JP2009212046A - 固体酸化物形燃料電池用金属部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体酸化物形燃料電池用金属部材は、クロムを含む金属基材と、該金属基材の表面に形成され、アルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜37とを備える。固体酸化物形燃料電池用インターコネクタは、クロムを含む金属セパレータと、該金属セパレータと電気的に接続され、クロムを含む金属集電体33と、該金属セパレータの表面と該金属集電体の表面の非電極接触部位の少なくとも一部とに形成され、アルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜37とを備える。なお、図面の13は空気極、39は導電用被膜を示す。
【選択図】図4
Description
運転温度の低温化に伴い、従来はセラミックス材料を使用していた固体酸化物形燃料電池用セパレータなどの構成部品に、耐熱性金属材料を使用できるようになってきている。
耐熱性金属材料とは、例えば、クロムを含むステンレス鋼やニッケル基合金などである。具体例としては、フェライト系ステンレス鋼やインコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)などを挙げることができる。
そして、揮発(蒸発)したクロムなどは発電要素であるセルに到達するとセルの性質を変化させ、セル性能を劣化させる問題があることが知られている。
このようなセル性能の劣化の態様の一例として、例えば以下の具体例を挙げることができる。
ランタン−ストロンチウム−マンガン酸化物やランタン−ストロンチウム−コバルト酸化物、サマリウム−ストロンチウム−コバルト酸化物などは、空気極材料として、一般的に使用されている。
このような空気極材料に含まれるストロンチウム酸化物とクロムやクロム酸化物とが反応すると、クロム酸ストロンチウムが生成する。この化合物は酸素還元活性や導電性が不活性であるため、セル性能が劣化すると言われている。
(A1):クロムを含む金属セパレータ基板とクロムを含む金属集電体とが電気的に接続された接合体につき、金属集電体の表面の電極接触部位にマスキング部材を配置する工程
(A2):マスキング部材が配置された接合体にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成材料を用いて成膜する工程
(A3):工程(A2)より後に実施され、マスキング部材を除去する工程
(A4):工程(A3)より後に実施され、マスキング除去部位に導電性材料を含む導電用被膜形成材料を用いて成膜する工程
(B1):クロムを含む金属セパレータ基板にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成用材料を用いて成膜する工程
(B2):クロムを含む金属集電体の表面のうち電極接触部位にマスキング部材を配置する工程
(B3):マスキング部材が配置された金属集電体にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成材料を用いて成膜する工程
(B4):工程(B3)より後に実施され、マスキング部材を除去する工程
(B5):工程(B4)より後に実施され、マスキング除去部位に導電性材料を含む導電用被膜形成材料を用いて成膜する工程
(B6):工程(B4)より後に実施され、保護用被膜が成膜された金属セパレータ基板と保護用被膜が成膜された金属集電体とが電気的に接続するように接合する工程
上述の如く、本発明の固体酸化物形燃料電池用金属部材は、クロムを含む金属基材と、金属基材の表面に形成され、アルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜とを備えるものである。
保護用被膜は、クロムを含む金属基材からのクロムやクロム酸化物の揮発(蒸発)を抑制するだけでなく、保護用被膜に含まれるアルカリ土類金属酸化物がクロムやクロム酸化物を捕捉することができるため、クロムやクロム酸化物などを原因とするセル性能の劣化を抑制ないし防止し得るものとなる。
なお、保護用被膜をX線光電子分光法により測定したところ、保護用被膜の金属基材界面、保護用被膜の内部及び保護用被膜の表面のうち、保護用被膜の表面におけるクロム酸バリウムの生成量が多かったことから、現時点においては、例えば不可避なクラックなどの隙間から揮発(蒸発)したクロムなどが捕捉されていると推測される。
また、カルシウム酸化物は、保護用被膜において1〜30原子%の割合で含まれていることが好ましく、2〜20原子%の割合で含まれていることがより好ましい。カルシウム酸化物の割合が1原子%未満である場合には、熱膨張率が低下し、ステンレス鋼等の表面に形成した場合、剥離などの原因となる。一方、カルシウム酸化物の割合が30原子%を超える場合には、膜強度が低下する。
更に、バリウム酸化物とカルシウム酸化物の双方を含有すると、熱膨張、膜強度の観点から好ましい。
通常、従来の緻密な被覆層や導電性保護膜を構成するセラミックス材料の熱膨張率は、金属基材の熱膨張率と著しい差を有するが、このような組成のガラス状態の保護用被膜は、その組成を調整することにより、その熱膨張率を金属基材の熱膨張率とほぼ一致させることができる。
なお、このような組成のガラス状態の保護用被膜は、比較的容易に成膜できる。また、緻密な被覆層や導電性保護膜を形成するセラミックス材料と比較して安価な材料である。
このような組成のガラス状態の保護用被膜は、クロムやクロム酸化物などを原因とするセル性能の劣化をより抑制ないし防止し得るものとなる。
このような熱膨張率差であると、新たなクラックが生じにくく、クロムやクロム酸化物などを原因とするセル性能の劣化をより抑制ないし防止し得るものとなる。
クロムの割合が15質量%未満である場合には、耐熱性、耐酸化性が劣ることがある。一方、クロムの割合が30質量%を超える場合には、価格や加工性に問題がある。
なお、特に限定されるものではないが、フェライト系ステンレス鋼を用いることが望ましい。また、金属基材としては、これに限定されるものではなく、クロムを含むニッケル基合金など種々の耐熱性合金を適用することができる。
このような導電性材料を含む導電用被膜を有することにより、導電性の確保を必要とする部位にも好適に用いることができる。
導電性材料としては、例えば銀、銅、これらを含む合金などを挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。即ち、例えば白金、パラジウムや銀とセラミックスの混合材料などを適用することもできる。
このようなアルカリ土類金属酸化物を含む導電用被膜を有することにより、保護用被膜と導電用被膜との間におけるクラックが生じにくく、クロムやクロム酸化物などを原因とするセル性能の劣化をより抑制ないし防止し得るものとなる。
図1は、固体酸化物形燃料電池の一例の模式的な断面状態を示す説明図である。同図に示すように、固体酸化物形燃料電池は、セル支持プレート20に搭載され、発電要素であるセル10と、インターコネクタ30とを備える。
発電要素であるセル10は、電解質11とこれを挟持する空気極13と燃料極15とを備える。
また、セル10は、セル支持プレート20に支持されている。
更に、本発明の一実施形態であるインターコネクタ30は、クロムを含む金属セパレータ31と、空気極側において、金属セパレータ31と電気的に接続され、クロムを含む金属集電体33と、燃料極側において、金属セパレータ31と電気的に接続される金属集電体35と、金属セパレータ31の表面と金属集電体33の表面の非電極接触部位の少なくとも一部とに形成されたアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜37とを備える。
図2は、図1に示す金属集電体の電極接触部位の模式的な断面状態を示す説明図である。同図に示すように、金属集電体33は、非電極接触部位の表面にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜37を備え、電極接触部位の表面には保護用被膜を備えていない。
ここで、本発明の一実施形態であるインターコネクタは、更に、金属集電体33の表面の電極接触部位の少なくとも一部に形成され、導電性材料を含む導電用被膜39を備える。
図4は、図3に示す金属集電体の電極接触部位の模式的な断面状態を示す説明図である。同図に示すように、金属集電体33は、非電極接触部位の表面にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜37を備え、電極接触部位の表面に導電性材料を含む導電用被膜39を備えている。
固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの第1の製造方法としては、(A1):クロムを含む金属セパレータ基板とクロムを含む金属集電体とが電気的に接続された接合体につき、金属集電体の表面の電極接触部位にマスキング部材を配置する工程、(A2):マスキング部材が配置された接合体にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成材料を用いて成膜する工程、(A3):工程(A2)より後に実施され、マスキング部材を除去する工程、及び(A4):工程(A3)より後に実施され、マスキング除去部位に導電性材料を含む導電用被膜形成材料を用いて成膜する工程を含むものを挙げることができる。
また、金属セパレータ基板や金属集電体への保護用被膜の形成方法としては、例えばスパッタ法やCVD法、スラリーコート法、電気泳動法など各種の成膜方法を利用することができる。
更に、保護用被膜を形成する際に使用するマスキング部材としては、通常のマスクの他、マスキング剤を利用することができる。なお、マスキング剤を使用した場合には、ブラスト処理や酸化処理、溶解処理など各種のマスキング除去処理を利用することができる。
更にまた、金属集電体への導電用被膜の形成方法としては、例えばスパッタ法やCVD法、スラリーコート法、電気泳動法など各種の成膜方法を利用することができる。
なお、導電用被膜を形成する際に、上記保護用被膜上に導電用被膜を形成しないようにするには、上記同様のマスキング部材を利用することができる。
また、金属セパレータ基板と金属集電体とは、電気的に接続し得れば接合工程の順序はいずれであってもよい。
図1に示すような固体酸化物形燃料電池を作製した。
具体的には、発電要素であるセルにおいて、燃料極(基板)は、材料としてNi−8YSZ(8mol%イットリア安定化ジルコニア)を用い、厚みを800μmとした。また、電解質は、材料として8YSZを用い、厚みを30μmとした。更に、空気極は、LSCF(ランタン−ストロンチウム−コバルト−鉄酸化物)を用い、厚み30μmとした。
なお、金属セパレータ基板等と保護用被膜との熱膨張率差は3×10−7K−1であった。
図3に示すような固体酸化物形燃料電池を作製した。
具体的には、発電要素であるセルにおいて、燃料極(基板)は、材料としてNi−8YSZ(8mol%イットリア安定化ジルコニア)を用い、厚みを800μmとした。また、電解質は、材料として8YSZを用い、厚みを30μmとした。更に、空気極は、LSCF(ランタン−ストロンチウム−コバルト−鉄酸化物)を用い、厚み30μmとした。
なお、金属セパレータ基板等と保護用被膜との熱膨張率差は3×10−7K−1であった。
図3に示すような固体酸化物形燃料電池を作製した。
具体的には、発電要素であるセルにおいて、燃料極(基板)は、材料としてNi−8YSZ(8mol%イットリア安定化ジルコニア)を用い、厚みを800μmとした。また、電解質は、材料として8YSZを用い、厚みを30μmとした。更に、空気極は、LSCF(ランタン−ストロンチウム−コバルト−鉄酸化物)を用い、厚み30μmとした。
図5に示すような固体酸化物形燃料電池を作製した。
具体的には、発電要素であるセルにおいて、燃料極(基板)は、材料としてNi−8YSZ(8mol%イットリア安定化ジルコニア)を用い、厚みを800μmとした。また、電解質は、材料として8YSZを用い、厚みを30μmとした。更に、空気極は、LSCF(ランタン−ストロンチウム−コバルト−鉄酸化物)を用い、厚み30μmとした。
得られた各例の固体酸化物形燃料電池において、下記条件下で発電試験を行い、セル性能の一例である出力密度を測定した。得られた結果のうち実施例2と比較例1の結果を図6に示す。
・空気極側に空気を通気し、燃料極側に水素−30体積%窒素ガスを通気した。
・発電温度は750℃とした。
なお、実施例1及び3についても、実施例2とほぼ同じ傾向を示す結果が得られた。
例えば、上記のインターコネクタの実施形態を説明するに際し、セル支持プレートがフェライト系ステンレス鋼やセラミックス製であるものを適用した例を用いて説明したが、例えばクロムを含む金属基材の全面又は空気極側の表面にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜を形成したセル支持プレートを適用することもできる。なお、このようなアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜を備えたセル支持プレートは、本発明の固体酸化物形燃料電池用セパレータの範囲に含まれる。
11 電解質
13 空気極
15 燃料極
20 セル支持プレート
30 インターコネクタ
31 金属セパレータ
33,35 金属集電体
37 保護用被膜
39 導電用被膜
Claims (12)
- クロムを含む金属基材と、
上記金属基材の表面に形成され、アルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜と、
を備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用金属部材。 - 上記保護用被膜が、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物を含むガラス状態の保護用被膜であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- 上記保護用被膜が、バリウム酸化物(BaO)を30〜60原子%、カルシウム酸化物(CaO)を1〜30原子%、アルミニウム酸化物(Al2O3)を2〜6原子%、ケイ素酸化物(SiO2)を15〜45原子%、ホウ素酸化物(B2O3)を1〜10原子%の割合で含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- 上記保護用被膜は、該保護用被膜の熱膨張率と上記金属基材の熱膨張率との差が5×10−7K−1以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- 上記金属基材が、クロム(Cr)を15〜30質量%の割合で含むステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- 上記金属基材の表面に形成され、導電性材料を含む導電用被膜を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- 上記導電用被膜が、アルカリ土類金属酸化物を含むことを特徴とする請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- セパレータ、集電体又はインターコネクタであることを特徴とする請求項1〜7に記載の固体酸化物形燃料電池用金属部材。
- クロムを含む金属セパレータ基板と、
上記金属セパレータ基板と電気的に接続され、クロムを含む金属集電体と、
上記金属セパレータ基板の表面と上記金属集電体の表面の非電極接触部位の少なくとも一部とに形成され、アルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜と、
を備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。 - 上記金属集電体の表面の電極接触部位の少なくとも一部に形成され、導電性材料を含む導電用被膜を備えることを特徴とする請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタ。
- 請求項10に記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの製造方法であって、以下の工程(A1)〜(A4)
(A1):クロムを含む金属セパレータ基板とクロムを含む金属集電体とが電気的に接続された接合体につき、上記金属集電体の表面の電極接触部位にマスキング部材を配置する工程、
(A2):上記マスキング部材が配置された接合体にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成材料を用いて成膜する工程、
(A3):上記工程(A2)より後に実施され、上記マスキング部材を除去する工程、
(A4):上記工程(A3)より後に実施され、マスキング除去部位に導電性材料を含む導電用被膜形成材料を用いて成膜する工程、
を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの製造方法。 - 請求項10に記載の固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの製造方法であって、以下の工程(B1)〜(B6)
(B1):クロムを含む金属セパレータ基板にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成用材料を用いて成膜する工程、
(B2):クロムを含む金属集電体の表面のうち電極接触部位にマスキング部材を配置する工程、
(B3):上記マスキング部材が配置された金属集電体にアルカリ土類金属酸化物を含む保護用被膜形成材料を用いて成膜する工程、
(B4):上記工程(B3)より後に実施され、上記マスキング部材を除去する工程、
(B5):上記工程(B4)より後に実施され、マスキング除去部位に導電性材料を含む導電用被膜形成材料を用いて成膜する工程、
(B6):上記工程(B4)より後に実施され、上記保護用被膜が成膜された金属セパレータ基板と上記保護用被膜が成膜された金属集電体とが電気的に接続するように接合する工程、
を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用インターコネクタの製造方法。
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