粒子を有する第2検出部では、第2金属粒子間に増強電場が形成されるホットスポットの密度も小さいが、高濃度の被測定試料であれば被測定試料を反映した光を検出光に基づく信号レベルが確保される。よって、第1検出部が低濃度の被測定試料を検出し、第2検出部が高濃度の被測定試料を測定することで、一つの検出装置にて検出できる被測定試料の濃度範囲が拡大される。特に、第1検出部にて検出される光に基づく信号レベルが飽和する濃度範囲の被測定試料を、第2検出部にて検出することができる。
(2)本発明の一態様では、前記第1検出部は、前記第1金属粒子に形成された第1有機分子膜と、隣り合う2つの第1金属粒子間の前記誘電体上に形成された第2有機分子膜とを有し、前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された前記第1有機分子膜を有し、前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着(捕捉)することができる。
第1金属粒子または第2金属粒子が被測定試料を吸着状態にとどめておく脱離活性化エネルギーが低い場合、室温程度の熱エネルギーで脱離活性化エネルギーを乗り越えてしまい、被測定試料が脱離してしまう。第1,第2有機分子膜により、第1,第2金属粒子のみによる脱離活性化エネルギーよりも大きな脱離活性化エネルギーが確保され、被測定試料の脱離を抑制できる。これにより、検出信号レベルを高めることができる。しかも、第1検出部にて第1,第2有機分子膜が形成される領域は、第2検出部にて第1有機分子膜が形成される領域よりも広い。よって、第1検出部の方がより多くの被測定試料を付着(捕捉)することができるので、低濃度の被測定試料であっても高感度で検出することができる。なお、有機分子膜は、表面にノイズ信号の原因となる他の分子の吸着を妨げるため、ノイズ信号を低減することができる。
(3)本発明の一態様では、前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された第1有機分子膜を有し、前記第1検出部は、前記第1金属粒子に形成された第2有機分子膜を有し、前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着(捕捉)することができる。
第1,第2有機分子膜により、第1,第2金属粒子のみによる脱離活性化エネルギーよりも大きな脱離活性化エネルギーが確保され、被測定試料の脱離を抑制できる。これにより、検出信号レベルを高めることができる。しかも、第1,第2有機分子膜により確保される脱離活性化エネルギーの大きさは異なるので、第1,第2有機分子膜を選択することで、低濃度から高濃度に亘る濃度範囲での検出感度適切に調整できる。
(4)本発明の一態様では、前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された第1有機分子膜を有し、前記第1検出部は、前記第1金属粒子と、隣り合う2つの第1金属粒子間の前記誘電体上とに形成された第2有機分子膜とを有し、前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着(捕捉)することができる。
第1,第2有機分子膜により、第1,第2金属粒子のみによる脱離活性化エネルギーよりも大きな脱離活性化エネルギーが確保され、被測定試料の脱離を抑制できる。これにより、検出信号レベルを高めることができる。しかも、第1検出部にて第2有機分子膜が形成される領域は、第2検出部にて第1有機分子膜が形成される領域よりも広い。よって、第1検出部の方がより多くの被測定試料を付着(捕捉)することができるので、低濃度の被測定試料であっても高感度で検出することができる。
(5)本発明の一態様では、前記第2有機分子膜の分子長は、前記第1有機分子膜の分子長よりも短くすることができる。有機分子膜の分子長は、有機分子膜が形成される領域での増強電場の大きさに合わせることが好ましい。金属粒子では増強電場が広い範囲に形成されるので、分子長が長い有機分子膜を選択し、金属粒子間は狭い範囲で増強電場が形成されるので、分子長が短い有機分子膜を選択できる。
(6)本発明の一態様では、前記第1検出部及び前記第2検出部からの光を検出する単一の光検出器をさらに有し、前記第1検出部及び前記第2検出部からの光を前記単一の光検出器にて時分割で検出することができる。
このように、単一の光検出器を第1,第2検出部が時分割で共用することで、検出装置を小型化することができる。
(7)本発明の他の態様は、
第1光源と、
第2光源と、
前記第1光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第1検出部と、
前記第2光源からの光が入射され、前記被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第2検出部と、
を有し、
前記第1検出部及び前記第2検出部の各々は、誘電体上に金属粒子が形成され、かつ、少なくとも前記金属粒子を覆って有機分子膜が形成され、前記有機分子膜は前記被測定試料を付着(捕捉)し、
前記第1検出部と前記第2検出部とでは、前記有機分子膜の形成範囲及び前記有機分子膜の種類の少なくとも一方が異なる検出装置に関する。
金属粒子が被測定試料を吸着状態にとどめておく脱離活性化エネルギーが低い場合、室温程度の熱エネルギーで脱離活性化エネルギーを乗り越えてしまい、被測定試料が脱離してしまう。有機分子膜により、金属粒子のみによる脱離活性化エネルギーよりも大きな脱離活性化エネルギーが確保され、被測定試料の脱離を抑制できる。これにより、検出信号レベルを高めることができる。しかも、第1検出部にて有機分子膜が形成される領域を、第2検出部にて有機分子膜が形成される領域よりも例えば広くすることができる。これにより、第1検出部の方が第2検出部よりも多くの被測定試料を付着(捕捉)することができるので、低濃度の被測定試料であっても高感度で検出することができる。第2検出部では被測定試料の付着率(捕捉率)が低くても、高濃度の被測定試料であれば所定の感度で検出できる。よって、低濃度から高濃度の広い範囲での検出が可能となる。あるいは、有機分子膜の種類が異なると、各々の有機分子膜により確保される脱離活性化エネルギーの大きさは異なる。よって、有機分子膜を選択することで、低濃度から高濃度に亘る広い範囲での検出感度を確保することができる。
なお、本発明の他の態様(7)では、有機分子膜の形成範囲及び有機分子膜の種類の少なくとも一方を異ならせるために、上述した(1)〜(6)に示す態様を採用することができる。
本発明の第1実施形態に係る検出装置を示す図である。 図2(A)〜図2(D)は、表面増強ラマン光の検出原理の説明図である。 濃度範囲1,2に亘る広範囲での検出を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る検出装置を示す図である。 各種の飽和蒸気気体を曝露して取得されるSERS信号と、各種の飽和蒸気気体の吸着量を測定した結果を示す図である。 飽和蒸気気体に曝露した時の値を1として、大気曝露に切り替えた後の脱離残量の比率を示す図である。 吸着と脱離活性化エネルギーとの関係を示す図である。 QCMの表面に吸着した分子の質量変化を周波数変化として測定することを示す図である。 有機分子膜の有無及び種類を変えて測定した各種気体に対する脱離活性化エネルギーを示す図である。 本発明の第3実施形態に係る検出装置を示す図である。 図10に示す第2検出部の一例を拡大して示す模式図である。 図10に示す第1検出部の一例を拡大して示す模式図である。 図10に示す第1検出部の他の一例を拡大して示す模式図である。 図10に示す第1検出部のさらに他の一例を拡大して示す模式図である。 液相法による有機分子膜の形成例を示す図である。 液相法による有機分子膜の形成領域の限界を示す図である。 気相法による有機分子膜の形成例を示す図である。 気相法による有機分子膜の他の形成例を示す図である。 気相法により形成された有機分子膜を用いた検出装置でのSERS信号のスペクトル強度を示す図である。 有機分子膜の成膜中でのSERSシグナルのピーク強度の時間推移を示す図である。 有機分子膜形成後の銀基板のFT−IRスペクトルを示す図である。 有機分子膜形成後の銀基板のSERSスペクトルを示す図である。 本発明の第4実施形態に係る検出装置の全体構成を示す図である。 図23に示す検出装置の制御系ブロック図である。 図23に示す検出装置の光源を示す図である。 図23に示す光源に設けられた2つの共振器と歪付加部を示す図である。 図23に示す検出装置での時分割検出動作を示すタイミングチャートである。 図1に示す検出装置の第1検出部の変形例を示す図である。 図1に示す検出装置の第2検出部の変形例を示す図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.第1実施形態
1.1.検出装置
図1は、第1実施形態に係る検出装置10を示している。検出装置10は、第1光源11A、第1検出部12A、第2光源11B及び第2検出部12Bを有する。
第1,第2検出部12A,12Bが形成された光学デバイス13は、基板14と、基板14上に形成された金属(導体)膜15と、金属膜15上に形成された誘電体16とを有する。第1検出部12Aは、誘電体16上に第1周期P1にて形成された第1金属粒子17を有する。第2検出部12Bは、誘電体16上に第2周期P2(P2>P1)にて形成された第1金属粒子17を有する。よって、第1金属粒子17の第1密度は、第2金属粒子18の第2密度よりも高い。なお、上述した周期P1,P2で配列される第1,第2金属粒子17,18は、一次元配列であってもよく、二次元配列であってもよい。また、金属粒子17,18は入射光の波長よりも小さいナノオーダーの金属ナノ粒子であり、サイズが1〜1000nmである。第1,第2金属粒子17,18としては、例えば金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)もしくはこれらの合金或いは複合体が用いられる。第1,第2金属粒子17,18は、誘電体16の凸部(図示せず)を被覆して形成されてもよい。
金属膜15は、伝播型プラズモンの増強構造として形成され、平坦な膜(図1)あるいは、周期的な凹凸のある金属回折格子(後述の図28、図29参照)などが適している。図1では、真空蒸着法又はスパッタ法で金(Au)の金属膜15を形成する例を示している。Au膜の厚さとしておよそ10nm〜数10nmが望ましい。金属の種類としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)などが適している。
誘電体16としては、SiO、Al、TiOなどが適しており、その厚さは、およそ10nm〜500nmが望ましい。
1.2.光検出原理
図2(A)〜図2(D)を用いて、流体試料を反映した光検出原理の一例としてラマン散乱光の検出原理の説明図を示す。図2(A)に示すように、光学デバイス13に吸着される検出対象の試料(試料分子)1に入射光(振動数ν)が照射される。一般に、入射光の多くは、レイリー散乱光として散乱され、レイリー散乱光の振動数ν又は波長は入射光に対して変化しない。入射光の一部は、ラマン散乱光として散乱され、ラマン散乱光の振動数(ν−ν’及びν+ν’)又は波長は、試料分子1の振動数ν’(分子振動)が反映される。つまり、ラマン散乱光は、検査対象の試料分子1を反映した光である。入射光の一部は、試料分子1を振動させてエネルギーを失うが、試料分子1の振動エネルギーがラマン散乱光の振動エネルギー又は光エネルギーに付加されることもある。このような振動数のシフト(ν’)をラマンシフトと呼ぶ。
図2(B)に、標的分子に固有の指紋スペクトルとして、アセトアルデヒドの例を示す。この指紋スプクトルによって、検出した物質がアセトアルデヒドと特定することが可能である。しかしながら、ラマン散乱光は非常に微弱であり、微量にしか存在しない物質を検出することは困難であった。
図2(D)に示すように、入射光が入射された領域では、隣り合う第1金属粒子17(第2金属粒子18)間のギャップに、増強電場19が形成される。特に、図2(C)に示すように、入射光の波長λよりも小さな第1金属粒子17(第2金属粒子18)に対して入射光を照射する場合、入射光の電場は、金属粒子17,18の表面に存在する自由電子に作用し、共鳴を引き起こす。これにより、自由電子による電気双極子が金属粒子17,18内に励起され、入射光の電場よりも強い増強電場19が形成される。これは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR:Localized Surface Plasmon Resonance)とも呼ばれる。この現象は、入射光の波長よりも小さな1〜1000nmの凸部を有する第1金属粒子17(第2金属粒子18)に特有の現象である。
本実施形態では、局在表面プラズモンと伝搬表面プラズモンとを併用することができる。伝搬表面プラズモンは、金属膜15が形成する伝搬構造によって形成することができる。例えば本出願人による特願2011―139526号に開示されているように金属膜15が凹凸の格子面であると、格子の凹凸に光が入射すると表面プラズモンが発生する。入射光の偏光方向を格子の溝方向と直交させておくと、金属格子内の自由電子の振動にともなって電磁波の振動が励起される。この電磁波の振動は自由電子の振動に影響するため、両者の振動が結合した系である表面プラズモンポラリトンが形成される。ただし、金属膜15が平坦であっても伝搬表面プラズモンは発生する。この表面プラズモンポラリトンは、金属膜15と誘電体16との界面に沿って伝搬し、増強電場19をさらに増強する。 1.3.第1,第2検出部での検出
第1検出部12Aでは、第1金属粒子17の密度が高いので、単位面積当たりの増強電場(ホットサイト)19の数が多い。よって、低濃度の流体試料1であっても、増強電場によって流体試料1を反映したSERS信号レベルが確保される。つまり、図3に示すように、低濃度側の濃度範囲1について第1検出部12Aからの光に基づいてSERS信号を検出できる。
一方、低密度の第2金属粒子18を有する第2検出部12Bでは、単位面積当たりの増強電場(ホットサイト)19の数が少なくい。よって、低濃度側の濃度範囲1について第2検出部12Bからの光に基づいてSERS信号は、検出できない程の低いレベルである。しかし、高濃度の流体試料1であれば、その流体試料1を反映したSERS信号レベルが確保される。よって、第1検出部12Aが図3に示す濃度範囲1に属する低濃度の流体試料1を高感度で検出し、第2検出部12Bが図3に示す濃度範囲2に属する高濃度の流体試料2を高感度で検出することができる。こうして、一つの検出装置10にて検出できる流体試料1の濃度範囲が拡大される。特に、第1検出部12Aにて検出される光に基づくSERS信号レベルが図3に示すように飽和する濃度範囲2を、第2検出部12Bにて検出することができる。
2.第2実施形態
2.1.検出装置
図4は、第2実施形態に係る検出装置20を示し、図1に示す部材と同一機能の部材については図1と同一符号を付しその説明を省略する。図4に示す検出装置20に設けられた光学デバイス23は、第1検出部22Aと第2検出部22Bとを有する。第1検出部22Aは誘電体16上に形成した金属粒子24を有し、第2検出部22Bは誘電体16上に金属粒子25を有する。第2実施形態では、金属粒子24,25の密度は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、金属粒子24,25は、一次元配列であってもよく、二次元配列であってもよい。また、金属粒子24,25は入射光の波長よりも小さいナノオーダーの金属ナノ粒子であり、サイズが1〜1000nmである。
第2実施形態では、第1検出部22A及び第2検出部22Bの各々は、金属粒子を覆って有機分子膜26,27を有する。有機分子膜26,27は、流体試料である分子を付着(捕捉)する吸着膜であり、例えば自己組織化単分子膜(SAM)にて形成される。
第1検出部22Aと第2検出部22Bとでは、SAM膜の形成範囲及びSAM膜の種類の少なくとも一方が異なる。第1検出部22Aに形成されるSAM26は、例えば、金属粒子24と、2つの金属粒子25,25の間の誘電体16を覆って形成することができる。第2検出部22Bに形成されるSAM27は、例えば金属粒子25を覆って形成される。SAM26,27の種類を変えてもよい。
2.2.検出原理
この第2実施形態でも図2(A)〜図2(D)にて説明したように局在表面プラズモンと伝搬表面プラズモンとを併用することができる点は、第1実施形態と同様であるが、さらにSAMによる機能が追加される。
ここで、SERS信号を検出するためには、標的分子が金属粒子の表面で吸着されることが必要となる。金属の中でプラズモン共鳴の効果が大きいとされる金属は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)などが報告されているが、全ての標的分子がこれらの金属と吸着性に優れている訳ではない。金属に対して一旦吸着しても、脱離活性化エネルギーEdが小さい場合には、室温程度の熱エネルギーによって直ぐに脱離してしまい、SERS信号を得ることができない。
図5は、金属粒子としてAgナノ構造を石英ガラス基板上に形成した基板に、各種の飽和蒸気気体を曝露した結果を示す。水は例外として、大気曝露にして残留した量が多いもの(図5の右領域の気体)は、SERS信号が検出されている。図5ではさらに、厚み振動型の水晶振動子(QCM)に同様に各種の飽和蒸気気体を曝露し、水晶振動子の周波数変化から吸着量を測定した結果も示している。図5では、1分間の飽和蒸気気体曝露で吸着した量と、飽和蒸気気体曝露から大気曝露に1分間切り替えて残留した脱離残量をそれぞれ棒グラフで示している。
これらを分かり易くするため、図6に飽和蒸気気体に曝露した時の値を1として、大気曝露に切り替えて残留した量を比率で表してある。SERS信号が検出されなかった気体は殆ど水晶振動子表面(Au)に吸着しも直ぐに脱離してしまい、SERS信号が検出された気体は水晶振動子表面(Au)にある程度吸着していると考えられる。
この現象を理解するために、水晶振動子表面への気体分子のエネルギーを考えてみると、図7のように気体分子が金属表面に近づくとエネルギーの障壁があり、それを超えるとエネルギーの低い状態(吸着)へ入って安定化することができるが、脱離活性化エネルギーEdが小さいと、室温程度の熱エネルギーでEdを乗り越えることができ、気体分子は脱離してしまうことになる。
ここで、吸着気体の脱離速度v(t)は、Polanyi-Wigner式より、以下の通り示される。
ここで、v(t)は脱離速度、θ(t)は被覆率、Cは気体吸着量、νnは頻度因子、nは反応次数、Edは脱離活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
空サイトを1つ使って吸着する分子の場合はn=1なので、θ0を初期被覆率とすると、被覆率は以下の通りとなる。
よって脱離残量σ(t)は、脱離速度v(t)を積分することで以下のように示される。
ここで、図8に示すように、脱離活性化エネルギーEdは、QCM(水晶振動子)表面に吸着した分子の質量変化を周波数変化として測定することができる。つまり、脱離活性化エネルギーEdは図8の曲線A領域の周波数変化として測定することができる。
一方、気体分子を金属表面の吸着状態に留めておくには、脱離活性化エネルギーEdを、増強電場を形成する金属粒子より大きくすればよい。このために、金属粒子を表面処理すれば実現することができると予測できる。しかも、金属粒子が作る増強電場の範囲内に気体分子が収まる程度の表面処理が望まれる。通常の樹脂系の材料を溶媒で溶解してスピンコートをしても概ね数10nm程度の厚さになってしまい、増強電場の強い範囲からはずれてしまい、強い表面増強ラマン効果を得ることは難しい。
そこで、第2実施形態では有機分子膜例えば自己組織化単分子膜(SAM膜)によって、脱離活性化エネルギーを向上させている。
図9は、水晶振動子(Au電極)上にSAM膜を形成し、脱離残量(吸着量)の時間的変化から脱離活性化エネルギーを求めた結果を示している。図9中の数値は、単位がkJ/molであり、1サンプルで3回測定しそれらの平均値を採用した。また、図9中のPEGはポリエチレングリコールである。図9に示すように、酢酸を除き、SAM膜が無い場合よりも、SAM膜がある方が脱離活性化エネルギーは大きくなっている。ここで、SAM膜の分子長は、比較的分子長が短いのがピリジンチオールで、比較的分子長が長いのがPEGチオール、ヘキサデカンチオールである。
2.3.第1,第2検出部での検出
第2実施形態でも、図3に示す広い濃度範囲で流体試料を検出することができる。第1検出部22Aでは、SAM膜26の形成範囲が広い。よって、低濃度の流体試料1であってもSAM膜26に付着(捕捉)されやすく、流体試料1を反映したSERS信号レベルが確保される。つまり、図3に示すように、低濃度側の濃度範囲1について第1検出部22Aからの光に基づいてSERS信号を高感度で検出できる。
一方第2検出部12Bでは、SAM膜27の形成範囲が狭い。よって、低濃度側の濃度範囲1について第2検出部22Bからの光に基づいてSERS信号は、検出できない程の低いレベルである。しかし、高濃度の流体試料1であれば、その流体試料1を反映したSERS信号レベルが確保される。よって、第1検出部22Aが図3に示す濃度範囲1に属する低濃度の流体試料1を高感度で検出し、第2検出部22Bが図3に示す濃度範囲2に属する高濃度の流体試料2を高感度で検出することができる。こうして、一つの検出装置20にて検出できる流体試料1の濃度範囲が拡大される。特に、第1検出部22Aにて検出される光に基づくSERS信号レベルが図3に示すように飽和する濃度範囲2を、第2検出部22Bにて検出することができる。
なお、第2実施形態では、第1,第2検出部22A,22BでSAM膜26,27の形成領域を同一にして、SAM膜26,27の種類を変更するようにしてもよい。例えば、SAM膜26による脱離活性化エネルギーEdの増大が、SAM膜27による脱離活性化エネルギーEdの増大よりも低いレベルとすることができる。こうすると、SAM膜26の方が脱離しやすくなるが、高濃度の流体試料1を検出するのに十分なSERS信号レベルを確保できるからである。
3.第3実施形態
図10は、第3実施形態に係る検出装置30を示し、図1及び図4に示す部材と同一機能の部材については図1及び図4と同一符号を付しその説明を省略する。図10に示す検出装置30に設けられた光学デバイス33は、第1実施形態と第2実施形態の双方の構成を有している。
第1検出部32Aは誘電体16上に周期P1で形成した金属粒子17を有し、第2検出部32Bは誘電体16上に周期P2(p2>P1)で形成した金属粒子18を有する。第3実施形態では、第1実施形態と同様に、第1金属粒子17の第1密度は、第2金属粒子18の第2密度よりも高い。
第3実施形態では、第1検出部32A及び第2検出部32Bの各々は、金属粒子を覆ってSAM膜26,27を有する。第1検出部32Aと第2検出部32Bとでは、SAM膜の形成範囲及びSAM膜の種類の少なくとも一方が異なる。この点について、図11〜図14を参照して説明する。
図11は、図10に示す第2検出部32Bに用いられるSAM膜27の一例を示している。図12は、図10に示す第1検出部32Aに用いられるSAM膜26の一例としてのSAM膜26A,26Bを示している。SAM膜26AとSAM27は、例えば同一の膜である。
SAM膜26AとSAM27とは、図15の液相法にて形成することができる。図15では、液体のSAM膜材料40が収容された容器41に、図1に示す光デバイス10の構造を有する基板50が浸漬される。金属粒子17,18に対して、SAM膜のチオール基が吸着し易く、しかも分子の構造中のアルキル基同士がファンデルワールス力でお互いがある程度の距離を保持するよう作用するため、SAM膜は金属粒子17,18上に配列するように吸着される。
しかし液相法では、図16に示すように、金属粒子17(18)の谷間には液体のSAM膜材料40は表面張力に起因して入り込まない。このため、金属粒子17,18にのみSAM膜26A,27が形成されることになる。この場合、表面近傍の増強電場にあった分子長のSAM膜の種類が選択されることになる。金属粒子17(18)では増強構造による増強電場が比較的広い範囲に及んでおり、広い増強電場に適した比較的分子長の長いSAM膜26A,27を液相法で形成した。
吸着膜26A,27として、11-メルカプト-1-ウンデカノール、11-メルカプトウンデカン酸、PEG3-OH alkanethiol又はHydroxy-EG3-undecanethiol、Thiol-dPEG4-acid、ヘキサデカンチオール、プロパンチオール、4-メルカプトピリジン、チオニコチン酸、シランカップリング剤など、増強電場に合った分子長のSAM膜が選択されるが、上述の例示のものに限定されない。金属粒子17,18に形成されるSAM膜26A,27としては、チオール基(-SH)、ジスルフィド基(-S-S-)、カルボキシル基(-COOH)を有するものが好適である。
この他、SAM膜26A,27として、アルキル鎖やPEG鎖を有し、末端にOHやCOOHなどの官能基を有するチオール試薬を用いてもよい。
次に、図17又は図18の気相法にて、第1検出部32AにSAM膜26B2を形成する。気相法では、蒸発や昇華さえ可能であれば、どんなSAM膜材料でも可能であり、液相法では入り込めなかった図16に示す金属粒子17の谷間にも形成が可能である。図12ではSAM膜26Bとしてトリメチルシリルの例を示しているが、これに限定されるものではない。
このように、液相法と気相法とを組み合わせることで、第1検出部32Aを完成させることができる。なお、第2検出部32Bの金属粒子18間にSAM膜26Bが付着しないようにするには、例えば気相法の採用時に第2検出部32Bの領域をマスクすればよい。第1検出部32Aは、第1検出部32Bに比べてSAM膜に覆われている部分が多くなり、しかもSAM膜の配置が立体的になっており、流体試料を捕捉し易くなる。こうして、図3に示すように低濃度の濃度範囲1の流体試料を第1検出部32Aにて検出することができる。
図17の気相法では、SAM膜の材料が液体である場合を示し、容器42に液体のSAM膜材料43を少しだけ入れて蒸発させ、気体となったSAM膜材料44が、容器42の開口部に置いた基板50の金属粒子17間に入り込んで付着する。図18に示すように、SAM膜材料48が固体又は粉末の場合には、容器46の底部に収容したSAM膜材料48を、加熱装置47にて加熱して昇華させることで、気体となったSAM膜材料49が、容器44の開口部に置いた基板50の金属粒子17間に入り込んで付着する。
金属粒子17間の誘電体16上に形成されるSAM膜26Bとしては、シランカップリング剤、シラノール基(-Si-OH)、チタンカップリング剤、またはチタノール基(−Ti-OH)を有するものが好適である。
図13に、気相法でSAM膜26を形成した第1検出部32Aを示す。第1検出部32Aでは増強構造による増強電場が比較的狭い範囲に限られており、それ適した比較的分子長の短いSAM膜26を気相法で形成した例である。図13では、密度の高い金属粒子17にのみ吸着膜2が形成されている。
図14に、金属粒子17と、隣り合う金属粒子の間とに、気相法により分子長の短いSAM膜26を形成した第1検出部32Aを示す。図13に比べてSAM膜に覆われている部分が多くなり、しかも増強電場の強い領域にSAM膜26が配置されるので、吸着された流体試料のラマン散乱光を増強し易くなっている。
図19〜図22に気相形成法の評価を示す。吸着膜(SAM)形成材料としてヘキサデカンチオール(HS(CH2)15CH3、以下HDTと略記する)を使用した。基材としては、ガラス基板上に銀を10nm蒸着し、ガラス基板上に銀が直径約70nm程度、高さ約20nm程度、構造体間距離約5nmでアイランド構造に形成されているセンサーチップを用いた。ガラス容器(6ml)にSAM形成材料であるHDTを1ml入れ、室温・大気圧下で2時間静置し、センサーチップ表面にHDTSAMを形成させた。成膜中にセンサーチップにレーザーを照射し、図19に示すようにラマン散乱光を観測した。また、SAM形成後のセンサーチップ表面をFT-IR法およびSERSにより測定した。
SAM成膜中のSERSシグナルとピーク強度の時間推移を図20に示す。図20に示すように、SAM形成の様子をリアルタイムで確認できる。図20では、HDTのピークであるラマンシフト635cm-1のピークは時間とともに強度が増大しており、金属粒子の表面にSAMが形成されていることが分かる。
比較対象として、液相法でも同様に評価した。エタノールで1mMに希釈したHDT溶液に、同じ基材を浸して24時間静置した。FT-IR法およびSERSの結果を図21及び図22に示す。基材表面全体の情報が得られるFT-IRでは気相法と液浸法の両方でHDTのシグナルが観測されているのに対し、微細構造間(ホットサイト)での情報のみが得られるSERSでは気相形成でのみHDTのシグナルが観測されている。この結果から金属微細構造のナノメートルオーダーの微細構造間を検出部位として利用するSERSでは、微細構造間(ホットサイト)に溶液が入り込まないためにSAM膜が形成されず、液相法によるSAM膜形成は利用できないことがわかる。
4.第4実施形態
4.1.検出装置の全体構成
次に、第4実施形態として、検出装置の全体構成について説明する。図23は、本実施形態の検出装置の具体的な構成例を示す。図23に示される検出装置100は、吸引口101A及び除塵フィルター101Bを有する試料供給流路101、排出口102Aを有する試料排出流路102、図1、図4または図10のいずれかに記載の光学デバイス(センサーチップ)103等を備えた光学デバイスユニット110を有する。光学デバイス103には、光が入射される。検出装置100の筐体120は、ヒンジ部121により開閉可能なセンサーカバー122備える。光学デバイスユニット110は、センサーカバー122内にて、筐体120に対して着脱自在に配置される。光学デバイスユニット110が装着/非装着状態は、センサー検出器123により検出できる。
試料供給流路101及び試料排出流路102は、迂回して形成されることで、外光が入射し難い構造となっている。
なお、流体試料を吸引及び排出する経路形状については、外部からの光がセンサーに入らないように、かつ、流体試料に対する流体抵抗が小さくなるように、夫々考慮されたものなっている。外光が光学デバイス103に入らないようにすることで、ラマン散乱光以外の雑音となる光が入らず、信号のS/N比が向上する。流路形状と共に、流路を形成する材料も、光を反射し難いような材料、色、表面形状を選択することが必要となる。また、流体試料に対する流体抵抗が小さくなるようにすることで、この装置の近傍の流体試料を多く収集でき、高感度な検出が可能になる。流路の形状は、できるだけ角部をなくし滑らかな形状にすることで、角部での滞留がなくなる。また、流体排出流路102に設けられる負圧発生部103としては、流路抵抗に応じた静圧、風量のファンやポンプを選択することも必要である。
筐体120内には、光源130、光学系131と、光検出部132と、信号処理・制御部133と、電力供給部134とが設けられている。
図23において、光源130は例えばレーザーであり、小型化の観点から好ましくは垂直共振型面発光レーザーを用いることができるが、これに限定されない。
光源130からの光は、光学系131を構成するコリメーターレンズ131Aにより平行光にされる。コリメーターレンズ131Aの下流に偏光制御素子を設け、直線偏光に変換しても良い。ただし、光源130として例えば面発光レーザーを採用し、直線偏光を有する光を発光可能であれば、偏光制御素子を省略することができる。
コリメーターレンズ131Aにより平行光された光は、ハーフミラー(ダイクロイックミラー)131Bにより光学デバイス103の方向に導かれ、対物レンズ131Cで集光され、光学デバイス103に入射する。光学デバイス103からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、対物レンズ131Cを通過し、ハーフミラー131Bによって光検出部100の方向に導かれる。
光学デバイス103からのレイリー散乱光及びラマン散乱光は、集光レンズ131Dで集光されて、光検出部132に入力される。光検出部132では先ず、光フィルター132Aに到達する。光フィルター32A(例えばノッチフィルター)によりラマン散乱光が取り出される。このラマン散乱光は、さらに分光器132Bを介して受光素子132Cにて受光される。分光器132Bは、例えばファブリペロー共振を利用したエタロン等で形成されて通過波長帯域を可変とすることができる。分光器132Bを通過する光の波長は、信号処理・制御回路133により制御(選択)することができる。受光素子132Cによって、試料分子1に特有のラマンスペクトルが得られ、得られたラマンスペクトルと予め保持するデータと照合することで、試料分子1を特定することができる。
電力供給部134は、電源接続部135からの電力を、光源130、光検出部132、信号処理・制御部133及びファン104等に供給する。電力供給部134は、例えば2次電池で構成することができ、1次電池、ACアダプター等で構成してもよい。通信接続部136は信号処理・制御部133と接続され、信号処理・制御部133に対してデータや制御信号等を媒介する。
図23の例では、信号処理・制御部133は、図23に示される光源130以外の光検出部132、ファン104等への命令を送ることができる。さらに、信号処理・制御部1330は、ラマンスペクトルによる分光分析を実行することができ、信号処理・制御部133は、試料分子1を特定することができる。なお、信号処理・制御部133は、ラマン散乱光による検出結果、ラマンスペクトルによる分光分析結果等を例えば通信接続部136に接続される外部機器(図示せず)に送信することができる。
図24は、図23の検出装置100の制御系ブロック図である。図24に示されるように、検出装置100は、例えばインターフェース140、表示部150及び操作パネル160等をさらに含むことができる。また、図24に示される信号処理・制御部133は、図8に示すように制御部としての例えばCPU(Central Processing Unit)133A、RAM(Random Access Memory)133B、ROM(Read Only Memory)133C等を有することができる。
さらに、検出装置100は、図7に示す各部を駆動する光源駆動回路130A、分光器駆動回路132B1、センサー検出回路123A、受光回路132C1、ファン駆動回路104A等を含むことができる。
4.2.光源
図25は、図23に示す光源130である垂直共振器面発光レーザーの構造例を示す。図25の例では、n型GaAs基板200の上にn型DBR(Diffracted Bragg Reflector)層201が形成される。n型DBR(Diffracted Bragg Reflector)層201の中央部に活性層202及び酸化狭窄層203が設けられる。酸化狭窄層203の上にp型DBR層204を設ける。これらの周辺部には絶縁層205を介して電極206を形成する。n型GaAs基板200の裏側にも電極207を形成する。図25の例では、n型DBR層201とp型DBR層204との間に活性層202が介在し、活性層202で発生した光がn型DBR層201とp型DBR層204との間で共振する垂直共振器210が形成される。なお、垂直共振器面発光レーザーは、図25の例に限定されず、例えば酸化狭窄層203を省略してもよい。
図1、図4または図10に示される2つの光源11A,11Bの各々は、基板面に対して垂直方向に光を共振させ、基板面と垂直な方向(光源の光軸)に光を放出可能な垂直共振器面発光レーザー(広義には面発光レーザー)であることが好ましい。垂直共振器面発光レーザーを利用することで、単色(単一波長)で且つ直線偏光である光源を構成することができる。また、垂直共振器面発光レーザーは、小型化することが可能であり、携帯型の検出装置への組み込みに適している。また、垂直共振器面発光レーザーの構造から、製造工程では基板を劈開せずとも共振器210の形成やレーザー特性の検査が可能であり、大量生産に向いている。さらに、垂直共振器面発光レーザーは、他の半導体レーザーに比べて比較的安価に製造が可能であり、例えば2次元アレー型の垂直共振器面発光レーザーを提供することもできる。加えて、垂直共振器面発光レーザーの閾値電流が小さく、従って、検出装置100の消費電力を低減させることができる。また、低電流でも垂直共振器面発光レーザーの高速変調が可能であり、垂直共振器面発光レーザーの温度変化に対する特性変化の幅が少なく、垂直共振器面発光レーザーの温度制御部を簡易化できる。
ここで、従来の面発光型半導体レーザーから出射されるレーザー光の偏光面を特定の方位へ制御することが困難で、光出力や環境温度に依存して偏光面が変動したり、スイッチングを起こす問題点があった。それを克服するために、特許3482824号に記載されているように、図26に示すように、共振器210に隣接して歪み付加部220を配置することができる。歪み付加部220は共振器210に異方的な応力をあたえ、歪ませることによって、複屈折、利得の偏光依存性を共振器内に生じさせる。共振器210の周辺部に歪み付加部220を設けることで、安定した面偏光制御が可能になる。
図26では、図1、図4または図10に示される2つの光源11A,11Bを形成するために、歪み付加部220を設け2つ配列している。ただし、光源の数は、装置全体の必要性に応じて決めることができ、ここでは2つの光源の場合について説明する。
歪み付加部220がそれぞれ設けられた2つの共振器210の偏光面は、歪み付加部220の向きで決まるため、図26では2つの共振器210の偏光面が同じ方向に揃っている。共振器210の配列ピッチは、図1、図4または図10に示す第1,第2検出部の間隔と同じに設定することで、検出部と共振器とを1対1に対応させることが可能になる。
4.3.検出動作
図27は、図1、図4または図10の第1検出部12A(22A,32A)及び第2検出部12B(22B,32B)での検出動作を示すタイミングチャートである。
先ず、微量物質検出装置の電源を入れてから、信号処理・制御系、メモリーなどの初期化を行い、単一波長の光を発するレーザー光源130の安定化などを行う。次に、被測定試料を例えば気体試料として図23の光学デバイス103へ吸引し、レーザー光源130からの励起光を光学デバイス103に照射する。
この際、図1、図4または図10の例えば第1検出部12B(22B,32B)に光源11Bから光を照射する。図10の第2検出部12A(22A,32A)からのラマン散乱光を分光してSERS信号を得る(図3及び図27の検出2)。この時に、CPU内のSERS信号の適正を判定する機能によって、得られたSERS信号の強度が適切化を判定する。通常のノイズレベルと比較して得えられたSERS信号(V2)が検出するに足りうるレベル(VL2)にあるかを判定する。もし、V2>VL2であれば、適正なレベルにあるのでそのSERS信号V2を分光して指紋スペクトルを得て、予めROMなどのメモリーにある参照データと比較して検出対象物質かを判断する。もしV2<VL2であれば、得られたSERS信号(V2)は適正レベルにはないと判断される。
そこで、次に図1、図4または図10の第1検出部12A(22A,32A)に光を入射させて得られるSERS信号(V1)を得る(図3及び図27の検出2)。得られたSERS信号(V1)についてもV2と同様の判定を行う。もし、V1>VL1であれば、適正なレベルにあるのでそのSERS信号(V1)を分光して指紋スペクトルを得て、予めROMなどのメモリーにある参照データと比較して検出対象物質かを判断する。もしV1<VL1であれば、得られたSERS信号(V1)は適正レベルにはないため、「検出不可」の判定をして、アラームを表示する。
SERS信号V1またはV2から参照データと比較して検出対象物質が特定できた場合には、予め検量データなどから検出対象物質の定量情報を信号処理して、その結果を表示する。こうして、図3に示す濃度範囲1,2に亘る広範囲の濃度について検出することが可能になる。
上述した検出1,2の順序は逆であっても良い。また、検出1,2を必ずしも時分割で実施するものに限らず、光検出器が2つあれば同時に実施してもよい。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光学デバイス、検出装置、分析装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
図28及び図29には、例えば図1に示す平坦な金属層15を凹凸のある金属層15Aに置き換えた例を示す。この構造は、上述した通り本出願人による特願2011―139526号に開示された構造である。金属層15Aの凹凸の周期は、金属粒子17,18の配列周期よりも例えば10倍以上大きい。このように金属膜15が凹凸の格子面であると、格子の凹凸に光が入射すると表面プラズモンを発生させることができ、伝搬プラズモンを増強させることができる。
1 被測定試料(流体試料)、10,20,30,100 検出装置、11A 第1光源、11B 第2光源、12A,22A,32A 第1検出部、12B,22B,32B 第2検出部、13,23,33 光学デバイス(センサーチップ)、16 誘電体、17 第1金属粒子、18 第2金属粒子、19 増強電場、24,25 金属粒子、26,26A,26B,27 有機分子膜(SAM)

Claims (7)

  1. 第1光源と、
    第2光源と、
    前記第1光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第1検出部と、
    前記第2光源からの光が入射され、前記被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第2検出部と、
    を有し、
    前記第1検出部は、第1密度で誘電体上にて第1金属粒子が形成され、
    前記第2検出部は、前記第1密度よりも低い第2密度で前記誘電体上にて第2金属粒子が形成されていることを特徴とする検出装置。
  2. 請求項1において、
    前記第1検出部は、前記第1金属粒子に形成された第1有機分子膜と、隣り合う2つの第1金属粒子間の前記誘電体上に形成された第2有機分子膜とを有し、
    前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された前記第1有機分子膜を有し、
    前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着する
    ことを特徴とする検出装置。
  3. 請求項1において、
    前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された第1有機分子膜を有し、
    前記第1検出部は、前記第1金属粒子に形成された第2有機分子膜を有し、
    前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着することを特徴とする検出装置。
  4. 請求項1において、
    前記第2検出部は、前記第2金属粒子に形成された第1有機分子膜を有し、
    前記第1検出部は、前記第1金属粒子と、隣り合う2つの第1金属粒子間の前記誘電体上とに形成された第2有機分子膜とを有し、
    前記第1有機分子膜及び前記第2有機分子膜は、前記被測定試料を付着することを特徴とする検出装置。
  5. 請求項2乃至4のいずれか1項において、
    前記第2有機分子膜の分子長は、前記第1有機分子膜の分子長よりも短いことを特徴とする検出装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項において、
    前記第1検出部及び前記第2検出部からの光を検出する単一の光検出器をさらに有し、
    前記第1検出部及び前記第2検出部からの光を前記単一の光検出器にて時分割で検出することを特徴とする検出装置。
  7. 第1光源と、
    第2光源と、
    前記第1光源からの光が入射され、被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第1検出部と、
    前記第2光源からの光が入射され、前記被測定試料を検出および/または同定する光を出射する第2検出部と、
    を有し、
    前記第1検出部及び前記第2検出部の各々は、誘電体上に金属粒子が形成され、かつ、少なくとも前記金属粒子を覆って有機分子膜が形成され、前記有機分子膜は前記被測定試料を付着し、
    前記第1検出部と前記第2検出部とでは、前記有機分子膜の形成範囲及び前記有機分子膜の種類の少なくとも一方が異なることを特徴とする検出装置。
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